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2009年12月15日 (火)

第205回:知的財産戦略本部会合の資料と特許制度研究会の報告書

 前回少し書いた通り、これ以上無意味な知財計画など作ること無く、その役割を終えた知財本部は速やかに廃止してもらいたいものと個人的には思っているが、知財本部でこの12月8日に本部会合が開かれ、残念ながら、知財本部は存続するものと、また来年も知財計画が作られるものとされたようであり、特許庁からも、その特許制度研究会で同じく12月8日にまとめられた報告書が公表されている。今後の日本政府の動きを考える上でこれらの資料は非常に重要と思うので、今回は、これらの話を取り上げておきたいと思う。

(1)知的財産戦略本部会合(第24回・12月8日)の資料
 議事次第に並んでいる資料は、役所のものであるか有識者と称する人々のものであるかを問わず、例の如くほとんど全て何を言いたいのか良く分からないものばかりだが、その中に、「知的財産戦略について(pdf)」という知的財産戦略推進事務局が作った資料がある。

 相変わらず要領を得ない前置きの総論についても突っ込みたいところが無い訳ではないが、特に、最後の7ページ目で「知的財産を巡る喫緊の課題(ネット上の著作権侵害)」として、

・インターネット上であらゆる種類の著作権侵害コンテンツが氾濫
 全世界において日本のあらゆるコンテンツが無料で視聴・使用できる状態に!
(中略)
・2010年中の妥結を目指してACTA(模倣品・海賊版拡散防止条約)交渉が進む中、世界各国で様々な対策を実施
(例)フランス 侵害を3回繰り返した悪質なユーザーに対し、インターネットへの接続を強制的に遮断する措置を導入(いわゆる「スリーストライク制」)ACTA交渉を推進してきた日本が、他の先進諸国に大きく遅れてしまうおそれ!

・ネット配信ビジネスが飛躍する大きなチャンスを喪失する可能性
 世界をリードする抜本的な対策を早急に講じるとともに、2010年中にACTA交渉を妥結することが必要
 音楽の分野ではiTunes(アップル)がシェアを占めるものの、その他の分野では未だ大きな勢力は台頭しておらず、日本の企業にもチャンスがある。
→成長の大きな阻害要因を解決することで、世界的なビジネスモデルが出現!

と(赤字強調は私が付けたもの)、知財事務局が、あたかもフランスの非道な3ストライクポリシーがより進んだ政策であるかの如き印象操作を行い、ぬけぬけと模倣品・海賊版拡散防止条約(ACTA)にこのような非道な政策を取り込もうとし、ポリシーロンダリングを図って来ていることは決して見過ごせない

 このような資料を見る限り、第198回でACTAについて書いたことや第203回に載せたパブコメで指摘した懸念はやはり妥当なものだったと言わざるを得ない。

 この資料で、ネットにおける著作権侵害・ビジネスと3ストライクポリシーとACTAが三段噺のように書かれているが、その論理的飛躍は指摘するまでもないだろう。フランスやイギリスの迷走・混乱のことを持ち出すまでも無く、導入されたとしたら情報の自由に関する個人の基本的な権利の侵害が発生する恐れが極めて高いストライクポリシーなど、国内で導入されるべきでないのは無論のこと、条約化されることなどとんでもないものである。本当にそのようなことが日本の主導で世界的に導入された日には、出現し得たかも知れないビジネスの芽までその混乱により国内から摘み取られたあげく、引き起こされる世界的混乱の最大の戦犯として日本が世界的に糾弾されることになるのは目に見えている。

 議事録はまだ公開されていないので、具体的にどのような議論がなされたかは不明だが、首相以下今の内閣の大臣を見渡しても、こうした本当に重要な論点についてまともに議論できる人間は皆無であり、ほとんど何の議論もされずにスルーされたのではないかと私は思っている。残念ながら、今の日本の立法府・行政府・司法府の役人・議員のレベルの低さを見る限り、こうして事務局の役人がデタラメな資料を作り、こうした公式会合で、本当の問題点のことなどカケラも理解しない大臣なり政治家の承認を取った形にして、危険な規制強化の既成事実化を図って行くという危険な動きが止まることは当分ないだろう。

 これからも地道にパブコメなどは出し続けるつもりだが、今の流れのまま締結されたら、日本が最大の戦犯とされるに違いないにもかかわらず、日本での反応がいまいち鈍いのは本当に残念である。

 また、この知財本部会合には、日本の知財学界の重鎮である元東大教授の中山信弘氏も「知的財産戦略本部の使命(pdf)」という資料を提出している。しょうも無い資料が並ぶ中で、これだけは非常に簡にして要を得た資料なので、興味のある方は是非リンク先の全文を読んで頂ければと思うが、この資料の、

1.成長戦略の必要性
(中略)
・しかし現在の知的財産制度は、基本的には、20世紀にはうまく機能した制度であるかもしれないが、デジタル技術を中心とした21世紀の制度として妥当であるのか、という点の再検討が喫緊の課題である。その意味から、この知的財産戦略本部を、官庁間の連絡役ではなく、その名の通り、成長戦略の一環として、戦略的に利用してゆくことが必要であると考える。

2.成長戦略の一例(コンテンツ・ビジネス)
(中略)
・リーマンショック以降の経済危機も大きな要因ではあるが、日本では、新たなことに挑戦するマインドは失せ、起業精神は衰え、ベンチャー企業の上場は壊滅状態にあり、一億総潔癖症候群に陥り、塹壕戦状態に陥っている。コンテンツ・ビジネスに関しては、まさに敵が箱根を越えているのに小田原城に立て籠もっているような感がある。日本には、アメリカのベンチャー企業に対抗する企業が現れないのには種々の理由が考えられ、多彩な施策が必要となる。

・知的財産制度だけではそれらを解決する切り札にはなりえないが、知的財産の側面から見れば、たとえば新たなネット・ビジネスを立ち上げようとすると、著作権法に抵触する場合が多く、著作権法が新たなネット・ビジネスの足を引っ張っていることは否定できない。まず最低限、産業・文化の発展の阻害要因を取り除き、次いで知的財産制度本来の目的である産業・文化の発展の道具となるべく、改革を急ぐべきである。

・詳細にわたるが、一例を挙げるならば、著作権法におけるフェアユース規定の導入、著作物の流通促進のための諸規定の充実、著作権の保護期間延長の阻止、等を検討すべきである。これらを通じ、コンテンツの流通・利用の促進を図り、早急に著作権者と利用者のウインウインの関係を構築することが肝要である。

という提言は、真に傾聴するに値する極めて明快なものである(赤字強調はやはり私が付けたもの)。省庁間の連絡役に堕している知財本部に関することも含め、昨今の迷走し続ける日本の著作権政策・知財政策に対する中山氏の臍を噛む思いが伝わって来る。具体的に会合でどのような議論が行われたかは不明だが、日本の知財学界の重鎮のこれほど明快な提言すら何の反響も呼び得ないなら、それこそ知財本部に存在価値など何一つ無い。

(2)特許制度研究会の報告書(12月8日)
 特許制度はかなり堅牢にできており、放っておいてもまずもって問題は無いので、特許の話は大体後回しになっているが、特許庁も、研究会を作ってほぼ法改正のための法改正の検討をしているという点では日本の役所の例に洩れない。

 日経の記事にあるように、さらに来年、経済産業省の産業構造審議会で検討をすると見え、即座に法改正をするという話ではないが、この特許制度研究会の報告書「特許制度に関する論点整理について(pdf)」の検討項目から、来年特許法の改正についてどのような検討が行われるかが分かるので、順番に検討項目と研究会の意見という結論らしき部分だけここに順にあげておきたいと思う。

 7ページ以降の「特許の活用促進」では、以下の5つの項目があげられている。

Ⅰ.登録対抗制度の見直し:
 実務上、登録が困難であること、特許権の取引に当たってはデュー・デリジェンスが実施されていること等を踏まえ、現行の民法の一般原則との関係に留意しつつ、当然対抗制度について検討を進めてはどうか。
Ⅱ.新たな独占的ライセンス制度の在り方:
 登録を効力発生要件としない新たな独占的ライセンス制度を整備し、登録を備えない独占的ライセンシーについても、無権原の実施者に対する差止請求は可能とすることについて検討を進めてはどうか。また、新たな独占的ライセンス制度では、登録・開示事項を最小限にした上で、登録を備えた独占的ライセンシーは、対抗関係に立つ第三者に対する差止請求も可能とすることについて検討を進めてはどうか。
Ⅲ.特許出願段階からの早期活用:
 出願後の特許を受ける権利に係る権利変動の登録・公示制度について検討を進めてはどうか。その場合、特許を受ける権利に係る権利変動の効力及び登録は、特許権にも引き継がれる(職権登録される)とすることについて検討を進めてはどうか。また、特許を受ける権利を目的とする質権の解禁について検討を進めてはどうか。
Ⅳ.実施許諾用意制度(ライセンス・オブ・ライト制度)の導入:
 制度導入については賛否が分かれたこと、制度の特許活用促進効果の見込みや詳細設計についての懸念も示されたことを踏まえ、特許権の活用の実態を見定め、制度の詳細設計に関する検討を深めつつ、制度の導入の是非について引き続き検討を行うべきではないか。

 22ページ以降の「多様な主体による利用に適したユーザーフレンドリーな制度の実現」では、以下の6つの項目が並んでいる。

Ⅰ.特許法条約(PLT)との整合に向けた方式的要件の緩和:
 PLTの主要項目のうち優先度の高いものについては、実現した場合の問題点等も考慮しながら、早期の実現に向けて検討を進めてはどうか。
Ⅱ.仮出願制度の導入:
 大学における仮出願の必要性を支持する意見がある一方、仮出願として独立した制度を創設することについては懸念が示された。したがって、仮出願に対するニーズについては、何らかの対応が必要としても、独立した制度の導入ではなく、既存の制度とPLT準拠の出願要件の緩和との組み合わせによる実現として検討を進めてはどうか。
Ⅲ.新規性喪失の例外規定における学術団体及び博覧会指定制度の廃止:
 学術団体及び博覧会指定制度については、廃止すべきとの意見が多かったため、廃止する方向で検討を進めてはどうか。
Ⅳ.審査着手時期の多段階化:
 遅い権利化のニーズにこたえる制度の導入については、賛否両論があるため、引き続き検討を行うべきではないか。
Ⅴ.公衆審査制度の拡充:
 特許付与前の公開の義務化及び特許付与後に権利の有効性を争う簡易な手段の導入については、双方とも賛否両論があった。したがって、公衆審査制度の拡充については、出願公開前に特許査定される案件の件数の増加状況を見極めつつ、過去の改正経緯も踏まえ、引き続き検討を行うべきではないか。
Ⅵ.冒認出願に関する救済措置の整備:
 真の権利者自らの出願の有無を問わずに、特許付与の前後を通じた権利の移転請求(名義の変更)を特許法上認めることについて検討を進めてはどうか。

 33ページ以降の「特許関係紛争の効率的・適正な解決に向けた制度整備」で並んでいる項目は、以下の6つである。

Ⅰ.侵害訴訟の判決確定後の無効審判等による再審の取扱い:
 確定した侵害訴訟が無効審判の確定審決に基づき再審となることを防止すべきとの意見が多かった。一方で、無効の遡及効を重視する公益的な側面と、「紛争の蒸し返し」の防止を重視する紛争解決手続上の側面のいずれを強調するかという価値判断に基づいて議論すべき、問題となるような事例はまれにしか生じないものであることも考慮すべき等の意見があったことを踏まえ、各制度案の具体的な効果、実務上の問題点等を精査しつつ、検討を進めてはどうか。
Ⅱ.特許の有効性判断についての「ダブルトラック」の在り方:
 特許の有効性判断が2つのルートで行われ得ることについては、紛争処理における侵害訴訟と無効審判の役割についての考え方等により多様な意見が出された。したがって、「ダブルトラック」の在り方については、両者の機能及び役割分担を整理した上で、各種の制度案の具体的な効果、実務上の問題点等を精査しつつ、引き続き検討を行うべきではないか。
Ⅲ.裁判所における技術的争点に関する的確な判断を支える制度整備:
 技術的争点に関する裁判官の判断を支援する体制を強化すべきとの意見が多かったため、技術的争点の判断を支援するための具体策について、引き続き検討を行うべきではないか。ただし、技術的争点の判断に必要な情報が適切に裁判官に提供されていれば、必ずしも裁判官が理系のバックグラウンドを有しているかどうかは技術的争点の判断に影響しないとの意見が多かった。
Ⅳ.無効審判ルートの在り方:
 無効審判ルートの在り方については多様な指摘がなされた。無効審判ルートの在り方については、迅速・効率的な紛争解決、無効審判当事者の公平性、制度利用者の手続保障等の視点から、各制度案の具体的な効果、実務上の問題点等を精査しつつ、引き続き検討を行うべきではないか。
Ⅴ.無効審判の確定審決の第三者効:
 特許法第167条の制度改正については賛否両論があるため、引き続き検討を行うべきではないか。
Ⅵ.審決・訂正の部分確定/訂正の許否判断の在り方:
 審決の確定及び訂正の許否判断を請求項単位で行うことに賛成する意見が多かった一方、ユーザーにとっての分かりやすさについての懸念や国際的な制度調和についての指摘があったことから、各制度案の具体的な効果、実務上の問題点等を精査しつつ、検討を進めてはどうか。

 53ページ以降の「特許保護の適切なバランスの在り方」で並んでいるのは、以下の5つの項目である。

Ⅰ.特許の保護対象:
 特許の保護対象については、現行のままで問題ないとの意見が多く、早急に見直すべきとの意見は出なかったため、法改正の必要はないと考えるのが適当ではないか。
Ⅱ.職務発明制度:
 現状では、改正法が適用される事件が発生していないため、再度の法改正は難しいことや、改正について賛否両論があったことから、新法の運用状況を見守りつつ慎重に検討を行うべきではないか。
Ⅲ.差止請求権の在り方:
 差止請求権を制限する何らかの規定を特許法に設けることについては賛否両論があった。したがって、差止請求権の制限の在り方については、引き続き検討を行うべきではないか。
Ⅳ.裁定実施権制度の在り方:
 現行の裁定実施権制度が機能していないことを理由に制度改正を検討する余地があるとの指摘があったものの、裁定制度の対象は安易に拡大すべきではないとの意見や、裁判所を判断主体とすることについての課題を指摘する意見もあった。したがって、裁定実施権制度の在り方については引き続き慎重に検討を行うべきではないか。
Ⅴ.特許権の効力の例外範囲(「試験又は研究」の例外範囲)の在り方:
 「試験又は研究」の範囲の明確化又は拡大については賛否両論があっため、「試験又は研究」の範囲についての司法解釈の蓄積を注視しつつ、慎重に検討を行うべきではないか。

 いちいち突っ込んで行くと切りが無く、ほぼ制度ユーザーにしか関係のない話なので、ここで細かな突っ込みをすることはしないが、この報告書で出されている方向性にかかわらず、これらの検討項目は全てニーズ不明か法的整理の非常に厄介なものばかりであり、引き続き検討としても後1年かそこらでおいそれと結論が出せるとは思えないものばかりである。(あり得るとしたら、確かに日経の記事にあるように冒認出願に関する救済措置の整備くらいだろうか。)

 恐らく来年の産業構造審議会の検討でさらにふるいにかけられるだろうが、特許についても、本当のニーズを不明確にしたまま、現状の制度でそれなりに担保されている法的安定性をないがしろにして法改正のための法改正がなされることがないことを私は願っている。

 次回は、また海外著作権動向の話をするつもりである。

(12月15日夜の追記:今日の違法P2P違法ファイル共有ユーザー一斉取り締まりに関する権利者団体の記者会見で、日本の権利者団体も3ストライクを求めると明確に打ち出した(internet watchの記事ITproの記事AV watchの記事参照)。3ストライクポリシーに関しては、上でも書いたように、権利者団体と癒着している文化庁・日本政府によってポリシーロンダリングが狙われる可能性が高く、海賊版条約(ACTA)の議論は本当に要注意である。)

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2009年12月 4日 (金)

第203回:知財本部「インターネット上の著作権侵害コンテンツ対策に関する調査」に対する提出パブコメ

 第198回で少し紹介した、知財本部の「インターネット上の著作権侵害コンテンツ対策に関する調査」(12月11日正午〆切)について、パブコメを書いて提出したので、ここに載せておく。項目だけなのでわかりづらいが、このパブコメもかなり危険な項目が並んでおり、決して見過ごせないものである。

 第198回で取り上げ、このパブコメにも書いた海賊版対策条約の話について、「P2Pとかその辺の話」でカナダのマイケル・ガイスト教授のブログ記事を翻訳・紹介されているので、興味のある方は是非リンク先をご覧頂ければと思う。この条約については、欧州インターネット・サービス・プロバイダー協会が明確に懸念を表明する文書(pdf)を公表するなど、既に国際的な波紋を呼びつつあるが、秘密裏に検討が進められるという不気味な状態が今なお続いている。

 また、警視庁から、12月11日〆切で、「インターネットカフェ等の対策に関する意見募集」が行われているので、念のためここにリンクを張っておく(internet watchの記事も参照)。

 後、著作権関係のパブコメとして、文化庁の「著作権法施行令の一部を改正する政令案」に関する意見募集(12月13日〆切。文化庁のリリース電子政府HP1意見募集要領1(pdf)著作権法施行令改正案概要(pdf)参照)、「著作権法施行規則の一部を改正する省令案」及び「著作権法施行令の一部を改正する政令案に基づく文化庁告示案」に関する意見募集(12月13日〆切。文化庁のリリース電子政府HP2意見募集要領2(pdf)著作権法施行規則改正案概要(pdf)電子政府HP3意見募集要領3(pdf)告示案概要(pdf)参照)が残っている。概要だけでパブコメをかけることからしてどうかと思うが、次回は、これらの意見募集に対する提出パブコメエントリになるだろうと思っている。

(以下、提出パブコメ)

氏名:兎園
個人・団体の別:個人
連絡先:

意見:
(概要)

インターネット上の著作権侵害対策に関し、以下のことを求める。
・日本レコード協会提案の、検閲に該当する日本版著作権グリーン・ダム計画を止めること。
・閣議決定により、警察庁などが絡む形で検討が行われている違法ファイル共有対策についても、通信の秘密やプライバシー、情報アクセス権、表現の自由等の国民の基本的な権利をきちんと尊重する形で検討を進めることを担保すること。
・憲法の「表現の自由」に含まれ、国際人権B規約にも含まれている国民の「知る権利」を、あらゆる公開情報に安全に個人的にアクセスする権利として、通信法に法律レベルで明文で書き込むこと。
・憲法に規定されている検閲の禁止から、技術的な著作権検閲やサイトブロッキングのような技術的検閲の禁止を通信法に法律レベルで明文で書き込むこと。
・発信者情報の開示、リンクサイト等について、いたずらに今の過大な法的不安定性をさらに拡大するような法改正を行うこと無く、間接侵害や著作権侵害幇助に関し、被侵害者との関係において、刑事罰リスクも含めたプロバイダーの明確なセーフハーバーについて検討し、著作権侵害とならないセーフハーバーの範囲を著作権法上きちんと確定すること。このセーフハーバーの要件において、検閲の禁止・表現の自由等の国民の権利の不当な侵害に必ずなる、標準的な仕組み・技術や違法性の有無の判断の押しつけなどをしないこと。
・文化庁の片寄った見方から一方的に導入されたものである、私的領域でのコピーコントロール回避規制(著作権法第30条第1項第2号)を撤廃すること。ユーザーの情報アクセスに対するリスクを不必要に高める危険なものとしかなり得ないこれ以上のDRM回避規制の強化を検討しないこと。
・著作権に関する教育・啓発活動には、通信の秘密やプライバシー、表現の自由等の情報に関する国民の基本的な権利についての情報も含め、著作権の保護強化も行き過ぎればまた非人道的なものとなるということに関して啓発・周知を図ること。
・模倣品・海賊版拡散防止条約について、税関において個人のPCや携帯デバイスの内容をチェック可能とすることや、インターネットで著作権検閲を行う機関を創設すること、ストライクポリシーを取ることを事実上プロバイダーに義務づけることといった、非人道的かつ危険な条項は除くべきであると、かえって、プライバシーや情報アクセスの権利といった国際的・一般的に認められている個人の基本的な権利を守るという条項こそ条約に盛り込むべきであると日本から各国に積極的に働きかけること。危険な規制強化につながる恐れが極めて強いプロバイダーの責任やDRM回避規制に関する規定はこの条約から除くべきであると、日本から各国に強く働きかけること。この条約の検討の詳細をきちんと公表すること。
・文化庁の暴走と国会議員の無知によって成立したものであり、ネット利用における個人の安心と安全を完全にないがしろにするものである、百害あって一利ないダウンロード違法化を規定する著作権法第30条第1項第3号を即刻削除すること。

(1)侵害コンテンツの迅速な削除を容易にする方策について
 まだ実施されてはいないが、総務省の「利用者視点を踏まえたICTサービスに係る諸問題に関する研究会」第一次提言案において、携帯電話においてダウンロードした音楽ファイルを自動検知した上でそのファイルのアクセス・再生制限を行うという、日本レコード協会の著作権検閲の提案が取り上げられており、今現在、このような著作権検閲の提案が政府レベルで検討されかねない非常に危険な状態にある。

 これも実施されていないと思うが、同じく、著作権検閲に流れる危険性が極めて高い、フランスで今なお揉めているネット切断型のストライクポリシー類似の、ファイル共有ソフトを用いて著作権を侵害してファイル等を送信していた者に対して警告メールを送付することなどを中心とする著作権侵害対策の検討が、警察庁、総務省、文化庁などの規制官庁が絡む形で「ファイル共有ソフトを悪用した著作権侵害対策協議会(CCIF)」において勧められている。

 通信の秘密という基本的な権利の適用は監視の位置がサーバーであるか端末であるかによらないものであること、特に、機械的な処理であっても通信の秘密を侵害したことには変わりはないとされ、通信の秘密を侵害する行為には、当事者の意思に反して通信の構成要素等を利用すること(窃用すること)も含むとされていることを考えると、日本レコード協会が提案している著作権対策は、明らかに通信の秘密を侵害するものである。

 また、本来最も基本的なプライバシーに属する個人端末中の情報について、内容を自動検知し、アクセス制限・再生禁止等を行うことは、それ自体プライバシー権を侵害するものであり、プライバシーの観点からも、このような措置は導入されるべきでない。

 最も基本的なプライバシーに属する個人端末中の情報について、内容を自動検知し、アクセス制限・再生禁止等を行う日本レコード協会が提案している違法音楽配信対策は、技術による著作権検閲に他ならず、憲法に規定されている表現の自由(情報アクセス権を含む)や検閲の禁止に明らかに反するものである。ここで、表現の自由や検閲の禁止という観点からも、このような対策は決して導入されてはならないものである。

 付言すれば、日本レコード協会の携帯端末における違法音楽配信対策は、建前は違えど、中国でPCに対する導入が検討され、大騒ぎになった末、今現在導入が無期延期されているところの検閲ソフト「グリーン・ダム」と全く同じ動作をするものであるということを政府にははっきりと認識してもらいたい。このような検閲ソフトの導入については、日本も政府として懸念を表明しており、自由で民主的な社会において、このような技術的検閲が導入されることなど、絶対許されないことである。

 このような提案は、通信の秘密や検閲の禁止、表現の自由、プライバシーといった個人の基本的な権利をないがしろにするものである。日本レコード協会が提案している、検閲に該当するこのような対策は絶対に導入されるべきでなく、また技術支援・実証実験等として税金のムダな投入がなされるべきではない。

 フランスで導入が検討された、警告メールの送付とネット切断を中心とする、著作権検閲機関型の違法コピー対策である3ストライクポリシーについても、この6月に、憲法裁判所によって、インターネットのアクセスは、表現の自由に関係する情報アクセスの権利、つまり、最も基本的な権利の1つとしてとらえられるものであるとして、著作権検閲機関型の3ストライクポリシーは、表現の自由・情報アクセスの権利やプライバシーといった他の基本的な権利をないがしろにするものとして、真っ向から否定された。フランスでは今なおストライクポリシーに関して揉め続けているが、日本においては、このようなフランスにおける政策の迷走を他山の石として、このように表現の自由・情報アクセスの権利やプライバシーといった他の基本的な権利をないがしろにする対策を絶対に導入しないこととするべきであり、閣議決定により、警察庁などが絡む形で検討が行われている違法ファイル共有対策についても、通信の秘密やプライバシー、情報アクセス権、表現の自由等の国民の基本的な権利をきちんと尊重する形で検討を進めることを担保するべきである。

 これらの提案や検討からも明確なように、違法コピー対策問題における権利者団体の主張は、常に一方的かつ身勝手であり、ネットにおける文化と産業の発展を阻害するばかりか、インターネットの単純なアクセスすら危険なものとする非常識なものばかりである。今後は、このような一方的かつ身勝手な規制強化の動きを規制するため、憲法の「表現の自由」に含まれ、国際人権B規約にも含まれている国民の「知る権利」を、あらゆる公開情報に安全に個人的にアクセスする権利として、通信法に法律レベルで明文で書き込むことを検討するべきである。同じく、憲法に規定されている検閲の禁止から、技術的な著作権検閲やサイトブロッキングのような技術的検閲の禁止を通信法に法律レベルで明文で書き込むことを検討するべきである。 

 今後は、国民の基本的な権利を必ず侵害するものとなる危険な技術による著作権検閲の検討ではなく、ネットにおける各種問題は情報モラル・リテラシー教育によって解決されるべきものという基本に立ち帰り、このような教育や公開情報の検索を行うクローリングと現行のプロバイダー責任制限法と削除要請を組み合わせた対策などの、より現実的かつ地道な施策のみに注力する検討が進むことを期待する。

(2)権利侵害者の特定を容易にするための方策(発信者情報の開示)について
 動画投稿サイト事業者がJASRACに訴えられ、第一審で敗訴した「ブレイクTV」事件や、レンタルサーバー事業者が著作権幇助罪で逮捕され、検察によって姑息にも略式裁判で50万円の罰金を課された「第(3)世界」事件等を考えても、今現在、著作権の間接侵害や侵害幇助のリスクが途方もなく拡大し、甚大な萎縮効果・有害無益な社会的大混乱が生じかねないという非常に危険な状態にある。

 発信者情報の開示等について、いたずらに今の過大な法的不安定性をさらに拡大するような法改正を行うことなど論外であり、政府においては、今現在、著作権の間接侵害・侵害幇助のリスクが途方もなく拡大し、甚大な萎縮効果・有害無益な社会的大混乱が生じかねないという非常に危険な状態にあるということをきちんと認識し、民事的な責任の制限しか規定していないプロバイダー責任制限法に関し、被侵害者との関係において、刑事罰リスクも含めたプロバイダーの明確なセーフハーバーについて検討するべきである。

 さらに、著作権の間接侵害事件や侵害幇助事件においてネット事業者がほぼ直接権利侵害者とみなされてしまうことを考えると、プロバイダー責任制限法によるセーフハーバーだけでは不十分であり、間接侵害や著作権侵害幇助罪も含め、著作権侵害とならないセーフハーバーの範囲を著作権法上きちんと確定することが喫緊の課題である。

 セーフハーバーを確定するためにも間接侵害の明確化はなされるべきであるが、現行の条文におけるカラオケ法理や各種ネット録画機事件などで示されたことの全体的な整理以上のことをしてはならない。特に、今現在文化庁の文化審議会で検討されているように、著作権法に明文の間接侵害一般規定を設けることは絶対にしてはならないことである。確かに今は直接侵害規定からの滲み出しで間接侵害を取り扱っているので不明確なところがあるのは確かだが、現状の整理を超えて、明文の間接侵害一般規定を作った途端、権利者団体や放送局がまず間違いなく山の様に脅しや訴訟を仕掛けて来、今度はこの間接侵害規定の定義やそこからの滲み出しが問題となり、無意味かつ危険な社会的混乱を来すことは目に見えているからである。

 このセーフハーバーの要件において、標準的な仕組み・技術や違法性の有無の判断を押しつけるような、権利侵害とは無関係の行政機関なり天下り先となるだろう第3者機関なりの関与を必要とすることは、検閲の禁止・表現の自由等の国民の権利の不当な侵害に必ずなるものであり、税金のムダな浪費と技術の発展の阻害につながるだけの危険かつ有害無益な規制強化であり、絶対にあってはならない。プロバイダー責任制限法の検討においても、通信の秘密やプライバシー、表現の自由等の国民の基本的な権利をきちんと尊重する形で検討が進められなくてはならないことは無論のことである。

 なお、アクセスログの保存についても、プロバイダー責任制限との関係で検討されるべき話ではなく、それ自体で別途きちんと検討されなくてはならない話である。

(3)アクセスコントロールの不正な回避を防止するための方策について
 昨年7月にゲームメーカーがいわゆる「マジコン」の販売業者を不正競争防止法に基づき提訴し、さらにこの2月にゲームメーカー勝訴の判決が出ていることなどを考えても、現時点で、現状の規制では不十分とするに足る根拠は全くない。

 かえって、著作権法において、私的領域におけるコピーコントロール回避まで違法とすることで、著作権法全体に関するモラルハザードとデジタル技術・情報の公正な利活用を阻む有害無益な萎縮効果が生じているのではないかと考えられる。

 デジタル技術・情報の公正な利活用を阻むものであり、そもそも、私的なDRM回避行為自体によって生じる被害は無く、個々の回避行為を一件ずつ捕捉して民事訴訟の対象とすることは困難だったにもかかわらず、文化庁の片寄った見方から一方的に導入されたものである、私的領域でのコピーコントロール回避規制(著作権法第30条第1項第2号)は撤廃するべきである。コンテンツへのアクセスあるいはコピーをコントロールしている技術を私的な領域で回避しただけでは経済的損失は発生し得ず、また、ネットにアップされることによって生じる被害は公衆送信権によって既にカバーされているものであり、その被害とDRM回避やダウンロードとを混同することは絶対に許されない。それ以前に、私法である著作権法が、私的領域に踏み込むということ自体異常なことと言わざるを得ない。

 また、知財計画2009で今年度にDRM回避規制に関する検討を行うこととされているが、ユーザーの情報アクセスに対するリスクを不必要に高める危険なものとしかなり得ないこれ以上のDRM回避規制の強化は検討されるべきでない。

(4)損害賠償額の算定を容易にするための方策について
 法定損害賠償制度については、平成21年1月の文化庁の「文化審議会著作権分科会報告書」においても、「過去の裁判例における第114条の5等の規定による損害額の認定の状況を踏まえれば、同規定はある程度機能しているものと考えられ、現行法によってもなお対応が困難であるとするまでの実態が認められるには至っていない」とされている整理を変えるべきであるとするに足る状況の変化は無く、法定損害賠償制度などの損害賠償額の算定を容易にするための方策の検討はされるべきでは無い。

 さらに付言すれば、法定損害賠償制度は、アメリカで一般ユーザーに法外な損害賠償を発生させ、その国民のネット利用におけるリスクを不当に高め、ネットにおける文化と産業の発展を阻害することにしかつながっていないものである(http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0906/22/news028.html参照)。日本においてこのような制度は絶対に導入されてはならない。

(5)侵害コンテンツへ誘導するリンクサイトについて
 リンクサイトの問題も著作権の間接侵害や侵害幇助の問題であるが、上の(2)で書いた通り、今現在、著作権の間接侵害や侵害幇助のリスクが途方もなく拡大し、甚大な萎縮効果・有害無益な社会的大混乱が生じかねないという非常に危険な状態にあるのであり、このような問題について、いたずらに今の過大な法的不安定性をさらに拡大するような法改正を行うことなど論外である。政府においては、今現在、著作権の間接侵害・侵害幇助のリスクが途方もなく拡大し、甚大な萎縮効果・有害無益な社会的大混乱が生じかねないという非常に危険な状態にあるということをきちんと認識し、民事的な責任の制限しか規定していないプロバイダー責任制限法に関し、被侵害者との関係において、刑事罰リスクも含めたプロバイダーの明確なセーフハーバーについて検討するべきであり、さらに、プロバイダー責任制限法によるセーフハーバーだけでは不十分であることを考え、間接侵害や著作権侵害幇助罪も含め、著作権侵害とならないセーフハーバーの範囲を著作権法上きちんと確定するべきである。

 上の(2)で書いた通り、このセーフハーバーを確定するためにも間接侵害の明確化はなされるべきであるが、今現在文化庁の文化審議会で検討されているように、著作権法に明文の間接侵害一般規定を設けることは絶対にしてはならないことであり、このセーフハーバーの要件において、標準的な仕組み・技術や違法性の有無の判断を押しつけるような、権利侵害とは無関係の行政機関なり天下り先となるだろう第3者機関なりの関与を必要とすることも、検閲の禁止・表現の自由等の国民の権利の不当な侵害に必ずなるものであり、税金のムダな浪費と技術の発展の阻害につながるだけの危険かつ有害無益な規制強化として絶対に行ってはならないことである。プロバイダー責任制限法の検討においても、通信の秘密やプライバシー、表現の自由等の国民の基本的な権利をきちんと尊重する形で検討が進められなくてはならないことは無論のことである。

(6)効果的な啓発活動について
 ネットにおける各種問題は情報モラル・リテラシー教育によって解決されるべきものという基本に立ち帰り、有害かつ危険な規制強化の検討では無く、教育・啓発活動などのより現実的かつ地道な施策のみに注力する検討が進むことを期待するが、違法コピー対策問題における権利者団体の主張は、常に一方的かつ身勝手であり、ネットにおける文化と産業の発展を阻害するばかりか、インターネットの単純なアクセスすら危険なものとする非常識なものばかりである。

 違法コピー対策問題における権利者団体の主張はほぼ常に非常識かつ危険なものであると啓発・周知する必要性があることを考え、著作権に関する教育・啓発活動には、通信の秘密やプライバシー、表現の自由等の情報に関する国民の基本的な権利についての情報も含め、著作権の保護強化も行き過ぎればまた非人道的なものとなるということに関して啓発・周知を図るべきである。

(7)その他
(海賊版模倣品対策条約について)
 模倣品・海賊版拡散防止条約についての詳細は不明であるが、税関において個人のPCや携帯デバイスの内容をチェック可能とすることや、インターネットで著作権検閲を行う機関を創設すること、行政機関の命令あるいは消費者との契約に基づき一方的にネット切断という個人に極めて大きな影響を与える罰を加えることを可能とする、ストライクポリシーと呼ばれる対策を取ることを事実上プロバイダーに義務づけることといった、個人の基本的な権利をないがしろにする条項が検討される恐れがある。他の国が、このような危険な条項をこの条約に入れるよう求めて来たときには、そのような非人道的な条項は除くべきであると、かえって、プライバシーや情報アクセスの権利といった国際的・一般的に認められている個人の基本的な権利を守るという条項こそ条約に盛り込むべきであると日本から各国に積極的に働きかけるべきである。

 さらに言えば、プライバシーや情報アクセスの権利、推定無罪の原理、弁護を受ける権利といった国際的・一般的に認められている個人の基本的な権利の保障をきちんと確保し、ストライクポリシーのような非人道的な取り組みが世界的に推進されることを止めるため、この条約に「対審を必要とする通常の手続きによる司法当局の事前の判決なくしてエンドユーザーの基本的な権利及び自由に対してはいかなる制限も課され得ない」という条文を入れるべきであると、日本から各国に積極的に働きかけるべきである。

 また、プロバイダーの責任やDRM回避規制についても、この条約で検討される恐れがあるが、上の(2)、(3)、(5)で書いた通り、日本において、いたずらに今の著作権の間接侵害や侵害幇助のリスクから生じている過大な法的不安定性をさらに拡大するような法改正を行うことなど論外であること、このプロバイダーの責任に関するセーフハーバーの要件においてストライクポリシーなどを押しつけるようなことは、検閲の禁止・表現の自由等の国民の権利の不当な侵害に必ずなるものであること、ユーザーの情報アクセスに対するリスクを不必要に高める危険なものとしかなり得ないこれ以上のDRM回避規制の強化はなされるべきでないことを考え、危険な規制強化につながる恐れが極めて強いプロバイダーの責任やDRM回避規制に関する規定は除くべきであると、日本から各国に強く働きかけるべきである。

 国民の情報アクセスに極めて危険な影響を及ぼしかねない条項の検討が行われている恐れが強い、この模倣品・海賊版拡散防止条約について、政府は、現状のような国民をバカにした概要だけで無く、その具体的な検討の詳細をきちんと公表するべきである。

(ダウンロード違法化について)
 文化庁の暴走と国会議員の無知によって、今年の6月12日に、「著作権を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものを含む。)を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を、その事実を知りながら行う場合」は私的複製に当たらないとする、いわゆるダウンロード違法化条項を含む、改正著作権法が成立し、来年の1月1日の施行を待つ状態である。

 しかし、一人しか行為に絡まないダウンロードにおいて、「事実を知りながら」なる要件は、エスパーでもない限り証明も反証もできない無意味かつ危険な要件であり、技術的・外形的に違法性の区別がつかない以上、このようなダウンロード違法化は法規範としての力すら持ち得ない。このような法改正によって進むのはダウンロード以外も含め著作権法全体に対するモラルハザードのみであり、これを逆にねじ曲げてエンフォースしようとすれば、著作権検閲という日本国として最低最悪の手段に突き進む恐れしかない。改正法は未施行であるが、既に、総務省の「利用者視点を踏まえたICTサービスに係る諸問題に関する研究会」第一次提言案において、中国政府の検閲ソフト「グリーン・ダム」導入計画に等しい、日本レコード協会による携帯電話における著作権検閲の提案が取り上げられるなど、既に弊害は出始めている。

 そもそも、ダウンロード違法化の懸念として、このような著作権検閲に対する懸念は、文化庁へのパブコメ(文化庁HPhttp://www.bunka.go.jp/chosakuken/singikai/houkoku.htmlの意見募集の結果参照。ダウンロード違法化問題において、この8千件以上のパブコメの7割方で示された国民の反対・懸念は完全に無視された。このような非道極まる民意無視は到底許されるものではない)や知財本部へのパブコメ(知財本部のHPhttp://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/keikaku2009.htmlの個人からの意見参照)を見ても分かる通り、法改正前から指摘されていたところであり、このような著作権検閲にしか流れようの無いダウンロード違法化は始めからなされるべきではなかったものである。文化庁の暴走と国会議員の無知によって成立したものであり、ネット利用における個人の安心と安全を完全にないがしろにするものである、百害あって一利ないダウンロード違法化を規定する著作権法第30条第1項第3号を即刻削除するべきである。

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2009年6月26日 (金)

第180回:知財計画2009の文章の確認

 この6月24日に、2009年度版の知財計画(pdf)概要(pdf)主な取組例(pdf)意見募集結果概要(pdf)個人からの意見(pdf)団体からの意見(pdf)、知財本部のHP、6月24日の本部会合の議事次第も参照)が決定された。相変わらず何の意味があるのか良く分からない項目が沢山並んでいるが、政府内の感触を掴む重要な資料には違いないので、パブコメ(第158回参照)で指摘した箇所が、今年の計画でどう変わったかをまとめて書いておきたいと思う。(何を検討するのかいまいち良く分からないが、本部会合の資料(pdf)によると、去年の知財規制緩和調査会の替わりに、今年8月から「コンテンツ等ソフトパワーの強化に関する専門調査会」という名前の検討会を作るらしい。)

 今年の計画は、何故か書き方が変わっているため読みにくいが、今までの計画に比べると、かなりの項目が落とされている。一番非道極まるダウンロード違法化についても、法案が通ってしまったため、項目としては消えた。この点については、結局知財本部もパブコメの無視を決め込み、所詮同じ穴のムジナであることを露呈している。(なお、去年の知財計画の内容については、第103回参照。)

 それでも気になるところを見て行くと、まず、インターネットと著作権に関する問題については、第59ページ以下の「(7)デジタル・ネット時代に対応した知財制度等を整備する」に、

①権利制限の一般規定(日本版フェアユース規定)を導入する(再掲)
 著作権法における権利者の利益を不当に害しない一定の範囲内で公正な利用を包括的に許容し得る権利制限の一般規定(日本版フェアユース規定)の導入に向け、ベルヌ条約等の規定を踏まえ、規定振り等について検討を行い、2009年度中に結論を得て、早急に措置を講ずる。
(文部科学省)

②著作権法上のいわゆる「間接侵害」を明確化する
 著作権法上のいわゆる「間接侵害」に関し、行為主体の考え方を始め差止請求の範囲を明確にすること等について早急に検討を行い、2009年度中に一定の結論を得る。
(文部科学省)

③利用と保護のバランスに留意しつつ適正な国内制度を整備する
ⅰ)著作物の保護期間の延長や戦時加算の取扱いなど保護期間の在り方について、保護と利用のバランスに留意した検討を行い、2009年度中に一定の結論を得る。
(文部科学省)
(中略)

④契約ルール等の確立により、デジタルコンテンツの流通を促進する
(中略)
ⅳ)放送コンテンツ等のデジタルコンテンツの権利処理の進捗状況等を踏まえ、流通促進について多角的観点から適宜法的対応の検討を行う。
(内閣官房、総務省、文部科学省)

⑤クリエーターへの対価の還元を適切に行うための環境を整備する
 情報のデジタル化によって劣化のない高品質な複製が可能となる中、ユーザーの利便性に配慮しつつ、クリエーターへの対価の還元が適切に行われるための環境について制度面・契約面の両方の観点から検討を行い、2009年度中に一定の結論を得る。
(総務省、文部科学省、経済産業省)

⑥インターネット上でのユーザーの自由な創作・発表を促進する
 ユーザーの自由な創作・発表を促進するための自主的な取組を支援するとともに、複数の者が創作に寄与するコンテンツの権利の取扱い等について検討を行い2009年度中に一定の結論を得る。
(総務省、文部科学省)

といった項目が書かれている。(なお、重点施策に入っていたり、複数の分類にまたがるものとして繰り返して書かれている項目も間々あり、計画自体が非常に読みにくいものとなっている。後ろの方の施策一覧の方から項目の重複を排除して引用して行くつもりだが、例えば、フェアユースについてなど、第3ページ、第22ページ、第42ページ、第59と繰り返し同じ記載が出てくる。いつものことだが、役所の報告書は、嫌がらせかと思うほど分かりにくく、読みにくい。)

 フェアユースについては、導入するというかなり強い記載のまま残った。2009年度中に結論を得るとされているが、フェアユースの導入は本当に法改正が成立されるまで全く油断はできないだろう。保護期間延長の検討についても2009年度中と先延ばしの記載になっており、文化庁としては相変わらずあくどく先延ばしを狙っていると読める。著作権の間接侵害についての検討の記載も引き延ばしの形で残されている。

 ダビング10+ブルーレイ課金という妥協がまやかしにせよ成立した所為か、今年の知財計画からは、私的録音録画補償金問題とコピーワンス・ダビング10問題に関する記載は消えた。私的複製問題の本質が理解されたのかどうか良く分からないのは残念だが、このような著作権の本質に関わる大問題は当分はどうにもならないと判断されたのだろうか。ただし、知財計画で書かれていないからと言って、文化庁での補償金問題の検討・総務省での地デジ問題の検討が止まるものでも無く、上の項目でも対価の還元に関する制度面の検討の話が出ていることには注意が必要である。引き続き、文化庁や総務省の動向には目を光らせておかなくてはならないだろう。

 コンテンツの流通促進法制の記載も残っている。かなり押さえ気味の記載になっているところを見ると、コンテンツ流通はビジネスマターであって政策マターではないことが政府の政策担当者にも多少は分かって来たのかも知れないが、記載が残ったところを見ても、本当に理解されているとは思えない。今年も、コンテンツ流通というキーワードによる政策検討の迷走は続くのだろう。

 また、新しく、ユーザーの自由な創作・発表を促進するための自主的な取組を支援するという視点のもとに、複数の者が創作に寄与するコンテンツの権利の取扱い等について検討をするという記載が入ったことも注目しておいて損は無いのではないかと思う。権利者が複数いる場合の権利処理の問題は非常に厄介だが、インターネット上における創作の問題を考えたとき、その整理はかなり重要である。

 次に、インターネット上の海賊版対策については、第61ページ以下の「(8)インターネット上の著作権侵害コンテンツ対策を強化する」に、

①著作権侵害コンテンツを排除するための取組を強化する(再掲)
ⅰ)被害実態等を踏まえ、コンテンツの技術的な制限手段の回避に対する規制の在り方やプロバイダの責任の在り方等法的保護の在り方、権利者が民事的措置をより迅速かつ容易にとることができるようにするための方策等、ネット上の違法コンテンツ対策の在り方について検討を行い、2009年度中に結論を得る。
(内閣官房、総務省、文部科学省、経済産業省)
(中略)

ⅲ)Winny等のファイル共有ソフトを用いて著作権を侵害してファイル等を送信していた者に対し、警告メールを送付するなど電気通信事業者と権利者団体が連携した侵害行為を排除する仕組みづくりを支援する。
(警察庁、総務省、文部科学省)
(後略)

といった項目が書かれている。何を検討するつもりか分からないが、今年度にはやはりDRM回避規制の検討がされるようである。技術的な保護手段では無く、技術的な制限手段と書かれているところを見ると、不正競争防止法の改正を検討するのだろうか。プロバイダー責任制限法についてもやはり検討されるようである。具体的に検討される内容は良く分からないが、この項目に権利者のことしか書きこまれていないことを見ても、パブコメで指摘したような、事業者のセーフハーバーの重要性や技術による著作権検閲の危険性があまり理解されていないようなのは残念である。また、ネット切断までは踏み込んでいないが、相変わらず警察庁も、警告による変形ストライクポリシーの導入を狙っていると見える。とにかく、この手の規制に関する検討は放っておくと必ず危険な規制強化に流れるので、引き続き経産省・総務省・警察庁などの各規制官庁の動きには注意しておかないといけないだろう。

 模倣品・海賊版対策条約についても、第44ページに、

①模倣品・海賊版拡散防止条約(仮称)の早期妥結を目指す
 関係国による正式な交渉が開始された模倣品・海賊版拡散防止条約(仮称)について、交渉の2010年中の妥結を目指し、より一層国際的な関心を高めるとともに、関係国・地域との協議において、方針や見解を迅速かつ明確に示し議論をリードし、関係省庁が一体となって取組を加速する。
(警察庁、総務省、法務省、外務省、財務省、文部科学省、農林水産省、経済産業省)

と書かれている。具体的な内容についての記載の無いまま、2010年という条約の妥結目標が付け加えられた。プライバシーや情報アクセスの権利を尊重するという記載が入らなかったのは残念であり、すぐに妥結されるものとは到底思えないが、この模倣品・海賊版対策条約については、税関において個人のPCや携帯デバイスの内容をチェック可能とすることや、インターネットで著作権検閲を行う機関を創設することといった、個人の基本的な権利をないがしろにする危険な条項の検討がされる恐れもあり、引き続き注意しておくに越したことはない

 情報通信法、通信・放送融合法制については、第51ページで、

③新しいメディアを活用した新規サービスの創出を促進する
ⅰ)通信・放送を融合・連携させた新しいサービスの創出を促進し得る法制度の在り方について検討を行い、2010年を目途に結論を得る。
(総務省)

と書かれている。この項目で、表現の自由や通信の秘密の尊重と言ったことが書き込まれなかったのは残念だが、無事、著作隣接権に関する記載は削除された。(総務省はここを足がかりに広汎なネット規制を作るということをあきらめたようだが(internet watchの記事参照)、完全に安心はできないので、総務省へのパブコメはまた出すつもりである。)

 音の商標についても、第29ページで、

⑦動き、音等の新商標の導入を検討する
 商標制度の国際的な制度調和の観点から、産業界のニーズも踏まえて、現行商標法で保護の対象とされていない動き、音等を保護対象とすることについて検討を行い、2009年度中に結論を得る。
(経済産業省)

とされており、引き続き注意しておいた方が良いだろう。

 その他、去年までの知財計画に散見された一般的なネット・情報・表現規制に関する項目は、知財とは関係ないということがさすがに分かったのか、今年の知財計画からは完全に消えた。そのため、全体的に見れば、去年と比べてかなりマシな計画になっているが、比較の問題に過ぎず、今までが酷すぎただけの話だろう。他の地道な取り組みに関する項目を一々取り上げることはしないが、地道な話は、無意味な寄せ集めの検討項目事典をわざわざ作らずとも、各省庁毎にきちんと進めてもらえれば良いだけの話である。かなりマシになったとは言え、この計画を通して読んでも、やはり知財本部の役割はもはや終わっているという印象しか受けないが、残念ながら存続する限り、知財本部の検討について今後も私は追いかけて行くつもりである。

 少しだけ、著作権関係のニュースも一緒に紹介しておくが、まず、スペインでは、著作権団体が「違法ダウンロードユーザーを犯罪者とすることは望まない」とストライクポリシーに関するロビー活動をあきらめたようであり(digitalmediawireの記事参照)、P2Pによる違法ファイル共有自体の問題は残るだろうが、スペインにおけるストライクポリシーの採用はほぼ消えたと思って良いだろう。

 また、韓国では、刑事告訴されていた若者の著作権違反ユーザーを1万人以上、不起訴処分にしたようである(朝鮮日報の記事参照)。韓国ではダウンロードの明確な違法化をしていないので、違法P2Pファイル共有ユーザーをダウンロードユーザーとしているのだと思うが、すぐ隣の韓国でも著作権規制の強化は、普通の若者を犯罪者とし、そこから示談金を得ようとする意図的な告訴の濫発を招き、社会的混乱を招くだけの結果に終わっている。

 最後に書いておくが、今日、児童ポルノ規制法改正法案の審議が、衆議院法務委員会(国会中継)で始まる。社民党の保坂議員がそのブログ記事でいみじくも述べているように、表現・情報規制問題において、日本の明日を占う上で、今日はとても重要な1日となるだろう。日本の未来のために、与党案も民主党案も可決されることがないことを心の底から祈っている。

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2009年3月 9日 (月)

第158回:知財本部・知財計画2008の見直しに関する提出パブコメ

 内容は、ほぼ今まで出してきたパブコメのまとめだが、前回少し取り上げた、知財計画2008の見直しに関するパブコメも書いて提出したので、ここに載せておく。

(表現規制に関することから、このブログをご覧になっている方へ:このブログは行きがかり上、表現規制一般の問題も取り扱っているが、知財規制と表現規制は似て非なるものである。私自身は知財政策に関する各項目に関して書きたいこともあり、各規制官庁がいろいろと表現規制一般の問題について書き込もうとしてくる可能性も高いため、合わせてこのパブコメに表現規制の話を書いているが、児童ポルノ法などの表現規制一般の話は本来は知財本部の管轄外と思われることにはご注意頂きたい。去年のメモにも同趣旨のことを書いたが、念のため。)

(3月10日夕方の追記:残念ながら、ダウンロード違法化を含む著作権法の改正案が閣議決定されたとのことである(47newsの記事マイコミジャーナルの記事参照)。出来レースにもほどがあるが、これで、ダウンロード違法化問題の審議は国会の場へと完全に移る。党や国会議員に手紙を出す等、個人でできることは限られるが、今後も私はできる限りのことをして行くつもりである。(jabo様、コメントありがとうございます。))

(以下、提出パブコメ)

(概要)
 有害無益なものとしかなりようの無いインターネットにおける今以上の知財保護強化、特に、ダウンロード違法化、著作権の保護期間延長、今の補償金の矛盾を拡大するだけの私的録音録画補償金の対象拡大に反対する。今後、真の国民視点に立った知財の規制緩和の検討が進むことを期待する。

(本文)
 最終的に国益になるであろうことを考え、各業界の利権や省益を超えて必要となる政策判断をすることこそ知財本部とその事務局が本当になすべきことのはずであるが、知財計画2008を見ても、このような本当に政策的な決定は全くと言って良いほど見られない。知財保護が行きすぎて消費者やユーザーの行動を萎縮させるほどになれば、確実に文化も産業も萎縮するので、知財保護強化が必ず国益につながる訳ではないということを、著作権問題の本質は、ネットにおける既存コンテンツの正規流通が進まないことにあるのではなく、インターネットの登場によって新たに出てきた著作物の公正利用の類型に、今の著作権法が全く対応できておらず、著作物の公正利用まで萎縮させ、文化と産業の発展を阻害していることにあるのだということを知財本部とその事務局には、まずはっきりと認識してもらいたい。特に、最近の知財・情報に関する規制強化の動きは全て間違っていると私は断言する。

 今まで通り、規制強化による天下り利権の強化のことしか念頭にない文化庁、総務省、警察庁などの各利権官庁に踊らされるまま、国としての知財政策の決定を怠り、知財政策の迷走の原因を増やすことしかできないようであれば、今年の知財計画を作るまでもなく、知財本部とその事務局には、自ら解散することを検討してもらいたい。そうでなければ、是非、各利権官庁に轡をはめ、その手綱を取って、知財の規制緩和のイニシアティブを取ってもらいたい。

 知財本部において今年度、インターネットにおけるこれ以上の知財保護強化はほぼ必ず有害無益かつ危険なものとなるということをきちんと認識し、真の国民視点に立った知財の規制緩和の検討が知財本部でなされることを期待し、本当に決定され、実現されるのであれば、全国民を裨益するであろうこととして、私は以下のことを提案する。

(1)「知的財産推進計画2008」について
a)ダウンロード違法化問題について

 知的財産推進計画2008の第90ページに書かれている、ダウンロード違法化問題について、今年度の文化庁の文化審議会著作権分科会において、情を知ってダウンロードする行為を違法化するとの方針が示されたが、一人しか行為に絡まないダウンロードにおいて、「情を知って」なる要件は、エスパーでもない限り証明も反証もできない無意味かつ危険な要件であり、技術的・外形的に違法性の区別がつかない以上、このようなダウンロード違法化は法規範としての力すら持ち得ないものである。このような法改正を押し通せば、結局、ダウンロード以外も含め著作権法全体に対するモラルハザードがさらに進行するだけであり、これを逆にねじ曲げてエンフォースしようとすれば、著作権検閲という日本国として最低最悪の手段に突き進む恐れしかない。どう転ぼうが、ダウンロード違法化は百害あって一利ない最低の法改正である。プログラムも含め、あらゆる著作物のダウンロード違法化に、私は今なお完全に反対する。

 違法ダウンロードによる権利者の経済的不利益が大きいとする根拠も薄弱であり、去年から状況にほとんど変化はなく、ダウンロード違法化の合理的な根拠は今なおほとんど全くと言って良いほど何もないにもかかわらず、去年の私的録音録画小委員会中間整理に対して集まった8千件以上のパブコメの7割方で示された国民の反対・懸念を完全に無視し、文化庁は、その文化審議会において、ダウンロード違法化の方針を含む報告書を最後まで押し通した。このような非道極まる民意無視は到底許されるものではなく、知財計画2009において、文化庁の方針を白紙に戻し、ダウンロード違法化を絶対にしないと必ず明記してもらいたい。

b)私的録音録画補償金問題について
 私的録音録画補償金問題については、第91ページに記載されているが、権利者団体等が単なる既得権益の拡大を狙ってiPod等へ対象範囲を拡大を主張している私的録音録画補償金問題についても、補償金のそもそもの意味を問い直すことなく、今の補償金の矛盾を拡大するだけの私的録音録画補償金の対象拡大を絶対にしないということを、知財計画2009では明記してもらいたい。

 ブルーレイ課金についても、権利者団体は、ダビング10への移行によってコピーが増え自分たちに被害が出ると大騒ぎをしたが、移行後半年以上経った今現在においても、ダビング10の実施による被害増を証明するに足る具体的な証拠は全く示されておらず、現時点でブルーレイ課金に合理性があるとは私には全く思えない。わずかに緩和されたとは言え、今なお地上デジタル放送にはダビング10という不当に厳しいコピー制限がかかったままである。こうした実質的に全国民に転嫁されるコストで不当に厳しい制限を課している機器と媒体にさらに補償金を賦課しようとするのは、不当の上塗りである。私的録音録画小委員会で補償金のそもそもの意義が問われた中で、その解決をおざなりにしたまま、ブルーレイ課金のような合理的根拠に乏しい対象拡大がなされるべきではない。

 また、私的録音録画補償金問題に関する今後の検討について書くのであれば、最近の著作権分科会報告書で今後文化庁が設けるとされた、権利者、メーカー、消費者などの関係者が忌憚のない意見交換ができる場について、これを公開にするとともに、より公平を期して、消費者・ユーザー代表を3分の1、メーカー代表を3分の1、権利者代表を3分の1とすることを知財計画2009で明記してもらいたい。権利者が不利という声があがるのかも知れないが、この程度の数の有識者を納得されられなくて、国民の理解が得られると思うことなど片腹痛い。真に国民の理解が得られない法改正・対象範囲の拡大などされるべきではない。

c)保護期間延長問題について
 保護期間延長問題についても、第91ページに記載されているが、権利者団体と文化庁を除けば、延長を否定する結論が出そろっているこの問題について、文化庁が継続検討の結論を出したこと自体極めて残念なことである。これほど長期間にわたる著作権の保護期間をこれ以上延ばすことを是とするに足る理由は何一つなく、知財計画2009では、著作権・著作隣接権の保護期間延長の検討はこれ以上しないとしてもらいたい。特に、流通事業者に過ぎないレコード製作者と放送事業者の著作隣接権については、保護期間を短縮することが検討されても良いくらいである。

d)コピーワンス問題について
 コピーワンス問題についても、第91~92ページに記載されているが、私はコピーワンスにもダビング10にも反対する。そもそも、この問題は、放送局・権利者にとっては、視聴者の利便性を著しく下げることによって、一旦は広告つきながらも無料で放送したコンテンツの市場価格を不当につり上げるものとして機能し、国内の大手メーカーとっては、B-CASカードの貸与と複雑な暗号システムを全てのテレビ・録画機器に必要とすることによって、中小・海外メーカーに対する参入障壁として機能するB-CASシステムの問題を淵源とするのであって、このB-CASシステムと独禁法の関係を検討するということを知財計画2009では明記してもらいたい。検討の上B-CASシステムが独禁法違反とされるなら、速やかにその排除をして頂きたい。また、無料の地上放送において、逆にコピーワンスやダビング10のような視聴者の利便性を著しく下げる厳格なコピー制御が維持されるのであれば、私的録画補償金に存在理由はなく、これを速やかに廃止するということもここに明記してもらいたい。

e)公正利用の各種類型に対する権利制限について
 また、第85~86、95ページに書かれている、検索エンジンのための利用、通信過程等における一時的蓄積、研究開発のための利用、リバースエンジニアリングのための利用、図書館におけるアーカイブ化のための利用など、権利者の利益を害さず、著作物の通常の利用も妨げないような著作物の公正利用の各種類型についてはきちんとした権利制限による対応が必要である。これらの公正利用を萎縮させて良いことなど全くなく、これらの類型について著作権法上の権利制限を速やかに設けると、知財計画2009には明記してもらいたい。

f)海賊版対策について
 第50ページに書かれている、「模倣品・海賊版拡散防止条約(仮称)」について、そのような条項がよもや真面目に検討されることはないと思うが、もしどこかの国が、税関において個人のPCや携帯デバイスの内容をチェック可能とすることや、インターネットで著作権検閲を行う機関を創設することといった、個人の基本的な権利をないがしろにする条項をこの条約に入れるよう求めて来たときには、そのような非人道的な条項は除くべきであると、かえって、プライバシーや情報アクセスの権利といった国際的・一般的に認められている個人の基本的な権利を守るという条項こそ条約に盛り込むべきであると日本から各国に積極的に働きかけるとすることを、明記してもらいたい。

g)違法ファイル交換対策について、
 第58ページに書かれている、違法ファイル共有対策について、通信の秘密やプライバシー、情報アクセス権等の国民の基本的な権利をきちんと尊重しつつ対策を進めることを明記してもらいたい。

h)通信・放送の法体系の見直しについて
 第85ページに書かれている、放送と通信の法体系の総合的な検討について、著作隣接権に関する記載を削除するか、著作隣接権は拡大しないということを明記してもらいたい。インターネットという流通コストの極めて低い流通手段において、著作隣接権を発生させることは、絶対にやってはならない最低の愚策である。また、この部分において、HP等に関しても通信の秘密を確保し、表現に関する規制は行わないという方針を明記してもらいたい。

i)ネット規制について
 また、第92ページには、フィルタリングに関する記載があるが、その政策決定の迷走により、総務省は携帯電話サイト事業者に無意味かつ多大なダメージを与えている。この問題については、知財計画2009に書くに当たって、フィルタリングの存在を知り、かつ、フィルタリングの導入が必要だと思っていて、なお未成年にフィルタリングをかけられないとする親に対して、その理由を聞くか、あるいはフィルタリングをかけている親に対して、そのフィルタリングの問題を聞くかして、きちんと本当の問題点を示してから検討するという記載にしてもらいたい。

 なお、フィルタリングで無意味に利権を作ろうとしている総務省と携帯電話事業者他の今の検討については、完全に白紙に戻されるべきである。携帯フィルタリングについて、ブラックリスト方式ならば、まずブラックリストに載せる基準の明確化から行うべきなので、不当なブラックリスト指定については、携帯電話事業者がそれぞれの基準に照らし合わせて無料で解除する簡便な手続きを備えていればそれで良く、健全サイト認定第3者機関など必要ないはずである。ブラックリスト指定を不当に乱発し、認定機関で不当に審査料をせしめ取り、さらにこの不当にせしめた審査料と、正当な理由もなく流し込まれる税金で天下り役人を飼うのだとしたら、これは官民談合による大不正行為以外の何物でもない。このようなブラックリスト商法の正当化は許されない。

 そもそも、青少年ネット規制法は、あらゆる者から反対されながら、有害無益なプライドと利権を優先する一部の議員と官庁の思惑のみで成立したものであり、速やかに廃止が検討されるべきものである。また、出会い系サイト規制法の改正は、警察庁が、どんなコミュニケーションサイトでも人は出会えるという誰にでも分かることを無視し、届け出制の対象としては事実上定義不能の「出会い系サイト事業」を定義可能と偽り、改正法案の閣議決定を行い、法案を国会に提出したものであり、他の重要法案と審議が重なる中、国会においてもその本質的な問題が見過ごされて可決され、成立したものである。憲法上の罪刑法定主義や検閲の禁止にそもそも違反している、今回の出会い系サイト規制法の改正についても、今後、速やかに元に戻すことが検討されるべきである。

j)新しいタイプの商標について
 第37ページに書かれている、新しいタイプの商標の保護について、特許庁の新しいタイプの商標に関する検討ワーキンググループ報告書案で、音も含め、導入する方針が示されているが、音の商標は、他の視覚的な商標とは異なる特色を有しているということが考慮されるべきであり、音に、会社名を連呼するような音だけでは無く単なる旋律も含まれ得、音の商標の使用に、単なるBGMとしての使用も含まれ得ることから、音については特に慎重に検討するべきである。登録除外については公益的な音だけでは不十分であり、余計な混乱を避けるため、音について、少なくとも、他人の著名な旋律・楽曲を登録から除外することを検討すると、パブリックドメインに落ちた著名な旋律・楽曲の登録のような不当な利得を得るための登録が排除されない限り、音について、その保護類型への追加は決してしないと、知財計画2009では明記してもらいたい。

(2)「デジタル・ネット時代における知財制度の在り方について」について
 デジタル・ネット時代における知財制度専門調査会の報告書「デジタル・ネット時代における知財制度の在り方について」の内容は、知財計画2009に盛り込まれて行くものと思うが、この内容について以下のことを求める。

a)一般フェアユース条項の導入について
 この報告書に書かれている、一般フェアユース条項の導入について、ユーザーに対する意義からも、可能な限り早期に導入することを求める。特に、インターネットのように、ほぼ全国民が利用者兼権利者となり得、考えられる利用形態が発散し、個別の規定では公正利用の類型を拾い切れなくなるところでは、フェアユースのような一般規定は保護と利用のバランスを取る上で重要な意義を持つものである。知財計画2009においては、このようなユーザーに対する意義も合わせて書き込んでもらいたい。一般フェアユース条項を導入している国には、アメリカの他に台湾やイスラエルもあり、これらの国の条文等も参考になると考えられる。フェアユースの導入によって、私的複製の範囲が縮小されることはあってはならないことである。

 なお、権利を侵害するかしないかは刑事罰がかかるかかからないかの問題でもあり、公正という概念で刑事罰の問題を解決できるのかとする意見もあるようだが、かえって、このような現状の過剰な刑事罰リスクからも、フェアユースは必要なものと私は考える。現在親告罪であることが多少セーフハーバーになっているとはいえ、アニメ画像一枚の利用で別件逮捕されたり、セーフハーバーなしの著作権侵害幇助罪でサーバー管理者が逮捕されたりすることは、著作権法の主旨から考えて本来あってはならないことである。政府にあっては、著作権法の本来の主旨を超えた過剰リスクによって、本来公正として認められるべき事業・利用まで萎縮しているという事態を本当に深刻に受け止め、一刻も早い改善を図ってもらいたい。

b)DRM回避規制について
 昨年7月にゲームメーカーがいわゆる「マジコン」の販売業者を不正競争防止法に基づき提訴し、さらにこの2月にゲームメーカー勝訴の判決が出ていることなどを考えても、現時点で、現状の規制では不十分とするに足る根拠は全くない。現状でも、不正競争法と著作権法でDRM回避機器等の提供等が規制され、著作権法でコピーコントロールを回避して行う私的複製まで違法とされ、十二分以上に規制がかかっているのであり、これ以上の規制強化は、ユーザーの情報アクセスに対するリスクを不必要に高める危険なものとしかなり得ない。

 知財計画2009では、ユーザーの情報アクセスに対するリスクを不必要に高める危険なものとしかなり得ないこれ以上のDRM回避規制の強化は検討しないとされるべきである。DRM回避規制に関しては、このような有害無益な規制強化の検討ではなく、まず、私的なDRM回避行為自体によって生じる被害は無く、個々の回避行為を一件ずつ捕捉して民事訴訟の対象とすることは困難だったにもかかわらず、文化庁の片寄った見方から一方的に導入されたものである、私的な領域でのコピーコントロール回避規制(著作権法第30条第1項第2号)の撤廃の検討を行うべきである。コンテンツへのアクセスあるいはコピーをコントロールしている技術を私的な領域で回避しただけでは経済的損失は発生し得ず、また、ネットにアップされることによって生じる被害は公衆送信権によって既にカバーされているものであり、その被害とDRM回避やダウンロードとを混同することは絶対に許されない。

c)インターネット・サービス・プロバイダ(ISP)の責任について
 動画投稿サイト事業者がJASRACに訴えられた「ブレイクTV」事件や、レンタルサーバー事業者が著作権幇助罪で逮捕され、検察によって姑息にも略式裁判で50万円の罰金を課された「第(3)世界」事件等を考えても、今現在、間接侵害や著作権侵害幇助のリスクが途方もなく拡大し、甚大な萎縮効果・有害無益な社会的大混乱が生じかねないという非常に危険な状態にあり、間接侵害事件や著作権侵害幇助事件においてネット事業者がほぼ直接権利侵害者とみなされてしまうのでは、プロバイダー責任制限法によるセーフハーバーだけでは不十分であり、間接侵害や著作権侵害幇助罪も含め、著作権侵害とならない範囲を著作権法上きちんと確定することは喫緊の課題である。ただし、このセーフハーバーの要件において、標準的な仕組み・技術や違法性の有無の判断を押しつけるような、権利侵害とは無関係の行政機関なり天下り先となるだろう第3者機関なりの関与を必要とすることは、検閲の禁止・表現の自由等の国民の権利の不当な侵害に必ずなるものであり、絶対にあってはならないことである。

 ISPの責任の在り方の検討について、知財計画2009に書き込む際には、プロバイダに対する標準的な著作権侵害技術導入の義務付け等を行わないことを合わせ明記するとともに、間接侵害や刑事罰・著作権侵害幇助も含め著作権法へのセーフハーバー規定の速やかな導入を検討するとしてもらいたい。この点に関しては、逆に、検閲の禁止や表現の自由の観点から技術による著作権検閲の危険性の検討を始めてもらいたい。

d)著作権法におけるいわゆる「間接侵害」への対応について
 セーフハーバーを確定するためにも間接侵害の明確化はなされるべきであるが、現行の条文におけるカラオケ法理や各種ネット録画機事件などで示されたことの全体的な整理以上のことをしてはならない。特に、著作権法に明文の間接侵害一般規定を設けることは絶対にしてはならないことである。確かに今は直接侵害規定からの滲み出しで間接侵害を取り扱っているので不明確なところがあるのは確かだが、現状の整理を超えて、明文の間接侵害一般規定を作った途端、権利者団体や放送局がまず間違いなく山の様に脅しや訴訟を仕掛けて来、今度はこの間接侵害規定の定義やそこからの滲み出しが問題となり、無意味かつ危険な社会的混乱を来すことは目に見えているからである。

 知財計画2009においては、著作権法の間接侵害の明確化は、ネット事業・利用の著作権法上のセーフハーバーを確定するために必要十分な限りにおいてのみなされると明記してもらいたい。

(3)その他新たに知財計画に盛り込むべきことについて
 ダウンロード違法化問題やプロバイダーにおける違法コピー対策問題における権利者団体の主張、児童ポルノ法規制強化問題・有害サイト規制問題における自称良識派団体の主張は、常に一方的かつ身勝手であり、ネットにおける文化と産業の発展を阻害するばかりか、インターネットの単純なアクセスすら危険なものとする非常識なものばかりである。このような一方的かつ身勝手な規制強化の動きを規制するため、憲法の「表現の自由」に含まれ、国際人権B規約にも含まれている国民の「知る権利」を、あらゆる公開情報に安全に個人的にアクセスする権利として、著作権法・通信法等の関係法規に明文で書き込むことを検討してもらいたい。

 閲覧とダウンロードと所持の区別がつかないインターネットにおいては、例え児童ポルノにせよ、情報の単純所持や取得の規制は有害無益かつ危険なもので、憲法及び条約に規定されている「知る権利」を不当に害するものであり、このような情報の単純所持規制に私は反対する。積極的あるいは意図的に画像を得た場合であるなどの限定を加えたところで、エスパーでもない限りこのような積極性を証明することも反証することもできないため、このような情報の単純所持や取得の規制の危険性は回避不能であり、罪刑法定主義にも反する。繰り返し取得としても、インターネットで2回以上他人にダウンロードを行わせること等は技術的に極めて容易であり、取得の回数の限定も、何ら危険性を減らすものではない。児童ポルノ規制の推進派は常に、提供による被害と単純所持・取得を混同する狂った論理を主張するが、例えそれが児童ポルノであろうと、情報の単純所持ではいかなる被害も発生し得えない。現行法で、ネット上であるか否かにかかわらず、提供及び提供目的の所持まで規制されているのであり、提供によって生じる被害と所持やダウンロード、取得、収集との混同は許され得ない。そもそも、最も根本的なプライバシーに属する個人的な情報所持・情報アクセスに関する情報を他人が知ることは、通信の秘密や情報アクセスの権利、プライバシーの権利等の基本的な権利からあってはならないことである。架空の表現に関する規制も同時に議論されているが、ごく一部の国内団体等の根拠のない、保護法益すら無視した一方的な主張で、憲法で保障されている表現の自由が規制されることなどあってはならないことである。警察なりの恣意的な認定により、全国民がアクセスできなくなるサイトを発生させるなど、絶対にやってはならないことであり、憲法で禁止されている検閲に該当するブロッキングのような規制も導入されるべきではない。児童ポルノ法に関しては、既に、提供・販売、提供・販売目的での所持が禁止されているのであるから、本当に必要とされることは今の法律の地道なエンフォースであって有害無益な規制強化の検討ではない。児童ポルノ規制法に関して検討すべきことがあるとしたら、現行ですら曖昧な児童ポルノの定義の厳密化のみである。

 児童ポルノ規制の検討においては、児童ポルノの閲覧の犯罪化と創作物の規制まで求める「子どもと青少年の性的搾取に反対する世界会議」の根拠のない狂った宣言を国際動向として一方的に取り上げ、児童ポルノ規制の強化を正当化することなどあってはならない。かえって、児童ポルノの単純所持規制・創作物規制といった非人道的な規制を導入している諸国は即刻このような規制を廃止するべきと、そもそも最も根本的なプライバシーに属し、何ら実害を生み得ない個人的な情報所持・情報アクセスに関する情報を他人が知ること自体、通信の秘密や情報アクセスの権利、プライバシーの権利等の国際的かつ一般的に認められている基本的な権利からあってはならないことであると、日本政府から国際的な場において各国に積極的に働きかけてもらいたい。

 様々なところで検討されている有害サイト規制についても、その規制は表現に対する過度広汎な規制で違憲なものとしか言いようがなく、各種有害サイト規制についても私は反対する。

 情報・表現規制については、アメリカにおいても、この1月に連邦最高裁で児童オンライン保護法が違憲として完全に否定され、この2月に連邦控訴裁でカリフォルニア州のゲーム規制法が違憲として否定されていることも注目されるべきである。政府・与党内の検討においては、このような国際動向もきちんと取り上げるべきであり、一方的な見方で国際動向を決めつけることなどあってはならない。

 また、WIPO等の国際機関にも、政府から派遣されている者はいると思われ、著作権等に関する真の国際動向について細かなことまで即座に国民へ知らされる仕組みの導入を是非検討してもらいたい。

 最後に、知財政策においても、天下り利権が各省庁の政策を歪めていることは間違いなく、知財政策の検討と決定の正常化のため、文化庁から著作権関連団体への、総務省から放送通信関連団体・企業への、警察庁からインターネットホットラインセンター他各種協力団体・自主規制団体への天下りの禁止を知財本部において決定して頂きたい。(これらの省庁は特にひどいので特に名前をあげたが、他の省庁も含めて決定してもらえるなら、それに超したことはない。)

 インターネットにおけるこれ以上の知財保護強化は既に有害無益かつ危険なものであるということをきちんと認識し、真の国民視点に立った知財の規制緩和の検討が知財本部でなされることを期待すると最後に繰り返しておく。

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2008年12月23日 (火)

第144回:知財本部・第3期基本方針策定に関する意見募集に対する提出パブコメ

 内容は今まで提出して来た各種パブコメをまとめただけだが、念のため、第140回で紹介した知財本部の知的財産戦略に関する政策レビュー及び第3期基本方針の策定に関する意見募集(12月25日〆切)に対する提出パブコメも、ここに載せておく。

(以下、提出パブコメ)

(1)全体について
(意見概要)

 基本方針において、文化庁のような利権官庁に轡をはめ、知財の規制緩和のイニシアティブをきちんと取るとし、かえって各利権官庁に踊らされるまま、国としての知財政策の決定を怠り、知財政策の迷走の原因を増やすことしかできないようであれば、知財本部とその事務局は速やかに解散するとするべきである。

(意見全文)
 最終的に国益になるであろうことを考え、各業界の利権や省益を超えて必要となる政策判断をすることこそ知財本部とその事務局が本当になすべきことのはずであるが、今までの知財計画を見ても、このような本当に政策的な決定は全くと言って良いほど見られない。知財保護が行きすぎて消費者やユーザーの行動を萎縮させるほどになれば、確実に文化も産業も萎縮するので、知財保護強化が必ず国益につながる訳ではないということを、著作権問題の本質は、ネットにおける既存コンテンツの正規流通が進まないことにあるのではなく、インターネットの登場によって新たに出てきた著作物の公正利用の類型に、今の著作権法が全く対応できておらず、著作物の公正利用まで萎縮させ、文化と産業の発展を阻害していることにあるのだということを知財本部とその事務局には、まずはっきりと認識してもらいたい。特に、最近の知財・情報に関する規制強化の動きは全て間違っていると私は断言する。

 今まで通り、規制強化による天下り利権の強化のことしか念頭にない文化庁、総務省、警察庁などの各利権官庁に踊らされるまま、国としての知財政策の決定を怠り、知財政策の迷走の原因を増やすことしかできないようであれば、基本方針において、知財本部とその事務局は、自ら解散するとしてもらいたい。そうでなければ、是非、各利権官庁に轡をはめ、その手綱を取って、知財の規制緩和のイニシアティブを取ってもらいたい。

 特に、知財政策においても、天下り利権が各省庁の政策を歪めていることは間違いなく、知財政策の検討と決定の正常化のため、文化庁から著作権関連団体への、総務省から放送通信関連団体・企業への、警察庁からインターネットホットラインセンター他各種協力団体・自主規制団体への天下りの禁止を知財本部において決定してもらいたい。(これらの省庁は特にひどいので特に名前をあげたが、他の省庁も含めて決定してもらえるなら、それに超したことはない。)

 インターネットにおけるこれ以上の知財保護強化はほぼ必ず有害無益かつ危険なものとなるということをきちんと認識し、真の国民視点に立った知財の規制緩和の検討が知財本部でなされることを期待する。

(2)II-2 模倣品・海賊版対策の強化(コンテンツを除く)について
(意見概要)

 模倣品・海賊版拡散防止条約の検討で、プライバシーや情報アクセスの権利といった基本的権利を守るとする条項を盛り込むよう日本から各国に積極的に働きかけてもらいたい。

(意見全文)
 「模倣品・海賊版拡散防止条約(ACTA)(仮称)について、そのような条項がよもや真面目に検討されることはないと思うが、もしどこかの国が、税関において個人のPCや携帯デバイスの内容をチェック可能とすることや、インターネットで著作権検閲を行う機関を創設することといった、個人の基本的な権利をないがしろにする条項をこの条約に入れるよう求めて来たときには、そのような非人道的な条項は除くべきであると、かえって、プライバシーや情報アクセスの権利といった国際的・一般的に認められている個人の基本的な権利を守るという条項こそ条約に盛り込むべきであると日本から各国に積極的に働きかけてもらいたい。

(3)IV-1 コンテンツの創造・流通の促進について
(意見概要)

 一般フェアユース条項について、可能な限り早期に導入することを求める。有害無益なダウンロード違法化及び著作権・著作隣接権の保護期間延長に反対する。基本方針において、一般フェアユース条項の導入を推進すると、また、ダウンロード違法化や保護期間延長などを絶対行わないと明記してもらいたい。

(意見全文)
 一般フェアユース条項について、ユーザーに対する意義からも、可能な限り早期に導入することを求める。特に、インターネットのように、ほぼ全国民が利用者兼権利者となり得、考えられる利用形態が発散し、個別の規定では公正利用の類型を拾い切れなくなるところでは、フェアユースのような一般規定は保護と利用のバランスを取る上で重要な意義を持つものである。なお、フェアユースの導入によって、私的複製の範囲が縮小されることはあってはならないことである。

 権利を侵害するかしないかは刑事罰がかかるかかからないかの問題でもあり、公正という概念で刑事罰の問題を解決できるのかとする意見もあるようだが、かえって、このような現状の過剰な刑事罰リスクからも、フェアユースは必要なものと私は考える。現在親告罪であることが多少セーフハーバーになっているとはいえ、アニメ画像一枚の利用で別件逮捕されたり、セーフハーバーなしの著作権侵害幇助罪でサーバー管理者が逮捕されたりすることは、著作権法の主旨から考えて本来あってはならないことである。政府にあっては、著作権法の本来の主旨を超えた過剰リスクによって、本来公正として認められるべき事業・利用まで萎縮しているという事態を本当に深刻に受け止め、一刻も早い改善を図ってもらいたい。

 また、一人しか行為に絡まないダウンロードにおいて、「情を知って」なる要件は、エスパーでもない限り証明も反証もできない無意味かつ危険な要件であり、技術的・外形的に違法性の区別がつかない以上、ダウンロード違法化は法規範としての力すら持ち得ない。このような法改正を押し通せば、結局、ダウンロード以外も含め著作権法全体に対するモラルハザードがさらに進行するだけであり、これを逆にねじ曲げてエンフォースしようとすれば、著作権検閲という日本国として最低最悪の手段に突き進む恐れしかない。どう転ぼうが、ダウンロード違法化は百害あって一利ない最低の法改正である。プログラムも含め、あらゆる著作物のダウンロード違法化に、私は今なお完全に反対する。

 違法ダウンロードによる権利者の経済的不利益が大きいとする根拠も薄弱であり、去年から状況にほとんど変化はなく、ダウンロード違法化の合理的な根拠は今なおほとんど全くと言って良いほど何もないにもかかわらず、去年の私的録音録画小委員会中間整理に対して集まった8千件以上のパブコメの7割方で示された国民の反対・懸念を完全に無視し、文化庁は、その文化審議会において、ダウンロード違法化の方針を含む報告書を最後まで押し通そうとしている。このような非道極まる民意無視は到底許されるものではなく、知財本部の基本方針において、文化庁の検討を止め、ダウンロード違法化を絶対にしないと必ず明記してもらいたい。

 そして、保護期間延長問題についても、これほど長期間にわたる著作権の保護期間をこれ以上延ばすことを是とするに足る理由は何一つなく、著作権・著作隣接権の保護期間の延長はしないと明記してもらいたい。特に、流通事業者に過ぎないレコード製作者と放送事業者の著作隣接権については、保護期間を短縮することが検討されても良いくらいである。

 基本方針においては、権利者団体等が単なる既得権益の拡大を狙ってiPod等へ対象範囲を拡大を主張している私的録音録画補償金問題についても、補償金のそもそもの意味を問い直すことなく、今の補償金の矛盾を拡大するだけの私的録音録画補償金の対象拡大を絶対にしないということも明記してもらいたい。

 さらに付言しておくと、閲覧とダウンロードと所持の区別がつかないインターネットにおいては、例え児童ポルノにせよ、情報の単純所持等を規制することは有害無益かつ危険なもので、憲法及び条約に規定されている「知る権利」を不当に害するものである。このような情報の単純所持等の規制に私は反対する。一人しか行為に絡まない、個人的な情報アクセスに関する限り、「情を知って」、「性的好奇心を満たす目的で」、「みだりに」などの精神的要件は、エスパーでもない限り、証明も反証もできないものであり、法律上の要件として客観性を全く欠き、恣意的な運用しか生みようがない危険極まりないものである。このような情報の単純所持等の規制の危険性は回避不能であり、罪刑法定主義にも反する。このような一方的かつ身勝手な規制強化の動きを規制するため、憲法の「表現の自由」に含まれ、国際人権B規約にも含まれている国民の「知る権利」を、あらゆる公開情報に安全に個人的にアクセスする権利として、著作権法・通信法等の関係法規に明文で書き込むことを検討してもらいたい。架空の表現に関する規制も同時に議論されているが、ごく一部の国内団体等の根拠のない、保護法益すら無視した一方的な主張で、憲法で保障されている表現の自由が規制されることなどあってはならないことである。

(4)IV-2 コンテンツの海賊版対策について
(意見概要)

 模倣品・海賊版拡散防止条約の検討で、プライバシーや情報アクセスの権利といった基本的権利を守るとする条項を盛り込むよう日本から各国に積極的に働きかけてもらいたい。

(意見全文)
 「模倣品・海賊版拡散防止条約(ACTA)(仮称)について、そのような条項がよもや真面目に検討されることはないと思うが、もしどこかの国が、税関において個人のPCや携帯デバイスの内容をチェック可能とすることや、インターネットで著作権検閲を行う機関を創設することといった、個人の基本的な権利をないがしろにする条項をこの条約に入れるよう求めて来たときには、そのような非人道的な条項は除くべきであると、かえって、プライバシーや情報アクセスの権利といった国際的・一般的に認められている個人の基本的な権利を守るという条項こそ条約に盛り込むべきであると日本から各国に積極的に働きかけてもらいたい。
(II-2 模倣品・海賊版対策の強化(コンテンツを除く)に対しても同じことを書いたが、ここに対しても念のため書いておく。)

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2008年11月14日 (金)

第130回:知財本部・デジタル・ネット時代における知財制度専門調査会の報告案に対する提出パブコメ

 知財本部のデジタル・ネット時代における知財制度専門調査会の報告案に対するパブコメも書いて提出したので、ここに載せておく。

(これで後、個人的に出さなくてはならないと考えているパブコメで残っているのは、第121回で取り上げた青少年ネット規制法施行令に関するパブコメなのだが、11月16日が〆切であるにもかかわらず、そのインターネット提出フォームが何故か今使えない。問い合わせもしようと思っているところだが、既に問い合わせた等で何かご存じの方がいたら教えて頂けないだろうか。)

(以下、提出パブコメ)

(1)「Ⅱ.権利制限の一般規定(日本版フェアユース規定)の導入」(9~13ページ)について
(意見概要)
 一般フェアユース条項について、ユーザーに対する意義からも、可能な限り早期に導入することを求める。

(意見全文)
 一般フェアユース条項について、ユーザーに対する意義からも、可能な限り早期に導入することを求める。特に、インターネットのように、ほぼ全国民が利用者兼権利者となり得、考えられる利用形態が発散し、個別の規定では公正利用の類型を拾い切れなくなるところでは、フェアユースのような一般規定は保護と利用のバランスを取る上で重要な意義を持つものである。最終報告を作るにあたっては、検討の上ユーザーにとっての一般フェアユース条項の意義も書き込んでもらいたい。

 フェアユースの導入によって、私的複製の範囲が縮小されることはあってはならないことであり、実際の規定にあたっては、要件はアメリカの規定と同程度とするとともに、現行の各種権利制限規定もそのまま残すべきである。なお、一般フェアユース条項を導入している国は、アメリカの他にも台湾やイスラエルなどがあり、これらの国の規定も参考になるだろう。

 また、権利を侵害するかしないかは刑事罰がかかるかかからないかの問題でもあり、公正という概念で刑事罰の問題を解決できるのかとする意見もあるようだが、かえって、このような現状の過剰な刑事罰リスクからも、フェアユースは必要なものと私は考える。現在親告罪であることが多少セーフハーバーになっているとはいえ、アニメ画像一枚の利用で別件逮捕されたり、セーフハーバーなしの著作権侵害幇助罪でサーバー管理者が逮捕されたりすることは、著作権法の主旨から考えて本来あってはならないことである。政府にあっては、著作権法の本来の主旨を超えた過剰リスクによって、本来公正として認められるべき事業・利用まで萎縮しているという事態を本当に深刻に受け止め、一刻も早い改善を図ってもらいたい。

(2)「Ⅲ-1.コンテンツの技術的な制限手段の回避に対する規制の在り方について」について(15~17ページ)
(意見概要)
 ユーザーの情報アクセスに対するリスクを不必要に高める危険なものとしかなり得ないこれ以上の規制強化に反対する。著作権法第30条第1項第2号の撤廃の検討を求める。

(意見全文)
 根拠なく、本報告案の第15ページに、コンテンツの利用をコントロールするための技術的手段「を回避した利用によるコンテンツ産業への経済的損失が拡大している」、第17ページに、「アクセス・コントロールの回避行為については、(中略)違法コンテンツのダウンロード等と相まって、その被害は増大してきていると考えられる」と書かれているが、DRM回避やダウンロードによって経済的損失が拡大しているとするに足る根拠は無く、最終報告では、これらの記載は削除・訂正されるべきである。コンテンツへのアクセスあるいはコピーをコントロールしている技術を私的な領域で回避しただけでは経済的損失は発生し得ず、また、ネットにアップされることによって生じる被害は公衆送信権によって既にカバーされているものであり、その被害とDRM回避やダウンロードとを混同することは絶対に許されない。

 この報告書案にも書かれていることだが、この7月にゲームメーカーがいわゆる「マジコン」の販売業者を不正競争防止法に基づき提訴していることなどを考えても、現時点で、現状の規制では不十分とするに足る根拠は全くない。現状でも、不正競争法と著作権法でDRM回避機器等の提供等が規制され、著作権法でコピーコントロールを回避して行う私的複製まで違法とされ、十二分以上に規制がかかっているのであり、これ以上の規制強化は、ユーザーの情報アクセスに対するリスクを不必要に高める危険なものとしかなり得ない。最終報告においては、このような危険な規制強化に関する検討は即刻止めると明記してもらいたい。

 DRM回避規制に関しては、このような有害無益な規制強化の検討ではなく、まず、個私的なDRM回避行為自体によって生じる被害は無く、個々の回避行為を一件ずつ捕捉して民事訴訟の対象とすることは困難だったにもかかわらず、文化庁の片寄った見方から一方的に導入されたものである、私的な領領域でのコピーコントロール回避規制(著作権法第30条第1項第2号)の撤廃の検討を行うべきである。

(3)「Ⅲ-2.インターネット・サービス・プロバイダの責任の在り方について」(18~22ページ)について
(意見概要)
 プロバイダに対する標準的な著作権侵害技術導入の義務付けに反対する。間接侵害や刑事罰・著作権侵害幇助も含め著作権法へのセーフハーバー規定の速やかな導入を求める。

(意見全文)
 22ページに、動画投稿サイト運営者等特定のプロバイダに標準的なレベルの技術的な侵害防止措置の導入を義務付けるという対応策が書かれているが、このような義務化は非常に危険である。いたちごっこで不断の変更を余儀なくされる著作権侵害防止技術に対し、標準を定めて皆に選択の余地なく押しつけることは、まずもって、天下り役人の規制利権をムダに拡大し、無意味に技術の発展を阻害することにしかつながらないのであり、最終報告では、この部分にこのような否定的な評価も明記するとともに、このような方向性で検討を進めないことと明記するべきである。この点に関しては、逆に、検閲の禁止や表現の自由から技術による著作権検閲の危険性の検討を始めてもらいたい。

 また、現在動画投稿サービスがJASRACに訴えられている(「TVブレイク」事件)が、削除要請に応じて削除していたとしても間接侵害とみなされ、プロバイダ責任制限法上免責が受けられないこととなるおそれがあるのは、ネット事業の法的安定性を考えたとき大問題である。さらに、最近、著作権侵害幇助罪でレンタルサーバー事業者が逮捕された(「第(3)世界」事件)が、著作権法の本来の主旨に照らしてネット事業の刑事罰リスクが不必要に高まることも絶対あってはならないことである。これらの「TVブレイク」事件や「第(3)世界」事件の推移次第で、甚大な萎縮効果・莫大な国家的損失が発生することになると考えられ、政府にあっては、これらの事件の結果を待つことなく、現行のプロバイダー責任制限法あるいはその法改正による対応には自ずと限界があることも考慮し、損害賠償責任のみならず、間接侵害や刑事罰・著作権侵害幇助も含め著作権法にきちんとしたセーフハーバー規定を設ける検討を即刻本格化させてもらいたい。言うまでもなく、上で書いたことと同様、このセーフハーバー規定においても、その要件に標準レベルの技術的な侵害防止措置の導入の義務付けなどが組み込まれるべきではない。

(4)「Ⅲ-3.著作権法におけるいわゆる「間接侵害」への対応について」(23~25ページ)について
(意見概要)
 間接侵害の明確化は、ネット事業・利用の著作権法上のセーフハーバーを確定するために必要十分な限りにおいてのみなされるべきである。

(意見全文)
 セーフハーバーを確定するためにも間接侵害の明確化はなされるべきであるが、現行の条文におけるカラオケ法理や各種ネット録画機事件などで示されたことの全体的な整理以上のことをしてはならない。特に、著作権法に明文の間接侵害一般規定を設けることは絶対にしてはならないことである。確かに今は直接侵害規定からの滲み出しで間接侵害を取り扱っているので不明確なところがあるのは確かだが、現状の整理を超えて、明文の間接侵害一般規定を作った途端、権利者団体や放送局がまず間違いなく山の様に脅しや訴訟を仕掛けて来、今度はこの間接侵害規定の定義やそこからの滲み出しが問題となり、無意味かつ危険な社会的混乱を来すことは目に見えているからである。

(5)「Ⅲ-4.国際的な制度調和等について」(26~28ページ)について
(意見概要)
 模倣品・海賊版拡散防止条約の検討で、プライバシーや情報アクセスの権利といった基本的権利を守るとする条項を盛り込むよう日本から各国に積極的に働きかけてもらいたい。

(意見全文)
 27~28ページに書かれている「模倣品・海賊版拡散防止条約(ACTA)(仮称)について、そのような条項がよもや真面目に検討されることはないと思うが、もしどこかの国が、税関において個人のPCや携帯デバイスの内容をチェック可能とすることや、インターネットで著作権検閲を行う機関を創設することといった、個人の基本的な権利をないがしろにする条項をこの条約に入れるよう求めて来たときには、そのような非人道的な条項は除くべきであると、かえって、プライバシーや情報アクセスの権利といった国際的・一般的に認められている個人の基本的な権利を守るという条項こそ条約に盛り込むべきであると日本から各国に積極的に働きかけてもらいたい。

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2008年10月31日 (金)

第125回:知財本部・デジタル・ネット時代における知財制度専門調査会の報告案に対する意見募集の開始

 前回、フェアユース導入提言の部分を紹介したデジタル・ネット時代における知財制度専門調査会報告書案(pdf)が、知財本部から即日、11月17日を〆切としてパブコメにかかった(知財本部のリリースページ電子政府HPの該当ページ意見募集要項(pdf)個人用意見提出フォーム団体用)参照)ので、今回はこの報告書案への突っ込みの続きを書きたいと思う。

 報告書案(pdf)中の「Ⅰ.コンテンツの流通促進方策」で、案の定大した方向性は出されておらず、「Ⅱ.権利制限の一般規定(日本版フェアユース規定)の導入」で、フェアユース導入の提言がなされたところまでは良いのだが、この報告書案の「Ⅲ.ネット上に流通する違法コンテンツへの対策の強化」に書かれている具体的な対応策には、かなり危ういものも含まれている。

 まず、「1.コンテンツの技術的な制限手段の回避に対する規制の在り方について」の「(5)検討結果」では、

 本専門調査会のヒアリングでは、機器等の製造事業者からは、現行制度の有用性の評価が十分になされておらず、規制強化という方向性を提起することは不適切ではないか、また、情報へのアクセスを技術的にコントロールする行為を法が奨励することとなることの妥当性について慎重な検討がなされるべきではないかなどの意見があった。
 一方、権利者からは、ネットを通じて大量の違法コピーが行われていること、「マジコン」等の回避装置が若年層を含め一般的に広まっていることなどを背景に、現行制度の対象機器の範囲を見直すべきではないか、また、回避装置の提供行為を刑事罰の対象とすべきではないかなどの意見があった。
 アクセス・コントロールの回避行為については、ユーザーの間でもかなりの規模で広まっており、違法コンテンツのダウンロード等と相まって、その被害は増大してきていると考えられる
 このため、現行制度の実効性の検証は当然行うべきであるが、コンテンツの経済的価値を損なうような行為については、国民の適切な情報アクセスの機会の確保にも留意しつつ、規制を見直し、被害を防止するための措置を講ずることが必要である。
 対応案としては、例えば、不正競争防止法による規制を見直すことや、著作権法においてアクセス・コントロールの回避行為を位置付けることなどが考えられる。ただし、アクセス・コントロールにより保護される内容が著作物とは限らないこと、また、視聴やプログラムの実施は著作権法上の支分権の対象ではないことなどから、著作権法に位置付けることについては、慎重な検討が必要である。

と、不正競争法におけるDRM回避機器規制の強化(まず考えられることは、DRM回避機器の提供行為に対する刑事罰の導入だろうか)や、著作権法によるアクセスコントロール回避行為規制(論理的にはおかしいが、アクセスコントロールを回避して行う複製を私的複製の範囲から除外することを考えているのではないか)などの規制強化策に触れているのだが、現状でも、不正競争法と著作権法でDRM回避機器等の提供等が規制され、著作権法でコピーコントロールを回避して行う私的複製まで違法とされ、十二分以上に規制がかかっているのであり、これ以上の規制強化は、ユーザーの情報アクセスに対するリスクを不必要に高める危険なものとしかなり得ないだろう。(コピーコントロールとアクセスコントロールの違い、非常にややこしい規制の現状などについては、別途、第32回第36回第45回などをご覧頂ければと思う)。

(大体、勝手に根拠無く、アクセスコントロール回避行為によって、違法コンテンツによる違法コンテンツのダウンロードと相まって、被害が増大していると断定していることからしてどうかと思う点である。単にコンテンツへのアクセス(コピーではない)をコントロールしている技術を私的な領域で回避しただけで一体どんな被害が発生するというのか。ダウンロード違法化の話でもそうだが、このような話になると途端に論理破綻を来す権利者団体などのデタラメな主張に国の報告書まで毒されているのは本当に救いがたい。ネットにアップされることによって生じる被害は公衆送信権によってカバーされるべきものであり、混同は許されない。

 そもそも、私は、第45回で書いたように、著作権法における私的なコピーコントロール回避規制を撤廃するべきだとすら思っているのであり、この報告書案にも書かれていることだが、この7月に、ゲームメーカーが、違法コピーされたゲームソフトを起動させることができるいわゆる「マジコン」と呼ばれる機器の販売業者を不正競争防止法に基づき提訴しているなどを考えても、現時点で、現状の規制では不十分とするに足る根拠は全くない。なお、著作権法における私的なコピーコントロール回避規制の刑事罰化などは論外中の論外である。)

 次に、「2.インターネット・サービス・プロバイダの責任の在り方について」の「(5)検討結果」には、

 本専門調査会のヒアリングでは、プロバイダからは、権利者とは定期的に話合いの場を持っており、現在もファイル共有サービスの対策等の話合いが進められているため、プロバイダ責任制限法の改正よりも、むしろ現行枠組みの延長線上で各事業者の自主的な取組を広げていくことを検討することが現実的であるとの意見があった。また、著作権についてのみ法律上特別な扱いをするのは難しいのではないかとの意見もあった。
 確かに、ネットオークションにおける模倣品・海賊版の対策については、権利者・事業者の自主的な取組が大きな成果をあげている。しかし、主に侵害の温床となっているのは業界団体の枠組みに属さないような事業者である場合が多く、その場合には自主的な取組の対応のみでは限界があることも考えられる。
 また、権利者からは、違法コンテンツの削除は侵害の事後的な対応であり、これのみでは侵害量の減少にはつながらないことから、侵害行為を防止する技術的措置を合理的な範囲で義務付けることや、発信者情報の開示請求手続きの簡素化を図ることが必要などの意見があった。
 このため、自主的な取組を発展させることと併せて、制度上の見直しについても検討を行い、実効性のある方策を構築することが必要と考える。
 対応案としては、例えば、著作権侵害防止の観点からは、民間の自主的な取組や技術開発のレベルなども踏まえつつ、動画投稿サイト運営者等特定のプロバイダには合理的な範囲で標準的なレベルの技術的な侵害防止措置の導入を義務付けることが考えられる。
 また、事業者の予見可能性を高める観点からは、プロバイダ責任制限法の損害賠償責任や著作権法における差止請求等の範囲の在り方を見直し、著作権侵害防止措置を導入していること等一定の要件を満たす事業者は、損害賠償請求や差止請求などを受けないこととする明確な免責規定を設けることが考えられる。

と書かれているのだが、自主的な取組の促進や今の手続きの簡素化はともかく、動画投稿サイト・プロバイダに対する標準的な著作権侵害防止技術の押しつけは非常に危ない。いたちごっこで不断の変更を余儀なくされる著作権侵害防止技術に対し、標準を定めて皆に選択の余地なく押しつけることは、まずもって、天下り役人の利権をムダに拡大し、無意味に技術の発展を阻害することにしかつながらないのである。

 ネットにおける責任・リスク・権利のバランスの取り方は非常に難しく、まだ技術が発展途上であることもあり、当分は浮ついた検討が続く可能性が高いが、この点については、検閲の禁止や表現の自由から技術による著作権検閲の危険性を考えるという、もっと根本的なところからの逆検討がそろそろ本格的に始められても良い頃合いではないかと私は感じている。

 また、「3.著作権法におけるいわゆる「間接侵害」への対応について」の「(5)検討結果」では、

 侵害行為の主体に関する問題は複雑化していることから、侵害行為を抑制するとともに、利便性向上によるコンテンツの新たな需要を喚起するようなサービス等を安心して提供できるようにすることが必要である。また、この問題に関する裁判例は、必ずしも一致した認識に基づいているとは考えられない。
 したがって、著作権法上のいわゆる「間接侵害」の明確化に関する検討を早急に進め、行為主体の考え方を始め差止請求の範囲を明確にすること等が必要である。

と書かれている。この点については、単に明確化とされているのでそれほど問題はないと思うが、個人的には、念のため、現行の条文におけるカラオケ法理や各種ネット録画機事件などで示されたことの全体的な整理以上のことをしないよう釘を刺しておきたいと思っているところである。確かに今は直接侵害規定からの滲み出しで間接侵害を取り扱っているので不明確なところがあるのは確かだが、現状の整理を超えて、明文の間接侵害規定を作った途端、権利者団体や放送局がまず間違いなく山の様に脅しや訴訟を仕掛けて来、今度はこの間接侵害規定の定義やそこからの滲み出しが問題となり、余計かつ危険な混乱を来すことは目に見えているのだ。

(なお、具体的な内容が分からないので、何とも言えないのだが、「4.国際的な制度調和等について」で、合意形成に向けた取組を進めるとされている、「模倣品・海賊版拡散防止条約(ACTA)(仮称)」も注意しておいた方が良いだろう。国際条約であることを良いことにこっそりとロクでもない検討をしている疑いがある。)

 これらの点は、法改正に向けてフェアユースほど踏み込んだ書き方がされている訳ではないが、フェアユースと一緒にパブコメで触れる必要があると私は思っている。

 次回は、ダウンロード違法化問題に関する補足のエントリを書きたいと思う。

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2008年10月30日 (木)

第124回:知財本部によるフェアユース導入の提言

 昨日(10月29日)、知財本部で第9回の知財規制緩和調査会(正式名称は、「デジタル・ネット時代における知財制度専門調査会」)が開催され、日本版フェアユースの導入を含む報告書案がほぼ了承された(47NEWSの記事internet watchの記事日経TechOnの記事日経PC Onlineの記事参照)。

 各種記事によると、これからパブコメにかかるらしいが、既に報告書案(pdf)知財本部のHPで公開されているので、その中で最も大きいフェアユース導入提言部分、「Ⅱ.権利制限の一般規定(日本版フェアユース規定)の導入」の「5.検討結果」の内容を以下に引いておきたいと思う。

(1)権利制限の一般規定(日本版フェアユース規定)の導入について
 現行の著作権法は、著作物の公正な利用を図るという観点から、個別具体の事例に沿って権利制限の規定を定めている。しかしながら、近年の技術革新のスピードや変化の速い社会状況を考えれば、個別の限定列挙方式のみでは適切に実態を反映することは難しく、著作権法に定める枠組みが社会の著作物の利用実態やニーズと離れたものとなってしまうという懸念がある。
 例えば、情報通信技術を活用した新しい産業の創出という観点からは、現行の著作権法では個別の制限規定が想定していない新規分野への技術開発や事業活動について萎縮効果を及ぼしているという問題がある。この点については、本専門調査会のヒアリングにおいて、事業者から同旨の意見があったほか、権利制限の一般規定は著作物の利用のルールを事後に決するというものであって、それを導入することにより、創造的な事業への挑戦を促進すべきという意見もあった。
 また、ネット上の写真・動画への写り込みやウェブページ印刷などの行為は、形式的には違法となるが、権利者の利益を実質的に害しているとは考えられず、また、社会通念上も違法とすべきとは考えられない
 一方、本専門調査会のヒアリングでは、権利者からは、一般規定の導入により違法な利用行為が蔓延するのではないか、また、司法の判断によってしか解決できないこととなる結果、権利者に更なる負担を強いることになるのではないかという意見があった。

 以上のことから、個別の限定列挙方式による権利制限規定に加え、権利者の利益を不当に害しないと認められる一定の範囲内で、公正な利用を包括的に許容し得る権利制限の一般規定(日本版フェアユース規定)を導入することが適当である。
 ただし、一般規定の導入に当たっては、
i) 日本人の法意識等に照らしリスクを内包した制度はあまり活用されないのではないか、
ii) 様々な要素により社会全体のシステムが構成されており、経済的効果について過大な期待をかけるべきではないのではないか、
iii) 一般規定の導入により結果として違法行為が増加することが懸念され、訴訟コストの増加も含め権利者の負担が増加するのではないか、
iv) 法体系全体との関係や諸外国の法制との間でバランスを欠くことはないか、
という点を踏まえつつ、実際の規定振りを検討する必要がある。

(2)個別規定と一般規定の関係
 権利制限の一般規定については、どのような場合が権利者の利益を不当に侵害しない公正な利用となるかは紛争当事者の主張・立証による裁判所の審理を通じて明らかになることとなる。
 一方、権利制限の個別規定は、審議会等の場での多数の有識者による審議や国会の手続きを経て確立された著作物の利用のルールであると言える。このため、利用者側の予見可能性や適正・迅速な裁判の確立という観点からすれば、法改正までの時間はかかるものの、個別具体的な規定の方が望ましいと考えられる。
 したがって、権利制限の一般規定が定められた後も、著作権法の体系においては引き続き、必要に応じて権利制限の個別規定を追加していくことが必要である。

(3)一般規定の規定振りについて
 一般規定の実際の規定振りについては、予見可能性を一定程度担保するためにも「公正な利用は許される」のような広範な権利制限を認めるような規定ではなく、「著作物の性質」「利用の目的及び態様」など具体的な考慮要素を掲げるべきである。

 権利者団体からの横槍が入ったものの、無事、日本版フェアユース規定を導入することが適当と、知財本部にしては珍しく踏み込んだ表現で、フェアユース導入が提言された。個別の権利制限を置き換える話ではないことも確認され、今後の検討は実際の規定振りに移ることとされている。これで、日本版フェアユース規定の導入がかなりの現実味を帯びてきた。

 ただ、この知財本部のフェアユース導入の「提言」は、単に行政レベルでの提言に過ぎず、これからどうなるかは全く予断を許さない。報告書案には、ネット事業者の意見と、著作権団体の意見しか書かれておらず、利用者の視点は当たり前のようになく、この報告書案もパブコメにかかったところで、一ユーザーから見た一般フェアユース条項の意味とを示し、導入賛成の意見を出さなくてはならないと私は感じている。一般フェアユース条項の導入で即刻何かが変わるというものでもないが、一般フェアユース条項は、情報化社会では、一般ユーザーも含め次第に大きな影響を及ぼして行くに違いないのだ。また、実際に条文を作る際にはアメリカの規定を大きく参考にすることになるのだろうが、規定振りをどうするかという点も非常に重要な点である。

(なお、最近の文化庁のダウンロード違法化の「決定」も同じく、行政レベルでの方針決定(去年の12月以来文化庁がしぶとく方針を変えていないだけなので、「決定」というより「確認」とでも言うべきところだろうが)に過ぎず、どうなるかはまだ何とも見えない。もう少し小さなレベルの法改正事項なら、全く何の議論にもならず国会でも素通しされる可能性が極めて高いのだが、あれだけの大騒ぎになったことを無視して最後までごり押しするのは、文化庁と権利者団体が全力でつるんでも至難ではないかと私は思っている。ダウンロード違法化や一般フェアユース条項導入のような大問題に関しては常に予断は出来ない。)

 この報告書の他の部分、DRM回避や、プロバイダー責任制限、間接侵害などに関する項目には、かなり危ういことも書かれているので、即刻パブコメにかかるようであれば、次回は、引き続きこの報告書案に関する突っ込みを、そうでなければ、ダウンロード違法化問題に関する補足を書きたいと思っている。

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2008年6月20日 (金)

第103回:知財計画2008の文章の確認

 この6月18日に2008年版の知財計画(本文参考資料パブコメ結果概要団体提出パブコメ個人提出パブコメ)が知財本部で決定された(internet watchの記事日経のネット記事知財情報局の記事参照)。

 今年も、こんな分厚い計画を作ることに何の意味があるのかと思うほど分厚い計画になっているが、この計画は、政府における知財政策検討のエンサイクロペディアとして、政府内の感触を掴むには非常に便利なものなので、第71回などで指摘した箇所が、どう変わったかを、今回は確認して行きたいと思う。(なお、私が提出したパブコメは第79回に載せた。)

 まず、ダウンロード違法化問題については、第90ページで、

②利用と保護のバランスに留意しつつ適正な国内制度を整備する
ⅰ)コンテンツの利用を円滑化するため、次の事項について2008年度中に法的措置を講ずる
a)権利者不明のコンテンツの利用を円滑に進めるための対策
b)違法複製されたコンテンツからの私的複製の許容範囲の見直し
c)障害者による著作物の利用促進のための権利制限規定の整備
また、著作物のライセンシーの保護等の在り方、いわゆる間接侵害の明確化、法定損害賠償及び複数の権利者が関わるコンテンツに関する望ましい権利行使の在り方等について、2007年度の検討成果を踏まえてさらに検討
を進め、2008年度中に結論を得る。
(文部科学省)

という記載になった(赤字強調は私が付けたもの)。ダウンロード違法化をしないことと書き込まれなかったのは残念であり、この記載を見る限り、文化庁はやはりダウンロード違法化を諦めてはいないと見えるので、この点は、ユーザーにとって最大の著作権問題の一つとして、今年も引き続き動きを注視して行かなくてはならないだろう。また、様々なサービスに対する影響が大きい間接侵害に関する議論なども、文化庁の文化審議会で議論されると考えられるので、やはり気をつけておく必要がある。

 また、保護期間延長問題については、第91ページで、

ⅳ)著作物の保護期間の延長や戦時加算の取扱いなど保護期間の在り方について、保護と利用のバランスに留意した検討を行い、2008年度中に一定の結論を得る。
(文部科学省)

と去年と同じ内容で、期限だけを2008年度と先延ばしにした形になっている。著作権保護期間延長問題については、役所以外では既にほぼ結論が出ているように思われるが、文化庁としては問題の引き延ばしをしたいのだろう

 最近何かと騒がしい私的録音録画補償金問題とコピーワンス問題については、第91ページに、

④私的録音録画補償金制度の見直しについて結論を得る
2007年度における検討の成果を踏まえ、技術的保護手段の進展やコンテンツ流通の変化等を勘案しつつ見直しを進め、私的録音録画補償金制度の見直しについて2008年度中に結論を得る。
(文部科学省、経済産業省)

⑤技術革新のメリットを享受できるプロテクションシステムの採用を促す
コンテンツの流通を促進するに当たり、技術革新のメリット・利便性を国民が最大限に享受できるようにするとの観点も踏まえ、視聴者利便の確保と著作権の適切な保護を図り、あわせてコンテンツビジネスが拡大するよう、バランスのとれたプロテクションシステムの策定・採用を促進するため、以下の取組を進める。
a)デジタル放送のコンテンツ保護に関するルール及びその担保手段の在り方について、権利者が安心してコンテンツを提供できる環境整備の観点やユーザーにとっての使いやすさへの配慮等を踏まえて検討を行い、2008年度中に一定の結論を得る。
b)民間事業者において動画配信サービス等のプロテクションシステムを検討する場合は、権利者が安心してコンテンツを提供できる環境やユーザーの使いやすさに配慮したルールの採用を奨励する。
(総務省、文部科学省、経済産業省)

と書かれており、去年より短く整理されているが、ここも2008年度中と先延ばしの記載である。個人からのパブコメでは結構言及されていたのだが、ここで、B-CAS問題に関する検討が書き込まれなかったのは残念である。

 特に、ダビング10については、権利者団体側が、HDD課金を棚上げとして、容認する発言を総務省の情報通信審議会でしたようであり(日経のネット記事ITproの記事AV watchの記事internet watchの記事マイコミジャーナルの記事ITmediaの記事参照)、来月実施される公算が高くなっている。ブルーレイ課金など、省庁間の不透明なプロセスで物事を決めようとすること自体どうかと思うが、確かに今のまま膠着状態を続けていても誰も得をしないので、訳の分からない不当な課金抜きで弥縫策としてダビング10を実施できるならしてもらっても構わない。ただ、このダビング10の実施で、さらに地デジ関係のDRM・著作権問題はさらに混乱し、混迷を深めるのではないかと私は予想する。

 また、第92ページには、ネット規制法との関連が明記されている訳ではないが、フィルタリング促進について以下のように書かれている。

⑦青少年を有害情報から守るための取組を奨励・支援する
有害なコンテンツから青少年を守るため、フィルタリングシステムの構築など業界の自主的な取組を促進するとともに、学校関係者、保護者、関係業界に対する広報啓発活動や連携強化を促進する。
(警察庁、総務省、文部科学省、経済産業省)

 ネット規制法が成立したこともあり、ここに書かれている省庁がそれぞれフィルタリングに関する予算などを計上してくることだろう。天下り利権の無意味な拡大につながらないよう、特に、これらの各省庁のフィルタリング関連施策には目を光らせておく必要がある。

 さらに、これは今年からだと思うが、違法ファイル交換について、以下のように書かれている。

②違法コンテンツ配信の根絶に向けた取組を推進する
ⅰ)2008年度から、Winny等のファイル共有ソフトを用いて著作権を侵害してファイル等を送信していた者に対し、警告メールを送付するなど電気通信事業者と権利者団体が連携した侵害行為を排除する仕組みづくりを支援する。
(警察庁、総務省、文部科学省)
ⅱ)ファイル共有ソフトを悪用した著作権侵害事犯に対し、著作権団体との連携を強化し、効果的な取締りを実施する。
(警察庁)

 今のところファイル交換におけるアップローダー対策として書かれており、各関係者の地道な取り組みを否定するつもりは全くないが、警察庁・総務省・文化庁が絡む検討でロクなアウトプットが出てきたためしがないので、ここも要注意だろう。

 また、いわゆる著作物の公正利用の類型、フェアユース関連は、第85~86ページに、

②ネット検索サービス等に係る法的課題を解決する
次世代をリードする情報の検索・解析・信憑性検証技術の開発・国際標準化による先進的な事業の出現を促進するとともに、ネット検索サービスが円滑に展開されるよう2008年度中に法的措置を講ずる。また、利用者に応じて、適した商品等の情報を提供するサービスが円滑に提供できるよう、利用者のプライバシーを保護しつつ利用者に関する情報を安心・安全に収集・蓄積・活用するための方策等について検討を行い、2008年度中に一定の結論を得る。
(総務省、文部科学省、経済産業省)

③コンテンツ配信に伴うサーバー上の複製行為等に係る法的課題を解決する
コンテンツ配信の通信過程において端末やサーバー等で生じる一時的な蓄積について、通常の通信過程における機器の利用であって権利者の利益を不当に害しない場合は著作権法上権利を及ぼさない措置を導入するなど、一時的蓄積等に係る法的課題を解決するための検討を行い、2008年度中に法的措置を講ずる。
(文部科学省)

④研究開発における情報利用の円滑化に係る法的課題を解決する(再掲)
ネット等を活用して膨大な情報を収集・解析することにより高度情報化社会の基盤的技術となる画像・音声・言語・ウェブ解析技術等の研究開発が促進されること等を踏まえ、これらの科学技術によるイノベーションの創出に関連する研究開発については、権利者の利益を不当に害さない場合において、必要な範囲での著作物の複製や翻案等を行うことができるよう2008年度中に法的措置を講ずる。
(文部科学省)

⑤リバース・エンジニアリングに係る法的課題を解決する
革新的ソフトウェアの開発や情報セキュリティの確保に必要な範囲において、コンピュータ・ソフトウェアのリバース・エンジニアリングの過程で生じる複製・翻案を行うことができるよう2008年度中に法的措置を講ずる。
(文部科学省)

(3)デジタル・ネット時代に対応した知財制度を整備する
デジタル・ネット時代に対応したコンテンツ産業の振興を図るため、新たなコンテンツの利用形態を視野に入れた流通促進の枠組み、包括的な権利制限規定の導入も含めて新たな技術進歩や利用形態等に柔軟に対応し得る知財制度の在り方、ネット上の違法な利用に対する対策強化等について早急に検討を行い、2008年度中に結論を得る。また、コンテンツ市場の拡大に向けて、既存のメディアにとらわれない新規事業の創出など、デジタル・ネット時代に対応した新たなビジネスモデルの構築に向けた取組を支援する。
(内閣官房、総務省、文部科学省、経済産業省)

と書かれ(赤字強調は私がつけたもの)、図書館での著作物のデジタル利用については、第95ページに、

(4)国立国会図書館のデジタルアーカイブ化と図書館資料の利用を進める
国立国会図書館において行われている貴重な図書等のデジタル化やインターネット情報資源等を収集保存し、ネット上で一般ユーザーの利用に供する取組について、その促進が図られるよう一層の連携を進める。
このため、権利者の経済的利益や出版ビジネスとの関係を考慮しつつ、国立国会図書館における蔵書のデジタル化の推進に必要な法的措置を2008年度中に講ずるとともに、国立国会図書館と他の図書館等との連携や図書館等利用者への資料提供の在り方については、関係者間の協議を促進し、2008年度中に一定の結論を得る。
(文部科学省、関係府省)

と書かれている。包括的なフェアユース規定の導入がどうなるかは予断を許さないが、少なくとも、検索エンジンや研究目的などの個別の権利制限規定については、是非、早期に導入してもらいたいと思う。著作権法によって、情報の公正利用が阻害され、文化と経済の正常な発展が阻害されているという状態は、一刻も早く解消されてしかるべきなのだから。

 著作権問題の本質は、技術の発展によって生まれた新たな公正利用の類型に全く対応できていない今の著作権法によって、文化と経済の発展に素直に寄与する情報の公正利用が阻害されていることにあり、既存のコンテンツのネット流通が進まないことにある訳ではないということがなかなか理解されないのは残念であるが、コンテンツ流通促進法についても、

①デジタルコンテンツの流通を促進する法制度等を整備する
放送事業者と権利者団体間の契約ルールの策定やコンテンツ関連情報の集約化など2007年度中に一定の結論が得られた事項については実施に向けた取組を支援するとともに、権利処理の円滑化等のデジタルコンテンツの流通に関する課題や国際的枠組みについて引き続き検討を行い、最先端のデジタルコンテンツの流通を促進する法制度等を1年以内に整備し、クリエーターへの還元を進め、創作活動の活性化を図る。
(総務省、外務省、文部科学省、経済産業省)

と1年以内に何かの法制度等を整備すると書かれている。今年も、コンテンツ流通が知財政策上のキーワードの一つとして取り沙汰されるのだろうが、コンテンツ流通はビジネスマターであって政策マターではない。政官の政策担当者が、政策マターとビジネスマターの分離が全く出来ていないことも、また、今の政府における政策検討を迷走させている一つの要因となっているだろう。

 最後に、ここで著作隣接権の検討という記載が削除されなかったのは残念であるが、情報通信法については、第85ページに、

①通信と放送の垣根を越えた新たなサービスへ対応する
通信・放送の法体系の見直しについては、コンテンツの生産・流通・消費を最大化する方向で検討を行い、2010年を目途に結論を得る。また、通信・放送の法体系の見直しの状況を踏まえ、新たなコンテンツの創作への寄与等を考慮しつつ、利用者からみたサービスの形態に応じた、権利関係の規定の見直しや著作隣接権の在り方の検討を2008年度から開始する。
(総務省、文部科学省、経済産業省)

 と書かれている。この情報通信法に関については、表現の自由や通信の秘密の点からして疑問だらけなペーパーを総務省が作ってきているので、その点をまず注意するべきだが、著作権に関する点でも非常に危うい。著作隣接権をネットで発生させることは百害あって一利ない最低の施策と私は断言できる。

 著作権問題に関しては、結論が出ていた著作権の非親告罪化についての記載が消え、どの記載においても、明確に規制強化寄りとならなかったのは最低限良かったとしても、私的録音録画問題を中心に、本当に国民本位の検討をするとまで役所の意識が進んでいないことが見て取れるのは非常に残念である。公正利用の各類型に対する権利制限一つとっても安心はできない。実際に知財に関する規制緩和の法改正がなされ、安定した運用がなされるまで、私は一国民として厳しい目を向け続けるだろう。今年も、主戦場となるだろう私的録音録画問題を中心に、私は地道に追いかけて行くつもりである。

(今回は、著作権問題中心に紹介したが、無論、第95回で取り上げたような、特許など他の知財権に関することも書かれているので、参考になりそうな点は随時紹介して行きたいと思う。)

 なお、児童ポルノ法に関する記載は去年も今年も知財計画中にはないのだが、個人提出のパブコメには、児童ポルノ法の改悪反対の意見が多く見られる。フィルタリングなど、コンテンツに関係していさえすればと、何でも計画の中に取り込んでしまっている知財本部も悪いのだが、このような民意について、政官の政策担当者はどう考えているのだろうか。

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2008年5月13日 (火)

第93回:知財本部・知財規制緩和調査会の資料の紹介

 知財本部のHPに、先週の金曜日(5月9日)に開催された2回目のデジタル・ネット時代における知財制度専門調査会の資料がアップされているので、今回は、その内容の紹介をする。(なお、最初の報道で使われていた分かりやすい仮称の方をタイトルには使ったが、正式名称はこの通り。)

 先週は、文化庁が極めて頭の悪いiPod課金提案を文化審議会でした所為か、こちらの検討に関することが、ネットも含めほとんど報道されていないのが残念でならないが、この調査会で検討している知財の規制緩和は、これからのインターネット時代・情報化社会において本当に重要なものである。

 その資料「デジタル・ネット時代における知財制度の在り方について」において、以下のような問題点をあげているのは、ほぼ今の状況における著作権法の問題を正しくとらえていると言って良い。

  1. 単一の利用方法を前提としており、ワンソース・マルチユースに対応していない。
  2. デジタル・ネット上の豊かな情報を活かした新しい利用方法に対応していない。
  3. 技術的過程に付随する行為の取扱いが明確ではない。
  4. 投稿サイトやブログなどで他人の創作物を相互に利用し合いながら創作するケースなどの新しい創作形態への対応が明確ではない。
  5. 新たな技術やビジネスモデルの出現に際して、柔軟に対応しうる規定がなく、新たな動きが萎縮しがちである。
  6. ネット上の違法な利用に対する対策が不十分である。

 ネット上の違法な利用に対する対策として、文化庁がバカ丸出しでごり押しすることを目論んだ(恐らく今も目論んでいる)ダウンロード違法化も書かれておらず、基本的には民間における各種対策の支援と、公正利用のための権利制限を設けるための法改正を出口にするなど、この資料は、細かなところで物足りないところはあるが、最近の日本政府から出された知財政策・著作権政策関連のものとしては、格段に公正で出来が良い。(文化庁がただひたすらひどすぎるだけなのだが。)

 一般的なフェアユース規定の導入などはまだ賛否両論あろうが、特に、上の資料の中に含まれているものの中でも、さらに「早急に対応すべき課題について」で、早急に対応すべきとされている、

  1. 検索サービスの適法化
  2. 通信過程における一時的蓄積の法的位置付けの明確化
  3. 研究開発における著作物の利用の円滑化
  4. コンピュータ・プログラムのリバース・エンジニアリングの適法化

の4点は、権利者の利益を害さず、著作物の通常の利用も害しない、公正利用の類型としてほぼ考えて良いものばかりで、今すぐに法改正してもらっても全く困らないどころか、是非法改正してもらいたいものばかりである。これらは、諸外国でも既に法改正などによって認められているものばかりであり、このような技術の進展によって新たに生まれた公正利用の類型に対して今まで権利制限が無かったことだけでも、日本の文化政策がいかに世界に遅れていたか分かろうというものである。自身と癒着した著作権関係団体の利益を最大化することだけを考え、全く権利者の害にならないにもかかわらず、今まで、このような全国民を裨益する権利制限すらさぼってきた文化庁の罪は極めて重い。(なお、もし各国の権利制限規定について興味があれば、是非過去のエントリもご覧頂きたい。)

 報道などがなく、検討会で各委員から、どのような発言がなされたのか分からないのは残念だが、この資料を見る限り、この知財本部の規制緩和の検討は地道に進んでいるようであり、知財計画2008にも反映されるだろう。規制緩和の初志を改正法案の成立まで貫徹してもらわなければ何の意味もないが、著作権関係団体に法改正でにらみを効かせ天下り利権を保持・拡大しようとする文化庁が、下心丸出しで提案する、ダウンロード違法化やiPod課金のようなバカげた利権・既得権益拡大のみを発生させる著作権法改悪案など全て吹き飛ばして、次回の著作権法改正においては、政府には是非、この資料であげられているような本当の規制緩和のみの、著作物の公正な利用のための権利制限の追加のみの法改正をやってもらいたいというのが、私の一国民としての切なる願いである。もはや文化の敵と化した文化庁が抵抗勢力となり、猿も騙せないような論理で子どものようにだだをこねるかも知れないが、このような知財の規制緩和は、文化的にも経済的にも全国民を裨益するものとなると私は確信している。

 なお、第1回(4月24日)の議事録も同時に公開されているので、一緒にリンクを張っておく。この議事録もなかなか面白いのだが、その中でも、日本一の知財法学者と名高い中山信弘先生の発言はここに引用しておきたい。著作権法がビジネスの阻害要因となっており国益を阻害していると、著作権は人工的な権利であって時代によって調整機能が変わってくると、日本の著作権法関係者の条約観はおかしいのではないかと、知財法の泰斗が発言していることは重い。文化庁などで自身の利権確保のためのごまかしに良く使われる、ベルヌ条約に関する意味不明の解釈論や、複製権を絶対不可侵のものとする理解不能の著作権神授説などは本当に日本政府のあらゆる検討から根こそぎにしてもらいたいと私は思う。特定省庁・特定団体の利権のために、国益が損なわれることなど本来あってはならないことなのだから。(なお、以下は抜粋なので、他の発言も含め、中山先生の発言の全文は是非リンク先からご確認頂ければと思う。)

○中山会長 司会が言っていいかどうかわかりませんけれども、私が見るところでは、著作権法というのはかなりビジネスロー化していると思います。難しいのは、完全にビジネスローだと言ってしまえば話は簡単で、それなりにやりようはあるのですけれども、従来型の創作形態、従来型の利用形態・流通形態も健在である、つまり両者が混在しているというところが問題を複雑化していると思います。
 しかしながら、ビジネス化しているというこの状況を無視することはできないと思っております。つまり、著作権法があるからこのビジネスはやってはいけないという、そういうものが余りに多いと、これは日本の国益に反する。

(中略)

 憲法とか自然権とか言い出しても、大きな意味はないと思います。私は著作権というのは非常に人工的な権利であって、時代時代によって調整機能が変わってくる。インターネットがある時代とない時代では全然違う、では今はどうかということを議論してもらえればよろしいのではないかというふうに思います。

(中略)

 それから、もう1点だけ言いたいのは、条約についてです。著作権法の改正をしようとすると、すぐに条約という問題に絡んできます。ベルヌ条約というのは実体的な規定をたくさん持っていますから、条約に違反することはできないので、これは非常に大きな問題だろうと思います。
 私は国際法の専門家ではないのでよくはわかりませんけれども、どうも日本の著作権法の関係者の条約観というものはちょっとおかしいのではないかという気持ちはしております。つまり、条約というものと国内法というものを同じような方法論で解釈しているのではないかと思います。日本は憲法でもって条約優位、つまり法律より条約が無条件で優位になっています。あまりこのような国はないんではないかと思うんですけれども、とにかくそういう憲法があるので、そのせいかもしれませんけれども、しかし、条約は国内法とは全然枠組みが違う、なぜならばエンフォースメントが違うからだと思っております。著作権問題はWTOのTRIPS協定に入っているわけですけれども、ではWTOを各国が一体どのような態度で臨んでいるのか、つまりどの程度真剣に守る気があるのか、という問題になってくるわけです。
 日本で言えば、WTOでいえば、例えば、ウイスキーと焼酎では商品が異なるので税率が違うのは条約違反ではないと主張しましたが、負けたわけです。それからすれば、ビールと発泡酒で税率に差を設けることなどはWTO上は真っ黒(違反)ですね。しかし、世界じゅうのどこの国も文句を言わない、文句がなければ何の問題もない。文句を言ってきたら、それでWTOのパネルで争って負ければアピールすればよい、さらにそこで争って負けたら、始めて料率を変えればいいし、あるいはもっとひどいことを言えば、負けたって制裁を受ける覚悟でそのとおりで通してしまえばいい。アメリカのバード修正条項などはまさにその例ですね。あまり好ましいこととは思えませんが、制裁よりもその法律が国益にかなうとすれば、あえて制裁を選ぶという道もありうる。わが国も、ILOの勧告などは真剣に守る気はないようですね。条約といっても、すべての条約のすべての条項につき、同じであるとはいえませんが、条約とはそういうものだと思うんですけれども、どうもこれを国内法と同じように絶対化して理解をしているように思えます。

(後略)

 次回は、またB-CAS関連についてか、あるいは、この知財本部資料であげられている著作物の公正利用の類型の細かな論点について書いてみたいと思っている。

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