2016年6月19日 (日)

第365回:主要政党の2016年参院選公約案比較(知財政策・情報・表現規制関連)

 6月22日公示、7月10日投開票予定の参院選が近づく中、主要政党の選挙向け公約案が以下の通り大体出そろった。

 今回も各党とも内容はかなり薄いのだが、TPP問題を中心に関連事項を抜き出すと以下のようになる。

<自民党>
◯農業など守るべきものは守りつつ、TPPの活用などにより近隣アジアの海外市場をわが国の経済市場に取り込みます。

◯世界最速・最高品質の審査体制の実現や地方創生と中小企業のための知財活用の促進、デジタル時代における著作権制度の整備、知財教育の充実・人材育成、官民協調による国際標準の獲得や認証基盤の整備等の知的財産・標準化戦略を推進し、世界最高の知財立国を目指します。

◯「衣」「食」「住」やコンテンツ(アニメ、ドラマ、音楽、映画等)をはじめ「日本の魅力」の海外発信を進めるクールジャパンを成長戦略の一翼と位置付け、支援策、人材の育成、国内のクールジャパン拠点構築等の振興策を積極的に展開します。

<公明党>
◯アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP構想の実現も視野に、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の早期発効、日中韓自由貿易協定(FTA)や東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の交渉に取り組むとともに、日EU経済連携協定(EPA)など貿易ルールづくりを積極的に進めます。また、投資協定等の締結を進め、ODAを活用しつつ、海外でのビジネス環境を改善します。また、G7諸国等と協調しながら為替の安定に努めます。

<おおさか維新の会>
◯TPPに賛成。将来は、アジア太平洋自由貿易圏の実現を目指す

<民進党>
◯今回のTPP合意に反対します
 国会審議を通じて、①農産物重要5項目の聖域が確保されていない、②自動車分野でのメリットも小さい、③このような交渉結果となった経緯・理由に関する情報が明らかになっていない、ことがはっきりしました。そのことから、今回のTPP合意については反対します。

<生活の党>
◯TPPは反対。各国とのFTA(自由貿易協定)等を推進します。

<社民党>
◯特定秘密保護法を即時廃止します。「共謀罪」の新設に反対します。

◯言論や報道の自由を侵害するメディア規制の動きに反対します。

◯農林水産業と地域を破壊し、国民の食の安全を脅かすTPP(環太平洋経済連携協定)参加に断固反対します。「農産物重要5項目」の関税維持を求めた国会決議に違反するTPP協定案の国会での承認を阻止します。全ての交渉経過記録の公開を強く求めます。

<共産党>
◯TPP協定に断固反対、農林水産業、中小企業の振興にとりくみます
(略)

◯言論・表現の自由を守ります。ヘイトスピーチを根絶します
 安倍政権による放送の自由、言論の自由への権力的介入は重大です。高市早苗総務相が、放送内容を「政治的不公平」と判断した場合は放送局の電波を停止できると発言し、それを内閣があげて擁護しているのは大問題です。
 ――放送・報道への政府による権力的な介入に断固反対します。
 ――行政による「政治的公平」を口実にした市民の言論・表現活動や集会への不当な介入を許しません。
 ――秘密保護法を廃止します。
 ――民族差別をあおるヘイトスピーチを根絶します。超党派で成立させた「ヘイトスピーチ解消法」も活用して、政府が断固たる立場にたつことを求めます。

(各分野の政策より)
17、TPP――国会決議違反、食・農・地域経済への打撃、ISD条項、食料主権
(略)
安価な薬の供給が減り、薬価が高止まりに――TPP交渉で、「知的財産」の章で、医薬品の知的財産権の保護を強化する制度がアメリカと発展途上国の対立点となり、アメリカはバイオ薬品(抗がん剤や新薬のC型肝炎の治療薬など)の特許期間13年を要求、5年にすべきという発展途上国と対立しました。その結果、特許期間は、少なくても8年又は5年+他の措置とされました。あわせて、①特許期間の延長、②特許が切れたバイオ医薬品のデータ保護期間の設定、③ジェネリック薬(後発医薬品)承認決定に特許権者に特許権を侵害していないかを確認するリンケージ制度を設けています。

 これら規定は、ジェネリック薬品の市場への参入を長期化させることになり、日本国内だけでなく、多くの途上国では、患者の命をつなぐ安価な医薬品が手に入りにくくなる状況は改善されません。しかも、参加国の政府が薬価決定する際に、「直接影響をうける申請者」が、不服審査を開始することができることが規定されており、今後、アメリカの製薬企業などが利害関係者として、医薬品・医療機器の保険扱いの可否や公定価格の決定に影響力を強めることが懸念されます。

37、文化――助成制度、文化施設、専門家の権利・地位向上、知的財産権
(略)
著作者の権利を守り発展させます

 日本の芸術・文化の発展のうえで各ジャンルの専門家の役割はきわめて重要です。著作権は、表現の自由を守りながら、著作物の創造や実演に携わる人々を守る制度として文化の発展に役立ってきました。ところが、映画の著作物はすべて製作会社に権利が移転され、映画監督やスタッフに権利がありません。実演家もいったん固定された映像作品の二次利用への権利がありません。国際的には視聴覚実演に関する条約が作成されるなど、実演家の権利を認める流れや、映画監督の権利充実をはかろうという流れが強まっています。著作権法を改正し、映画監督やスタッフ、実演家の権利を確立します。

 私的録音録画補償金制度は、デジタル録音録画の普及にともない、一部の大企業が協力義務を放棄したことによって、事実上機能停止してしまいました。作家・実演家の利益をまもるために、私的複製に供される複製機器・機材を提供することによって利益を得ている事業者に応分の負担をもとめる、新たな補償制度の導入をめざします。

TPP協定の承認に反対します

 TPP協定で、著作権の分野では、「保護期間の延長」「非親告罪化」「法定賠償金制度」「アクセスコントロールの回避等」についての措置、「配信音源の2次使用料請求権の付与」があらたに持ち込まれ、著作権法の改正が議論されようとしています。現状では、アーカイブの整備、孤児著作物の増加問題などに手が打たれておらず、またアメリカ型の訴訟・裁判制度の持ち込みに懸念の声も広がっています。専門家や関係団体などの間でも意見が分かれている問題を、外圧をてこに強行するのはゆるされません。TPP協定と関連法案の撤回を求めます。
(略)

憲法を生かし、表現の自由を守ります

 芸術活動は自由であってこそ発展します。憲法は「表現の自由」を保障しています。ところが、第2次安倍内閣の発足以降、各地の美術館や図書館、公民館など公の施設で、創作物の発表を不当な理由で拒否するなど、表現の自由への侵害が相次いでいます。安倍首相のもとに開催される「『日本の美』総合プロジェクト懇談会」のように、特定の価値観を創造活動に押しつける動きもあり、創作活動の委縮も懸念されます。安倍政権による放送の自由、言論の自由への権力的介入もきわめて重大です。憲法の基本的人権の条項をまもり生かして、表現の自由を侵す動きに反対します。「児童ポルノ規制」を名目にしたマンガ・アニメなどへの法的規制の動きに反対します。

 諸外国では、表現の自由を守るという配慮から、財政的な責任は国がもちつつ、専門家が中心となった独立した機関が助成を行っています。文化庁の助成は応募要綱などが行政の裁量で決められ、芸術団体の意見がそこに十分反映されていません。すべての助成を専門家による審査・採択にゆだねるよう改善します。
(略)

 自民党が知財政策について一応触れているが、これは今年の知財計画に書かれているキャッチフレーズをそのままなぞっているだけでほとんど意味はない。中では、これもいつも通りだが、共産党がTPPとの関係で知財の保護強化を問題視しているのはポイントが高い。また、例によって政党として表現の自由の問題を明確に取り上げているのは社民党と共産党である。

 今回の選挙も残念ながら知財問題が大きな争点になることはないだろうが、今までさんざん書いて来ている通り、TPP協定の批准が有害無益な知財保護の強化に直結するのは間違いない。参考に各党の公約からTPP協定に関する賛成反対だけを一覧でまとめると、

<自民>:賛成
<公明>:賛成
<お維>:賛成
<民進>:反対
<生活>:反対
<社民>:反対
<共産>:反対

となり、与野党対立の構図はさらに分かりやすくなった。今回の選挙でも私はTPP協定反対の面から投票先を決めるつもりである。

 また、加えて特に気をつけておきたいのは前回と同じく自民党の公約案が憲法改正を含んでいることである。自民党の実質的に表現の自由などの基本的人権の制約・国民からの剥奪を狙っているゴミクズ以下の憲法改正案(自民党のHP参照)の危険性はいくら強調してもしすぎではない。同じく憲法改正を唱えるおおさか維新の会への投票もかなり危険と思っておくべきだろう。

 なお、前回の参院選では規制強化慎重反対派元国会議員候補リストもつけたのだが、今回は4野党の候補者調整によってほとんどの選挙区で与党か野党かという二者択一の選択になり、個人に対する投票という意味は薄れそうなのでこのリストは省略する。(リストについて興味のある方は、第293回に載せた2013年参院選向けに作ったものや番外その25に載せた2010年参院選向けに作ったものを参照頂きたい。)

(2016年6月26日夜の追記:特に内容に変更はないが、各政党から詳細版を含む正式な公約集が公開されているので、念のため<こころ>と<改革>も合わせ、ここにそのリンクを張っておく。

 なお、新党改革はTPP協定に賛成と見えるが、その公約に「コミケ、二次創作、コスプレ、同人誌など様々な表現を許容し、表現の自由を守ります」という表現規制問題の面から見て非常にポイントが高い記載が入っているのは山田太郎候補の働きかけによるものだろう。)

(2016年7月3日夜の追記:なお、今回の選挙ではこの部分は争点にならないと思うが、表現規制絡みとして、自民党の総合政策集に「青少年健全育成のための社会環境の整備を強化するとともに『青少年健全育成基本法』を制定します。またITの発達等による非行や犯罪から青少年を守るための施策を推進します。」という記載が、民進党の政策集に「メディアにおける性・暴力表現について、人々の心理・行動に与える影響について調査を進めるとともに、バーチャルな分野を含め、技術の進展及び普及のスピードに対応した対策を検討し、推進します。」という記載があるので、念のためここに抜き出しておく。)

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2014年12月 1日 (月)

番外その37:著作権・情報・表現規制問題に関する注目選挙区リスト(2014年衆院選版)

 前回参院選以降の児童ポルノ規制法改正案成立を巡る国会での動きについてざっと最初に書いておくと(前回参院選までの話は第293回参照)、合わせて衆議院に関連請願が4つ(請願情報1参照)、参議院に関連請願が3つ出され(要旨1一覧1要旨2一覧2要旨3一覧3参照)、また、今年の法案審議中(6月4日の衆院法務委の議事録、同17日の参院法務委の議事録参照)、衆議院で漫画などまで含めて規制すべきと強烈な規制強化論を述べ立てたのが自民党の土屋正忠氏であるが、民主党の枝野幸男氏は非常に良くポイントを押さえた議論を展開しており、折衷案をまとめた自民党のふくだ峰之氏や民主党の階猛氏も押さえた良い説明をしていたと思う。また、参議院では、定義の問題に始まり漫画などに対する規制反対の論陣を張って下さったのがみんなの党の山田太郎議員(今は無所属)であり、共産党の仁比聡平議員も反対の立場を取っていた。

 このような今年の児童ポルノ規制法改正案審議のことも考えて、以念のため今回の衆議院選挙についても、各党の公認予定者から著作権・情報・表現規制問題に関する注目選挙区リストを以下に作っておく。(いつも通り規制推進寄りの候補の名前を赤で、慎重・反対寄りの候補の名前を青で示す。2012年版は番外その36参照。元議員候補のやって来たことについては前回衆院選のときに作った番外その34番外その35の関連国会議員リストも参照。)

○茨城3区
・小林きょうこ候補<共産>(twitter
・石井あきら候補<維新>(HPtwitter
葉梨康弘候補<自民>(HPwiki):前々回の児童ポルノ規制法改正案で規制推進を主張

○埼玉5区
枝野幸男候補<民主>(HPwiki):児童ポルノ規制法改正案国会審議での立役者の一人
・山本ゆう子候補<共産>(twitter
・牧原秀樹候補<自民>(HP twitterwiki

○東京11区
・山内金久候補<共産>
・熊木美奈子候補<民主>
下村博文候補<自民>(HPwiki):現文科大臣、ダウンロード犯罪化修正案の提案者の一人

◯東京18区
・ゆうき亮候補<共産>
・菅直人候補<民主>(HPtwitterwiki):元総理大臣
土屋正忠候補<自民>(HPwiki):前回の児童ポルノ規制法改正案で規制推進を強力に主張

○神奈川16区
・池田博英候補<共産>(HP
・後藤祐一候補<民主>(HPwiki
義家弘介候補<自民>(HPtwitterwiki):情報・表現規制問題では有名な規制派の一人

○石川1区
・亀田りょうすけ候補<共産>(HPtwitter
・田中美絵子候補<民主>(HP
馳浩候補<自民>(HPwiki):ダウンロード犯罪化修正案の提案者の一人

◯新潟5区
森ゆうこ候補<生活>(HPtwitterwiki):ダウンロード犯罪化とACTAに反対、関連して質問主意書を提出
・はっとり耕一候補<共産>
・長島忠美候補<自民>(HPtwitterwiki

○奈良2区
中村哲治候補<生活>(HPtwitterwiki):児童ポルノ法規制の強化に慎重
・いずみ信丈候補<共産>
高市早苗候補<自民>(HPwiki):現総務大臣、児童ポルノ法改正自公案の提出者の一人

○山口3区
・藤井たけし候補<共産>
・三浦昇候補<民主>(HP
河村健夫候補<自民>(HPwiki):元文科大臣、ダウンロード犯罪化修正案の提案者の一人

○鹿児島1区
川内博史候補<民主>(HPtwitterwiki):ダウンロード犯罪化に慎重
・山口ひろのぶ候補<共産>
・山之内つよし候補<維新>(HPtwitterwiki
・保岡興治候補<自民>(HPwiki):元法務大臣

 今回の総選挙でも大きく状況が変わるということはないと思うが、それでも自らの意思で国政に票を投じることのできる貴重な機会であり、是非一人でも多くの人に選挙に行ってもらいたいと私も思っている。

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2014年11月30日 (日)

第328回:主要政党の2014年衆院選マニフェスト(政権公約)案比較(知財・情報・表現規制問題関連)

 今度の衆院選も知財政策が選挙の争点になりようがないのは残念だが、主要政党のマニフェスト(政権公約)案が以下の通りほぼ出そろったので、また比較を作っておきたいと思う。(実際には公示日以降に配布されるものが正式版となるが、例によってほとんど違いはないだろう。)

 先に書いておくと、今年新所持罪(性的好奇心目的所持罪)を含む児童ポルノ法の改正案が国会を通った結果、児童ポルノ法改正に関する記載もなくなり、どの政党のマニフェストも知財・情報・表現規制問題に関しては取り立てて見るべきことはあまり書かれていないという状態になっているが、以下、念のため関連部分の記載を見て行く。

(1)知財関連

<自民党>
○職務発明制度の見直しや営業秘密の保護強化、知財人材の育成等の知的財産・標準化戦略を推進し、引き続き世界最高の知財立国を目指すとともに、政府と産業がタッグを組んで、自動運転技術等「日本の強み」がある分野については国際標準の獲得や認証基盤の整備を行う体制を整えます。

○「衣」「食」「住」やコンテンツ(アニメ、ドラマ、音楽等)をはじめ「日本の魅力」の海外発信を進めるとともに、世界の頂点へ挑戦するコンテンツ人材の育成等、クールジャパン戦略を推進します。

<民主党>
◯インフラのパッケージ型輸出、エネルギーの調達先多様化など戦略的な経済外交を推進します。國酒プロジェクト、クールジャパンなどを推進します。

<共産党>
◯34、文化:芸術・文化の活動を支え、文化が豊かに発展する社会をめざします
(略)
・著作者の権利を守ります。文化を支える専門家の地位向上にとりくみます
 日本の芸術・文化の発展のうえで各ジャンルの専門家の役割はきわめて重要です。ところが、その専門家の権利や社会保障がないがしろにされています。こうした状態を改め、著作権者の権利を守ることや、専門家の低収入、社会保障の改善にとりくみます。
 著作権は、表現の自由を守りながら権利者を守る制度として文化の発展に役立ってきました。ところが、映画の著作物はすべて製作会社に権利が移転され、映画監督やスタッフに権利がありません。実演家もいったん固定された映像作品への権利がありません。国際的には視聴覚実演に関する条約が作成されるなど、実演家の権利を認める流れや、映画監督の権利充実をはかろうという流れが強まっています。著作権法を改正し、映画監督やスタッフ、実演家の権利を確立します。
 私的録音録画補償金制度は、デジタル録音録画の普及にともない、一部の大企業が協力義務を放棄したことによって、事実上機能停止してしまいました。作家・実演家の利益をまもるために、私的複製に供される複製機能を提供することによって利益を得ている事業者に応分の負担をもとめる、新たな補償制度の導入をめざします。

 知財政策に関して多少なりとも何か言おうとしているのは、ものの見事に自民党と共産党のみとなった。両党ともほとんど意味のあることは言っていないが、自民党が職務発明制度の見直しや営業秘密の保護強化を明記していることは注意しておいても良いだろう。また、下の(3)で書くが、TPPとの絡みで知財問題に言及しているのは共産党しかないという状況である。(なお、前にも書いたことだが、共産党の私的録音録画補償金制度に関する理解はいまいちである。)

(2)情報・表現規制関連

<自民党>
○「『世界一安全な日本』創造戦略」に基づき、2020年オリンピック・パラリンピック東京大会を見据えて、治安対策や持続可能な民間の安全形成システムの強化を推進します。

○「サイバーセキュリティ基本法」の理念に則り、国民や企業が安心してICTを利活用し、豊かで便利な社会を創るため、総合的なサイバーセキュリティ対策を推進します。

○日本サイバー犯罪対策センターの積極的な運用による有害情報排除、捜査手法の高度化、情報収集体制・警備体制強化等、サイバー犯罪・組織犯罪・テロ対策に万全を期します。

<民主党>
○国会など第三者機関による監視と関与を強化するまで特定秘密保護法の施行は延期します。

○特定秘密保護法:知る権利と報道の自由を確実に守るため、国会等の監視機関の不十分さを是正します。

○人種等を理由とした差別をなくすため、表現の自由を尊重した上で、「ヘイトスピーチ対策法」を制定します。

<維新の党>
○いわゆるヘイトスピーチについて、国連人種差別撤廃委員会からの勧告の趣旨も踏まえつつ、規制のあり方を具体化する。

<共産党>
○38、秘密保護法・共謀罪:国民の目・耳・口をふさぎ、「海外で戦争する国」へと道を開く希代の悪法――秘密保護法の廃止を求めます
(略)

◯44、ヘイトスピーチ:民族差別をあおるヘイトスピーチを許さない
(略)
 日本共産党は、言論・出版の自由や結社の自由、表現の自由など憲法で保障されている基本的人権を全面的に擁護するとともに、それと矛盾・抵触しないような形の法整備のために積極的に対応します。国内外で高まる「社会的包囲でヘイトスピーチ根絶を」の世論と運動を踏まえ、ヘイトスピーチを許さないために、人種差別禁止を明確にした理念法としての特別法の制定をめざします。
(略)

<社民党>
○知る権利や報道の自由、言論・表現の自由を侵す「特定秘密保護法」を廃止します。

○差別や敵意を煽る「ヘイトスピーチ(憎悪表現)」を規制する「人種差別禁止法」を制定します。

 情報・表現規制関連としては、各政党とも基本的に今までのスタンスを踏襲する形で、秘密保護法やヘイトスピーチに対する対応などで違いが出ている。また、マニフェスト案に取り立てて大きな意味のあることが書かれている訳ではないが、自公が今の全体的な情報・表現規制強化の流れを自ら止めることはまずもってないだろう。

 前の衆参選挙のマニフェスト案比較の時にも書いたことで繰り返しになるが(第283回や第293回参照)、ここで最も注意すべきは自民党の政権公約が憲法改正を含んでいることだろう。ここでそのゴミクズ以下の憲法改正案(自民党のHP参照)についてここで事細かに突っ込む気はないが、前にも書いた通り、自民党はこの憲法改正で実質的に表現の自由などの基本的人権の制約・国民からの剥奪を狙っているのである。また、同じく憲法改正をマニフェストに明記している維新の党や次世代の党も憲法改正については自民と同じく危険と言って良いだろう。

(3)TPP関連

<自民党>
○経済連携交渉は、交渉力を駆使して、守るべきは守り、攻めるべきは攻め、特にTPP交渉は、わが党や国会の決議を踏まえ、国益にかなう最善の道を追求します。

<公明党>
○TPP(環太平洋パートナーシップ)協定交渉では、わが国農業の多面的機能や食料自給率の向上など国民生活への影響に配慮しつつ、守るべきものは守り、勝ち取るべきものは勝ち取るとの強い姿勢で臨み、国益の最大化に努めることを求めます。また、TPP交渉と並行して、アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)構想の実現に向け、日中韓の自由貿易協定(FTA)や東アジア地域包括的経済連携(RDEP)などに主導的に取り組むとともに、日・EU経済連携協定(EPA)などの貿易ルールづくりを積極的に推進します。

<民主党>
○TPPについては、農林水産物の重要5品目などの除外、食の安全の確保、国民皆保険の堅持などの国益を確保するために、脱退も辞さない厳しい姿勢で臨みます。「情報提供促進法」の制定を通じ、経済連携協定交渉の情報公開を進めます。

<維新の党>
○アジア太平洋地域の自由貿易圏構想の実現に向けて、TPP、RCEP、日中韓FTA等、域内経済連携に積極的に関与し、地域の新しいルール作りをリードする。

<次世代の党>
◯国益を踏まえた自由貿易圏の拡大

<共産党>
○12、TPP:TPPへの暴走=「亡国の政治」に反対し、経済主権、食料主権を尊重した互恵・平等の対外経済関係の発展をめざす
(略)
 安価な薬の供給が減り、薬価が高止まりに――アメリカはTPPを通じて知的財産権の保護強化を主張しています。それが通れば、ジェネリック薬(後発医薬品)の供給が遅れ、医薬品価格が高止まりします。アメリカは、既存薬の形や使い方を変えた医薬品を、効果がアップしていなくても"新薬"として特許申請する「エバーグリーニング」とよばれる手法を使い、既存薬の権利独占を図ろうとしています。TPPでこのルールが認められると、ジェネリック薬市場に参入するまでに、今まで以上に長い年月が必要になります。日本国内だけでなく、多くの途上国では、患者の命をつなぐ安価な医薬品が手に入りにくくなるため、多くの国が反対するのは当然です。薬メーカーに一方的に有利なアメリカ流の「知的財産権の保護」は認められません。)
(略)

<生活の党>
○TPPは断固反対
 日本の経済・社会を根底から破壊しかねないTPPには参加せず、各国とのFTA(自由貿易協定)を推進します。

<社民党>
○農林水産業に壊滅的打撃を与えるなど、21分野もの規制緩和で地域経済、国民生活のすみずみに悪影響をもたらし、衆参農林水産委員会決議にも反するTPP(環太平洋経済連携協定)への参加に断固反対します。TPP交渉に関する情報公開を強く要求します。

 ここで、前と変わらないとは言え、共産党がきちんとTPP交渉に関する項目で知財(ジェネリック薬)の問題に触れているのはポイントが高い。また、民主党のスタンスは与党時代のことを考えるとまだ実質推進と考えても良いのではないかと思うが、それでも情報公開を求めるとしている点は多少変化が見られるところだろうか。

 今までのリーク文書がはっきり示している通り、前回同様TPP交渉推進で日本の知財政策が著作権も含めて保護強化に大きく歪む形で振れることになると考えて私は投票するつもりだが、TPP交渉に関して上で抜き出した部分をざっくりとまとめると、

<自民>:推進
<公明>:推進
<民主>:推進+情報公開促進
<維新>:推進
<次世>:推進
<共産>:反対
<生活>:反対
<社民>:反対

となり、今回の衆院選でも相変わらずどうにも選択肢が少ないのが本当に残念である。

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2014年7月 9日 (水)

第316回:パーソナルデータの利活用に関する制度改正大綱(個人情報保護法改正)パブコメ募集(7月24日〆切)

 個人情報保護法改正の話は、知財問題からかなり外れるのだが、重要である割に騒がれていないように思うので、ここでも取り上げることにする。

 この6月24日に決定されたパーソナルデータの利活用に関する制度改正大綱(pdf)は、IT総合戦略本部パーソナルデータに関する検討会で検討されていたもので、その意見募集のリリースにある通り、7月24日〆切でパブコメ募集が行われているものである。(電子政府HPの意見募集ページも参照。)

 この制度改正大綱はざっくりとした書き方の多い薄いペーパーなので、何とも言えないところもあるが、そのポイントとなる部分を抜き出すと、最初に、第10ページからの「Ⅱ 基本的な制度の枠組みとこれを補完する民間の自主的な取組の活用」中の、

1 個人が特定される可能性を低減したデータの取扱い
 現行法は、個人データの第三者提供や目的外利用をする場合、一定の例外事由を除き本人の同意を要することとしている。この個人データの第三者提供や目的外利用に関して、本人の同意に基づく場合に加え、新たに「個人データ」を特定の個人が識別される可能性を低減したデータに加工したものについて、特定の個人が識別される可能性とその取扱いにより個人の権利利益が侵害されるおそれに留意し、特定の個人を識別することを禁止するなど適正な取扱いを定めることによって、本人の同意を得ずに行うことを可能とするなど、情報を円滑に利活用するために必要な措置を講じることとする。
 また、個人が特定される可能性を低減したデータへの加工方法については、データの有用性や多様性に配慮し一律には定めず、事業等の特性に応じた適切な処理を行うことができることとする。さらに、当該加工方法等について、民間団体が自主規制ルールを策定し、第三者機関(後掲IV参照)は当該ルール又は民間団体の認定等を行うことができることとする。加えて、適切な加工方法については、ベストプラクティスの共有等を図ることとする。

という部分、2つ目に、同じく第10ページからの「Ⅲ 基本的な制度の枠組みとこれを補完する民間の自主的な取組の活用」中の、

1 基本的な制度の枠組みに関する規律
(1)保護対象の明確化及びその取扱い

 パーソナルデータの中には、現状では個人情報として保護の対象に含まれるか否かが事業者にとって明らかでないために「利活用の壁」となっているものがあるとの指摘がある。
 このため、個人の権利利益の保護と事業活動の実態に配慮しつつ、指紋認識データ、顔認識データなど個人の身体的特性に関するもの等のうち、保護の対象となるものを明確化し、必要に応じて規律を定めることとする。
 また、保護対象の見直しについては、事業者の組織、活動の実態及び情報通信技術の進展など社会の実態に即した柔軟な判断をなし得るものとなるよう留意するとともに、技術の進展や新たなパーソナルデタの利活用のニーズに即して、機動的に行うことができるよう措置することとする。なお、保護の対象となる「個人情報」等の定義への該当性については、第三者機関が解釈の明確化を図るとともに、個別の事案に関する事前相談等により迅速な対応に努めることとする。

(2)機微情報
 社会的差別の原因となるおそれがある人種、信条、社会的身分及び前科・前歴等に関する情報を機微情報として定め、個人情報にこれらの情報が含まれる場合には原則として取扱いを禁止するなどの慎重な取扱いとすることについて検討することとする。
 ただし、機微情報を含む個人情報の利用実態及び現行法の趣旨に鑑み、本人の同意により取得し、取り扱うことを可能とするとともに、法令に基づく場合や人の生命・身体又は財産の保護のために必要がある場合の例外規定を設けるなど、取扱いに関する規律を定めることとする。

(3)個人情報の取扱いに関する見直し
①情報が集積、突合及び分析等されることにより、本人が認知できないところで特定の個人が識別される場合における、個人情報取扱事業者がとるべき手続等について、必要な措置を講じることとする。
(後略)

という部分、3つ目に、第13ページからの「Ⅳ 第三者機関の体制整備等による実効性ある制度執行の確保」中の、

1 第三者機関の体制整備
(1)設置等

 専門的知見の集中化、分野横断的かつ迅速・適切な法執行の確保により、パーソナルデータの保護と利活用をバランスよく推進するため、独立した第三者機関を設置し、その体制整備を図ることとする。
 番号法に規定されている特定個人情報保護委員会の所掌事務にパーソナルデータの取扱いに関する事務を追加することとし、内閣総理大臣の下に、パーソナルデータの保護及び利活用をバランスよく推進することを目的とする委員会を置くこととする。
 この第三者機関は、番号法に規定されている業務に加えて、パーソナルデータの取扱いに関する監視・監督、事前相談・苦情処理、基本方針の策定・推進、認定個人情報保護団体等の監視・監督、国際協力等の業務を行うこととする。
 委員を増員し、パーソナルデータの保護に配慮しつつ、その利用・流通が促進されるようバランスのとれた人選が実現できる要件を定めるとともに、専門委員を置くことができることとする。また、事務局について必要な体制の構築を図ることとする。

(2)権限・機能等
 第三者機関は、現行の主務大臣が有している個人情報取扱事業者に対する権限・機能(助言、報告徴収、勧告、命令)に加えて、指導、立入検査、公表等を行うことができることとするとともに、現行の主務大臣が有している認定個人情報保護団体に対する権限・機能(認定、認定取消、報告徴収、命令)を有することとする。
 また、第三者機関は、民間主導による個人情報及びプライバシーの保護の枠組みの創設に当たり、自主規制ルールの認定等を行う。さらに、国境を越えた情報流通を行うことを可能とする枠組みの創設に当たり、認証業務を行う民間団体の認定、監督等を行うこととする。
 なお、行政機関及び独立行政法人等が保有するパーソナルデータに関する調査・検討等を踏まえ、総務大臣の権限・機能等と第三者機関の関係について検討する。

と書かれている部分となり、今後ここに書かれていることに沿って個人情報保護法の改正が進められると考えられる。

 ここで、上で抜き出した部分をさらにつづめて書くと、

  • 特定の個人が識別される可能性を低減した個人情報加工データについて本人の同意がなくとも第3者提供や目的外利用も含めたビジネス利用を可能とする。
  • 個人の身体的特性の中でも保護の対象となる情報を明確化し、人種、信条、社会的身分及び前科・前歴等に関する情報を機微情報として定める。
  • 情報が集積、突合及び分析等されることにより、本人が認知できないところで特定の個人が識別される場合における、個人情報取扱事業者がとるべき手続等について、必要な措置を講じる。
  • 個人データの加工方法等は民間団体による自主規制ルールに委ねられ、内閣総理大臣の下に新たに作られる第3者機関がそれを認定する。

ということになるだろう。

 今の個人情報保護法が不十分なのはその通りだろうし、法改正の方針が間違いということもないのだが、このペーパーは非常に薄く、業界団体の「自主規制ルール」で「個人が識別される可能性を低減したデータ」を「本人の同意を得ずに」「第三者提供や目的外利用」も含めビジネス利用可能とする上で、消費者・利用者から見て本当に必要十分なことが書かれているかとなるとかなり心もとない代物である。

 例えば、機微情報は「人種、信条、社会的身分及び前科・前歴等」と「等」が含まれる形で書かれているので、この列挙に限らないことは想定されているのだろうが、センシティブ情報・データが本当にこの列挙だけで良いかとなるとかなり疑問であるし、情報が突き合わされ分析されることで本人が認知できないところで特定の個人が識別される危険性に関する認識もあるものの、その場合については「必要な措置を講じる」と書かれているだけで具体的にどうするかは良く分からないし、第3者機関・委員会についてもかなり強い権限を持っているにもかかわらず、その具体的な構成に関する言及も少ない。(人種や前科ほどではないかも知れないが、個人の居場所・移動に関する情報や趣味嗜好に関する情報はかなりセンシティブなものと言って良いだろうし、インターネットにおける情報の大量収集を通じたプライバシーの侵害についてどう利用者の保護を図って行くかかということこそ今まさに考えるべきことだろうに、このペーパーではそこが非常に危ういように思えるのである。)

 また、諸外国の法制や動向に関して、アメリカの消費者プライバシー権利章典や欧州連合の個人データ保護規則案についてわずかに言及があるものの、これだけでは外国も参考にしたとは到底言えないだろう。別に国内法制の検討で外国の動向を気にしなければならないということもないのだが、参考にするのであればきちんと見るべきだろうし、良く引き合いに出される欧米主要国に限ったとしても、かなり複雑かつ重層的な保護をしているのであって、このペーパーのように情報のビジネス利用ばかりに前のめりというのでは、法改正後も日本での個人情報・プライバシーの保護が外国と比べて劣るとまた言われかねないという危惧もある。(例えば、欧州の情報保護法は欧州委員会の個人情報保護に関するHPに書かれている通り極めて複雑で、かつ各国ごとにも保護法制がある状況なのだが、どこまで理解しているのだろうか。アメリカの法制も例えば情報プライバシー法についてのWikipediaの記事にも書かれている通りそう単純ではない。)

 このパブコメはあまり騒がれていないように思うが、自分の情報が将来的にどう扱われるかここで決まるという点で非常に重要なものであり、情報保護に関心のある方は是非提出を検討してはどうかと思う。(私も出す予定だが、さすがに知財問題からかなり外れるので提出パブコメをここに載せることまではしないつもりでいる。)

(2014年7月11日夜の追記:日経などで記事になっているが、ベネッセの個人情報流出事件を受けて官房長官が今日午前の記者会見で個人情報保護法の改正による対策強化について言及した。具体的に何をどうするつもりなのかは不明だが、上で取り上げた大綱で書かれたことに加えて何かしら法改正が検討されることになるのかも知れない。)

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2013年7月 3日 (水)

第293回:主要政党の2013年参院選マニフェスト(政権公約)案比較・規制強化慎重反対派元国会議員候補リスト(知財・表現規制問題関連)

 どの政党も前回の衆院選のときと比べてほとんどスタンスの変更はないのだが(前回衆院選時の比較は第283回参照)、

と参院選マニフェスト案がほぼ出そろったので、念のため一通り知財・情報・表現規制問題関連の項目について見ておきたいと思う。

(1)マニフェスト案比較
 各政党のマニフェストから知財・表現規制問題に関する項目を抜き出して行く。

<自民党>
○最先端の「知財立国」に
・特許審査の迅速化を図るとともに、「意匠法」「商標法」を見直し、産業競争力を強化します。
・日本発のコンテンツ・プラットフォームの研究開発を進めます。
・世界で活躍できるグローバル知財人材の育成と、研究開発拠点の誘致を図ります。

○拡大する国際市場を獲得
・国、大学等の研究機関、各企業などの人材・知財・資金を繋ぎ合わせるオープン・イノベーションを推進し、オールジャパン体制で世界との「新分野開拓競争」に対応します。
・「クールジャパン戦略」を推進するとともに、国際標準化・認証に対する戦略的な取組みを強化し、積極的なトップセールスを展開し、海外市場を獲得します。2020年に30兆円(現状10兆円)のインフラシステムの受注を実現すること、2018年までに放送コンテンツ関連海外売上高を現在(63億円)の3倍に増加させること、2020年に海外の医療技術・サービス市場で1.5兆円(現状0.5兆円)を獲得することを目指します。

○国益にかなう経済連携
・TPP等の経済連携交渉は、交渉力を駆使し、守るべきものは守り、攻めるべきものは攻めることにより、国益にかなう最善の道を追求します。
(略)

○治安・テロ対策の強化
・新たな犯罪への対策、防犯ボランティアや保護司等の民間の安全形成システム、法務・警察部門の体制等の治安インフラを強化します。
(略)
・コンピュータやインターネットへの不正侵入、データ破壊、情報漏洩などへの対策(サイバーセキュリティ)を強化します。

○全ての子供の健全な成長と安全の確保
・「青少年健全育成基本法」を制定し、必要な施策を総合的に推進します。
(略)

(総合政策集より)
26「国富」を生み出す知財戦略
(略)

27「クール・ジャパン戦略」の推進
(略)

323世界に誇るべき「文化芸術立国」の創出
(略)
 デジタル化・ネットワーク化の進展により電子書籍等の電子出版物が増加しており、インタネット上における電子出版物の海賊版対策が急務です。文字・活字文化振興のため、デジタル時代に即した『著作権法』改正を行い、現行の出版権を見直します。また、わが国の文化関係予算は高い水準にあると言えず、「文化芸術立国」の創出に向けて、必要な文化予算を確保します。

<公明党>
Ⅱ−1−④−2)クール・ジャパンによる観光振興
 コンテンツ、ファッション、日本食、地域資源など日本の魅力を海外に発信。日本のモノやサービスを海外に売り出すクール・ジャパン戦略と、外国人観光客を国内へ呼び込み、国内での消費を盛んにする観光振興を結びつけた「クール・ジャパン観光」を推進します。

Ⅴ−2−①日・中・韓、日・EUなど経済連携協定を推進
 TPP交渉と並行して日中韓の自由貿易協定(FTA)や東アジア地域包括的経済連携(RCEP)などに主導的に取り組みます。アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)の成立をめざすとともに、日・EU経済連携協定(EPA)などの貿易ルールづくりを積極的に推進します。

(重要政治課題より)
3 TPP交渉で国益の最大化を
(略)

<民主党>
○経済連携・経済外交
・高いレベルの経済連携を推進し、世界におけるルールづくりを主導します。
 TPPについては、農林水産物の重要5品目などの除外、食の安全の確保、国民皆保険の堅持などの国益を確保するために、脱退も辞さない厳しい姿勢で臨みます。

<みんなの党>
Ⅰ−1−④TPPのみならず、日中韓FTA、RCEP、日EU等の広域FTAを推進し、日本の国益を最大化。アジア・太平洋諸国とエネルギーや安全保障分野を含めた戦略的な提携関係を強化する。

Ⅰ−1−⑤アジア域内の規制緩和(外貨規制等)を進め、必要な規制については共同制度(競争政策、知的所有権等の国際調和、紛争解決等)の構築を図る。

Ⅰ−5−①日本の魅力、各分野でのコンテンツの素晴らしさを積極的に取り上げ、情報発信の在り方、特に海外に向けた広報を強化。その際、徹底したマーケティングとブランディングを行う。また、日本の漫画、アニメ、小説、ゲーム等の振興を図る。

<日本維新の会>
○TPP参加。自由貿易圏の拡大

<社民党>
○TPP参加反対、地域再生の柱に農林水産業を
(略)

2.−<障がい者>−4.障がい者の社会参加を推進します
(略)
・著作者の音訳を制限する著作権法を改正するとともに、「EYEマーク」運動をすすめます。

5.若者
(略)
・日本が持つアニメ・漫画などのコンテンツ、伝統産業、商業デザイン、クリエーターの感性をいかした情報発信や海外展開など、中小零細企業を主導とした「クールジャパン」事業を拡大します。またクリエーターの賃金・労働条件の実態把握と雇用環境の改善に取り組み、離職者の再就職を支援します。
(略)

8.法務・人権
(略)
・あらゆる性暴力を禁止し、被害者の人権とケアを保証する「性暴力禁止法」をつくります。性的搾取・虐待から
子どもを守る取り組みを強化します。単純所持を刑事罰化する与党の「児童ポルノ禁止法改正案」は、捜査権濫用の危険性があり表現の自由を侵害しかねないため反対するとともに、児童ポルノの定義を限定・明確化した上で根絶へ積極的な防止対策を講じます。
(略)

<共産党>
3−(1)TPP交渉参加を撤回し、日本農業の再生と食料主権、経済主権の確立を
(略)

(各分野政策より)
12、TPP
 TPPへの暴走=「亡国の政治」に反対し、経済主権、食料主権を尊重した互恵・平等の対外経済関係の発展をめざす
(略)
 安価な薬の供給が減り、薬価が高止まりに――アメリカはTPPを通じて知的財産権の保護強化を推進しており、ジェネリック薬(後発医薬品)の供給が遅れ、医薬品価格の高止まりにつながる恐れがあります。アメリカは、既存薬の形や使い方を変えた医薬品を、効果がアップしていなくても"新薬"として特許申請する「エバーグリーニング」とよばれる手法を使い、既存薬の権利独占を図ろうとしています。TPPでこのルールが認められると、ジェネリック薬市場に参入するまでに、今まで以上に長い年月がかかるようになります。日本国内だけでなく、多くの途上国では、患者の命をつなぐ安価な医薬品が手に入りにくくなります。安価な医薬品の供給を維持するためにも、薬メーカーに一方的に有利なアメリカ流の「知的財産権の保護」には反対です。
(略)

35、文化芸術・文化の活動を支え、文化が豊かに発展する社会をめざします
(略)
○「劇場法」を生かし、文化施設への支援を強めます
(略)
 まだまだ足りない大小さまざまな表現空間や展示場所、けいこ場といった芸術家・文化団体の活動の条件を整備します。アニメ、マンガ、写真、音楽、美術など、文化各ジャンルの貴重な遺産の収集・保存を支援します。映画フィルムの保存を急ぐとともに、急速にすすむデジタル化に対応し映画作品の保存をすすめます。映画の国立フィルムセンターの人員を拡充し、国立美術館の付属施設から、国が責任をもつ独立した組織へと発展させます。
(略)

○著作者の権利を守ります。文化を支える専門家の地位向上にとりくみます
 日本の芸術・文化の発展のうえで各ジャンルの専門家の役割はきわめて重要です。ところが、その専門家の権利や社会保障がないがしろにされています。こうした状態を改め、著作権者の権利を守ることや、専門家の低収入、社会保障の改善にとりくみます。
 著作権は、表現の自由を守りながら権利者を守る制度として文化の発展に役立ってきました。ところが、映画の著作物はすべて製作会社に権利が移転され、映画監督やスタッフに権利がありません。実演家もいったん固定された映像作品への権利がありません。国際的には視聴覚実演に関する条約が作成されるなど、実演家の権利を認める流れや、映画監督の権利充実をはかろうという流れが強まっています。著作権法を改正し、映画監督やスタッフ、実演家の権利を確立します。
 一部の大企業は、私的録音録画補償金制度への協力義務を非難するだけでなく、実際に放棄してしまいました。こうした横暴を許さず、著作物を利用することで利益を得るメーカーに応分の負担を求め、作家・実演家の利益をまもります。
(略)

○憲法を生かし表現の自由を守ります。ダンス規制をやめさせます
芸術活動は自由であってこそ発展します。憲法は表現の自由を保障しています。ところが、自民党の「改憲案」は、表現・結社の自由について「公益及び公の秩序」に反しないものとしか認めないとしています。憲法の基本的人権の条項をまもり生かして、表現の自由を侵す動きに反対します。
「風営法」の規制対象からダンスを削除し、「ダンス規制」をやめさせます。

41、いのち・人権の保障
(略)
・児童ポルノ禁止法改定問題について……子どもを性的対象とする児童ポルノは、子どもにたいする最悪の虐待行為であり、その非人間的な行為を日本共産党は絶対に容認することはできません。1人の被害者も出さない社会をつくりだすことは、大人社会の重大な責任です。
 同時に、児童ポルノそのものの作成・流通・販売をきびしく禁止し、取り締まることと、「単純所持」を法的に禁止することは厳密に区別する必要があると考えます。
 自民党、公明党、日本維新の会の3党は、2013年5月29日、児童ポルノ禁止法の「改正」案を衆議院に提出しました。「改正」案によれば、写真やデジタル画像など児童ポルノの所持を禁止する「単純所持の禁止」を導入し、「自己の性的好奇心を満たす目的」の所持には刑事罰(1年以下の懲役または100万円以下の罰金)を科しています。また漫画やアニメ、CG(コンピュータ・グラフィック)などと性犯罪などとの関連性を「調査研究」するよう政府に求め、施行から3年後に「必要な措置」をとるとしています。
 これは、従来の自公案に、維新の会も乗ったもので、これまでの「単純所持」規制案となんら変わるところはありません。
 現在、インターネット上などで流布されている児童ポルノは、そのほとんどが現行法によって取り締まることが可能です。児童ポルノ法第7条では、「児童ポルノを提供し」、それを目的として「製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者」にたいして、「三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金」がかけられることになっています。これを厳格に運用するなら、ネット上に流れているほぼすべての児童ポルノを一掃することが可能となります。
 一方、児童ポルノ法で単純所持を一律に規制したり、漫画・アニメーションなどの創作物も規制対象に加えたりすることは、児童ポルノ問題の解決に役に立たないだけでなく、逆に、人権の侵害や表現の自由の萎縮につながりかねません。
 第一に、たとえ単純所持を法律で一律に規制したとしても、児童ポルノの流出の効果的な歯止めにならないことは、単純所持を禁止しているはずの欧米各国の実態からも明りょうです。よく、「主要8カ国のなかで児童ポルノの単純所持を規制していないのは、日本とロシアだけだ」と指摘されます。しかし、現にインターネット上に流出している児童ポルノ(児童虐待)の動画像は、単純所持を禁止している欧米諸国からのものが圧倒的に多数です。たとえば、イタリアに本拠をおく児童保護団体の「虹の電話」による調査(2010年1月発表)では、2009年に確認された児童ポルノのサイトは4万9393件とされ、そのうち日本は、0.1%の54件となっています。一方、上位5位はドイツ(1万9488件、39.5%)、オランダ(1万277件、20.8%)アメリカ(8411件、17.0%)、ロシア(7118件、14.4%)、キプロス(1688件、3.4%))となっており、この5カ国だけで全体の95%を占めます。このうち、上位3カ国はいずれも児童ポルノの単純所持が禁止されています。このことをとっても単純所持の禁止や規制が、児童ポルノ流出の歯止めにならないことは明らかです。
 第二に、ネット上に流出していないにもかかわらず、単純所持を規制し、それを処罰するという場合、どのようにして単純所持を証明・把握するのかという問題があります。このことは、「憶測」や「疑惑」の段階から取り締まりを可能にすることにつながりかねず、結果として、捜査当局の恣意的な捜査を招く危険があります。また、表現の自由や、家庭生活上の写真などと児童ポルノとの関係なども考慮しなければなりません。
 なお、本来あってはならないことですが、万一被害にあった子どもがいる場合、そのプライバシーを最大限に尊重しながら、その後、社会生活を安心して送り健やかに成長できるよう、万全の保証をする必要があります。
 日本漫画家協会や日本雑誌協会からは、自公維の「改正」案にたいして、きびしい反対の意見が上がっています。たとえば、漫画家協会の「児童ポルノ規制法案に向けての意見書」(2013年5月29日)は、「他国に類を見ない独自のマンガ文化を育んできた日本の貴重な文化的土壌が、危機的に変質させられる可能性が非常に高い今回の規制法案について、創作者の立場から見過ごせない問題がある」「今回の法案では、単純所持まで規制の対象としており、仮にマンガ・アニメなども規制の対象になると、諸外国のような文化的除外規定のない我が国では、多くの漫画家が新たに描き起こす、未来の作品全般に対する重大な悪影響はもちろん、過去作品の原稿までが新しい規制に抵触してしまいます」と重大な懸念を表明しています。
 また、日本雑誌協会の「『児童ポルノ禁止法』改正法案への反対声明」(2013年5月29日)も、「『児童ポルノ』の定義が曖昧なままでの「単純所持禁止」は不当な処罰を招く」としたうえで、マンガ・アニメにまで規制を及ぼそうとしていることについて、「児童保護の名を借りて不要な表現規制をかけ、読者から漫画を読む権利を奪うものといえる。そうした過剰規制は表現の萎縮を招き、漫画という日本の誇る表現形態の破壊につながりかねない」と批判しています。この声明には、日本出版書籍協会も名前を連ねています。
 このほかにも日本マンガ学会、日本アニメーター・演出協会、全国同人誌即売会連絡会などの関連団体から、いっせいに批判の声があがっています。
 安倍首相は、2013年2月28日の施政方針演説で、マンガやアニメなどを、世界に誇る文化として発信していこうと、次のように演説しました。
 「日本のコンテンツやファッション、文化・伝統の強みも、世界から注目されています。アニメなどのブームを一過性のものに終わらせることなく、世界の人たちを惹(ひ)きつける観光立国を推進することに加え、『クール・ジャパン』を世界に誇るビジネスにしていきましょう」
それぞれの国民や業界団体などがそれぞれの立場で開拓し蓄積し、根づかせてきた文化や芸術について、海外に売り込むために政府が音頭をとったり主導したりする点については、さまざまな意見や疑問があります。しかし、前述した諸団体の反対声明にあるように、自公維3党の児童ポルノ禁止法の「改正」案は、みずからの戦略に照らしても、日本発祥の世界に誇るアニメ・マンガ文化を振興するどころか、逆に水をさしたり冷水を浴びせたりする結果にしかならないことは明白です。

<生活の党>
Ⅲ−7.TPPには反対、国益にかなう経済連携は推進
(略)

<みどりの風>
3 TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)参加に反対します
(略)

<新党大地>
○TPP断固反対

 まず、案の定知財政策に関しては各党とも具体的に中身のあることをほとんど書いていない。一見自民党などはいろいろ書いているように見えるかも知れないが、知財計画の焼き直し程度でほとんど意味はない。ただ、公約という位置づけではないのかも知れないが、自民党が政策集に今までの隣接権の付与とは異なるニュアンスで出版権の見直しについて書いていることくらいは注意しておいても良いだろうか。(特に選挙と関係する形で出されているものではないが、自民党は知的財産戦略調査会の10の提言(pdf)要旨(pdf))というペーパーも4月に作っている。)

 しかし、公約上知財政策に関する具体的な中身がないにしても、何度も書いている通り、今後の日本の著作権政策がTPP交渉に引きずられるのは間違いなく、その推進は著作権保護強化に直結すると見て良いだろうと私は考えており、この点で自民、公明、民主、みんな、維新が基本的にTPP推進で、それ以外が反対と、賛成反対が明確に分かれているのは非常に分かりやすい。

 次に、表現規制問題関連では、自民党が検察・検察の体制やサイバーセキュリティの強化、「青少年健全育成基本法」の制定などに言及している点は要注意だろう。この点で今の自民党ではどこをどうやっても危険な規制強化案しか出して来ないだろうことは目に見えているのである。(やはり選挙と関係する形で出されているものではないが、自民党が何を考えているかについては、5月に出している、児童ポルノの単純所持規制の導入などかなり強力な規制強化案を含む世界一の安全を取り戻すために ~緊急に取り組むべき3つの課題(提言)(pdf)構成(pdf))というペーパーも参考になる。)

 また、何にも増して気をつけておきたいのは前回衆院選時と同じく自民党の政権公約が憲法改正を含んでいることである。自民党のゴミクズ以下の憲法改正案(自民党のHP参照)についてここで事細かに突っ込む気はないが、明らかに自民党はこの憲法改正で実質的に表現の自由などの基本的人権の制約・国民からの剥奪を狙っているのである。(毎日新聞の記事によると、多少見直す動きもあるようだが、検討する人間がそう変わるとも考えられず、自民党内でいくら検討したところで似たような非道い案しか出て来ようがないだろう。この問題に関心のある方は、「自民党憲法草案の条文解説」や「Afternoon Cafe」のブログ記事自民党改憲案「“超”口語訳」(1)(2)なども合わせてご覧になることをお勧めする。)また、時事通信の記事などによると、維新の会の改憲原案も自民党と同じく非道い内容のようであり、維新の会も自民と同じかそれ以上に危険であることは間違いない。

 ここで、社民党と共産党が公約レベルで児童ポルノ規制の強化について慎重な姿勢を示してくれているのは非常にありがたい。

 さらに、公約という訳ではないが、児童ポルノ規制に関しては、ITmediaの記事になっている通り、ニコニコ動画の党首討論会での各党党首の見解も非常に参考になる。この党首討論から単純所持規制を含む自公維の改正案(国会の議案本文情報経過情報)参照)に対する見解をまとめると以下のようになるだろう。(ニコニコニュースの全文書き起し記事も参照。)

  • 自民党・安倍総裁:単純所持禁止は国際動向からきっちり進めて行く流れになっている。アニメやCG等については表現の自由との関係で慎重にするということになっている。
  • 公明党・山口代表:改正は必要。日本は国際社会から厳しい批判にさらされている。表現の自由等については一定の配慮は必要だが、実害の大きさに目をつぶる訳にはいかない。
  • 民主党・海江田代表:最低限でも修正が必要。単純所持規制には安全装置をつけなければいけない。漫画やアニメにについては性的虐待の被害児童が存在しないことを考えなければいけない。若い漫画家やアニメの作画家達が萎縮をしてしまうことになるから、絶対、修正は必要。
  • みんなの党・渡辺代表:さらに検討が必要。3つ問題点がある。第一に漫画やアニメが規制されようとしていること。自主規制によって漫画・アニメの文化が廃れる恐れもあり、憲法21条に抵触する可能性もある。第二に単純所持禁止については検察・警察による恣意的な捜査・逮捕を可能にしてはいけない、第三に検索エンジン会社による運用が難しく、広範なブロッキングを招く。
  • 社民党・福島党首:改正案には反対。児童ポルノの定義が曖昧なために、自分の持っているものが児童ポルノとは思わなかったということもある。恣意的な捜索の可能性もある。アニメやCGなどの規制は表現の自由との関係で問題がある。
  • 共産党・志位委員長:児童ポルノ法で単純所持を一律に規制したり、アニメや漫画などの創作物も規制対象にするということは、児童ポルノ問題の解決に役に立たないばかりか、表現の自由あるいは、人権の侵害、これにも繋がって来るので反対。今、インターネット上に流布されている児童ポルノは、そのほとんどが現行法で取り締まることが可能。
  • 生活の党・小沢代表:改正案に反対。改正案は児童ポルノを理由に政府、官僚の規制を広範囲に強化することに繋がる恐れがある。表現の自由を阻害する可能性が大きく、世界的に評価されている漫画やアニメなど日本発のコンテンツを損なう恐れもあることから反対する。
  • みどりの風・谷岡代表:改正案は反対。日本のクールジャパンの原動力になっているサブカルチャーというものを破壊してしまう可能性がある。非存在青少年を対象に含めるようなことは全くあり得ない話。

 自民党はアニメについては慎重にする云々と言っているが法改正案から創作物規制もやりたくて仕方がないのは見え見えであり、今の主要メンバーを見る限り、今後もあらゆる点で有害かつ危険な規制強化に固執し続けることだろう。この党首討論会に維新の会は欠席したようだが、自公の法改正案に相乗りしていることからも分かるように維新の会は明らかに規制推進側に立っている。(この規制推進スタンスは、別の各党座談会(「現代 note」の書き起しブログ記事児童ポルノ法を改正して漫画・アニメを規制する1参照)で維新代表の山田宏衆院議員が述べていることからも確認できる。)また、民主党の児童ポルノ規制に関するスタンスについては、樽井良和候補がブログ記事で公開して下さっている民主党の考え方(案)(pdf)も参考になる。(まだ案の段階だが、非常に出来の良かった前回の民主党改正案(第254回参照)の考え方に大体沿った内容と言えるのではないかと思う。)

 ほとんど作るまでもないかも知れないが、上で抜き出したTPP交渉と児童ポルノ規制に関する各党のスタンスについて表を作ると以下のようになるだろう。

Kisei_table
 TPP交渉の推進が著作権規制の強化に直結すると見て、表現規制問題・文化政策に関しては児童ポルノ規制に関する見解がほぼ全てを物語っているに等しいと見て、私は今回も各党のTPP交渉と児童ポルノ規制に関するスタンスを参考に投票するつもりである。

(2)規制強化慎重・反対派元国会議員候補リスト
 前回衆院選時に作ったもの(番外その34番外その35参照)から大きく変わったということはないので、詳しくは元のエントリを見て頂ければと思うが、特に著作権・表現規制問題に関わり、今回参議院選挙に立候補することが予定されている慎重・反対派元議員候補のリストを以下に載せる。(前回リストと同じく特に規制強化に慎重な立場を表明している元議員候補の名前を字で示している。なお、前回衆院選以降に出された請願としては児童ポルノ規制法に関して慎重な取り扱いを求める請願が衆議院(請願情報参照)と参議院(請願要旨一覧参照)に1つずつあり、それぞれ西村眞悟衆院議員(無所属)と、森田高参院議員(無所属)、山田太郎参院議員(みんな)、松浦大悟参院議員(民主)が紹介議員となっている。)

○ダウンロード犯罪化・ACTA反対・慎重派元議員候補
森ゆうこ候補<生活・新潟県>(HPtwitterwiki):法改正に反対票を投じ、ダウンロード犯罪化に関する質問主意書を提出、ACTAに慎重な立場を表明、ACTA批准に反対票を投じた
はたともこ候補<生活・比例>(HPtwitterwiki):ダウンロード犯罪化に関する質問主意書を提出
三宅雪子候補<生活・比例>(HPtwitterwiki):ACTAに関して反対の立場を表明、衆議院本会議で反対
谷岡郁子候補<みどりの風・比例>(HPtwitterwiki):ACTAに慎重な立場を表明、ACTA批准に反対票を投じた
・亀井亜紀子候補<みどりの風・島根>(HPwiki):ACTA批准に反対票を投じた
・行田邦子候補<みどりの風→みんな・埼玉>(HPtwitterwiki):ACTA批准に反対票を投じた
・井上哲士候補<共産・比例>(HPtwitterwiki):法改正に反対票を投じた
・紙智子候補<共産・比例>(HPtwitterwiki):法改正に反対票を投じた
・山下芳生候補<共産・比例>(HPtwitterwiki):法改正に反対票を投じた
・又市征治候補<社民・比例>(HPwiki):法改正に反対票を投じた
・米長晴信候補<無所属→みんな・山梨>(HPtwitterwiki):ACTA批准に反対票を投じた
・糸数慶子候補<無所属・沖縄>(HPtwitterwiki):法改正に反対票を投じた
・世耕弘成候補<自民・和歌山>(HPtwitterwiki):ダウンロード犯罪化について慎重な意見を表明
・山本一太候補<自民・群馬>(HPtwitterwiki):ダウンロード犯罪化について慎重な意見を表明

○児童ポルノ規制強化慎重・反対派元議員候補
松浦大悟候補<民主・秋田>(HPtwitterwiki):請願の紹介議員
樽井良和候補<民主・比例>(HPtwitterwiki):児童ポルノ規制強化に関して慎重・反対の立場を表明
・谷岡郁子候補<みどりの風・比例>(HPtwitterwiki):平成22年3月16日の文教科学委員会で規制について慎重な意見を表明(議事録参照)
・佐藤正久議員<自民・比例>(HPtwitterwiki):請願の紹介議員
(請願については、慎重な取り扱いを求める請願参照)

 ネット選挙の解禁によって、また今回の選挙で何かが劇的に変わるということはないと思うが、それでも今回の参議院選挙も自らの意思で国政に票を投じることのできる貴重な機会であり、是非一人でも多くの人に選挙に行ってもらいたいと私も思っている。

(なお、今回からネット選挙が解禁されることになる訳だが、何でもできるようになったなどということは無論ないので、総務省の解説ページなどを良く読んで選挙期間中書き込みなどに十分に気をつけておくに越したことはないだろう。)

(2013年7月4日夜の追記:いくつか誤記を修正し、合わせて、児童ポルノ規制に関する自民のスタンスについて説明が少し足りないかと思ったので、「自民党はアニメについては慎重にする云々と言っているが法改正案から創作物規制もやりたくて仕方がないのは見え見えであり、今の主要メンバーを見る限り、今後もあらゆる点で有害かつ危険な規制強化に固執し続けることだろう。」という文章をつけ加えた。)

(2016年6月19日夜の追記:誤記を直した(「青」→削除)。)

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2012年12月 3日 (月)

番外その36:著作権・情報・表現規制問題に関する注目選挙区リスト(2012年衆院選版)

 各候補が議員として今まで何をして来たかは前々回前々々回も参照頂ければと思うが、著作権・情報・表現規制問題の観点から今回の衆議院選挙で私が特に注目している選挙区の立候補予定者リストをここに載せる。ただし、12月3日時点の情報を元に書いているので今後変動があるかも知れないことにご注意頂きたい。

 どうしてもマイナーな問題たらざるを得ない著作権・情報・表現規制問題ではわずかな数の議員の当落が今後の行方に大きく影響して来る。どのような観点から票を入れるにせよ、是非一人でも多くの人に選挙に行ってもらいたいと思う。

 なお、繰り返しになるが、政党としては、リストにあげるまでもなく規制強化を党として一貫して推進している公明党が一番危険であり、自民党は候補によって立場に違いがあるが党としてはほぼお話にならないレベルで規制強化に凝り固まっており、民主党は候補によって規制強化にかなり反対・慎重な立場を示すものの全体としては政権与党として官僚に流され、民主党の中でも規制強化に特に慎重な立場を示した多くの候補が日本未来の党に移っており、社民党と共産党がかなり明確に党として規制強化に慎重な立場を示しているということを念のため前置きとして書いておく。(自民党の危険性は、都条例問題の際にかなり強烈な強力効果論から規制強化を支持していた赤枝恒雄氏を東京ブロックの比例候補にあげていることにも見て取れる。)

(以下、注目選挙区リスト。各種情報規制に推進の立場を取る候補の名前を赤で、慎重な立場を取る候補の名前を青で示す。)

○宮城2区
斎藤やすのり候補<未来>(HPtwitterwiki):ACTAに反対
・福島かずえ候補<共産>(HPtwitter
・今野東候補<民主>(HPwiki
・秋葉賢也候補<自民>(HPtwitterwiki
・菊地文博候補<みんな>(HPtwitter
・中野正志候補<維新>(HPtwitterwiki

○秋田3区
京野公子候補<未来>(HPtwitterwiki):ACTAに反対
・さとう長右衛門候補<共産>
・三井マリ子候補<民主>(HPwiki
・御法川信英候補<自民>(HPwiki
・村岡としひで候補<維新>(HPtwitter

○茨城3区
小泉俊明候補<未来>(HPwiki):ACTAに反対
・小林きょうこ候補<共産>(twitter
・前田よしなり候補<維新>(HPtwitter
葉梨康弘候補<自民>(HPwiki):前回の児童ポルノ規制法改正案国会審議で最も危険な違憲発言を繰り返していた危険人物

○埼玉5区
枝野幸男候補<民主>(HPwiki):前回の児童ポルノ規制法改正案国会審議での立役者の一人
・大石ゆたか候補<共産>
・牧原秀樹候補<自民>(HPwiki

○千葉4区
三宅雪子候補<未来>(HPtwitterwiki):ACTAに反対
・さいとう和子候補<共産>(HPtwitter
野田佳彦候補<民主>(HPwiki):現首相
・藤田幹雄候補<自民>(HPwiki

○東京6区
・佐藤なおき候補<共産>(HPtwitter
・越智隆雄候補<自民>(HPtwitterwiki
小宮山洋子候補<民主>(HPwiki):前回の児童ポルノ規制法改正案国会審議で規制派であることを暴露
・落合貴之候補<みんな>(HPtwitter
・花輪ともふみ候補<維新>(HP

○東京11区
・橋本久美候補<未来>(HPtwitter
・須藤武美候補<共産>(HPtwitter
・太田順子候補<民主>(HP
・いのたかし候補<維新>
下村博文候補<自民>(HPwiki):自民党文部科学部会長、ダウンロード犯罪化修正案の提案者の一人

○神奈川13区
橘秀徳候補<民主>(HPtwitterwiki):ACTAに反対
・宮応かつゆき候補<共産>(HPtwitter
甘利明候補<自民>(HPwiki):出版隣接権導入勉強会参加メンバーの一人
・菅原直敏候補<みんな>(HPtwitter
・太田ゆうすけ候補<維新>(HP

○神奈川16区
・池田博英候補<共産>(HPtwitter
・後藤祐一候補<民主>(HPwiki
義家弘介候補<自民>(HPwiki):情報・表現規制問題では有名な規制派の一人、青少年健全育成基本法プロジェクトチーム座長

○石川1区
・熊野盛夫候補<未来>
・黒崎きよのり候補<共産>
・奥田建候補<民主>(HPwiki
・小間井俊輔候補<維新>(HPtwitter
馳浩候補<自民>(HPwiki):ダウンロード犯罪化修正案の提案者の一人

○三重2区
・中野たけし候補<共産> (HP
・島田佳和候補<自民>(HP
中川正春候補<民主>(HPwiki):出版隣接権導入勉強会の座長
・ちんどう直人候補<維新>(HPtwitter

○大阪15区
大谷啓候補<未来>(HPtwitterwiki):ACTAに反対
・ため仁史候補<共産>
・竹本直一候補<自民>(HPwiki
・うらの靖人候補<維新>(HPtwitter

○大阪17区
辻惠候補<未来>(HPtwitterwiki):民主党案の提案者の一人
・吉岡たかよし候補<共産>
・西哲史候補<民主>(HPtwitter
・岡下信子候補<自民>(HPwiki
・馬場伸幸候補<維新>(HP

○奈良2区
中村哲治候補<未来>(HPtwitterwiki):児童ポルノ法規制の強化に慎重
・中野あけみ候補<共産>
・百武威候補<民主>(HPtwitter
高市早苗候補<自民>(HPwiki):児童ポルノ法改正自公案の提出者の一人
・なみかわ健候補<維新>(HP

○岡山3区
・ふるまつ国昭候補<共産>
・西村啓聡候補<民主>(HP
あべ俊子候補<自民>(HPtwitterwiki):国会審議で単純所持規制を含む児童ポルノ規制法改正を求める
・平沼赳夫候補<維新>(HPwiki

○山口3区
・五十嵐ひとみ候補<共産>
・中屋大介候補<民主>(HPtwitterwiki
河村健夫候補<自民>(HPwiki):元文部科学大臣、ダウンロード犯罪化修正案の提案者の一人、出版隣接権導入勉強会参加メンバー

○鹿児島1区
川内博史候補<民主>(HPtwitterwiki):ダウンロード犯罪化に慎重
・山口ひろのぶ候補<共産>
・渡辺信一郎候補<未来>
・保岡興治候補<自民>(HPwiki
・山之内つよし候補<維新>(twitter

(2012年12月3日の追記:1カ所誤記を修正した。公認情報を見て追記を行った。)

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2012年12月 2日 (日)

第283回:主要政党の2012年衆院選マニフェスト(政権公約)案比較(知財政策・情報・表現規制問題関連)

 主要政党の衆議院マニフェスト(政権公約)案がほぼ出そろったので、ここで知財・情報関連に絞って比較をしておきたいと思う。(実際には公示日以降に配られるものが正式版となるが、大して変わることはないだろう。)

 一通り、

を読み比べたところで、案の定、知財政策に関してはどの党もほとんど記載はないに等しく、情報・表現規制問題に関して自民党が突出して危険であることを露骨に示し、公明党がやはり危険な児童ポルノの単純所持規制の導入を求める一方で、社民党と共産党が児童ポルノ規制の強化にかなり慎重な立場を表明している他は知財政策・情報・表現規制問題に関しては取り立てて見るべきところはあまりないという状況だが、以下、念のために関連部分の記載を取り上げて行く。

(1)知財関連

<民主党>
○国内外のイベント開催、クールジャパン番組の海外放送などにより、日本の映像、ファッション、伝統文化、食などの発信を高め、クールジャパン関連の市場規模を9.3兆円(2016年度)に拡大する。

<自民党>
30「国富」を生み出す知財戦略
 資源に乏しいわが国にとって「知的財産」はまさに、「国富」を生み出す一つの手段であり、確固たる知財戦略を構築する必要があります。巨額な費用と時間をかけて生み出された「財産」を保護し、それを利用してさらなる「国富」を生み出すことは持続発展可能な経済にとっては不可欠なことです。知財の取得・活用を国家戦略としてサポートするため、まずは、研究開発の成果物が迅速に知的財産として保護されるよう「審査の迅速化」を進めます。特に、別の国においても早期に審査が受けられる体制も併せて進めます。
 また、大学等の研究機関が専門的知識と経験を有する知財人材を十分に確保できる支援体制の整備に努めます。
 一方、わが国で確立された最先端の技術が知的財産として保護されることなく流出することは、国益を大きく損ねることになるため、技術流出を防止する制度をさらに強化していきます。

39世界へ向けた情報発信力の強化、デジタルコンテンツ市場の拡大
 「クール・ジャパン戦略」を推進し、日本のものづくり技術と世界に誇る日本のアニメを掛け合わせた他の追随を許さない真のJAPANオリジナルコンテンツの創造や東京国際映画祭のグリーンカーペットをアジアのステイタスとするための環境整備(大規模展示会場の建設等)、世界のコンテンツのメッカとして秋葉原を街ごとバジョンアップさせる等、観光資源としてだけでなく世界的イベントのホスト国となる機会を増やすための取り組みを進めます。文化・伝統(衣食住)などわが国の持つ魅力(ソフトパワー)を積極的に海外に発信します。特に、世界に広がりをみせる放送コンテンツの海外展開や電子書籍・電子雑誌の流通促進、電子看板(デジタルサイネージ)の推進などにより、デジタルコンテンツ市場の拡大を支援し、地域を含めたわが国社会経済の活力を増大させます。JAPANブランド委員会を設立し、国をあげて、日本の伝統工芸品を新しいかたちで世界へ向けて飛躍させるとともに、アニメ・マンガ・ゲームなどのコンテンツ作成だけではなく、「イベント創造」「営業方法」など、利益を生むトータルでのシステム構築を支援します。あわせて、文化・感性商品としての特性を有する日本の生活支援ロボットなどロボット製造技術の活用・育成に繋げていきます。
 また、海賊版・模造品対策を一層強化します。

91イノベーションの実現に向けた制度改革
 新たな産業や雇用を創出するため、企業だけでは実現できない革新的なイノベーションを産学連携で実現するとともに、イノベーションを妨げる各種規制を官邸=司令塔主導で抜本改革します。
 研究開発税制やエンジェル税制の対象拡充等の税制改革や、ベンチャー支援の充実等の制度改革、特許等の知的財産の迅速な保護及び円滑な利活用を促進するための知的財産制度の改革、イノベーションの隘路となっている規制や社会制度等の改革を強力に推進します。国際標準の獲得を目指す各国の動きが一層活発化していることから、特に、アジア諸国等との連携・協力の促進を念頭に置いて、官民協働による戦略的な国際標準化活動を抜本的に強化します。
 わが国が優れた先端技術を持つ基幹インフラについて、建設から運用、人材養成への寄与までを一体システムとしてとらえ、官民協働による海外輸出・展開活動を大幅に強化します。

<公明党>
○国内外で人気が高い日本のアニメやファッション、食など、グローバルにビジネス展開できる文化の産業化および海外展開を一層推進するために、海外でビジネス展開できる人材の育成・活用や、日本国内に利益を還元する仕組みを構築します。

○マンガ、ゲーム、アニメ、映画、デザイン・ファッションなど、価値を生産するコンテンツ(クリエイティプ)産業を日本経済の一翼を担う産業として位置付け、抜本的な支援強化に取り組みます。
 ・著作権取引支援システムの構築
 ・プロデュース人材の育成や事業化支援
 ・コンテンツ技術開発の促進
 ・ファイナンスや販路開拓等海外展開支援
 ・国際共同製作案件への支援、コンテンツ取引市場作り支援
 ・人材流出防止や海賊版防止

○ゲーム・ソフトウエアなどさまざまな知的資産によって、国外への情報発信を応援します。

○研究力・開発力・信用力の向上など中小企業の経営基盤の強化に資する知的財産の活用を促進するため、法整備や税制措置などのインフラ整備を戦略的に行い、創造・活用・保護など知的財産活用促進のための総合的支援を強化します。

○経営基盤の弱い事業者による知的財産の創造のため総合的な支援策を講じるとともに、技術およびビジネスモデル等における知的財産権の獲得と確保に向けた軽減措置に取り組みます。

○知的財産権の発掘・強化・拡大に向けた産学連携モデル事業の推進を図るとともに、共同研究の成果を迅速に事業化に結びつける仕組みを整備します。

<みんなの党>
○メディアコンテンツ、ファッション、食、観光等を輸出産業として育成するため、カテゴリーを横断した日本文化産業全体のブランドコンセプトを創出。重点地域市場における現地支援プラットフォームを設立(市場調査、現地パートナーの紹介・交渉、共同流通網の構築等シェアドサービス的機能を提供)、関連産業の再編と強いブランドポートフォリオの形成。これを可能とするファンド機能とマネジメントチームを組成する。

<社民党>
○日本が持つアニメ・漫画などのコンテンツ、商業デザイン、クリエーターの感性をいかした情報発信や海外展開など、中小零細企業が主導する「クールジャパン」事業を拡大し、雇用環境の整備も実施します。

<共産党>
 日本の芸術・文化の発展のうえで各ジャンルの専門家の役割はきわめて重要です。ところが、その専門家の権利や社会保障がないがしろにされています。こうした状態を改め、著作権者の権利を守ることや、専門家の低収入、社会保障の改善にとりくみます。
 著作権は、表現の自由を守りながら権利者を守る制度として文化の発展に役立ってきました。ところが、映画の著作物はすべて製作会社に権利が移転され、映画 監督やスタッフに権利がありません。実演家もいったん固定された映像作品への権利がありません。国際的には視聴覚実演に関する条約が作成されるなど、実演家の権利を認める流れや、映画監督の権利充実をはかろうという流れが生まれています。著作権法を改正し、映画監督やスタッフ、実演家の権利を確立します。
 一部の大企業は、私的録音録画補償金制度への協力義務を非難するだけでなく、実際に放棄してしまいました。こうした横暴を許さず、著作物を利用することで利益を得るメーカーに応分の負担を求め、作家・実演家の利益をまもります。

<新党改革>
○日本には閉塞感が渦巻いていますが、世界に向けて発信している産業には活気が満ち溢れています。その代表といえるのが、アニメとファッションです。1990年代後半から海外進出が急拡大しました。日本の文化(アニメ、ファッション、アートなど)を海外に積極的に発信し、その競争優位性を高めることで、ビジネスとしての文化戦略を実行していきます。

 これらの記載を読むと多少自民党や公明党が文章を長めに書いており多少力を入れているように見えなくもないが具体的な内容にかかわる言及は何もなく、どこの党も知財政策については何も書いていないに等しい。そのため、残念ながら選挙の結果がどうあれ、知財政策については今後も今と同じような状況が続くのではないかと私は考えている。特に今まで自公と文化庁がこぞって危険な規制強化を強力に推進して来たことを考えると、総選挙の結果次第で、またぞろ出版社への隣接権付与やダウンロード違法化・犯罪化の範囲の拡大、保護期間延長など各種の規制強化で日本の知財制度が大きく歪められる可能性が高まることになるのだろう。

(ここでついでに書いておくと、共産党の私的録音録画補償金問題に関する理解はどうにも頂けない。前回の著作権法改正の国会審議で共産党がダウンロード犯罪化に反対してくれたのは非常にありがたいのだが。)

(2)情報・表現規制関連

<自民党>
44サイバーセキュリティの対策強化
 頻発するサイバー犯罪から国民を守るため、さらに各省の連携を強化し、総合力を発揮できる体制を整備するとともに、官への投資と民間転用を呼び水に経済成長へ貢献します。
 特に、警察庁や防衛省、海上保安庁において、米国並みの動的防御システムやバックアップシステムを早急に構築します。また、政府機関の全ての情報機器や複合機を厳密なセキュリティ監視下におくための措置を早急に整備します。これらの施策と共に、最高度のセキュリティ技術を製品/サービス化し政府機関に納入するとともに、民間へ転用するための拠点を構築する事を呼び水として、わが国の高度情報セキュリティ産業を創出し、10万人規模の新規雇用を創出して経済成長へ貢献します。

183総合的な治安対策の強化
 平成20年に策定した「世界一安全な国をつくる8つの宣言」により、犯罪に強いまちづくりの推進、振り込め詐欺の撲滅、犯罪被害者の支援、生活の安全・安心を脅かす事案への対処、凶悪犯罪への対処、インターネット利用を含めたサイバー空間の安全確保、組織犯罪対策、銃器・薬物対策、客観的証拠の収集方法の整備、さらに死因究明体制の強化等を一層推進します。そして、国際的なテロなどに対処するために必要な資機材を整備し、情報収集・分析の為の体制を強化・拡充します。

188家族の絆を深め、家庭基盤を充実させ、全員参加型社会の実現へ
 社会の基礎単位である家族を大切にするという視点に立ち、家族の絆を深め、家庭基盤の充実を図ります。また、家庭や地域社会の機能を引き出し、老若男女が生きがいを持って働き続けられる社会整備を進めます。特に、家庭資産の形成がはかれるような税制の改正、三世代同居・近居の優遇、質の高い持家・借家制度等を進めます。
 地域、職場、家庭などあらゆる場面で、年齢や性別、障害の有無に関わらず活躍できる社会環境づくりを推進します。
 そして、配偶者からの暴力の根絶に向けた取り組みを図るため、DV被害者に対する相談体制の強化や、婦人相談所等での夜間・土日対応の強化について推進します。
 また、青少年の健全な成長に資する「青少年健全育成基本法案」の法整備など総合的な施策を推進します。

<公明党>
○子どもの福祉の観点から、児童ポルノ禁止法を改正し、児童ポルノの所持等を禁止するとともに、自己の性的好奇心を満たす目的での児童ポルノの所持等を処罰する罰則を新設します。

○青少年が安全に安心してインターネットを利用できるようにするため、全国で青少年のリテラシー(情報の理解力・発信力)を向上させる活動やインターネットが青少年に与える影響の調査を踏まえた的確な対策、違法・有害情報の検出等に資する技術開発への積極的な支援を行います。

<社民党>
○児童ポルノは子どもの性的虐待の記録です。被害者は、インターネット等による膨大広範な流布等に対する不安と恐怖に一生苦しめられます。児童ポルノの深刻さを国民に広く知らせるとともに、子どもの権利保護の観点から、ブロッキング(撮影された画像が人目に触れないようにする)の導入に必要な支援を行います。
○先進諸国は児童ポルノに対して厳しい規制を行っています。日本においても、子どもの人権を守る観点から子ども買春の根絶と児童ポルノの規制強化に向け、「児童買春・児童ポルノ禁止法」の改正に取り組みます。なお、この際、表現の自由を侵したり、表現者に過度の萎縮をもたらす強権的なものとならないように留意します。

<共産党>
児童ポルノ禁止法改定問題について……子どもを性的対象とする児童ポルノは、子どもにたいする最悪の虐待行為であり、その非人間的な行為を日本共産党は絶対に容認することはできません。1人の被害者も出さない社会をつくりだすことは、大人社会の重大な責任です。
 同時に、児童ポルノそのものの作成・流通・販売をきびしく禁止し、取り締まることと、「単純所持」を法的に禁止することは厳密に区別する必要があると考えます。
 現在、インターネット上などで流布されている児童ポルノは、そのほとんどが現行法によって取り締まることが可能です。児童ポルノ法第7条では、「児童ポルノを提供し」、それを目的として「製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者」にたいして、「三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金」がかけられることになっています。これを厳格に運用するなら、ネット上に流れているほぼすべての児童ポルノを一掃することが可能となります。
 一方、児童ポルノ法で単純所持を一律に規制したり、漫画・アニメーションなどの創作物も規制対象に加えたりすることは、児童ポルノ問題の解決に役に立たないだけでなく、逆に、人権の侵害や表現の自由の萎縮につながりかねません。
 第1に、たとえ単純所持を法律で一律に規制したとしても、児童ポルノの流出の効果的な歯止めにならないことは、単純所持を禁止しているはずの欧米各国の実態からも明りょうです。よく、「主要8カ国のなかで児童ポルノの単純所持を規制していないのは、日本とロシアだけだ」と指摘されます。しかし、現にインターネット上に流出している児童ポルノ(児童虐待)の動画像は、単純所持を禁止している欧米諸国からのものが圧倒的に多数です。たとえば、イタリアに本拠をおく児童保護団体の「虹の電話」による調査(2010年1月発表)では、2009年に確認された児童ポルノのサイトは4万9393件とされ、そのうち日本は、0.1%の54件となっています。一方、上位5位はドイツ(1万9488件、39.5%)、オランダ(1万277件、20.8%)アメリカ(8411件、17.0%)、ロシア(7118件、14.4%)、キプロス(1688件、3.4%))となっており、この5カ国だけで全体の95%を占めます。このうち、上位3カ国はいずれも児童ポルノの単純所持が禁止されています。このことをとっても単純所持の禁止や規制が、児童ポルノ流出の歯止めにならないことは明らかです。
 第2に、ネット上に流出していないにもかかわらず、単純所持を規制し、それを処罰するという場合、どのようにして単純所持を証明・把握するのかという問題があります。このことは、「憶測」や「疑惑」の段階から取り締まりを可能にすることにつながりかねず、結果として、捜査当局の恣意的な捜査を招く危険があります。また、表現の自由や、家庭生活上の写真などと児童ポルノとの関係なども考慮しなければなりません。
 なお、本来あってはならないことですが、万一被害にあった子どもがいる場合、そのプライバシーを最大限に尊重しながら、その後、社会生活を安心して送り健やかに成長できるよう、万全の保証をする必要があります。

 情報・表現規制問題に関しては、具体的にどうするという記載こそないものの、今まで様々な危険な規制強化を推進してきた自民党が、サイバーセキュリティの強化や総合的な治安対策の強化、青少年健全育成基本法案の推進などをあげている点は要注意だろう。前回の総選挙の時と同様、公明党が児童ポルノの単純所持規制の導入をあげている点も要注意であり、インターネットが青少年に与える影響の調査を踏まえて対策をすると書いていることも気をつけておかなければならない。また、社民党がブロッキングの導入を支援するとしている点は今ひとつ頂けないが、対照的に、社民党と共産党が児童ポルノ規制の強化について慎重な姿勢を示してくれているのは大変ありがたい。

 ここで、最も注意すべきは自民党の政権公約が憲法改正を含んでいることだろう。自民党のゴミクズ以下の憲法改正案(自民党のHP参照)についてここで事細かに突っ込む気はないが、この改正案は表現の自由に関する第21条第1項「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、保障する。」に「前項の規定にかかわらず、公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社をすることは、認められない。」という第2項を追加しようとしているなど、明らかに自民党はこの憲法改正で実質的に国民からの基本的人権の剥奪を狙っているのである。少しでも法律を勉強したことのある人間ならこのような条文の変更がどれほど危険なことかすぐに分かると思うが、他の条項に関しても軒並み非道いものであり、総選挙の結果次第でこのような改正案がそれなりに現実感をもって国会で議論されることになるかと思うと私は心底慄然たるものを感じる。

 なお、日本維新の会も自主憲法の制定について触れており、具体的な内容の言及こそないものの、あの石原慎太郎元都知事が代表をやっている時点でどのようなものが出て来るかは推して知るべきだろう。維新も憲法改正については自民と同じかそれ以上に危険である。

(3)TPP関連
 知財政策・情報・表現規制問題に関して取り立てて見るべきところはあまりないのは残念だが、さすがにTPP参加問題に関してはマニフェストの記載でも以下の通り賛成反対が明確に分かれているのは分かりやすい。

<民主党>:政府が判断(→参加推進)
<自民党>:政府が聖域なき関税撤廃を前提にする限り交渉参加に反対(→参加推進)
<公明党>:国会に調査会又は特別委員会を設置し審議できる環境をつくるべき(→参加推進)
<みんなの党>:参加推進
<日本維新の会>:参加推進
<社民党>:参加反対
<共産党>:参加反対
<日本未来の党>:参加反対
<みどりの風>:参加反対
<国民新党>:交渉参加を慎重に検討
<新党改革>:マニフェストに記載なし(党首討論会で参加反対と表明)
<新党日本>:ASEAN+6で自由貿易協定を結び、その後アメリカと協調
<新党大地>:参加反対

 民自公は態度をはっきり示していないようにも見えるが、支持団体の問題もあるので推進と言い切れないだけで、今までして来たことを考えると、今の民自公はどこでも政権与党になったところで即座に推進側に振れるだろう。それぞれの党の方針を考えれば当たり前ではあるが、加えてみんなの党と日本の維新の会が明確に参加推進で、その他は全て反対・慎重という極めて分かりやすい構図となっている。

 今回も著作権問題が選挙の争点になっていないのは個人的には非常に残念なのだが、前も書いた通り、著作権問題に関してはTPPに参加すればそのままアメリカに引っ掻き回されることは必至なので、TPPへの賛成が著作権規制の強化に直結すると見てTPPに関する賛否から判断して投票すれば大きく外れることはないだろうと私は考えており、この観点から見る限り民主党・自民党・公明党・みんなの党・日本維新の会は完全に論外であり、個人的には投票先として他の政党しか選択肢はないと考えている。

(2012年12月3日の追記:公明党がより詳細な政策集を出したので追記を行い、また、共産党の補償金問題に関する記載を見逃していたのでこれも追記した。)

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2012年11月22日 (木)

番外その35:前回総選挙以来の情報・表現規制法改正関係国会議員リスト

 前回書いた著作権法改正関係に続いて、ここで情報・表現規制法関係国会議員リストも作っておく。

(1)児童ポルノ規制法改正関係
 前回総選挙前にぎりぎりのところで可決を免れた児童ポルノ規制法改正案についてはこの3年来どうにか止まっていたが、自民公明両党のインターネット規制・情報規制の強化に関する異常なまでの執念を見ても、今回の総選挙後に自公が可決するべく真っ先に持ち出す法案の中に危険な単純所持規制を含む児童ポルノ規制法改正案が入って来るのは確実だろうと私は踏んでいる。この問題を追いかけている人間にとってはおなじみの名前ばかりだとは思うが、表に出ている情報から分かる限りで推進派・慎重派に分類して関係議員のリストを作ると以下のようになる。(この問題に関しては、危険極まりない単純所持規制を含む自公案番外その14参照)に比べ、今の民主党案第254回参照)は遥かに良くできている。)

(以下、特に規制強化を強く主張している議員の名前をで、特に慎重な立場を表明している議員の名前をで示す。全てのリストで字の色の意味は同じである。)

○衆議院 児童ポルノ規制強化推進派議員
高市早苗議員<自民・比例近畿>(HPwiki):自公案の提出者の一人、請願の紹介議員
・稲田朋美議員<自民・福井1区>(HPwiki):請願の紹介議員
・下村博文議員<自民・東京11区>(HPwiki):請願の紹介議員
・竹下亘議員<自民・島根2区>(HPwiki):請願の紹介議員
・西村康稔議員<自民・兵庫9区>(HPtwitterwiki):請願の紹介議員
・山本拓議員<自民・福井2区>(HPwiki):請願の紹介議員
あべ俊子議員<自民・比例中国>(HPtwitterwiki):平成23年10月25日及び平成24年6月19日の青少年特別委員会で単純所持規制を含む児童ポルノ規制法改正を求める質疑(議事録参照)
富田茂之議員<公明・比例南関東>(HPwiki):自公案の提出者の一人
・緒方林太郎議員<民主・福岡9区>(HPwiki):平成24年6月7日憲法審査会で「精神的自由について厳しく判断するというのは、それは原則としてそうなんだと思いますけれども、表現の自由の敵に対してまで表現の自由を認める必要は全くないわけでありまして、自由の敵に対してまで自由を認める必要は全くないというふうに思います。反社会勢力に対する表現の自由をどれだけ認めるか、もっと言うと、児童ポルノとかああいったものについてどれだけ自由を認めるのかというと、これは精神的自由であるからできるだけ自由に認められるべきであるという考え方については、これは私は間違っているというふうに思います。」と発言(議事録参照)
(請願については、早期法改正を求める請願参照)

○衆議院 児童ポルノ規制強化慎重派議員
辻惠議員<民主→未来・大阪17区>(HPtwitterwiki):民主党案の提案者の一人
枝野幸男議員<民主・埼玉5区>(HPwiki):前回総選挙前の法案審議での立役者の一人(経産大臣となって以降は児童ポルノ規制法どころではなくなっている気がするが)
・渡辺義彦議員<きづな→生活→未来・比例近畿>(HPwiki):請願の紹介議員
・城内実議員<自民・静岡7区>(HPwiki):請願の紹介議員
(請願については、慎重な取り扱いを求める請願参照)

○参議院 児童ポルノ規制強化推進派議員
・山谷えり子議員<自民・比例代表>(HPwiki):請願の紹介議員
・上野通子議員<自民・栃木>(HPwiki):請願の紹介議員
・中川雅治議員<自民・東京>(HPtwitterwiki):請願の紹介議員
・青木一彦議員<自民・島根>(HPwiki):請願の紹介議員
(請願については、早期法改正を求める請願参照)

○参議院 児童ポルノ規制強化慎重派議員
松浦大悟議員<民主・秋田>(HPtwitterwiki):請願の紹介議員
中村哲治議員<民主→生活→未来・奈良>(HPtwitterwiki):児童ポルノ法改正について慎重な立場を表明
・谷岡郁子議員<みどりの風・愛知>(HPtwitterwiki):平成22年3月16日の文教科学委員会で規制について慎重な意見を表明(議事録参照)
・森田高議員<国民・富山>(HPwiki):請願の紹介議員
・佐藤正久議員<自民・比例代表>(HPtwitterwiki):請願の紹介議員
(請願については、慎重な取り扱いを求める請願参照)

(2)青少年健全育成基本法案関係
 このブログでは取り上げて来なかった話だが、自民党を中心に青少年健全育成基本法を制定しようという動きは相変わらずくすぶっている。中身は以前の青少年有害社会環境対策基本法案(wiki参照)の焼き直しになるのではないかと思うが、自民党が検討しているというだけでおよそ相当規制寄りというかほとんど青少年保護を言い訳に情報・表現を規制することしか考えていないような強烈なものが出て来るだろうことは容易く想像がつく。以下にリストを載せるが、当然のごとく児童ポルノ問題と多く重なっていることが分かるだろう。(青少年健全育成基本法の制定は自民党の政権公約にも書かれている。)

○衆議院 青少年健全育成基本法推進派議員
・高市早苗議員<自民・比例近畿>(HPwiki)請願の紹介議員
・山本拓議員<自民・福井2区>(HPwiki)請願の紹介議員
・下村博文議員<自民・東京11区>(HPwiki):請願の紹介議員
・小池百合子議員<自民・比例東京>(HPtwitterwiki):請願の紹介議員
・細田博之議員<自民・島根1区>(HPtwitterwiki):請願の紹介議員
・小泉龍司議員<自民・埼玉11区>(HPwiki):請願の紹介議員
(請願については、制定に関する請願参照)

○参議院 青少年健全育成基本法推進派議員
上野通子議員<自民・栃木>(HPwiki):請願の紹介議員、平成22年10月28日法務委員会で推進を求める質疑(議事録参照)
・中川雅治議員<自民・東京>(HPtwitterwiki):請願の紹介議員
・島尻安伊子議員<自民・沖縄>(HPwiki):請願の紹介議員
・山崎正昭議員<自民・福井>(HPwiki):請願の紹介議員
・鴻池祥肇議員<自民・兵庫>(HPwiki):請願の紹介議員
・大江康弘議員<自民・比例代表>(HPwiki):請願の紹介議員
・世耕弘成議員<自民・和歌山>(HPtwitterwiki):請願の紹介議員
・山本一太議員<自民・群馬>(HPtwitterwiki):請願の紹介議員
(請願については、制定に関する請願参照)

(3)ウィルス罪関係
 情報規制関係ということでは、去年可決されたウイルス作成罪創設を含むサイバー刑法(正式名称は「情報処理の高度化等に対処するための刑法等の一部を改正する法律」)の問題も大きい。このサイバー刑法は、衆議院では平成23年5月25日、5月27日及び5月31日の法務委員会で審議及び可決、5月31日に本会議で可決され、参議院では6月9日、6月14日及び16日の法務委員会で審議及び可決、6月17日に本会議で可決され成立したものである。附帯決議こそついたものの結局条文は何も変わらずやはり曖昧なところが残されたまま可決されたが(議事録参照。法案そのものの問題点については番外その28及び番外その33参照)、このサイバー刑法の問題でも、民主党の一部の議員が懸念を示していたこと、社民党と共産党が明確に反対の姿勢を示したことは覚えておくべきだろう。以下にリストを載せるが、この問題もそもそもは10年近く前に法務省が作成し当時の内閣から提出した法改正案に端を発しており、そのため自公は党としてほぼ推進派と考えられるということを注意して頂きたい。

○衆議院 サイバー刑法推進派議員
平沢勝栄議員<自民・東京17区>(HPwiki):国会質疑でサイバー刑法を超えて共謀罪の創設を求める
稲田朋美議員<自民・福井1区>(HPwiki):国会質疑でサイバー刑法を超えて共謀罪の創設を求める
・柴山昌彦議員<自民・比例北関東>(HPtwitterwiki):国会質疑でサイバー刑法を超えて共謀罪の創設を求める

○衆議院 サイバー刑法慎重派議員
・辻惠議員<民主→未来・大阪17区>(HPtwitterwiki):国会質疑で法改正について慎重な取り扱いを求める
・橘秀徳議員<民主・神奈川13区>(HPtwitterwiki):国会質疑で法改正について慎重な取り扱いを求める
・城内実議員<自民・静岡7区>(HPwiki):国会質疑で法改正について慎重な取り扱いを求める

○参議院 サイバー刑法推進派議員
・江田五月<民主・岡山>:法改正案審議時の法務大臣、後にほぼ取り消すがバグがウィルス関連罪の対象となると発言して物議を醸した

○参議院 サイバー刑法反対派議員
井上哲士議員<共産・比例代表>(HPwiki):法改正について明確に反対の意見を表明、法改正に反対票を投じた
・市田忠義議員<共産・比例代表>(HPwiki):法改正に反対票を投じた
・紙智子議員<共産・比例代表>(HPwiki):法改正に反対票を投じた
・田村智子議員<共産・比例代表>(HPwiki):法改正に反対票を投じた
・大門実紀史議員<共産・比例代表>(HPwiki):法改正に反対票を投じた
・山下芳生議員<共産・比例代表>(HPwiki):法改正に反対票を投じた
・福島みずほ議員<社民・比例代表>(HPwiki):法改正に反対票を投じた
・又市征治議員<社民・比例代表>(HPwiki):法改正に反対票を投じた
・山内徳信議員<社民・比例代表>(HPwiki):法改正に反対票を投じた
・吉田忠智議員<社民・比例代表>(HPwiki):法改正に反対票を投じた
・糸数慶子議員<無所属・沖縄>(HPwiki):法改正に反対票を投じた
議決結果参照)

(4)東京都青少年条例問題関係
 平成23年7月の完全施行以来、新規定に基づく有害指定をしないという方針を東京都の担当部局が取っているため表向き小康状態を保っているようにも見えるが、東京都青少年条例(正式名称は「東京都青少年の健全な育成に関する条例」)問題も何も片づいていない。長年警察官僚ポストだった今の東京都青少年・治安維持本部・青少年課ラインから警察官僚が外れているためかも知れないが(これも一時的なものかも知れない)、問題だらけの条文はそのまま残されているのであり、今後もそれなりに謙抑的に運用される保証は何もない。同日総選挙になってしまったために注目度が一つ落ちる状態になっているが、この問題で都知事選ほど重要な選挙もない。知っている人には言わずもがなの話だろうが、合わせてここに主要立候補予定者のリストを載せておく。

○都知事選 情報・表現規制強化推進派候補
猪瀬直樹候補HPtwitterwiki):石原都知事と警察官僚部局の間に立つ優秀な副知事として仕事をそつなくこなしただけなのかも知れないが、都条例問題を追いかけていた人なら、テレビの前でとある漫画を手にこんなものがと言ったその姿を忘れることはできないだろう。それで公約にコンテンツ産業を支援しますとぬけぬけと書いているのだから噴飯ものである。石原慎太郎氏ほど警察部局の政策に思い入れがあるとは思えないが、基本的にこの問題では石原都政をそのまま踏襲すると見て間違いないだろう。
松沢成文候補HPwiki):wikiにも書かれている通り、かなり強烈なゲーム規制強化論者(ガジェット通信の記事も参照)

○都知事選 情報・表現規制強化慎重派候補
宇都宮健児候補HPtwitterwiki):都条例に対して反対声明を出した時の日弁連会長(会長声明参照)、都条例の見直しを明言(週刊金曜日11月23日号のインタビュー記事、週刊金曜日のツイート参照)、HPの政策でもマンガなどの表現規制の見直しに言及(別ページに掲載されている政策集完全版(pdf)も参照)

 また、青少年条例が都議会で一時否決されたことからも分かるように、同時に行われる都議会議員補欠選挙も重要なものであることに変わりはない。

 全体的な話をすれば、やはり、規制強化を党として一貫して推進している公明党が一番危険で、自民党も最近の動きを見る限りほぼお話にならないレベルで規制強化に凝り固まっており、民主党は議員によって規制強化にかなり反対・慎重な立場を示し、社民党と共産党がかなり明確に党として慎重な立場を示しているということになるだろう。(それにしても、ストーカー規制法の改正(産経のネット記事参照)や遠隔操作ウィルス対策に関する提言(自民党のHP参照)など自民党が最近次々とネット規制強化政策を打ち出している背景には警察官僚の暗躍がある気がしてならない。)

 情報・表現規制問題は本当は民主主義の根幹に関わる極めて重要な問題なのだが、その性質上どうしてもマイナーな話たらざるを得ず、この問題ではわずかな数の議員の当落が今後の行方に大きく影響して来る。どのような観点から票を入れるにせよ、是非一人でも多くの人に選挙に行ってもらいたいと思う。

(2012年11月23日の追記:いくつか誤記を修正し、リンクを追加した。)

(2012年11月24日夜の追記:週刊金曜日のインタビュー記事から宇都宮健児氏に関するコメントに追記した。)

(2012年11月28日夜の追記:国民の生活が第一が日本未来の党へ合流するとのことなので、リスト中に矢印で追記した。また、宇都宮健児氏のHPに政策が掲載されたのでリンクとコメントを追記した。)

(2012年12月1日夜の追記:辻恵氏が民主党を離党して日本未来の党へ参加することを決めたとのことなので、矢印で追記した。)

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2011年7月17日 (日)

第253回:カリフォルニア州の暴力ゲーム販売規制法を違憲無効と判断したアメリカ最高裁の判決・インターネットへのアクセスを基本的権利とする欧州安全保障協力機構の報告書

 7月1日に改正都条例(東京都青少年健全育成条例)が全面的に施行され、参議院を6月17日に通過して成立したいわゆるサイバー刑法(コンピュータ監視法)が7月14日に施行され(法務省HP参照)、さらに児童ポルノ法の改正を巡っても規制強化推進の動きがまた強まり、8月12日〆切で京都府から独自の児童ポルノ規制条例案のパブコメがかかるなど(京都府の意見募集ページ参照)、どうにも国内に関してはロクでもない話ばかりだが、世界的に見れば、そのような無茶な規制強化の流れに対して表現・情報の自由の原則から否を唱える動きも強まってきているのもまた確かである。今回は、表現・情報の自由を巡る世界の動きの中から、2つばかり特に重要と思うものを紹介しておきたいと思う。

(1)カリフォルニア州の暴力ゲーム販売規制法を違憲無効と判断したアメリカ最高裁の判決
 アメリカで、この6月27日に、ずっとくすぶり続けていた暴力ゲーム規制問題について規制強化を非とする最高裁判決が出された。そのうちどこかできちんとした形で翻訳・紹介されるのではないかとも思っているが、まずは、この画期的な判決についてざっとその概要を紹介したい。

 このアメリカ最高裁判決(pdf)の主判決本文の第1ページから、問題となったカリフォルニア州法の概要部分を訳出すると、以下のようになる。

California Assembly Bill 1179 (2005), Cal. Civ. Code Ann. §§1746-1746.5 (West 2009) (Act), prohibits the sale or rental of "violent video games" to minors, and requires their packaging to be labeled "18." The Act covers games "in which the range of options available to a player includes killing, maiming, dismembering, or sexually assaulting an image of a human being, if those acts are depicted" in a manner that "[a] reasonable person, considering the game as a whole, would find appeals to a deviant or morbid interest of minors," that is "patently offensive to prevailing standards in the community as to what is suitable for minors," and that "causes the game, as a whole, to lack serious literary, artistic, political, or scientific value for minors." §1746(d)(1)(A). Violation of the Act is punishable by a civil fine of up to $1,000. §1746.3.

 2005年のカリフォルニア州議会第1179号法案の第1746-1746.5条は、「暴力ゲーム」の未成年への販売又はレンタルを禁止し、パッケージに「18禁」ラベルを貼るように求めている。この州法は、「合理的な者であれば、全体として未成年の異常又は病的な関心を掻き立てるだろうと考え、」「未成年に適したものに関する社会の支配的な基準に明らかに反し、」「そのことにより、全体として、未成年に対する、真摯な文学的、芸術的、政治的又は科学的な価値を欠く、」やり方で、「描かれる行為として、プレイヤーに入手され得る表現に、人間のイメージの殺害、不具化、四肢切断、性的攻撃が含まれる、」ゲームをカバーしている。(第1746条(d)(1)(A)。)州法違反には、1000ドルまでの過料が科され得る。(第1746.3条。)

 まるで改正都条例を彷彿とさせる内容だが、要するに、このカリフォルニアの暴力ゲーム規制州法は、例によって強力効果論に基づいて表現物の青少年への販売を規制するものであり、業界にとって致命傷となりかねないこれほど曖昧な条文について、アメリカのゲーム業界がカリフォルニア州を相手取って最高裁まで延々争ったというのが事の経緯である。

 判決自体については最初の概要部分に良くまとめられているので、その部分を以下に訳出する。

BROWN, GOVERNOR OF CALIFORNIA, ET AL. v. ENTERTAINMENT MERCHANTS ASSOCIATION ET AL.
CERTIORARI TO THE UNITED STATES COURT OF APPEALS FOR THE NINTH CIRCUIT
No. 08.1448. Argued November 2, 2010. Decided June 27, 2011

Respondents, representing the video-game and software industries, filed a preenforcement challenge to a California law that restricts the sale or rental of violent video games to minors. The Federal District Court concluded that the Act violated the First Amendment and permanently enjoined its enforcement. The Ninth Circuit affirmed.

Held: The Act does not comport with the First Amendment. Pp. 2-18.
(a) Video games qualify for First Amendment protection. Like protected books, plays, and movies, they communicate ideas through familiar literary devices and features distinctive to the medium. And "the basic principles of freedom of speech... do not vary" with a new and different communication medium. Joseph Burstyn, Inc. v. Wilson, 343 U. S. 495, 503. The most basic principle - that government lacks the power to restrict expression because of its message, ideas, subject matter, or content, Ashcroft v. American Civil Liberties Union, 535 U. S. 564, 573 - is subject to a few limited exceptions for historically unprotected speech, such as obscenity, incitement, and fighting words. But a legislature cannot create new categories of unprotected speech simply by weighing the value of a particular category against its social costs and then punishing it if it fails the test. See United States v. Stevens, 559 U. S. ___, ___. Unlike the New York law upheld in Ginsberg v. New York, 390 U. S. 629, California's Act does not adjust the boundaries of an existing category of unprotected speech to ensure that a definition designed for adults is not uncritically applied to children. Instead, the State wishes to create a wholly new category of content-based regulation that is permissible only for speech directed at children. That is unprecedented and mistaken. This country has no tradition of specially restricting children's access to depictions of violence. And California's claim that "interactive" video games present special problems, in that the player participates in the violent action on screen and determines its outcome, is unpersuasive. Pp. 2-11.

(b) Because the Act imposes a restriction on the content of protected speech, it is invalid unless California can demonstrate that it passes strict scrutiny, i.e., it is justified by a compelling government interest and is narrowly drawn to serve that interest. R. A. V. v. St. Paul, 505 U. S. 377, 395. California cannot meet that standard. Psychological studies purporting to show a connection between exposure to violent video games and harmful effects on children do not prove that such exposure causes minors to act aggressively. Any demonstrated effects are both small and indistinguishable from effects produced by other media. Since California has declined to restrict those other media, e.g., Saturday morning cartoons, its video-game regulation is wildly underinclusive, raising serious doubts about whether the State is pursuing the interest it invokes or is instead disfavoring a particular speaker or viewpoint. California also cannot show that the Act's restrictions meet the alleged substantial need of parents who wish to restrict their children's access to violent videos. The video-game industry's voluntary rating system already accomplishes that to a large extent. Moreover, as a means of assisting parents the Act is greatly overinclusive, since not all of the children who are prohibited from purchasing violent video games have parents who disapprove of their doing so. The Act cannot satisfy strict scrutiny. Pp. 11-18.

ブラウンカリフォルニア州知事他 対 エンターテイメント小売協会他
第9巡回控訴裁判所に対する裁量上訴
第08.1448号。2010年11月2日弁論。2011年6月27日判決

被上訴人らは、暴力ゲームの未成年への犯罪又はレンタルを規制するカリフォルニア州法について施行前に提訴。連邦地裁は、この州法は表現の自由を規定する修正第1条に違反すると判断、その永久執行停止を命令。第9巡回控訴裁もその判断を是認。

判断:この州法は、表現の自由を規定するアメリカ合衆国憲法修正第1条に合致しない。
(a)ビデオゲームは、修正第1条の保護を受ける。保護を受ける本、実演、映画などと同様、ビデオゲームは、良く知られた文字デバイスとメディア固有の手段を通じて考えを伝えるものである。そして、「言論、表現の自由の原則が...」新たな、異なるコミュニケーションメディアだからといって「変わることはない。」(ジョセフ・バーシュタイン社対ウィルソン事件判決参照。)この最も基本的な原則-政府は、そのメッセージ、考え、主題、内容を理由として表現を規制する権限を持ち得ないというもの(アッシュクロフト対アメリカ市民自由連合判決参照)-には、猥褻物、煽動又は攻撃言論のような歴史的に保護されない表現とされる極わずかな限定的例外しか認められていない。そして、立法者は、単に、その社会的コストを無視して特定のカテゴリーの価値を量り、そのテストに落ちたら罰するとして、保護されない表現の新たなカテゴリーを作ることはできない。(アメリカ合衆国対スティーブンス事件判決参照。)ギンツバーグ対ニューヨーク事件判決で認められたニューヨーク州法とは異なり、このカリフォルニア州法は、成人のために作られた規定が子供にまで無批判に適用されないことを保証するべく、既存の保護されない表現カテゴリーの境界を調整するということをしていない。その代わりに、カリフォルニア州は、子供に向けられた表現のみに認められるとする、完全に新たな内容に基づく規制を作ろうとしている。これは前代未聞であり、間違っている。アメリカに、暴力描写に対する子供のアクセスを特別に制限する伝統はない。そして、プレイヤーがスクリーンにおいて暴力行為に参加し、その結果を決める、「インタラクティブな」ビデオゲームが特別な問題を提起しているという、カリフォルニア州の主張には説得力がない。

(b)この州法は保護を受ける表現の内容を規制するものであるから、それが厳格な違憲審査をパスしていることを、つまり、それがやむにやまれぬ国家利益によって正当化され、かつ、その利益に適合するように狭く限定されているということをカリフォルニア州が示すことができない限り、無効である。(R.A.V.対セント・ポール事件判決参照。)カリフォルニア州はこの基準を満たしていない。暴力ゲームに対する接触と子供に対する有害な影響の間のつながりを示すことを目的とした心理学的調査は、このような接触が未成年に攻撃的な行動を取らせることを証明していない。示されているどのような影響も、他のメディアによってもたらされる影響と区別がつかず、同じく小さなものである。カリフォルニア州が、例えば、アニメ番組のような他のメディアに対する規制をしていないことを考えても、そのビデオゲーム規制は、到底受け入れ難いものであり、カリフォルニア州は、規制がもたらす利益を追求しているのではなく、特定の関係者又は観点をわざと冷遇しようとしているだけなのではないかという深い疑念すら起こる。カリフォルニア州はまた、この州法が、自身の子供の暴力ゲームへのアクセスの制限を望んでいるだろうとする潜在的な親の要望に合致していることも示せなかった。ビデオゲーム業界の自主レーティングシステムが、既に大きな範囲でそれを達成しているのである。さらに、暴力ゲームの購入を禁止される全ての子供がその購入を認めない親を持つ訳ではなく、親の援助手段としても、この州法は、受け入れ可能なところを遙かに超えている。よって、この州法は厳格な違憲審査を満たさない。

 この概要部分だけでほとんど簡にして要を得ているとは思うが、補足として、主判決本文から、カリフォルニア州の持ち出している強力効果論調査を一蹴している部分も以下に少し抜粋しておく。(主判決本文の第12~14ページ)

  The State's evidence is not compelling. California relies primarily on the research of Dr. Craig Anderson and a few other research psychologists whose studies purport to show a connection between exposure to violent video games and harmful effects on children. These studies have been rejected by every court to consider them, and with good reason: They do not prove that violent video games cause minors to act aggressively (which would at least be a beginning). Instead, "[n]early all of the research is based on correlation, not evidence of causation, and most of the studies suffer from significant, admitted flaws in methodology." Video Software Dealers Assn. 556 F. 3d, at 964. They show at best some correlation between exposure to violent entertainment and minuscule real-world effects, such as children's feeling more aggressive or making louder noises in the few minutes after playing a violent game than after playing a nonviolent game.
  Even taking for granted Dr. Anderson's conclusions that violent video games produce some effect on children's feelings of aggression, those effects are both small and indistinguishable from effects produced by other media. In his testimony in a similar lawsuit, Dr. Anderson admitted that the "effect sizes" of children's exposure to violent video games are "about the same" as that produced by their exposure to violence on television...
  Of course,  California has (wisely) declined to restrict Saturday morning cartoons, the sale of games rated for young children, or the distribution of pictures of guns. The consequence is that its regulation is wildly underinclusive when judged against its asserted justification, which in our view is alone enough to defeat it. Underinclusiveness raises serious doubts about whether the government is in fact pursuing the interest it invokes, rather than disfavoring a particular speaker or viewpoint...

 カリフォルニア州の証拠には、全く説得力がない。カリフォルニア州は、クレイグ・アンダーソン博士の研究と、暴力ゲームへの接触と子供への有害な効果の間につながりがあることを示そうとしている、心理学者の他のわずかな研究に主に立脚している。これらの調査は、それらを考察した全ての法廷によって、正しくしりぞけられている。それらは、暴力ゲームが未成年に攻撃的な行動を取らせることを証明していない(少なくとも始めはそうであるかも知れないが)。その代わり、「ほとんど全ての研究は相関に立脚しているだけで、因果関係の証拠となっておらず、ほぼ全ての研究は、方法論に認められる明らかな欠陥によりおかしなものとなっているのである。」(ビデオソフト販売店協会事件判決参照。)それらはせいぜい、暴力的な娯楽への接触と、非暴力ゲームをプレイした後より暴力ゲームをプレイした後の方が、その後の数分、子供の気分が多少攻撃的になりざわつくといった程度の、現実の些細な効果の間に相関があるということを示すに過ぎない。
 例え、子供の暴力的な気分に対して暴力ゲームが何がしかの影響を与えるというアンダーソン博士の主張を仮に認めたとしても、この影響は、他のメディアによってもたらされる影響と区別がつかず、同じく小さなものである。類似の裁判における証言において、アンダーソン博士自身、暴力ゲームに対する子供の接触の効果量は、テレビにおける暴力表現に対する接触によってもたらされるものとほぼ同じであることを認めている。(中略)
 勿論、カリフォルニア州は、(賢明にも、)アニメ番組や子供向けとされたゲームの販売や銃の絵の頒布を規制していない。すなわち、その主張するところの正当化理由を考えても、我々の見るところ、それだけでも間違っているのは明らかであり、この規制は到底受け入れ難いというのが結論である。その不適切極まるやり方を見るにつけ、カリフォルニア州は、本当に規制がもたらす利益を追求しているのか、それとも、特定の関係者又は観点をわざと冷遇しようとしているのではないかという深い疑念すら起こる。(後略)

 珍妙な強力効果論を吹いて回る御用学者が規制を好む政府関係者に重宝されるのは、世の東西を問わず同じらしいが、このような強力効果論がまともに証明されたことがないというのもまた同じだろう。

 表現を巡る規制の動きについては、それぞれの国でその文化的背景が異なることに注意が必要だが、このアメリカの最高裁判決は表現の自由の法理に照らして当然のものである。この判決は、無論アメリカで大きな意味を持つだろうが、日本の法曹関係者にもアメリカの判例動向を注視している者は多く、日本の動きにも暗に多少の影響を与えて行くだろう。

 表現の規制を巡っては今後も延々同じことが繰り返されるのかも知れないが、表現の自由をその最大の基礎とする民主主義国家において、「子供の保護が問題となっているにしても、政府の行為には憲法による制限が課される」のが、基本中の基本として守って行かなければならない原則であることは、今後も変わりはしないだろう。

(2)インターネットへのアクセスを基本的権利とする欧州安全保障協力機構(OSCE)の報告書
 もう1つ紹介したいと思っているのは、強制力のあるものではないが、インターネットへのアクセスを基本的人権の1つとする欧州安全保障協力機構(OSCE)Wiki)の報告書(pdf)(OSCEの7月15日のリリースも参照)である。

 ここでは、特に、報告書の第31~34ページに書かれている結論と勧告の部分を以下に抄訳する。

E. Conclusions and Recommendations
The analysis of the data and information provided by the OSCE participating States on Internet content regulation leads to the following conclusions and recommendations:

The open and global nature of the Internet should be ensured
...

Access to the Internet should be regarded as a human right and recognized as implicit to the right to free expression and free information
...

The right to freedom of expression is universal - also in regards to the medium and technology
...

New technologies require new approaches

Typically, the stance taken by the participating States is that what is illegal and punishable in an offline form must at least be treated equally online. There are, however, several features of the Internet which fundamentally affect approaches to its governance. While rules and boundaries still exist, enforcement of existing laws, rules and regulations to digital content becomes evidently complex, problematic and at times impossible to enforce on the Internet. Participating States should develop alternative approaches adapted to the specific nature of
the Internet. Participating States should also place more emphasis on Internet and media literacy projects for vulnerable groups, particularly children.

Network neutrality should be respected
...

Internet 'kill switch' plans should be avoided

Existent legal provisions allow several OSCE participating States to completely suspend all Internet communication and "switch off" Internet access for whole populations or segments of the public during times of war, states of emergency and in cases of imminent threat to national security. Reaffirming the importance of fully respecting the right to freedom of opinion and expression, the OSCE participating States should refrain from developing, introducing and applying "Internet kill switch" plans as they are incompatible with the fundamental right to information.

OSCE participating States should avoid vague legal terminology in speech-based restrictions

Definitional problems and inconsistencies exist with regards to certain speech based restrictions. Clarifications are needed to define what amounts to "extremism", "terrorist propaganda", "harmful" and "racist content" and "hate speech". Legal provisions are often vague and open to wide or subjective interpretation. Any restriction must meet the strict criteria under international and regional human rights law. The necessity for restricting the right to speak and receive information must be convincingly established to be compatible with international human rights standards.

OSCE participating States should refrain from mandatory blocking of content or websites

Given the limited effectiveness of national laws and the lack of harmonization at international level to prosecute criminal online content, a number of OSCE participating States started to block access to online content deemed illegal and Web 2.0 based social media platforms situated outside their legal jurisdiction. As blocking mechanisms are not immune from significant deficiencies, they may result in the blocking of access to legitimate sites and content. Further, blocking is an extreme measure and has a very strong impact on freedom of expression and the free flow of information. Participating States should therefore refrain from using blocking as a permanent solution or as a means of punishment. Indefinite blocking of access to websites and Internet content could result to "prior restraint" and by suspending access to websites indefinitely states can largely overstep the narrow margin of appreciation afforded to them by international norms and standards.

Blocking of online content can only be justified if in accordance with these standards and done pursuant to court order and where absolutely necessary. Blocking criteria should always be made public and provide for legal redress.

Voluntary blocking and content removal arrangements should be transparent and open to appeal

Voluntary blocking measures and agreements exist in a number of OSCE participating States. However, private hotlines do not always have legal authority to require ISPs to block access to websites or to require removal of content. Any blocking system based exclusively on selfregulation or voluntary agreements between state actors and private actors have to be conceived in a way as not to interfere with fundamental rights. Furthermore, blocking criteria of hotlines and private actors are not always transparent or open to appeal. Any blocking or removal system based on self-regulation and voluntary agreements should be transparent, compatible with international norms and standards and provide for redress mechanisms and judicial remedies.

Filtering should only be encouraged as an end-user voluntary measure

OSCE participating States should encourage the use of end-user filtering software on individual home computers and in schools if their use is deemed necessary. However, the deployment of state-level upstream filtering systems, as well as government-mandated filtering systems, should be avoided. If the use of filters is encouraged by the states, users should be made aware of the potential limitations of filtering software as there are serious questions about the reliability of such tools as stand-alone solutions for child protection.

'Three-strikes' measures to protect copyright are incompatible with the right to information

The development of so-called "three-strikes" legal measures to combat Internet piracy in a number of participating States is worrisome. While countries have a legitimate interest to combat piracy, restricting or cutting off users' access to the Internet is a disproportionate response which is incompatible with OSCE commitments on the freedom to seek, receive and impart information, a right which in fact should be strengthened by the Internet. Participating States should refrain from developing or adopting legal measures which could result restricting citizens' access to the Internet. A discussion on whether or not current international standards on intellectual property protection are suited for our information society might be necessary.

Reliable information on applicable legislation and blocking statistics needs to be made available
...

E.結論と勧告
インターネットのコンテンツ規制に関して欧州安全保障協力機構(OSCE)参加国から提供されたデータと情報の分析から、以下の結論と勧告が導かれる:

オープンでグローバルなインターネットの性質を保障すること
(中略)

インターネットへのアクセスを基本的人権とし、表現の自由と情報の自由の権利に含まれるものとして認められなければならない
(中略)

表現の自由の権利は普遍的なものである-インターネットメディア・技術に対しても含め
(中略)

新たな技術は新たなアプローチを必要とする

典型的に参加国が取っているスタンスは、オフライン形式で違法で罰を科されることは少なくとも等しくオンラインでも同じように取り扱われなければならないというものである。しかしながら、インターネットには、その統制に対するアプローチに根本的な影響を与えるいくつかの性質がある。規制と国境はなお存在しているが、既存の法規制のデジタルコンテンツに対する執行は、インターネットにおいては、複雑で、問題があり、時として不可能ですらある。参加国は、インターネットの特性に応じた別のアプローチを推進するべきである。参加国はまた、インターネットと、弱者、特に子供に対するメディアリテラシープロジェクトにより力点を置くべきである。

ネット中立性を尊重すること
(中略)

「殺インターネットスイッチ」プランを回避すること

OSCEのいくつかの国では、既存の法規により、戦時、緊急時及び国家の非常事態時に、全インターネット通信を完全に中断し、その全国民あるいは公的部門のインターネットアクセスの「スイッチを切る」ことが可能とされている。OSCEの参加国は、言論と表現の自由の権利を完全に尊重することの重要性を再確認し、情報の自由の基本的権利と合致しないものとして、「殺インターネットスイッチ」プランの推進、導入及び適用を忌避するべきである。

OSCE参加国は、表現規制において法令用語を曖昧なものとしないこと

表現内容に基づく規制に関して、定義の問題・不統一が存在している。「過激派」、「テロリストのプロパガンダ」、「有害」、「人種差別的内容」や「ヘイトスピーチ」などの用語がどの程度のものを意味するのか明確化する必要がある。法令用語が曖昧で広く主観的な解釈が可能となっていることも多い。全ての制限は、国際的及び各国の人権法の厳格な基準を満たさなければならない。情報を伝え、受ける権利を制限する必要性は、国際人権法と合致するように、十分説得力を持って証明されていなければならない。

OSCE参加国は、コンテンツ又はウェブサイトの強制ブロッキングを忌避すること

オンラインコンテンツの訴追について、国内法の有効性が制限されており、国際的な調和が欠けているとして、いくつかのOSCE参加国は、違法とみなしたオンラインコンテンツやその法適用領域外にあるWeb2.0ベースのソーシャルメディアプラットフォームへのアクセスをブロックしている。しかし、ブロッキングシステムは重大な欠陥を免れ得ず、それは合法的なサイトやコンテンツへのアクセスをブロックするものとなり得る。さらに、ブロッキングは、行き過ぎた手段であり、表現の自由と情報の自由な流通に対して甚大な影響を与えるものである。したがって、参加国は、永続的な解決あるいは罰の手段としてブロッキングを用いることを忌避するべきである。ウェブサイトとインターネットへのアクセスの不明確な形でのブロッキングは、実質的な「事前検閲」たり得るものであり、ウェブサイトへのアクセスを不明確な形で中断することによって、国家は、国際的な規範と基準において許されている狭い裁量の余地を大きく踏み越えることになる。

その基準を満たし、裁判所の命令に従ってなされ、完全に必要である場合にのみ、オンラインコンテンツのブロッキングは正当化される。ブロッキングの基準は常に公表され、法的救済が提供されなければならない。

自主ブロッキング又はコンテンツ削除協定は、透明で上訴可能なものとすること

自主的なブロッキング手段・協定が、いくつかのOSCE参加国で存在している。しかしながら、民間ホットラインは、ウェブサイトへのアクセスブロッキングをISPに求める、あるいは、コンテンツの削除を求める法的権限を常に有している訳ではない。公的部門と民間部門の自主規制あるいは自主協定のみに基づくどのようなブロッキングも、基本的な権利に干渉するような形のものであってはならない。さらに、ホットラインと民間関係者のブロッキング基準も、常に透明で上訴可能なものとなっている訳ではない。自主規制あるいは自主協定に基づくどのようなブロッキングあるいは削除システムも、透明で、国際的な規範と基準に合致し、救済の機構と司法的救済が提供されていなければならない。

フィルタリングは、エンドユーザーの自主的な手段としてのみ推進されるべきである

OSCE参加国は、その利用が必要とみなせる場合に限り、家庭あるいは学校の個々のコンピュータにおけるエンドユーザーのフィルタリングソフト利用を推進するべきである。そして、国家レベルの上流フィルタリングシステムの配備や国家によって強制されるフィルタリングシステムは、回避されるべきである。国家によってフィルタリングの利用が推進される場合、ユーザーに対して、児童保護のための単独の解決手段としての信頼性について大きな疑義があり、フィルタリングソフトに限界が存在していることについてきちんと知らされなくてはならない。

著作権保護のための「3ストライク」ポリシーは、情報の自由に関する権利と合致しない

インターネットにおける海賊行為に対抗するため、何カ国かで推進されているいわゆる「3ストライク」法は、憂慮すべきものである。国が海賊行為に対抗する正当な利益を有しているにしても、インターネットに対するユーザーのアクセスを制限あるいは遮断することは、バランスを欠いた対応策であり、情報を探し、受け、分かち合う権利、実際のところ、インターネットによって強化されるべきこの権利に対するOSCEの責務と合致しない。参加国は、市民のインターネットへのアクセスを制限する法的措置を推進あるいは採用することを忌避するべきである。そもそも、現在の知的財産に関する国際的な基準が私たちの情報社会に適したものであるのかどうかについての議論が必要だろう。

既存の法規とブロッキングに関する信頼できる情報が公表される必要がある
(後略)

 ブロッキングに関する議論について多少甘いところもあるが、欧州を中心に多くの国が参加する国際機関で、これほど明確にインターネットへのアクセスを情報に関する基本的な権利の1つと認める報告書が出されるようになって来たことは注目に値する。法的拘束力こそないものの、国家による強制ブロッキングや3ストライクポリシーをほぼ完全に否定していることもじりじりと効いてくることだろう。(表現・情報規制問題について関心を寄せているのであれば、各国における規制の現状などもまとめられており、報告書全文を直接読むことをお勧めする。また、この報告書に興味を持たれたのであれば、合わせ、インターネットにおいても表現・情報の自由は守られなければならないとする国連特別報告官の報告(pdf)(国連人権高等弁務官事務所HPの6月3日のリリースも参照)も読んでおくと良いと思う。)

 翻って日本はと見ると情報・表現規制問題についてはかなり惨憺たる有様だが、あらゆる点で状況が悪いということもない。今後も私は個人でやれることを地道にやって行くつもりである。

(7月18日の追記:何カ所か誤記を訂正し、訳文を少し整えた。)

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2011年5月22日 (日)

番外その33:いわゆるサイバー刑法の問題点

 多少話題になって来ている所為か、法務省がそのHPに要領を得ないQ&Aを公表したが、あまり懸念に対する答えになっていないので、今回は、適宜このQ&Aに対する突っ込みを入れつつ、この「いわゆるサイバー刑法」について私があると考えている問題点をまとめて指摘しておきたいと思う。

(1)ウィルス作成罪について
 まず、今のウィルス作成罪の条文(刑法改正案の条文)は以下のようになっている。(新設条項)

(不正指令電磁的記録作成等)
第百六十八条の二 正当な理由がないのに、人の電子計算機における実行の用に供する目的で、次に掲げる電磁的記録その他の記録を作成し、又は提供した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
 人が電子計算機を使用するに際してその意図に沿うべき動作をさせず、又はその意図に反する動作をさせるべき不正な指令を与える電磁的記録
 前号に掲げるもののほか、同号の不正な指令を記述した電磁的記録その他の記録
(以下略)

 条文の問題はいろいろなところで指摘されているが、この条文において、ウィルス(不正プログラム)の定義が曖昧である点と、除外・目的要件が不十分である点に非常に大きな問題があると考えている。

 まず、定義の曖昧さについてだが、条文中の「人が電子計算機を使用するに際してその意図に沿うべき動作をさせず、又はその意図に反する動作をさせるべき不正な指令を与える電磁的記録」という定義によりどのようなプログラムが特定されるのか、これは誰が読んでも良く分からないのではないかと私は思う。

 「人」が個々の利用者を指すのではなく、法律的な意味での一般人を指すとしても、プログラム作成者から見てプログラム作成時には一般利用者の意図は通常分からず、一般人基準だとマニュアルや利用規約等によってどこまで免責されるかも不明確で、この定義では、プログラム開発についてかなりの萎縮が発生しかねないと考えられるのである。(現行刑法の第234条の2の電子計算機損壊等業務妨害や、第246条の2の電子計算機使用詐欺においても、一見同じような規定ぶりがされているが、これらでは、財産の得失や業務妨害が要件となっている点で、かなり限定されていることに注意が必要である。)

 特に、故意性の問題も絡むので難しいのだが、この規定では、わざと通常とは異なる動作をさせているが害はなく笑いを取るためだけのジョークプログラムやジョークサイトのようなものや、最近の複雑なプログラムでは必ず入り込むバグなどの取り扱いが非常に微妙になるだろう。(また、ここでの「人」が個々の利用者を指すという別の理解に基づいてさらに大きな萎縮が発生する恐れもある。)

 次に、除外・目的要件の不十分さということでは、「正当な理由がないのに」、「人の電子計算機における実行の用に供する目的で」といった要件も非常に不十分であるように私は思う。

 ここで、「正当な理由」とは何かという問題が出て来ることになるが、法務省のQ&Aに「ウィルス対策ソフトの開発などの正当な目的でウィルスを作成する場合には,そのウィルスを,自己のコンピュータにおいてのみ実行する目的であるか,あるいは,他人のコンピュータでその同意を得て実行する目的であるのが通常であると考えられ・・・この罪は成立しません」とある通り、通常の企業活動におけるウィルス対策ソフト開発は問題なく認められるとしても、上でも書いたように、ジョークプログラムやジョークサイト、バグなどの取り扱いはやはり微妙なものとして残らざるを得ず、本来なら誰でもできてしかるべきプログラム技術の開発に対する非常に大きな阻害要因となるのではないかと私は懸念している。

 また、「人の電子計算機における実行の用に供する目的で」という目的要件も、プログラムを作成したからには、通常は、人の電子計算機における実行の用に供する目的で作成したのだろうという推定が働くことになり、実質的な限定になっていないのではないかと考えられる。さらに個人開発のことを考えると、この目的要件は、個人の意図のみにかかるので証明も反証も不可能となるだろう。

 この様な形で法改正がされてしまった場合、制度導入当初はさすがに警察等も慎重な運用をするだろうが、条文が非常に曖昧なので、時が移るにつれ、別件逮捕等のための便利なツールとして安易に使われてしまうことになるのではないかと私は危惧しており、少なくとも、不正プログラムの定義を明確なものとし、除外・目的要件を十分なものとすることが必要だろうと私は考えている。

(2)保全・押収関係について
 保全・押収関係は、前回の法案からの修正(法務省の修正点参照)でかなりマシになっているとは思うが、それでもまだ問題は残っている。今の刑事訴訟法改正案の条文は、以下のようなものである。(下線部が改正部分)

第九十九条
 差し押さえるべき物が電子計算機であるときは、当該電子計算機に電気通信回線で接続している記録媒体であつて、当該電子計算機で作成若しくは変更をした電磁的記録又は当該電子計算機で変更若しくは消去をすることができることとされている電磁的記録を保管するために使用されていると認めるに足りる状況にあるものから、その電磁的記録を当該電子計算機又は他の記録媒体に複写した上、当該電子計算機又は当該他の記録媒体を差し押さえることができる。

(中略)

第百七条 差押状、記録命令付差押状又は捜索状には、被告人の氏名、罪名、差し押さえるべき物、記録させ若しくは印刷させるべき電磁的記録及びこれを記録させ若しくは印刷させるべき者又は捜索すべき場所、身体若しくは物、有効期間及びその期間経過後は執行に着手することができず令状はこれを返還しなければならない旨並びに発付の年月日その他裁判所の規則で定める事項を記載し、裁判長が、これに記名押印しなければならない。

 第九十九条第二項の規定による処分をするときは、前項の差押状に、同項に規定する事項のほか、差し押さえるべき電子計算機に電気通信回線で接続している記録媒体であつて、その電磁的記録を複写すべきものの範囲を記載しなければならない。

(中略)

第百九十七条
 検察官、検察事務官又は司法警察員は、差押え又は記録命令付差押えをするため必要があるときは、電気通信を行うための設備を他人の通信の用に供する事業を営む者又は自己の業務のために不特定若しくは多数の者の通信を媒介することのできる電気通信を行うための設備を設置している者に対し、その業務上記録している電気通信の送信元、送信先、通信日時その他の通信履歴の電磁的記録のうち必要なものを特定し、三十日を超えない期間を定めて、これを消去しないよう、書面で求めることができる。この場合において、当該電磁的記録について差押え又は記録命令付差押えをする必要がないと認めるに至つたときは、当該求めを取り消さなければならない。

 前項の規定により消去しないよう求める期間については、特に必要があるときは、三十日を超えない範囲内で延長することができる。ただし、消去しないよう求める期間は、通じて六十日を超えることができない。

(後略)

 差し押さえの対象となる記録について、差し押さえるべき「電子計算機で作成若しくは変更をした電磁的記録又は当該電子計算機で変更若しくは消去をすることができることとされている電磁的記録」と限定されたことでかなりマシになっているのは確かだが、ここで、憲法第35条に「何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利は、第三十三条の場合を除いては、正当な理由に基いて発せられ、且つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、侵されない」と規定されている令状主義との関係がきちんと整理されているとは私には思えない。

 法務省のQ&Aで書かれているように、裁判所の審査を受けた差押許可状で、あるパソコンの使用者のメールアドレスに対応するメールボックスの記録領域といった形でコピー可能な範囲が特定されるとしても、そのように特定されたデータのみが検察官・警察官によって見られ、コピーされることをどうやって実務的に担保するのかという点についてきちんとした議論が必要だろう。(問題となるのはあくまでデータ・情報であることに注意が必要であり、執行時に他のデータも含めて捜査官に閲覧できてしまうようなことがあっては元も子もない。)

 また、保全要請について、司法巡査が要請主体から除かれ、データ保存期間が30~60日と短くされたのは良いが、やはり令状を必要とせず、検察官又は警察官単独の権限でデータの保全要請ができるとされている点は問題だろう。この点も、濫用の懸念があり、通信事業者に圧力をかけるために乱発される可能性もあるのではないかと私は考えている。(前回の案と比較して、「差押え又は記録命令付差押えをするため必要があるとき」という要件も追加されているが、この判断主体が誰かということを考えると、この要件は、裁判官の判断が必要とされるということではなく、検察又は警察がそうと判断したときという意味であり、特に具体的な限定になっているとはあまり思えない。)

 これらの点について、法務省のQ&Aはわざとずれた回答をしているとしか思えない。保全・押収関係の条文案についても、警察・検察による濫用の懸念は消えておらず、憲法に規定されている令状主義から考えても、複写による差し押さえについて、他のデータまで閲覧できてしまうことがないことをどう担保するのかという議論が必要であり、保全要請についても、裁判所の判断を必要とするべきではないかと私は考えている。

(3)猥褻メール送信規制について
 法務省のQ&Aでは何故か落とされているが、猥褻メール送信規制も個人的には問題なしとしない。刑法改正案では、猥褻物頒布罪を規定している第175条を以下のような条文にするとしている。(下線部が改正部分。)

(わいせつ物頒布等)
第百七十五条
 わいせつな文書、図画、電磁的記録に係る記録媒体その他の物を頒布し、又は公然と陳列した者は、二年以下の懲役若しくは二百五十万円以下の罰金若しくは科料に処し、又は懲役及び罰金を併科する電気通信の送信によりわいせつな電磁的記録その他の記録を頒布した者も、同様とする。

 有償で頒布する目的で、前項の物を所持し、又は同項の電磁的記録を保管した者も、同項と同様とする。

 電子データの記録媒体であれば猥褻物に当たらなどということは現行法でもないだろうし、記録媒体に関する部分が確認改正にすぎないとしても、法務省の概要の説明にあるように、不特定又は多数の者に対し、わいせつな画像データを電子メールで送信する行為などを猥褻物頒布として本当に有体物の文書図画の頒布と同様に処罰しても良いのかという点には疑問が残る。

 今のところ、迷惑メール規制については、現在の迷惑メール規制法(正式名称は、「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律」)でまず十分ではないかと思うし、猥褻メールが別の立法を必要とするほどの社会問題になっているという話も聞かない。この部分についても立法事実の検討が不十分ではないかと私は思う。現在の猥褻物頒布罪の延長線上にある話ではあるのだが、実際に法案が通ってしまうと、このような条文を盾に、またロクでもない警察主導のネット規制・ネット検閲の動きが強まるのではないかと私は懸念する。

 何と言っても問題なのはウィルス作成罪だが、このいわゆるサイバー刑法は他の部分も全く問題がないとは言えないものである。これは主として立法技術上の問題で、法務省の担当者のかなり致命的なミスだと私は思っており、震災後の今の状況では国会審議がどうなるのかも良く分からないが、時期を見て、実際の審議に当たるだろう国会議員に問題点を伝える努力をして行く必要があると思っている。

 なお、さらに言えば、法務省のQ&Aで、「この法案を共謀罪の成立や更なる捜査権限の拡大と結び付けるのは正しくありません」と書かれているが、今までの法務省・警察庁の振る舞いから考えて全く信用できない。今の法案の行方すら良く分からないが、どうなろうと、じきに次の規制強化の波がやって来るだろう。

 最後に、制度ユーザーにしか関係ない話だとは思うが、特許庁から、一連の操作画面デザインをまとめて意匠登録できるようにする意匠審査基準の改正パブコメが6月20日〆切でかかっているので(特許庁のHP、日刊工業新聞のネット記事参照)、合わせ紹介しておく。

 次回は、また著作権問題の話か、あるいは知財本部で決定されれば今年の知財計画の紹介をするつもりでいる。

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