2018年7月16日 (月)

第396回:TPP11関連法の成立と知財本部の著作権ブロッキング検討

 先月のことになるが、極めて残念なことながら、6月28日に参議院の内閣委員会で、6月29日に本会議で、環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律の一部を改正する法律案(アメリカ抜きのTPP11協定関連法案)が可決・成立し、7月6日に公布された。

 参議院HP議案情報にTPP11協定関連法案の採決結果が出ているが、主要政党では、自民党、公明党、維新の会、希望の党が賛成し、国民民主党、立憲民主党、共産党、自由党・社民党が反対した。

 第393回で書いた通り、この法案は、凍結によって必要がなくなっているにもかかわらず、TPP11協定の発効に合わせて著作権の保護期間延長を施行するという悪辣かつ姑息な内容のものだが、結局参議院でもこの法案の本質的な問題の議論は深められず、これが与党の手によってなし崩し的に可決されたのは日本の知財政策上痛恨の極みと言っていい。

 元の12カ国でのTPP協定はアメリカの脱退によって発効の見込みが立たなくなっているが、今度のTPP11協定はGDPとは無関係に6カ国の批准で発効することになっており、残念ながら、いずれ発効する見込みは高いと私も見ている。

 参議院内閣委員会の附帯決議(pdf)は、「米国との経済対話や『自由で公正かつ相互的な貿易取引のための協議(FFR)』においては、TPPの合意水準を上回る米国からの要求は断固として拒絶し、我が国の国益に反するような合意は決して行わないこと」といった綺麗事を並べ立てているが、元のTPP協定から脱退したアメリカのトランプ大統領にとってTPP11協定が何の圧力にもならないことは目に見えている上に、この法案自体が著しく国益を損なっているのだから何をか言わんやだろう。

 繰り返しになるが、著作権の保護期間延長がアメリカの強硬な主張によって入れられたことを考えても、このような凍結項目は本来TPP11関連法案から外しておくべきだったものである。にもかかわらず、まとめて法案の中に入れて可決を強行したことは、国として政策判断を自ら放棄する戦後最大級の愚行であり、このことは長きに渡って我が国の根本を蝕むことだろう。(無論、第386回で書いた通り、著作権延長問題については日欧EPAも控えているのはその通りだが、このような多重ポリシーロンダリングは本来許されて然るべきものではない。)

 また、私が今最も注視している政府の検討会に、著作権ブロッキングの是非を検討している、知財本部インターネット上の海賊版対策に関する検討会議があり、既に2回も開催されている。

 6月22日の第1回インターネット上の海賊版対策に関する検討会議(タスクフォース)の設置について(pdf)を見ると、メンバーのバランスは一応取れており、苦肉の策だろうが、著作権ブロッキングを今まで主導していたコンテンツ分野会合の座長だった中村伊知哉氏に加えて、村井純氏が共同座長になっている形であり、第392回で取り上げたネット検閲緊急対策決定後のおよそロクでもない状況において、ここでブロッキングありきの検討が行われる様子がなさそうなのはかろうじて評価できる。(その運営について(案)(pdf)を見ると、検討会議が原則公開となっているのは当たり前として、海賊版サイトの個別名称などが非公開扱いにされている。もはや知財本部・事務局は資料の整合性を取ることもできなくなっているのだろうが、サイト名指しの緊急対策は一体何だったのか。)

 6月22日の主な論点(案)(pdf)には、検討のスコープとして、「①正規版流通の更なる拡大によるコンテンツ視聴環境の整備」、「② 現行法令下での既存の海賊版対策の取組状況の検証及び実効性評価」、「③ 特に悪質な海賊版サイトに対する権利行使を可能とする法制度整備のあり方」といった項目があげられているが、これらは全て緊急対策の決定前に検討すべきだったものであり、このような検討もしない儘になぜブロッキングを要請するネット検閲緊急対策が決定できたのか本当に理解不能である。

 6月26日に開催されていた第2回も、7月18日に開催される予定の第3回も(開催案内参照)、正規版流通と海賊版対策の現状について報告を受ける内容であり、この時点で政策の方向性が打ち出されるということはなさそうである。しかし、6月22日のスケジュールイメージ(案)(pdf)によると、9月には中間取りまとめ案のパブリックコメントを取る予定になっており、政府は非常な急ピッチで検討を進めるつもりと見え、著作権ブロッキングありきの検討が行われる恐れもあり、引き続き注視して行く必要があると思っている。

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2018年4月22日 (日)

第393回:著作権保護期間延長を含むTPP11協定関連法改正案他

 著作権ブロッキングの問題を先に取り上げたが、今回は第390回の続きで今国会に提出されている知的財産法改正案のことである。

(1)TPP11協定関連法改正案
 先月、3月27日に、11カ国でのTPP協定(正式名称は「環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定」)の妥結に伴い、TPP11協定関連法改正案が閣議決定され、国会に提出されている。(TPP等政府対策本部のHP概要(pdf)要綱(pdf)法律案・理由(pdf)新旧対照表(pdf)参照条文(pdf)参照。)

 概要(pdf)の別紙に、主な改正内容として、

○TPP整備法のうち、現状未施行となっている以下の10本の法律の改正規定について、施行期日を環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(TPP11協定)の発効日に改正する(TPP整備法附則第1条)

①関税暫定措置法(※1)
②経済上の連携に関する日本国とオーストラリアとの間の協定に基づく申告原産品に係る情報の提供等に関する法律
③著作権法(※2)
④特許法(※2)
⑤商標法
⑥医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律
⑦私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律
⑧畜産物の価格安定に関する法律
⑨砂糖及びでん粉の価格調整に関する法律
⑩独立行政法人農畜産業振興機構法

※1 牛肉の関税緊急措置の廃止に係る規定の施行期日は、TPP12協定の発効日のままとする(TPP11協定の発効時点では、当該措置は存続)(TPP整備法第4条、第4条の2(新設)及び附則第1条)
※2 TPP11協定上の凍結項目(「著作物等の保護期間の延長」、「技術的保護手段」、「衛星・ケーブル信号の保護」及び「審査遅延に基づく特許権の存続期間の延長」)を含む(TPP整備法附則第1条)
*なお、TPP12協定を引用した箇所については、TPP11協定に対応できるよう規定を整備する。

と書かれているが、この「※2」に書かれている通り、この法改正案は、TPP11協定において凍結されている著作物等の保護期間の延長などの知財関連項目に対応する法改正の施行日を、元の12カ国でのTPP協定ではなく、TPP11協定の発効日にする内容になっている。

 条文上は、未施行の元のTPP12協定のための法律(正式名称は「環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律」)を法改正するという形を取り、附則の第1条で以下のように著作権法などの改正が含まれる全体の施行日をTPP11協定の発効日に変えている。(下線部が追加部分。)

第一条 この法律は、環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定環太平洋パートナーシップ協定が日本国について効力を生ずる日(第三号において「発効日」という。)から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。
 附則第九条の規定 公布の日
 第三条中商標法第二十六条第三項第一号の改正規定及び第十条の規定 公布の日から起算して二月を超えない範囲内において政令で定める日
二の二 附則第十八条の規定畜産経営の安定に関する法律及び独立行政法人農畜産業振興機構法の一部を改正する法律(平成二十九年法律第六十号) 附則第一条第二号に掲げる規定の施行の日
 第四条中関税暫定措置法別表第一の三第〇四〇四・一〇号の改正規定(「九九円」の下に「(発効日の前日以後に輸入されるものにあつては、三五%及び一キログラムにつき一二○円)」を加える部分に限る。)及び附則第三条第一項の規定 発効日の前日
 附則第十九条の規定 環太平洋パートナーシップ協定が日本国について効力を生ずる日の前日
 第四条の二の規定及び附則第三条第三項の規定 環太平洋パートナーシップ協定が日本国について効力を生ずる日

 このように、この法改正案は、凍結項目とされた著作権の保護期間延長の施行までTPP11協定の発効で行おうとする内容のものとなっているのだが(凍結項目については第384回参照)、12カ国の全GDPの内85%を占める6カ国が国内手続きを完了しない限り発効せず、アメリカが脱退した時点で発効は絶望的となった元のTPP12協定と異なり、TPP11協定は、GDPにかかわらず6カ国の国内手続きの完了で済み、発効のハードルが相当下げられていることを考えると、凍結項目まで含めたこのような関連法改正案の作りは卑劣かつ姑息なものと言わざるを得ない。

 また、条約でわざわざ凍結項目とされた部分についてまで国内法を改正しようとすることは国際的に自ら墓穴を掘る最大級の愚行と言っても過言ではないが、もはや今の日本の政府与党にまともな判断力は全く期待できないのだろう。今現在国会が混乱しており、条約や法改正案の審議の目処が立たない状況なのは良いことである。このままこのTPP11協定の批准も関連法案の可決もされないことを私は心から願っている。

第386回で書いた通り、著作権保護期間延長を含む日欧EPAに合わせて法改正案を出して来るのだろうと思っていたが、私の見通しは甘かった。)

(2)特許法等の改正案
 後は、第390回で取り上げた不正競争防止法等の改正案(経産省のHP概要1(pdf)概要2(pdf)参考資料(pdf)要綱(pdf)法律案・理由(pdf)新旧対照表(pdf)参照条文(pdf)参照)には、特許法なども含まれている。

 この概要1(pdf)に書かれている特許法等の一部改正の項目に改正条文の番号を追加すると以下のようになる。

①これまで一部の中小企業が対象だった特許料等の軽減措置を、全ての中小企業に拡充する。(特許法第109条の2)
②裁判所が書類提出命令を出すに際して非公開(インカメラ)で書類の必要性を判断できる手続を創設するとともに、技術専門家(専門委員)がインカメラ手続に関与できるようにする。(特許法第105条)
③判定制度の関係書類に営業秘密が記載されている場合、その閲覧を制限する。(特許法第186条、意匠法第63条、商標法第72条)
④特許出願等における新規性喪失の例外期間を6月から1年に延長する。(特許法第30条、意匠法第4条)
⑤特許料等のクレジットカード払いを認める。(工業所有権に関する手続等の特例に関する法律第15条の3)
⑥最初に意匠出願した国への出願日を他の国でも出願日とすることができる制度について、必要書類のオンラインでの交換を認める。(意匠法第15条、第60条の10)
⑦商標出願手続を適正化する。(商標法第10条)

 基本的には地道な制度ユーザーのための改正でそれほど問題がある訳ではないので細かな説明は省略するが、第390回で書いたように不正競争防止法の改正案はやはり問題が多いと思っている。

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2018年4月15日 (日)

第392回:政府与党による海賊版対策とは名ばかりのネット検閲推進策の決定

 報道されていた通り、先週4月13日に知的財産推進本部・犯罪対策閣僚会議の合同会合が開かれ、インターネット上の海賊版サイトに対する緊急対策(pdf)概要(pdf)も参照)とインターネット上の海賊版対策に関する進め方について(pdf)が決定された。この著作権ブロッキングを求める政府の緊急対策と対策の進め方は、既に様々なところで批判されているが、徹頭徹尾その理屈は良く分からず、到底まともな議論に耐え得るものではない。

 まず、緊急対策の第1ページに「昨今運営管理者の特定が困難であり、侵害コンテンツの削除要請すらできない海賊版サイト」云々と書かれているが、運営管理者の特定が本当に民事救済におけるボトルネックとなっているのであれば、著作権法やプロバイダー責任制限法をどのようにすればこのような問題を解消できるかという話をすればいいだけである。また、刑事の話をするならば、名指しで挙げられているサイトはリーチサイトですらなく、これらのサイトの提供・運営は明らかに違法なので、刑事訴追できない理由もない。それなりの規模の違法サイトを運営できるだけのサーバーを置ける国で著作権法やプロバイダー責任制限法に相当する法律が整備されていないということも考え難く、サーバーが外国にあることやクラウドサービスであることなどもサイト運営者が免責される理由になる訳がない。必要であれば、その国の弁護士を使って民事裁判をすることができるだろうし、刑事における捜査協力もできるだろう。(前回も書いたが、政府与党にブロッキングを求める前に権利者としてこれらのサイトに対してどこまで権利行使をしようとしたのか甚だ疑わしいと私は思っている。)

 第1~2、4~6ページに、特に悪質な海賊版サイトのブロッキングに関する考え方の整理が書かれているが、ここで書かれていることも法的整理としてはほとんど与太話の域を出ない。今までの官民の整理で著作権ブロッキングが認められる余地がないのは前回も書いた通りである。これでブロッキングをしろと言われてもインターネットサービスプロバイダー(ISP)としては対応に困るだろう。(これも前回の繰り返しになるが、緊急避難かどうかは個々の事案に応じて個別具体的に判断されるべきものであって、産業界、行政、立法の懈怠を誤魔化すために緊急避難が使われることは断じてあってはならないことである。)

 第2ページで結論のように、「当面の対応としては、法制度整備が行われるまでの間の臨時的かつ緊急的な措置として、下記類型の考え方に基づき、民間事業者による自主的な取組として、『漫画村』、『Anitube』、『Miomio』の3サイト及びこれと同一とみなされるサイトに限定してブロッキングを行うことが適当」、「ブロッキングの実施は、以下類型に沿って、あくまで民間事業者による自主的な取組として、民間主導による適切な管理体制の下で実施されることが必要」、「新たに特に悪質な海賊版サイトが登場した際に、速やかに以下類型の考え方に基づいたブロッキングを実施するため知的財産戦略本部の下で、関係事業者、有識者を交えた協議体を設置し、早急に必要とされる体制整備を行う」と書かれているが、民間の自主的な取組という言葉で僅かに取り繕っているものの、政府がどのような基準で選んだのかすら良く分からない特定サイトを名指ししてブロッキングを求めること自体異常極まることという他ない。これがネット検閲命令でなくて何だというのか。これが通るなら、政府与党の指導であらゆるサイトはブロッキングされる危険に晒されることになるし、今後確実に政府与党は自分たちにとって都合の悪い情報を載せたサイトを隠すためにこのようなネット検閲を濫用して来るだろう。(毎日新聞の記事などによると、政府はブロッキングの要請を民間の自主的な取組を促すという言葉に急遽差し替えたらしいが、私には質の悪い言葉遊びとしか思えない。ここでは、単にこれらの3サイトがブロッキングされて然るべきかどうかということが問題なのではない。言うまでもないことだが、さらに念のために書いておくと、一旦可能となったら、このようなネット検閲は著作権の問題に留まらず、あらゆることに拡大解釈されて適用されて行くことになるだろう。)

(なお、そもそも緊急避難は被害の多寡だけの問題ではないが、第4ページの注釈には、「サイトへの訪問者が、『漫画村』では、約1億6000万人(96%が日本からのアクセス)」等とコンテンツ業界がロビー活動の際に使ったと思われる数字がそのまま垂れ流されているが、単純計算で日本に約1億5000万人の利用者がいることになるになるなど、政府としてこのペーパーを書くにあたり内容をまともに検証したとは到底思えない。)

 第2ページで、「インターネット上の海賊版に効果的に対応していくためには、著作権者等による侵害コンテンツの削除要請等の地道な取組や広告出稿抑止等侵害者の資金源を断つための取組のほか、そもそもインターネット上の海賊版の流通・閲覧防止のため、学校関係者、事業者、関係団体等と連携しながら、学校、地域における著作権教育に取り組んでいく必要があり」と書かれているが、本来であれば、この点で今まで何をどうしていたのかということこそ問われるべきであるのに、この部分は最後に取ってつけた様に書かれており、その具体的な内容が全くない。

 次に、インターネット上の海賊版対策に関する進め方について(pdf)だが、上の緊急対策で書かれたネット検閲命令に加えて、こちらでは、次期通常国会を目指す法改正事項として、別紙に以下のような3つの項目が書かれている。

1.海賊版サイトへのブロッキングに関する法制度整備
○一定の要件の下でISP事業者に対してブロッキングの請求を行うことができる規定の整備等、海賊版サイトへのブロッキングが実効性のあるものとするための制度の整備。なお、法制度整備にあたっては、「2.」の措置を踏まえて、リーチサイトの取扱いについても併せて検討を行う。
[→ 対象とするサイト選定の基準、最適な手続手法(司法手続又は行政手続)等が主な論点。]

2.リーチサイト関係の法制度整備
○リーチサイトを通じた侵害コンテンツへの誘導行為について著作権法上「みなし侵害行為」等として法的措置が可能である事を明確にするための手当。
[→ 差止請求の対象として特に対応する必要性が高い行為類型の定義が主な論点。]

3.その他論点となり得るもの
○ 静止画(書籍)のダウンロードの違法化等

 要するに、これは、行政指導によって無理矢理なし崩しの内に入れさせようとしているネット検閲を立法によって合法化しようとするものであり、ここで書かれていることはさらに危険である。

 上の緊急対策ではあくまで民間主導と言いながら、こちらでは法制化によるブロッキングの強制を狙っているなど、児童ポルノ対策においてすら喧々諤々の議論の末にブロッキングの法制化は見送られ民間の自主的な取組としてされていることを忘れているなど、ブロッキングの基準を論点にしており、良く分からない基準で3サイトを選びブロッキングを求めていることを政府自ら認めているなど、ここでの論理破綻は覆い隠すべくもない。

 また、この対策の進め方では、緊急対策では具体的内容がないながら一応書かれていた「削除要請等」や「広告出稿抑止等」の本来取り組むべき地道な海賊版対策の言及すらなくなり、やはりネット検閲に繋がるものでしかない画像のダウンロード違法化(今の著作権法の構成で静止画のダウンロード違法化を追加すると刑事罰付与(犯罪化)も同時にされることになるのではないか)を検討項目として挙げるなど、著作権侵害にかこつけて、海賊版対策そっちのけで、とにかく国民の情報の自由を圧殺してネット検閲を実現したいとする政府与党の犯罪宣言に等しいものとなっている。

 この政府のペーパーの内容が海賊版対策に全くならないことを私は確信しているが、もはや海賊版対策とは名ばかりで、ネット検閲こそが今の政府与党の真の狙いなのだろうと私は見る。曲がりなりにも表現の自由や検閲の禁止、通信の秘密の保護などの情報の自由に関する国民の権利を含む民主主義的な憲法を擁し、法治国家を唱える日本政府において、最初から最後までネット検閲を実現したいということしか書かれていない方針ペーパーが決定されたことを私は極めて深く憂慮する。

 既に報道等もされているが、先週から今週にかけての、政府の著作権ブロッキング推進方針に対する団体などの声明等へのリンクを最後に張っておくが、まず、反対・懸念を表明するものとしては、

  • インターネットユーザー協会と主婦連合会の共同声明(主婦連サイトの共同声明(内容は同じ))(4月11日)
  • モバイルコンテンツ審査・運用監視機構の意見(pdf)(4月11日)
  • インターネットコンテンツセーフティ協会の声明(4月11日)
  • 情報法制研究所の緊急提言(pdf)(4月11日)
  • 日本インターネットプロバイダー協会の声明(pdf)(4月12日)
  • 日本ネットワークインフォメーションセンターの見解(4月12日)
  • 安心ネットづくり推進協議会の意見書(pdf)(4月12日)
  • Internet Society日本支部の意見表明(4月12日)
  • 全国地域婦人団体連絡協議会の意見書(pdf)(4月12日)

があり、歓迎・賛成するものとしては、

  • 集英社の緊急声明(4月13日)
  • 講談社の緊急声明(pdf)(4月13日)
  • KADOKAWAの緊急声明(pdf)(4月13日)
  • 出版広報センターの声明(pdf)(4月13日)
  • コンテンツ海外流通促進機構の声明(4月13日)
  • 日本映像ソフト協会の声明(pdf)(4月13日)
  • 日本映画製作者連盟の声明(4月13日)
  • コミック出版社の会の緊急声明(pdf)(4月20日)
  • 日本弁理士会の声明(4月20日)

がある。

(2018年4月22日夜の追記:コミック出版社の会の緊急声明へのリンクを追加した。)

(2018年4月23日夜の追記:案の取れた資料が知財本部のHPに掲載されていたのでリンクを入れ替え、「(なお、リンク先の資料は案がついたままだが、そのまま決定されて案が取れている。)」という括弧書きを削除し、日本弁理士会の声明へのリンクを追加した。また、具体的にいつ何をどうするのかは不明だが、今日4月23日にNTTグループが著作権ブロッキングを実施する予定と公表したので、ここにリンクを張っておく。)

(2018年4月30日夜の追記:情報法制研究所が、4月27日に、NTTグループのブロッキング実施予定方針について懸念を示す意見(pdf)を出したので、ここにリンクを張っておく。)

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2018年4月 8日 (日)

第391回:政府与党の行政指導による著作権ブロッキングという最低最悪のネット検閲へと突き進む日本

 先週毎日新聞の記事で、政府が著作権ブロッキングを要請するということが報道された。この記事は、月内に犯罪対策閣僚会議を開催して決定するということまで具体的に書いており、政府がこのような方針で動いていることは間違いないのだろう。

 既にブロッキングの問題については、heatwave_p2p氏がP2Pとかその辺のお話Rで「滅びゆくのはマンガ文化か、出版社か、それとも表現の自由か」という長文の記事を書かれており、また、弁護士ドットコムがその記事で東大の宍戸教授の批判を取り上げており、そう追加で書くこともないのだが、ここでももう一度その問題点を指摘しておきたい。

 このような動きの背景には無論権利者団体のロビー活動もあるだろうが、海賊版サイトの問題は今に始まった話ではないので、この期に及んで著作権ブロッキングが導入されようとしていることは不合理極まるとしか言いようがない。2016年と2017年の知財計画でもサイトブロッキングに対する言及はあるが(第363回及び第378回参照)、政府として何をどのように検討して今回の方針を採用するに至ったのかは全く不透明である。

 今年2月16日の第3回知的財産戦略本部・検証・評価・企画委員会・コンテンツ分野会合(議事次第参照)で、インターネット上の海賊版対策について議論がされているが、この会合だけ非公開とされ、具体的に何がどう議論されたのかさっぱり分からない。(非公開にしたということはそれだけ政府として議論の内容に疚しいところがあったのだろう。)

 この知財本部の会合は資料だけは見られるが、知財事務局作成の資料1(pdf)の第5ページに

サイトブロッキング導入可能性の検討
・対象サイトへの対策として、代替手段がなく、かつ、適合した手段といえるか
・財産権侵害の特性を考慮した運用体制の在り方
(人格権侵害との差異(判断主体、費用負担))
・どのような制度上の対応が考えられるか
(諸外国においては、42カ国において導入され、著作権法等の規定に基づき、行政命令、または、裁判所命令により運用している(但し、今後、詳細な運用状況の把握が必要))
※なお、次世代知財システム検討委員会報告書(平成28年4月)において、ネットの基本理念と相容れない点、表現の自由との関係、無効化される術があるという実効性の限界のほか、運用体制、名誉棄損・プライバシー侵害など他の法益侵害とのバランスなどが課題として指摘されている。

と書かれ、第7ページに、諸外国におけるサイトブロッキングの運用状況として「2017年9月現在、世界42カ国で導入されている」と一覧表が載せられているが、この表は裁判所の差し止め命令としてのサイトブロッキングと行政機関によるサイトブロッキングをごちゃ混ぜにして、欧州を中心として裁判所によりインターネットサービスプロバイダー(ISP)に対して差し止め命令が出されている国があるからと言って行政機関によるサイトブロッキングまで正当化されるような悪辣な印象操作を含むものになっている。

 同ページにも書かれている、2001年5月22日の情報社会における著作権及び著作隣接権のある観点の調和に関する欧州議会及び理事会指令第2001/29号の第8条第3項は、

Member States shall ensure that rightholders are in a position to apply for an injunction against intermediaries whose services are used by a third party to infringe a copyright or related right.

加盟国は、第三者により著作権又は著作隣接権を侵害するためにそのサービスが使われる仲介者への差し止めを求めることを権利者に可能とすることを確保しなければならない。

という、裁判による仲介者に対する差し止めを可能とするだけのものであって、サイトブロッキングをまるごと合法化するようなものでは全くない。これは、日本でも著作権の間接侵害とプロバイダー責任制限法で対応可能な範囲を規定しているに過ぎない。(日本の間接侵害とプロバイダー責任制限法にも問題はあると思っているが、ここでは直接関係ないのでひとまずおく。)

 この点に関しては同じ会合に出されている文化庁国際課の資料7(pdf)の方が、サイトブロッキングについて、裁判所による差し止め命令を可能としている国があるが、効果について権利者、通信事業者双方から疑念が示されているということを書いているだけましである。

 知財本部の印象操作で使われている42カ国の内28カ国が欧州域内の国だが、これらの国では、実際には、第379回で書いたとおり、全体として見れば、欧州司法裁判所が「パイレートベイ」のようなサイトの提供・管理が著作権侵害であり得ると判断を示しているに留まり、本当に各国で差し止めとしてのサイトブロッキングが認められるかどうかすらまだ分からず、オーストリアではいたちごっこが続きその効果は疑問とせざるを得ない結果に終わっており、ドイツの最高裁は、権利者はISPに対してサイトブロッキングを求める前に、まずサイトを自ら直接提供している者に対して合理的な努力に取り組むべきであり、このようなことに失敗した場合に限り差し止めとしてのサイトブロッキングは考慮され得るという判断を既に示しており、ドイツで実質的に著作権侵害に対する差し止めとしてのサイトブロッキングが認められたケースはないというのが欧州域内における現在の状況である。

 なお、イギリスやフランスでも裁判所からサイトブロッキング命令が出されているのはその通りだが、IPKatのブログ記事やNEXTINPACTのネット記事(フランス語)にも書かれているように、これらも、あくまで公開される裁判の場で各法益の比較衡量の結果著作権侵害に対する差し止め命令として出されているものであり、しかもこれらの国でも具体的な効果が上がっているという話は全く聞かず、その効果はやはり疑問である。(サイトブロッキングをすればそのサイトに対するアクセスが減ること自体は当たり前のことに過ぎない。本当に問題とするべきは海賊版対策としての効果であるが、この点でサイトブロッキングが本当に効果を上げたという話を私は全く聞いたことがない。)

 カナダでも著作権サイトブロッキングの提案があるが、これには表現の自由から見て問題があるとの国連特別報告官の意見が出されている(P2Pとかその辺のお話Rの別記事参照)。

 要するに、世界的に見て、中国のようなイデオロギー・専制国家を別とすれば、日本政府が良く例として持ち出す欧米先進国で、政府与党の不透明な行政指導による著作権ブロッキングを実施している例は皆無である。上の42カ国云々というのは知財本部の今年のパブコメで日本国際映画著作権協会が同様の内容の意見を出していることからも分かるように(知財本部のパブコメ結果法人・団体からの意見(pdf)参照)、アメリカ映画協会(MPA)の主張をほぼそのまま取り入れたものだろうが、本当にこのようなコンテンツ業界ロビーの言うが儘に今の方針で著作権ブロッキングを導入したら日本はまた非民主主義的な国であることを自ら世界に発信して大いに恥を晒すことになるだろう。

 また、上の弁護士ドットコムの記事で東大の宍戸教授が批判している通り、日本国内の法的整理としても、著作権ブロッキングに緊急避難を持ち出すのが無理筋であるのは間違いない。

 児童ポルノブロッキングの際の検討の経緯は、上の2月の知財事務局作成の資料1(pdf)の第9ページに書かれているが、総務省の利用者視点を踏まえたICTサービスに係る諸問題に関する研究会の2010年5月18日の第6回会合で検討されており、その議事要旨(pdf)に以下のように書かれている取りまとめで、児童ポルノブロッキングの著作権ブロッキングへの濫用を戒めている。

<1  法的整理について>
 ブロッキングは、電気通信事業法第4条に規定する通信の秘密を形式的には侵害する行為であるが、ブロッキングは、①児童の権利等を侵害する児童ポルノ画像がアップロードされた状況において、②削除や検挙など他の方法では児童の権利等を十分保護することができず、③その手法及び運用が正当な表現行為を不当に侵害するものでなく、④当該児童ポルノ画像の児童の権利等への侵害が著しい場合には、その違法性は阻却されるものと考えられる。
 ただ、ブロッキングは、通信の秘密や表現の自由への影響が極めて大きいことや、技術的にはあらゆるコンテンツの閲覧を利用者の意思にかかわらず一律防止可能とするものであり、ブロッキングが児童ポルノ以外の違法・有害情報に決して濫用されないようにすべきであると考えられる。
 また、ブロッキングを実施するに当たっては、このほかにも、取り組むべき重要な課題があると考えられる。

<2  リスト作成・管理の在り方>
 アドレスリストにアドレスが掲載されると、インターネット利用者は当該画像等にアクセスすることができなくなる。また、インターネット利用者がインターネットを利用して自己の思想や信条などを表現する場合にも、アドレスリストに掲載されると、その人の表現行為が事実上阻害されることになる。このように、アドレスリストに掲載されるか否かは国民のインターネット利用に直接関係するものであり、アドレスリストは、透明かつ公正な基準によって作成されることが適当であると整理される。
 そして、ブロッキングの実施は、民間事業者による自主的な取組であり、アドレスリストの作成・管理は、「民間主導」による適切な管理体制の下で実施されることが必要である。

<3  技術的課題の検証>
 ブロッキングは我が国において前例のない取組みであり、実施に当たっては、オーバーブロッキングやネットワークへの負荷など、様々な問題が生じるおそれもある。従って、法的・技術的な問題を回避するためには、ブロッキングの手法に関する技術的な検証が必要である。ブロッキングを実施するISP側においては、実証実験や仮運用を行い、表現の自由への影響やネットワークへの負荷等を検証する必要があると思われる。また、実際にインターネットを利用する顧客への対応の在り方についても検討が必要と思われる。

 著作権ブロッキングについては、上の弁護士ドットコムで引用されている、民間側の安心ネットづくり促進協議会の法的問題検討ワーキンググループの当時の報告書(pdf)でも、

著作権侵害との関係では、著作権という財産に対する現在の危難が認められる可能性はあるものの、児童ポルノと同様に当該サイトを閲覧され得る状態に置かれることによって直ちに重大かつ深刻な人格権侵害の蓋然性を生じるとは言い難いこと、補充性との関係でも、基本的に削除(差止め請求)や検挙の可能性があり、削除までの間に生じる損害も損害賠償によって填補可能であること、法益権衡の要件との関係でも財産権であり被害回復の可能性のある著作権を一度インターネット上で流通すれば被害回復が不可能となる児童の権利等と同様に考えることはできないことなどから、本構成を応用することは不可能である。

とされており、上の今年2月の知財本部の会合の森弁護士の資料3(pdf)や木下准教授の資料4(pdf)でも同様の懸念が示されている。

 刑法第37条の緊急避難についても幾つかの学説があるものの、条文上、「現在の危難」「を避けるため、」「やむを得ずにした行為」(補充性)であって、「生じた害が避けようとした害の程度を超えなかった場合」(法益権衡)に成立するものであり、今までの官民の法的整理において、特に補充性と法益権衡の観点から緊急避難としての著作権サイトブロッキングが認められる余地はないのである。そもそも緊急避難かどうかは個々の事案に応じて個別具体的に判断されるべきものであって、犯罪対策閣僚会議のような不透明な政府会議で緊急避難かどうかを決定してブロッキングを要請(この場合の要請はほぼ政府の命令に等しい)するなど論外と言う他ない。(私自身はインターネットコンテンツセーフティ協会による今の児童ポルノブロッキングですら不透明であり、問題があると思っているが。また、毎日新聞の記事によると、ブロッキング要請予定の3つのサイトの内2つは他国で行政指導や捜査当局の摘発を受けたとしているが、日本国内からアクセスすると閲覧できる状況が続いているのでは、どこまでまともに権利行使をしたか良く分からず、残りの1つのサイトに至ってはその言及すらないことからすると権利行使以前にいきなりサイトブロッキングを求めているのではないかという疑念が拭えない。このような状況では、これが欧州域内の話であるとして、訴えたとしても裁判所から差し止めとしてのサイトブロッキング命令すら得られるかどうか怪しいと私は見ている。)

 このように著作権ブロッキングと称して不透明かつ不合理極まるネット検閲を導入することは日本における憲法と民主主義に対する愚弄に他ならない。政府与党としては今月の犯罪対策閣僚会議で著作権ブロッキング要請という名のネット検閲命令を出すつもりのようだが、これは断じて許し難い暴挙である。

 最後に念のため書いておくと、私は決して海賊版サイトを守るべきなどということを言っている訳ではない。海賊版サイトの提供・運営はサーバーの場所に関わらずどこの国であろうが今でも著作権侵害で違法なのは間違いないので、現行法で民事・刑事の両方から地道に速やかに対処するべきであって、それ以上に良い対策はなく、ブロッキングのようなネット検閲にしかならない最低最悪の手段を取るべきではないと思っているだけである。本来であれば表現の自由や通信の秘密に最も気を使うべきコンテンツ業界が政府与党に対するロビーでブロッキングの導入に安易に乗ったことは行く行く自分たち自身の首を締めることにも繋がるだろう。

(2018年4月9日夜の追記:幾つか誤記を直した(「今月の」→「月内に」等)。)

(2018年4月10日夜の追記:1箇所誤記を直した(「とう」→「という」)。)

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2018年3月 4日 (日)

第389回:閣議決定された著作権法改正案の条文(リバースエンジニアリング、所在検索・情報解析サービスのための権利制限の拡充他)

 先月から各知財法の改正案の閣議決定がされ、その条文が公開されているので、順番に見て行きたい。まずは2月23日に文科省のHPで公開された著作権法改正案(概要(pdf)要綱(pdf)案文・理由(pdf)新旧対照表(pdf)参照条文(pdf))についてである。

 このうち、概要(pdf)には、以下のような改正の概要が書かれている。

①デジタル化・ネットワーク化の進展に対応した柔軟な権利制限規定の整備(第30条の4、第47条の4、第47条の5等関係)
・著作物の市場に悪影響を及ぼさないビッグデータを活用したサービス等※のための著作物の利用について、許諾なく行えるようにする。
・イノベーションの創出を促進するため、情報通信技術の進展に伴い将来新たな著作物の利用方法が生まれた場合にも柔軟に対応できるよう、ある程度抽象的に定めた規定を整備する。
(※)例えば現在許諾が必要な可能性がある以下のような行為が、無許諾で利用可能となる。
○所在検索サービス(例:書籍情報の検索)
→著作物の所在(書籍に関する各種情報)を検索し、その結果と共に著作物の一部分を表示する。
○情報解析サービス(例:論文の盗用の検証)
→大量の論文データを収集し、学生の論文と照合して盗用がないかチェックし、盗用箇所の原典の一部分を表示する。

②教育の情報化に対応した権利制限規定等の整備(第35条等関係)
・ICTの活用により教育の質の向上等を図るため、学校等の授業や予習・復習用に、教師が他人の著作物を用いて作成した教材をネットワークを通じて生徒の端末に送信する行為等について、許諾なく行えるようにする。
【現在】利用の都度、個々の権利者の許諾とライセンス料の支払が必要
【改正後】ワンストップの補償金支払のみ(権利者の許諾不要)

③障害者の情報アクセス機会の充実に係る権利制限規定の整備(第37条関係)
・マラケシュ条約※の締結に向けて、現在視覚障害者等が対象となっている規定を見直し、肢体不自由等により書籍を持てない者のために録音図書の作成等を許諾なく行えるようにする。
(※)視覚障害者や判読に障害のある者の著作物の利用機会を促進するための条約
【現在】視覚障害者や発達障害等で著作物を視覚的に認識できない者が対象
【改正後】肢体不自由等を含め、障害によって書籍を読むことが困難な者が広く対象

④アーカイブの利活用促進に関する権利制限規定の整備等(第31条、第47条、第67条等関係)
・美術館等の展示作品の解説・紹介用資料をデジタル方式で作成し、タブレット端末等で閲覧可能にすること等を許諾なく行えるようにする。
・国及び地方公共団体等が裁定制度※を利用する際、補償金の供託を不要とする。
(※)著作権者不明等の場合において、文化庁長官の裁定を受け、補償金を供託することで、著作物を利用することができる制度
【現在】裁定制度により著作物等を利用する場合、事前に補償金の供託が必要
【改正後】国及び地方公共団体等については、補償金の供託は不要(権利者が現れた後に補償金を支払う)
・国会図書館による外国の図書館への絶版等資料の送付を許諾無く行えるようにする。
デジタル・ネットワーク技術の進展により、新たに生まれる様々な著作物の利用ニーズに的確に対応
するため、著作権者の許諾を受ける必要がある行為の範囲を見直し、情報関連産業、教育、障害者、
美術館等におけるアーカイブの利活用に係る著作物の利用をより円滑に行えるようにする。
【現在】小冊子(紙媒体)への掲載は許諾不要。タブレット等(デジタル媒体)での利用は許諾が必要。
【改正後】小冊子、タブレット等のいずれも場合も許諾不要。

施行期日 平成31年1月1日 ②については公布の日から起算して3年を超えない範囲内において政令で定める日。

 この著作権法改正案は、第375回で取り上げた去年の文化庁の法制・基本問題小委員会の中間まとめに対応するもので(内容として違いはないが、最終的な報告書としては去年4月の文化審議会著作権分科会報告書(pdf)にまとめられている)、基本的に権利制限の拡充をするものであり、その限りにおいて問題はない。

 上の改正事項順に条文を見て行くと、「①デジタル化・ネットワーク化の進展に対応した柔軟な権利制限規定の整備」であげられている各改正条項の第30条の4、第47条の4、第47条の5は以下のようなものとなっている。

(著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない利用)
第三十条の四
 著作物は、次に掲げる場合その他の当該著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させることを目的としない場合には、その必要と認められる限度において、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。
 著作物の録音、録画その他の利用に係る技術の開発又は実用化のための試験の用に供する場合
 情報解析(多数の著作物その他の大量の情報から、当該情報を構成する言語、音、影像その他の要素に係る情報を抽出し、比較、分類その他の解析を行うことをいう。第四十七条の五第一項第二号において同じ。)の用に供する場合
 前二号に掲げる場合のほか、著作物の表現についての人の知覚による認識を伴うことなく当該著作物を電子計算機による情報処理の過程における利用その他の利用(プログラムの著作物にあつては、当該著作物の電子計算機における実行を除く。)に供する場合

(電子計算機における著作物の利用に付随する利用等)
第四十七条の四
 電子計算機における利用(情報通信の技術を利用する方法による利用を含む。以下この条において同じ。)に供される著作物は、次に掲げる場合その他これらと同様に当該著作物の電子計算機における利用を円滑又は効率的に行うために当該電子計算機における利用に付随する利用に供することを目的とする場合には、その必要と認められる限度において、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。
 電子計算機において、著作物を当該著作物の複製物を用いて利用する場合又は無線通信若しくは有線電気通信の送信がされる著作物を当該送信を受信して利用する場合において、これらの利用のための当該電子計算機による情報処理の過程において、当該情報処理を円滑又は効率的に行うために当該著作物を当該電子計算機の記録媒体に記録するとき。
 自動公衆送信装置を他人の自動公衆送信の用に供することを業として行う者が、当該他人の自動公衆送信の遅滞若しくは障害を防止し、又は送信可能化された著作物の自動公衆送信を中継するための送信を効率的に行うために、これらの自動公衆送信のために送信可能化された著作物を記録媒体に記録する場合
 情報通信の技術を利用する方法により情報を提供する場合において、当該提供を円滑又は効率的に行うための準備に必要な電子計算機による情報処理を行うことを目的として記録媒体への記録又は翻案を行うとき。

 電子計算機における利用に供される著作物は、次に掲げる場合その他これらと同様に当該著作物の電子計算機における利用を行うことができる状態を維持し、又は当該状態に回復することを目的とする場合には、その必要と認められる限度において、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。
 記録媒体を内蔵する機器の保守又は修理を行うために当該機器に内蔵する記録媒体(以下この号及び次号において「内蔵記録媒体」という。)に記録されている著作物を当該内蔵記録媒体以外の記録媒体に一時的に記録し、及び当該保守又は修理の後に、当該内蔵記録媒体に記録する場合
 記録媒体を内蔵する機器をこれと同様の機能を有する機器と交換するためにその内蔵記録媒体に記録されている著作物を当該内蔵記録媒体以外の記録媒体に一時的に記録し、及び当該同様の機能を有する機器の内蔵記録媒体に記録する場合
 自動公衆送信装置を他人の自動公衆送信の用に供することを業として行う者が、当該自動公衆送信装置により送信可能化された著作物の複製物が滅失し、又は毀損した場合の復旧の用に供するために当該著作物を記録媒体に記録するとき。

(電子計算機による情報処理及びその結果の提供に付随する軽微利用等)
第四十七条の五
 電子計算機を用いた情報処理により新たな知見又は情報を創出することによつて著作物の利用の促進に資する次の各号に掲げる行為を行う者(当該行為の一部を行う者を含み、当該行為を政令で定める基準に従つて行う者に限る。)は、公衆への提供又は提示(送信可能化を含む。以下この条において同じ。)が行われた著作物(以下この条及び次条第二項第二号において「公衆提供提示著作物」という。)(公表された著作物又は送信可能化された著作物に限る。)について、当該各号に掲げる行為の目的上必要と認められる限度において、当該行為に付随して、いずれの方法によるかを問わず、利用(当該公衆提供提示著作物のうちその利用に供される部分の占める割合、その利用に供される部分の量、その利用に供される際の表示の精度その他の要素に照らし軽微なものに限る。以下この条において「軽微利用」という。)を行うことができる。ただし、当該公衆提供提示著作物に係る公衆への提供又は提示が著作権を侵害するものであること(国外で行われた公衆への提供又は提示にあつては、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものであること)を知りながら当該軽微利用を行う場合その他当該公衆提供提示著作物の種類及び用途並びに当該軽微利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。
 電子計算機を用いて、検索により求める情報(以下この号において「検索情報」という。)が記録された著作物の題号又は著作者名、送信可能化された検索情報に係る送信元識別符号(自動公衆送信の送信元を識別するための文字、番号、記号その他の符号をいう。)その他の検索情報の特定又は所在に関する情報を検索し、及びその結果を提供すること。
 電子計算機による情報解析を行い、及びその結果を提供すること。
 前二号に掲げるもののほか、電子計算機による情報処理により、新たな知見又は情報を創出し、及びその結果を提供する行為であつて、国民生活の利便性の向上に寄与するものとして政令で定めるもの

 前項各号に掲げる行為の準備を行う者(当該行為の準備のための情報の収集、整理及び提供を政令で定める基準に従つて行う者に限る。)は、公衆提供提示著作物について、同項の規定による軽微利用の準備のために必要と認められる限度において、複製若しくは公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。以下この項及び次条第二項第二号において同じ。)を行い、又はその複製物による頒布を行うことができる。ただし、当該公衆提供提示著作物の種類及び用途並びに当該複製又は頒布の部数及び当該複製、公衆送信又は頒布の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。

 この部分についてはかなり条文の整理が入っており、新旧の対比が分かりにくいので、ここでさらに簡単な対比表を作ると以下のようになる。

(新)第30条の4(思想感情非享受利用)
・第1項(非享受利用一般):新規
・・第1号(技術開発・試験):(旧)第30条の4
・・第2号(情報解析):(旧)第47条の7
・・第3号(情報処理他):新規

(新)第47条の4(電子計算機付随利用)
・第1項(円滑・効率的):新規
・・第1号(情報処理):(旧)第47条の8
・・第2号(自動公衆送信):(旧)第47条の5第1項第1号、第2項
・・第3号(情報提供):(旧)第47条の9
・第2項(状態維持・回復):新規
・・第1号(保守・修理):(旧)第47条の4第1項
・・第2号(交換):(旧)第47条の4第2項
・・第3号(復旧):(旧)第47条の5第1項第2号

(新)第47条の5(電子計算機軽微利用)
・第1項(軽微利用):新規
・・第1号(検索情報提供):(旧)第47条の6
・・第2号(解析情報提供):新規
・・第3号(国民生活利便性向上(政令)):新規
・第2項(準備):新規

 こうして見ると、情報処理関連の権利制限については、私はこれを本当の意味で柔軟な一般フェアユース条項であるとは評価しないが、思想又は感情の享受を目的としない利用、付随利用、軽微利用という3つの類型に整理し直され、それぞれ少しずつ一般化が図られていることが分かる。

 特に新しい点は、思想又は感情の享受を目的としない利用一般のための権利制限として第30条の4が作り直されている点であり、明示的には書かれていないが、中間まとめで権利制限の対象とするべきとされていたリバースエンジニアリングはここで読めると考えられる。

 そして、第47条の5第1項第1号の検索情報提供も、元の第47条の6から比べると、送信可能化された情報以外の情報も含むように少し広げられ、書籍情報の検索のような所在検索サービスが含まれるようになっており、その下の第2号に解析情報提供もあるので、論文の盗用の検証のような情報解析サービスも含まれると読める。中間まとめで権利制限の対象とすべきとされていた、外国人のための翻訳サービスは法改正条文としては入っていないが、第3号に政令で定めるものを対象とできるとあるので、政令で指定するつもりなのだろう。

 次に、「②教育の情報化に対応した権利制限規定等の整備」に関する第35条は以下のようになっている。(下線が追加部分。以下同じ。)

(学校その他の教育機関における複製等)
第三十五条
 学校その他の教育機関(営利を目的として設置されているものを除く。)において教育を担任する者及び授業を受ける者は、その授業の過程における使用利用に供することを目的とする場合には、必要その必要と認められる限度において、公表された著作物を複製する複製し、若しくは公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。以下この条において同じ。)を行い、又は公表された著作物であつて公衆送信されるものを受信装置を用いて公に伝達することができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びにその複製の部数及び当該複製の部数及び当該複製、公衆送信又は伝達の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。
 前項の規定により公衆送信を行う場合には、同項の教育機関を設置する者は、相当な額の補償金を著作権者に支払わなければならない。
(第3項:略)

 また、「③障害者の情報アクセス機会の充実に係る権利制限規定の整備」に関する第37条は以下のようになっている。

(視覚障害者等のための複製等)
第三十七条

(略)
3 視覚障害者その他視覚障害その他の障害により視覚による表現の認識に障害のあるが困難な者(以下この項及び第百二条第四項において「視覚障害者等」という。)の福祉に関する事業を行う者で政令で定めるものは、公表された著作物であつて、視覚によりその表現が認識される方式(視覚及び他の知覚により認識される方式を含む。)により公衆に提供され、又は提示されているもの(当該著作物以外の著作物で、当該著作物において複製されているものその他当該著作物と一体として公衆に提供され、又は提示されているものを含む。以下この項及び同条第四項において「視覚著作物」という。)について、専ら視覚障害者等で当該方式によつては当該視覚著作物を利用することが困難な者の用に供するために必要と認められる限度において、当該視覚著作物に係る文字を音声にすることその他当該視覚障害者等が利用するために必要な方式により、複製し、又は自動公衆送信(送信可能化を含む。)公衆送信を行うことができる。ただし、当該視覚著作物について、著作権者又はその許諾を得た者若しくは第七十九条の出版権の設定を受けた者若しくはその複製許諾若しくは公衆送信許諾を得た者により、当該方式による公衆への提供又は提示が行われている場合は、この限りでない。

 最後に、「④アーカイブの利活用促進に関する権利制限規定の整備等」に関する第31条、第47条、第67条は以下のようになっている。

(図書館等における複製等)
第三十一条

(略)
3 国立国会図書館は、絶版等資料に係る著作物について、図書館等又はこれに類する外国の施設で政令で定めるものにおいて公衆に提示することを目的とする場合には、前項の規定により記録媒体に記録された当該著作物の複製物を用いて自動公衆送信を行うことができる。この場合において、当該図書館等においては、その営利を目的としない事業として、当該図書館等の利用者の求めに応じ、その調査研究の用に供するために、自動公衆送信される当該著作物の一部分の複製物を作成し、当該複製物を一人につき一部提供することができる。

(美術の著作物等の展示に伴う複製等)
第四十七条
 美術の著作物又は写真の著作物の原作品により、第二十五条に規定する権利を害することなく、これらの著作物を公に展示する者(以下この条において「原作品展示者」という。)は、観覧者のためにこれらの著作物の解説又はこれらの展示する著作物(以下この条及び第四十七条の六第二項第一号において「展示著作物」という。)の解説若しくは紹介をすることを目的とする小冊子にこれらの著作物を掲載する当該展示著作物を掲載し、又は次項の規定により当該展示著作物を上映し、若しくは当該展示著作物について自動公衆送信(送信可能化を含む。同項及び同号において同じ。)を行うために必要と認められる限度において、当該展示著作物を複製することができる。ただし、当該展示著作物の種類及び用途並びに当該複製の部数及び態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。

 原作品展示者は、観覧者のために展示著作物の解説又は紹介をすることを目的とする場合には、その必要と認められる限度において、当該展示著作物を上映し、又は当該展示著作物について自動公衆送信を行うことができる。ただし、当該展示著作物の種類及び用途並びに当該上映又は自動公衆送信の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。

 原作品展示者及びこれに準ずる者として政令で定めるものは、展示著作物の所在に関する情報を公衆に提供するために必要と認められる限度において、当該展示著作物について複製し、又は公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。)を行うことができる。ただし、当該展示著作物の種類及び用途並びに当該複製又は公衆送信の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。

(著作権者不明等の場合における著作物の利用)
第六十七条

(略)
 国、地方公共団体その他これらに準ずるものとして政令で定める法人(以下この項及び次条において「国等」という。)が前項の規定により著作物を利用しようとするときは、同項の規定にかかわらず、同項の規定による供託を要しない。この場合において、国等が著作権者と連絡をすることができるに至つたときは、同項の規定により文化庁長官が定める額の補償金を著作権者に支払わなければならない。
(第3項以下略)

 これらの②~④に関する改正も決して十分とまでは言えないが、単純な拡充であり、内容としては比較的分かりやすい。

 その他にもそこかしこに入っているテクニカルな改正についての説明は省略するが、この著作権法改正案は、基本的に個別の権利制限を拡充する方向のものであり、その限りにおいてそれなりに評価できるものとなっている。ただし、これは本当の意味で柔軟な一般フェアユース条項を入れるものではなく、この法改正が通ったとしても、私は一般フェアユース条項の導入を求めて行く必要があると考えている。

 政府が著作権の保護期間を50年から70年に延長する方針であるという報道もあったが、この先月閣議決定され国会に提出された著作権法改正案には保護期間延長は含まれていない。第386回で書いた通り、保護期間延長は日欧EPAに伴うものなので、政府としては別にするつもりなのだろう。今後政府がごり押ししてくるに違いない日欧EPA署名・批准とそれに伴う著作権法改正は本当に危険であり、要注意である。

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2016年6月19日 (日)

第365回:主要政党の2016年参院選公約案比較(知財政策・情報・表現規制関連)

 6月22日公示、7月10日投開票予定の参院選が近づく中、主要政党の選挙向け公約案が以下の通り大体出そろった。

 今回も各党とも内容はかなり薄いのだが、TPP問題を中心に関連事項を抜き出すと以下のようになる。

<自民党>
◯農業など守るべきものは守りつつ、TPPの活用などにより近隣アジアの海外市場をわが国の経済市場に取り込みます。

◯世界最速・最高品質の審査体制の実現や地方創生と中小企業のための知財活用の促進、デジタル時代における著作権制度の整備、知財教育の充実・人材育成、官民協調による国際標準の獲得や認証基盤の整備等の知的財産・標準化戦略を推進し、世界最高の知財立国を目指します。

◯「衣」「食」「住」やコンテンツ(アニメ、ドラマ、音楽、映画等)をはじめ「日本の魅力」の海外発信を進めるクールジャパンを成長戦略の一翼と位置付け、支援策、人材の育成、国内のクールジャパン拠点構築等の振興策を積極的に展開します。

<公明党>
◯アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP構想の実現も視野に、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の早期発効、日中韓自由貿易協定(FTA)や東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の交渉に取り組むとともに、日EU経済連携協定(EPA)など貿易ルールづくりを積極的に進めます。また、投資協定等の締結を進め、ODAを活用しつつ、海外でのビジネス環境を改善します。また、G7諸国等と協調しながら為替の安定に努めます。

<おおさか維新の会>
◯TPPに賛成。将来は、アジア太平洋自由貿易圏の実現を目指す

<民進党>
◯今回のTPP合意に反対します
 国会審議を通じて、①農産物重要5項目の聖域が確保されていない、②自動車分野でのメリットも小さい、③このような交渉結果となった経緯・理由に関する情報が明らかになっていない、ことがはっきりしました。そのことから、今回のTPP合意については反対します。

<生活の党>
◯TPPは反対。各国とのFTA(自由貿易協定)等を推進します。

<社民党>
◯特定秘密保護法を即時廃止します。「共謀罪」の新設に反対します。

◯言論や報道の自由を侵害するメディア規制の動きに反対します。

◯農林水産業と地域を破壊し、国民の食の安全を脅かすTPP(環太平洋経済連携協定)参加に断固反対します。「農産物重要5項目」の関税維持を求めた国会決議に違反するTPP協定案の国会での承認を阻止します。全ての交渉経過記録の公開を強く求めます。

<共産党>
◯TPP協定に断固反対、農林水産業、中小企業の振興にとりくみます
(略)

◯言論・表現の自由を守ります。ヘイトスピーチを根絶します
 安倍政権による放送の自由、言論の自由への権力的介入は重大です。高市早苗総務相が、放送内容を「政治的不公平」と判断した場合は放送局の電波を停止できると発言し、それを内閣があげて擁護しているのは大問題です。
 ――放送・報道への政府による権力的な介入に断固反対します。
 ――行政による「政治的公平」を口実にした市民の言論・表現活動や集会への不当な介入を許しません。
 ――秘密保護法を廃止します。
 ――民族差別をあおるヘイトスピーチを根絶します。超党派で成立させた「ヘイトスピーチ解消法」も活用して、政府が断固たる立場にたつことを求めます。

(各分野の政策より)
17、TPP――国会決議違反、食・農・地域経済への打撃、ISD条項、食料主権
(略)
安価な薬の供給が減り、薬価が高止まりに――TPP交渉で、「知的財産」の章で、医薬品の知的財産権の保護を強化する制度がアメリカと発展途上国の対立点となり、アメリカはバイオ薬品(抗がん剤や新薬のC型肝炎の治療薬など)の特許期間13年を要求、5年にすべきという発展途上国と対立しました。その結果、特許期間は、少なくても8年又は5年+他の措置とされました。あわせて、①特許期間の延長、②特許が切れたバイオ医薬品のデータ保護期間の設定、③ジェネリック薬(後発医薬品)承認決定に特許権者に特許権を侵害していないかを確認するリンケージ制度を設けています。

 これら規定は、ジェネリック薬品の市場への参入を長期化させることになり、日本国内だけでなく、多くの途上国では、患者の命をつなぐ安価な医薬品が手に入りにくくなる状況は改善されません。しかも、参加国の政府が薬価決定する際に、「直接影響をうける申請者」が、不服審査を開始することができることが規定されており、今後、アメリカの製薬企業などが利害関係者として、医薬品・医療機器の保険扱いの可否や公定価格の決定に影響力を強めることが懸念されます。

37、文化――助成制度、文化施設、専門家の権利・地位向上、知的財産権
(略)
著作者の権利を守り発展させます

 日本の芸術・文化の発展のうえで各ジャンルの専門家の役割はきわめて重要です。著作権は、表現の自由を守りながら、著作物の創造や実演に携わる人々を守る制度として文化の発展に役立ってきました。ところが、映画の著作物はすべて製作会社に権利が移転され、映画監督やスタッフに権利がありません。実演家もいったん固定された映像作品の二次利用への権利がありません。国際的には視聴覚実演に関する条約が作成されるなど、実演家の権利を認める流れや、映画監督の権利充実をはかろうという流れが強まっています。著作権法を改正し、映画監督やスタッフ、実演家の権利を確立します。

 私的録音録画補償金制度は、デジタル録音録画の普及にともない、一部の大企業が協力義務を放棄したことによって、事実上機能停止してしまいました。作家・実演家の利益をまもるために、私的複製に供される複製機器・機材を提供することによって利益を得ている事業者に応分の負担をもとめる、新たな補償制度の導入をめざします。

TPP協定の承認に反対します

 TPP協定で、著作権の分野では、「保護期間の延長」「非親告罪化」「法定賠償金制度」「アクセスコントロールの回避等」についての措置、「配信音源の2次使用料請求権の付与」があらたに持ち込まれ、著作権法の改正が議論されようとしています。現状では、アーカイブの整備、孤児著作物の増加問題などに手が打たれておらず、またアメリカ型の訴訟・裁判制度の持ち込みに懸念の声も広がっています。専門家や関係団体などの間でも意見が分かれている問題を、外圧をてこに強行するのはゆるされません。TPP協定と関連法案の撤回を求めます。
(略)

憲法を生かし、表現の自由を守ります

 芸術活動は自由であってこそ発展します。憲法は「表現の自由」を保障しています。ところが、第2次安倍内閣の発足以降、各地の美術館や図書館、公民館など公の施設で、創作物の発表を不当な理由で拒否するなど、表現の自由への侵害が相次いでいます。安倍首相のもとに開催される「『日本の美』総合プロジェクト懇談会」のように、特定の価値観を創造活動に押しつける動きもあり、創作活動の委縮も懸念されます。安倍政権による放送の自由、言論の自由への権力的介入もきわめて重大です。憲法の基本的人権の条項をまもり生かして、表現の自由を侵す動きに反対します。「児童ポルノ規制」を名目にしたマンガ・アニメなどへの法的規制の動きに反対します。

 諸外国では、表現の自由を守るという配慮から、財政的な責任は国がもちつつ、専門家が中心となった独立した機関が助成を行っています。文化庁の助成は応募要綱などが行政の裁量で決められ、芸術団体の意見がそこに十分反映されていません。すべての助成を専門家による審査・採択にゆだねるよう改善します。
(略)

 自民党が知財政策について一応触れているが、これは今年の知財計画に書かれているキャッチフレーズをそのままなぞっているだけでほとんど意味はない。中では、これもいつも通りだが、共産党がTPPとの関係で知財の保護強化を問題視しているのはポイントが高い。また、例によって政党として表現の自由の問題を明確に取り上げているのは社民党と共産党である。

 今回の選挙も残念ながら知財問題が大きな争点になることはないだろうが、今までさんざん書いて来ている通り、TPP協定の批准が有害無益な知財保護の強化に直結するのは間違いない。参考に各党の公約からTPP協定に関する賛成反対だけを一覧でまとめると、

<自民>:賛成
<公明>:賛成
<お維>:賛成
<民進>:反対
<生活>:反対
<社民>:反対
<共産>:反対

となり、与野党対立の構図はさらに分かりやすくなった。今回の選挙でも私はTPP協定反対の面から投票先を決めるつもりである。

 また、加えて特に気をつけておきたいのは前回と同じく自民党の公約案が憲法改正を含んでいることである。自民党の実質的に表現の自由などの基本的人権の制約・国民からの剥奪を狙っているゴミクズ以下の憲法改正案(自民党のHP参照)の危険性はいくら強調してもしすぎではない。同じく憲法改正を唱えるおおさか維新の会への投票もかなり危険と思っておくべきだろう。

 なお、前回の参院選では規制強化慎重反対派元国会議員候補リストもつけたのだが、今回は4野党の候補者調整によってほとんどの選挙区で与党か野党かという二者択一の選択になり、個人に対する投票という意味は薄れそうなのでこのリストは省略する。(リストについて興味のある方は、第293回に載せた2013年参院選向けに作ったものや番外その25に載せた2010年参院選向けに作ったものを参照頂きたい。)

(2016年6月26日夜の追記:特に内容に変更はないが、各政党から詳細版を含む正式な公約集が公開されているので、念のため<こころ>と<改革>も合わせ、ここにそのリンクを張っておく。

 なお、新党改革はTPP協定に賛成と見えるが、その公約に「コミケ、二次創作、コスプレ、同人誌など様々な表現を許容し、表現の自由を守ります」という表現規制問題の面から見て非常にポイントが高い記載が入っているのは山田太郎候補の働きかけによるものだろう。)

(2016年7月3日夜の追記:なお、今回の選挙ではこの部分は争点にならないと思うが、表現規制絡みとして、自民党の総合政策集に「青少年健全育成のための社会環境の整備を強化するとともに『青少年健全育成基本法』を制定します。またITの発達等による非行や犯罪から青少年を守るための施策を推進します。」という記載が、民進党の政策集に「メディアにおける性・暴力表現について、人々の心理・行動に与える影響について調査を進めるとともに、バーチャルな分野を含め、技術の進展及び普及のスピードに対応した対策を検討し、推進します。」という記載があるので、念のためここに抜き出しておく。)

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2014年11月30日 (日)

第328回:主要政党の2014年衆院選マニフェスト(政権公約)案比較(知財・情報・表現規制問題関連)

 今度の衆院選も知財政策が選挙の争点になりようがないのは残念だが、主要政党のマニフェスト(政権公約)案が以下の通りほぼ出そろったので、また比較を作っておきたいと思う。(実際には公示日以降に配布されるものが正式版となるが、例によってほとんど違いはないだろう。)

 先に書いておくと、今年新所持罪(性的好奇心目的所持罪)を含む児童ポルノ法の改正案が国会を通った結果、児童ポルノ法改正に関する記載もなくなり、どの政党のマニフェストも知財・情報・表現規制問題に関しては取り立てて見るべきことはあまり書かれていないという状態になっているが、以下、念のため関連部分の記載を見て行く。

(1)知財関連

<自民党>
○職務発明制度の見直しや営業秘密の保護強化、知財人材の育成等の知的財産・標準化戦略を推進し、引き続き世界最高の知財立国を目指すとともに、政府と産業がタッグを組んで、自動運転技術等「日本の強み」がある分野については国際標準の獲得や認証基盤の整備を行う体制を整えます。

○「衣」「食」「住」やコンテンツ(アニメ、ドラマ、音楽等)をはじめ「日本の魅力」の海外発信を進めるとともに、世界の頂点へ挑戦するコンテンツ人材の育成等、クールジャパン戦略を推進します。

<民主党>
◯インフラのパッケージ型輸出、エネルギーの調達先多様化など戦略的な経済外交を推進します。國酒プロジェクト、クールジャパンなどを推進します。

<共産党>
◯34、文化:芸術・文化の活動を支え、文化が豊かに発展する社会をめざします
(略)
・著作者の権利を守ります。文化を支える専門家の地位向上にとりくみます
 日本の芸術・文化の発展のうえで各ジャンルの専門家の役割はきわめて重要です。ところが、その専門家の権利や社会保障がないがしろにされています。こうした状態を改め、著作権者の権利を守ることや、専門家の低収入、社会保障の改善にとりくみます。
 著作権は、表現の自由を守りながら権利者を守る制度として文化の発展に役立ってきました。ところが、映画の著作物はすべて製作会社に権利が移転され、映画監督やスタッフに権利がありません。実演家もいったん固定された映像作品への権利がありません。国際的には視聴覚実演に関する条約が作成されるなど、実演家の権利を認める流れや、映画監督の権利充実をはかろうという流れが強まっています。著作権法を改正し、映画監督やスタッフ、実演家の権利を確立します。
 私的録音録画補償金制度は、デジタル録音録画の普及にともない、一部の大企業が協力義務を放棄したことによって、事実上機能停止してしまいました。作家・実演家の利益をまもるために、私的複製に供される複製機能を提供することによって利益を得ている事業者に応分の負担をもとめる、新たな補償制度の導入をめざします。

 知財政策に関して多少なりとも何か言おうとしているのは、ものの見事に自民党と共産党のみとなった。両党ともほとんど意味のあることは言っていないが、自民党が職務発明制度の見直しや営業秘密の保護強化を明記していることは注意しておいても良いだろう。また、下の(3)で書くが、TPPとの絡みで知財問題に言及しているのは共産党しかないという状況である。(なお、前にも書いたことだが、共産党の私的録音録画補償金制度に関する理解はいまいちである。)

(2)情報・表現規制関連

<自民党>
○「『世界一安全な日本』創造戦略」に基づき、2020年オリンピック・パラリンピック東京大会を見据えて、治安対策や持続可能な民間の安全形成システムの強化を推進します。

○「サイバーセキュリティ基本法」の理念に則り、国民や企業が安心してICTを利活用し、豊かで便利な社会を創るため、総合的なサイバーセキュリティ対策を推進します。

○日本サイバー犯罪対策センターの積極的な運用による有害情報排除、捜査手法の高度化、情報収集体制・警備体制強化等、サイバー犯罪・組織犯罪・テロ対策に万全を期します。

<民主党>
○国会など第三者機関による監視と関与を強化するまで特定秘密保護法の施行は延期します。

○特定秘密保護法:知る権利と報道の自由を確実に守るため、国会等の監視機関の不十分さを是正します。

○人種等を理由とした差別をなくすため、表現の自由を尊重した上で、「ヘイトスピーチ対策法」を制定します。

<維新の党>
○いわゆるヘイトスピーチについて、国連人種差別撤廃委員会からの勧告の趣旨も踏まえつつ、規制のあり方を具体化する。

<共産党>
○38、秘密保護法・共謀罪:国民の目・耳・口をふさぎ、「海外で戦争する国」へと道を開く希代の悪法――秘密保護法の廃止を求めます
(略)

◯44、ヘイトスピーチ:民族差別をあおるヘイトスピーチを許さない
(略)
 日本共産党は、言論・出版の自由や結社の自由、表現の自由など憲法で保障されている基本的人権を全面的に擁護するとともに、それと矛盾・抵触しないような形の法整備のために積極的に対応します。国内外で高まる「社会的包囲でヘイトスピーチ根絶を」の世論と運動を踏まえ、ヘイトスピーチを許さないために、人種差別禁止を明確にした理念法としての特別法の制定をめざします。
(略)

<社民党>
○知る権利や報道の自由、言論・表現の自由を侵す「特定秘密保護法」を廃止します。

○差別や敵意を煽る「ヘイトスピーチ(憎悪表現)」を規制する「人種差別禁止法」を制定します。

 情報・表現規制関連としては、各政党とも基本的に今までのスタンスを踏襲する形で、秘密保護法やヘイトスピーチに対する対応などで違いが出ている。また、マニフェスト案に取り立てて大きな意味のあることが書かれている訳ではないが、自公が今の全体的な情報・表現規制強化の流れを自ら止めることはまずもってないだろう。

 前の衆参選挙のマニフェスト案比較の時にも書いたことで繰り返しになるが(第283回や第293回参照)、ここで最も注意すべきは自民党の政権公約が憲法改正を含んでいることだろう。ここでそのゴミクズ以下の憲法改正案(自民党のHP参照)についてここで事細かに突っ込む気はないが、前にも書いた通り、自民党はこの憲法改正で実質的に表現の自由などの基本的人権の制約・国民からの剥奪を狙っているのである。また、同じく憲法改正をマニフェストに明記している維新の党や次世代の党も憲法改正については自民と同じく危険と言って良いだろう。

(3)TPP関連

<自民党>
○経済連携交渉は、交渉力を駆使して、守るべきは守り、攻めるべきは攻め、特にTPP交渉は、わが党や国会の決議を踏まえ、国益にかなう最善の道を追求します。

<公明党>
○TPP(環太平洋パートナーシップ)協定交渉では、わが国農業の多面的機能や食料自給率の向上など国民生活への影響に配慮しつつ、守るべきものは守り、勝ち取るべきものは勝ち取るとの強い姿勢で臨み、国益の最大化に努めることを求めます。また、TPP交渉と並行して、アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)構想の実現に向け、日中韓の自由貿易協定(FTA)や東アジア地域包括的経済連携(RDEP)などに主導的に取り組むとともに、日・EU経済連携協定(EPA)などの貿易ルールづくりを積極的に推進します。

<民主党>
○TPPについては、農林水産物の重要5品目などの除外、食の安全の確保、国民皆保険の堅持などの国益を確保するために、脱退も辞さない厳しい姿勢で臨みます。「情報提供促進法」の制定を通じ、経済連携協定交渉の情報公開を進めます。

<維新の党>
○アジア太平洋地域の自由貿易圏構想の実現に向けて、TPP、RCEP、日中韓FTA等、域内経済連携に積極的に関与し、地域の新しいルール作りをリードする。

<次世代の党>
◯国益を踏まえた自由貿易圏の拡大

<共産党>
○12、TPP:TPPへの暴走=「亡国の政治」に反対し、経済主権、食料主権を尊重した互恵・平等の対外経済関係の発展をめざす
(略)
 安価な薬の供給が減り、薬価が高止まりに――アメリカはTPPを通じて知的財産権の保護強化を主張しています。それが通れば、ジェネリック薬(後発医薬品)の供給が遅れ、医薬品価格が高止まりします。アメリカは、既存薬の形や使い方を変えた医薬品を、効果がアップしていなくても"新薬"として特許申請する「エバーグリーニング」とよばれる手法を使い、既存薬の権利独占を図ろうとしています。TPPでこのルールが認められると、ジェネリック薬市場に参入するまでに、今まで以上に長い年月が必要になります。日本国内だけでなく、多くの途上国では、患者の命をつなぐ安価な医薬品が手に入りにくくなるため、多くの国が反対するのは当然です。薬メーカーに一方的に有利なアメリカ流の「知的財産権の保護」は認められません。)
(略)

<生活の党>
○TPPは断固反対
 日本の経済・社会を根底から破壊しかねないTPPには参加せず、各国とのFTA(自由貿易協定)を推進します。

<社民党>
○農林水産業に壊滅的打撃を与えるなど、21分野もの規制緩和で地域経済、国民生活のすみずみに悪影響をもたらし、衆参農林水産委員会決議にも反するTPP(環太平洋経済連携協定)への参加に断固反対します。TPP交渉に関する情報公開を強く要求します。

 ここで、前と変わらないとは言え、共産党がきちんとTPP交渉に関する項目で知財(ジェネリック薬)の問題に触れているのはポイントが高い。また、民主党のスタンスは与党時代のことを考えるとまだ実質推進と考えても良いのではないかと思うが、それでも情報公開を求めるとしている点は多少変化が見られるところだろうか。

 今までのリーク文書がはっきり示している通り、前回同様TPP交渉推進で日本の知財政策が著作権も含めて保護強化に大きく歪む形で振れることになると考えて私は投票するつもりだが、TPP交渉に関して上で抜き出した部分をざっくりとまとめると、

<自民>:推進
<公明>:推進
<民主>:推進+情報公開促進
<維新>:推進
<次世>:推進
<共産>:反対
<生活>:反対
<社民>:反対

となり、今回の衆院選でも相変わらずどうにも選択肢が少ないのが本当に残念である。

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2013年7月 3日 (水)

第293回:主要政党の2013年参院選マニフェスト(政権公約)案比較・規制強化慎重反対派元国会議員候補リスト(知財・表現規制問題関連)

 どの政党も前回の衆院選のときと比べてほとんどスタンスの変更はないのだが(前回衆院選時の比較は第283回参照)、

と参院選マニフェスト案がほぼ出そろったので、念のため一通り知財・情報・表現規制問題関連の項目について見ておきたいと思う。

(1)マニフェスト案比較
 各政党のマニフェストから知財・表現規制問題に関する項目を抜き出して行く。

<自民党>
○最先端の「知財立国」に
・特許審査の迅速化を図るとともに、「意匠法」「商標法」を見直し、産業競争力を強化します。
・日本発のコンテンツ・プラットフォームの研究開発を進めます。
・世界で活躍できるグローバル知財人材の育成と、研究開発拠点の誘致を図ります。

○拡大する国際市場を獲得
・国、大学等の研究機関、各企業などの人材・知財・資金を繋ぎ合わせるオープン・イノベーションを推進し、オールジャパン体制で世界との「新分野開拓競争」に対応します。
・「クールジャパン戦略」を推進するとともに、国際標準化・認証に対する戦略的な取組みを強化し、積極的なトップセールスを展開し、海外市場を獲得します。2020年に30兆円(現状10兆円)のインフラシステムの受注を実現すること、2018年までに放送コンテンツ関連海外売上高を現在(63億円)の3倍に増加させること、2020年に海外の医療技術・サービス市場で1.5兆円(現状0.5兆円)を獲得することを目指します。

○国益にかなう経済連携
・TPP等の経済連携交渉は、交渉力を駆使し、守るべきものは守り、攻めるべきものは攻めることにより、国益にかなう最善の道を追求します。
(略)

○治安・テロ対策の強化
・新たな犯罪への対策、防犯ボランティアや保護司等の民間の安全形成システム、法務・警察部門の体制等の治安インフラを強化します。
(略)
・コンピュータやインターネットへの不正侵入、データ破壊、情報漏洩などへの対策(サイバーセキュリティ)を強化します。

○全ての子供の健全な成長と安全の確保
・「青少年健全育成基本法」を制定し、必要な施策を総合的に推進します。
(略)

(総合政策集より)
26「国富」を生み出す知財戦略
(略)

27「クール・ジャパン戦略」の推進
(略)

323世界に誇るべき「文化芸術立国」の創出
(略)
 デジタル化・ネットワーク化の進展により電子書籍等の電子出版物が増加しており、インタネット上における電子出版物の海賊版対策が急務です。文字・活字文化振興のため、デジタル時代に即した『著作権法』改正を行い、現行の出版権を見直します。また、わが国の文化関係予算は高い水準にあると言えず、「文化芸術立国」の創出に向けて、必要な文化予算を確保します。

<公明党>
Ⅱ−1−④−2)クール・ジャパンによる観光振興
 コンテンツ、ファッション、日本食、地域資源など日本の魅力を海外に発信。日本のモノやサービスを海外に売り出すクール・ジャパン戦略と、外国人観光客を国内へ呼び込み、国内での消費を盛んにする観光振興を結びつけた「クール・ジャパン観光」を推進します。

Ⅴ−2−①日・中・韓、日・EUなど経済連携協定を推進
 TPP交渉と並行して日中韓の自由貿易協定(FTA)や東アジア地域包括的経済連携(RCEP)などに主導的に取り組みます。アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)の成立をめざすとともに、日・EU経済連携協定(EPA)などの貿易ルールづくりを積極的に推進します。

(重要政治課題より)
3 TPP交渉で国益の最大化を
(略)

<民主党>
○経済連携・経済外交
・高いレベルの経済連携を推進し、世界におけるルールづくりを主導します。
 TPPについては、農林水産物の重要5品目などの除外、食の安全の確保、国民皆保険の堅持などの国益を確保するために、脱退も辞さない厳しい姿勢で臨みます。

<みんなの党>
Ⅰ−1−④TPPのみならず、日中韓FTA、RCEP、日EU等の広域FTAを推進し、日本の国益を最大化。アジア・太平洋諸国とエネルギーや安全保障分野を含めた戦略的な提携関係を強化する。

Ⅰ−1−⑤アジア域内の規制緩和(外貨規制等)を進め、必要な規制については共同制度(競争政策、知的所有権等の国際調和、紛争解決等)の構築を図る。

Ⅰ−5−①日本の魅力、各分野でのコンテンツの素晴らしさを積極的に取り上げ、情報発信の在り方、特に海外に向けた広報を強化。その際、徹底したマーケティングとブランディングを行う。また、日本の漫画、アニメ、小説、ゲーム等の振興を図る。

<日本維新の会>
○TPP参加。自由貿易圏の拡大

<社民党>
○TPP参加反対、地域再生の柱に農林水産業を
(略)

2.−<障がい者>−4.障がい者の社会参加を推進します
(略)
・著作者の音訳を制限する著作権法を改正するとともに、「EYEマーク」運動をすすめます。

5.若者
(略)
・日本が持つアニメ・漫画などのコンテンツ、伝統産業、商業デザイン、クリエーターの感性をいかした情報発信や海外展開など、中小零細企業を主導とした「クールジャパン」事業を拡大します。またクリエーターの賃金・労働条件の実態把握と雇用環境の改善に取り組み、離職者の再就職を支援します。
(略)

8.法務・人権
(略)
・あらゆる性暴力を禁止し、被害者の人権とケアを保証する「性暴力禁止法」をつくります。性的搾取・虐待から
子どもを守る取り組みを強化します。単純所持を刑事罰化する与党の「児童ポルノ禁止法改正案」は、捜査権濫用の危険性があり表現の自由を侵害しかねないため反対するとともに、児童ポルノの定義を限定・明確化した上で根絶へ積極的な防止対策を講じます。
(略)

<共産党>
3−(1)TPP交渉参加を撤回し、日本農業の再生と食料主権、経済主権の確立を
(略)

(各分野政策より)
12、TPP
 TPPへの暴走=「亡国の政治」に反対し、経済主権、食料主権を尊重した互恵・平等の対外経済関係の発展をめざす
(略)
 安価な薬の供給が減り、薬価が高止まりに――アメリカはTPPを通じて知的財産権の保護強化を推進しており、ジェネリック薬(後発医薬品)の供給が遅れ、医薬品価格の高止まりにつながる恐れがあります。アメリカは、既存薬の形や使い方を変えた医薬品を、効果がアップしていなくても"新薬"として特許申請する「エバーグリーニング」とよばれる手法を使い、既存薬の権利独占を図ろうとしています。TPPでこのルールが認められると、ジェネリック薬市場に参入するまでに、今まで以上に長い年月がかかるようになります。日本国内だけでなく、多くの途上国では、患者の命をつなぐ安価な医薬品が手に入りにくくなります。安価な医薬品の供給を維持するためにも、薬メーカーに一方的に有利なアメリカ流の「知的財産権の保護」には反対です。
(略)

35、文化芸術・文化の活動を支え、文化が豊かに発展する社会をめざします
(略)
○「劇場法」を生かし、文化施設への支援を強めます
(略)
 まだまだ足りない大小さまざまな表現空間や展示場所、けいこ場といった芸術家・文化団体の活動の条件を整備します。アニメ、マンガ、写真、音楽、美術など、文化各ジャンルの貴重な遺産の収集・保存を支援します。映画フィルムの保存を急ぐとともに、急速にすすむデジタル化に対応し映画作品の保存をすすめます。映画の国立フィルムセンターの人員を拡充し、国立美術館の付属施設から、国が責任をもつ独立した組織へと発展させます。
(略)

○著作者の権利を守ります。文化を支える専門家の地位向上にとりくみます
 日本の芸術・文化の発展のうえで各ジャンルの専門家の役割はきわめて重要です。ところが、その専門家の権利や社会保障がないがしろにされています。こうした状態を改め、著作権者の権利を守ることや、専門家の低収入、社会保障の改善にとりくみます。
 著作権は、表現の自由を守りながら権利者を守る制度として文化の発展に役立ってきました。ところが、映画の著作物はすべて製作会社に権利が移転され、映画監督やスタッフに権利がありません。実演家もいったん固定された映像作品への権利がありません。国際的には視聴覚実演に関する条約が作成されるなど、実演家の権利を認める流れや、映画監督の権利充実をはかろうという流れが強まっています。著作権法を改正し、映画監督やスタッフ、実演家の権利を確立します。
 一部の大企業は、私的録音録画補償金制度への協力義務を非難するだけでなく、実際に放棄してしまいました。こうした横暴を許さず、著作物を利用することで利益を得るメーカーに応分の負担を求め、作家・実演家の利益をまもります。
(略)

○憲法を生かし表現の自由を守ります。ダンス規制をやめさせます
芸術活動は自由であってこそ発展します。憲法は表現の自由を保障しています。ところが、自民党の「改憲案」は、表現・結社の自由について「公益及び公の秩序」に反しないものとしか認めないとしています。憲法の基本的人権の条項をまもり生かして、表現の自由を侵す動きに反対します。
「風営法」の規制対象からダンスを削除し、「ダンス規制」をやめさせます。

41、いのち・人権の保障
(略)
・児童ポルノ禁止法改定問題について……子どもを性的対象とする児童ポルノは、子どもにたいする最悪の虐待行為であり、その非人間的な行為を日本共産党は絶対に容認することはできません。1人の被害者も出さない社会をつくりだすことは、大人社会の重大な責任です。
 同時に、児童ポルノそのものの作成・流通・販売をきびしく禁止し、取り締まることと、「単純所持」を法的に禁止することは厳密に区別する必要があると考えます。
 自民党、公明党、日本維新の会の3党は、2013年5月29日、児童ポルノ禁止法の「改正」案を衆議院に提出しました。「改正」案によれば、写真やデジタル画像など児童ポルノの所持を禁止する「単純所持の禁止」を導入し、「自己の性的好奇心を満たす目的」の所持には刑事罰(1年以下の懲役または100万円以下の罰金)を科しています。また漫画やアニメ、CG(コンピュータ・グラフィック)などと性犯罪などとの関連性を「調査研究」するよう政府に求め、施行から3年後に「必要な措置」をとるとしています。
 これは、従来の自公案に、維新の会も乗ったもので、これまでの「単純所持」規制案となんら変わるところはありません。
 現在、インターネット上などで流布されている児童ポルノは、そのほとんどが現行法によって取り締まることが可能です。児童ポルノ法第7条では、「児童ポルノを提供し」、それを目的として「製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者」にたいして、「三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金」がかけられることになっています。これを厳格に運用するなら、ネット上に流れているほぼすべての児童ポルノを一掃することが可能となります。
 一方、児童ポルノ法で単純所持を一律に規制したり、漫画・アニメーションなどの創作物も規制対象に加えたりすることは、児童ポルノ問題の解決に役に立たないだけでなく、逆に、人権の侵害や表現の自由の萎縮につながりかねません。
 第一に、たとえ単純所持を法律で一律に規制したとしても、児童ポルノの流出の効果的な歯止めにならないことは、単純所持を禁止しているはずの欧米各国の実態からも明りょうです。よく、「主要8カ国のなかで児童ポルノの単純所持を規制していないのは、日本とロシアだけだ」と指摘されます。しかし、現にインターネット上に流出している児童ポルノ(児童虐待)の動画像は、単純所持を禁止している欧米諸国からのものが圧倒的に多数です。たとえば、イタリアに本拠をおく児童保護団体の「虹の電話」による調査(2010年1月発表)では、2009年に確認された児童ポルノのサイトは4万9393件とされ、そのうち日本は、0.1%の54件となっています。一方、上位5位はドイツ(1万9488件、39.5%)、オランダ(1万277件、20.8%)アメリカ(8411件、17.0%)、ロシア(7118件、14.4%)、キプロス(1688件、3.4%))となっており、この5カ国だけで全体の95%を占めます。このうち、上位3カ国はいずれも児童ポルノの単純所持が禁止されています。このことをとっても単純所持の禁止や規制が、児童ポルノ流出の歯止めにならないことは明らかです。
 第二に、ネット上に流出していないにもかかわらず、単純所持を規制し、それを処罰するという場合、どのようにして単純所持を証明・把握するのかという問題があります。このことは、「憶測」や「疑惑」の段階から取り締まりを可能にすることにつながりかねず、結果として、捜査当局の恣意的な捜査を招く危険があります。また、表現の自由や、家庭生活上の写真などと児童ポルノとの関係なども考慮しなければなりません。
 なお、本来あってはならないことですが、万一被害にあった子どもがいる場合、そのプライバシーを最大限に尊重しながら、その後、社会生活を安心して送り健やかに成長できるよう、万全の保証をする必要があります。
 日本漫画家協会や日本雑誌協会からは、自公維の「改正」案にたいして、きびしい反対の意見が上がっています。たとえば、漫画家協会の「児童ポルノ規制法案に向けての意見書」(2013年5月29日)は、「他国に類を見ない独自のマンガ文化を育んできた日本の貴重な文化的土壌が、危機的に変質させられる可能性が非常に高い今回の規制法案について、創作者の立場から見過ごせない問題がある」「今回の法案では、単純所持まで規制の対象としており、仮にマンガ・アニメなども規制の対象になると、諸外国のような文化的除外規定のない我が国では、多くの漫画家が新たに描き起こす、未来の作品全般に対する重大な悪影響はもちろん、過去作品の原稿までが新しい規制に抵触してしまいます」と重大な懸念を表明しています。
 また、日本雑誌協会の「『児童ポルノ禁止法』改正法案への反対声明」(2013年5月29日)も、「『児童ポルノ』の定義が曖昧なままでの「単純所持禁止」は不当な処罰を招く」としたうえで、マンガ・アニメにまで規制を及ぼそうとしていることについて、「児童保護の名を借りて不要な表現規制をかけ、読者から漫画を読む権利を奪うものといえる。そうした過剰規制は表現の萎縮を招き、漫画という日本の誇る表現形態の破壊につながりかねない」と批判しています。この声明には、日本出版書籍協会も名前を連ねています。
 このほかにも日本マンガ学会、日本アニメーター・演出協会、全国同人誌即売会連絡会などの関連団体から、いっせいに批判の声があがっています。
 安倍首相は、2013年2月28日の施政方針演説で、マンガやアニメなどを、世界に誇る文化として発信していこうと、次のように演説しました。
 「日本のコンテンツやファッション、文化・伝統の強みも、世界から注目されています。アニメなどのブームを一過性のものに終わらせることなく、世界の人たちを惹(ひ)きつける観光立国を推進することに加え、『クール・ジャパン』を世界に誇るビジネスにしていきましょう」
それぞれの国民や業界団体などがそれぞれの立場で開拓し蓄積し、根づかせてきた文化や芸術について、海外に売り込むために政府が音頭をとったり主導したりする点については、さまざまな意見や疑問があります。しかし、前述した諸団体の反対声明にあるように、自公維3党の児童ポルノ禁止法の「改正」案は、みずからの戦略に照らしても、日本発祥の世界に誇るアニメ・マンガ文化を振興するどころか、逆に水をさしたり冷水を浴びせたりする結果にしかならないことは明白です。

<生活の党>
Ⅲ−7.TPPには反対、国益にかなう経済連携は推進
(略)

<みどりの風>
3 TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)参加に反対します
(略)

<新党大地>
○TPP断固反対

 まず、案の定知財政策に関しては各党とも具体的に中身のあることをほとんど書いていない。一見自民党などはいろいろ書いているように見えるかも知れないが、知財計画の焼き直し程度でほとんど意味はない。ただ、公約という位置づけではないのかも知れないが、自民党が政策集に今までの隣接権の付与とは異なるニュアンスで出版権の見直しについて書いていることくらいは注意しておいても良いだろうか。(特に選挙と関係する形で出されているものではないが、自民党は知的財産戦略調査会の10の提言(pdf)要旨(pdf))というペーパーも4月に作っている。)

 しかし、公約上知財政策に関する具体的な中身がないにしても、何度も書いている通り、今後の日本の著作権政策がTPP交渉に引きずられるのは間違いなく、その推進は著作権保護強化に直結すると見て良いだろうと私は考えており、この点で自民、公明、民主、みんな、維新が基本的にTPP推進で、それ以外が反対と、賛成反対が明確に分かれているのは非常に分かりやすい。

 次に、表現規制問題関連では、自民党が検察・検察の体制やサイバーセキュリティの強化、「青少年健全育成基本法」の制定などに言及している点は要注意だろう。この点で今の自民党ではどこをどうやっても危険な規制強化案しか出して来ないだろうことは目に見えているのである。(やはり選挙と関係する形で出されているものではないが、自民党が何を考えているかについては、5月に出している、児童ポルノの単純所持規制の導入などかなり強力な規制強化案を含む世界一の安全を取り戻すために ~緊急に取り組むべき3つの課題(提言)(pdf)構成(pdf))というペーパーも参考になる。)

 また、何にも増して気をつけておきたいのは前回衆院選時と同じく自民党の政権公約が憲法改正を含んでいることである。自民党のゴミクズ以下の憲法改正案(自民党のHP参照)についてここで事細かに突っ込む気はないが、明らかに自民党はこの憲法改正で実質的に表現の自由などの基本的人権の制約・国民からの剥奪を狙っているのである。(毎日新聞の記事によると、多少見直す動きもあるようだが、検討する人間がそう変わるとも考えられず、自民党内でいくら検討したところで似たような非道い案しか出て来ようがないだろう。この問題に関心のある方は、「自民党憲法草案の条文解説」や「Afternoon Cafe」のブログ記事自民党改憲案「“超”口語訳」(1)(2)なども合わせてご覧になることをお勧めする。)また、時事通信の記事などによると、維新の会の改憲原案も自民党と同じく非道い内容のようであり、維新の会も自民と同じかそれ以上に危険であることは間違いない。

 ここで、社民党と共産党が公約レベルで児童ポルノ規制の強化について慎重な姿勢を示してくれているのは非常にありがたい。

 さらに、公約という訳ではないが、児童ポルノ規制に関しては、ITmediaの記事になっている通り、ニコニコ動画の党首討論会での各党党首の見解も非常に参考になる。この党首討論から単純所持規制を含む自公維の改正案(国会の議案本文情報経過情報)参照)に対する見解をまとめると以下のようになるだろう。(ニコニコニュースの全文書き起し記事も参照。)

  • 自民党・安倍総裁:単純所持禁止は国際動向からきっちり進めて行く流れになっている。アニメやCG等については表現の自由との関係で慎重にするということになっている。
  • 公明党・山口代表:改正は必要。日本は国際社会から厳しい批判にさらされている。表現の自由等については一定の配慮は必要だが、実害の大きさに目をつぶる訳にはいかない。
  • 民主党・海江田代表:最低限でも修正が必要。単純所持規制には安全装置をつけなければいけない。漫画やアニメにについては性的虐待の被害児童が存在しないことを考えなければいけない。若い漫画家やアニメの作画家達が萎縮をしてしまうことになるから、絶対、修正は必要。
  • みんなの党・渡辺代表:さらに検討が必要。3つ問題点がある。第一に漫画やアニメが規制されようとしていること。自主規制によって漫画・アニメの文化が廃れる恐れもあり、憲法21条に抵触する可能性もある。第二に単純所持禁止については検察・警察による恣意的な捜査・逮捕を可能にしてはいけない、第三に検索エンジン会社による運用が難しく、広範なブロッキングを招く。
  • 社民党・福島党首:改正案には反対。児童ポルノの定義が曖昧なために、自分の持っているものが児童ポルノとは思わなかったということもある。恣意的な捜索の可能性もある。アニメやCGなどの規制は表現の自由との関係で問題がある。
  • 共産党・志位委員長:児童ポルノ法で単純所持を一律に規制したり、アニメや漫画などの創作物も規制対象にするということは、児童ポルノ問題の解決に役に立たないばかりか、表現の自由あるいは、人権の侵害、これにも繋がって来るので反対。今、インターネット上に流布されている児童ポルノは、そのほとんどが現行法で取り締まることが可能。
  • 生活の党・小沢代表:改正案に反対。改正案は児童ポルノを理由に政府、官僚の規制を広範囲に強化することに繋がる恐れがある。表現の自由を阻害する可能性が大きく、世界的に評価されている漫画やアニメなど日本発のコンテンツを損なう恐れもあることから反対する。
  • みどりの風・谷岡代表:改正案は反対。日本のクールジャパンの原動力になっているサブカルチャーというものを破壊してしまう可能性がある。非存在青少年を対象に含めるようなことは全くあり得ない話。

 自民党はアニメについては慎重にする云々と言っているが法改正案から創作物規制もやりたくて仕方がないのは見え見えであり、今の主要メンバーを見る限り、今後もあらゆる点で有害かつ危険な規制強化に固執し続けることだろう。この党首討論会に維新の会は欠席したようだが、自公の法改正案に相乗りしていることからも分かるように維新の会は明らかに規制推進側に立っている。(この規制推進スタンスは、別の各党座談会(「現代 note」の書き起しブログ記事児童ポルノ法を改正して漫画・アニメを規制する1参照)で維新代表の山田宏衆院議員が述べていることからも確認できる。)また、民主党の児童ポルノ規制に関するスタンスについては、樽井良和候補がブログ記事で公開して下さっている民主党の考え方(案)(pdf)も参考になる。(まだ案の段階だが、非常に出来の良かった前回の民主党改正案(第254回参照)の考え方に大体沿った内容と言えるのではないかと思う。)

 ほとんど作るまでもないかも知れないが、上で抜き出したTPP交渉と児童ポルノ規制に関する各党のスタンスについて表を作ると以下のようになるだろう。

Kisei_table
 TPP交渉の推進が著作権規制の強化に直結すると見て、表現規制問題・文化政策に関しては児童ポルノ規制に関する見解がほぼ全てを物語っているに等しいと見て、私は今回も各党のTPP交渉と児童ポルノ規制に関するスタンスを参考に投票するつもりである。

(2)規制強化慎重・反対派元国会議員候補リスト
 前回衆院選時に作ったもの(番外その34番外その35参照)から大きく変わったということはないので、詳しくは元のエントリを見て頂ければと思うが、特に著作権・表現規制問題に関わり、今回参議院選挙に立候補することが予定されている慎重・反対派元議員候補のリストを以下に載せる。(前回リストと同じく特に規制強化に慎重な立場を表明している元議員候補の名前を字で示している。なお、前回衆院選以降に出された請願としては児童ポルノ規制法に関して慎重な取り扱いを求める請願が衆議院(請願情報参照)と参議院(請願要旨一覧参照)に1つずつあり、それぞれ西村眞悟衆院議員(無所属)と、森田高参院議員(無所属)、山田太郎参院議員(みんな)、松浦大悟参院議員(民主)が紹介議員となっている。)

○ダウンロード犯罪化・ACTA反対・慎重派元議員候補
森ゆうこ候補<生活・新潟県>(HPtwitterwiki):法改正に反対票を投じ、ダウンロード犯罪化に関する質問主意書を提出、ACTAに慎重な立場を表明、ACTA批准に反対票を投じた
はたともこ候補<生活・比例>(HPtwitterwiki):ダウンロード犯罪化に関する質問主意書を提出
三宅雪子候補<生活・比例>(HPtwitterwiki):ACTAに関して反対の立場を表明、衆議院本会議で反対
谷岡郁子候補<みどりの風・比例>(HPtwitterwiki):ACTAに慎重な立場を表明、ACTA批准に反対票を投じた
・亀井亜紀子候補<みどりの風・島根>(HPwiki):ACTA批准に反対票を投じた
・行田邦子候補<みどりの風→みんな・埼玉>(HPtwitterwiki):ACTA批准に反対票を投じた
・井上哲士候補<共産・比例>(HPtwitterwiki):法改正に反対票を投じた
・紙智子候補<共産・比例>(HPtwitterwiki):法改正に反対票を投じた
・山下芳生候補<共産・比例>(HPtwitterwiki):法改正に反対票を投じた
・又市征治候補<社民・比例>(HPwiki):法改正に反対票を投じた
・米長晴信候補<無所属→みんな・山梨>(HPtwitterwiki):ACTA批准に反対票を投じた
・糸数慶子候補<無所属・沖縄>(HPtwitterwiki):法改正に反対票を投じた
・世耕弘成候補<自民・和歌山>(HPtwitterwiki):ダウンロード犯罪化について慎重な意見を表明
・山本一太候補<自民・群馬>(HPtwitterwiki):ダウンロード犯罪化について慎重な意見を表明

○児童ポルノ規制強化慎重・反対派元議員候補
松浦大悟候補<民主・秋田>(HPtwitterwiki):請願の紹介議員
樽井良和候補<民主・比例>(HPtwitterwiki):児童ポルノ規制強化に関して慎重・反対の立場を表明
・谷岡郁子候補<みどりの風・比例>(HPtwitterwiki):平成22年3月16日の文教科学委員会で規制について慎重な意見を表明(議事録参照)
・佐藤正久議員<自民・比例>(HPtwitterwiki):請願の紹介議員
(請願については、慎重な取り扱いを求める請願参照)

 ネット選挙の解禁によって、また今回の選挙で何かが劇的に変わるということはないと思うが、それでも今回の参議院選挙も自らの意思で国政に票を投じることのできる貴重な機会であり、是非一人でも多くの人に選挙に行ってもらいたいと私も思っている。

(なお、今回からネット選挙が解禁されることになる訳だが、何でもできるようになったなどということは無論ないので、総務省の解説ページなどを良く読んで選挙期間中書き込みなどに十分に気をつけておくに越したことはないだろう。)

(2013年7月4日夜の追記:いくつか誤記を修正し、合わせて、児童ポルノ規制に関する自民のスタンスについて説明が少し足りないかと思ったので、「自民党はアニメについては慎重にする云々と言っているが法改正案から創作物規制もやりたくて仕方がないのは見え見えであり、今の主要メンバーを見る限り、今後もあらゆる点で有害かつ危険な規制強化に固執し続けることだろう。」という文章をつけ加えた。)

(2016年6月19日夜の追記:誤記を直した(「青」→削除)。)

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2012年12月 3日 (月)

番外その36:著作権・情報・表現規制問題に関する注目選挙区リスト(2012年衆院選版)

 各候補が議員として今まで何をして来たかは前々回前々々回も参照頂ければと思うが、著作権・情報・表現規制問題の観点から今回の衆議院選挙で私が特に注目している選挙区の立候補予定者リストをここに載せる。ただし、12月3日時点の情報を元に書いているので今後変動があるかも知れないことにご注意頂きたい。

 どうしてもマイナーな問題たらざるを得ない著作権・情報・表現規制問題ではわずかな数の議員の当落が今後の行方に大きく影響して来る。どのような観点から票を入れるにせよ、是非一人でも多くの人に選挙に行ってもらいたいと思う。

 なお、繰り返しになるが、政党としては、リストにあげるまでもなく規制強化を党として一貫して推進している公明党が一番危険であり、自民党は候補によって立場に違いがあるが党としてはほぼお話にならないレベルで規制強化に凝り固まっており、民主党は候補によって規制強化にかなり反対・慎重な立場を示すものの全体としては政権与党として官僚に流され、民主党の中でも規制強化に特に慎重な立場を示した多くの候補が日本未来の党に移っており、社民党と共産党がかなり明確に党として規制強化に慎重な立場を示しているということを念のため前置きとして書いておく。(自民党の危険性は、都条例問題の際にかなり強烈な強力効果論から規制強化を支持していた赤枝恒雄氏を東京ブロックの比例候補にあげていることにも見て取れる。)

(以下、注目選挙区リスト。各種情報規制に推進の立場を取る候補の名前を赤で、慎重な立場を取る候補の名前を青で示す。)

○宮城2区
斎藤やすのり候補<未来>(HPtwitterwiki):ACTAに反対
・福島かずえ候補<共産>(HPtwitter
・今野東候補<民主>(HPwiki
・秋葉賢也候補<自民>(HPtwitterwiki
・菊地文博候補<みんな>(HPtwitter
・中野正志候補<維新>(HPtwitterwiki

○秋田3区
京野公子候補<未来>(HPtwitterwiki):ACTAに反対
・さとう長右衛門候補<共産>
・三井マリ子候補<民主>(HPwiki
・御法川信英候補<自民>(HPwiki
・村岡としひで候補<維新>(HPtwitter

○茨城3区
小泉俊明候補<未来>(HPwiki):ACTAに反対
・小林きょうこ候補<共産>(twitter
・前田よしなり候補<維新>(HPtwitter
葉梨康弘候補<自民>(HPwiki):前回の児童ポルノ規制法改正案国会審議で最も危険な違憲発言を繰り返していた危険人物

○埼玉5区
枝野幸男候補<民主>(HPwiki):前回の児童ポルノ規制法改正案国会審議での立役者の一人
・大石ゆたか候補<共産>
・牧原秀樹候補<自民>(HPwiki

○千葉4区
三宅雪子候補<未来>(HPtwitterwiki):ACTAに反対
・さいとう和子候補<共産>(HPtwitter
野田佳彦候補<民主>(HPwiki):現首相
・藤田幹雄候補<自民>(HPwiki

○東京6区
・佐藤なおき候補<共産>(HPtwitter
・越智隆雄候補<自民>(HPtwitterwiki
小宮山洋子候補<民主>(HPwiki):前回の児童ポルノ規制法改正案国会審議で規制派であることを暴露
・落合貴之候補<みんな>(HPtwitter
・花輪ともふみ候補<維新>(HP

○東京11区
・橋本久美候補<未来>(HPtwitter
・須藤武美候補<共産>(HPtwitter
・太田順子候補<民主>(HP
・いのたかし候補<維新>
下村博文候補<自民>(HPwiki):自民党文部科学部会長、ダウンロード犯罪化修正案の提案者の一人

○神奈川13区
橘秀徳候補<民主>(HPtwitterwiki):ACTAに反対
・宮応かつゆき候補<共産>(HPtwitter
甘利明候補<自民>(HPwiki):出版隣接権導入勉強会参加メンバーの一人
・菅原直敏候補<みんな>(HPtwitter
・太田ゆうすけ候補<維新>(HP

○神奈川16区
・池田博英候補<共産>(HPtwitter
・後藤祐一候補<民主>(HPwiki
義家弘介候補<自民>(HPwiki):情報・表現規制問題では有名な規制派の一人、青少年健全育成基本法プロジェクトチーム座長

○石川1区
・熊野盛夫候補<未来>
・黒崎きよのり候補<共産>
・奥田建候補<民主>(HPwiki
・小間井俊輔候補<維新>(HPtwitter
馳浩候補<自民>(HPwiki):ダウンロード犯罪化修正案の提案者の一人

○三重2区
・中野たけし候補<共産> (HP
・島田佳和候補<自民>(HP
中川正春候補<民主>(HPwiki):出版隣接権導入勉強会の座長
・ちんどう直人候補<維新>(HPtwitter

○大阪15区
大谷啓候補<未来>(HPtwitterwiki):ACTAに反対
・ため仁史候補<共産>
・竹本直一候補<自民>(HPwiki
・うらの靖人候補<維新>(HPtwitter

○大阪17区
辻惠候補<未来>(HPtwitterwiki):民主党案の提案者の一人
・吉岡たかよし候補<共産>
・西哲史候補<民主>(HPtwitter
・岡下信子候補<自民>(HPwiki
・馬場伸幸候補<維新>(HP

○奈良2区
中村哲治候補<未来>(HPtwitterwiki):児童ポルノ法規制の強化に慎重
・中野あけみ候補<共産>
・百武威候補<民主>(HPtwitter
高市早苗候補<自民>(HPwiki):児童ポルノ法改正自公案の提出者の一人
・なみかわ健候補<維新>(HP

○岡山3区
・ふるまつ国昭候補<共産>
・西村啓聡候補<民主>(HP
あべ俊子候補<自民>(HPtwitterwiki):国会審議で単純所持規制を含む児童ポルノ規制法改正を求める
・平沼赳夫候補<維新>(HPwiki

○山口3区
・五十嵐ひとみ候補<共産>
・中屋大介候補<民主>(HPtwitterwiki
河村健夫候補<自民>(HPwiki):元文部科学大臣、ダウンロード犯罪化修正案の提案者の一人、出版隣接権導入勉強会参加メンバー

○鹿児島1区
川内博史候補<民主>(HPtwitterwiki):ダウンロード犯罪化に慎重
・山口ひろのぶ候補<共産>
・渡辺信一郎候補<未来>
・保岡興治候補<自民>(HPwiki
・山之内つよし候補<維新>(twitter

(2012年12月3日の追記:1カ所誤記を修正した。公認情報を見て追記を行った。)

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2012年12月 2日 (日)

第283回:主要政党の2012年衆院選マニフェスト(政権公約)案比較(知財政策・情報・表現規制問題関連)

 主要政党の衆議院マニフェスト(政権公約)案がほぼ出そろったので、ここで知財・情報関連に絞って比較をしておきたいと思う。(実際には公示日以降に配られるものが正式版となるが、大して変わることはないだろう。)

 一通り、

を読み比べたところで、案の定、知財政策に関してはどの党もほとんど記載はないに等しく、情報・表現規制問題に関して自民党が突出して危険であることを露骨に示し、公明党がやはり危険な児童ポルノの単純所持規制の導入を求める一方で、社民党と共産党が児童ポルノ規制の強化にかなり慎重な立場を表明している他は知財政策・情報・表現規制問題に関しては取り立てて見るべきところはあまりないという状況だが、以下、念のために関連部分の記載を取り上げて行く。

(1)知財関連

<民主党>
○国内外のイベント開催、クールジャパン番組の海外放送などにより、日本の映像、ファッション、伝統文化、食などの発信を高め、クールジャパン関連の市場規模を9.3兆円(2016年度)に拡大する。

<自民党>
30「国富」を生み出す知財戦略
 資源に乏しいわが国にとって「知的財産」はまさに、「国富」を生み出す一つの手段であり、確固たる知財戦略を構築する必要があります。巨額な費用と時間をかけて生み出された「財産」を保護し、それを利用してさらなる「国富」を生み出すことは持続発展可能な経済にとっては不可欠なことです。知財の取得・活用を国家戦略としてサポートするため、まずは、研究開発の成果物が迅速に知的財産として保護されるよう「審査の迅速化」を進めます。特に、別の国においても早期に審査が受けられる体制も併せて進めます。
 また、大学等の研究機関が専門的知識と経験を有する知財人材を十分に確保できる支援体制の整備に努めます。
 一方、わが国で確立された最先端の技術が知的財産として保護されることなく流出することは、国益を大きく損ねることになるため、技術流出を防止する制度をさらに強化していきます。

39世界へ向けた情報発信力の強化、デジタルコンテンツ市場の拡大
 「クール・ジャパン戦略」を推進し、日本のものづくり技術と世界に誇る日本のアニメを掛け合わせた他の追随を許さない真のJAPANオリジナルコンテンツの創造や東京国際映画祭のグリーンカーペットをアジアのステイタスとするための環境整備(大規模展示会場の建設等)、世界のコンテンツのメッカとして秋葉原を街ごとバジョンアップさせる等、観光資源としてだけでなく世界的イベントのホスト国となる機会を増やすための取り組みを進めます。文化・伝統(衣食住)などわが国の持つ魅力(ソフトパワー)を積極的に海外に発信します。特に、世界に広がりをみせる放送コンテンツの海外展開や電子書籍・電子雑誌の流通促進、電子看板(デジタルサイネージ)の推進などにより、デジタルコンテンツ市場の拡大を支援し、地域を含めたわが国社会経済の活力を増大させます。JAPANブランド委員会を設立し、国をあげて、日本の伝統工芸品を新しいかたちで世界へ向けて飛躍させるとともに、アニメ・マンガ・ゲームなどのコンテンツ作成だけではなく、「イベント創造」「営業方法」など、利益を生むトータルでのシステム構築を支援します。あわせて、文化・感性商品としての特性を有する日本の生活支援ロボットなどロボット製造技術の活用・育成に繋げていきます。
 また、海賊版・模造品対策を一層強化します。

91イノベーションの実現に向けた制度改革
 新たな産業や雇用を創出するため、企業だけでは実現できない革新的なイノベーションを産学連携で実現するとともに、イノベーションを妨げる各種規制を官邸=司令塔主導で抜本改革します。
 研究開発税制やエンジェル税制の対象拡充等の税制改革や、ベンチャー支援の充実等の制度改革、特許等の知的財産の迅速な保護及び円滑な利活用を促進するための知的財産制度の改革、イノベーションの隘路となっている規制や社会制度等の改革を強力に推進します。国際標準の獲得を目指す各国の動きが一層活発化していることから、特に、アジア諸国等との連携・協力の促進を念頭に置いて、官民協働による戦略的な国際標準化活動を抜本的に強化します。
 わが国が優れた先端技術を持つ基幹インフラについて、建設から運用、人材養成への寄与までを一体システムとしてとらえ、官民協働による海外輸出・展開活動を大幅に強化します。

<公明党>
○国内外で人気が高い日本のアニメやファッション、食など、グローバルにビジネス展開できる文化の産業化および海外展開を一層推進するために、海外でビジネス展開できる人材の育成・活用や、日本国内に利益を還元する仕組みを構築します。

○マンガ、ゲーム、アニメ、映画、デザイン・ファッションなど、価値を生産するコンテンツ(クリエイティプ)産業を日本経済の一翼を担う産業として位置付け、抜本的な支援強化に取り組みます。
 ・著作権取引支援システムの構築
 ・プロデュース人材の育成や事業化支援
 ・コンテンツ技術開発の促進
 ・ファイナンスや販路開拓等海外展開支援
 ・国際共同製作案件への支援、コンテンツ取引市場作り支援
 ・人材流出防止や海賊版防止

○ゲーム・ソフトウエアなどさまざまな知的資産によって、国外への情報発信を応援します。

○研究力・開発力・信用力の向上など中小企業の経営基盤の強化に資する知的財産の活用を促進するため、法整備や税制措置などのインフラ整備を戦略的に行い、創造・活用・保護など知的財産活用促進のための総合的支援を強化します。

○経営基盤の弱い事業者による知的財産の創造のため総合的な支援策を講じるとともに、技術およびビジネスモデル等における知的財産権の獲得と確保に向けた軽減措置に取り組みます。

○知的財産権の発掘・強化・拡大に向けた産学連携モデル事業の推進を図るとともに、共同研究の成果を迅速に事業化に結びつける仕組みを整備します。

<みんなの党>
○メディアコンテンツ、ファッション、食、観光等を輸出産業として育成するため、カテゴリーを横断した日本文化産業全体のブランドコンセプトを創出。重点地域市場における現地支援プラットフォームを設立(市場調査、現地パートナーの紹介・交渉、共同流通網の構築等シェアドサービス的機能を提供)、関連産業の再編と強いブランドポートフォリオの形成。これを可能とするファンド機能とマネジメントチームを組成する。

<社民党>
○日本が持つアニメ・漫画などのコンテンツ、商業デザイン、クリエーターの感性をいかした情報発信や海外展開など、中小零細企業が主導する「クールジャパン」事業を拡大し、雇用環境の整備も実施します。

<共産党>
 日本の芸術・文化の発展のうえで各ジャンルの専門家の役割はきわめて重要です。ところが、その専門家の権利や社会保障がないがしろにされています。こうした状態を改め、著作権者の権利を守ることや、専門家の低収入、社会保障の改善にとりくみます。
 著作権は、表現の自由を守りながら権利者を守る制度として文化の発展に役立ってきました。ところが、映画の著作物はすべて製作会社に権利が移転され、映画 監督やスタッフに権利がありません。実演家もいったん固定された映像作品への権利がありません。国際的には視聴覚実演に関する条約が作成されるなど、実演家の権利を認める流れや、映画監督の権利充実をはかろうという流れが生まれています。著作権法を改正し、映画監督やスタッフ、実演家の権利を確立します。
 一部の大企業は、私的録音録画補償金制度への協力義務を非難するだけでなく、実際に放棄してしまいました。こうした横暴を許さず、著作物を利用することで利益を得るメーカーに応分の負担を求め、作家・実演家の利益をまもります。

<新党改革>
○日本には閉塞感が渦巻いていますが、世界に向けて発信している産業には活気が満ち溢れています。その代表といえるのが、アニメとファッションです。1990年代後半から海外進出が急拡大しました。日本の文化(アニメ、ファッション、アートなど)を海外に積極的に発信し、その競争優位性を高めることで、ビジネスとしての文化戦略を実行していきます。

 これらの記載を読むと多少自民党や公明党が文章を長めに書いており多少力を入れているように見えなくもないが具体的な内容にかかわる言及は何もなく、どこの党も知財政策については何も書いていないに等しい。そのため、残念ながら選挙の結果がどうあれ、知財政策については今後も今と同じような状況が続くのではないかと私は考えている。特に今まで自公と文化庁がこぞって危険な規制強化を強力に推進して来たことを考えると、総選挙の結果次第で、またぞろ出版社への隣接権付与やダウンロード違法化・犯罪化の範囲の拡大、保護期間延長など各種の規制強化で日本の知財制度が大きく歪められる可能性が高まることになるのだろう。

(ここでついでに書いておくと、共産党の私的録音録画補償金問題に関する理解はどうにも頂けない。前回の著作権法改正の国会審議で共産党がダウンロード犯罪化に反対してくれたのは非常にありがたいのだが。)

(2)情報・表現規制関連

<自民党>
44サイバーセキュリティの対策強化
 頻発するサイバー犯罪から国民を守るため、さらに各省の連携を強化し、総合力を発揮できる体制を整備するとともに、官への投資と民間転用を呼び水に経済成長へ貢献します。
 特に、警察庁や防衛省、海上保安庁において、米国並みの動的防御システムやバックアップシステムを早急に構築します。また、政府機関の全ての情報機器や複合機を厳密なセキュリティ監視下におくための措置を早急に整備します。これらの施策と共に、最高度のセキュリティ技術を製品/サービス化し政府機関に納入するとともに、民間へ転用するための拠点を構築する事を呼び水として、わが国の高度情報セキュリティ産業を創出し、10万人規模の新規雇用を創出して経済成長へ貢献します。

183総合的な治安対策の強化
 平成20年に策定した「世界一安全な国をつくる8つの宣言」により、犯罪に強いまちづくりの推進、振り込め詐欺の撲滅、犯罪被害者の支援、生活の安全・安心を脅かす事案への対処、凶悪犯罪への対処、インターネット利用を含めたサイバー空間の安全確保、組織犯罪対策、銃器・薬物対策、客観的証拠の収集方法の整備、さらに死因究明体制の強化等を一層推進します。そして、国際的なテロなどに対処するために必要な資機材を整備し、情報収集・分析の為の体制を強化・拡充します。

188家族の絆を深め、家庭基盤を充実させ、全員参加型社会の実現へ
 社会の基礎単位である家族を大切にするという視点に立ち、家族の絆を深め、家庭基盤の充実を図ります。また、家庭や地域社会の機能を引き出し、老若男女が生きがいを持って働き続けられる社会整備を進めます。特に、家庭資産の形成がはかれるような税制の改正、三世代同居・近居の優遇、質の高い持家・借家制度等を進めます。
 地域、職場、家庭などあらゆる場面で、年齢や性別、障害の有無に関わらず活躍できる社会環境づくりを推進します。
 そして、配偶者からの暴力の根絶に向けた取り組みを図るため、DV被害者に対する相談体制の強化や、婦人相談所等での夜間・土日対応の強化について推進します。
 また、青少年の健全な成長に資する「青少年健全育成基本法案」の法整備など総合的な施策を推進します。

<公明党>
○子どもの福祉の観点から、児童ポルノ禁止法を改正し、児童ポルノの所持等を禁止するとともに、自己の性的好奇心を満たす目的での児童ポルノの所持等を処罰する罰則を新設します。

○青少年が安全に安心してインターネットを利用できるようにするため、全国で青少年のリテラシー(情報の理解力・発信力)を向上させる活動やインターネットが青少年に与える影響の調査を踏まえた的確な対策、違法・有害情報の検出等に資する技術開発への積極的な支援を行います。

<社民党>
○児童ポルノは子どもの性的虐待の記録です。被害者は、インターネット等による膨大広範な流布等に対する不安と恐怖に一生苦しめられます。児童ポルノの深刻さを国民に広く知らせるとともに、子どもの権利保護の観点から、ブロッキング(撮影された画像が人目に触れないようにする)の導入に必要な支援を行います。
○先進諸国は児童ポルノに対して厳しい規制を行っています。日本においても、子どもの人権を守る観点から子ども買春の根絶と児童ポルノの規制強化に向け、「児童買春・児童ポルノ禁止法」の改正に取り組みます。なお、この際、表現の自由を侵したり、表現者に過度の萎縮をもたらす強権的なものとならないように留意します。

<共産党>
児童ポルノ禁止法改定問題について……子どもを性的対象とする児童ポルノは、子どもにたいする最悪の虐待行為であり、その非人間的な行為を日本共産党は絶対に容認することはできません。1人の被害者も出さない社会をつくりだすことは、大人社会の重大な責任です。
 同時に、児童ポルノそのものの作成・流通・販売をきびしく禁止し、取り締まることと、「単純所持」を法的に禁止することは厳密に区別する必要があると考えます。
 現在、インターネット上などで流布されている児童ポルノは、そのほとんどが現行法によって取り締まることが可能です。児童ポルノ法第7条では、「児童ポルノを提供し」、それを目的として「製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者」にたいして、「三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金」がかけられることになっています。これを厳格に運用するなら、ネット上に流れているほぼすべての児童ポルノを一掃することが可能となります。
 一方、児童ポルノ法で単純所持を一律に規制したり、漫画・アニメーションなどの創作物も規制対象に加えたりすることは、児童ポルノ問題の解決に役に立たないだけでなく、逆に、人権の侵害や表現の自由の萎縮につながりかねません。
 第1に、たとえ単純所持を法律で一律に規制したとしても、児童ポルノの流出の効果的な歯止めにならないことは、単純所持を禁止しているはずの欧米各国の実態からも明りょうです。よく、「主要8カ国のなかで児童ポルノの単純所持を規制していないのは、日本とロシアだけだ」と指摘されます。しかし、現にインターネット上に流出している児童ポルノ(児童虐待)の動画像は、単純所持を禁止している欧米諸国からのものが圧倒的に多数です。たとえば、イタリアに本拠をおく児童保護団体の「虹の電話」による調査(2010年1月発表)では、2009年に確認された児童ポルノのサイトは4万9393件とされ、そのうち日本は、0.1%の54件となっています。一方、上位5位はドイツ(1万9488件、39.5%)、オランダ(1万277件、20.8%)アメリカ(8411件、17.0%)、ロシア(7118件、14.4%)、キプロス(1688件、3.4%))となっており、この5カ国だけで全体の95%を占めます。このうち、上位3カ国はいずれも児童ポルノの単純所持が禁止されています。このことをとっても単純所持の禁止や規制が、児童ポルノ流出の歯止めにならないことは明らかです。
 第2に、ネット上に流出していないにもかかわらず、単純所持を規制し、それを処罰するという場合、どのようにして単純所持を証明・把握するのかという問題があります。このことは、「憶測」や「疑惑」の段階から取り締まりを可能にすることにつながりかねず、結果として、捜査当局の恣意的な捜査を招く危険があります。また、表現の自由や、家庭生活上の写真などと児童ポルノとの関係なども考慮しなければなりません。
 なお、本来あってはならないことですが、万一被害にあった子どもがいる場合、そのプライバシーを最大限に尊重しながら、その後、社会生活を安心して送り健やかに成長できるよう、万全の保証をする必要があります。

 情報・表現規制問題に関しては、具体的にどうするという記載こそないものの、今まで様々な危険な規制強化を推進してきた自民党が、サイバーセキュリティの強化や総合的な治安対策の強化、青少年健全育成基本法案の推進などをあげている点は要注意だろう。前回の総選挙の時と同様、公明党が児童ポルノの単純所持規制の導入をあげている点も要注意であり、インターネットが青少年に与える影響の調査を踏まえて対策をすると書いていることも気をつけておかなければならない。また、社民党がブロッキングの導入を支援するとしている点は今ひとつ頂けないが、対照的に、社民党と共産党が児童ポルノ規制の強化について慎重な姿勢を示してくれているのは大変ありがたい。

 ここで、最も注意すべきは自民党の政権公約が憲法改正を含んでいることだろう。自民党のゴミクズ以下の憲法改正案(自民党のHP参照)についてここで事細かに突っ込む気はないが、この改正案は表現の自由に関する第21条第1項「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、保障する。」に「前項の規定にかかわらず、公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社をすることは、認められない。」という第2項を追加しようとしているなど、明らかに自民党はこの憲法改正で実質的に国民からの基本的人権の剥奪を狙っているのである。少しでも法律を勉強したことのある人間ならこのような条文の変更がどれほど危険なことかすぐに分かると思うが、他の条項に関しても軒並み非道いものであり、総選挙の結果次第でこのような改正案がそれなりに現実感をもって国会で議論されることになるかと思うと私は心底慄然たるものを感じる。

 なお、日本維新の会も自主憲法の制定について触れており、具体的な内容の言及こそないものの、あの石原慎太郎元都知事が代表をやっている時点でどのようなものが出て来るかは推して知るべきだろう。維新も憲法改正については自民と同じかそれ以上に危険である。

(3)TPP関連
 知財政策・情報・表現規制問題に関して取り立てて見るべきところはあまりないのは残念だが、さすがにTPP参加問題に関してはマニフェストの記載でも以下の通り賛成反対が明確に分かれているのは分かりやすい。

<民主党>:政府が判断(→参加推進)
<自民党>:政府が聖域なき関税撤廃を前提にする限り交渉参加に反対(→参加推進)
<公明党>:国会に調査会又は特別委員会を設置し審議できる環境をつくるべき(→参加推進)
<みんなの党>:参加推進
<日本維新の会>:参加推進
<社民党>:参加反対
<共産党>:参加反対
<日本未来の党>:参加反対
<みどりの風>:参加反対
<国民新党>:交渉参加を慎重に検討
<新党改革>:マニフェストに記載なし(党首討論会で参加反対と表明)
<新党日本>:ASEAN+6で自由貿易協定を結び、その後アメリカと協調
<新党大地>:参加反対

 民自公は態度をはっきり示していないようにも見えるが、支持団体の問題もあるので推進と言い切れないだけで、今までして来たことを考えると、今の民自公はどこでも政権与党になったところで即座に推進側に振れるだろう。それぞれの党の方針を考えれば当たり前ではあるが、加えてみんなの党と日本の維新の会が明確に参加推進で、その他は全て反対・慎重という極めて分かりやすい構図となっている。

 今回も著作権問題が選挙の争点になっていないのは個人的には非常に残念なのだが、前も書いた通り、著作権問題に関してはTPPに参加すればそのままアメリカに引っ掻き回されることは必至なので、TPPへの賛成が著作権規制の強化に直結すると見てTPPに関する賛否から判断して投票すれば大きく外れることはないだろうと私は考えており、この観点から見る限り民主党・自民党・公明党・みんなの党・日本維新の会は完全に論外であり、個人的には投票先として他の政党しか選択肢はないと考えている。

(2012年12月3日の追記:公明党がより詳細な政策集を出したので追記を行い、また、共産党の補償金問題に関する記載を見逃していたのでこれも追記した。)

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