2017年1月29日 (日)

第373回:「知的財産推進計画2017」の策定に向けた意見募集(2月17日〆切)への提出パブコメ

 今年は1月19日から2月17日〆切でかかっている知財本部の「知的財産推進計画2017」の策定に向けた意見募集に対して私の提出した意見をここに載せておく。

 今年も知財本部の検証・評価・企画委員会での方向性が見えない中での募集だが、今年はTPP協定の批准と関連法案の可決・成立を受けて(1)a)を書き直し、文化庁でリーチサイト対策に関する検討が進められていることや知財計画2016での著作権ブロッキングに関する記載の追加を受けて去年(2)に書いていた内容を(1)h)やi)に入れるなど今年の状況に合わせて記載を改めているが、パブコメの内容自体は大体去年と同じである。(去年の提出パブコメは第356回参照、知財計画2016の記載については第363回参照。)

 毎年恒例でどこまで意見が取り入れられるか分からないところも多いが、政府に知財政策全体について意見を出せる年1回の機会ではあるので、このような問題に関心のある方は是非提出を検討することをお勧めする。

(以下、提出パブコメ)

《要旨》
アメリカ等と比べて遜色の無い範囲で一般フェアユース条項を導入すること及びダウンロード犯罪化・違法化条項の撤廃を求める。何ら国民的コンセンサスを得ていない中でのTPP協定批准、有害無益なインターネットにおける今以上の知財保護強化、特に著作権の保護期間延長、補償金の矛盾を拡大するだけの私的録音録画補償金の対象拡大に反対する。今後真の国民視点に立った知財の規制緩和の検討が進むことを期待する。

《全文》
 最終的に国益になるであろうことを考え、各業界の利権や省益を超えて必要となる政策判断をすることこそ知財本部とその事務局が本当になすべきことのはずであるが、知財計画2016を見ても、このような本当に政策的な決定は全く見られない。知財保護が行きすぎて消費者やユーザーの行動を萎縮させるほどになれば、確実に文化も産業も萎縮するので、知財保護強化が必ず国益につながる訳ではないということを、著作権問題の本質は、ネットにおける既存コンテンツの正規流通が進まないことにあるのではなく、インターネットの登場によって新たに出てきた著作物の公正利用の類型に、今の著作権法が全く対応できておらず、著作物の公正利用まで萎縮させ、文化と産業の発展を阻害していることにあるのだということを知財本部とその事務局には、まずはっきりと認識してもらいたい。特に、最近の知財・情報に関する規制強化の動きは全て間違っていると私は断言する。

 例年通り、規制強化による天下り利権の強化のことしか念頭にない文化庁、総務省、警察庁などの各利権官庁に踊らされるまま、国としての知財政策の決定を怠り、知財政策の迷走の原因を増やすことしかできないようであれば、今年の知財計画を作るまでもなく、知財本部とその事務局には、自ら解散することを検討するべきである。そうでなければ、是非、各利権官庁に轡をはめ、その手綱を取って、知財の規制緩和のイニシアティブを取ってもらいたい。知財本部において今年度、インターネットにおけるこれ以上の知財保護強化はほぼ必ず有害無益かつ危険なものとなるということをきちんと認識し、真の国民視点に立った知財の規制緩和の検討が知財本部でなされることを期待し、本当に決定され、実現されるのであれば、全国民を裨益するであろうこととして、私は以下のことを提案する。

(1)「知的財産推進計画2016」の記載事項について:
a)環太平洋経済連携協定(TPP)などの経済連携協定(EPA)に関する取組について

 第62ページにTPPなどの協定に関する取組について書かれている。TPP協定については、2015年10月に大筋合意が発表され、その後、文化庁、知財本部の検討を経て、11月にTPP総合対策本部でTPP関連政策大綱が決定され、さらに2016年2月に署名され、3月に関連法案の国会提出がされ、11月の臨時国会で可決・成立し、2017年1月20日に参加国として初めての国内手続きの完了に関する通報が行われた。

 しかし、この国内手続きにおいて、日本政府は、2015年10月に大筋合意の概要のみを公表し、11月のニュージーランド政府からの協定条文の英文公表時も全章概要を示したのみで、その後2ヶ月も経って2016年1月にようやく公式の仮訳を公表するなど、TPP協定の内容精査と政府への意見提出の時間を国民に実質与えない極めて姑息かつ卑劣なやり方を取っていたと言わざるを得ない。

 そして、公開された条文によって今までのリーク文書が全て正しかったことはほぼ証明されており、TPP協定は確かに著作権の保護期間延長、DRM回避規制強化、法定賠償制度、著作権侵害の非親告罪化などを含んでいる。今ですら不当に長い著作権保護期間のこれ以上の延長など論外であり、今回の著作権法改正の法定賠償や非親告罪化の条文にも注意すべきところがあり、今のところ発効はしていないものの、極秘裏に行われた国際交渉の結果としてなし崩しでこのように危険な法改正がなされたことを私は一国民として強く非難する。

 TPP協定についてはトランプ現アメリカ大統領が公約通り既に離脱の大統領令に署名しており、発効する見込みは全くない。日本政府はTPP協定においても下で書くACTAの二の轍を既に完全に踏みつつあり、世界に恥を晒している。日本政府は自ら外交上の失敗を認め、批准、関連法改正及び通報を取り消すべきであり、日本もTPP協定から脱退するべきである。

 また、TPP交渉のような国民の生活に多大の影響を及ぼす国際交渉が政府間で極秘裏に行われたことも大問題である。国民一人一人がその是非を判断できるよう、途中経過も含めその交渉に関する情報をすべて速やかに公開するべきである。

 なお、トランプ現アメリカ大統領は既に日米で2国間の通商交渉を行うとしており、このような交渉の中でTPP協定交渉同様に知財規制の強化が求められる可能性があるが、上で書いた通り、これ以上の知財規制の強化は危険なものとしかなり得ないものであり、そのような要求は日本政府として毅然とはねのけるべきである。

b)DRM回避規制について
 経産省と文化庁の主導により無意味にDRM回避規制を強化する不正競争防止法と著作権法の改正案がそれぞれ以前国会を通されたが、これらの法改正を是とするに足る立法事実は何一つない。不正競争防止法と著作権法でDRM回避機器等の提供等が規制され、著作権法でコピーコントロールを回避して行う私的複製まで違法とされ、十二分以上に規制がかかっているのであり、これ以上の規制強化は、ユーザーの情報アクセスに対するリスクを不必要に高める危険なものとしかなり得ない。ユーザーの情報アクセスに対するリスクを不必要に高める危険なものとしかなり得ないこれ以上のDRM回避規制の強化はされてはならない。

 特に、DRM回避規制に関しては、有害無益な規制強化の検討ではなく、まず、私的なDRM回避行為自体によって生じる被害は無く、個々の回避行為を一件ずつ捕捉して民事訴訟の対象とすることは困難だったにもかかわらず、文化庁の片寄った見方から一方的に導入されたものである、私的な領域でのコピーコントロール回避規制(著作権法第30条第1項第2号)の撤廃の検討を行うべきである。コンテンツへのアクセスあるいはコピーをコントロールしている技術を私的な領域で回避しただけでは経済的損失は発生し得ず、また、ネットにアップされることによって生じる被害は公衆送信権によって既にカバーされているものであり、その被害とDRM回避やダウンロードとを混同することは絶対に許されない。それ以前に、私法である著作権法が、私的領域に踏み込むということ自体異常なことと言わざるを得ない。また、同時に、何ら立法事実の変化がない中、ドサクサ紛れに通された、先般の不正競争防止法改正で導入されたDRM回避機器の提供等への刑事罰付与や、以前の著作権法改正で導入されたアクセスコントロール関連規制の追加についても、速やかに元に戻す検討がなされるべきである。

 TPP協定にはDRM回避規制の強化も含まれているが、上で書いた通り、これ以上のDRM回避規制の強化がされるべきではなく、この点でも私はTPP協定に反対する。

c)海賊版対策条約(ACTA)について
 第62ページではACTAへの言及もなされているが、このACTAを背景に経産省及び文化庁の主導により無意味にDRM回避規制を強化する不正競争防止法及び著作権法の改正案が以前国会を通され、ACTA自体も国会で批准された。しかし、このようなユーザーの情報アクセスに対するリスクを不必要に高める危険なものとしかなり得ない規制強化条項を含む条約の交渉、署名及び批准は何ら国民的なコンセンサスが得られていない中でなされており、私は一国民としてACTAに反対する。今なおACTAの批准国は日本しかなく、日本は無様に世界に恥を晒し続けている。もはやACTAに何ら意味はなく、日本は他国への働きかけを止めるとともに自ら脱退してその失敗を認めるべきである。

d)一般フェアユース条項の導入について
 第11ページで柔軟性の高い権利制限規定について言及されており、文化庁の新たな時代のニーズに的確に対応した制度等の整備に関するワーキングチームで検討が進められているが、例によって一般フェアユース条項の導入について否定的な結論が出される可能性が高い。しかし、一般フェアユース条項の導入について、ユーザーに対する意義からも、可能な限り早期に導入することを求める。特に、インターネットのように、ほぼ全国民が利用者兼権利者となり得、考えられる利用形態が発散し、個別の規定では公正利用の類型を拾い切れなくなるところでは、フェアユースのような一般規定は保護と利用のバランスを取る上で重要な意義を持つものである。

 2012年の法改正によって写り込み等に関する権利制限の個別規定が追加されたが、あった方が良いものとは言え、これは到底一般フェアユース条項と言うに足るものではなく、これでは著作権をめぐる今の混迷状況が変わることはない。

 著作物の公正利用には変形利用もビジネス利用も考えられ、このような利用も含めて著作物の公正利用を促すことが、今後の日本の文化と経済の発展にとって真に重要であることを考えれば、不当にその範囲を不当に狭めるべきでは無く、その範囲はアメリカ等と比べて遜色の無いものとされるべきである。ただし、フェアユースの導入によって、私的複製の範囲が縮小されることはあってはならない。

 また、「まねきTV」事件などの各種判例からも、ユーザー個人のみによって利用されるようなクラウド型サービスまで著作権法上ほぼ違法とされてしまう状況に日本があることは明らかであり、このような状況は著作権法の趣旨に照らして決して妥当なことではない。ユーザーが自ら合法的に入手したコンテンツを私的に楽しむために利用することに著作権法が必要以上に介入することが許されるべきではなく、個々のユーザーが自らのためのもに利用するようなクラウド型サービスにまで不必要に著作権を及ぼし、このような技術的サービスにおけるトランザクションコストを過大に高め、その普及を不当に阻害することに何ら正当性はない。この問題がクラウド型サービス固有の問題でないのはその通りであるが、だからといって法改正の必要性がなくなる訳ではない。著作権法の条文及びその解釈・運用が必要以上に厳格に過ぎクラウド型サービスのような技術の普及が不当に阻害されているという日本の悲惨な現状を多少なりとも緩和するべく、速やかに問題を再整理し、アメリカ等と比べて遜色の無い範囲で一般フェアユース条項を導入し、同時にクラウド型サービスなどについてもすくい上げられるようにするべきである。

 権利を侵害するかしないかは刑事罰がかかるかかからないかの問題でもあり、公正という概念で刑事罰の問題を解決できるのかとする意見もあるようだが、かえって、このような現状の過剰な刑事罰リスクからも、フェアユースは必要なものと私は考える。現在親告罪であることが多少セーフハーバーになっているとはいえ、アニメ画像一枚の利用で別件逮捕されたり、セーフハーバーなしの著作権侵害幇助罪でサーバー管理者が逮捕されたりすることは、著作権法の主旨から考えて本来あってはならないことである。政府にあっては、著作権法の本来の主旨を超えた過剰リスクによって、本来公正として認められるべき事業・利用まで萎縮しているという事態を本当に深刻に受け止め、一刻も早い改善を図ってもらいたい。

 個別の権利制限規定の迅速な追加によって対処するべきとする意見もあるが、文化庁と癒着権利者団体が結託して個別規定すらなかなか入れず、入れたとしても必要以上に厳格な要件が追加されているという惨憺たる現状において、個別規定の追加はこの問題における真の対処たり得ない。およそあらゆる権利制限について、文化庁と権利者団体が結託して、全国民を裨益するだろう新しい権利制限を潰すか、極めて狭く使えないものとして来たからこそ、今一般規定が社会的に求められているのだという、国民と文化の敵である文化庁が全く認識していないだろう事実を、政府・与党は事実としてはっきりと認めるべきである。

e)リバースエンジニアリングのための権利制限の導入について
 第11ページにリバースエンジニアリングに関する適法性の明確化について書かれている。このリバースエンジニアリングに関する権利制限について、2009年1月の分化審議会著作権分科会報告書において早期に措置すべきとされた後の7年間で何度も著作権法改正案を国会に提出する機会があったにもかかわらず、法改正案に入れなかったことは文化庁の怠慢である。技術的な調査・解析は、権利者の利益を害するどころか、技術の発展を通じて社会全体を裨益するものであり、著作権法によってこのような利用まで萎縮することは、その法目的に照らしても本来あってはならないことである。このような権利者の利益を害さず、著作物の通常の利用も妨げないような公正利用の類型についてはきちんとした権利制限による対応が必要である。このような利用を萎縮させて良いことなど全くなく、リバースエンジニアリングについて著作権法上の権利制限を速やかに設けると、知財計画2017には明記してもらいたい。

f)アーカイブの利活用促進のための著作権制度の見直しについて
 第50ページにアーカイブの構築・充実に関する著作権制度の見直しについて記載されている。このことについて文化庁の法制・基本問題小委員会において検討が進められている。ここで、真に2次利用可能な形で各種アーカイブの構築・充実を考えるのであれば、裁定制度の見直しや法解釈による対応に関する検討だけでは不十分である。特に日本において十分になされているとは言い難いパブリックドメイン資料や絶版資料の利活用をより強力に促進するべきであり、著作権法の改正により、(a)現行著作権法第31条で国会図書館のみに可能とされている絶版等資料の電子利用をあらゆる図書館及び文書館に可能とすること、合わせて(b)同条における絶版等資料以外の資料についての「滅失、損傷若しくは汚損を避けるため」という電子化のための要件を緩和してここにアーカイブ化のためという目的を追加し、著作権保護期間満了後の資料公開に備えた事前の電子化を明確に可能とすること、及び(c)個人アーカイブの作成が第30条の私的複製の範囲に含まれることを条文上明記し、個人資料の利活用及び著作権保護期間満了後の公開を促すことを私は求める。このような権利制限又は例外が不必要に狭くされるべきではなく、その他者がアーカイブを直接利用しないことを前提として他者の力を借りたアーカイブ化も可能とされるべきである。なお、諸外国における動向について注視が必要なことも無論であり、政府が強く関与する形で実質オプトアウト方式で強力に絶版作品の電子化を図るフランスの20世紀の絶版作品電子化法や、孤児作品のみならず絶版作品の利用についても規定するドイツの孤児・絶版作品デジタル利用促進法なども参考にされてしかるべきである。

 さらに、法制度上の問題ではないが、国会図書館が著作権切れの著作物について2次利用に関する許諾を原則不要としている通り、NHKによるものを含め国費又は国費相当の予算を用いた各種アーカイブにおいては、インターネットを通じ書誌事項だけではなく全コンテンツの提供を行うことを目標として資料の電子化を行うとともに、公開情報に著作権期間満了日を明示し、合わせて公開された著作権切れの著作物に関しては原則2次利用の許諾を不要とするべきである。そして、特に国会図書館及び国立公文書館のような文書中心のアーカイブに関しては一般ユーザーからの入力を通じたテキスト化システムの実装も検討してもらいたい。

g)私的録音録画補償金問題について
 第11ページでは私的録音録画補償金問題についても言及されている。権利者団体等が単なる既得権益の拡大を狙ってiPod等へ対象範囲を拡大を主張している私的録音録画補償金問題についても、補償金のそもそもの意味を問い直すことなく、今の補償金の矛盾を拡大するだけの私的録音録画補償金の対象拡大を絶対にするべきではない。

 文化庁の文化審議会著作権分科会における数年の審議において、補償金のそもそもの意義についての意義が問われたが、文化庁が、天下り先である権利者団体のみにおもねり、この制度に関する根本的な検討を怠った結果、特にアナログチューナー非対応録画機への課金について私的録音録画補償金管理協会と東芝間の訴訟に発展した。ブルーレイ課金・アナログチューナー非搭載録画機への課金について、権利者団体は、ダビング10への移行によってコピーが増え自分たちに被害が出ると大騒ぎをしたが、移行後8年以上経った今現在においても、ダビング10の実施による被害増を証明するに足る具体的な証拠は全く示されておらず、ブルーレイ課金・アナログチューナー非搭載録画機への課金に合理性があるとは到底思えない。わずかに緩和されたとは言え、今なお地上デジタル放送にはダビング10という不当に厳しいコピー制限がかかったままである。こうした実質的に全国民に転嫁されるコストで不当に厳しい制限を課している機器と媒体にさらに補償金を賦課しようとするのは、不当の上塗りである。

 なお、世界的に見ても、メーカーや消費者が納得して補償金を払っているということはカケラも無く、権利者団体がその政治力を不当に行使し、歪んだ「複製=対価」の著作権神授説に基づき、不当に対象を広げ料率を上げようとしているだけというのがあらゆる国における実情である。表向きはどうあれ、大きな家電・PCメーカーを国内に擁しない欧州各国は、私的録音録画補償金制度を、外資から金を還流する手段、つまり、単なる外資規制として使っているに過ぎない。この制度における補償金の対象・料率に関して、具体的かつ妥当な基準はどこの国を見ても無いのであり、この制度は、ほぼ権利者団体の際限の無い不当な要求を招き、莫大な社会的コストの浪費のみにつながっている。機器・媒体を離れ音楽・映像の情報化が進む中、「複製=対価」の著作権神授説と個別の機器・媒体への賦課を基礎とする私的録音録画補償金は、既に時代遅れのものとなりつつあり、その対象範囲と料率のデタラメさが、デジタル録音録画技術の正常な発展を阻害し、デジタル録音録画機器・媒体における正常な競争市場を歪めているという現実は、補償金制度を導入したあらゆる国において、問題として明確に認識されなくてはならないことである。

h)インターネット上の著作権侵害の抑止及び著作権法におけるいわゆる間接侵害・幇助への対応について
 第13ページにインターネット上の著作権侵害の抑止について、特にリーチサイト対策の検討について書かれており、文化庁の法制・基本問題小委員会などで検討が進められている。しかし、このようなリーチサイト問題も含め、ネット上の違法コンテンツ対策、違法ファイル共有対策については、通信の秘密やプライバシー、情報アクセス権等の国民の基本的な権利をきちんと尊重しつつ対策を検討してもらいたい。この点においても、国民の基本的な権利を必ず侵害するものとなり、ネットにおける文化と産業の発展を阻害することにつながる危険な規制強化の検討ではなく、ネットにおける各種問題は情報モラル・リテラシー教育によって解決されるべきものという基本に立ち帰り、現行のプロバイダー責任制限法と削除要請を組み合わせた対策などの、より現実的かつ地道な施策のみに注力して検討を進めるべきである。

 ここで、リーチサイト対策の検討は、文化庁の法制・基本問題小委員会の論点案でも示されている通り、著作権法におけるいわゆる間接侵害・幇助への対応をどうするかという問題に帰着する。確かにセーフハーバーを確定するためにも間接侵害・幇助の明確化はなされるべきであるが、現行の条文におけるカラオケ法理や各種ネット録画機事件などで示されたことの全体的な整理以上のことをしてはならない。特に、著作権法に明文の間接侵害一般規定を設けることは絶対にしてはならないことである。確かに今は直接侵害規定からの滲み出しで間接侵害を取り扱っているので不明確なところがあるのは確かだが、現状の整理を超えて、明文の間接侵害一般規定を作った途端、権利者団体や放送局がまず間違いなく山の様に脅しや訴訟を仕掛けて来、今度はこの間接侵害規定の定義やそこからの滲み出しが問題となり、無意味かつ危険な社会的混乱を来すことは目に見えているからである。知財計画2017において間接侵害・幇助への対応について記載するのであれば、著作権法の間接侵害・幇助の明確化は、ネット事業・利用の著作権法上のセーフハーバーを確定するために必要十分な限りにおいてのみなされると合わせ明記してもらいたい。

i)著作権ブロッキングについて
 第13ページにはインターネット上の知財侵害に対する諸外国におけるサイトブロッキングの運用状況の把握等に関する記載もある。このような記載は著作権団体の提案を受けたものと思われるが、アメリカでは、議会に提出されたサイトブロッキング条項を含むオンライン海賊対策法案(SOPA)や知財保護強化法案(PIPA)が、IT企業やユーザーから検閲であるとして大反対を受け、その審議は止められている。

 サイトブロッキングの問題については下でも述べるが、インターネット利用者から見てその妥当性をチェックすることが不可能なサイトブロッキングにおいて、透明性・公平性・中立性を確保することは本質的に完全に不可能である。このようなブロッキングは、憲法に規定されている表現の自由(知る権利・情報アクセスの権利を含む)や検閲の禁止といった国民の基本的な権利を侵害するものとならざるを得ないものであり、決して導入されるべきでないものである。

 その提案からも明確なように、違法コピー対策問題における権利者団体の主張は常に一方的かつ身勝手であり、ネットにおける文化と産業の発展を阻害するばかりか、インターネットの単純なアクセスすら危険なものとする非常識なものばかりである。今後は、このような一方的かつ身勝手な規制強化の動きを規制するため、憲法の「表現の自由」に含まれ、国際人権B規約にも含まれている国民の「知る権利」を、あらゆる公開情報に安全に個人的にアクセスする権利として、通信法に法律レベルで明文で書き込むことを検討するべきである。同じく、憲法に規定されている検閲の禁止から、サイトブロッキングのような技術的検閲の禁止を通信法に法律レベルで明文で書き込むことを検討するべきである。

(2)その他の知財政策事項について:
a)ダウンロード違法化・犯罪化問題について

 文化庁の暴走と国会議員の無知によって、2009年の6月12日にダウンロード違法化条項を含む改正著作権法が成立し、2010年の1月1日に施行された。また、日本レコード協会などのロビー活動により、自民党及び公明党が主導する形でダウンロード犯罪化条項がねじ込まれる形で、2012年6月20日に改正著作権法が成立し、2012年10月1日から施行されている。しかし、一人しか行為に絡まないダウンロードにおいて、「事実を知りながら」なる要件は、エスパーでもない限り証明も反証もできない無意味かつ危険な要件であり、技術的・外形的に違法性の区別がつかない以上、このようなダウンロード違法化・犯罪化は法規範としての力すら持ち得ず、罪刑法定主義や情報アクセス権を含む表現の自由などの憲法に規定される国民の基本的な権利の観点からも問題がある。このような法改正によって進むのはダウンロード以外も含め著作権法全体に対するモラルハザードのみであり、今のところ幸いなことに適用例はないが、これを逆にねじ曲げてエンフォースしようとすれば、著作権検閲という日本国として最低最悪の手段に突き進む恐れしかない。

 そもそも、ダウンロード違法化の懸念として、このような不合理極まる規制強化・著作権検閲に対する懸念は、文化庁へのパブコメ(文化庁HPhttp://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/chosakuken/hokoku.htmlの意見募集の結果参照。ダウンロード違法化問題において、この8千件以上のパブコメの7割方で示された国民の反対・懸念は完全に無視された。このような非道極まる民意無視は到底許されるものではない)や知財本部へのパブコメ(知財本部のHPhttp://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/keikaku2009.htmlの個人からの意見参照)を見ても分かる通り、法改正前から指摘されていたところであり、このようなさらなる有害無益な規制強化・著作権検閲にしか流れようの無いダウンロード違法化・犯罪化は始めからなされるべきではなかったものである。文化庁の暴走と国会議員の無知によって成立したものであり、ネット利用における個人の安心と安全を完全にないがしろにするものである、百害あって一利ないダウンロード違法化・犯罪化を規定する著作権法第30条第1項第3号及び第119条第3項を即刻削除するべきである。

b)コピーワンス・ダビング10・B−CAS問題について
 私はコピーワンスにもダビング10にも反対する。そもそも、この問題は、放送局・権利者にとっては、視聴者の利便性を著しく下げることによって、一旦は広告つきながらも無料で放送したコンテンツの市場価格を不当につり上げるものとして機能し、国内の大手メーカーとっては、B−CASカードの貸与と複雑な暗号システムを全てのテレビ・録画機器に必要とすることによって、中小・海外メーカーに対する参入障壁として機能するB−CASシステムの問題を淵源とするのであって、このB−CASシステムと独禁法の関係を検討するということを知財計画2017では明記してもらいたい。検討の上B−CASシステムが独禁法違反とされるなら、速やかにその排除をして頂きたい。また、無料の地上放送において、逆にコピーワンスやダビング10のような視聴者の利便性を著しく下げる厳格なコピー制御が維持されるのであれば、私的録画補償金に存在理由はなく、これを速やかに廃止するべきである。

 4K放送について、無料放送を録画不可とできるようにする検討が放送局とメーカーで構成される次世代放送推進フォーラムにおいて行われているという報道もあった。その後の検討は不明だが、上で書いたような、コピーワンスやダビング10の愚を繰り返してはならない。このような消費者の利便性に極めて大きな影響を持つ検討については可能な限り速やかに今まで及び今後の検討の公開並びに利用者・消費者からの意見の取り入れを促すべきである。

c)著作権検閲・ストライクポリシーについて
 ファイル共有ソフトを用いて著作権を侵害してファイル等を送信していた者に対して警告メールを送付することなどを中心とする電気通信事業者と権利者団体の連携による著作権侵害対策が警察庁、総務省、文化庁などの規制官庁が絡む形で行われており、警察によってファイル共有ネットワークの監視も行われているが、このような対策は著作権検閲に流れる危険性が極めて高い。

 フランスで導入が検討された、警告メールの送付とネット切断を中心とする、著作権検閲機関型の違法コピー対策である3ストライクポリシーは、2009年6月に、憲法裁判所によって、インターネットのアクセスは、表現の自由に関係する情報アクセスの権利、つまり、最も基本的な権利の1つとしてとらえられるとされ、著作権検閲機関型の3ストライクポリシーは、表現の自由・情報アクセスの権利やプライバシーといった他の基本的な権利をないがしろにするものとして、真っ向から否定されている。ネット切断に裁判所の判断を必須とする形で導入された変形ストライク法も何ら効果を上げることなく、フランスでは今もストライクポリシーについて見直しの検討が行われており、2013年7月にはネット切断の罰が廃止されている。日本においては、このようなフランスにおける政策の迷走を他山の石として、このように表現の自由・情報アクセスの権利やプライバシーといった他の基本的な権利をないがしろにする対策を絶対に導入しないこととするべきであり、警察庁などが絡む形で検討されている違法ファイル共有対策についても、通信の秘密やプライバシー、情報アクセス権等の国民の基本的な権利をきちんと尊重する形で進めることが担保されなくてはならない。

d)著作権法へのセーフハーバー規定の導入について
 動画投稿サイト事業者がJASRACに訴えられた「ブレイクTV」事件や、レンタルサーバー事業者が著作権幇助罪で逮捕され、検察によって姑息にも略式裁判で50万円の罰金を課された「第(3)世界」事件や、1対1の信号転送機器を利用者からほぼ預かるだけのサービスが放送局に訴えられ、最高裁判決で違法とされた「まねきTV」事件等を考えても、今現在、カラオケ法理の適用範囲はますます広く曖昧になり、間接侵害や著作権侵害幇助のリスクが途方もなく拡大し、甚大な萎縮効果・有害無益な社会的大混乱が生じかねないという非常に危険な状態がなお続いている。間接侵害事件や著作権侵害幇助事件においてネット事業者がほぼ直接権利侵害者とみなされてしまうのでは、プロバイダー責任制限法によるセーフハーバーだけでは不十分であり、間接侵害や著作権侵害幇助罪も含め、著作権侵害とならない範囲を著作権法上きちんと確定することは喫緊の課題である。ただし、このセーフハーバーの要件において、標準的な仕組み・技術や違法性の有無の判断を押しつけるような、権利侵害とは無関係の行政機関なり天下り先となるだろう第3者機関なりの関与を必要とすることは、検閲の禁止・表現の自由等の国民の権利の不当な侵害に必ずなるものであり、絶対にあってはならないことである。

 知財計画2017において、プロバイダに対する標準的な著作権侵害技術導入の義務付け等を行わないことを合わせ明記するとともに、間接侵害や刑事罰・著作権侵害幇助も含め著作権法へのセーフハーバー規定の速やかな導入を検討するとしてもらいたい。この点に関しては、逆に、検閲の禁止や表現の自由の観点から技術による著作権検閲の危険性の検討を始めてもらいたい。

e)二次創作規制の緩和について
 2014年8月のクールジャパン提言の第13ページに「クリエイティビティを阻害している規制についてヒアリングし規制緩和する。コンテンツの発展を阻害する二次創作規制、ストリートパフォーマンスに関する規制など、表現を限定する規制を見直す。」と記載されている通り、二次創作は日本の文化的創作の原動力の一つになっており、その推進のために現状の規制を緩和する必要がある。これは知的財産に関わる重要な提言であり、二次創作規制を緩和するという記載を知財計画2017においてもそのまま取り入れ、政府としてこのような規制の緩和を強力に推進することを重ねてきちんと示すべきである。

f)著作権等に関する真の国際動向について国民へ知らされる仕組みの導入及び文化庁ワーキンググループの公開について
 WIPO等の国際機関にも、政府から派遣されている者はいると思われ、著作権等に関する真の国際動向について細かなことまで即座に国民へ知らされる仕組みの導入を是非検討してもらいたい。
 また、2013年からの著作物等の適切な保護と利用・流通に関するワーキングチーム及び2015年からの新たな時代のニーズに的確に対応した制度等の整備に関するワーキングチームの審議は公開とされたが、文化庁はワーキングチームについて公開審議を原則とするにはなお至っていない。上位の審議会と同様今後全てのワーキンググループについて公開審議を原則化するべきである。

g)天下りについて
 最近文部科学省の天下り問題が大きく報道され、全省庁で調査を行うこととなっているようだが、知財政策においても、天下り利権が各省庁の政策を歪めていることは間違いなく、知財政策の検討と決定の正常化のため、文化庁から著作権関連団体への、総務省から放送通信関連団体・企業への、警察庁からインターネットホットラインセンター他各種協力団体・自主規制団体への天下りの禁止を知財本部において決定して頂きたい。(これらの省庁は特にひどいので特に名前をあげたが、他の省庁も含めて決定してもらえるなら、それに超したことはない。)

(3)その他一般的な情報・ネット・表現規制について
 知財計画改訂において、一般的な情報・ネット・表現規制に関する項目は削除されているが、常に一方的かつ身勝手な主張を繰り広げる自称良識派団体が、意味不明の理屈から知財とは本来関係のない危険な規制強化の話を知財計画に盛り込むべきと主張をしてくることが十分に考えられるので、ここでその他の危険な一般的な情報・ネット・表現規制強化の動きに対する反対意見も述べる。今後も、本来知財とは無関係の、一般的な情報・ネット・表現規制に関する項目を絶対に知財計画に盛り込むことのないようにしてもらいたい。

a)青少年ネット規制法・出会い系サイト規制法について
 そもそも、青少年ネット規制法は、あらゆる者から反対されながら、有害無益なプライドと利権を優先する一部の議員と官庁の思惑のみで成立したものであり、速やかに廃止が検討されるべきものである。また、出会い系サイト規制法の改正は、警察庁が、どんなコミュニケーションサイトでも人は出会えるという誰にでも分かることを無視し、届け出制の対象としては事実上定義不能の「出会い系サイト事業」を定義可能と偽り、改正法案の閣議決定を行い、法案を国会に提出したものであり、他の重要法案と審議が重なる中、国会においてもその本質的な問題が見過ごされて可決され、成立したものである。憲法上の罪刑法定主義や検閲の禁止にそもそも違反している、この出会い系サイト規制法の改正についても、今後、速やかに元に戻すことが検討されるべきである。

b)児童ポルノ規制・サイトブロッキングについて
 児童ポルノ法規制強化問題・有害サイト規制問題における自称良識派団体の主張は、常に一方的かつ身勝手であり、ネットにおける文化と産業の発展を阻害するばかりか、インターネットの単純なアクセスすら危険なものとする非常識なものばかりである。今後は、このような一方的かつ身勝手な規制強化の動きを規制するため、憲法の「表現の自由」に含まれ、国際人権B規約にも含まれている国民の「知る権利」を、あらゆる公開情報に安全に個人的にアクセスする権利として、通信法に法律レベルで明文で書き込むべきである。同じく、憲法に規定されている検閲の禁止から、技術的な検閲やサイトブロッキングのような技術的検閲の禁止を通信法に法律レベルで明文で書き込むべきである。

 閲覧とダウンロードと取得と所持の区別がつかないインターネットにおいては、例え児童ポルノにせよ、情報の単純所持や取得の規制は有害無益かつ危険なもので、憲法及び条約に規定されている「知る権利」を不当に害するものとなる。「自身の性的好奇心を満たす目的で」、積極的あるいは意図的に画像を得た場合であるなどの限定を加えたところで、エスパーでもない限りこのような積極性を証明することも反証することもできないため、このような情報の単純所持や取得の規制の危険性は回避不能であり、思想の自由や罪刑法定主義にも反する。繰り返し取得としても、インターネットで2回以上他人にダウンロードを行わせること等は技術的に極めて容易であり、取得の回数の限定も、何ら危険性を減らすものではない。

 児童ポルノ規制の推進派は常に、提供による被害と単純所持・取得を混同する狂った論理を主張するが、例えそれが児童ポルノであろうと、情報の単純所持ではいかなる被害も発生し得ない。現行法で、ネット上であるか否かにかかわらず、提供及び提供目的の所持が規制されているのであり、提供によって生じる被害と所持やダウンロード、取得、収集との混同は許され得ない。そもそも、最も根本的なプライバシーに属する個人的な情報所持・情報アクセスに関する情報を他人が知ることは、通信の秘密や情報アクセスの権利、プライバシーの権利等の基本的な権利からあってはならないことである。

 アニメ・漫画・ゲームなどの架空の表現に対する規制対象の拡大も議論されているが、このような対象の拡大は、児童保護という当初の法目的を大きく逸脱する、異常規制に他ならない。アニメ・漫画・ゲームなどの架空の表現において、いくら過激な表現がなされていようと、それが現実の児童被害と関係があるとする客観的な証拠は何一つない。いまだかつて、この点について、単なる不快感に基づいた印象批評と一方的な印象操作調査以上のものを私は見たことはないし、虚構と現実の区別がつかないごく一部の自称良識派の単なる不快感など、言うまでもなく一般的かつ網羅的な表現規制の理由には全くならない。アニメ・漫画・ゲームなどの架空の表現が、今の一般的なモラルに基づいて猥褻だというのなら、猥褻物として取り締まるべき話であって、それ以上の話ではない。どんな法律に基づく権利であれ、権利の侵害は相対的にのみ定まるものであり、実際の被害者の存在しない創作物・表現に対する規制は何をもっても正当化され得ない。民主主義の最重要の基礎である表現の自由や言論の自由、思想の自由等々の最も基本的な精神的自由そのものを危うくすることは絶対に許されない。この点で、2012年6月にスウェーデンで漫画は児童ポルノではないとする最高裁判決が出されたことなども注目されるべきである。

 単純所持規制にせよ、創作物規制にせよ、両方とも1999年当時の児童ポルノ法制定時に喧々囂々の大議論の末に除外された規制であり、規制推進派が何と言おうと、これらの規制を正当化するに足る立法事実の変化はいまだに何一つない。

 既に、警察などが提供するサイト情報に基づき、統計情報のみしか公表しない不透明な中間団体を介し、児童ポルノアドレスリストの作成が行われ、そのリストに基づいて、ブロッキング等が行われているが、いくら中間に団体を介そうと、一般に公表されるのは統計情報に過ぎす、児童ポルノであるか否かの判断情報も含め、アドレスリストに関する具体的な情報は、全て閉じる形で秘密裏に保持されることになるのであり、インターネット利用者から見てそのリストの妥当性をチェックすることは不可能であり、このようなアドレスリストの作成・管理において、透明性・公平性・中立性を確保することは本質的に完全に不可能である。このようなリストに基づくブロッキング等は、自主的な取組という名目でいくら取り繕おうとも、憲法に規定されている表現の自由(知る権利・情報アクセスの権利を含む)や検閲の禁止といった国民の基本的な権利を侵害するものとならざるを得ないのであり、小手先の運用変更などではどうにもならない。

 児童ポルノ規制法に関しては、提供及び提供目的での所持が禁止されているのであるから、本当に必要とされることはこの規制の地道なエンフォースであって有害無益かつ危険極まりない規制強化の検討ではない。DVD販売サイトなどの海外サイトについても、本当に児童ポルノが販売されているのであれば、速やかにその国の警察に通報・協力して対処すべきだけの話であって、それで対処できないとするに足る具体的根拠は全くない。警察自らこのような印象操作で規制強化のマッチポンプを行い、警察法はおろか憲法の精神にすら違背していることについて警察庁は恥を知るべきである。例えそれが何であろうと、情報の単純所持や単なる情報アクセスではいかなる被害も発生し得えないのであり、自主的な取組という名目でいくら取り繕おうとも、憲法に規定されている表現の自由(知る権利・情報アクセスの権利を含む)や検閲の禁止といった国民の基本的な権利を侵害するものとならざるを得ないサイトブロッキングは即刻排除するべきであり、そのためのアドレスリスト作成管理団体として設立された、インターネットコンテンツセーフティ協会は即刻その解散が検討されてしかるべきである。

 なお、民主主義の最重要の基礎である表現の自由に関わる問題において、一方的な見方で国際動向を決めつけることなどあってはならないことであり、欧米においても、情報の単純所持規制やサイトブロッキングの危険性に対する認識はネットを中心に高まって来ていることは決して無視されてはならない。例えば、欧米では既にブロッキングについてその恣意的な運用によって弊害が生じていることや、アメリカにおいても、2009年に連邦最高裁で児童オンライン保護法が違憲として完全に否定され、2011年6月に連邦最高裁でカリフォルニア州のゲーム規制法が違憲として否定されていること、ドイツで児童ポルノサイトブロッキング法は検閲法と批判され、最終的に完全に廃止されたことなども注目されるべきである(http://www.zdnet.de/news/41558455/bundestag-hebt-zensursula-gesetz-endgueltig-auf.htm参照)。スイスの2009年の調査でも、2002年に児童ポルノ所持で捕まった者の追跡調査を行っているが、実際に過去に性的虐待を行っていたのは1%、6年間の追跡調査で実際に性的虐待を行ったものも1%に過ぎず、児童ポルノ所持はそれだけでは、性的虐待のリスクファクターとはならないと結論づけており、児童ポルノの単純所持規制・ブロッキングの根拠は完全に否定されているのである(http://www.biomedcentral.com/1471-244X/9/43/abstract参照)。欧州連合において、インターネットへのアクセスを情報の自由に関する基本的な権利として位置づける動きがあることも見逃されてはならない。政府・与党内の検討においては、このような国際動向もきちんと取り上げるべきである。

 そして、単純所持規制に相当し、上で書いた通り問題の大きい性的好奇心目的所持罪を含む児童ポルノの改正法案が国会で2014年6月18日に可決・成立し、同年6月25日に公布され、2015年7月15日に施行された。この問題の大きい性的好奇心目的所持罪を規定する児童ポルノ規制法第7条第1項は即刻削除するべきであり、合わせ、政府・与党においては、児童ポルノを対象とするものにせよ、いかなる種類のものであれ、情報の単純所持・取得規制・ブロッキングは極めて危険な規制であるとの認識を深め、このような規制を絶対に行わないこととして、危険な法改正案が2度と与野党から提出されることが無いようにするべきである。

 さらに、性的好奇心目的所持罪を規定する児童ポルノ規制法第7条第1項を削除するとともに、児童ポルノの単純所持規制・創作物規制といった非人道的な規制を導入している諸国は即刻このような規制を廃止するべきと、そもそも最も根本的なプライバシーに属し、何ら実害を生み得ない個人的な情報所持・情報アクセスに関する情報を他人が知ること自体、通信の秘密や情報アクセスの権利、プライバシーの権利等の国際的かつ一般的に認められている基本的な権利からあってはならないことであると、日本政府から国際的な場において各国に積極的に働きかけてもらいたい。

 また、様々なところで検討されている有害サイト規制についても、その規制は表現に対する過度広汎な規制で違憲なものとしか言いようがなく、各種有害サイト規制についても私は反対する。

c)東京都青少年健全育成条例他、地方条例の改正による情報規制問題について
 東京都でその青少年健全育成条例の改正が検討され、非実在青少年規制として大騒ぎになったあげく、2010年12月に、当事者・関係者の真摯な各種の意見すら全く聞く耳を持たれず、数々の問題を含む条例案が、都知事・東京都青少年・治安対策本部・自公都議の主導で都議会で通された。通過版の条例改正案も、非実在青少年規制という言葉こそ消えたものの、かえって規制範囲は非実在性犯罪規制とより過度に広汎かつ曖昧なものへと広げられ、有害図書販売に対する実質的な罰則の導入と合わせ、その内容は違憲としか言わざるを得ない内容のものである。また、この東京都の条例改正にも含まれている携帯フィルタリングの実質完全義務化は、青少年ネット規制法の精神にすら反している行き過ぎた規制である。さらに、大阪や京都などでは、児童ポルノに関して、法律を越える範囲で勝手に範囲を規定し、その単純所持等を禁止する、明らかに違憲な条例が通されるなどのデタラメが行われている。

 これらのような明らかな違憲条例の検討・推進は、地方自治体法第245条の5に定められているところの、都道府県の自治事務の処理が法令の規定に違反しているか著しく適正を欠きかつ明らかに公益を害していると認めるに足ると考えられるものであり、総務大臣から各地方自治体に迅速に是正命令を出すべきである。また、当事者・関係者の意見を完全に無視した東京都における検討など、民主主義的プロセスを無視した極めて非道なものとしか言いようがなく、今後の検討においてはきちんと民意が反映されるようにするため、地方自治法の改正検討において、情報公開制度の強化、審議会のメンバー選定・検討過程の透明化、パブコメの義務化、条例の改廃請求・知事・議会のリコールの容易化などの、国の制度と整合的な形での民意をくみ上げるシステムの地方自治に対する法制化の検討を速やかに進めてもらいたい。また、各地方の動きを見ていると、出向した警察官僚が強く関与する形で、各都道府県の青少年問題協議会がデタラメな規制強化騒動の震源となることが多く、今現在のデタラメな規制強化の動きを止めるべく、さらに、中央警察官僚の地方出向・人事交流の完全な取りやめ、地方青少年問題協議会法の廃止、問題の多い地方青少年問題協議会そのものの解散の促進についても速やかに検討を開始するべきである。

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2016年12月28日 (水)

第372回:2016年の終わりに

 トランプ氏のアメリカ大統領選挙当選の結果発効の見込みが全く立っていないことが不幸中の幸いとは言え、日本の国会で極めて問題の多いTPP協定と関連法案が可決されるなど今年もおよそロクでもない年だったが、今日で各省庁も休みに入り、年内のイベントは一通り終わったと思うので、ここで、今まで取り上げる暇があまりなかった細かな話をまとめて書いておきたいと思う。

 まず、知財本部では、10月から検証・評価・企画委員会が開催されており、今のところほぼ今までの取り組みのフォローアップをしているだけで何か新しい方向性が出ているということはないが、産業財産権分野、コンテンツ分野、新たな情報財検討委員会と3つに分かれて検討が進められている。この中では、新たな情報財検討委員会がAI(人工知能)の作成・保護・利活用の在り方を検討しているようだが、例によって具体的に何をどうしたいのかいまいち良く分からない。

 次に文化庁では、例年通り文化審議会著作権分科会の下で、著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会法制・基本問題小委員会新たな時代のニーズに的確に対応した制度等の整備に関するワーキングチーム国際小委員会が開催されている。茂木和洋氏が最近の検討資料を氏のサイトに上げて下さっているが、私的録音録画補償金制度に関しては関係者の意見が対立したままで、一般的な権利制限規定(フェアユース)の導入には否定的と文化庁の検討は相変わらず全く期待できない状況である。さらに、まだかなり整理が必要だろうと思うが、法制・基本問題小委員会でリーチサイト対策についての検討が進められていることも要注意だろう。

 特許庁では、産業構造審議会知的財産分科会の下で、審査基準に関する検討なども行われているが、法制度に絡むものとして特許制度小委員会商標制度小委員会が開催されている。このうち7月に開催されていた商標制度小委員会の方ではすぐに法改正をするような話にはなっていないようだが、特許制度小委員会の方では知財計画2016(第363回参照)を受けて知財紛争処理システムの在り方に関する検討が行われている。

 また、経産省では、営業秘密の保護・活用に関する小委員会も開催されているが、これもまた資料を見ても何をどうしたいのか良く分からない。

 農水省では、種苗分科会が開催されているが、農水省関連としてはそのHPに書かれている通り、TPP関連法として成立した地理的表示保護法の改正法が既に施行されていることに注意が必要だろう。(無論改正法の他の部分はTPP協定の発効と結びついているので施行されていないが。)

 最後に、総務省では、知財とは直接関係がないが、放送を巡る諸課題に関する検討会放送コンテンツの製作・流通の促進等に関する検討委員会が開催されており、放送番組のネット同時配信の検討が行われている。

 TPP協定と関連法が国会を通った上、いつも通り各省庁は何のためか良く分からない検討のための検討をこぞって繰り広げており、来年も良い年にはなりそうもないが、だからと言って諦めるつもりもない。政官業に巣食う全ての利権屋に悪い年を。そして、この拙いブログを読んで下さっている方々に心からの感謝を。

(2017年1月11日の追記:特許庁のHPに資料が掲載されているが、昨日10日に意匠制度小委員会も開催されていたようである。意匠分野における優先権書類の電子的交換の仕組みの導入などそれなりに実務的に重要な検討もしているようだが、資料を見る限り、意匠法について大きな法改正が今すぐ動きそうな様子ではない。)

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2016年5月 9日 (月)

第363回:知財計画2016の文章の確認

 今日5月9日に知財本部知財計画2016(pdf)概要(pdf))が決定された。前回書いた通りで、特に想定外のことが書かれているということもなく、例によってもはや何のために作っているのか良く分からない施策項目集に過ぎないが、政府の現在の方針が書かれているには違いないので、ここで、法改正事項を中心にざっとその内容を確認しておきたいと思う。(知財計画2015年の文章については第338回参照)

 ほとんどどうでもいいお題目の部分を全て飛ばして、まず第11〜12ページで、柔軟性のある権利制限等について、

(イノベーション促進に向けた権利制限規定等の検討)
・デジタル・ネットワーク時代の著作物の利用への対応の必要性に鑑み、新たなイノベーションへの柔軟な対応と日本発の魅力的なコンテンツの継続的創出に資する観点から、柔軟性のある権利制限規定について、次期通常国会への法案提出を視野に、その効果と影響を含め具体的に検討し、必要な措置を講ずる。また、柔軟性のある権利制限規定に関連して、予見可能性の向上等の観点から、対象とする行為等に関するガイドラインの策定等を含め、法の適切な運用を図るための方策について検討を行う。(短期・中期)(文部科学省)
・サイバーセキュリティに関連する産業の発展に向け、著作権法におけるセキュリティ目的のリバースエンジニアリングに関する適法性の明確化について、制度的な対応の可能性も含め具体的な検討を行う。(短期・中期)(文部科学省)

(著作権者不明等の場合の裁定制度の更なる改善)
・権利者不明著作物等の利用を円滑化するため、著作権者不明等の場合の裁定制度における補償金供託について、一定の場合に後払いを可能とすること等の見直しについて内容を検討し、次期通常国会への法案提出を視野に、必要な措置を講ずる。また、利用者による権利者探索コスト低減のための民間団体の取組に対する支援の在り方について2016年度中に検討を行い、必要な措置を講ずる。(短期・中期)(文部科学省)

(円滑なライセンシング体制の整備・構築)
・権利者不明著作物等のほか、著作権管理団体が管理していない著作物を含めて、大量に著作物を利用する場合への対応の観点から、拡大集中許諾制度の導入について、我が国における集中管理の状況や実施ニーズ、法的正当性、実施する団体及び対価の在り方等に係る課題を踏まえ、検討を進める。(短期・中期)(文部科学省)
・権利処理手続を円滑化し、コンテンツの活用を促進するため、コンテンツ等の権利情報を集約化したデータベースの整備を官民が連携して分野ごとに進めていく。(短期・中期)(文部科学省、経済産業省)
・集中管理による契約スキームやワンストップ窓口となる「音楽集中管理センター」(仮称)等、民間におけるライセンシングのための環境の整備・構築に係る取組に対して、その具体化に向け必要な支援を行う。(短期・中期)(文部科学省)

(持続的なコンテンツ再生産につなげるための環境整備)
・クリエーターへ適切に対価が還元され、コンテンツの再生産につながるよう、私的録音録画補償金制度の見直しや当該制度に代わる新たな仕組みの導入について、文化審議会において検討を進め、結論を得て、必要な措置を講ずる。(短期・中期)(文部科学省、経済産業省)

(教育の情報化の推進)
・デジタル化した教材の円滑な利活用やオンデマンド講座等のインターネットを活用した教育における著作権制度及びライセンシング体制に関する課題について検討し、必要な措置を講ずる。(短期・中期)(文部科学省)
・デジタル教科書・教材の位置付け及びこれらに関連する教科書検定制度の在り方について、2016年中に導入に向けた検討を行い、結論を得て、必要な措置を講ずる。当該検討を踏まえつつ、関連する著作権制度等の在り方についても併せて検討を行い、速やかに結論を得る。(短期・中期)(文部科学省)
・教育現場においてICTを利用するに当たり、学校間、学校・家庭が連携した新たな学びを推進するための指導方法の開発、端末やシステムの設置に係るコスト、教材・学習履歴の保存・活用の在り方等の課題の解決に資するため、クラウド技術等を活用した実証研究を引き続き実施する。(短期・中期)(文部科学省、総務省)

と書かれ、確かに予想通り、柔軟性のある権利制限規定について、「次期通常国会への法案提出を視野に、その効果と影響を含め具体的に検討し、必要な措置を講ずる」と、法改正に対する言及も入った記載になっているが、案の定検討するのは文部科学省すなわち文化庁なので大して期待は持てない。また、リバースエンジニアリングや私的録音録画補償金制度の見直しに関する記載も残っている。

(なお、アーカイブと著作権法の関係では、第50ページに、

(アーカイブの構築と利活用の促進のための著作権制度の整備)
・美術館等が所蔵する著作物に関し、解説・紹介のために当該著作物のデジタルデータの利用を可能とすることについて具体的な制度の検討を行い、必要な措置を講ずる。(短期・中期)(文部科学省)

という、美術館の所蔵品の解説・紹介のための利用に関する検討項目も残されている。)

 そして、第12ページで、人口知能や3Dデータと知財の関係について、

(人工知能によって自律的に生成される創作物・3Dデータ・ビッグデータ時代のデータベース等に対応した知財システムの検討)
・AI創作物や3Dデータ、創作性を認めにくいデータベース等の新しい情報財について、例えば市場に提供されることで生じた価値などに注目しつつ、知財保護の必要性や在り方について、具体的な検討を行う。(短期・中期)(経済産業省、内閣府、関係府省)
・現行の知財制度では権利の対象となっていないAI創作物など新しい情報財と知財制度の関係について、国際的な議論を惹起する観点から、我が国における検討状況の海外発信に努める。(短期・中期)(内閣府)

と書かれているが、これも予想通りで、検討するというだけで特に方向性は出されていない。

 第13ページの、ネットにおける知財侵害対策検討に関する部分、

<<デジタル・ネットワーク時代の知財侵害対策>>
・リーチサイトを通じた侵害コンテンツへの誘導行為への対応に関して、権利保護と表現の自由のバランスに留意しつつ、対応すべき行為の範囲等、法制面での対応を含め具体的な検討を進める。(短期・中期)(文部科学省)
・オンライン広告対策に関し実態調査を行うとともに、それを踏まえつつ、悪質な知財侵害サイトに対するオンライン広告への対応方策について具体的な検討を進める。(短期・中期)(経済産業省)
・インターネット上の知財侵害に対する諸外国におけるサイトブロッキングの運用状況の把握等を通じ、その効果や影響を含めて引き続き検討を行う。(内閣府、関係府省)
・ネットワーク関連発明について、海外に置かれたサーバーから我が国ユーザーを対象にサービスが提供される場合等の国境を跨いで構成される侵害行為における知財の適切な保護の在り方について、調査研究を行う。(短期)(経済産業省)
・インターネット上の知財侵害対策の実効性を高めるため、プラットフォーマーとの連携の促進に取り組む。(短期・中期)(総務省)
・インターネット上の著作権侵害への対応に関する具体的な事例に即した実践的な権利者向けセミナーを新たに開始する。また、海賊版対策のための普及・啓発活動や権利行使に資する情報の整理・提供に引き続き取り組む。(短期・中期)(文部科学省)

前回取り上げた報告書の内容通りで、表現の自由に関する言及もあり、現時点でサイトブロッキングを導入する方針であるとまでは読めないが、ここで書かれている、文化庁や知財本部で続けられるのだろうリーチサイトやサイトブロッキングに関する検討が引き続き要注意なのは間違いないだろう。

 特許関係では、第55〜56ページで、

(適切かつ公平な証拠収集手続の実現)
・訴え提起後の証拠収集手続に関して、現行の書類提出命令を発令しやすくするよう、具体的態様の明示義務が十分に履行されなかった場合に同命令が発令されやすくする方策や同命令と秘密保持命令を組み合わせて発令できるようにすることや、中立的な第三者が被疑侵害者に対して査察を行う制度(提訴後査察)について、産業界を始めとした関係者の意見を踏まえつつ、具体的に検討を進め、2016年度中に法制度の在り方に関する一定の結論を得る。(短期)(経済産業省)
・訴え提起前の証拠収集手続に関して、現行制度の利用例の共有等を進めるとともに、現行制度が活用されていない要因の分析及びその具体的改善策の可能性について検討する。(短期・中期)(経済産業省)

(ビジネスの実態やニーズを反映した適切な損害賠償額の実現)
・現行特許法第102条第3項に関して、通常の実施料相当額を上回る損害額の算定がより容易にできるようにするための考慮要素の明確化について、産業界を始めとした関係者の意見を踏まえつつ、具体的に検討を進め、2016年度中に法制度の在り方に関する一定の結論を得る。(短期)(経済産業省)
・最低保障額としての通常の実施料相当額の認定の基礎として活用できるようにするため、通常の実施料のデータベース等の作成について、その可否も含めて具体的に検討を進める。(短期・中期)(経済産業省、関係府省)
・権利者が実態に基づき弁護士費用等を請求する際の基礎として活用できるようにするため、知財訴訟に必要な費用のデータベース等の作成について、その可否も含めて具体的に検討を進める。(短期・中期)(内閣府、関係府省)

(権利付与から紛争処理プロセスを通じての権利の安定性の向上)
・専門官庁によるレビュー機会の拡大としての侵害訴訟における特許庁に対する求意見制度や権利の逐次安定化を図るための特許庁における有効性確認手続、侵害訴訟における訂正審判請求等を要件としない訂正の再抗弁について、産業界を始めとした関係者の意見を踏まえつつ、具体的に検討を進め、2016年度中に法制度の在り方に関する一定の結論を得る。(短期)(経済産業省)
・侵害訴訟における技術的専門性を更に高める観点から、公平性、中立性、透明性等の課題を解消した上で、裁判所における更なる技術的専門性の向上や裁判所と特許庁との連携強化に取り組む。(短期・中期)(経済産業省)
・侵害訴訟等において権利の有効性が推定されることを確認的に規定するための明らか要件の導入の是非及び訂正審判等の要件緩和等の是非等について、産業界を始めとした関係者の意見を踏まえつつ、具体的に検討を進め、2016年度中に法制度の在り方に関する一定の結論を得る。(短期)(経済産業省)
・安定した質の高い特許を増やしていく観点から、弁理士や出願人といった特許の出願側に一層の対応を促すとともに、特許庁における審査品質向上のためのこれまでの取組を更に進める。(短期・中期)(経済産業省)

といったことが書かれているが、これも前回取り上げた報告書の内容をそのまま書いているだけである。

 最後に、第62ページで、TPP協定について、

(通商関連協定等を活用した知財保護と執行強化)
・TPP協定の実施のために必要な知財制度の整備を行うとともに、今後の自由貿易協定(FTA)/経済連携協定(EPA)等の二国間・多国間協定交渉において、知的財産の保護強化、模倣品・海賊版対策を積極的に取り上げ、ACTA(偽造品の取引の防止に関する協定)やTPP協定等の高いレベルの国際協定の規定を規律強化の基礎として有効に活用しつつ、国際的に調和した知財制度の整備と実効的な法執行の確保に努める。(短期・中期)(外務省、財務省、経済産業省、文部科学省、農林水産省、総務省、法務省)

と書かれており、この文章を読む限り、政府としてはTPP協定の法整備・批准を既定路線のように考えているようだが、アメリカを中心としてTPP協定を巡る国際動向はかなり流動的であり、秋に向けて情勢はどんどん厳しくなって行くのではないかと私は予想している。(なお、海賊版対策条約(ACTA)についてはTPP協定と項目が一緒にされて働きかけに関する記載すらなくなり、単に規律強化の基礎として活用するとだけの書き方になっているので、日本政府としてもさすがにACTA発効はほぼ諦めたのかも知れない。そもそも日本しか批准しておらず、他の国に見向きもされていないACTAを規律強化の基礎として活用できるとも思えないが。)

 残念ながら今年の知財計画も全体を通してあまり期待の持てることは書かれていない。知財政策における今年の最大の問題は問答無用でTPP協定とそのための法改正案の行方ということになるだろう。

(2016年5月24日の追記:内容に変更はないが、知財本部のHPに案の取れた正式版の知財計画(pdf)概要(pdf))が掲載されているので、念のためにここにリンクを張っておく。)

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2016年4月18日 (月)

第362回:知財本部委員会報告書

 幾つか既に報道がなされているが、今日4月18日に知財本部で検証・評価・企画委員会が開催され、知的財産推進計画2016の素案の検討がされている。

 知財計画2016の素案構成(pdf)は目次レベルのものしか公開されていないが、知財計画の中身は、その下の委員会である次世代知財システム検討委員会報告書(pdf)知財紛争処理システム検討委員会報告書(pdf)知財教育タスクフォース議論の整理(pdf)の内容を踏まえたものになると思われるので、ここでは、特に法改正に関わる前の2つの報告書についてどのようなことが書かれているかを見ておきたいと思う。

(1)次世代知財システム検討委員会報告書の内容
 この報告書(pdf)は、その目次に書かれている通り、「2.デジタル・ネットワーク時代の知財システム」において柔軟性のある権利制限規定とライセンスの円滑化の話を、「3.新たな情報財の創出と知財システム」において人工知能、3Dプリンタ、データベースと知財制度の話を、「4.デジタル・ネットワーク時代の国境を越える知財侵害への対応」においてリーチサイトやサイトブロッキングの話を取り上げている。

 まず、2.の中の柔軟性のある権利制限規定とライセンスの円滑化について、今後具体的な取組を進めていくことが必要とされている事項は第20ページに以下のように書かれている。

○新たなイノベーションに柔軟に対応するとともに、日本発の魅力的なコンテンツの継続的創出を図る観点から、デジタル・ネットワーク時代の著作物の利用の特徴を踏まえた対応の必要性に鑑み、一定の柔軟性のある権利制限規定について検討を進める。併せて、著作権を制限することが正当化される視点を総合的に考慮することを含むより一層柔軟な権利制限規定について、その効果と影響を含め検討を行う。以上の検討を踏まえ、早期の法改正の提案に向け、柔軟性のある権利制限規定についてその内容の具体化を図る。

○新たな柔軟性のある権利制限規定の導入に当たっては、予見可能性の向上等の観点から、対象とする行為等に関するガイドラインの策定を含め具体的な検討を行う。

○孤児著作物に係る裁定制度についてより活用しやすいものとなるよう、利用者の探索コスト軽減の仕組みや、一定の場合について裁定に係る補償金の後払いを可能とすることについて、具体的な検討を行い、早期に所要の制度等整備を実施する。

○孤児著作物を含め団体が管理していない著作物を含め網羅的に利用する場合への対応の観点から、実施ニーズや中核となりうる団体が存在する分野などを念頭に、拡大集中許諾の導入可能性について、法的正当性、実施する団体・対価等のあり方を含め検討を進める。

○裁定制度や集中管理を含めた円滑な権利処理の基盤として重要な権利情報を集約化したデータベースの整備を、官民が連携して分野ごとに進めていく。

 ここで、柔軟性のある権利制限についてかなり踏み込んだ記載をしており、知財計画にもまたそれなりに書き込まれるのではないかとも思うが、残念ながら、今後検討を進めて行くのは文化庁だろうし、前の日本版フェアユースの議論の体たらくを考えても大して期待は持てないだろう。

 次に、3.の中の人工知能関係については、第30ページで以下の様なことが当面具体的に進めていくこととして書かれている。

○例えば市場に提供されることで生じた価値などに着目しつつ、一定の「価値の高い」AI創作物について、それに関与する者の投資保護と促進の観点から、知財保護のあり方について具体的な検討を行う。

○制作ができるような人工知能の構築において重要なビッグデータの収集・活用に優位性を有するプラットフォーマーについて、ビジネスモデルの実態把握等を含め、その影響力について調査分析を行う。併せて、ビッグデータの蓄積・利活用の促進に向け、データ共有に関する先行事例の創出や、データ共有に係る契約の在り方について検討を進める。

○AI創作物など新しい情報財と知財制度の関係について、国際的な議論を惹起する観点から、我が国における検討状況の海外発信に努める。

 人工知能と知財の関係の整理は難しく、実際には継続検討ということが書かれているだけであり、知財計画にも大体このまま書かれるのではないかと思う。

 3.の中の3Dデータやデータベースとの関係では、当面進めていくべきとされている事項は、第34ページと第38ページでそれぞれ以下のように書かれているが、これも継続検討ということで具体的な検討の方向性は大して書かれていない。

○知的財産権で保護されていない物の3Dデータについて、投資保護と促進の観点から、例えば3Dデータの制作過程において生じた付加価値に注目しつつ、一定の「価値の高い」3Dデータに関する知財保護のあり方について具体的な検討を行う。

○創作性を認めにくいデータベースについて、欧州等の動向や、実質面も含めた保護の実態等に照らしつつ、保護の要否や方法について具体的な検討を行う。

○公的研究資金による研究成果のうち、論文のエビデンスとしての研究データ及び当該データを格納しているデータベースの取扱いについて、オープンサイエンスに係る我が国の取組や国際的な動向等を踏まえつつ、実態面での保護の可能性を含め、引き続き検討を行う。

 そして、私が一番問題視していた4.の中のリーチサイトやサイトブロッキングに関する検討について、今後具体的に取組及び検討を進めていくことが適当とされている事項は、第44ページで以下のように書かれている。

○リーチサイトへの対応に関して、一定の行為について法的措置が可能であることを明確にすることを含め、法制面での対応など具体的な検討を進める。その際、知的財産権の保護と表現の自由等とのバランスに留意しつつ、対応すべき行為の範囲の在り方についても検討を行う。

○オンライン広告対策に関し、実態調査を行うとともに、それを踏まえつつ、悪質な知財侵害サイトに対するオンライン広告への対応方策について、具体的な検討を進める。

○インターネット上の知財侵害に対する諸外国におけるサイトブロッキングの運用状況の把握等を通じ、その効果や影響を含めて引き続き検討を行う。

○海外サーバー上での侵害行為に関し、一部または全部の発信元が海外にあるが、ネットワークを通じて我が国ユーザーを対象とするサービスの提供における知財の適切な保護のあり方について調査研究を行う。

○インターネット上の知財侵害対策の実効性を高めるため、プラットフォーマーとの連携の促進や、プラットフォーマーの影響力に関する調査分析を行う。

 これらも引き続き検討とされており、サイトブロッキングについて反対の結論がでなかったのは残念だが、この記載を読む限り、表現の自由に関する言及などもあり無理にサイトブロッキングなどの非人道的な対応を進めて行くという方向性はまだ出されていないと見て良いだろう。恐らく知財計画にもこのように書かれた上で、リーチサイトやサイトブロッキングに関する検討は続くと思われ、この点は今後も要注意である。

(2)知財紛争処理システム検討委員会報告書の内容
 こちらの報告書(pdf)はどちらかと言えば特許の話を扱っているので一般ユーザにはあまり関係ないが、重要でないということもないので、その内容を見ておきたい。

 この報告書が取り扱っている内容は、その目次にある通り、主に「第1.証拠収集手続」、「第2.損害賠償額」、「第3.権利の安定性」、「第4.差止請求権」の4点である。

 最初の「第1.証拠収集手続」についてその方向性は第17ページに以下のように書かれている。

 訴え提起前の証拠収集手続については、現行制度の周知、利用例の共有などを進めつつ、現行制度が活用されない要因の分析及びその具体的改善策の可能性の検討を行っていくことが適当である。また、訴え提起前に中立的な第三者が被疑侵害者に対して査察を行う制度(提訴前査察)について、その是非について引き続き検討することが適当である。

 訴え提起後の証拠収集手続については、現行の書類提出命令を発令しやすくするよう、具体的態様の明示義務が十分に明示されなかった場合に同命令が発令されやすくする方策や、同命令と秘密保持命令を組み合わせて発令できるようにすることについて、それぞれ具体的に検討を進めることが適当である。
 また、訴え提起後に中立的な第三者が被疑侵害者に対して査察を行う制度(提訴後査察)について、具体的に検討を進めることが適当である。
 さらに、第三者の専門家や代理人にのみ書類開示を想定した制度の是非について、引き続き検討することが適当である。

 法改正時期などはまだ良く分からないが、この記載を読む限り、査察制度の導入や書類提出命令の容易化について検討がさらに進められそうである。

 次の「第2.損害賠償額」について、その方向性は第30〜31ページに以下のように書かれている。

 現行特許法第102条の規定に関する課題に関して、1項及び2項における推定覆滅事由等(非寄与に該当する理由)の立証責任の負担者や範囲について、特許法の規定や特許権の特質を踏まえた適切な運用が行われることを期待しつつ、立証責任の負担者を明確にするための立法上の措置の可能性については、引き続き検討することが適当である。
 3項に関して、通常の実施料相当額を上回る損害額の算定がより容易にできるようにするための考慮要素の明確化について、具体的に検討を進めることが適当である。併せて、最低保障額としての通常の実施料相当額の認定の基礎として活用できるようにするため、通常の実施料のデータベース等の作成について、その可否を含め具体的に検討を進めることが適当である。

 弁護士費用を含む知的財産訴訟に必要な費用については、権利者が実態に基づき弁護士費用等を請求して、それが認容されるという適切な運用が行われることを期待しつつ、その基礎として活用できるようにするため、知的財産訴訟に必要な費用のデータベース等の作成について、その可否を含め具体的に検討を進めることが適当である。

 また、知的財産、特に特許権の領域において、不当利得返還請求の特例として、侵害者が得た利益の吐き出しをさせ、特にその利益を権利者に引き渡すことについて、それを正当化する根拠、要件などをどのように考え得るか、引き続き検討することが適当である。

 実施料データベースはさておき、この記載によると、通常の実施料相当額を上回る額の算定の容易化のための考慮要素の明確化の検討がさらに進められるようだが、このような検討は実際にはかなり難しいのではないかと思える。

 「第3.権利の安定性」の方向性は、その第41〜42ページに以下のように書かれている。

 無効審判及び無効の抗弁の在り方の見直しに関して、確認的な明らか要件の是非等や、訂正審判請求等を要件としない訂正の再抗弁について具体的に検討を進めることが適当である。また、無効の抗弁に対する対抗策としての訂正審判等の要件緩和等の是非等について、具体的に検討を進めることが適当である。
 併せて、侵害訴訟における技術的専門性を更に高める観点から、裁判所における更なる技術的専門性の向上や裁判所と特許庁との連携強化について、引き続き検討することが適当である。また、専門官庁によるレビュー機会の拡大として、侵害訴訟における求意見や権利の逐次安定化を図るための有効性確認手続について、具体的に検討を進めることが適当である。

 さらに、特許庁における審査の質の向上のためのこれまでの取組を更に進めるとともに、補正及び分割の要件等の緩和についても、引き続き検討することが適当である。

 これもどこまで意味があるのか分からないが、特許庁への求意見制度の導入や訂正の再抗弁の要件緩和、確認的な明らか要件の導入の検討が進められるようである。

 「第4.差止請求権」についての方向性は、第45ページに、

 差止請求権については、標準必須特許やPAEの場合においても、当面、法改正により一律に制限することは行わず、個々の事案に応じて対応することが適当であり、権利の濫用法理や競争法による対応のいずれの場合においても、技術標準化や産業の発達に与える影響、国際的な観点等も踏まえ、特許権を保有する者と当該特許権に係る技術を利用する者のバランスを考量して対応することが求められると考えられる。

 なお、標準必須特許やPAE等を巡る状況については、今後、社会の変化や判例の蓄積等によって変動があり得ることや権利濫用などの一般法理による対応が困難となる場合も考えられることから、その状況については引き続き注視していくことが適当である。

と書かれ、想定通りではあるが、ここだけは差止請求権の制限は難しいという結論ではっきり書かれている。

 これらの報告書の内容を読む限り、次の知財計画2016で著作権法などの知財法の改正について何か大きな方向性が示されるということはなく、ほぼ継続検討という形で書かれるのではないかと私には思える。特に柔軟性のある権利制限規定についてはそれなりに踏み込んだ記載が見られるだろうとも思うが、例によってあまり期待は持てず、残念ながら今年も、引き続きなされるだろうリーチサイトやサイトブロッキングに関する検討が最も要注意というお粗末な内容の計画が出されるのではないかと私は予想している。

(2016年4月19日夜の追記:1カ所誤記を直した(「人口知能」→「人工知能」)。)

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2016年1月17日 (日)

第356回:「知的財産推進計画2016」の策定に向けた意見募集(1月29日〆切)への提出パブコメ

 去年と異なり、今回は何故か1月4日から1月29日までの募集となっている「知的財産推進計画2016」の策定に向けた意見募集に対し、私が提出した意見をここに載せておく。

 今年は募集が1月になった所為で、知財本部検証・評価・企画委員会の知財紛争処理システム検討委員会や次世代知財システム委員会の検討の方向性がそれぞれまだ良く見えていない中での知財計画パブコメとなっているが、これらの委員会がどうあれ、今年の知財政策上の最大のトピックは問答無用でTPP問題であり、私の提出した意見も(1)a)のTPP問題に関する部分を今の状況に合わせて書き改めている。(他の点では、知財計画2015の記載(第338回参照)に合わせてリバースエンジニアリングの話を(1)e)として追加したり、4K無料放送のコピー制御の話(phileweb.comの記事及び東洋経済の記事参照)を(2)c)につけ加えたりし、また、全体的に記載の整理を多少行っている。なお、去年の提出パブコメは第336回参照。)

 報道通り3月にTPP関連法案が国会に提出される予定であるとすると、もはや各省庁で審議会や意見募集を行う時間は恐らくなく、これが法案提出前の最後の知財関連パブコメになる可能性が高い。今までのことからしても政府内の検討にどこまで影響を及ぼせるか分からないが、このような問題について関心のある方は是非提出を検討することをお勧めする。

(以下、提出パブコメ)

《要旨》
アメリカ等と比べて遜色の無い範囲で一般フェアユース条項を導入すること及びダウンロード犯罪化・違法化条項の撤廃を求める。何ら国民的コンセンサスを得ていない中でのTPP協定批准、有害無益なインターネットにおける今以上の知財保護強化、特に著作権の保護期間延長、補償金の矛盾を拡大するだけの私的録音録画補償金の対象拡大に反対する。今後真の国民視点に立った知財の規制緩和の検討が進むことを期待する。

《全文》
 最終的に国益になるであろうことを考え、各業界の利権や省益を超えて必要となる政策判断をすることこそ知財本部とその事務局が本当になすべきことのはずであるが、知財計画2015を見ても、このような本当に政策的な決定は全く見られない。知財保護が行きすぎて消費者やユーザーの行動を萎縮させるほどになれば、確実に文化も産業も萎縮するので、知財保護強化が必ず国益につながる訳ではないということを、著作権問題の本質は、ネットにおける既存コンテンツの正規流通が進まないことにあるのではなく、インターネットの登場によって新たに出てきた著作物の公正利用の類型に、今の著作権法が全く対応できておらず、著作物の公正利用まで萎縮させ、文化と産業の発展を阻害していることにあるのだということを知財本部とその事務局には、まずはっきりと認識してもらいたい。特に、最近の知財・情報に関する規制強化の動きは全て間違っていると私は断言する。

 例年通り、規制強化による天下り利権の強化のことしか念頭にない文化庁、総務省、警察庁などの各利権官庁に踊らされるまま、国としての知財政策の決定を怠り、知財政策の迷走の原因を増やすことしかできないようであれば、今年の知財計画を作るまでもなく、知財本部とその事務局には、自ら解散することを検討するべきである。そうでなければ、是非、各利権官庁に轡をはめ、その手綱を取って、知財の規制緩和のイニシアティブを取ってもらいたい。知財本部において今年度、インターネットにおけるこれ以上の知財保護強化はほぼ必ず有害無益かつ危険なものとなるということをきちんと認識し、真の国民視点に立った知財の規制緩和の検討が知財本部でなされることを期待し、本当に決定され、実現されるのであれば、全国民を裨益するであろうこととして、私は以下のことを提案する。

(1)「知的財産推進計画2015」の記載事項について:
a)環太平洋経済連携協定(TPP)などの経済連携協定(EPA)に関する取組について

 第53ページにTPPなどの協定に関する取組の強化について書かれている。TPP協定については、2015年10月5日に大筋合意が発表され、その後、文化庁、知財本部の検討を経て、11月25日にTPP総合対策本部でTPP関連政策大綱が決定されている。さらに2月には署名、3月には関連法案の国会提出、2016年の通常国会で審議が予定されているという報道もある。

 ここで、TPP協定条文の内容については、日本政府は10月5日に大筋合意の概要のみを公表し、11月5日のニュージーランド政府からの協定条文の英文公表時も全章概要を示したのみで、その後2ヶ月も経って1月7日にようやく公式の仮訳を公表したが、報道通り3月に関連法案の国会提出がされるとすると、これは、TPP協定の内容精査と政府への意見提出の時間を国民に実質与えない極めて姑息かつ卑劣なやり方と言わざるを得ない。

 そして、公開された条文によって今までのリーク文書が全て正しかったことはほぼ証明されており、TPP協定は確かに著作権の保護期間延長、DRM回避規制強化、法定賠償制度、著作権侵害の非親告罪化などを含んでいる。今ですら不当に長い著作権保護期間のこれ以上の延長など論外であり、アメリカで一般ユーザーに法外な損害賠償を発生させ、その国民のネット利用におけるリスクを不当に高め、ネットにおける文化と産業の発展を阻害することにしかつながっていない法定賠償のような日本に全くそぐわない制度の導入や、下で詳しく書く通りユーザーの情報アクセスに対するリスクを不必要に高める危険なものとしかなり得ないこれ以上のDRM回避規制の強化や、被害者が不問に付することを希望しているときまで国家が主体的に処罰を行うことが不適切な、人格権の保護という色彩が極めて強い著作権の侵害の非親告罪化など断じてなされるべきでない。極秘裏に行われた国際交渉の結果としてなし崩しでこのように危険な法改正がなされることに私は反対する。アメリカを始めとしてTPP協定を本当に批准するか国際動向が不透明な中、下で書くACTAの二の轍を踏むべきではなく、日本のみが先行して法改正、批准をするべきでないのは無論のこと、このようなTPP協定の署名・批准はなされるべきでなく、速やかに脱退するべきである。

 また、TPP交渉のような国民の生活に多大の影響を及ぼす国際交渉が政府間で極秘裏に行われたことも大問題である。国民一人一人がその是非を判断できるよう、途中経過も含めその交渉に関する情報をすべて速やかに公開するべきである。

b)DRM回避規制について
 経産省と文化庁の主導により無意味にDRM回避規制を強化する不正競争防止法と著作権法の改正案がそれぞれ以前国会を通されたが、これらの法改正を是とするに足る立法事実は何一つない。不正競争防止法と著作権法でDRM回避機器等の提供等が規制され、著作権法でコピーコントロールを回避して行う私的複製まで違法とされ、十二分以上に規制がかかっているのであり、これ以上の規制強化は、ユーザーの情報アクセスに対するリスクを不必要に高める危険なものとしかなり得ない。ユーザーの情報アクセスに対するリスクを不必要に高める危険なものとしかなり得ないこれ以上のDRM回避規制の強化はされてはならない。

 特に、DRM回避規制に関しては、有害無益な規制強化の検討ではなく、まず、私的なDRM回避行為自体によって生じる被害は無く、個々の回避行為を一件ずつ捕捉して民事訴訟の対象とすることは困難だったにもかかわらず、文化庁の片寄った見方から一方的に導入されたものである、私的な領域でのコピーコントロール回避規制(著作権法第30条第1項第2号)の撤廃の検討を行うべきである。コンテンツへのアクセスあるいはコピーをコントロールしている技術を私的な領域で回避しただけでは経済的損失は発生し得ず、また、ネットにアップされることによって生じる被害は公衆送信権によって既にカバーされているものであり、その被害とDRM回避やダウンロードとを混同することは絶対に許されない。それ以前に、私法である著作権法が、私的領域に踏み込むということ自体異常なことと言わざるを得ない。また、同時に、何ら立法事実の変化がない中、ドサクサ紛れに通された、先般の不正競争防止法改正で導入されたDRM回避機器の提供等への刑事罰付与や、以前の著作権法改正で導入されたアクセスコントロール関連規制の追加についても、速やかに元に戻す検討がなされるべきである。

 TPP協定にはDRM回避規制の強化も含まれているが、上で書いた通り、これ以上のDRM回避規制の強化がされるべきではなく、この点でも私はTPP協定の署名・批准に反対する。

c)海賊版対策条約(ACTA)について
 第53ページに書かれているACTAを背景に経産省及び文化庁の主導により無意味にDRM回避規制を強化する不正競争防止法及び著作権法の改正案が以前国会を通され、ACTA自体も国会で批准された。しかし、このようなユーザーの情報アクセスに対するリスクを不必要に高める危険なものとしかなり得ない規制強化条項を含む条約の交渉、署名及び批准は何ら国民的なコンセンサスが得られていない中でなされており、私は一国民としてACTAに反対する。今なおACTAの批准国は日本しかなく、日本は無様に世界に恥を晒し続けている。もはやACTAに何ら意味はなく、日本は他国への働きかけを止めるとともに自ら脱退してその失敗を認めるべきである。

d)一般フェアユース条項の導入について
 第42ページで柔軟性の高い権利制限規定について言及されている。ここで、一般フェアユース条項の導入について、ユーザーに対する意義からも、可能な限り早期に導入することを求める。特に、インターネットのように、ほぼ全国民が利用者兼権利者となり得、考えられる利用形態が発散し、個別の規定では公正利用の類型を拾い切れなくなるところでは、フェアユースのような一般規定は保護と利用のバランスを取る上で重要な意義を持つものである。

 2012年の法改正によって写り込み等に関する権利制限の個別規定が追加されたが、あった方が良いものとは言え、これは到底一般フェアユース条項と言うに足るものではなく、これでは著作権をめぐる今の混迷状況が変わることはない。

 著作物の公正利用には変形利用もビジネス利用も考えられ、このような利用も含めて著作物の公正利用を促すことが、今後の日本の文化と経済の発展にとって真に重要であることを考えれば、不当にその範囲を不当に狭めるべきでは無く、その範囲はアメリカ等と比べて遜色の無いものとされるべきである。ただし、フェアユースの導入によって、私的複製の範囲が縮小されることはあってはならない。

 また、「まねきTV」事件などの各種判例からも、ユーザー個人のみによって利用されるようなクラウド型サービスまで著作権法上ほぼ違法とされてしまう状況に日本があることは明らかであり、このような状況は著作権法の趣旨に照らして決して妥当なことではない。ユーザーが自ら合法的に入手したコンテンツを私的に楽しむために利用することに著作権法が必要以上に介入することが許されるべきではなく、個々のユーザーが自らのためのもに利用するようなクラウド型サービスにまで不必要に著作権を及ぼし、このような技術的サービスにおけるトランザクションコストを過大に高め、その普及を不当に阻害することに何ら正当性はない。この問題がクラウド型サービス固有の問題でないのはその通りであるが、だからといって法改正の必要性がなくなる訳ではない。著作権法の条文及びその解釈・運用が必要以上に厳格に過ぎクラウド型サービスのような技術の普及が不当に阻害されているという日本の悲惨な現状を多少なりとも緩和するべく、速やかに問題を再整理し、アメリカ等と比べて遜色の無い範囲で一般フェアユース条項を導入し、同時にクラウド型サービスなどについてもすくい上げられるようにするべきである。

 権利を侵害するかしないかは刑事罰がかかるかかからないかの問題でもあり、公正という概念で刑事罰の問題を解決できるのかとする意見もあるようだが、かえって、このような現状の過剰な刑事罰リスクからも、フェアユースは必要なものと私は考える。現在親告罪であることが多少セーフハーバーになっているとはいえ、アニメ画像一枚の利用で別件逮捕されたり、セーフハーバーなしの著作権侵害幇助罪でサーバー管理者が逮捕されたりすることは、著作権法の主旨から考えて本来あってはならないことである。政府にあっては、著作権法の本来の主旨を超えた過剰リスクによって、本来公正として認められるべき事業・利用まで萎縮しているという事態を本当に深刻に受け止め、一刻も早い改善を図ってもらいたい。

 個別の権利制限規定の迅速な追加によって対処するべきとする意見もあるが、文化庁と癒着権利者団体が結託して個別規定すらなかなか入れず、入れたとしても必要以上に厳格な要件が追加されているという惨憺たる現状において、個別規定の追加はこの問題における真の対処たり得ない。およそあらゆる権利制限について、文化庁と権利者団体が結託して、全国民を裨益するだろう新しい権利制限を潰すか、極めて狭く使えないものとして来たからこそ、今一般規定が社会的に求められているのだという、国民と文化の敵である文化庁が全く認識していないだろう事実を、政府・与党は事実としてはっきりと認めるべきである。

e)リバースエンジニアリングのための権利制限の導入について
 第42ページにリバースエンジニアリングに関する適法性の明確化について書かれている。このリバースエンジニアリングに関する権利制限について、2009年1月の分化審議会著作権分科会報告書において早期に措置すべきとされた後の7年間で何度も著作権法改正案を国会に提出する機会があったにもかかわらず、法改正案に入れなかったことは文化庁の怠慢である。技術的な調査・解析は、権利者の利益を害するどころか、技術の発展を通じて社会全体を裨益するものであり、著作権法によってこのような利用まで萎縮することは、その法目的に照らしても本来あってはならないことである。このような権利者の利益を害さず、著作物の通常の利用も妨げないような公正利用の類型についてはきちんとした権利制限による対応が必要である。このような利用を萎縮させて良いことなど全くなく、リバースエンジニアリングについて著作権法上の権利制限を速やかに設けると、知財計画2016には明記してもらいたい。

f)アーカイブの利活用促進のための著作権制度の見直しについて
 第42ページにアーカイブの構築・充実に関する著作権制度の見直しについて記載されている。このことについて文化庁の法制・基本問題小委員会において検討が進められている。ここで、真に2次利用可能な形で各種アーカイブの構築・充実を考えるのであれば、裁定制度の見直しや法解釈による対応に関する検討だけでは不十分である。特に日本において十分になされているとは言い難いパブリックドメイン資料や絶版資料の利活用をより強力に促進するべきであり、著作権法の改正により、(a)現行著作権法第31条で国会図書館のみに可能とされている絶版等資料の電子利用をあらゆる図書館及び文書館に可能とすること、合わせて(b)同条における絶版等資料以外の資料についての「滅失、損傷若しくは汚損を避けるため」という電子化のための要件を緩和してここにアーカイブ化のためという目的を追加し、著作権保護期間満了後の資料公開に備えた事前の電子化を明確に可能とすること、及び(c)個人アーカイブの作成が第30条の私的複製の範囲に含まれることを条文上明記し、個人資料の利活用及び著作権保護期間満了後の公開を促すことを私は求める。このような権利制限又は例外が不必要に狭くされるべきではなく、その他者がアーカイブを直接利用しないことを前提として他者の力を借りたアーカイブ化も可能とされるべきである。なお、諸外国における動向について注視が必要なことも無論であり、政府が強く関与する形で実質オプトアウト方式で強力に絶版作品の電子化を図るフランスの20世紀の絶版作品電子化法や、孤児作品のみならず絶版作品の利用についても規定するドイツの孤児・絶版作品デジタル利用促進法なども参考にされてしかるべきである。

 さらに、法制度上の問題ではないが、国会図書館が著作権切れの著作物について2次利用に関する許諾を原則不要としている通り、NHKによるものを含め国費又は国費相当の予算を用いた各種アーカイブにおいては、インターネットを通じ書誌事項だけではなく全コンテンツの提供を行うことを目標として資料の電子化を行うとともに、公開情報に著作権期間満了日を明示し、合わせて公開された著作権切れの著作物に関しては原則2次利用の許諾を不要とするべきである。そして、特に国会図書館及び国立公文書館のような文書中心のアーカイブに関しては一般ユーザーからの入力を通じたテキスト化システムの実装も検討してもらいたい。

g)私的録音録画補償金問題について
 第42ページでは私的録音録画補償金問題についても言及されている。権利者団体等が単なる既得権益の拡大を狙ってiPod等へ対象範囲を拡大を主張している私的録音録画補償金問題についても、補償金のそもそもの意味を問い直すことなく、今の補償金の矛盾を拡大するだけの私的録音録画補償金の対象拡大を絶対にするべきではない。

 文化庁の文化審議会著作権分科会における数年の審議において、補償金のそもそもの意義についての意義が問われたが、文化庁が、天下り先である権利者団体のみにおもねり、この制度に関する根本的な検討を怠った結果、特にアナログチューナー非対応録画機への課金について私的録音録画補償金管理協会と東芝間の訴訟に発展した。ブルーレイ課金・アナログチューナー非搭載録画機への課金について、権利者団体は、ダビング10への移行によってコピーが増え自分たちに被害が出ると大騒ぎをしたが、移行後7年以上経った今現在においても、ダビング10の実施による被害増を証明するに足る具体的な証拠は全く示されておらず、ブルーレイ課金・アナログチューナー非搭載録画機への課金に合理性があるとは到底思えない。わずかに緩和されたとは言え、今なお地上デジタル放送にはダビング10という不当に厳しいコピー制限がかかったままである。こうした実質的に全国民に転嫁されるコストで不当に厳しい制限を課している機器と媒体にさらに補償金を賦課しようとするのは、不当の上塗りである。

 なお、世界的に見ても、メーカーや消費者が納得して補償金を払っているということはカケラも無く、権利者団体がその政治力を不当に行使し、歪んだ「複製=対価」の著作権神授説に基づき、不当に対象を広げ料率を上げようとしているだけというのがあらゆる国における実情である。表向きはどうあれ、大きな家電・PCメーカーを国内に擁しない欧州各国は、私的録音録画補償金制度を、外資から金を還流する手段、つまり、単なる外資規制として使っているに過ぎない。この制度における補償金の対象・料率に関して、具体的かつ妥当な基準はどこの国を見ても無いのであり、この制度は、ほぼ権利者団体の際限の無い不当な要求を招き、莫大な社会的コストの浪費のみにつながっている。機器・媒体を離れ音楽・映像の情報化が進む中、「複製=対価」の著作権神授説と個別の機器・媒体への賦課を基礎とする私的録音録画補償金は、既に時代遅れのものとなりつつあり、その対象範囲と料率のデタラメさが、デジタル録音録画技術の正常な発展を阻害し、デジタル録音録画機器・媒体における正常な競争市場を歪めているという現実は、補償金制度を導入したあらゆる国において、問題として明確に認識されなくてはならないことである。

h)インターネット上の著作権侵害の抑止について
 第53ページにインターネット上の著作権侵害の抑止について書かれており、知財本部の次世代知財システム検討委員会で検討がされようとしているが、このようなネット上の違法コンテンツ対策、違法ファイル共有対策について、通信の秘密やプライバシー、情報アクセス権等の国民の基本的な権利をきちんと尊重しつつ対策を検討してもらいたい。この点においても、国民の基本的な権利を必ず侵害するものとなり、ネットにおける文化と産業の発展を阻害することにつながる危険な規制強化の検討ではなく、ネットにおける各種問題は情報モラル・リテラシー教育によって解決されるべきものという基本に立ち帰り、現行のプロバイダー責任制限法と削除要請を組み合わせた対策などの、より現実的かつ地道な施策のみに注力して検討を進めるべきである。

(2)その他の知財政策事項について:
a)ダウンロード違法化・犯罪化問題について

 文化庁の暴走と国会議員の無知によって、2009年の6月12日にダウンロード違法化条項を含む改正著作権法が成立し、2010年の1月1日に施行された。また、日本レコード協会などのロビー活動により、自民党及び公明党が主導する形でダウンロード犯罪化条項がねじ込まれる形で、2012年6月20日に改正著作権法が成立し、2012年10月1日から施行されている。しかし、一人しか行為に絡まないダウンロードにおいて、「事実を知りながら」なる要件は、エスパーでもない限り証明も反証もできない無意味かつ危険な要件であり、技術的・外形的に違法性の区別がつかない以上、このようなダウンロード違法化・犯罪化は法規範としての力すら持ち得ず、罪刑法定主義や情報アクセス権を含む表現の自由などの憲法に規定される国民の基本的な権利の観点からも問題がある。このような法改正によって進むのはダウンロード以外も含め著作権法全体に対するモラルハザードのみであり、今のところ幸いなことに適用例はないが、これを逆にねじ曲げてエンフォースしようとすれば、著作権検閲という日本国として最低最悪の手段に突き進む恐れしかない。

 そもそも、ダウンロード違法化の懸念として、このような不合理極まる規制強化・著作権検閲に対する懸念は、文化庁へのパブコメ(文化庁HPhttp://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/chosakuken/hokoku.htmlの意見募集の結果参照。ダウンロード違法化問題において、この8千件以上のパブコメの7割方で示された国民の反対・懸念は完全に無視された。このような非道極まる民意無視は到底許されるものではない)や知財本部へのパブコメ(知財本部のHPhttp://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/keikaku2009.htmlの個人からの意見参照)を見ても分かる通り、法改正前から指摘されていたところであり、このようなさらなる有害無益な規制強化・著作権検閲にしか流れようの無いダウンロード違法化・犯罪化は始めからなされるべきではなかったものである。文化庁の暴走と国会議員の無知によって成立したものであり、ネット利用における個人の安心と安全を完全にないがしろにするものである、百害あって一利ないダウンロード違法化・犯罪化を規定する著作権法第30条第1項第3号及び第119条第3項を即刻削除するべきである。

b)著作権法におけるいわゆる「間接侵害」への対応について
 セーフハーバーを確定するためにも間接侵害の明確化はなされるべきであるが、現行の条文におけるカラオケ法理や各種ネット録画機事件などで示されたことの全体的な整理以上のことをしてはならない。特に、著作権法に明文の間接侵害一般規定を設けることは絶対にしてはならないことである。確かに今は直接侵害規定からの滲み出しで間接侵害を取り扱っているので不明確なところがあるのは確かだが、現状の整理を超えて、明文の間接侵害一般規定を作った途端、権利者団体や放送局がまず間違いなく山の様に脅しや訴訟を仕掛けて来、今度はこの間接侵害規定の定義やそこからの滲み出しが問題となり、無意味かつ危険な社会的混乱を来すことは目に見えているからである。知財計画2016において間接侵害への対応について記載するのであれば、著作権法の間接侵害の明確化は、ネット事業・利用の著作権法上のセーフハーバーを確定するために必要十分な限りにおいてのみなされると合わせ明記してもらいたい。

c)コピーワンス・ダビング10・B−CAS問題について
 私はコピーワンスにもダビング10にも反対する。そもそも、この問題は、放送局・権利者にとっては、視聴者の利便性を著しく下げることによって、一旦は広告つきながらも無料で放送したコンテンツの市場価格を不当につり上げるものとして機能し、国内の大手メーカーとっては、B−CASカードの貸与と複雑な暗号システムを全てのテレビ・録画機器に必要とすることによって、中小・海外メーカーに対する参入障壁として機能するB−CASシステムの問題を淵源とするのであって、このB−CASシステムと独禁法の関係を検討するということを知財計画2016では明記してもらいたい。検討の上B−CASシステムが独禁法違反とされるなら、速やかにその排除をして頂きたい。また、無料の地上放送において、逆にコピーワンスやダビング10のような視聴者の利便性を著しく下げる厳格なコピー制御が維持されるのであれば、私的録画補償金に存在理由はなく、これを速やかに廃止するべきである。

 4K放送について、無料放送を録画不可とできるようにする検討が放送局とメーカーで構成される次世代放送推進フォーラムにおいて行われているという報道もあるが、上で書いたような、コピーワンスやダビング10の愚を繰り返してはならない。このような消費者の利便性に極めて大きな影響を持つ検討については可能な限り速やかに今まで及び今後の検討の公開並びに利用者・消費者からの意見の取り入れを促すべきである。

d)著作権検閲・ストライクポリシーについて
 ファイル共有ソフトを用いて著作権を侵害してファイル等を送信していた者に対して警告メールを送付することなどを中心とする電気通信事業者と権利者団体の連携による著作権侵害対策が警察庁、総務省、文化庁などの規制官庁が絡む形で行われており、警察によってファイル共有ネットワークの監視も行われているが、このような対策は著作権検閲に流れる危険性が極めて高い。

 フランスで導入が検討された、警告メールの送付とネット切断を中心とする、著作権検閲機関型の違法コピー対策である3ストライクポリシーは、2009年6月に、憲法裁判所によって、インターネットのアクセスは、表現の自由に関係する情報アクセスの権利、つまり、最も基本的な権利の1つとしてとらえられるとされ、著作権検閲機関型の3ストライクポリシーは、表現の自由・情報アクセスの権利やプライバシーといった他の基本的な権利をないがしろにするものとして、真っ向から否定されている。ネット切断に裁判所の判断を必須とする形で導入された変形ストライク法も何ら効果を上げることなく、フランスでは今もストライクポリシーについて見直しの検討が行われており、2013年7月にはネット切断の罰が廃止されている。日本においては、このようなフランスにおける政策の迷走を他山の石として、このように表現の自由・情報アクセスの権利やプライバシーといった他の基本的な権利をないがしろにする対策を絶対に導入しないこととするべきであり、警察庁などが絡む形で検討されている違法ファイル共有対策についても、通信の秘密やプライバシー、情報アクセス権等の国民の基本的な権利をきちんと尊重する形で進めることが担保されなくてはならない。

 アメリカでは、議会に提出されたサイトブロッキング条項を含むオンライン海賊対策法案(SOPA)や知財保護強化法案(PIPA)が、IT企業やユーザーから検閲であるとして大反対を受け、審議が止められたが、日本においても著作権団体が同様の著作権ブロッキング法の導入を求めてくる恐れがある。

 サイトブロッキングの問題については下でも述べるが、インターネット利用者から見てその妥当性をチェックすることが不可能なサイトブロッキングにおいて、透明性・公平性・中立性を確保することは本質的に完全に不可能である。このようなブロッキングは、憲法に規定されている表現の自由(知る権利・情報アクセスの権利を含む)や検閲の禁止といった国民の基本的な権利を侵害するものとならざるを得ないものであり、決して導入されるべきでないものである。

 これらの提案や検討からも明確なように、違法コピー対策問題における権利者団体の主張は常に一方的かつ身勝手であり、ネットにおける文化と産業の発展を阻害するばかりか、インターネットの単純なアクセスすら危険なものとする非常識なものばかりである。今後は、このような一方的かつ身勝手な規制強化の動きを規制するため、憲法の「表現の自由」に含まれ、国際人権B規約にも含まれている国民の「知る権利」を、あらゆる公開情報に安全に個人的にアクセスする権利として、通信法に法律レベルで明文で書き込むことを検討するべきである。同じく、憲法に規定されている検閲の禁止から、技術的な著作権検閲やサイトブロッキングのような技術的検閲の禁止を通信法に法律レベルで明文で書き込むことを検討するべきである。

e)著作権法へのセーフハーバー規定の導入について
 動画投稿サイト事業者がJASRACに訴えられた「ブレイクTV」事件や、レンタルサーバー事業者が著作権幇助罪で逮捕され、検察によって姑息にも略式裁判で50万円の罰金を課された「第(3)世界」事件や、1対1の信号転送機器を利用者からほぼ預かるだけのサービスが放送局に訴えられ、最高裁判決で違法とされた「まねきTV」事件等を考えても、今現在、カラオケ法理の適用範囲はますます広く曖昧になり、間接侵害や著作権侵害幇助のリスクが途方もなく拡大し、甚大な萎縮効果・有害無益な社会的大混乱が生じかねないという非常に危険な状態がなお続いている。間接侵害事件や著作権侵害幇助事件においてネット事業者がほぼ直接権利侵害者とみなされてしまうのでは、プロバイダー責任制限法によるセーフハーバーだけでは不十分であり、間接侵害や著作権侵害幇助罪も含め、著作権侵害とならない範囲を著作権法上きちんと確定することは喫緊の課題である。ただし、このセーフハーバーの要件において、標準的な仕組み・技術や違法性の有無の判断を押しつけるような、権利侵害とは無関係の行政機関なり天下り先となるだろう第3者機関なりの関与を必要とすることは、検閲の禁止・表現の自由等の国民の権利の不当な侵害に必ずなるものであり、絶対にあってはならないことである。

 知財計画2016において、プロバイダに対する標準的な著作権侵害技術導入の義務付け等を行わないことを合わせ明記するとともに、間接侵害や刑事罰・著作権侵害幇助も含め著作権法へのセーフハーバー規定の速やかな導入を検討するとしてもらいたい。この点に関しては、逆に、検閲の禁止や表現の自由の観点から技術による著作権検閲の危険性の検討を始めてもらいたい。

f)二次創作規制の緩和について
 2014年8月のクールジャパン提言の第13ページに「クリエイティビティを阻害している規制についてヒアリングし規制緩和する。コンテンツの発展を阻害する二次創作規制、ストリートパフォーマンスに関する規制など、表現を限定する規制を見直す。」と記載されている通り、二次創作は日本の文化的創作の原動力の一つになっており、その推進のために現状の規制を緩和する必要がある。これは知的財産に関わる重要な提言であり、二次創作規制を緩和するという記載を知財計画2016においてもそのまま取り入れ、政府としてこのような規制の緩和を強力に推進することを重ねてきちんと示すべきである。

g)著作権等に関する真の国際動向について国民へ知らされる仕組みの導入及び文化庁ワーキンググループの公開について
 WIPO等の国際機関にも、政府から派遣されている者はいると思われ、著作権等に関する真の国際動向について細かなことまで即座に国民へ知らされる仕組みの導入を是非検討してもらいたい。
 また、2013年からの著作物等の適切な保護と利用・流通に関するワーキングチーム及び2015年からの新たな時代のニーズに的確に対応した制度等の整備に関するワーキングチームの審議は公開とされたが、文化庁はワーキングチームについて公開審議を原則とするにはなお至っていない。上位の審議会と同様今後全てのワーキンググループについて公開審議を原則化するべきである。

h)天下りについて
 最後に、知財政策においても、天下り利権が各省庁の政策を歪めていることは間違いなく、知財政策の検討と決定の正常化のため、文化庁から著作権関連団体への、総務省から放送通信関連団体・企業への、警察庁からインターネットホットラインセンター他各種協力団体・自主規制団体への天下りの禁止を知財本部において決定して頂きたい。(これらの省庁は特にひどいので特に名前をあげたが、他の省庁も含めて決定してもらえるなら、それに超したことはない。)

(3)その他一般的な情報・ネット・表現規制について
 知財計画改訂において、一般的な情報・ネット・表現規制に関する項目は削除されているが、常に一方的かつ身勝手な主張を繰り広げる自称良識派団体が、意味不明の理屈から知財とは本来関係のない危険な規制強化の話を知財計画に盛り込むべきと主張をしてくることが十分に考えられるので、ここでその他の危険な一般的な情報・ネット・表現規制強化の動きに対する反対意見も述べる。今後も、本来知財とは無関係の、一般的な情報・ネット・表現規制に関する項目を絶対に知財計画に盛り込むことのないようにしてもらいたい。

a)青少年ネット規制法・出会い系サイト規制法について
 そもそも、青少年ネット規制法は、あらゆる者から反対されながら、有害無益なプライドと利権を優先する一部の議員と官庁の思惑のみで成立したものであり、速やかに廃止が検討されるべきものである。また、出会い系サイト規制法の改正は、警察庁が、どんなコミュニケーションサイトでも人は出会えるという誰にでも分かることを無視し、届け出制の対象としては事実上定義不能の「出会い系サイト事業」を定義可能と偽り、改正法案の閣議決定を行い、法案を国会に提出したものであり、他の重要法案と審議が重なる中、国会においてもその本質的な問題が見過ごされて可決され、成立したものである。憲法上の罪刑法定主義や検閲の禁止にそもそも違反している、この出会い系サイト規制法の改正についても、今後、速やかに元に戻すことが検討されるべきである。

b)児童ポルノ規制・サイトブロッキングについて
 児童ポルノ法規制強化問題・有害サイト規制問題における自称良識派団体の主張は、常に一方的かつ身勝手であり、ネットにおける文化と産業の発展を阻害するばかりか、インターネットの単純なアクセスすら危険なものとする非常識なものばかりである。今後は、このような一方的かつ身勝手な規制強化の動きを規制するため、憲法の「表現の自由」に含まれ、国際人権B規約にも含まれている国民の「知る権利」を、あらゆる公開情報に安全に個人的にアクセスする権利として、通信法に法律レベルで明文で書き込むべきである。同じく、憲法に規定されている検閲の禁止から、技術的な検閲やサイトブロッキングのような技術的検閲の禁止を通信法に法律レベルで明文で書き込むべきである。

 閲覧とダウンロードと取得と所持の区別がつかないインターネットにおいては、例え児童ポルノにせよ、情報の単純所持や取得の規制は有害無益かつ危険なもので、憲法及び条約に規定されている「知る権利」を不当に害するものとなる。「自身の性的好奇心を満たす目的で」、積極的あるいは意図的に画像を得た場合であるなどの限定を加えたところで、エスパーでもない限りこのような積極性を証明することも反証することもできないため、このような情報の単純所持や取得の規制の危険性は回避不能であり、思想の自由や罪刑法定主義にも反する。繰り返し取得としても、インターネットで2回以上他人にダウンロードを行わせること等は技術的に極めて容易であり、取得の回数の限定も、何ら危険性を減らすものではない。

 児童ポルノ規制の推進派は常に、提供による被害と単純所持・取得を混同する狂った論理を主張するが、例えそれが児童ポルノであろうと、情報の単純所持ではいかなる被害も発生し得ない。現行法で、ネット上であるか否かにかかわらず、提供及び提供目的の所持が規制されているのであり、提供によって生じる被害と所持やダウンロード、取得、収集との混同は許され得ない。そもそも、最も根本的なプライバシーに属する個人的な情報所持・情報アクセスに関する情報を他人が知ることは、通信の秘密や情報アクセスの権利、プライバシーの権利等の基本的な権利からあってはならないことである。

 アニメ・漫画・ゲームなどの架空の表現に対する規制対象の拡大も議論されているが、このような対象の拡大は、児童保護という当初の法目的を大きく逸脱する、異常規制に他ならない。アニメ・漫画・ゲームなどの架空の表現において、いくら過激な表現がなされていようと、それが現実の児童被害と関係があるとする客観的な証拠は何一つない。いまだかつて、この点について、単なる不快感に基づいた印象批評と一方的な印象操作調査以上のものを私は見たことはないし、虚構と現実の区別がつかないごく一部の自称良識派の単なる不快感など、言うまでもなく一般的かつ網羅的な表現規制の理由には全くならない。アニメ・漫画・ゲームなどの架空の表現が、今の一般的なモラルに基づいて猥褻だというのなら、猥褻物として取り締まるべき話であって、それ以上の話ではない。どんな法律に基づく権利であれ、権利の侵害は相対的にのみ定まるものであり、実際の被害者の存在しない創作物・表現に対する規制は何をもっても正当化され得ない。民主主義の最重要の基礎である表現の自由や言論の自由、思想の自由等々の最も基本的な精神的自由そのものを危うくすることは絶対に許されない。この点で、2012年6月にスウェーデンで漫画は児童ポルノではないとする最高裁判決が出されたことなども注目されるべきである。

 単純所持規制にせよ、創作物規制にせよ、両方とも1999年当時の児童ポルノ法制定時に喧々囂々の大議論の末に除外された規制であり、規制推進派が何と言おうと、これらの規制を正当化するに足る立法事実の変化はいまだに何一つない。

 既に、警察などが提供するサイト情報に基づき、統計情報のみしか公表しない不透明な中間団体を介し、児童ポルノアドレスリストの作成が行われ、そのリストに基づいて、ブロッキング等が行われているが、いくら中間に団体を介そうと、一般に公表されるのは統計情報に過ぎす、児童ポルノであるか否かの判断情報も含め、アドレスリストに関する具体的な情報は、全て閉じる形で秘密裏に保持されることになるのであり、インターネット利用者から見てそのリストの妥当性をチェックすることは不可能であり、このようなアドレスリストの作成・管理において、透明性・公平性・中立性を確保することは本質的に完全に不可能である。このようなリストに基づくブロッキング等は、自主的な取組という名目でいくら取り繕おうとも、憲法に規定されている表現の自由(知る権利・情報アクセスの権利を含む)や検閲の禁止といった国民の基本的な権利を侵害するものとならざるを得ないのであり、小手先の運用変更などではどうにもならない。

 児童ポルノ規制法に関しては、提供及び提供目的での所持が禁止されているのであるから、本当に必要とされることはこの規制の地道なエンフォースであって有害無益かつ危険極まりない規制強化の検討ではない。DVD販売サイトなどの海外サイトについても、本当に児童ポルノが販売されているのであれば、速やかにその国の警察に通報・協力して対処すべきだけの話であって、それで対処できないとするに足る具体的根拠は全くない。警察自らこのような印象操作で規制強化のマッチポンプを行い、警察法はおろか憲法の精神にすら違背していることについて警察庁は恥を知るべきである。例えそれが何であろうと、情報の単純所持や単なる情報アクセスではいかなる被害も発生し得えないのであり、自主的な取組という名目でいくら取り繕おうとも、憲法に規定されている表現の自由(知る権利・情報アクセスの権利を含む)や検閲の禁止といった国民の基本的な権利を侵害するものとならざるを得ないサイトブロッキングは即刻排除するべきであり、そのためのアドレスリスト作成管理団体として設立された、インターネットコンテンツセーフティ協会は即刻その解散が検討されてしかるべきである。

 なお、民主主義の最重要の基礎である表現の自由に関わる問題において、一方的な見方で国際動向を決めつけることなどあってはならないことであり、欧米においても、情報の単純所持規制やサイトブロッキングの危険性に対する認識はネットを中心に高まって来ていることは決して無視されてはならない。例えば、欧米では既にブロッキングについてその恣意的な運用によって弊害が生じていることや、アメリカにおいても、2009年に連邦最高裁で児童オンライン保護法が違憲として完全に否定され、2011年6月に連邦最高裁でカリフォルニア州のゲーム規制法が違憲として否定されていること、ドイツで児童ポルノサイトブロッキング法は検閲法と批判され、最終的に完全に廃止されたことなども注目されるべきである(http://www.zdnet.de/news/41558455/bundestag-hebt-zensursula-gesetz-endgueltig-auf.htm参照)。スイスの2009年の調査でも、2002年に児童ポルノ所持で捕まった者の追跡調査を行っているが、実際に過去に性的虐待を行っていたのは1%、6年間の追跡調査で実際に性的虐待を行ったものも1%に過ぎず、児童ポルノ所持はそれだけでは、性的虐待のリスクファクターとはならないと結論づけており、児童ポルノの単純所持規制・ブロッキングの根拠は完全に否定されているのである(http://www.biomedcentral.com/1471-244X/9/43/abstract参照)。欧州連合において、インターネットへのアクセスを情報の自由に関する基本的な権利として位置づける動きがあることも見逃されてはならない。政府・与党内の検討においては、このような国際動向もきちんと取り上げるべきである。

 そして、単純所持規制に相当し、上で書いた通り問題の大きい性的好奇心目的所持罪を含む児童ポルノの改正法案が国会で2014年6月18日に可決・成立し、同年6月25日に公布され、2015年7月15日に施行された。この問題の大きい性的好奇心目的所持罪を規定する児童ポルノ規制法第7条第1項は即刻削除するべきであり、合わせ、政府・与党においては、児童ポルノを対象とするものにせよ、いかなる種類のものであれ、情報の単純所持・取得規制・ブロッキングは極めて危険な規制であるとの認識を深め、このような規制を絶対に行わないこととして、危険な法改正案が2度と与野党から提出されることが無いようにするべきである。

 さらに、性的好奇心目的所持罪を規定する児童ポルノ規制法第7条第1項を削除するとともに、児童ポルノの単純所持規制・創作物規制といった非人道的な規制を導入している諸国は即刻このような規制を廃止するべきと、そもそも最も根本的なプライバシーに属し、何ら実害を生み得ない個人的な情報所持・情報アクセスに関する情報を他人が知ること自体、通信の秘密や情報アクセスの権利、プライバシーの権利等の国際的かつ一般的に認められている基本的な権利からあってはならないことであると、日本政府から国際的な場において各国に積極的に働きかけてもらいたい。

 また、様々なところで検討されている有害サイト規制についても、その規制は表現に対する過度広汎な規制で違憲なものとしか言いようがなく、各種有害サイト規制についても私は反対する。

c)東京都青少年健全育成条例他、地方条例の改正による情報規制問題について
 東京都でその青少年健全育成条例の改正が検討され、非実在青少年規制として大騒ぎになったあげく、2010年12月に、当事者・関係者の真摯な各種の意見すら全く聞く耳を持たれず、数々の問題を含む条例案が、都知事・東京都青少年・治安対策本部・自公都議の主導で都議会で通された。通過版の条例改正案も、非実在青少年規制という言葉こそ消えたものの、かえって規制範囲は非実在性犯罪規制とより過度に広汎かつ曖昧なものへと広げられ、有害図書販売に対する実質的な罰則の導入と合わせ、その内容は違憲としか言わざるを得ない内容のものである。また、この東京都の条例改正にも含まれている携帯フィルタリングの実質完全義務化は、青少年ネット規制法の精神にすら反している行き過ぎた規制である。さらに、大阪や京都などでは、児童ポルノに関して、法律を越える範囲で勝手に範囲を規定し、その単純所持等を禁止する、明らかに違憲な条例が通されるなどのデタラメが行われている。

 これらのような明らかな違憲条例の検討・推進は、地方自治体法第245条の5に定められているところの、都道府県の自治事務の処理が法令の規定に違反しているか著しく適正を欠きかつ明らかに公益を害していると認めるに足ると考えられるものであり、総務大臣から各地方自治体に迅速に是正命令を出すべきである。また、当事者・関係者の意見を完全に無視した東京都における検討など、民主主義的プロセスを無視した極めて非道なものとしか言いようがなく、今後の検討においてはきちんと民意が反映されるようにするため、地方自治法の改正検討において、情報公開制度の強化、審議会のメンバー選定・検討過程の透明化、パブコメの義務化、条例の改廃請求・知事・議会のリコールの容易化などの、国の制度と整合的な形での民意をくみ上げるシステムの地方自治に対する法制化の検討を速やかに進めてもらいたい。また、各地方の動きを見ていると、出向した警察官僚が強く関与する形で、各都道府県の青少年問題協議会がデタラメな規制強化騒動の震源となることが多く、今現在のデタラメな規制強化の動きを止めるべく、さらに、中央警察官僚の地方出向・人事交流の完全な取りやめ、地方青少年問題協議会法の廃止、問題の多い地方青少年問題協議会そのものの解散の促進についても速やかに検討を開始するべきである。

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2015年12月29日 (火)

第355回:2015年の終わりに

 国会は閉会中、役所も正月休みに入り、年内に何か政策的に新しいことが言い出されるということはもうないだろうと思うので、今年も最後にマイナーなことも含め国内の動向についてまとめて書いておきたいと思う。

 まず、知財本部では、知的財産推進計画2016策定に向けた検討が始まっており、検証・評価・企画委員会の下の知財紛争処理システム検討委員会と次世代知財システム検討委員会でそれぞれ知財訴訟制度と自動集積されるデータベースの取り扱いなどに関する検討が進められているが、政策的にはっきりとした方向性はまだ出されていない。第338回で書いた通り、最も気になっているのは、次世代知財システム検討委員会で来年2月に検討される予定の国境を越えるインターネット上の知財侵害への対応についてだが、委員会メンバーはそこまで偏った構成になっておらず、ここでそう変な結論を出して来ることは恐らくないのではないかと踏んでいるがどうだろうか。

 次に、特許庁では、産業構造審議会知的財産分科会の特許制度小委員会や審査基準ワーキンググループ(特許意匠商標)などが開催されており、経産省では、営業秘密の保護・活用に関する小委員会が開催されているが、いずれも地道な法改正のフォローアップや基準の改訂に関する話ばかりで、文化庁と違って、TPPに絡む特許法改正に関する審議会での検討はされていない。(両方ともマニアックなものなので内容の説明は省略するが、それぞれ1月9日と1月19日〆切で、特許庁から、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備等に関する政令案に対する意見募集産業構造審議会知的財産分科会意匠制度小委員会報告書「画像デザインの保護の在り方について」(案)に対する意見募集の2つのパブコメが出されているので、念のためここでもリンクを張っておく。)

 また、農林水産省は、その初回登録に関するリリースにある通り、地理的表示の登録を開始している。

 そして、文化庁では、分化審議会著作権分科会の下で、TPP対応に関することを検討していた法制・基本問題小委員会の他にも、著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会新たな時代のニーズに的確に対応した制度等の整備に関するワーキングチームなども開かれているが、例によって利害関係者の間の意見の隔たりは大きく、現時点でどうともなっていない。

 TPPに絡む法改正については、文化庁、知財本部の検討を経て、TPP総合対策本部の11月25日のTPP関連政策大綱(pdf)において、「Ⅱ TPP関連政策の目標/3 分野別施策展開/(3)知的財産」で、

 TPP協定の締結に必要な国内実施のため、国内法との整合性に留意しつつ、必要な措置を講ずる。また、TPPを契機として、輸出促進に向けた地理的表示(GI)等に関する措置を講ずる。

①特許・商標関係
○不合理な遅延に係る特許権期間延長、特許の新規性喪失例外期間の延長、商標不正使用に対する民法の原則を踏まえた法定の損害賠償制度等に関し、所要の措置を講ずる。
〇地域中小企業等の知財戦略の強化や、特許審査体制の整備・強化を図る。
〇TPP協定実施のための制度の整備状況等を踏まえつつ、知財紛争処理システムの一層の機能強化のための総合的な検討を進める。

②著作権関係
○著作物等の保護期間の延長、著作権等侵害罪の一部非親告罪化、著作権等侵害に対する民法の原則を踏まえた法定の損害賠償制度等に関し、所要の措置を講ずる。その際、権利の保護と利用とのバランスに留意し、特に、著作権等侵害罪の一部非親告罪化については、二次創作への委縮効果等を生じないよう、対象範囲を適切に限定する。
○著作物等の利用円滑化のため、権利者不明等の場合の裁定制度の改善を速やかに行うとともに、社会的諸課題への対応、柔軟性の高い権利制限規定、円滑なライセンシング体制の整備等に関する検討を進める。

と、「Ⅳ 政策大綱実現に向けた主要施策/3 分野別施策展開/(3)知的財産」で、

○地理的表示の相互保護制度整備による農林水産物の輸出促進等
(我が国の地理的表示(GI)の海外での保護を通じた農林水産物の輸出促進を図るための諸外国と相互にGIを保護できる制度整備)

①特許・商標関係
○特許・商標関係の制度整備
(不合理な遅延に係る特許権期間延長、特許の新規性喪失例外期間の延長、商標不正使用に対する民法の原則を踏まえた法定の損害賠償等に関する制度整備)

②著作権関係
○著作権関係の制度整備
(著作物等の保護期間の延長、著作権等侵害罪の一部非親告罪化、著作物等の利用を管理する効果的な技術的手段に関する制度整備、配信音源の二次使用に対する使用料請求権の付与、著作権等侵害に対する民法の原則を踏まえた法定の損害賠償等に関する制度整備)

とまとめられた所で、今後さらに各法改正の詳細が各省庁の審議会と国会で検討されるのではないかと思われる。今年は知財政策についてはTPPに終始したと言っても過言ではない年だったし、来年の通常国会でTPP関連の法改正の審議を行うとの報道もあり、来年もTPP問題が一番の焦点になりそうな様子であるが、そもそも私はTPPに絡む上記の法改正のほぼ全ての点について反対であり、速やかに脱退するべきと思っていることに変わりはなく、TPPについても拙速な検討による法改正がなされないことを、率先して法改正までしたが結局どこの国もついて来なかった海賊版対策条約(ACTA)の二の舞にならないことを強く願っている。

 なお、最後についでに書いておくと、官房長官が図書が有害かどうかで軽減税率の適用・消費税率が変わるような制度を検討すると言い出しているということもあり、どうやら有害図書問題でも来年はきな臭い年になりそうである。

 ここ何年もどうにも良い話がなく、今年も良い年をという気にはならないが、政官業に巣食う全ての利権屋に悪い年を。そして、この拙いブログを読んでくださっている方々に心からの感謝を。

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2015年6月21日 (日)

第338回:知財計画2015の文章の確認

 先週6月19日に知的財産戦略本部会合が開かれ、知的財産推進計画2015(pdf)概要(pdf)工程表(pdf))が決定された。

 例によって、作ることに何の意味があるのか分からない検討項目集に過ぎないが、現時点で政府が何を考えているのかを見るのには便利な資料ではあるので、ここで知財計画の文章が今年どうなったかを見ておきたい。(去年の知財計画2014の内容については第315回、今年私が出したパブコメについては第336回参照。なお、知財本部会合の資料は、まだ案がついたままの状態だが、本部会合での変更はなかっただろうし、この資料で見ても問題ないだろう。)

 いつも通り地道な運用改善に関する項目を飛ばして法改正に関わる部分を抜き出して行くと、まず、前回取り上げた知財訴訟制度の見直しについて、第18ページに、

(知財紛争処理システムの機能強化に向けた検討)
・我が国の知財紛争処理システムの一層の機能強化に向けて、権利者と被疑侵害者とのバランスに留意しつつ、以下の点について総合的に検討し、必要に応じて適切な措置を講ずる。
−証拠収集手続について、侵害行為の立証に必要な証拠収集が難しい状況にあることに鑑み、証拠収集がより適切に行われるための方策について検討する。
−損害賠償額について、グローバル市場の動向を視野に入れつつ、ビジネスの実態を反映した損害賠償額の実現に向けた方策について検討する。
−権利の安定性について、我が国産業のイノベーション創出に向け、権利の付与から紛争処理プロセスを通じた権利の安定性を向上させる方策について検討する。
−差止請求権の在り方について、標準必須特許の場合、PAEによる権利行使の場合について、特許権の価値に与える影響も考慮し、検討する。
(短期・中期)(内閣官房、経済産業省、法務省)

という項目が入った。複数の省庁の名があげられており、どこで検討が行われるのか良く分からないが、ここに書いてあることからすると、今年、前回書いた通り知財訴訟制度について何かしらプロパテント方向での検討がさらに進められるのだろう。

 著作権法については、第42ページで、

(持続的なコンテンツ再生産につなげるための環境整備)
・クリエーターへ適切に対価が還元され、コンテンツの再生産につながるよう、私的録音録画補償金制度の見直しや当該制度に代わる新たな仕組みの導入について文化審議会において検討を進め、結論を得て、必要な措置を講ずる。(短期・中期)(文部科学省、経済産業省)

(新しい産業の創出環境の形成に向けた制度等の検討)
・インターネット時代の新規ビジネスの創出、人工知能や3Dプリンティングの出現などの技術的・社会的変化やニーズを踏まえ、知財の権利保護と活用促進のバランスや国際的な動向を考慮しつつ、柔軟性の高い権利制限規定や円滑なライセンシング体制など新しい時代に対応した制度等の在り方について検討する。(短期・中期)(内閣官房、文部科学省、関係府省)
・サイバーセキュリティに関連する産業の発展に向け、例えば著作権法におけるセキュリティ目的のリバースエンジニアリングに関する適法性の明確化等について検討を行う。(短期・中期)(文部科学省)

(教育の情報化の推進)
・デジタル化した教材の円滑な利活用やオンデマンド講座等のインターネットを活用した教育における著作権制度上の課題について検討し、必要な措置を講ずる。(短期・中期)(文部科学省)
・デジタル教科書・教材の位置付け及びこれらに関連する教科書検定制度の在り方について、2016年度までに導入に向けた検討を行い結論を得て、必要な措置を講ずる。当該検討を踏まえつつ、関連する著作権制度等の在り方についても併せて検討を行い、速やかに結論を得る。(短期・中期)(文部科学省)

(アーカイブの構築と利活用の促進のための著作権制度の整備)
・美術館等が所蔵する著作物に関し、アーカイブ化のための複製が認められる施設の範囲の拡大や解説・紹介のために当該著作物のデジタルデータの利用を可能とすることについて具体的な制度の検討を行い、法改正が必要な事項については次期通常国会への法案提出も視野に検討し、法改正を必要としない事項に関しては本年度内に結論を得て、必要な措置を講ずる。(短期)(文部科学省)
・孤児著作物を含む過去の膨大なコンテンツ資産の権利処理の円滑化等によりアーカイブの利活用を促進するため、著作権者不明等の場合の裁定制度における補償金供託の見直しや裁定を受けた著作物の再利用手続の簡素化等について検討し、法改正が必要な事項については次期通常国会への法案提出も視野に検討し、法改正を必要としない事項に関しては本年度内に結論を得て、必要な措置を講ずる。(短期)(文部科学省)

という形の記載になった。

 この記載を去年と比べると、権利制限に関して、クラウドサービスという言葉こそなくなったものの、「柔軟性の高い権利制限規定」について検討すると再び多少踏み込んだ記載になった。ただし、この部分がいくら一般フェアユース条項向きに多少踏み込んだ記載になったとしても、このような権利制限について検討するのはいつも通り文化庁だろうと思われるので、大して期待はできない。

 ここで、リバースエンジニアリングについては実に7年ぶりの言及である(知財計画2008の内容については第103回参照)。デジタル教科書に関する項目はほぼ去年通りだが、アーカイブと著作権制度に関しては、文化庁での検討を受けてアーカイブ化のための複製が認められる施設の範囲の拡大等に関する項目が1つ追加されている。なお、私的録音録画補償金制度に関する項目も相変わらずそのまま残っている。

 そして、条約交渉に関しては、第53ページに、

(通商関連協定等を活用した知財保護と執行強化)
・自由貿易協定(FTA)/経済連携協定(EPA)等の二国間・多国間協定を通して、知的財産の保護強化、模倣品・海賊版対策を積極的に取り上げ、知的財産制度の整備と実効的な法執行の確保に努める。特に、TPP協定については、産業界を始めとした関係者の意見を踏まえつつ、国益にかなう最善の結果を追求する。(短期・中期)(内閣官房、外務省、財務省、経済産業省、文部科学省、農林水産省)
・ACTA(偽造品の取引の防止に関する協定)の早期発効に向け、各国への働き掛けを継続して実施する。(短期・中期)(外務省、経済産業省、文部科学省、農林水産省、総務省、法務省、財務省)

と書かれ、去年と比べて大きな変化はなく、TPP交渉などについて日本政府のスタンスに変更がないことがはっきり分かる。ただ、言わずもがなかも知れないが、強いて言うなら、項目の記載に「知的財産の保護強化、模倣品・海賊版対策を積極的に取り上げ、知的財産制度の整備と実効的な法執行の確保に努める」といった記載が追加されていることからFTAについてプロパテント方向での交渉を行っているだろうことが、また、「早期発効を目指す」といった記載が削られていることから海賊版対策条約(ACTA)についてはさすがに日本政府も弱気になっているだろうことが読み取れる。

 海賊版対策についても、同じく第53ページに、

(正規版コンテンツの流通拡大と海賊版対策)
・各国取締機関等と連携した対策と並行し、「マンガ・アニメ海賊版対策協議会」と経済産業省が一体となり、侵害が顕著な海外の配信サイトなどに違法アップロードされたコンテンツの迅速な削除要請、ユーザーを正規版に誘導するサイトの運営・改善、国内外の視聴者への啓発活動を一体的に実施する。(短期・中期)(経済産業省)

(インターネットを通じた知財侵害への対応)
・インターネットを利用する消費者への模倣品・海賊版被害の発生・拡大防止のため、消費者への注意喚起を行うほか、検索結果から違法サイトの表示抑止要請、模倣品・海賊版を扱うサイトにおいて広告出稿の抑止要請、銀行等と連携した決済処理対策、セキュリティソフト等を通じた注意喚起などの取組を行う。(短期・中期)(経済産業省、消費者庁)
・インターネットを利用したオークションや電子商取引における模倣品・海賊版対策として、インターネットサービスプロバイダ(ISP)と権利者等との連携による自主的な削除対応など、民間での取組を促進する。(短期・中期)(内閣官房、経済産業省、総務省、文部科学省、警察庁、消費者庁)
・海外サーバーを含め、インターネット上で国境を越えて我が国に対して模倣品・海賊版を発信するサイトや行為に対する措置の在り方について検討を行う。(短期・中期)(内閣官房、関係府省)

と書かれている。これも今後どこで検討が行われるのか良く分からないが、この中で最後に書かれている、海外の海賊版サイトに関する措置の検討については特に注意が必要だろう。今までの取り組みの延長線上にある話を地道に進めてくれるだけなら良いが、この検討でブロッキングなどのネット検閲が言い出される可能性が極めて高いと私は見ているのである。

 また、海外でのコンテンツ規制に対する緩和の働きかけに関する項目が今年から消えている。もともと何をしているか良く分からなかったものではあるが、このことは、こうした多少なりとも意味のあった取り組みについて日本政府としてはもはや大してやる気がないことを示しているのだろう。

 なお、既に施行済の地理的表示保護法や、まだ未成立だが国会での審議が進んでいる不正競争防止法改正案による営業秘密の保護強化、特許法改正案による職務発明制度の見直しについては周知やガイドラインの策定が行われるという記載になっている。

 言うまでもなく今年の知財政策上の最大のトピックはTPP交渉の行方になるだろうが、このような知財計画の内容を見る限り、今年も政府の検討について大して期待が持てそうにないのは非常に残念である。

 最後に、ついでに書いておくと、知財本部会合に参考資料として出されている、クールジャパン推進会議で取りまとめられたのだろう、クールジャパン戦略官民協働イニシアティブ(pdf)概要(pdf))に至っては、去年の提言(第319回参照)で唯一意味のあった二次創作規制の緩和に関する記載すら消え、実に空疎極まる内容のものとなった。このクールジャパン戦略の中身の頭の悪さときたら、このようについでに言及することすらバカバカしいと思えるほどである。

(2015年7月1日の追記:文章は変わっていないが、案が取れた正式版の知的財産推進計画2015(pdf)が知財本部のHPで公開されたので、ここにリンクを張っておく。)

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2015年6月 7日 (日)

第337回:国連専門家グループのTPP交渉透明化を求める意見他

 現在、特許法等改正案が6月2日に衆議院本会議を通って参議院へ行き(合わせて特許法条約と商標法条約も衆議院本会議を通っている)、不正競争防止法改正案が6月5日から衆議院経産委の審議にかかっているという状況だが、この際にいくつか国内外の動きについて補足を書いておきたいと思う。(なお、個人情報保護法改正案は参議院内閣委員会の審議にかかっているが、年金機構の個人情報漏洩事件を受けて今なお揉めている。)

(1)国連専門家グループのTPP交渉透明化を求める意見
 既にGIGAZINEの記事になっているので、ご存知の方も多いだろうが、この6月2日に国連の専門家グループからTPP交渉の秘密性に関する懸念が表明された。これは、専門家の中にファリーダ・シャヒード氏の名前が入っていることから見ても、第333回で取り上げた国連の報告と同じ流れの中で出されたものと思われる。

 国連高等弁務官事務所のリリースを訳出すると以下のようになる。(以下、翻訳は全て拙訳。)

UN experts voice concern over adverse impact of free trade and investment agreements on human rights

GENEVA 2 June 2015 - A number of free trade and investment agreements, such as the Trans-Pacific Partnership (TPP) and the Transatlantic Trade and Investment Partnership (TTIP), are currently being negotiated. A group of UN experts* have issued the following statement to express concern about the secret nature of drawing up and negotiating many of these agreements and the potential adverse impact of these agreements on human rights:

"While trade and investment agreements can create new economic opportunities, we draw attention to the potential detrimental impact these treaties and agreements may have on the enjoyment of human rights as enshrined in legally binding instruments, whether civil, cultural, economic, political or social. Our concerns relate to the rights to life, food, water and sanitation, health, housing, education, science and culture, improved labour standards, an independent judiciary, a clean environment and the right not to be subjected to forced resettlement.

As also underlined in the UN Guiding Principles on Business and Human Rights, States must ensure that trade and investment agreements do not constrain their ability to meet their human rights obligations (Guiding Principle 9).
Observers are concerned that these treaties and agreements are likely to have a number of retrogressive effects on the protection and promotion of human rights, including by lowering the threshold of health protection, food safety, and labour standards, by catering to the business interests of pharmaceutical monopolies and extending intellectual property protection.
There is a legitimate concern that both bilateral and multilateral investment treaties might aggravate the problem of extreme poverty, jeopardize fair and efficient foreign debt renegotiation, and affect the rights of indigenous peoples, minorities, persons with disabilities, older persons, and other persons leaving in vulnerable situations. Undoubtedly, globalization and the many Bilateral Investment Treaties (BITs) and Free Trade Agreements (FTAs) can have positive but also negative impacts on the promotion of a democratic and equitable international order, which entails practical international solidarity.
Investor-state-dispute settlement (ISDS) chapters in BITs and FTAs are also increasingly problematic given the experience of decades related arbitrations conducted before ISDS tribunals. The experience demonstrates that the regulatory function of many States and their ability to legislate in the public interest have been put at risk.

We believe the problem has been aggravated by the "chilling effect" that intrusive ISDS awards have had, when States have been penalized for adopting regulations, for example to protect the environment, food security, access to generic and essential medicines, and reduction of smoking, as required under the WHO Framework Convention on Tobacco Control, or raising the minimum wage.

ISDS chapters are anomalous in that they provide protection for investors but not for States or for the population. They allow investors to sue States but not vice-versa. The adoption in 2014 of the United Nations Convention on Transparency in Treaty-based Investor-State Arbitration is an important step to address the problem of the typically confidential and non-participatory nature of investor-State agreements. Greater transparency should serve to remedy incoherence between current modes of investment with human rights considerations.

We invite States to revisit the treaties under negotiation and ensure that they foster and do not hinder human rights. If the treaties in question include a chapter on investor-State-dispute-settlement, the terms of reference of the arbitrators must be so drafted that interference in the domestic regulation of budgetary, fiscal, health and environmental and other public policies are not allowed.

Moreover arbitration tribunals should allow public review and its awards must be appealable before the International Court of Justice or a yet to be created an International Investment Court working transparently and with accountability. There must be a just balance between the protection afforded to investors and the States' responsibility to protect all persons under their jurisdiction.

We recommend that:

All current negotiations of bilateral and multilateral trade and investment agreements should be conducted transparently with consultation and participation of all relevant stakeholders including labour unions, consumer unions, environmental protection groups and health professionals.

All draft treaty texts should be published so that Parliamentarians and civil society have sufficient time to review them and to weigh the pros and cons in a democratic manner.

Ex ante and ex post human rights impact assessments should be conducted with regard to existing and proposed BITs and FTAs.

The Parties should detail how they will uphold their human rights obligations if they ratify the BITs and FTA's under negotiation.

Given the breadth and scope of the agreements currently under negotiation, robust safeguards must be embedded to ensure full protection and enjoyment of human rights."

ENDS

(*) The experts: Mr Alfred de Zayas, Independent Expert on the promotion of a democratic and equitable international order, Ms Catalina Devandas Aguilar, Special Rapporteur on the rights of person with disabilities, Mr Dainus Puras, Special Rapporteur on the right of everyone to the enjoyment of the highest attainable standard of physical and mental health, Ms Farida Shaheed, Special Rapporteur in the field of cultural rights, Ms Gabriella Knaul, Special Rapporteur on the independence of judges and lawyers, Ms Hilal Helver, Special Rapporteur on the right to food, Mr Juan Bohoslavsky, Independent Expert on the effects of foreign debts and other related international financial obligations of States on the full enjoyment of all human rights, particularly economic, social and cultural rights, Mr Leo Heller, Special Rapporteur on the human right to safe drink water and sanitation, Ms Victoria Lucia Tauli-Corpuz, Special Rapporteur on the rights of indigenous peoples, Ms Virginia Dandan, Independent Expert on human rights and international solidarity.

自由貿易投資協定が人権に及ぼす悪影響に関する国連専門家の懸念の声

2015年6月2日ジュネーブ-環太平洋パートナーシップ(TPP)及び環大西洋貿易投資パートナーシップ(TTIP)など数多くの自由貿易協定の交渉が現在行われている。国連専門家グループ*は、以下の通り、これらの協定の多くの起草及び交渉の秘密性並びにこれらの協定の潜在的な人権への悪影響についての懸念を表明する:

「貿易投資協定が新たな経済的機会を作り出し得るものだとしても、我々は、これらの条約及び協定が、公民的、文化的、経済的、政治的又は社会的な、法的に拘束力を有するものとして制定されている人権の享受に対して持ち得る潜在的に有害な影響を注視している。我々の懸念は、生命、食糧、水及び衛生、健康、住宅、教育、科学及び文化、労働基準の改善、司法の独立、清潔な環境並びに再移民を強制されない権利に関係している。

国連のビジネスと人権に関する指導原理においても強調されている通り、国家は、貿易投資協定が人権に関する義務に従う国家の能力を制約しないことを確保しなければならない(指導原理9)。
見るところ、これらの条約及び協定が、医薬の独占の商業利益に肩入れし、知的財産の保護を拡大することで、保健、食糧の安全及び労働基準の水準が下げられるなど、人権の保護と推進に対して多くの後退的効果をもたらすのではないかと懸念している。
二国間及び多国間の条約は、ともに極度の貧困の問題を深刻化し、公正で効果的な対外債務の再交渉を危うくし、先住民、少数派、障害者、高齢者及び他の弱い状態にある人々の権利に影響を与え得るという懸念は正当なものである。
間違いなく、グローバル化並びに多くの二国間投資条約(BIT)及び自由貿易協定(FTA)は、現実的な国際的連帯をもたらす民主的で公平な国際秩序の推進に対して正の影響を持ち得るが、負の影響も持ち得る。
BIT及びFTAにおける投資家国家間紛争処理(ISDS)章も、ISDS仲裁廷において行われた仲裁に関する数十年の経験から、ますます問題視されるようになっている。経験から、多くの国の規制機能及びその公益における法制定の能力が危うくなることが示されている。

我々は、例えば環境、食糧の安全、ジェネリック及び必須の医薬へのアクセスを守るためや、煙草管理に関するWHOフレームワーク条約の下必要とされる喫煙の削減、又は最低賃金の引き上げのような、規制の採用によって国家が罰を受ける場合、干渉的なISDS裁定が持つ『萎縮効果』によって問題が深刻化すると思っている。

ISDS章は、これが投資家への保護を規定するが、国家又はその国民に対する保護を規定しない点で特異である。これは投資家に国家を訴えることを可能とするが、逆はない。条約に基づく投資家国家間仲裁における透明性に関する国際連合条約の2014年の採択は、投資家国家間協定の典型的には秘密で参加を許さない性質の問題に対する重要な一歩である。透明性の向上は、現在の投資の形と人権への配慮との間の不整合を直す役に立つだろう。

我々は、交渉されている条約の再点検、及び、これが人権を阻害せず、促進することの確保を各国に促す。もし問題の条約が投資家国家間紛争処理章を含んでいるなら、仲裁に言及する条項は、予算、財政、健康及び環境政策並びに他の公共政策に関する国内規制への干渉が許されない形で起草されなければならない。

さらに、仲裁廷は公衆による点検を可能とされるべきであり、その裁定は国際司法裁判所か、説明責任を有し、透明な形で仕事をするなお作られるべき国際投資裁判所へ上訴可能とされなければならない。投資家に与えられる保護及びその管轄下にある全ての人々を保護する国家の責任の間で正しいバランスが取られなければならない。

我々は以下のことを勧告する:

二国間及び多国間の貿易協定に関する現在の全ての交渉は、労働組合、消費者組合、環境保護グループ及び健康に関する専門家などのあらゆる利害関係者の協議と参加とともに行われなければならない。

条約の条文案は、議員及び市民社会がそれを十分に検討し、民主的なやり方で賛成反対を比較衡量するのに十分な時間を持てる形で公開されるべきである。

事前及び事後の人権への影響の評価が、既存の及び提案されているBIT及びFTAについてなされるべきである。

参加国は、交渉されているBIT及びFTAを批准したときにどのように自国の人権に対する義務を維持するかについて詳細に示すべきである。

現在交渉されている協定の広がりと範囲から、人権の完全な保護と享受を確保するべく堅牢な保障が組み込まれていなければならない。」

以上

(*)専門家:アルフレッド・デ・ザヤス氏、民主的で公平な国際秩序の促進に関する独立専門家、カタリナ・デヴァンダス・アギラール氏、障害者の権利に関する特別報告官、ダイヌス・プラス氏、肉体的及び精神的健康の最高到達可能水準を享受するあらゆる者の権利に関する特別報告官、ファリーダ・シャヒード氏、文化的権利に関する特別報告官、ガブリエラ・クノール氏、裁判官と法律家の独立に関する特別報告官、ヒラル・ヘルバー氏、食糧への権利に関する特別報告官、ジュアン・ボホスラヴスキー氏、対外債務並びにあらゆる人権、特に経済的、社会的及び文化的権利の完全な享受について関係する他国際財政的義務に関する独立専門家、レオ・ヘラー氏、安全な飲み水及び衛生についての人権に関する特別報告官、ヴィクトリア・ルシア・タウリ・コルプス氏、先住民の権利に関する特別報告官、ヴィルジニア・ダンダン氏、人権と国際的連帯に関する独立専門家。

 第333回で取り上げた報告と比べると、こちらはどちらかと言えばISDS条項に重点を置いているが、ジェネリック医薬へのアクセスの問題にも触れつつ、人権の観点からTPP交渉の不透明性を非難している点でやはり興味深いものである。(なお、日本ではあまり話題になっていないが、この意見では欧米間で交渉が進められているTTIP協定も非難の対象となっている。)

 この意見もどれほどの影響を持つかどうにも分からないが、今のTPP交渉の秘密性について、多くの国連の専門家からはっきりと非難されるようなことをやっているということを各国政府には良く認識してもらいたいと、交渉の破綻が最も望ましいだろうにせよ、さもなくば速やかに交渉内容を公開するとともに、あらゆる者がその内容の検討に広く参加できるようにしてもらいたいと私は今なお強く願っている。

(2)知財本部・知財紛争処理タスクフォース報告書(知財訴訟制度の見直し)
 知財本部でパブコメ結果が公表され、今年も知財計画がじきに決定されるのだろうと思っているが、前回は特許訴訟制度の見直しについてやけにあっさり書き過ぎたように思うので、少し補足をしておく。

 この見直しについて書いている、5月28日の検証・評価・企画委員会知財紛争処理タスクフォース報告書(pdf)から、その項目を順に上げて行くと、「1.証拠収集手続」、「2.権利の安定性」、「3.損害賠償額」、「4.差止請求権」、「5.中小企業支援」、「6.情報公開・海外発信」、「7.地方における知財司法アクセス」となる。このうち5〜7は法改正事項ではなく、4は方向性のところに「慎重に検討」と書かれていることを考えると実際には検討しないものと思われ、実際に法改正に向けて今年検討が進められるのは、1〜3だろうと読める。

 この報告書中で、まず、「1.証拠収集手続」については、第3〜5ページに、

「争点整理手続の機能強化のための方策としては、現行第104条の2における自己の行為の具体的態様を明示する義務に加えて、これを証する証拠を提出すべき義務を新たに設けるとの案が示された。」

「侵害行為の立証に資する証拠収集を容易にするための方策としては、
・米国のディスカバリー手続を参考としてより広範な文書収集機能を実現するため、第105条よりも提出義務に係る文書の特定性を緩和し、原則として当事者による申立てがあれば義務的に提出を命ずべきこととするとともに、同項但書きに基づく正当な理由による文書の提出拒否を認めないこととする、
・欧州型の第三者による査察制度を参考として、第三者が被疑侵害者に対して査察を実施して侵害製品・方法に係る証拠を迅速かつ的確に把握することとする、
の両案が示された。」

「秘密保持命令制度に係る課題に対する見直しの方策としては、
・米国型のいわゆるOutside counsel onlyの原則を参考に、現行規定では条文上排除されていない相手方当事者への営業秘密の開示を行えないように改める、
・訴訟代理人又は補佐人に加えて、技術的な知見を有する第三者の専門家に対しては当該営業秘密を開示することができるようにする、
との案が示された。」

などと書かれ、次に、「2.権利の安定性」については、第6〜7ページに、

「第104条の3の見直しの具体案としては、
・『特許無効審判により無効とされるべきもの』の判断事由から進歩性や記載要件を除外する、一定期間を経過した特許権は無効の抗弁の対象から除外するなど、第104条の3に基づく無効の抗弁の対象を制限する、
・侵害訴訟において裁判所が権利無効を認定するための判断水準をより高くするため、第104条の3に『明らか』要件(明らかに無効とされるべき場合を限定するなど)を導入する、
・権利有効性推定規定(例えば、権利無効とするための証拠のレベルの設定を伴うものなど)を導入する、
の3案が示された。」

と書かれ、最後に、「3.損害賠償額」については、第8〜9ページに、

「これに対処するための方策として、
・第1項について、原告の利益率については当事者への開示を制限することができるようにする等、権利者が同項の規定の主張を促進するための措置を講ずる、
・第2項について、判決において損害額から事案ごとの事情を考慮して控除をする場合における算定方法を透明化・統一化するため、第1項と同様に、当該控除ができる事情を定める但書きを追加する。
・第3項について、実施料相当額の算定の適正化に資するため、ライセンス料(ランニングロイヤリティのみならず、開発費用を勘案した当初段階で支払うイニシャルペイメントを含む)やその算定に関するデータベース又はガイドラインを作成する、
といった案が出された。」

「この寄与率に係る課題に対処するため、
・侵害者に当該特許の貢献していない程度(いわば非寄与率)についての立証責任を負担させる旨の規定を設ける、
・『寄与率』について、その適用の限定に資するため、『寄与率』を適用して減額する場合及び適用に当たって考慮できる事情を例示する等の法定化をする、
との案が示された。」

「第3に、現行制度は民法第709条に基づく損害賠償の枠内で『実損』を賠償させるとの考え方に立っており、実態として賠償額が限定されて侵害する側に有利な算定となり、侵害へのインセンティブとなりかねないことから、研究開発投資の結果として生み出される特許権の侵害を救済するのに足る額の損害賠償額を実現するために、民法の不法行為の枠から一歩踏み出した形の被侵害者に対するより手厚い救済の規定を導入する必要があるとの意見が出された。一案としては、課徴金・賦課金の概念を援用する規定を導入することも考えられる。」

などと書かれている。

 これらはそれぞれ要するに、特許法の第104条の2や第105条といった侵害の立証に関する規定、第104条の3の特許無効の抗弁に関する規定、第102条の損害賠償額の算定に関する規定について改正検討を行うと言っており、具体的にどうなるかは今後の検討によるのだろうが、書かれていることからすると、かなり特許権者側に有利な、プロパテント方向での検討が行われそうな様子である。

 特許の制度ユーザには関係して来るものの、一般ユーザには大して影響はないと思われる点なので、これらについての詳細は省略するが、訴訟関係の規定は重要であり、全く影響がないということもないだろうし、じきに決定されるだろう知財計画ではこれらの点も含めその記載を気をつけて見たいと思っている。

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2015年5月10日 (日)

第336回:「知的財産推進計画2015」の策定に向けた意見募集(5月20日〆切)への提出パブコメ

 今年もゴールデンウィークから5月20日〆切という形で知財本部からかかっている「知的財産推進計画2015」の策定に向けた意見募集に対し、私が提出した意見をここに載せておく。

 下の提出パブコメの内容は、文化庁の検討を見て追記した(1)g)クラウド型サービスのための環境整備についてと、クールジャパン提言から追加した(2)a)二次創作規制の緩和についてと、法改正を踏まえて少し改めた(4)b)児童ポルノ規制・サイトブロッキングについてを除き、去年とほぼ同じだが、今年も特にポイントをあげるとすれば、大きな山場にあると見られるTPP交渉関連事項(著作権の保護期間延長、DRM回避規制強化、ISPの間接侵害責任、法定賠償制度、著作権侵害の非親告罪化の導入などに絡む)だろう。(恐らくパブコメの対象なのだろうが、4月27日と28日の検証・評価・企画委員会アーカイブの利活用 集中討議 議論の整理(pdf)コンテンツの海外展開 集中討議 議論の整理(pdf)地方における知財活用促進タスクフォースの議論の整理(pdf)知財紛争処理タスクフォースの議論の整理(pdf)も既存施策の地道な改善に関する話を除けば何かしら政策的に大きな方向性が打ち出されているということはない(知財訴訟制度の見直しについて書かれている知財紛争処理の議論には多少気をつけておいた方が良いかも知れないが)。なお、去年提出したパブコメについては第312回、知財計画2014の内容については第315回参照。)

 もはや知財本部の存在意義自体ないのではないかと私は変わらず思っているが、このパブコメは知財問題全般について政府へ意見を言える年1回の機会ではあるので、このような問題について関心のある方は是非提出を検討することをお勧めする。

(以下、提出パブコメ)

《要旨》
アメリカ等と比べて遜色の無い範囲で一般フェアユース条項を導入すること及びダウンロード犯罪化・違法化条項の撤廃を求める。何ら国民的コンセンサスを得ていない中でのTPP交渉参加、有害無益なインターネットにおける今以上の知財保護強化、特に著作権の保護期間延長、補償金の矛盾を拡大するだけの私的録音録画補償金の対象拡大に反対する。今後真の国民視点に立った知財の規制緩和の検討が進むことを期待する。

《全文》
 最終的に国益になるであろうことを考え、各業界の利権や省益を超えて必要となる政策判断をすることこそ知財本部とその事務局が本当になすべきことのはずであるが、知財計画2014を見ても、このような本当に政策的な決定は全く見られない。知財保護が行きすぎて消費者やユーザーの行動を萎縮させるほどになれば、確実に文化も産業も萎縮するので、知財保護強化が必ず国益につながる訳ではないということを、著作権問題の本質は、ネットにおける既存コンテンツの正規流通が進まないことにあるのではなく、インターネットの登場によって新たに出てきた著作物の公正利用の類型に、今の著作権法が全く対応できておらず、著作物の公正利用まで萎縮させ、文化と産業の発展を阻害していることにあるのだということを知財本部とその事務局には、まずはっきりと認識してもらいたい。特に、最近の知財・情報に関する規制強化の動きは全て間違っていると私は断言する。

 例年通り、規制強化による天下り利権の強化のことしか念頭にない文化庁、総務省、警察庁などの各利権官庁に踊らされるまま、国としての知財政策の決定を怠り、知財政策の迷走の原因を増やすことしかできないようであれば、今年の知財計画を作るまでもなく、知財本部とその事務局には、自ら解散することを検討するべきである。そうでなければ、是非、各利権官庁に轡をはめ、その手綱を取って、知財の規制緩和のイニシアティブを取ってもらいたい。知財本部において今年度、インターネットにおけるこれ以上の知財保護強化はほぼ必ず有害無益かつ危険なものとなるということをきちんと認識し、真の国民視点に立った知財の規制緩和の検討が知財本部でなされることを期待し、本当に決定され、実現されるのであれば、全国民を裨益するであろうこととして、私は以下のことを提案する。

(1)「知的財産推進計画2014」の記載事項について:
a)環太平洋経済連携協定(TPP)などの経済連携協定(EPA)に関する取組について

 第56ページにTPPなどの協定に関する取組の強化について書かれている。今までの各種のリーク文書からも、このような交渉に絡み、著作権の保護期間延長、DRM回避規制強化、ISPの間接侵害責任、法定賠償制度、著作権侵害の非親告罪化などについて外国から不当な圧力がかけられていることが想定される。下でそれぞれについても書くが、今ですら不当に長い著作権保護期間のこれ以上の延長など論外であり、アメリカで一般ユーザーに法外な損害賠償を発生させ、その国民のネット利用におけるリスクを不当に高め、ネットにおける文化と産業の発展を阻害することにしかつながっていない法定賠償のような日本に全くそぐわない制度の導入や、責任制限を通じた実質的検閲のISPに対する押しつけや、ユーザーの情報アクセスに対するリスクを不必要に高める危険なものとしかなり得ないこれ以上のDRM回避規制の強化や、被害者が不問に付することを希望しているときまで国家が主体的に処罰を行うことが不適切な、人格権の保護という色彩が極めて強い著作権の侵害の非親告罪化など断じてなされるべきでなく、そのような要求は明らかに不当なものとして毅然としてはねのけるべきである。

 また、TPP交渉のような国民の生活に多大の影響を及ぼす国際交渉が政府間で極秘裏に行われていることも大問題である。国民一人一人がその是非を判断できるよう、このような国際交渉に関する情報をすべて速やかに公開するべきである。

b)海賊版対策条約(ACTA)について
 第55ページに書かれているACTAを背景に経産省及び文化庁の主導により無意味にDRM回避規制を強化する不正競争防止法及び著作権法の改正案が以前国会を通され、ACTA自体も国会で批准された。しかし、このようなユーザーの情報アクセスに対するリスクを不必要に高める危険なものとしかなり得ない規制強化条項を含む条約の交渉、署名及び批准は何ら国民的なコンセンサスが得られていない中でなされており、私は一国民としてACTAに反対する。今なおACTAの批准国は日本しかなく、日本は無様に世界に恥を晒し続けている。もはやACTAに何ら意味はなく、日本は他国への働きかけを止めるとともに自ら脱退してその失敗を認めるべきである。

c)アーカイブの利活用促進のための著作権制度の見直しについて
 第45ページにアーカイブの構築・充実に関する著作権制度の見直しについて記載されている。このことについて文化庁の法制・基本問題小委員会及び知財本部の検証・評価・企画委員会において検討が進められている。ここで、真に2次利用可能な形で各種アーカイブの構築・充実を考えるのであれば、裁定制度の見直しや法解釈による対応に関する検討だけでは不十分である。特に日本において十分になされているとは言い難いパブリックドメイン資料や絶版資料の利活用をより強力に促進するべきであり、著作権法の改正により、(a)現行著作権法第31条で国会図書館のみに可能とされている絶版等資料の電子利用をあらゆる図書館及び文書館に可能とすること、合わせて(b)同条における絶版等資料以外の資料についての「滅失、損傷若しくは汚損を避けるため」という電子化のための要件を緩和してここにアーカイブ化のためという目的を追加し、著作権保護期間満了後の資料公開に備えた事前の電子化を明確に可能とすること、及び(c)個人アーカイブの作成が第30条の私的複製の範囲に含まれることを条文上明記し、個人資料の利活用及び著作権保護期間満了後の公開を促すことを私は求める。このような権利制限又は例外が不必要に狭くされるべきではなく、その他者がアーカイブを直接利用しないことを前提として他者の力を借りたアーカイブ化も可能とされるべきである。なお、諸外国における動向について注視が必要なことも無論であり、政府が強く関与する形で実質オプトアウト方式で強力に絶版作品の電子化を図るフランスの20世紀の絶版作品電子化法や、孤児作品のみならず絶版作品の利用についても規定するドイツの孤児・絶版作品デジタル利用促進法なども参考にされてしかるべきである。

 さらに、法制度上の問題ではないが、国会図書館が著作権切れの著作物について2次利用に関する許諾を原則不要としている通り、NHKによるものを含め国費又は国費相当の予算を用いた各種アーカイブにおいては、インターネットを通じ書誌事項だけではなく全コンテンツの提供を行うことを目標として資料の電子化を行うとともに、公開情報に著作権期間満了日を明示し、合わせて公開された著作権切れの著作物に関しては原則2次利用の許諾を不要とするべきである。そして、特に国会図書館及び国立公文書館のような文書中心のアーカイブに関しては一般ユーザーからの入力を通じたテキスト化システムの実装も検討してもらいたい。

d)各知財法改正について
 第15~16、19ページに書かれていた特許法や不正競争防止法の改正案が閣議決定されており、今国会で成立する可能性が高い。
 これらの法改正はかなり大きな改正事項を含むものであり、施行前の周知と合わせて関連政令・ガイドライン等の検討にあたってはその審議過程及び改正理由をきちんと公開するとともに、一ヶ月以上の十分な期間を取ってパブコメを取るようにしてもらいたい。

e)インターネット上の著作権侵害の抑止について
 第55ページにインターネット上の著作権侵害の抑止について書かれているが、このようなネット上の違法コンテンツ対策、違法ファイル共有対策について、通信の秘密やプライバシー、情報アクセス権等の国民の基本的な権利をきちんと尊重しつつ対策を進めることを明記してもらいたい。この点においても、国民の基本的な権利を必ず侵害するものとなり、ネットにおける文化と産業の発展を阻害することにつながる危険な規制強化の検討ではなく、ネットにおける各種問題は情報モラル・リテラシー教育によって解決されるべきものという基本に立ち帰り、現行のプロバイダー責任制限法と削除要請を組み合わせた対策などの、より現実的かつ地道な施策のみに注力して検討を進めるべきである。

f)私的録音録画補償金問題について
 第40~41ページでは私的録音録画補償金問題についても言及されている。権利者団体等が単なる既得権益の拡大を狙ってiPod等へ対象範囲を拡大を主張している私的録音録画補償金問題についても、補償金のそもそもの意味を問い直すことなく、今の補償金の矛盾を拡大するだけの私的録音録画補償金の対象拡大を絶対にするべきではない。

 文化庁の文化審議会著作権分科会における数年の審議において、補償金のそもそもの意義についての意義が問われたが、文化庁が、天下り先である権利者団体のみにおもねり、この制度に関する根本的な検討を怠った結果、特にアナログチューナー非対応録画機への課金について私的録音録画補償金管理協会と東芝間の訴訟に発展した。ブルーレイ課金・アナログチューナー非搭載録画機への課金について、権利者団体は、ダビング10への移行によってコピーが増え自分たちに被害が出ると大騒ぎをしたが、移行後6年以上経った今現在においても、ダビング10の実施による被害増を証明するに足る具体的な証拠は全く示されておらず、ブルーレイ課金・アナログチューナー非搭載録画機への課金に合理性があるとは到底思えない。わずかに緩和されたとは言え、今なお地上デジタル放送にはダビング10という不当に厳しいコピー制限がかかったままである。こうした実質的に全国民に転嫁されるコストで不当に厳しい制限を課している機器と媒体にさらに補償金を賦課しようとするのは、不当の上塗りである。

 なお、世界的に見ても、メーカーや消費者が納得して補償金を払っているということはカケラも無く、権利者団体がその政治力を不当に行使し、歪んだ「複製=対価」の著作権神授説に基づき、不当に対象を広げ料率を上げようとしているだけというのがあらゆる国における実情である。表向きはどうあれ、大きな家電・PCメーカーを国内に擁しない欧州各国は、私的録音録画補償金制度を、外資から金を還流する手段、つまり、単なる外資規制として使っているに過ぎない。この制度における補償金の対象・料率に関して、具体的かつ妥当な基準はどこの国を見ても無いのであり、この制度は、ほぼ権利者団体の際限の無い不当な要求を招き、莫大な社会的コストの浪費のみにつながっている。機器・媒体を離れ音楽・映像の情報化が進む中、「複製=対価」の著作権神授説と個別の機器・媒体への賦課を基礎とする私的録音録画補償金は、既に時代遅れのものとなりつつあり、その対象範囲と料率のデタラメさが、デジタル録音録画技術の正常な発展を阻害し、デジタル録音録画機器・媒体における正常な競争市場を歪めているという現実は、補償金制度を導入したあらゆる国において、問題として明確に認識されなくてはならないことである。

g)クラウド型サービスのための環境整備について
 第40ページに、クラウド型サービスのための環境整備について書かれている。ここで、「まねきTV」事件などの各種判例からも、ユーザー個人のみによって利用されるようなクラウド型サービスまで著作権法上ほぼ違法とされてしまう状況に日本があることは明らかであり、このような状況は著作権法の趣旨に照らして決して妥当なことではない。

 文化庁は、2015年2月の文化審議会著作権分科会・著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会の「クラウドサービス等と著作権に関する報告書」において、クラウド型サービスのための法改正の必要性は認められないとしたが、この文化庁における検討は、主にロッカー型クラウドサービスに検討対象を矮小化した上で権利者団体側の意見を重視して法改正は不要としており、公正なものに全くなっていない。この報告書が不公正であることは、保存されるコンテンツを利用者が用意し、一人の利用者のみがロッカーに保存されるコンテンツにアクセス可能なプライベート・ユーザーアップロード型のロッカー型クラウドサービスについて、「基本的には、利用行為主体は利用者であり、当該利用者が行う著作物の複製行為は、私的使用目的の複製(第30条第1項)であると整理することができ、権利者の許諾を得ることは特段不要である」と基本的に合法であると整理しながら、この整理を「個々のサービスにおける利用行為主体の判断を含め、私的使用目的の複製と判断されるか否かについては、当該サービスに含まれる全ての機能及び提供態様等を全体としてみた上で、個別の事案ごとの事実認定に基づいて総合的に判断される」というただし書きで結局ケースバイケースで違法となり得ると骨抜きにしている点や、法改正の必要性に関する議論であるにもかかわらず、「メディア変換サービス」や「個人向け録画視聴サービス」等について、全て許諾を必要とするべきという結論を過去の判例のみから一方的に引き出している点などに顕著に表れている。しかし、本来ならば、クラウドサービス中で私的複製に該当し合法である利用範囲を可能な限り明確にし、政府として合法と考えられる利用範囲について周知を行いながら、さらに、「MYUTA」事件、「まねきTV」事件、「ロクラク」事件、「自炊代行業者」事件等の各種判決を通じて現在私的複製に該当せず違法とされている「メディア変換サービス」や「個人向け録画視聴サービス」等を含むほとんどあらゆるタイプのサービスについて、著作権法により不必要にかつ不当に制限されている部分、公正な利用として著作権者の許諾なく認められるべき部分を見極め、法改正によってその合法化を図ることこそなされるべきであったことである。この点で文化庁には相変わらず真摯な検討姿勢はあまり見られない。

 ユーザーが自ら合法的に入手したコンテンツを私的に楽しむために利用することに著作権法が必要以上に介入することが許されるべきではなく、個々のユーザーが自らのためのもに利用するようなクラウド型サービスにまで不必要に著作権を及ぼし、このような技術的サービスにおけるトランザクションコストを過大に高め、その普及を不当に阻害することに何ら正当性はない。この問題がクラウド型サービス固有の問題でないのはその通りであるが、だからといって法改正の必要性がなくなる訳ではない。著作権法の条文及びその解釈・運用が必要以上に厳格に過ぎクラウド型サービスのような技術の普及が不当に阻害されているという日本の悲惨な現状を多少なりとも緩和するべく、文化庁の関与を排除して速やかに問題を再整理し、アメリカ等と比べて遜色の無い範囲で一般フェアユース条項を導入し、同時にクラウド型サービスなどについてもすくい上げられるようにするべきである。

h)コンテンツに関する規制緩和について
 第51~52ページに、外国におけるコンテンツに関する規制の緩和・撤廃を強く働きかけると書かれている。このようなことも無論重要であるが、東京都の青少年健全育成条例改正問題に代表されるように、児童ポルノ法の改正検討や、各地方自治体の青少年条例の改正検討などにより、今の日本のコンテンツ業界に不当な規制圧力が加えられている状態にあるということをそれ以上に重く見るべきである。児童ポルノ規制法と青少年条例改正のそれぞれの問題点については、下に改めて詳しく書くが、これらの規制圧力は、場合によっては今の日本のコンテンツ産業に壊滅的なダメージを与えかねないものである。一方でコンテンツ強化を核とした成長戦略の推進と言いながら、その一方でこのような表現弾圧の動きが政治・行政、特に警察庁を中心として激化している現状は片腹痛いとしか言いようがない。このような百害あって一利ない表現規制の動きは、日本の文化と経済の健全な発展のために到底看過できるものではない。政府・与党にあっては、民主主義の根本たる表現の自由すら脅かしている現在の不当な表現規制圧力について速やかに排除・緩和するための検討を開始するべきである。

(2)クールジャパン提言記載事項について
a)二次創作規制の緩和について

 クールジャパン提言の第13ページに「クリエイティビティを阻害している規制についてヒアリングし規制緩和する。コンテンツの発展を阻害する二次創作規制、ストリートパフォーマンスに関する規制など、表現を限定する規制を見直す。」と記載されている通り、二次創作は日本の文化的創作の原動力の一つになっており、その推進のために現状の規制を緩和する必要がある。これは知的財産に関わる重要な提言であり、二次創作規制を緩和するという記載を知財計画2015においてもそのまま取り入れ、政府としてこのような規制の緩和を強力に推進することを重ねてきちんと示すべきである。

(3)その他の知財政策事項について:
a)ダウンロード違法化・犯罪化問題について

 文化庁の暴走と国会議員の無知によって、2009年の6月12日にダウンロード違法化条項を含む改正著作権法が成立し、2010年の1月1日に施行された。また、日本レコード協会などのロビー活動により、自民党及び公明党が主導する形でダウンロード犯罪化条項がねじ込まれる形で、2012年6月20日に改正著作権法が成立し、2012年10月1日から施行されている。しかし、一人しか行為に絡まないダウンロードにおいて、「事実を知りながら」なる要件は、エスパーでもない限り証明も反証もできない無意味かつ危険な要件であり、技術的・外形的に違法性の区別がつかない以上、このようなダウンロード違法化・犯罪化は法規範としての力すら持ち得ず、罪刑法定主義や情報アクセス権を含む表現の自由などの憲法に規定される国民の基本的な権利の観点からも問題がある。このような法改正によって進むのはダウンロード以外も含め著作権法全体に対するモラルハザードのみであり、今のところ幸いなことに適用例はないが、これを逆にねじ曲げてエンフォースしようとすれば、著作権検閲という日本国として最低最悪の手段に突き進む恐れしかない。

 そもそも、ダウンロード違法化の懸念として、このような不合理極まる規制強化・著作権検閲に対する懸念は、文化庁へのパブコメ(文化庁HPhttp://www.bunka.go.jp/chosakuken/singikai/houkoku.htmlの意見募集の結果参照。ダウンロード違法化問題において、この8千件以上のパブコメの7割方で示された国民の反対・懸念は完全に無視された。このような非道極まる民意無視は到底許されるものではない)や知財本部へのパブコメ(知財本部のHPhttp://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/keikaku2009.htmlの個人からの意見参照)を見ても分かる通り、法改正前から指摘されていたところであり、このようなさらなる有害無益な規制強化・著作権検閲にしか流れようの無いダウンロード違法化・犯罪化は始めからなされるべきではなかったものである。文化庁の暴走と国会議員の無知によって成立したものであり、ネット利用における個人の安心と安全を完全にないがしろにするものである、百害あって一利ないダウンロード違法化・犯罪化を規定する著作権法第30条第1項第3号及び第119条第3項を即刻削除するべきである。

b)一般フェアユース条項の導入について
 一般フェアユース条項の導入について、ユーザーに対する意義からも、可能な限り早期に導入することを求める。特に、インターネットのように、ほぼ全国民が利用者兼権利者となり得、考えられる利用形態が発散し、個別の規定では公正利用の類型を拾い切れなくなるところでは、フェアユースのような一般規定は保護と利用のバランスを取る上で重要な意義を持つものである。

 2012年の法改正によって写り込み等に関する権利制限の個別規定が追加されたが、あった方が良いものとは言え、これは到底一般フェアユース条項と言うに足るものではなく、これでは著作権をめぐる今の混迷状況が変わることはない。

 著作物の公正利用には変形利用もビジネス利用も考えられ、このような利用も含めて著作物の公正利用を促すことが、今後の日本の文化と経済の発展にとって真に重要であることを考えれば、不当にその範囲を不当に狭めるべきでは無く、その範囲はアメリカ等と比べて遜色の無いものとされるべきである。ただし、フェアユースの導入によって、私的複製の範囲が縮小されることはあってはならない。

 権利を侵害するかしないかは刑事罰がかかるかかからないかの問題でもあり、公正という概念で刑事罰の問題を解決できるのかとする意見もあるようだが、かえって、このような現状の過剰な刑事罰リスクからも、フェアユースは必要なものと私は考える。現在親告罪であることが多少セーフハーバーになっているとはいえ、アニメ画像一枚の利用で別件逮捕されたり、セーフハーバーなしの著作権侵害幇助罪でサーバー管理者が逮捕されたりすることは、著作権法の主旨から考えて本来あってはならないことである。政府にあっては、著作権法の本来の主旨を超えた過剰リスクによって、本来公正として認められるべき事業・利用まで萎縮しているという事態を本当に深刻に受け止め、一刻も早い改善を図ってもらいたい。

 個別の権利制限規定の迅速な追加によって対処するべきとする意見もあるが、文化庁と癒着権利者団体が結託して個別規定すらなかなか入れず、入れたとしても必要以上に厳格な要件が追加されているという惨憺たる現状において、個別規定の追加はこの問題における真の対処たり得ない。およそあらゆる権利制限について、文化庁と権利者団体が結託して、全国民を裨益するだろう新しい権利制限を潰すか、極めて狭く使えないものとして来たからこそ、今一般規定が社会的に求められているのだという、国民と文化の敵である文化庁が全く認識していないだろう事実を、政府・与党は事実としてはっきりと認めるべきである。

c)著作権法におけるいわゆる「間接侵害」への対応について
 セーフハーバーを確定するためにも間接侵害の明確化はなされるべきであるが、現行の条文におけるカラオケ法理や各種ネット録画機事件などで示されたことの全体的な整理以上のことをしてはならない。特に、著作権法に明文の間接侵害一般規定を設けることは絶対にしてはならないことである。確かに今は直接侵害規定からの滲み出しで間接侵害を取り扱っているので不明確なところがあるのは確かだが、現状の整理を超えて、明文の間接侵害一般規定を作った途端、権利者団体や放送局がまず間違いなく山の様に脅しや訴訟を仕掛けて来、今度はこの間接侵害規定の定義やそこからの滲み出しが問題となり、無意味かつ危険な社会的混乱を来すことは目に見えているからである。知財計画2015において間接侵害への対応について記載するのであれば、著作権法の間接侵害の明確化は、ネット事業・利用の著作権法上のセーフハーバーを確定するために必要十分な限りにおいてのみなされると合わせ明記してもらいたい。

d)保護期間延長問題について
 権利者団体と文化庁を除けば、延長を否定する結論が出そろっているこの問題について、継続検討するとしていること自体極めて残念なことである。これほど長期間にわたる著作権の保護期間をこれ以上延ばすことを是とするに足る理由は何一つなく、知財計画2015では、著作権・著作隣接権の保護期間延長の検討はこれ以上しないとしてもらいたい。特に、流通事業者に過ぎないレコード製作者と放送事業者の著作隣接権については、保護期間を短縮することが検討されても良いくらいである。また今年は、環太平洋経済連携協定(TPP)などの経済連携協定(EPA)交渉に絡み、保護期間延長などについて外国から不当な圧力がかけられる恐れが強いが、今ですら不当に長い著作権保護期間のこれ以上の延長など論外であり、そのような要求は不当なものとして毅然としてはねのけるべきである。

e)DRM回避規制について
 経産省と文化庁の主導により無意味にDRM回避規制を強化する不正競争防止法と著作権法の改正案がそれぞれ以前国会を通されたが、これらの法改正を是とするに足る立法事実は何一つない。不正競争防止法と著作権法でDRM回避機器等の提供等が規制され、著作権法でコピーコントロールを回避して行う私的複製まで違法とされ、十二分以上に規制がかかっているのであり、これ以上の規制強化は、ユーザーの情報アクセスに対するリスクを不必要に高める危険なものとしかなり得ない。ユーザーの情報アクセスに対するリスクを不必要に高める危険なものとしかなり得ないこれ以上のDRM回避規制の強化はされてはならない。

 特に、DRM回避規制に関しては、有害無益な規制強化の検討ではなく、まず、私的なDRM回避行為自体によって生じる被害は無く、個々の回避行為を一件ずつ捕捉して民事訴訟の対象とすることは困難だったにもかかわらず、文化庁の片寄った見方から一方的に導入されたものである、私的な領域でのコピーコントロール回避規制(著作権法第30条第1項第2号)の撤廃の検討を行うべきである。コンテンツへのアクセスあるいはコピーをコントロールしている技術を私的な領域で回避しただけでは経済的損失は発生し得ず、また、ネットにアップされることによって生じる被害は公衆送信権によって既にカバーされているものであり、その被害とDRM回避やダウンロードとを混同することは絶対に許されない。それ以前に、私法である著作権法が、私的領域に踏み込むということ自体異常なことと言わざるを得ない。また、同時に、何ら立法事実の変化がない中、ドサクサ紛れに通された、先般の不正競争防止法改正で導入されたDRM回避機器の提供等への刑事罰付与や、以前の著作権法改正で導入されたアクセスコントロール関連規制の追加についても、速やかに元に戻す検討がなされるべきである。

f)コピーワンス・ダビング10・B-CAS問題について
 私はコピーワンスにもダビング10にも反対する。そもそも、この問題は、放送局・権利者にとっては、視聴者の利便性を著しく下げることによって、一旦は広告つきながらも無料で放送したコンテンツの市場価格を不当につり上げるものとして機能し、国内の大手メーカーとっては、B-CASカードの貸与と複雑な暗号システムを全てのテレビ・録画機器に必要とすることによって、中小・海外メーカーに対する参入障壁として機能するB-CASシステムの問題を淵源とするのであって、このB-CASシステムと独禁法の関係を検討するということを知財計画2015では明記してもらいたい。検討の上B-CASシステムが独禁法違反とされるなら、速やかにその排除をして頂きたい。また、無料の地上放送において、逆にコピーワンスやダビング10のような視聴者の利便性を著しく下げる厳格なコピー制御が維持されるのであれば、私的録画補償金に存在理由はなく、これを速やかに廃止するべきである。

g)著作権検閲・ストライクポリシーについて
 ファイル共有ソフトを用いて著作権を侵害してファイル等を送信していた者に対して警告メールを送付することなどを中心とする電気通信事業者と権利者団体の連携による著作権侵害対策が警察庁、総務省、文化庁などの規制官庁が絡む形で行われており、警察によってファイル共有ネットワークの監視も行われているが、このような対策は著作権検閲に流れる危険性が極めて高い。

 フランスで導入が検討された、警告メールの送付とネット切断を中心とする、著作権検閲機関型の違法コピー対策である3ストライクポリシーは、2009年6月に、憲法裁判所によって、インターネットのアクセスは、表現の自由に関係する情報アクセスの権利、つまり、最も基本的な権利の1つとしてとらえられるとされ、著作権検閲機関型の3ストライクポリシーは、表現の自由・情報アクセスの権利やプライバシーといった他の基本的な権利をないがしろにするものとして、真っ向から否定されている。ネット切断に裁判所の判断を必須とする形で導入された変形ストライク法も何ら効果を上げることなく、フランスでは今もストライクポリシーについて見直しの検討が行われており、2013年7月にはネット切断の罰が廃止されている。日本においては、このようなフランスにおける政策の迷走を他山の石として、このように表現の自由・情報アクセスの権利やプライバシーといった他の基本的な権利をないがしろにする対策を絶対に導入しないこととするべきであり、警察庁などが絡む形で検討されている違法ファイル共有対策についても、通信の秘密やプライバシー、情報アクセス権等の国民の基本的な権利をきちんと尊重する形で進めることが担保されなくてはならない。

 アメリカでは、議会に提出されたサイトブロッキング条項を含むオンライン海賊対策法案(SOPA)や知財保護強化法案(PIPA)が、IT企業やユーザーから検閲であるとして大反対を受け、審議が止められたが、日本においても著作権団体が同様の著作権ブロッキング法の導入を求めてくる恐れがある。

 サイトブロッキングの問題については下でも述べるが、インターネット利用者から見てその妥当性をチェックすることが不可能なサイトブロッキングにおいて、透明性・公平性・中立性を確保することは本質的に完全に不可能である。このようなブロッキングは、憲法に規定されている表現の自由(知る権利・情報アクセスの権利を含む)や検閲の禁止といった国民の基本的な権利を侵害するものとならざるを得ないものであり、決して導入されるべきでないものである。

 これらの提案や検討からも明確なように、違法コピー対策問題における権利者団体の主張は常に一方的かつ身勝手であり、ネットにおける文化と産業の発展を阻害するばかりか、インターネットの単純なアクセスすら危険なものとする非常識なものばかりである。今後は、このような一方的かつ身勝手な規制強化の動きを規制するため、憲法の「表現の自由」に含まれ、国際人権B規約にも含まれている国民の「知る権利」を、あらゆる公開情報に安全に個人的にアクセスする権利として、通信法に法律レベルで明文で書き込むことを検討するべきである。同じく、憲法に規定されている検閲の禁止から、技術的な著作権検閲やサイトブロッキングのような技術的検閲の禁止を通信法に法律レベルで明文で書き込むことを検討するべきである。

h)著作権法へのセーフハーバー規定の導入について
 動画投稿サイト事業者がJASRACに訴えられた「ブレイクTV」事件や、レンタルサーバー事業者が著作権幇助罪で逮捕され、検察によって姑息にも略式裁判で50万円の罰金を課された「第(3)世界」事件や、1対1の信号転送機器を利用者からほぼ預かるだけのサービスが放送局に訴えられ、最高裁判決で違法とされた「まねきTV」事件等を考えても、今現在、カラオケ法理の適用範囲はますます広く曖昧になり、間接侵害や著作権侵害幇助のリスクが途方もなく拡大し、甚大な萎縮効果・有害無益な社会的大混乱が生じかねないという非常に危険な状態がなお続いている。間接侵害事件や著作権侵害幇助事件においてネット事業者がほぼ直接権利侵害者とみなされてしまうのでは、プロバイダー責任制限法によるセーフハーバーだけでは不十分であり、間接侵害や著作権侵害幇助罪も含め、著作権侵害とならない範囲を著作権法上きちんと確定することは喫緊の課題である。ただし、このセーフハーバーの要件において、標準的な仕組み・技術や違法性の有無の判断を押しつけるような、権利侵害とは無関係の行政機関なり天下り先となるだろう第3者機関なりの関与を必要とすることは、検閲の禁止・表現の自由等の国民の権利の不当な侵害に必ずなるものであり、絶対にあってはならないことである。

 知財計画2015において、プロバイダに対する標準的な著作権侵害技術導入の義務付け等を行わないことを合わせ明記するとともに、間接侵害や刑事罰・著作権侵害幇助も含め著作権法へのセーフハーバー規定の速やかな導入を検討するとしてもらいたい。この点に関しては、逆に、検閲の禁止や表現の自由の観点から技術による著作権検閲の危険性の検討を始めてもらいたい。

i)著作権等に関する真の国際動向について国民へ知らされる仕組みの導入及び文化庁ワーキンググループの公開について
 WIPO等の国際機関にも、政府から派遣されている者はいると思われ、著作権等に関する真の国際動向について細かなことまで即座に国民へ知らされる仕組みの導入を是非検討してもらいたい。
 また、2013年からの著作物等の適切な保護と利用・流通に関するワーキングチームの審議は公開とされたが、文化庁はワーキングチームについて公開審議を原則とするには至っていない。上位の審議会と同様今後全てのワーキンググループについて公開審議を原則化するべきである。

j)天下りについて
 最後に、知財政策においても、天下り利権が各省庁の政策を歪めていることは間違いなく、知財政策の検討と決定の正常化のため、文化庁から著作権関連団体への、総務省から放送通信関連団体・企業への、警察庁からインターネットホットラインセンター他各種協力団体・自主規制団体への天下りの禁止を知財本部において決定して頂きたい。(これらの省庁は特にひどいので特に名前をあげたが、他の省庁も含めて決定してもらえるなら、それに超したことはない。)

(4)その他一般的な情報・ネット・表現規制について
 知財計画改訂において、一般的な情報・ネット・表現規制に関する項目は削除されているが、常に一方的かつ身勝手な主張を繰り広げる自称良識派団体が、意味不明の理屈から知財とは本来関係のない危険な規制強化の話を知財計画に盛り込むべきと主張をしてくることが十分に考えられるので、ここでその他の危険な一般的な情報・ネット・表現規制強化の動きに対する反対意見も述べる。今後も、本来知財とは無関係の、一般的な情報・ネット・表現規制に関する項目を絶対に知財計画に盛り込むことのないようにしてもらいたい。

a)青少年ネット規制法・出会い系サイト規制法について
 そもそも、青少年ネット規制法は、あらゆる者から反対されながら、有害無益なプライドと利権を優先する一部の議員と官庁の思惑のみで成立したものであり、速やかに廃止が検討されるべきものである。また、出会い系サイト規制法の改正は、警察庁が、どんなコミュニケーションサイトでも人は出会えるという誰にでも分かることを無視し、届け出制の対象としては事実上定義不能の「出会い系サイト事業」を定義可能と偽り、改正法案の閣議決定を行い、法案を国会に提出したものであり、他の重要法案と審議が重なる中、国会においてもその本質的な問題が見過ごされて可決され、成立したものである。憲法上の罪刑法定主義や検閲の禁止にそもそも違反している、この出会い系サイト規制法の改正についても、今後、速やかに元に戻すことが検討されるべきである。

b)児童ポルノ規制・サイトブロッキングについて
 児童ポルノ法規制強化問題・有害サイト規制問題における自称良識派団体の主張は、常に一方的かつ身勝手であり、ネットにおける文化と産業の発展を阻害するばかりか、インターネットの単純なアクセスすら危険なものとする非常識なものばかりである。今後は、このような一方的かつ身勝手な規制強化の動きを規制するため、憲法の「表現の自由」に含まれ、国際人権B規約にも含まれている国民の「知る権利」を、あらゆる公開情報に安全に個人的にアクセスする権利として、通信法に法律レベルで明文で書き込むべきである。同じく、憲法に規定されている検閲の禁止から、技術的な検閲やサイトブロッキングのような技術的検閲の禁止を通信法に法律レベルで明文で書き込むべきである。

 閲覧とダウンロードと取得と所持の区別がつかないインターネットにおいては、例え児童ポルノにせよ、情報の単純所持や取得の規制は有害無益かつ危険なもので、憲法及び条約に規定されている「知る権利」を不当に害するものとなる。「自身の性的好奇心を満たす目的で」、積極的あるいは意図的に画像を得た場合であるなどの限定を加えたところで、エスパーでもない限りこのような積極性を証明することも反証することもできないため、このような情報の単純所持や取得の規制の危険性は回避不能であり、思想の自由や罪刑法定主義にも反する。繰り返し取得としても、インターネットで2回以上他人にダウンロードを行わせること等は技術的に極めて容易であり、取得の回数の限定も、何ら危険性を減らすものではない。

 児童ポルノ規制の推進派は常に、提供による被害と単純所持・取得を混同する狂った論理を主張するが、例えそれが児童ポルノであろうと、情報の単純所持ではいかなる被害も発生し得えない。現行法で、ネット上であるか否かにかかわらず、提供及び提供目的の所持が規制されているのであり、提供によって生じる被害と所持やダウンロード、取得、収集との混同は許され得ない。そもそも、最も根本的なプライバシーに属する個人的な情報所持・情報アクセスに関する情報を他人が知ることは、通信の秘密や情報アクセスの権利、プライバシーの権利等の基本的な権利からあってはならないことである。

 アニメ・漫画・ゲームなどの架空の表現に対する規制対象の拡大も議論されているが、このような対象の拡大は、児童保護という当初の法目的を大きく逸脱する、異常規制に他ならない。アニメ・漫画・ゲームなどの架空の表現において、いくら過激な表現がなされていようと、それが現実の児童被害と関係があるとする客観的な証拠は何一つない。いまだかつて、この点について、単なる不快感に基づいた印象批評と一方的な印象操作調査以上のものを私は見たことはないし、虚構と現実の区別がつかないごく一部の自称良識派の単なる不快感など、言うまでもなく一般的かつ網羅的な表現規制の理由には全くならない。アニメ・漫画・ゲームなどの架空の表現が、今の一般的なモラルに基づいて猥褻だというのなら、猥褻物として取り締まるべき話であって、それ以上の話ではない。どんな法律に基づく権利であれ、権利の侵害は相対的にのみ定まるものであり、実際の被害者の存在しない創作物・表現に対する規制は何をもっても正当化され得ない。民主主義の最重要の基礎である表現の自由や言論の自由、思想の自由等々の最も基本的な精神的自由そのものを危うくすることは絶対に許されない。この点で、2012年6月にスウェーデンで漫画は児童ポルノではないとする最高裁判決が出されたことなども注目されるべきである。

 単純所持規制にせよ、創作物規制にせよ、両方とも1999年当時の児童ポルノ法制定時に喧々囂々の大議論の末に除外された規制であり、規制推進派が何と言おうと、これらの規制を正当化するに足る立法事実の変化はいまだに何一つない。

 既に、警察などが提供するサイト情報に基づき、統計情報のみしか公表しない不透明な中間団体を介し、児童ポルノアドレスリストの作成が行われ、そのリストに基づいて、ブロッキング等が行われているが、いくら中間に団体を介そうと、一般に公表されるのは統計情報に過ぎす、児童ポルノであるか否かの判断情報も含め、アドレスリストに関する具体的な情報は、全て閉じる形で秘密裏に保持されることになるのであり、インターネット利用者から見てそのリストの妥当性をチェックすることは不可能であり、このようなアドレスリストの作成・管理において、透明性・公平性・中立性を確保することは本質的に完全に不可能である。このようなリストに基づくブロッキング等は、自主的な取組という名目でいくら取り繕おうとも、憲法に規定されている表現の自由(知る権利・情報アクセスの権利を含む)や検閲の禁止といった国民の基本的な権利を侵害するものとならざるを得ないのであり、小手先の運用変更などではどうにもならない。

 児童ポルノ規制法に関しては、提供及び提供目的での所持が禁止されているのであるから、本当に必要とされることはこの規制の地道なエンフォースであって有害無益かつ危険極まりない規制強化の検討ではない。DVD販売サイトなどの海外サイトについても、本当に児童ポルノが販売されているのであれば、速やかにその国の警察に通報・協力して対処すべきだけの話であって、それで対処できないとするに足る具体的根拠は全くない。警察自らこのような印象操作で規制強化のマッチポンプを行い、警察法はおろか憲法の精神にすら違背していることについて警察庁は恥を知るべきである。例えそれが何であろうと、情報の単純所持や単なる情報アクセスではいかなる被害も発生し得えないのであり、自主的な取組という名目でいくら取り繕おうとも、憲法に規定されている表現の自由(知る権利・情報アクセスの権利を含む)や検閲の禁止といった国民の基本的な権利を侵害するものとならざるを得ないサイトブロッキングは即刻排除するべきであり、そのためのアドレスリスト作成管理団体として設立された、インターネットコンテンツセーフティ協会は即刻その解散が検討されてしかるべきである。

 なお、民主主義の最重要の基礎である表現の自由に関わる問題において、一方的な見方で国際動向を決めつけることなどあってはならないことであり、欧米においても、情報の単純所持規制やサイトブロッキングの危険性に対する認識はネットを中心に高まって来ていることは決して無視されてはならない。例えば、欧米では既にブロッキングについてその恣意的な運用によって弊害が生じていることや、アメリカにおいても、2009年に連邦最高裁で児童オンライン保護法が違憲として完全に否定され、2011年6月に連邦最高裁でカリフォルニア州のゲーム規制法が違憲として否定されていること、ドイツで児童ポルノサイトブロッキング法は検閲法と批判され、最終的に完全に廃止されたことなども注目されるべきである(http://www.zdnet.de/news/41558455/bundestag-hebt-zensursula-gesetz-endgueltig-auf.htm参照)。スイスの2009年の調査でも、2002年に児童ポルノ所持で捕まった者の追跡調査を行っているが、実際に過去に性的虐待を行っていたのは1%、6年間の追跡調査で実際に性的虐待を行ったものも1%に過ぎず、児童ポルノ所持はそれだけでは、性的虐待のリスクファクターとはならないと結論づけており、児童ポルノの単純所持規制・ブロッキングの根拠は完全に否定されているのである(http://www.biomedcentral.com/1471-244X/9/43/abstract参照)。欧州連合において、インターネットへのアクセスを情報の自由に関する基本的な権利として位置づける動きがあることも見逃されてはならない。政府・与党内の検討においては、このような国際動向もきちんと取り上げるべきである。

 そして、単純所持規制に相当し、上で書いた通り問題の大きい性的好奇心目的所持罪を含む児童ポルノの改正法案が国会で2014年6月18日に可決・成立し、同年6月25日に公布され、2015年7月15日の施行を待つ状態となっている。附帯決議等もあるものの、この法改正についてどのような運用がされるか、その影響がどうなるかは不明な点が多く、かなりの混乱を生むことも予想される。この問題の大きい性的好奇心目的所持罪を規定する児童ポルノ規制法第7条第1項は即刻削除するべきであり、合わせ、政府・与党においては、児童ポルノを対象とするものにせよ、いかなる種類のものであれ、情報の単純所持・取得規制・ブロッキングは極めて危険な規制であるとの認識を深め、このような規制を絶対に行わないこととして、危険な法改正案が2度と与野党から提出されることが無いようにするべきである。

 さらに、性的好奇心目的所持罪を規定する児童ポルノ規制法第7条第1項を削除するとともに、児童ポルノの単純所持規制・創作物規制といった非人道的な規制を導入している諸国は即刻このような規制を廃止するべきと、そもそも最も根本的なプライバシーに属し、何ら実害を生み得ない個人的な情報所持・情報アクセスに関する情報を他人が知ること自体、通信の秘密や情報アクセスの権利、プライバシーの権利等の国際的かつ一般的に認められている基本的な権利からあってはならないことであると、日本政府から国際的な場において各国に積極的に働きかけてもらいたい。

 また、様々なところで検討されている有害サイト規制についても、その規制は表現に対する過度広汎な規制で違憲なものとしか言いようがなく、各種有害サイト規制についても私は反対する。

c)東京都青少年健全育成条例他、地方条例の改正による情報規制問題について
 東京都でその青少年健全育成条例の改正が検討され、非実在青少年規制として大騒ぎになったあげく、2010年12月に、当事者・関係者の真摯な各種の意見すら全く聞く耳を持たれず、数々の問題を含む条例案が、都知事・東京都青少年・治安対策本部・自公都議の主導で都議会で通された。通過版の条例改正案も、非実在青少年規制という言葉こそ消えたものの、かえって規制範囲は非実在性犯罪規制とより過度に広汎かつ曖昧なものへと広げられ、有害図書販売に対する実質的な罰則の導入と合わせ、その内容は違憲としか言わざるを得ない内容のものである。また、この東京都の条例改正にも含まれている携帯フィルタリングの実質完全義務化は、青少年ネット規制法の精神にすら反している行き過ぎた規制である。さらに、大阪や京都などでは、児童ポルノに関して、法律を越える範囲で勝手に範囲を規定し、その単純所持等を禁止する、明らかに違憲な条例が通されるなどのデタラメが行われている。

 これらのような明らかな違憲条例の検討・推進は、地方自治体法第245条の5に定められているところの、都道府県の自治事務の処理が法令の規定に違反しているか著しく適正を欠きかつ明らかに公益を害していると認めるに足ると考えられるものであり、総務大臣から各地方自治体に迅速に是正命令を出すべきである。また、当事者・関係者の意見を完全に無視した東京都における検討など、民主主義的プロセスを無視した極めて非道なものとしか言いようがなく、今後の検討においてはきちんと民意が反映されるようにするため、地方自治法の改正検討において、情報公開制度の強化、審議会のメンバー選定・検討過程の透明化、パブコメの義務化、条例の改廃請求・知事・議会のリコールの容易化などの、国の制度と整合的な形での民意をくみ上げるシステムの地方自治に対する法制化の検討を速やかに進めてもらいたい。また、各地方の動きを見ていると、出向した警察官僚が強く関与する形で、各都道府県の青少年問題協議会がデタラメな規制強化騒動の震源となることが多く、今現在のデタラメな規制強化の動きを止めるべく、さらに、中央警察官僚の地方出向・人事交流の完全な取りやめ、地方青少年問題協議会法の廃止、問題の多い地方青少年問題協議会そのものの解散の促進についても速やかに検討を開始するべきである。

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2014年9月 2日 (火)

第319回:二次創作規制の緩和を言うクールジャパン提言

 この8月26日に英語特区を筆頭に極めて頭の悪い政策項目の並ぶクールジャパン提言(pdf)が政府のクールジャパン推進会議でまとめられた。

 この提言は、そのことがなければtwitterでつぶやくだけで放っておこうと思ったくらい本当にどうでもいいことしか書かれていないのだが、1ヶ所だけ特筆に値することが書かれているので、念のためブログでも取り上げておこうと思う。

 その部分は、第13ページの、

3 規制緩和でクリエイティブを応援する

若者のクリエイティビティの発揮を促すために、過剰な規制や無駄な不自由を減らしていく。若者が創造性を自由闊達に発揮し、そのクリエイティビティが他者にも伝播するような環境づくりを行う。

クリエイティビティを阻害している規制についてヒアリングし規制緩和する。コンテンツの発展を阻害する二次創作規制、ストリートパフォーマンスに関する規制など、表現を限定する規制を見直す。また知財以外にも、空地や空き家利用が困難になっている原因となる建築基準法規制、若い建築家が一級建築士取得の要件を満たしづらい状況になってしまった2006年の建築士法変更についての再検討等、規制緩和でクリエイティブを積極的に推進する。

という部分で、ここで、表現規制としての二次創作規制を見直すとはっきり言っているのである。

 これを過去の知財計画2011の(第252回参照)、

・創作基盤としての二次創作の円滑化
 パロディに関する法的課題を検討するとともに、インターネット上の共同創作や二次創作の権利処理ルールの明確化のための取組を勧める。

というルールの明確化という書き方と比べて見ると、クールジャパン提言は二次創作についてはっきりと規制緩和の方向で見直すと書いており、如何に踏み込んだ記載になっているかが分かるだろう。

 政府レベルの政策会議の提言に二次創作についてこれほど踏み込んだ記載が入ったのは始めてではないかと思うし、この書きぶりを見る限り、二次創作が日本の文化的創作の原動力の一つになっており、その推進のために現状の規制を緩和する必要があるということについてどうやら政府でも一定の認識は持っているのだろう。

 ただ、二次創作規制の緩和とはすなわち著作権規制の緩和であり、一般フェアユース条項の導入とまでは行かなくとも、最低でも二次創作のための権利制限、風刺やパロディ、パスティーシュのための権利制限を明確に著作権法に入れることを意味するのだが、このことを果たしてクールジャパン推進会議のメンバーはどこまで理解しているのだろうか。

 そして、上で引用した知財計画2011の後で、文化庁のパロディワーキングチームで2012年から2013年にかけてパロディの権利制限についての検討が行われたが、その報告書(pdf)に「少なくとも現時点では、立法による課題の解決よりも、既存の権利制限規定の拡張解釈ないし類推適用や、著作権者による明示の許諾がなくても著作物の利用の実態からみて一定の合理的な範囲で黙示の許諾を広く認めるなど、現行著作権法による解釈ないし運用により、より弾力的で柔軟な対応を図る方策を促進することが求められているものと評価することができる」と書かれている通り、結局どうにもならなかったという今までの経緯も果たして分かっているのかどうか。

 会議メンバーの理解はさておき、およそ脳味噌お花畑のしょうもない項目か既存の施策の焼き直しばかりが並ぶ他の部分を見ても、このクールジャパン提言が叩かれるのは当然だと思うし、全体としての実現可能性を私も大いに疑問視しているが、そうは言っても、政府の正式な政策会議で決まったことには違いなく、二次創作規制の緩和が政府レベルで決められたがその後どうなっているのかと繰り返し言い続けても構わないだろうし、私はそうするつもりでいる。

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