2012年12月 3日 (月)

番外その36:著作権・情報・表現規制問題に関する注目選挙区リスト(2012年衆院選版)

 各候補が議員として今まで何をして来たかは前々回前々々回も参照頂ければと思うが、著作権・情報・表現規制問題の観点から今回の衆議院選挙で私が特に注目している選挙区の立候補予定者リストをここに載せる。ただし、12月3日時点の情報を元に書いているので今後変動があるかも知れないことにご注意頂きたい。

 どうしてもマイナーな問題たらざるを得ない著作権・情報・表現規制問題ではわずかな数の議員の当落が今後の行方に大きく影響して来る。どのような観点から票を入れるにせよ、是非一人でも多くの人に選挙に行ってもらいたいと思う。

 なお、繰り返しになるが、政党としては、リストにあげるまでもなく規制強化を党として一貫して推進している公明党が一番危険であり、自民党は候補によって立場に違いがあるが党としてはほぼお話にならないレベルで規制強化に凝り固まっており、民主党は候補によって規制強化にかなり反対・慎重な立場を示すものの全体としては政権与党として官僚に流され、民主党の中でも規制強化に特に慎重な立場を示した多くの候補が日本未来の党に移っており、社民党と共産党がかなり明確に党として規制強化に慎重な立場を示しているということを念のため前置きとして書いておく。(自民党の危険性は、都条例問題の際にかなり強烈な強力効果論から規制強化を支持していた赤枝恒雄氏を東京ブロックの比例候補にあげていることにも見て取れる。)

(以下、注目選挙区リスト。各種情報規制に推進の立場を取る候補の名前を赤で、慎重な立場を取る候補の名前を青で示す。)

○宮城2区
斎藤やすのり候補<未来>(HPtwitterwiki):ACTAに反対
・福島かずえ候補<共産>(HPtwitter
・今野東候補<民主>(HPwiki
・秋葉賢也候補<自民>(HPtwitterwiki
・菊地文博候補<みんな>(HPtwitter
・中野正志候補<維新>(HPtwitterwiki

○秋田3区
京野公子候補<未来>(HPtwitterwiki):ACTAに反対
・さとう長右衛門候補<共産>
・三井マリ子候補<民主>(HPwiki
・御法川信英候補<自民>(HPwiki
・村岡としひで候補<維新>(HPtwitter

○茨城3区
小泉俊明候補<未来>(HPwiki):ACTAに反対
・小林きょうこ候補<共産>(twitter
・前田よしなり候補<維新>(HPtwitter
葉梨康弘候補<自民>(HPwiki):前回の児童ポルノ規制法改正案国会審議で最も危険な違憲発言を繰り返していた危険人物

○埼玉5区
枝野幸男候補<民主>(HPwiki):前回の児童ポルノ規制法改正案国会審議での立役者の一人
・大石ゆたか候補<共産>
・牧原秀樹候補<自民>(HPwiki

○千葉4区
三宅雪子候補<未来>(HPtwitterwiki):ACTAに反対
・さいとう和子候補<共産>(HPtwitter
野田佳彦候補<民主>(HPwiki):現首相
・藤田幹雄候補<自民>(HPwiki

○東京6区
・佐藤なおき候補<共産>(HPtwitter
・越智隆雄候補<自民>(HPtwitterwiki
小宮山洋子候補<民主>(HPwiki):前回の児童ポルノ規制法改正案国会審議で規制派であることを暴露
・落合貴之候補<みんな>(HPtwitter
・花輪ともふみ候補<維新>(HP

○東京11区
・橋本久美候補<未来>(HPtwitter
・須藤武美候補<共産>(HPtwitter
・太田順子候補<民主>(HP
・いのたかし候補<維新>
下村博文候補<自民>(HPwiki):自民党文部科学部会長、ダウンロード犯罪化修正案の提案者の一人

○神奈川13区
橘秀徳候補<民主>(HPtwitterwiki):ACTAに反対
・宮応かつゆき候補<共産>(HPtwitter
甘利明候補<自民>(HPwiki):出版隣接権導入勉強会参加メンバーの一人
・菅原直敏候補<みんな>(HPtwitter
・太田ゆうすけ候補<維新>(HP

○神奈川16区
・池田博英候補<共産>(HPtwitter
・後藤祐一候補<民主>(HPwiki
義家弘介候補<自民>(HPwiki):情報・表現規制問題では有名な規制派の一人、青少年健全育成基本法プロジェクトチーム座長

○石川1区
・熊野盛夫候補<未来>
・黒崎きよのり候補<共産>
・奥田建候補<民主>(HPwiki
・小間井俊輔候補<維新>(HPtwitter
馳浩候補<自民>(HPwiki):ダウンロード犯罪化修正案の提案者の一人

○三重2区
・中野たけし候補<共産> (HP
・島田佳和候補<自民>(HP
中川正春候補<民主>(HPwiki):出版隣接権導入勉強会の座長
・ちんどう直人候補<維新>(HPtwitter

○大阪15区
大谷啓候補<未来>(HPtwitterwiki):ACTAに反対
・ため仁史候補<共産>
・竹本直一候補<自民>(HPwiki
・うらの靖人候補<維新>(HPtwitter

○大阪17区
辻惠候補<未来>(HPtwitterwiki):民主党案の提案者の一人
・吉岡たかよし候補<共産>
・西哲史候補<民主>(HPtwitter
・岡下信子候補<自民>(HPwiki
・馬場伸幸候補<維新>(HP

○奈良2区
中村哲治候補<未来>(HPtwitterwiki):児童ポルノ法規制の強化に慎重
・中野あけみ候補<共産>
・百武威候補<民主>(HPtwitter
高市早苗候補<自民>(HPwiki):児童ポルノ法改正自公案の提出者の一人
・なみかわ健候補<維新>(HP

○岡山3区
・ふるまつ国昭候補<共産>
・西村啓聡候補<民主>(HP
あべ俊子候補<自民>(HPtwitterwiki):国会審議で単純所持規制を含む児童ポルノ規制法改正を求める
・平沼赳夫候補<維新>(HPwiki

○山口3区
・五十嵐ひとみ候補<共産>
・中屋大介候補<民主>(HPtwitterwiki
河村健夫候補<自民>(HPwiki):元文部科学大臣、ダウンロード犯罪化修正案の提案者の一人、出版隣接権導入勉強会参加メンバー

○鹿児島1区
川内博史候補<民主>(HPtwitterwiki):ダウンロード犯罪化に慎重
・山口ひろのぶ候補<共産>
・渡辺信一郎候補<未来>
・保岡興治候補<自民>(HPwiki
・山之内つよし候補<維新>(twitter

(2012年12月3日の追記:1カ所誤記を修正した。公認情報を見て追記を行った。)

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2012年12月 2日 (日)

第283回:主要政党の2012年衆院選マニフェスト(政権公約)案比較(知財政策・情報・表現規制問題関連)

 主要政党の衆議院マニフェスト(政権公約)案がほぼ出そろったので、ここで知財・情報関連に絞って比較をしておきたいと思う。(実際には公示日以降に配られるものが正式版となるが、大して変わることはないだろう。)

 一通り、

を読み比べたところで、案の定、知財政策に関してはどの党もほとんど記載はないに等しく、情報・表現規制問題に関して自民党が突出して危険であることを露骨に示し、公明党がやはり危険な児童ポルノの単純所持規制の導入を求める一方で、社民党と共産党が児童ポルノ規制の強化にかなり慎重な立場を表明している他は知財政策・情報・表現規制問題に関しては取り立てて見るべきところはあまりないという状況だが、以下、念のために関連部分の記載を取り上げて行く。

(1)知財関連

<民主党>
○国内外のイベント開催、クールジャパン番組の海外放送などにより、日本の映像、ファッション、伝統文化、食などの発信を高め、クールジャパン関連の市場規模を9.3兆円(2016年度)に拡大する。

<自民党>
30「国富」を生み出す知財戦略
 資源に乏しいわが国にとって「知的財産」はまさに、「国富」を生み出す一つの手段であり、確固たる知財戦略を構築する必要があります。巨額な費用と時間をかけて生み出された「財産」を保護し、それを利用してさらなる「国富」を生み出すことは持続発展可能な経済にとっては不可欠なことです。知財の取得・活用を国家戦略としてサポートするため、まずは、研究開発の成果物が迅速に知的財産として保護されるよう「審査の迅速化」を進めます。特に、別の国においても早期に審査が受けられる体制も併せて進めます。
 また、大学等の研究機関が専門的知識と経験を有する知財人材を十分に確保できる支援体制の整備に努めます。
 一方、わが国で確立された最先端の技術が知的財産として保護されることなく流出することは、国益を大きく損ねることになるため、技術流出を防止する制度をさらに強化していきます。

39世界へ向けた情報発信力の強化、デジタルコンテンツ市場の拡大
 「クール・ジャパン戦略」を推進し、日本のものづくり技術と世界に誇る日本のアニメを掛け合わせた他の追随を許さない真のJAPANオリジナルコンテンツの創造や東京国際映画祭のグリーンカーペットをアジアのステイタスとするための環境整備(大規模展示会場の建設等)、世界のコンテンツのメッカとして秋葉原を街ごとバジョンアップさせる等、観光資源としてだけでなく世界的イベントのホスト国となる機会を増やすための取り組みを進めます。文化・伝統(衣食住)などわが国の持つ魅力(ソフトパワー)を積極的に海外に発信します。特に、世界に広がりをみせる放送コンテンツの海外展開や電子書籍・電子雑誌の流通促進、電子看板(デジタルサイネージ)の推進などにより、デジタルコンテンツ市場の拡大を支援し、地域を含めたわが国社会経済の活力を増大させます。JAPANブランド委員会を設立し、国をあげて、日本の伝統工芸品を新しいかたちで世界へ向けて飛躍させるとともに、アニメ・マンガ・ゲームなどのコンテンツ作成だけではなく、「イベント創造」「営業方法」など、利益を生むトータルでのシステム構築を支援します。あわせて、文化・感性商品としての特性を有する日本の生活支援ロボットなどロボット製造技術の活用・育成に繋げていきます。
 また、海賊版・模造品対策を一層強化します。

91イノベーションの実現に向けた制度改革
 新たな産業や雇用を創出するため、企業だけでは実現できない革新的なイノベーションを産学連携で実現するとともに、イノベーションを妨げる各種規制を官邸=司令塔主導で抜本改革します。
 研究開発税制やエンジェル税制の対象拡充等の税制改革や、ベンチャー支援の充実等の制度改革、特許等の知的財産の迅速な保護及び円滑な利活用を促進するための知的財産制度の改革、イノベーションの隘路となっている規制や社会制度等の改革を強力に推進します。国際標準の獲得を目指す各国の動きが一層活発化していることから、特に、アジア諸国等との連携・協力の促進を念頭に置いて、官民協働による戦略的な国際標準化活動を抜本的に強化します。
 わが国が優れた先端技術を持つ基幹インフラについて、建設から運用、人材養成への寄与までを一体システムとしてとらえ、官民協働による海外輸出・展開活動を大幅に強化します。

<公明党>
○国内外で人気が高い日本のアニメやファッション、食など、グローバルにビジネス展開できる文化の産業化および海外展開を一層推進するために、海外でビジネス展開できる人材の育成・活用や、日本国内に利益を還元する仕組みを構築します。

○マンガ、ゲーム、アニメ、映画、デザイン・ファッションなど、価値を生産するコンテンツ(クリエイティプ)産業を日本経済の一翼を担う産業として位置付け、抜本的な支援強化に取り組みます。
 ・著作権取引支援システムの構築
 ・プロデュース人材の育成や事業化支援
 ・コンテンツ技術開発の促進
 ・ファイナンスや販路開拓等海外展開支援
 ・国際共同製作案件への支援、コンテンツ取引市場作り支援
 ・人材流出防止や海賊版防止

○ゲーム・ソフトウエアなどさまざまな知的資産によって、国外への情報発信を応援します。

○研究力・開発力・信用力の向上など中小企業の経営基盤の強化に資する知的財産の活用を促進するため、法整備や税制措置などのインフラ整備を戦略的に行い、創造・活用・保護など知的財産活用促進のための総合的支援を強化します。

○経営基盤の弱い事業者による知的財産の創造のため総合的な支援策を講じるとともに、技術およびビジネスモデル等における知的財産権の獲得と確保に向けた軽減措置に取り組みます。

○知的財産権の発掘・強化・拡大に向けた産学連携モデル事業の推進を図るとともに、共同研究の成果を迅速に事業化に結びつける仕組みを整備します。

<みんなの党>
○メディアコンテンツ、ファッション、食、観光等を輸出産業として育成するため、カテゴリーを横断した日本文化産業全体のブランドコンセプトを創出。重点地域市場における現地支援プラットフォームを設立(市場調査、現地パートナーの紹介・交渉、共同流通網の構築等シェアドサービス的機能を提供)、関連産業の再編と強いブランドポートフォリオの形成。これを可能とするファンド機能とマネジメントチームを組成する。

<社民党>
○日本が持つアニメ・漫画などのコンテンツ、商業デザイン、クリエーターの感性をいかした情報発信や海外展開など、中小零細企業が主導する「クールジャパン」事業を拡大し、雇用環境の整備も実施します。

<共産党>
 日本の芸術・文化の発展のうえで各ジャンルの専門家の役割はきわめて重要です。ところが、その専門家の権利や社会保障がないがしろにされています。こうした状態を改め、著作権者の権利を守ることや、専門家の低収入、社会保障の改善にとりくみます。
 著作権は、表現の自由を守りながら権利者を守る制度として文化の発展に役立ってきました。ところが、映画の著作物はすべて製作会社に権利が移転され、映画 監督やスタッフに権利がありません。実演家もいったん固定された映像作品への権利がありません。国際的には視聴覚実演に関する条約が作成されるなど、実演家の権利を認める流れや、映画監督の権利充実をはかろうという流れが生まれています。著作権法を改正し、映画監督やスタッフ、実演家の権利を確立します。
 一部の大企業は、私的録音録画補償金制度への協力義務を非難するだけでなく、実際に放棄してしまいました。こうした横暴を許さず、著作物を利用することで利益を得るメーカーに応分の負担を求め、作家・実演家の利益をまもります。

<新党改革>
○日本には閉塞感が渦巻いていますが、世界に向けて発信している産業には活気が満ち溢れています。その代表といえるのが、アニメとファッションです。1990年代後半から海外進出が急拡大しました。日本の文化(アニメ、ファッション、アートなど)を海外に積極的に発信し、その競争優位性を高めることで、ビジネスとしての文化戦略を実行していきます。

 これらの記載を読むと多少自民党や公明党が文章を長めに書いており多少力を入れているように見えなくもないが具体的な内容にかかわる言及は何もなく、どこの党も知財政策については何も書いていないに等しい。そのため、残念ながら選挙の結果がどうあれ、知財政策については今後も今と同じような状況が続くのではないかと私は考えている。特に今まで自公と文化庁がこぞって危険な規制強化を強力に推進して来たことを考えると、総選挙の結果次第で、またぞろ出版社への隣接権付与やダウンロード違法化・犯罪化の範囲の拡大、保護期間延長など各種の規制強化で日本の知財制度が大きく歪められる可能性が高まることになるのだろう。

(ここでついでに書いておくと、共産党の私的録音録画補償金問題に関する理解はどうにも頂けない。前回の著作権法改正の国会審議で共産党がダウンロード犯罪化に反対してくれたのは非常にありがたいのだが。)

(2)情報・表現規制関連

<自民党>
44サイバーセキュリティの対策強化
 頻発するサイバー犯罪から国民を守るため、さらに各省の連携を強化し、総合力を発揮できる体制を整備するとともに、官への投資と民間転用を呼び水に経済成長へ貢献します。
 特に、警察庁や防衛省、海上保安庁において、米国並みの動的防御システムやバックアップシステムを早急に構築します。また、政府機関の全ての情報機器や複合機を厳密なセキュリティ監視下におくための措置を早急に整備します。これらの施策と共に、最高度のセキュリティ技術を製品/サービス化し政府機関に納入するとともに、民間へ転用するための拠点を構築する事を呼び水として、わが国の高度情報セキュリティ産業を創出し、10万人規模の新規雇用を創出して経済成長へ貢献します。

183総合的な治安対策の強化
 平成20年に策定した「世界一安全な国をつくる8つの宣言」により、犯罪に強いまちづくりの推進、振り込め詐欺の撲滅、犯罪被害者の支援、生活の安全・安心を脅かす事案への対処、凶悪犯罪への対処、インターネット利用を含めたサイバー空間の安全確保、組織犯罪対策、銃器・薬物対策、客観的証拠の収集方法の整備、さらに死因究明体制の強化等を一層推進します。そして、国際的なテロなどに対処するために必要な資機材を整備し、情報収集・分析の為の体制を強化・拡充します。

188家族の絆を深め、家庭基盤を充実させ、全員参加型社会の実現へ
 社会の基礎単位である家族を大切にするという視点に立ち、家族の絆を深め、家庭基盤の充実を図ります。また、家庭や地域社会の機能を引き出し、老若男女が生きがいを持って働き続けられる社会整備を進めます。特に、家庭資産の形成がはかれるような税制の改正、三世代同居・近居の優遇、質の高い持家・借家制度等を進めます。
 地域、職場、家庭などあらゆる場面で、年齢や性別、障害の有無に関わらず活躍できる社会環境づくりを推進します。
 そして、配偶者からの暴力の根絶に向けた取り組みを図るため、DV被害者に対する相談体制の強化や、婦人相談所等での夜間・土日対応の強化について推進します。
 また、青少年の健全な成長に資する「青少年健全育成基本法案」の法整備など総合的な施策を推進します。

<公明党>
○子どもの福祉の観点から、児童ポルノ禁止法を改正し、児童ポルノの所持等を禁止するとともに、自己の性的好奇心を満たす目的での児童ポルノの所持等を処罰する罰則を新設します。

○青少年が安全に安心してインターネットを利用できるようにするため、全国で青少年のリテラシー(情報の理解力・発信力)を向上させる活動やインターネットが青少年に与える影響の調査を踏まえた的確な対策、違法・有害情報の検出等に資する技術開発への積極的な支援を行います。

<社民党>
○児童ポルノは子どもの性的虐待の記録です。被害者は、インターネット等による膨大広範な流布等に対する不安と恐怖に一生苦しめられます。児童ポルノの深刻さを国民に広く知らせるとともに、子どもの権利保護の観点から、ブロッキング(撮影された画像が人目に触れないようにする)の導入に必要な支援を行います。
○先進諸国は児童ポルノに対して厳しい規制を行っています。日本においても、子どもの人権を守る観点から子ども買春の根絶と児童ポルノの規制強化に向け、「児童買春・児童ポルノ禁止法」の改正に取り組みます。なお、この際、表現の自由を侵したり、表現者に過度の萎縮をもたらす強権的なものとならないように留意します。

<共産党>
児童ポルノ禁止法改定問題について……子どもを性的対象とする児童ポルノは、子どもにたいする最悪の虐待行為であり、その非人間的な行為を日本共産党は絶対に容認することはできません。1人の被害者も出さない社会をつくりだすことは、大人社会の重大な責任です。
 同時に、児童ポルノそのものの作成・流通・販売をきびしく禁止し、取り締まることと、「単純所持」を法的に禁止することは厳密に区別する必要があると考えます。
 現在、インターネット上などで流布されている児童ポルノは、そのほとんどが現行法によって取り締まることが可能です。児童ポルノ法第7条では、「児童ポルノを提供し」、それを目的として「製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者」にたいして、「三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金」がかけられることになっています。これを厳格に運用するなら、ネット上に流れているほぼすべての児童ポルノを一掃することが可能となります。
 一方、児童ポルノ法で単純所持を一律に規制したり、漫画・アニメーションなどの創作物も規制対象に加えたりすることは、児童ポルノ問題の解決に役に立たないだけでなく、逆に、人権の侵害や表現の自由の萎縮につながりかねません。
 第1に、たとえ単純所持を法律で一律に規制したとしても、児童ポルノの流出の効果的な歯止めにならないことは、単純所持を禁止しているはずの欧米各国の実態からも明りょうです。よく、「主要8カ国のなかで児童ポルノの単純所持を規制していないのは、日本とロシアだけだ」と指摘されます。しかし、現にインターネット上に流出している児童ポルノ(児童虐待)の動画像は、単純所持を禁止している欧米諸国からのものが圧倒的に多数です。たとえば、イタリアに本拠をおく児童保護団体の「虹の電話」による調査(2010年1月発表)では、2009年に確認された児童ポルノのサイトは4万9393件とされ、そのうち日本は、0.1%の54件となっています。一方、上位5位はドイツ(1万9488件、39.5%)、オランダ(1万277件、20.8%)アメリカ(8411件、17.0%)、ロシア(7118件、14.4%)、キプロス(1688件、3.4%))となっており、この5カ国だけで全体の95%を占めます。このうち、上位3カ国はいずれも児童ポルノの単純所持が禁止されています。このことをとっても単純所持の禁止や規制が、児童ポルノ流出の歯止めにならないことは明らかです。
 第2に、ネット上に流出していないにもかかわらず、単純所持を規制し、それを処罰するという場合、どのようにして単純所持を証明・把握するのかという問題があります。このことは、「憶測」や「疑惑」の段階から取り締まりを可能にすることにつながりかねず、結果として、捜査当局の恣意的な捜査を招く危険があります。また、表現の自由や、家庭生活上の写真などと児童ポルノとの関係なども考慮しなければなりません。
 なお、本来あってはならないことですが、万一被害にあった子どもがいる場合、そのプライバシーを最大限に尊重しながら、その後、社会生活を安心して送り健やかに成長できるよう、万全の保証をする必要があります。

 情報・表現規制問題に関しては、具体的にどうするという記載こそないものの、今まで様々な危険な規制強化を推進してきた自民党が、サイバーセキュリティの強化や総合的な治安対策の強化、青少年健全育成基本法案の推進などをあげている点は要注意だろう。前回の総選挙の時と同様、公明党が児童ポルノの単純所持規制の導入をあげている点も要注意であり、インターネットが青少年に与える影響の調査を踏まえて対策をすると書いていることも気をつけておかなければならない。また、社民党がブロッキングの導入を支援するとしている点は今ひとつ頂けないが、対照的に、社民党と共産党が児童ポルノ規制の強化について慎重な姿勢を示してくれているのは大変ありがたい。

 ここで、最も注意すべきは自民党の政権公約が憲法改正を含んでいることだろう。自民党のゴミクズ以下の憲法改正案(自民党のHP参照)についてここで事細かに突っ込む気はないが、この改正案は表現の自由に関する第21条第1項「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、保障する。」に「前項の規定にかかわらず、公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社をすることは、認められない。」という第2項を追加しようとしているなど、明らかに自民党はこの憲法改正で実質的に国民からの基本的人権の剥奪を狙っているのである。少しでも法律を勉強したことのある人間ならこのような条文の変更がどれほど危険なことかすぐに分かると思うが、他の条項に関しても軒並み非道いものであり、総選挙の結果次第でこのような改正案がそれなりに現実感をもって国会で議論されることになるかと思うと私は心底慄然たるものを感じる。

 なお、日本維新の会も自主憲法の制定について触れており、具体的な内容の言及こそないものの、あの石原慎太郎元都知事が代表をやっている時点でどのようなものが出て来るかは推して知るべきだろう。維新も憲法改正については自民と同じかそれ以上に危険である。

(3)TPP関連
 知財政策・情報・表現規制問題に関して取り立てて見るべきところはあまりないのは残念だが、さすがにTPP参加問題に関してはマニフェストの記載でも以下の通り賛成反対が明確に分かれているのは分かりやすい。

<民主党>:政府が判断(→参加推進)
<自民党>:政府が聖域なき関税撤廃を前提にする限り交渉参加に反対(→参加推進)
<公明党>:国会に調査会又は特別委員会を設置し審議できる環境をつくるべき(→参加推進)
<みんなの党>:参加推進
<日本維新の会>:参加推進
<社民党>:参加反対
<共産党>:参加反対
<日本未来の党>:参加反対
<みどりの風>:参加反対
<国民新党>:交渉参加を慎重に検討
<新党改革>:マニフェストに記載なし(党首討論会で参加反対と表明)
<新党日本>:ASEAN+6で自由貿易協定を結び、その後アメリカと協調
<新党大地>:参加反対

 民自公は態度をはっきり示していないようにも見えるが、支持団体の問題もあるので推進と言い切れないだけで、今までして来たことを考えると、今の民自公はどこでも政権与党になったところで即座に推進側に振れるだろう。それぞれの党の方針を考えれば当たり前ではあるが、加えてみんなの党と日本の維新の会が明確に参加推進で、その他は全て反対・慎重という極めて分かりやすい構図となっている。

 今回も著作権問題が選挙の争点になっていないのは個人的には非常に残念なのだが、前も書いた通り、著作権問題に関してはTPPに参加すればそのままアメリカに引っ掻き回されることは必至なので、TPPへの賛成が著作権規制の強化に直結すると見てTPPに関する賛否から判断して投票すれば大きく外れることはないだろうと私は考えており、この観点から見る限り民主党・自民党・公明党・みんなの党・日本維新の会は完全に論外であり、個人的には投票先として他の政党しか選択肢はないと考えている。

(2012年12月3日の追記:公明党がより詳細な政策集を出したので追記を行い、また、共産党の補償金問題に関する記載を見逃していたのでこれも追記した。)

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2012年11月18日 (日)

番外その34:前回総選挙以来の著作権法改正関係国会議員リスト

 この11月16日に衆議院が解散され、12月4日公示、16日投開票という総選挙日程が示された。残念ながら、今回も著作権問題が選挙の争点となることはないだろうが、多少なりとも誰かの参考になるかも分からないので、ここで番外として前回総選挙から3年あまりの間に議論され、成立して来た各種著作権法改正に関係して名前が出て来た国会議員のリストを載せる。

(1)ダウンロード犯罪化を含む著作権法改正関係
 この3年あまりの間で一番大きな問題を含む法改正はダウンロード犯罪化だと私は思っている。10月1日の施行以来今のところ逮捕者は出ていないようで、遠隔操作ウィルスによる冤罪問題でそれどころじゃないというのもあるかも知れないが、法改正をして何もしないというのも今の警察の振る舞いから見てあり得ないだろうし、何かしらの形で逮捕者が出るのは時間の問題だろう。

 この著作権法改正案はこの6月15日に衆議院文部科学委員会及び本会議で可決され、6月20日に参議院文教科学委員会及び本会議で可決されたものだが、ここでこのダウンロード犯罪化について特に忘れてはならないのは、まず推進したのが自民公明の両党であって、消費税増税法案の成立と引き換えに文化庁作成・内閣提出の著作権法改正案の中に混ぜ込まれて最終的に成立したものだということである。

 このダウンロード犯罪化法案の成立までの経緯は、第256回第275回第276回第277回などをご覧いただければと思うが、このダウンロード犯罪化問題で名前の出て来た議員を以下にリストとして載せる。一応推進派と反対・慎重派という形で分類をしているが、自民党と民主党に関しては議員ごとに見解の違いがかなりあること、ただし自民党は党として規制強化に大きく寄っていること、また一丸となってダウンロード犯罪化を強力に推進していた節がある公明党は本当に党全体として危険であることは良く認識しておく必要がある。また、社民党と共産党は明確に党としてダウンロード犯罪化に慎重な立場を示していたことや、著作権問題で正しく懸念を表明して下さった民主党の議員の方々は今はほぼ国民の生活が第一に移っていることも大きなポイントである。なお、既に国民の生活が第一に合流しているが、新党きづなも法改正に反対していた(きづなのHP参照)。

(以下、ダウンロード犯罪化を特に推進していたと考えられる議員の名前をで、特に慎重な立場を示していた議員の名前をで示す。リストの名前の色分けの意味は以下全て同じである。)

○衆議院 ダウンロード犯罪化推進派議員
下村博文議員<自民・東京11区>(HPwiki):自民党文部科学部会長、ダウンロード犯罪化修正案の提案者の一人
河村健夫議員<自民・山口3区>(HPwiki):元文部科学大臣、ダウンロード犯罪化修正案の提案者の一人
馳浩議員<自民・比例北陸信越>(HPwiki):ダウンロード犯罪化修正案の提案者の一人
松野博一議員<自民・比例南関東>(HPwiki):ダウンロード犯罪化修正案の提案者の一人
池坊保子議員<公明・比例近畿>(HPwiki):ダウンロード犯罪化修正案の提案者の一人、今期限りで引退を表明
・斉藤鉄夫議員<公明・比例中国>(HPwiki):自公ダウンロード犯罪化法案について民主に協力要請
・平野博文議員<民主・大阪11区>(HPwiki):法改正審議時の文部科学大臣

○衆議院 ダウンロード犯罪化反対・慎重派議員
川内博史議員<民主・鹿児島1区>(HPtwitterwiki):ダウンロード犯罪化に慎重な立場を示す
宮本岳志議員<共産・比例近畿>(HPwiki):衆議院文部科学委員会でダウンロード犯罪化に反対
・木内孝胤議員<無所属・東京9区>(HPtwitterwiki):ダウンロード犯罪化に反対の立場を示す

○参議院 ダウンロード犯罪化推進派議員
鶴保庸介議員<自民・和歌山>(HPwiki):自公ダウンロード犯罪化法案の主要検討メンバーの一人
三原じゅん子議員<自民・比例代表>(HPtwitterwiki):自公ダウンロード犯罪化法案の主要検討メンバーの一人

○参議院 ダウンロード反対・慎重派議員
森ゆうこ議員<民主→生活→未来・新潟県>(HPtwitterwiki):法改正に反対票を投じ、ダウンロード犯罪化に関する質問主意書を提出
はたともこ議員<民主→生活→未来・比例代表>(HPtwitterwiki):ダウンロード犯罪化に関する質問主意書を提出
・林久美子議員<民主・滋賀>(HPtwitterwiki):民主党部会で慎重な意見を表明
・井上哲士議員<共産・比例代表>(HPwiki):法改正に反対票を投じた
・市田忠義議員<共産・比例代表>(HPwiki):法改正に反対票を投じた
・紙智子議員<共産・比例代表>(HPwiki):法改正に反対票を投じた
・田村智子議員<共産・比例代表>(HPwiki):法改正に反対票を投じた
・大門実紀史議員<共産・比例代表>(HPwiki):法改正に反対票を投じた
・山下芳生議員<共産・比例代表>(HPwiki):法改正に反対票を投じた
・福島みずほ議員<社民・比例代表>(HPwiki):法改正に反対票を投じた
・又市征治議員<社民・比例代表>(HPwiki):法改正に反対票を投じた
・山内徳信議員<社民・比例代表>(HPwiki):法改正に反対票を投じた
・吉田忠智議員<社民・比例代表>(HPwiki):法改正に反対票を投じた
・糸数慶子議員<無所属・沖縄>(HPwiki):法改正に反対票を投じた
・世耕弘成議員<自民・和歌山>(HPtwitterwiki):ダウンロード犯罪化について慎重な意見を表明
・山本一太議員<自民・群馬>(HPtwitterwiki):ダウンロード犯罪化について慎重な意見を表明

 また、文化庁作成・内閣提出の著作権改正法案に元から含まれていたDRM規制の強化も私は問題なしとしないが、こちらの方がほとんど問題にされないのも非常に残念である。

(2)海賊版対策条約(ACTA)批准関係
 海賊版対策条約(ACTA)の批准は、7月31日に参議院外交防衛委員会で、8月3日参議院本会議で可決された後、問責決議で野党が欠席する中、8月31日に衆議院外務委員会で、9月6日の衆議院本会議で可決されたものである。かなり異様な決議過程を経ているが、ACTAに関しては、これが小泉政権の置き土産であるということも忘れてはならないだろう。(経緯に関しては第279回参照。ACTA自体の問題点については第280回参照。)そのため、自公に関してはリストとしてあげるまでもなくほぼ全員がACTAに関しては推進の立場を取っていたと考えられること、実際に主力となって推進していたのは外務・経産官僚であると考えられることに注意が必要ということを前置きとして、以下にリストをあげる。ACTAについては、TPPの前哨戦とも考えられることから、国民の生活が第一・新党きづなやみどりの風などの議員の方々を中心に反対の声がかなりあがっていたこと、民主党の一部でも反対の動きがあったことを覚えておくべきだろう。

○衆議院 ACTA推進派議員
・玄葉光一郎議員<民主・福島3区>(HPwiki):ACTA批准審議時の外務大臣

○衆議院 ACTA反対・慎重派議員
三宅雪子議員<生活→未来・比例北関東>(HPtwitterwiki):ACTAに関して反対の立場を表明、本会議で反対
京野公子議員<生活→未来・秋田3区>(HPtwitterwiki):ACTAに関して反対の立場を表明、本会議で反対
大谷啓議員<生活→未来・大阪15区>(HPtwitterwiki):ACTAに関して反対の立場を表明、本会議で反対
・中野渡詔子議員<生活→未来・比例東北>(HPwiki):本会議で反対
・相原史乃<生活→未来・比例南関東>(HPwiki):本会議で反対
斎藤やすのり議員<きづな→生活→未来・宮城2区>(HPtwitterwiki):ACTAに関して反対の立場を表明、本会議で反対
・渡辺義彦議員<きづな→生活→未来・比例近畿>(HPwiki):本会議で反対
・中後淳議員<きづな→生活→未来・比例南関東>(HPtwitterwiki):本会議で反対
・石田三示議員<きづな→生活→未来・比例南関東>(HPwiki):本会議で反対
川内博史議員<民主・鹿児島1区>(HPtwitterwiki):ACTAに関して慎重な立場を表明、本会議で棄権
橘秀徳議員<民主・神奈川13区>(HPtwitterwiki):ACTAに慎重な立場を表明、本会議で反対
・石山敬貴議員<民主・宮城4区>(HPtwitterwiki):本会議で反対
・近藤昭一議員<民主・愛知3区>(HPwiki):本会議で棄権
・鳩山由紀夫議員<民主・北海道9区>(HPtwitterwiki):本会議で棄権
・中山義活議員<民主・東京2区>(HPwiki):本会議で棄権
・首藤信彦<民主・神奈川7区>(HPwiki):ACTAに慎重な立場を表明
・中島隆利議員<社民・比例九州>(HPwiki):ACTAに関して慎重な立場を表明
・小泉俊明議員<減税日本→未来・茨城3区>(HPwiki):本会議で反対
・小林興起議員<減税日本→未来・比例東京>(HPwiki):本会議で反対
・平智之議員<減税日本→未来・京都1区>(HPwiki):本会議で反対
・佐藤夕子議員<減税日本→未来・愛知1区>(HPwiki):本会議で反対

○参議院 ACTA反対・慎重派議員
森ゆうこ議員<生活→未来・新潟>(HPtwitterwiki):ACTAに慎重な立場を表明、ACTA批准に反対票を投じた
・外山斎議員<生活→未来・宮城>(HPwiki):ACTA批准に反対票を投じた
・主濱了議員<生活→未来・岩手>(HPwiki):ACTA批准に反対票を投じた
谷岡郁子議員<みどりの風・愛知>(HPtwitterwiki):ACTAに慎重な立場を表明、ACTA批准に反対票を投じた
・亀井亜紀子議員<みどりの風・島根>(HPwiki):ACTA批准に反対票を投じた
・行田邦子議員<みどりの風・埼玉>(HPwiki):ACTA批准に反対票を投じた
・平山誠議員<大地・比例代表> (HPtwitterwiki):ACTA批准に反対票を投じた
・横峯良郎議員<大地・比例代表>(HPwiki):ACTA批准に反対票を投じた
・米長晴信議員<無所属・山梨>(HPwiki):ACTA批准に反対票を投じた

(3)出版社への著作隣接権付与問題関係
 このブログで大きくは取り上げて来なかったが、衆議院の中川正春議員を中心とした勉強会で出版社へ著作隣接権を付与するかどうかがずっと検討されて来ており、つい最近この出版社への隣接権を付与するべきとの結論をまとめている。(読売新聞のネット記事、印刷文化・電子文化の基盤整備に関する勉強会のHP、事務局である文字・活字文化推進機構のHP、同HP上の「出版物に係る権利 (仮称)」に関する検討の現状について(pdf)参照。)

 この結論には大きな問題があると私は考えているが、こうまとめられたからには、衆院選後、この出版社への隣接権付与は著作権関係で真っ先に問題になる話の一つだろう。この問題の大きさもさることながら、以下のようなこの勉強会の参加メンバーは議員の中で誰が権利者団体に近いのかを示すものとして参考になるだろう。

○衆議院 出版社の著作隣接権創設推進派議員
中川正春議員<民主・三重2区>(HPwiki):勉強会の座長
甘利明議員<自民・比例南関東>(HPwiki):参加メンバーの一人
河村健夫議員<自民・山口3区>(HPwiki):参加メンバーの一人
池坊保子議員<公明・比例近畿>(HPwiki):参加メンバーの一人、今期限りで引退を表明
富田茂之議員<公明・比例南関東>(HPwiki):参加メンバーの一人

○参議院 出版社の著作隣接権創設推進派議員
石橋通宏議員<民主党・比例代表>(HPwiki):参加メンバーの一人

(4)その他著作権問題関係
○音楽議員連盟参加衆議院議員
(音楽業界と関係が深い議員、芸団協のHPに掲載されている2011年12月のシンポジウム講演録(pdf)参照)
・中野寛成議員<民主・大阪8区>(HPwiki):連盟会長
・塩谷立議員<自民・比例東海>(HPwiki):連盟副会長
・斉藤鉄夫議員<公明・比例中国>(HPwiki):連盟副会長
・服部良一議員<社民・比例近畿>(HPwiki):連盟副会長、2011年12月7日の外務委員会(議事録参照)で戦時加算の問題について質問

○音楽議員連盟参加参議院議員
・鈴木寛議員<民主・東京>(HPwiki):連盟幹事長
・市田忠義<共産・比例>(HPwiki):連盟副会長、ただしダウンロード犯罪化を含む著作権法改正案では反対票を投じている

 全体的なことを言えば、著作権問題でも、規制強化を党として一貫して推進している公明党が一番危険であることに変わりはなく、自民党は議員によってかなり立場に違いがあるが最近の動きを見る限りほぼお話にならないレベルで規制強化に凝り固まっており、民主党は議員によって規制強化にかなり反対・慎重な立場を示すものの全体としては政権与党として官僚に流され、民主党の中でも規制強化に特に慎重な立場を示した多くの議員が国民の生活が第一に移り、社民党と共産党がかなり明確に党として慎重な立場を示しているということになるだろう。さらにぶっちゃけて書くなら、自公と官僚が規制強化に向けて暴走をして、それをごく一部の議員が問題視するが、やはり全体としては多勢に無勢でどうにもならないというのが日本の無惨な現状である。

 民自公と自称第3極の思惑がどうあれ、今回の総選挙の争点は消費税、原発、TPPとなるのだろう。いつも通り著作権が選挙の争点にならないだろうのは残念だが、著作権問題に関してはTPPに参加すればそのままアメリカに引っ掻き回されることは必至なので、著作権問題を最も重視するような奇特な方は、TPPへの賛成が著作権規制の強化に直結すると見てTPPに関する賛否から判断して投票すれば大きく外れることはないだろうと私は考えている。

 今回の選挙もそれで現状が劇的に改善することはないだろうが、日本の将来を決める重要なものであることに変わりはない。一人でも多くの人に選挙に行ってもらいたいと私は思っている。

 同日投開票(11月29日公示、12月16日)の都知事選・東京都議会補欠選挙もあり、情報規制法改正関係についてもリストを作ろうと思ったのだが、著作権関係だけで結構な量になったのでそれは次回に回すことにする。

(2012年11月18日の追記:江口秀治氏(twitter)の指摘を受けて斉藤鉄夫議員、服部良一議員他音楽議員連盟の議員の名前をリストに追加した。また、今は議員ではないが連盟事務局長の簗瀬進氏も出馬する可能性があるので確かに注意が必要だろう。)

(2012年11月19日夜の追記:1カ所誤記を直し、いくつかリンクを追加・修正した。)

(2012年11月24日の追記:コメントを受けて、木内孝胤氏をリストに追加し、新党きづなに対する言及を加えた。また、既に新党きづなは国民の生活が第一に合流しているので、リスト中に矢印で追記した。合わせていくつか誤記も修正した。)

(2012年11月28日夜の追記:国民の生活が第一や減税日本・反TPP・脱原発が日本未来の党へ合流するとのことなので、リスト中に矢印で追記した。)

(2012年12月1日夜の追記:1カ所リンクを修正した。)

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2012年9月23日 (日)

第282回:ダウンロード犯罪化施行(2012年10月1日)以降、インターネット利用にあたって気をつけておくべきこと〜冤罪や詐欺の被害者とならないために〜

 9月6日の衆議院本会議で海賊版対策条約(ACTA)が可決され、残念ながら本質的な問題点についての議論が何らされないまま日本におけるACTAの批准が決まった。国内法的にどうこうという話はすぐには何もないだろうが、世界的に見て注目度の高いこの問題で、日本は無様に世界に恥を晒した。

 ACTAについても言いたいことはまだまだあるが、10月1日のダウンロード犯罪化施行まで後1週間しかない中で、文化庁のHPに掲載されているQ&Aを読んでも、質問主意書への政府回答(第281回参照)を読んでも、レコード業界団体が中心となって作った宣伝ページを読んでも、警察庁の通達(国民の生活が第一のはたともこ議員のツイートまたは森ゆう子議員のブログ記事参照)を読んでも、結局何をどうしたら良いのか具体的なことがさっぱり分からないので、ここで、ダウンロード犯罪化時代のインターネット利用時の注意点をなるべく具体的に書いておきたいと思う。

 前も書いた通り(第277回参照)、このように非民主主義的かつ姑息なやり口で可決された法律を守れという気は私はさらさらない。しかし、非道な法律の無茶な運用によって被害に遭う者はなるべく少ないに越したことはなく、他の国での著作権法の運用なども含めて考えると、日本でも最低限以下のようなことに気をつけておいた方が良いのではないかと私は思っている。

(1)P2Pファイル共有ソフトは法律的なことと技術的なことをある程度理解してから使用すること
 P2Pファイル共有自体が違法や犯罪であるということにはなり得ないが、著作権法上ダウンロードが違法になっただけでなく犯罪となった中で、P2Pファイル共有ソフト利用のリスクはこの上なく高まっている。各種P2Pファイル共有ソフトの法律的・技術的な問題に今回深入りすることはしないが、余計なトラブルを避けるために、P2Pファイル共有ソフトを使うのであれば、使おうとするソフトが技術的にどのようなことを行っているのか、それが法律的にどのように考えられるのかについてできるだけ知っておいた方が良い。ダウンロード犯罪化で違法ファイル共有の摘発数が劇的に増えるということも考えがたいが、警察はダウンロード犯罪化の最初の摘発対象・スケープゴートとしてアップロードとダウンロードを同時に行う違法ファイル共有ユーザーを狙って来るだろうと考えられるのである。

(2)家庭で無線LANを使う場合は必ず暗号化を施すこと、軽い気持ちで他人にインターネット回線を貸さないこと
 最近「P2Pとかその辺のお話」でアメリカにおける無線LANただ乗りの民事ケースについて翻訳記事を書かれているが、ダウンロード犯罪化について警察がどのような運用をして来るか読めない中で、無線LANを暗号化なしで使うことほど危険なことはない。また、インターネット回線を軽い気持ちで他人に貸すべきでもない。他人の行為で、警察が我が家に家宅捜索に来て痛くもない腹を探られるような事態を避けるためには、家庭で無線LANを使う場合必ず暗号化を施すことを忘れないようにし、また、基本的に他人にインターネット回線を貸すようなことをしないよう気をつけておいた方が良い。さらに言えば、暗号化方式の強度もなるべく高い方が良いだろう。(なお、2010年のzeit.de(ドイツ語)の記事などを読めば分かる通り、ドイツでも無線LANただ乗りの問題は最高裁に行くほど顕在化しており、今回やはり深入りはしないが非常にややこしい問題である。)

(3)子供のインターネット利用に気を配ること
 やはり「P2Pとかその辺のお話」でフランスにおける同居人の行為に対する3ストライク法の適用のケースについて翻訳記事を書かれているが、恐らく同居人として一番気を配るべきは子供だろう。子供が勝手にインターネットでファイル共有ソフトなどを使ってしまい著作権団体や警察の網に引っかかるリスクは常にあるのである。子供のインターネット利用を親が全て監視するべきだなどと言うつもりもなく、無意味に子供を脅すこともないだろうが、子供には基本的にP2Pファイル共有ソフトを使わせないくらいのことはしておいた方が良いのではないかと思う。(なお、これらも民事ケースだが、ドイツでも配偶者や子供などの著作権侵害行為と回線契約者の責任との関係について裁判沙汰になるほどの問題になっていることからも分かるように(heise.deの記事(ドイツ語)e-recht24.deの記事(ドイツ語)golem.deの記事(ドイツ語)など参照)、これも非常にややこしい問題である。)

(4)サイト管理者は書き込みやリンクの掲載などに気をつけること
 幇助による摘発の可能性も考えると、何かしら書き込みを可能としているサイトの管理者は書き込みやリンクの掲載に常に気をつけておく必要がある。普通ほとんどの場合で問題になるとは思えないが、警察と権利者団体が何をして来るか分からない中で、警察に目をつけられているだろう各種サイトや権利者団体に目をつけられているだろうP2P・ダウンロード関係サイトなどの管理者は特に気をつけておいた方が良いだろう。

(5)著作権侵害を使って脅すようなメールなどについてはまず詐欺やウィルスの可能性を疑うこと
 これも他の国で例でかなり見かけるが、著作権侵害を使って脅すようなメールやサイト表示はまず詐欺やウィルスの可能性を疑った方が良い。ダウンロード違法化でも多少見られたが、このような詐欺・ウィルスはダウンロード犯罪化でさらに増えると思えるのである。とにかく、そのようなものを見ても慌てないこと。ただし、日本でも権利者団体による著作権侵害警告のような取組は行われており、本物の警告である場合もあることには注意しておいた方が良い。警告に関する法律的なことが良く分からなければ、専門家への相談を考えること。(弁護士などでも良いが、そこまでの話でなければ、担当省庁の文化庁著作権課や警察庁・各県警のサイバー犯罪担当課、あるいはP2Pに対する警告メールの取組をやっているファイル共有ソフトを悪用した著作権侵害対策協議会へ直接確認してみれば良いのではないかと思う。)

(6)インターネットを今まで通りに使い必要以上に萎縮しないこと
 以上多少注意点について書いてきた訳だが、ダウンロード犯罪化のような非道な法律はいくら言われたところで守りようがない。最低限の注意以上のことはやりようがなく、必要以上にネット利用について萎縮することはない。もとから大して知られていないのであまりLマークとの関係で萎縮を心配することはないだろうが、Lマークも、ごく一部のサイトでしか利用されていないもので、日本レコード協会などと正規ライセンスが結ばれていることを示す意味しか持っておらず(レコ協の解説ページ参照)、あらゆるサイト・コンテンツの合法違法の区別をするものではないということを正しく理解して、その意味以上に気にしないことである。

 上で書いたリスクは基本的にアップロードやダウンロード違法化との関係で今までも多少はあったリスクだろうが、ダウンロードも犯罪化されることでインターネット利用のリスクが飛躍的に高まるのは間違いない(今まではダウンロードについて最大限民事訴訟のリスクだったのが、突然警察が家にやって来る可能性が出て来ると言えばそのリスクの大きさが分かってもらえるだろうか)。

 非道な法律の無茶な運用によって被害に遭う者はなるべく少ないに越したことはないと考えて、ここでも多少の注意を書いたが、どう考えても法改正に関する周知が不十分な中で、施行前後でかなりの混乱が予想されるのは非常に残念である。このブログはこのまま続けて行くつもりだが、できることならこのようなダウンロード犯罪化に関する注意を書く日が来なければ良かったのにと私は今も思っているし、今後もこのような法改正は間違いであると言い続けて行くだろう。

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2012年8月20日 (月)

第281回:森ゆうこ議員・はたともこ議員提出の違法ダウンロード刑事罰化に関する質問主意書への政府回答の転載

 この8月2日に国民の生活が第一の森ゆうこ議員・はたともこ議員が参議院で提出した違法ダウンロード刑事罰化(ダウンロード犯罪化)に関する質問主意書pdf版)に対する政府答弁書(pdf)が8月10日付で返って来ている。

 どのような法律であれ成立して終わりということはなく、成立した後も濫用されないよう地道に運用を監視して行くこと、必要な見直しを求めて行くことが重要であり、政局迷走の中でこのような質問主意書を提出して下さった両議員と関係者の皆様には心から感謝したい。

 政府の答弁書はほとんど回答になっていないが、回答になっていないことから見えて来ることもあるので、ここで質問主意書と答弁書の回答を一問一答形式に直して転載して行きたいと思う。

 まず、質問主意書の前文は以下の通りである。ダウンロード犯罪化に関する問題意識としてこれ以上追加することはないだろう。

今国会成立の著作権法の一部を改正する法律における違法ダウンロード刑事罰化に関する質問主意書

 今国会で内閣が提出した「著作権法の一部を改正する法律案」について、衆議院文部科学委員会で自由民主党と公明党の議員から所謂「違法ダウンロードの刑事罰化」(以下「本法律修正部分」という。)を含む修正案が提出され、同法案は修正議決の後、六月二十日に参議院で可決、成立した。
 本質問主意書の提出者・参議院議員森ゆうこは、今回の「著作権法の一部を改正する法律案」の内閣提出部分について、文部科学副大臣(当時)として法案の立法作業を行った者であるが、議員提出の本法律修正部分については強く反対し、六月二十日の参議院本会議では法案に反対した。
 本質問主意書の提出者・参議院議員はたともこは、本法律修正部分については強い危惧を持ちつつも、民主党参議院国会対策副委員長(文教科学委員会担当)(当時)として党議決定に従い、本会議において賛成した。
 私たちは本法律修正部分について、その正当性、背景となる立法事実、日本国憲法に定められた罪刑法定主義のほか、可罰的違法性、青少年への重大な悪影響、国会審議の形骸化、業界団体の利益に偏った議論、立法過程のデュープロセスの軽視等、重大な数々の疑問を持っている。
 よって、本法律修正部分について、一般社団法人インターネットユーザー協会、文筆家・音楽制作者高橋健太郎氏、情報学者・国際日本文化研究センター教授山田奨治氏の協力を得て協議し、それを踏まえて、ここに質問主意書を提出することとした。
 本法律修正部分については、参議院文教科学委員会での附帯決議にあるように、「著作権法の運用に当たっては、犯罪構成要件に該当しない者が不当な不利益を被らないようにすることが肝要であり、とりわけ第百十九条第三項の規定の運用に当たっては、警察の捜査権の濫用やインターネットを利用した行為の不当な制限につながらないよう配慮すること」が、政府及び関係者には求められている。
 私たちは、今回の質問主意書提出を機に、政府及び関係者に対し、参議院での附帯決議の趣旨を実現することを強く求めるとともに、今後とも施行状況等を勘案して、検討を加え、必要な見直しを行うよう引き続き努力していく決意である。
 本質問主意書は小・中・高生など未成年の青少年にとっても重大な内容となるものであるから、項目ごとにできるだけ分かりやすく、具体的にかつ平易な文章で答弁されたい。

 以下、質問とその回答に移る。まず、「一 参議院文教科学委員会での附帯決議について」では「参議院文教科学委員会では、本法律修正部分に関し、以下の三点について、政府及び関係者に特段の配慮を求める附帯決議が行われた。」として、著作権法改正案の附帯決議(pdf)についての質問がされているが、その回答は以下のようになっている。

 「違法なインターネット配信等による音楽・映像を違法と知りながら録音・録画することの防止の重要性に対する理解を深めるための啓発等の措置を講ずるに当たって、国及び地方公共団体は、有償著作物等を公衆に提供し、又は提示する事業者と連携協力を図り、より効果的な方法により啓発等を進めること。」
 この附帯決議について、政府はどのような目標を持って、具体的にどのような措置をいつまでに行う方針か、明らかにされたい。

⇒一の1について
 御指摘の附帯決議については、文部科学省として、広く国民が「違法なインターネット配信等による音楽・映像を違法と知りながら録音・録画することの防止の重要性」に対する理解を深め、著作物の適正な利用が図られることを目標に、これまで「違法ダウンロードの刑事罰化についてのQ&A」及び「平成二十四年通常国会 著作権法改正等について」を文化庁ホームページに掲載したほか、平成二十四年七月に、各都道府県教育委員会等に対して事務連絡を発出し、各学校の授業等において「違法ダウンロードの刑事罰化に係るQ&A」を活用することを依頼している。今後は、関係団体が作成した啓発用パンフレットの活用を学校等に促すなど、関係団体との連携協力を図りつつ、「違法なインターネット配信等による音楽・映像を違法と知りながら録音・録画することの防止の重要性」についての啓発等に努めてまいりたい。

 「有償著作物等を公衆に提供し、又は提示する事業者は、インターネット利用者が違法なインターネット配信等から音楽・映像を違法と知りながら録音・録画することを防止するための措置を講ずるように努めること。」
 この附帯決議について、政府は関係者に対し、どのように対処する方針か、具体的かつ詳細に明らかにされたい。

⇒一の2について
 御指摘の附帯決議の内容については、関係団体に対して「著作権法の一部を改正する法律について(通知)」 (平成二十四年六月二十七日付け二十四庁房第九十一号文部科学副大臣通知)を発出する等によりその周知を図つてきたところであり、今後は、関係者の取組状況を把握した上で、必要に応じ、適切な措置を講じてまいりたい。

 「著作権法の運用に当たっては、犯罪構成要件に該当しない者が不当な不利益を被らないようにすることが肝要であり、とりわけ第百十九条第三項の規定の運用に当たっては、警察の捜査権の濫用やインターネットを利用した行為の不当な制限につながらないよう配慮すること。」
 この附帯決議に対して、政府はどのような措置を行う方針か、具体的かつ詳細に示されたい。

⇒一の3について
 警察庁において、都道府県警察に対して通達を発出する等して、御指摘の附帯決議の内容、著作権法の一部を改正する法律(平成二十四年法律第四十三号)による改正後の著作権法(以下「新法」という。)第百十九条第三項の規定の趣旨等について周知する予定である。

 ダウンロード犯罪化は10月1日に施行される訳だが、この政府回答によれば、担当省庁である文化庁はほとんど違法ダウンロードの刑事罰化についてのQ&A及び平成24年通常国会 著作権法改正等についてのホームページでの公開及び身内の教育委員会・関係団体への事務連絡・通知以上のことをする気がないと知れる。ダウンロード違法化の周知率を考えても、これだけで施行までに十分な周知ができるとは到底思えない。そもそも、このQ&A自体何ら法的に拘束力を持つものではなく内容的にほとんど無意味と言っていいものだが、このQ&Aは専門家にとっても良く分からず、著作権に詳しくない人なら読んでもさらに混乱するだけだろう。

 また、これとは全く別に警察は警察で勝手に通達を出すつもりと知れるが、この一の3の回答で文化庁のQ&Aに関する言及がないところを見ると、恐らく警察庁の通達と文化庁のQ&Aはリンクしないのだろう(この意味でも文化庁のQ&Aの存在価値はないに等しい)。大体、ダウンロード犯罪化の趣旨は国会審議でロクに明らかにされていないので、警察庁で通達をすると言っても条文そのものの提示と通り一遍の形式的な説明しかできないに違いない。違法ダウンロード罪についても各都道府県警察で相当対応に差が出て来ることが予想されるが、中には相当アグレッシブな法解釈をする都道府県警察も出てくるのではないかとかなり心配である。

 次に、「二 文化庁の改正法Q&Aについて」の質問とその回答は以下のようになっている。

 文化庁のホームページに掲載されている「平成二十四年通常国会著作権法改正等について」中の「改正法Q&A」問七-二~問七-八では、犯罪構成要件に該当するかどうかの判断基準例が示されているが、実際の運用において、条文を恣意的に判断し、当該Q&Aに示した見解と齟齬をきたすことはないか。警察庁や検察庁も含め、政府の統一見解を示されたい。

⇒二の1について
 犯罪の成否は、法と証拠に基づき、個別の事案ごとに適切に判断されるべき事柄であると考えている。

2 特に、改正法Q&A問七-八において、「関係者である権利者団体は、仮に告訴を行うのであれば、事前に然るべき警告を行うなどの配慮が求められると考えられます」と文化庁は回答している。
 この回答内容の実効性はどのように担保されるのか。政府としての見解を示されたい。

⇒二の2について
 新法第百二十三条第一項の告訴を行う前に警告を行うかどうかは権利者の判断によるものであるが、政府としては、今後とも、御指摘の「改正法Q&A問七-八」の内容について、権利者団体を含め、広く国民への周知を図つてまいりたい。

 ここでも、ダウンロード犯罪化条項の実際の運用について、政府全体としては犯罪の成否は法と証拠に基づき個別の事案ごとに判断されるとだけの回答であり、文化庁のQ&Aは警察庁や検察庁にとっては何の意味も持たないものと知れる。また、条文上何ら担保されていないので当たり前と言えば当たり前だが、政府回答通り、告訴を行う前に警告を行うかどうかは権利者次第であり、場合によっては事前の警告なくいきなり告訴されることもあり得るだろう。

 最後に、「三 本法律修正部分の立法経緯と運用等について」の質問とその回答は以下のようになっている。

 本年六月十九日の参議院文教科学委員会において、神本美恵子文部科学大臣政務官は、平成二十一年著作権法改正で違法ダウンロードが刑事罰化されなかった理由について「一つは、個々人の違法ダウンロード自体は軽微であること、二つ目に、家庭内で行われる行為についての規制の実効性の確保が困難であることなどから、刑事罰の対象とされなかった」と答弁した。
 ①「個々人の違法ダウンロード自体は軽微である」とは、具体的にどの程度までの数量のダウンロード行為を言っているのか。軽微と判断できる一人あたりのダウンロードの数量を示されたい。また、②三年後の現在、一人あたりの違法ダウンロードの数量に変化はあるか、政府の把握するところを示されたい。さらに、③「家庭内で行われる行為についての規制の実効性の確保が困難である」とはどういうことか、具体的かつ詳細に示されたい。加えて、④三年後の現在、その「困難である」との状況に変化はあるか、政府の把握するところを示されたい。最後に、⑤前述の二つの理由以外に、刑事罰化されなかった理由があれば、具体的に示されたい。以上五点について政府の見解を求める。

⇒三の1の①及び②にづいて
 御指摘の「個々人の違法ダウンロード自体は軽微である」とは、具体的な数量を念頭においているものではなく、また、御指摘の「一人あたりの違法ダウンロードの数量」については把握していない。

三の1の③及び④について
 御指摘の「家庭内で行われる行為についての規制の実効性の確保が困難である」とは、家庭内で行われる違法行為を把握し、摘発することは、通常困難であることが多いということであり、また、お尋ねの「「困難である」との状況に変化はあるか」については把握していない。

三の1の⑤について
 御指摘の二つの理由以外に特段の理由はない。

 ①無料放送番組、広告付きあるいはプロモーション用などで無料配布されている音楽・映像は、今回の改正法上の有償著作物とされるのか。また、②当初は有償でなくとも、後のCD販売に合わせて同じコンテンツが有償で提供されるように変化した場合、その後は有償著作物に変化すると解釈するのか。③有償著作物に変化するなら、無償の時点で違法アップロードされた著作物のダウンロードは、どの時点から刑事罰対象に変化するのか。④有償となった後に違法アップロードされた著作物のみが、刑事罰を負う違法ダウンロードの対象となるのか。以上四点について政府の見解を求める。

⇒三の2の①について
 御指摘の「無料放送番組、広告付きあるいはプロモーション用などで無料配布されている音楽・映像」の具体的な内容が必ずしも明らかではないが、当該音楽・映像が新法第百十九条第三項に規定する「有償で公衆に提供され、又は提示されているもの」ではない場合には、同項に規定する「有償著作物等」には該当しないものと考える。

三の2の②から④までについて
 新法第三十条第一項に定める私的使用の目的をもつて新法第百十九条第三項に規定する「著作権又は著作隣接権を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権又は著作隣接権の侵害となるべきものを含む。)を受信して行うデジタル方式の録音又は録画」を行つた時点で、当該録音又は録画の対象となる著作物又は実演等が同項に規定する「有償著作物等」に該当する場合であつて、自らその事実を知りながら当該録音又は録画を行つて著作権又は著作隣接権を侵害したときは、刑事罰の対象になるものと考える。

 ①有償で公衆に提供・提示されていたとしても、現在にあっては、有償での入手あるいは聴取の方法がない場合(例えば古いレコードなど)は、今回の改正法上の有償著作物とされるのか。②対象とされる場合、過去の文化遺産である音源を研究等のために入手する手段もなくなってしまうが、それは文化研究や文化振興上、好ましいと言えるか。以上二点について、政府の見解を求める。

⇒三の3について
 御指摘の「有償で公衆に提供・提示されていたとしても、現在にあつては、有償での人手あるいは聴取の方法がない場合(例えば古いレコードなど)」の具体的な内容が必ずしも明らかではないが、新法第百十九条第三項に規定する「有償で公衆に提供され、又は提示されているもの」ではない場合には、同項に規定する「有償著作物等」には該当しないものと考える。

 著作物のダウンロードに際し、違法・合法を区別することが法律のプロでも困難である場合が存在する。①違法・合法を明確に区別することがほぼあらゆる者にとって実質不可能な中で、私的違法ダウンロード行為を処罰化することに罪刑法定主義上の問題はないのか。②刑罰法規に求められる明確性の原則は担保されているのか。以上二点について政府の見解を求める。

⇒三の4について
 政府としては、新法第百十九条第三項の規定について、刑罰法規としての内容は明確であり、罪刑法定主義に反するものではないと考えている。

 前記1の参議院文教科学委員会において、水落敏栄委員の「警告なく処罰されるのではないか」、「事前の警告もなくすぐに処罰するというのは問題ではないか」という懸念の質問に対して、修正案提出者である河村建夫衆議院議員は「親告罪でもございますから、権利者団体は告訴を行うに当たってはやっぱり事前に御指摘のようなしかるべき警告を発するということは、こういうことは当然なければならない、そのように私は考えます」と答弁した。この河村建夫議員の見解を踏まえて、岸博幸参考人及び津田大介参考人も言及したフランス及び韓国における「スリーストライク制」について、本法律修正部分の運用に当たって、我が国に導入する考えはあるのか、政府の見解を示されたい。

⇒三の5について
 御指摘の「フランス及び韓国における「スリーストライク制」」の導入については、政府としては、現時点において予定していないが、諸外国の状況等を踏まえつつ、今後、必要に応じ、その可否を含めて検討してまいりたい。

 違法ダウンロードを未然に防ぐ努力をすべきであるが、まず何よりも違法アップロード対策を強化すべきである。今後の具体的な違法アップロード対策について、政府の見解を示されたい。

⇒三の6について
 お尋ねの「違法アップロード対策」については、政府としては、今後とも、違法アップロードが行われないよう、国民への普及啓発等の充実を図るとともに、違法アップロードに対する取締りや海外における違法アップロードについての関係団体を通じた対策を行ってまいりたい。

 本法律修正部分による委縮効果で、かえってレコード産業等の衰退につながるという指摘がある。インターネット利用の委縮効果を防ぐために、具体的にどのような対策をとるのか、政府の見解を示されたい。

⇒三の7について
 政府としては、御指摘の「インターネット利用の委縮効果」が生じないよう、新法第百十九条第三項の趣旨等について、今後とも「違法ダウンロードの刑事罰化についてのQ&A」について広く国民に対して周知するなど、インターネット、広報誌その他の媒体の活用、「著作権セミナー」その他の講習会や研修会の開催等を通じた広報啓発活動を行うとともに、関係団体による広報啓発活動を支援してまいりたい。

 三の1に対する政府回答は、政府としてダウンロード犯罪化を是とするに足る立法事実の変化を全く認識していないと認めているに等しい。次には、では何故政府与党としてこのような法改正に賛成したのかということが当然問われてしかるべきだろう。そのような質問を投げたところで、また人を小馬鹿にした回答が返って来るだけかも知れないが。

 三の2〜3に対する政府回答で、実際に回答を作ったのだろう文化庁や警察庁の担当は、「無料放送番組、広告付きあるいはプロモーション用などで無料配布されている音楽・映像」や「有償で公衆に提供・提示されていたとしても、現在にあつては、有償での人手あるいは聴取の方法がない場合(例えば古いレコードなど)」について当然何を意味しているのか理解していただろうと思うが、勝手に「具体的な内容が必ずしも明らかではない」と言い、政府としては「有償で公衆に提供され、又は提示されているもの」である「有償著作物等」について条文以上の解釈を示す気はないようである。したがって、文化庁のQ&Aの内容も全くあてにならず、「有償著作物等」のクライテリアも極めて不明確なままであると言わざるを得ない。(大体、この質問で不明確だったら、個別具体的な著作物名をあげて該当するかどうかを聞くしかないと思うが、そうしたら政府は何と回答するのだろうか。)

 また、三の4に対する政府回答で、ダウンロード犯罪化条項は、刑罰法規としての内容は明確であり、罪刑法定主義に反するものではないと政府は答えているが、何ら根拠は示していない。法改正を許した立場からするとそうとしか答えられないだろうが、根拠なくそう言われたところで、そもそもの条文の不明確性に加え執行における問題もあり、ダウンロード犯罪化条項には刑罰法規としての不明確性の問題・罪刑法定主義上の問題が明らかにあるという私の考えは変わりはしない。(これは最後裁判で争わなければならないことである。)

 三の5〜7に対する政府回答で、今後について政府は回答しているが、やはり今まで以上の周知活動をするつもりはないと見える。また、今のところ導入予定はないとしているが、政府として今後3ストライクアウトポリシーの導入を検討することもあり得るとしている点も重要だろう。

 要するに、政府としては、法改正に立法事実はないと認め、周知や濫用防止について今以上のことはせず、明確な統一解釈を示すこともなく、10月1日から始まるだろう警察・検察・権利者団体による恣意的な運用を多少なりとも統制する気は全くない上、今後さらなる規制強化の検討もあり得ると言っているのである。はっきり言ってこのような内閣の答弁書を見て私はさらに疑問と懸念が増えただけである。

 海賊版対策条約(ACTA)の衆議院審議も心配だが、ダウンロード犯罪化についてももはや10月1日の施行まで後1月と10日くらいしかない訳で、この体たらくでは、ロクな周知もされないまま、今後さらに混乱に拍車がかかって行くに違いない。すぐにどうこうできる話ではないが、政局の迷走もとどまるところを知らず、残念ながら今後も非常に辛い状況が続くのだろう。

(2012年8月20日夜の追記:少し文章を整えた。)

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2012年6月20日 (水)

第277回:ダウンロード犯罪化を含む著作権法改正案の参議院での可決・成立及び今後のこと

 残念極まることに、今日2012年6月20日、参議院文教科学委員会及び本会議で、ダウンロード犯罪化を含む著作権法改正案が可決・成立した(参議院インターネット審議中継ITmediaの記事internet watchの記事朝日のネット記事参照)。

 今日の参院文科委の審議では、昨日あれほど明確に慎重・反対の意見を表明して下さった森ゆうこ議員が委員から外され、何らの質疑・討論もなく、わずか数分で全会一致の採決が行われた。この法案の審議では、議論を尽くすことなく反対意見を持つ者を公の議論の場から排除してその意見表明を封じ、委員会を無理矢理全会一致にするという実に非民主主義的なプロセスが取られ、本会議での可決まで持って行くということが行われたのである。はっきり言って、これはあのデタラメ極まるダウンロード違法化の時の審議をその非道さにおいて上回っている。

 このような非民主主義的な口封じの仕方を推進側を取ったということは、裏を返せば、利用者が抱いていた懸念、国会の審議でも、共産党の宮本たけし議員や民主党の森ゆうこ議員から、また参考人として呼ばれた日弁連の市毛由美子氏やMIAUの津田大介氏から示された懸念は実に正当なものだったと言っているに等しい。今すぐにどうこうできるという話ではないが、このような姑息なやり口で異論を封じ、多様な意見を取り入れて議論を深め最も妥当な結論を導くという民主主義の常道と良識を踏み躙られたからには、今後はこちらもそれをどのようにして乗り越えて行くかを真剣に考えて行かなければならない。

 また、少なくとも、このような著作権法改正のロビーをしたのが主としてレコード協会やエイベックス、音事協といったCD中心のビジネスを展開するレコード業界(必ずしも音楽業界とイコールではない)であることを覚えておく必要があるだろうし、次の選挙に向けて、与党内で最後まで反対の意見を持って下さっていた、民主党の森ゆうこ議員や川内博史議員、また検討の途中の民主党部会で慎重な意見を言って下さったという民主党の林久美子議員といった各先生方の名前を覚えておく必要もあるだろう。ここで、共産党が宮本たけし議員を筆頭として強力に反対して下さったということも忘れてはいけない。また、主に法案を強力に推進していた、自民党の馳浩議員や下村博文議員の名前も推進側の議員の名前として記憶しておかなければならないだろうが、自民党については、検討の過程において、世耕弘成議員や山本一太議員が慎重な意見を表明していたことに注意しておく必要があるだろう。さらに、公明党の池坊保子議員がダウンロード犯罪化修正案の主たる提案者となっているが、一丸となってダウンロード犯罪化を強力に推進していた節がある公明党は本当に党全体として危険だと思っておいた方がいい。

 さらに、参議院での本会議で反対票を投じて下さった12名の議員として、民主党の森ゆうこ議員、共産党の井上哲士議員・市田忠義議員・紙智子議員・田村智子議員・大門実紀史議員・山下芳生議員、社民党の福島みずほ議員・又市征治議員・山内徳信議員・吉田忠智議員、無所属の糸数慶子議員の名前をここでもあげておく(参議院の本会議投票結果参照)。

 実際には、警察・検察の捜査能力が無限大ということはあり得ず、また現実的に考えれば捜査能力が即座に大幅に増強されるということもないので、法改正の施行後すぐにどうこうなるということはないだろうが、立法プロセス中で法案の問題点が明確にされ懸念が解消されるという機会はもはや失われ、ほぼそのまま恣意的な運用が可能なままに行政・司法に丸投げされたのである、ダウンロード犯罪化の検討過程において示された懸念は規模の大小こそ読めないが現実化して行くだろうし、今後このような規制の存在が日本における法規制とビジネスのあり方を順当に歪めて行き続けるに違いない。

 このような非民主主義的かつ姑息なやり口で可決された法律を守れという気は私はさらさらないし、私的違法ダウンロード罪の犯罪としての構成要件は不明確極まるので、インターネットの利用を止めでもしない限り守ろうとしても守れないだろうが、こう言っては何だが政治家を始めとして警察・検察に特にマークされやすい方は特にネット利用に注意した方が良いだろう。

 今から丁度3年前に私はダウンロード違法化の可決の際に一億層海賊時代の到来と書いたが(第177回参照)、今度の法改正によりついに一億総犯罪者時代に突入することが目前に迫った。ダウンロード違法化法成立後後3年を経て、かくしてパンドラの箱は完全に開いた。が、恐らくその底に希望は残されていない。

 法律は作れば終わりというものではなく、私は、何があろうとダウンロード違法化・犯罪化条項は削除するべきものと言い続けるつもりであり、このブログも続けて行くつもりであるが、上でも書いたように今後どうして行くかを真剣に考えなければならない時が来ていると私は思っている。

(2012年6月22日の追記:一箇所誤記を修正した。)

(2012年7月3日の追記:参議院HPで文教科学委員会の6月20日の議事録が公表されているので、念のため、ここにリンクを張っておく。)

(2012年8月5日の追記:参議院文教科学委員会の6月20日の議事録が国会図書館のHPの方に移されたのでリンクを追加しておく。)

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2012年6月19日 (火)

第276回:内閣提出著作権法改正案に対して自公が提案し衆議院で可決された修正案の条文の転載及び参議院での審議の開始

 内閣提出著作権法改正案に対して自公が提案したダウンロード犯罪化修正案が衆議院で可決され、本日6月19日、参議院の文教科学委員会で審議が開始された。

 もはや条文の作りがどうこうといったテクニカルな問題ではなくなっているように思うが、このダウンロード犯罪化修正案の条文がようやく公開されたので(衆議院のHP参照)、改め文を対照条文型式にして、ここにも転載しておく。

 本日の参議院文教科学委員会の審議で(インターネット審議中継internet watchの記事ITmediaの記事、Twitter実況のまとめ1参照)、民主党の森ゆうこ議員が明確に慎重・反対の意見を述べて下さったことや、日弁連の市毛由美子氏やMIAUの津田大介氏のような慎重な立場の方も含め参考人質疑が行われたことは大変ありがたく思うが、残念ながら、ユーザー側が示した懸念は何ら解消されることなく、ダウンロード犯罪化をごり押しする自公の議員や推進の立場の参考人との間の議論はほぼ完全なすれ違いのまま終わっている。

 できれば法学者の先生なども呼んでさらに慎重な議論をしてもらいたいところだが、推進側としてはもうこれで参考人質疑も終わったという扱いにしたいのだろうし、明日10時からの参院文科委員会でこのダウンロード犯罪化の修正案を含む著作権法改正案の採決が行われる可能性も高い。日本の知財政策の今後を占う意味で明日は極めて重要な1日になりそうである。

(2012年7月3日の追記:参議院HPで文教科学委員会の6月19日の議事録が公表されているので、念のため、ここにリンクを張っておく。)

(2012年8月5日の追記:参議院文教科学委員会の6月19日の議事録が国会図書館のHPの方に移されたのでリンクを追加しておく。)

(以下、自公が提案し衆議院で可決された修正案の条文。下線部が追加部分だが、読む際には、この修正案は内閣提出の著作権法改正案(第266回、文科省作成の新旧対象条文(pdf)参照)からの修正であることに注意する必要がある。)

◯著作権法の一部を改正する法律案に対する修正案
第八章 罰則
第百十九条
 著作権、出版権又は著作隣接権を侵害した者(第三十条第一項(第百二条第一項において準用する場合を含む。第三項において同じ。)に定める私的使用の目的をもつて自ら著作物若しくは実演等の複製を行つた者、第百十三条第三項の規定により著作権若しくは著作隣接権(同条第四項の規定により著作隣接権とみなされる権利を含む。第百二十条の二第三号において同じ。)を侵害する行為とみなされる行為を行つた者、第百十三条第五項の規定により著作権若しくは著作隣接権を侵害する行為とみなされる行為を行つた者又は次項第三号若しくは第四号に掲げる者を除く。)は、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

(略)

 第三十条第一項に定める私的使用の目的をもつて、有償著作物等(録音され、又は録画された著作物又は実演等(著作権又は著作隣接権の目的となつているものに限る。)であつて、有償で公衆に提供され、又は提示されているもの(その提供又は提示が著作権又は著作隣接権を侵害しないものに限る。)をいう。)の著作権又は著作隣接権を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権又は著作隣接権の侵害となるべきものを含む。)を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を、自らその事実を知りながら行つて著作権又は著作隣接権を侵害した者は、二年以下の懲役若しくは二百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

◯著作権法の一部を改正する法律案の附則に対する修正案
(施行期日)
第一条
 この法律は、平成二十五年一月一日から施行する。ただし、第二条第一項第二十号並びに第十八条第三項及び第四項の改正規定、第十九条第四項に一号を加える改正規定、第三十条第一項第二号の改正規定、第四十二条の三を第四十二条の四とし、第四十二条の二の次に一条を加える改正規定、第四十七条の九の改正規定(「又は第四十六条」を「、第四十二条の三第二項又は第四十六条」に改める部分に限る。)、同条ただし書の改正規定(「第四十二条の二まで」の下に「、第四十二条の三第二項」を加える部分に限る。)、第四十九条第一項第一号の改正規定(「第四十二条の二」を「第四十二条の三」に、「第四十二条の三第二項」を「第四十二条の四第二項」に改める部分に限る。)、第八十六条第一項及び第二項の改正規定(「第四十二条の二まで」の下に「、第四十二条の三第二項」を加える部分に限る。)、第九十条の二第四項に一号を加える改正規定、第百二条第一項の改正規定(「第四十二条の三」を「第四十二条の四」に改める部分に限る。)、同条第九項第一号の改正規定(「第四十二条の二」を「第四十二条の三」に、「第四十二条の三第二項」を「第四十二条の四第二項」に改める部分に限る。)並びに第百二十条の二第一号の改正規定並びに次条並びに附則第四条及び第五条の規定は、平成二十四年十月一日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。
 一 附則第七条、第八条及び第十条の規定 公布の日
 二 第二条第一項第二十号並びに第十八条第三項及び第四項の改正規定、第十九条第四項に一号を加える改正規定、第三十条第一項第二号の改正規定、第四十二条の三を第四十二条の四とし、第四十二条の二の次に一条を加える改正規定、第四十七条の九の改正規定(「又は第四十六条」を「、第四十二条の三第二項又は第四十六条」に改める部分に限る。)、同条ただし書の改正規定(「第四十二条の二まで」の下に「、第四十二条の三第二項」を加える部分に限る。)、第四十九条第一項第一号の改正規定(「第四十二条の二」を「第四十二条の三」に、「第四十二条の三第二項」を「第四十二条の四第二項」に改める部分に限る。)、第八十六条第一項及び第二項の改正規定(「第四十二条の二まで」の下に「、第四十二条の三第二項」を加える部分に限る。)、第九十条の二第四項に一号を加える改正規定、第百二条第一項の改正規定(「第四十二条の三」を「第四十二条の四」に改める部分に限る。)、同条第九項第一号の改正規定(「第四十二条の二」を「第四十二条の三」に、「第四十二条の三第二項」を「第四十二条の四第二項」に改める部分に限る。)、第百十九条第一項の改正規定、同条に一項を加える改正規定並びに第百二十条の二第一号の改正規定並びに次条並びに附則第四条から第六条まで及び第九条の規定 平成二十四年十月一日」

(経過措置)
第二条
 この法律による改正後の著作権法(以下「新法」という。)第十八条第三項第一号から第三号までの規定は、前条ただし書に規定する前条第二号に掲げる規定の施行前に著作者が行政機関(行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成十一年法律第四十二号)第二条第一項に規定する行政機関をいう。)、独立行政法人等(独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律(平成十三年法律第百四十号)第二条第一項に規定する独立行政法人等をいう。)又は地方公共団体若しくは地方独立行政法人(地方独立行政法人法(平成十五年法律第百十八号)第二条第一項に規定する地方独立行政法人をいう。以下この項において同じ。)に提供した著作物でまだ公表されていないもの(その著作者の同意を得ないで公表された著作物を含む。)であって、公文書等の管理に関する法律(平成二十一年法律第六十六号。以下この項において「公文書管理法」という。)第八条第一項若しくは第十一条第四項の規定により国立公文書館等(公文書管理法第二条第三項に規定する国立公文書館等をいう。次項において同じ。)に移管されたもの又は公文書管理条例(地方公共団体又は地方独立行政法人の保有する歴史公文書等(公文書管理法第二条第六項に規定する歴史公文書等をいう。以下この項において同じ。)の適切な保存及び利用について定める当該地方公共団体の条例をいう。以下この項において同じ。)に基づき地方公文書館等(歴史公文書等の適切な保存及び利用を図る施設として公文書管理条例が定める施設をいう。次項において同じ。)に移管されたものについては、適用しない。

 新法第十八条第三項第四号及び第五号の規定は、前条ただし書に規定する前条第二号に掲げる規定の施行前に著作者が国立公文書館等又は地方公文書館等に提供した著作物でまだ公表されていないもの(その著作者の同意を得ないで公表された著作物を含む。)については、適用しない。

(略)

(罰則の適用に関する経過措置)
第四条
 この法律(附則第一条ただし書に規定する附則第一条第二号に掲げる規定については、当該規定)の施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。

(略)

(組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律の一部改正)
第六条
 組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(平成十一年法律第百三十六号)の一部を次のように改正する。
  別表第四十八号中「第百十九条」を「第百十九条第一項又は第二項」に改める。

(国民に対する啓発等)
第七条
 国及び地方公共団体は、国民が、新法第三十条第一項(新法第百二条第一項において準用する場合を含む。)に定める私的使用の目的をもって、有償著作物等(新法第百十九条第三項に規定する有償著作物等をいう。以下同じ。)の著作権又は著作隣接権を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であって、国内で行われたとしたならば著作権又は著作隣接権の侵害となるべきものを含む。)を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を、自らその事実を知りながら行って著作権又は著作隣接権を侵害する行為(以下「特定侵害行為」という。)の防止の重要性に対する理解を深めることができるよう、特定侵害行為の防止に関する啓発その他の必要な措置を講じなければならない。

 国及び地方公共団体は、未成年者があらゆる機会を通じて特定侵害行為の防止の重要性に対する理解を深めることができるよう、学校その他の様々な場を通じて特定侵害行為の防止に関する教育の充実を図らなければならない。

 附則第一条第二号に掲げる規定の施行の日の前日までの間における第一項の規定の適用については、同項中「新法第三十条第一項(新法第百二条第一項において準用する場合を含む。)」とあるのは「著作権法第三十条第一項(同法第百二条第一項において準用する場合を含む。)」と、「新法第百十九条第三項に規定する有償著作物等」とあるのは「録音され、又は録画された著作物、実演、レコード又は放送若しくは有線放送に係る音若しくは影像(著作権又は著作隣接権の目的となっているものに限る。)であって、有償で公衆に提供され、又は提示されているもの(その提供又は提示が著作権又は著作隣接権を侵害しないものに限る。)」とする。

(関係事業者の措置)
第八条
 有償著作物等を公衆に提供し、又は提示する事業者は、特定侵害行為を防止するための措置を講じるよう努めなければならない。

(運用上の配慮)
第九条
 新法第百十九条第三項の規定の運用に当たっては、インターネットによる情報の収集その他のインターネットを利用して行う行為が不当に制限されることのないよう配慮しなければならない。

(検討)
第十条
 新法第百十九条第三項及び附則第八条の規定については、この法律の施行後一年を目途として、これらの規定の施行状況等を勘案し、検討が加えられ、その結果に基づいて必要な措置が講じられるものとする。

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2012年6月18日 (月)

第275回:ダウンロード犯罪化を含む著作権法改正案の衆議院文部科学委員会出来レース審議(議事録)

 先週6月15日に、衆議院文部科学委員会及び本会議で、自公提案のダウンロード犯罪化がねじ込まれる形で内閣提出の著作権法改正案が可決され、法案は参議院に回された。

 内閣提出の著作権法改正案の内容(第266回参照)に関しても私は問題なしとしないが、てんたま氏(Twitter)がそのブログ記事で以下のような要綱の一部を紹介しているが、自公がねじ込んだこのような内容の修正案はほとんど無法極まるデタラメと言っていい。

著作権法の一部を改正する法律案に対する修正案要綱
第一 罰則の整備

 著作権法第三十条第一項に定める私的使用の目的をもって、有償著作物等(録音され、又は録画された著作物又は実演等(著作権又は著作隣接権の目的となっているものに限る。)であって、有償で公衆に提供され、又は提示されているもの(その提供又は提示が著作権又は著作隣接権を侵害しないものに限る。)をいう。以下同じ。)の著作権又は著作隣接権を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であって、国内で行われたとしたならば著作権又は著作隣接権の侵害となるべきものを含む。)を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を、自らその事実を知りながら行って著作権又は著作隣接権を侵害した者は、二年以下の懲役若しくは二百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科すること。(第百十九条第二項関係)
第二 附則の修正
一 施行期日
 第一及び四の施行期日を平成二十四年十月一日とし、二、三及び五の施行期日を公布の日とすること。

 このような内容は、第256回で紹介した議員立法の内容をほぼそのまま著作権法改正案の修正案としたものであり、その運用に対する懸念は極めて大きいと言わざるを得ない。

 以下に、衆議院インターネット中継から私が作成した衆議院文部科学委員会の議事録を載せるが、ダウンロード犯罪化問題の本質をついた質疑をしてくれているのは共産党の宮本議員くらいで、あとは全て出来レースとしか思えない質疑応答を繰り返している。宮本議員のダウンロード犯罪化に対する質問、懸念に対してもほとんど全て無視する形で採決がおこなわれており、このような委員会運営による修正案採決自体極めて大きな問題があるということは全く宮本議員の指摘の通りだろう。私も第273回でQ&Aを書いているが、私の感じている懸念も、このような審議を見た結果、大きくなりこそすれ全く解消していない。(大体、今週にも参議院で法案が可決されるかも知れないというのに、いまだにまともに最も重要な基礎情報である修正案の条文が公開されておらず、委員会議事録の公開すらないという状態自体、国民をバカにしているとしか思えない。)

 ここで今まで書いて来たことを繰り返し述べることはしないが、この衆議院の審議で明らかになったことに、修正案が、ダウンロード犯罪化だけではなく、有償著作物提供事業者が違法ダウンロード行為を防止するための措置を講ずるよう努めるものとするという努力規定を含んでいるということがある。自民党の下村議員がこれによりLマークがさらに浸透する云々とすっとぼけたことをしれっと言っているが、このような規定によりLマークが関係事業者に本当に強制されるとしたら大問題であるし、それ以上にこのような規定の導入には非常に危険なサイトブロッキングなどの強要につながる恐れすらあるだろう。

 宮本議員のブログ記事でも触れられているように、共産党の宮本議員だけでなく、修正案の採決においては、民主党からも1人が反対、1人が退席をしているのは、やはり与野党問わずこのような内容の修正案や審議のやり方に懸念を持っている慎重派の議員もそれなりにいることを示しているのだろう。

 今のところ、衆議院の審議を経ても様々な問題点に関するユーザーの懸念は解消されるどころかさらに大きくなっているとしか言いようがない。次は参議院で、参議院の文教科学委員会では問題の本質まで突っ込んだ審議と修正案の否決を期待したいが、衆議院がこの体たらくでは、参議院の審議も大いに不安である。

(2012年6月18日夜の追記:議事録の細かな言い回し、誤記を少し修正した。)

(2012年7月3日の追記:衆議院HPで文部科学委員会の6月15日の議事録が公表されているので、念のため、ここでもリンクを張っておく。)

(以下、2012年6月15日の衆議院文部科学委員会の議事録)

石毛えい子委員長(民主党):これより会議を開きます。内閣提出著作権法の一部を改正する法律案を議題といたします。この際お諮りいたします。本案審査のため、本日、政府参考人として、警察庁生活安全局長岩瀬光昭さん、総務省総合通信基盤局電気通信事業部長原口亮介さん、文化庁次長河村潤子さん及び厚生労働省社会・援護局障害保険福祉部長岡田太造さんの出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、ご異議ありませんか。(異議なしの声)ご異議なしと認めます。よって、そのように決しました。これより質疑に入ります。質疑の申し出がありますので、順次これを許します。下村博文委員。下村委員。

下村委員(自民党):おはようございます。自民党の下村博文です。いよいよ会期末になって参りまして、会期が延長されるかどうかも分からない状況の中ですね、文部科学委員会として、始めての閣法、著作権法、ま、これはこれで粛々とやって行く必要があるという風に思います。

(中略:神本美恵子政務官の政治団体役職在任等に関する質疑応答)

下村委員:本題に入りたいと思います。今日は著作権法ということでございます。今回の著作権法においていわゆる写り込み、これにかかる規定が整備されることになりました。写真撮影、録画、録音の場合に限り、対象物から分離困難な付随物や音等軽微な構成部分として複製、翻案し、その後利用することができる、ただし、著作者の権利を不当に害してはならないとされております。具体例として、写真や映像の背景に映画のポスターや絵画等が写る場合が想定されております。現在はデジタル技術が発達しておりますので、この写真や録画については、写り込みを画像処理で消去、分離することは比較的容易でもあるわけでございます。対象物から分離困難な付随物について何らかの基準や具体例があるのか、またこれからどのように明確にするのか確認をさせて頂きます。

石毛委員長:河村次長。

河村文化庁次長:今お尋ねのございました、改正法案第30条の2は、写真撮影などの際に背景等に有名なキャラクターが写り込んでしまうようないわゆる写り込みについて新たに権利制限の対象とするものでございます。ある著作物を創作する場合に別の著作物を除いて創作することが社会通念上客観的に困難であるということが要件となっております。ですから、具体的には、例えばキャラクターが描かれたTシャツを着た子供がいて、それを親が写真に取る場合、これはキャラクターを除いて子供を撮影することは、こういうケースでは社会通念上客観的に困難でございますので、後に消去できるかどうかということとは別にしてやはりこれは権利制限の対象となるものという風に考えられます。で、こうした条文上の要件をどう考えるのかとか、詳しい主旨などについてやはり十分に周知することが重要だと考えておりまして、もし法案が成立しました時には、関係誌や関係の雑誌などやホームページなどにおける解説の掲載ですとか、セミナー、説明会の実施などといった方法を用いまして、可能な限り分かりやすい周知を図って参りたいと存じます。

石毛委員長:下村委員。

下村委員:この私的利用のための複製をどこまで認めるかなど、著作権に対する全体的な考え方を整理しておく必要がこの際あるのではないかという風に思います。文部科学省の見解をおうかがいします。

石毛委員長:河村次長。

河村文化庁次長:今委員からご指摘のございました、例えば私的使用のための複製、著作権法第30条でございますけれども、このあり方については例えばその、個人的にまたは家庭内その他これに準ずる限られた範囲内といった場合に、どこまでをその範囲とすることが、これだけ技術革新、様々な情報流通が進んでいる中で適当であるのかとか、使用する者が複製することができるとなっているんですけれども、その本人でなければ絶対にいけないのかという議論もございます。こうした様々な課題もございますので、権利者団体や利用者団体の双方の関係者からヒアリングを行うなどいたしまして、昨年の文化審議会著作権分科会でも、検討課題の整理までを行ったところでございます。これらの課題について今後必要に応じて検討に着手して参りたいと存じます。

石毛委員長:下村委員。

下村委員:いよいよこれからTPP交渉が大詰めとなって参ります。このTPPについては農業分野における関税撤廃が注目されておりますけれども、非関税障壁の撤廃という点から、参加国の国内制度を一変させる可能性もあるわけでございます。本日議論されている著作権を含む知的財産もその中に含まれるわけです。国内のTPPへの参加是非を巡る議論において農産物などの貿易問題が注目されておりますけれども、知的財産は実は農業分野を凌ぐ重要な課題であり、アメリカが真にターゲットとしている分野とも言えるところでございます。アメリカの輸出における知的財産分野及び農業分野、自動車分野を調べてみましたら、この知的財産部門においてロイヤリティ収入とライセンス収入の合計で日本円で約7兆円、それから金融サービスでは約18兆円を輸出しております、また農業分野では2兆円、それから自動車分野では約7兆円、ですからこの知的財産部門7兆円という額は大変な額でもあるわけでございます。この中で、この日米経済調和対話、これがアメリカ側の要求を、この日米経済調和対話を見ますと、このTPP協定交渉の著作権分野において、アメリカが我が国に対して、これから自公で修正案を提出することにもなっておりますが、このダウンロード違法化の全著作物への拡大、それから非親告罪化、これを求めて来るのではないかという分析もあるわけでございます。今回の自公の修正案ですね、音楽等の私的違法ダウンロードを処罰する規定を整備するということの中で、アメリカのこの要求に応じてですね、我が国の著作権法が大幅に変更されるのではないか、こういう懸念が一部にあるわけでございまして、これについてちょっと整理をしておきたいという風に思います。今回の、これから出すですね、自公の修正案、このことによって追加される著作権法第119条第3項の保護法益は著作権又は著作隣接権という私権であり、これらに対する侵害行為は著作者等の事後追認又は事後承認により適法化される性格を有するものであると、このため被害者である権利者の意志を無視してまで追訴することは適当でない、このことから親告罪としたところでございます。したがって、今回の、我々が出すこの修正案による、ダウンロード違法化の全著作物への拡大、また非親告罪化が行われることはないという風に考えているところでございます。一方、アメリカの著作権法には、日本のように、私的使用のための複製という制限規定はなく、他人の著作物でも公正な利用ならば著作権侵害ではないというフェアユースと呼ばれる規定がございます。日米経済調和対話などにおいても、アメリカは我が国においてフェアユースの導入は特に要求をしていないわけでございますが、これは貿易相手国にファアユースの下に著作権を柔軟に運用される可能性があるからでございまして、こういう点に留意せずに著作権にかかる法体系をアメリカの主張に沿って変更すればアメリカの知的財産権は厳重に保護されるが我が国における著作権の利用が現在に比べて厳しく制限されるという事態にもなりかねないわけでございます。TPP協定交渉参加に向けた協議などにおいて、このようにですね、我が国の国益が損なわれることのないよう対処する必要があるという風に考えますけれども、現段階においてですね、政府の見解、それから対応状況について文部科学省にお聞きしたいと思います。

石毛委員長:高木文部科学副大臣。

高木文部科学副大臣:ご指摘のとおりTPP交渉において、知的財産分野は大変重要だと思っています。それで知的財産分野の1つとして著作権関連事項が含まれているということはうかがっていまして、個別には、ご指摘のあった、著作権等侵害罪の非親告罪化ということについて議論をされているということは聞き及んでおりますけれども、具体的に現在どのような議論になっているかということについては、把握をしてない、現時点では把握をしてない状況でございます。仮に我が国が交渉に参加して、当該課題が検討される場合には、まさにご指摘のあったとおり、著作権の保護と著作物利用の円滑なこのバランス、それから我が国の国内状況等をよく踏まえた上で慎重に検討して、我が国として主体的に判断をして参りたいという風に考えております。

石毛委員長:下村委員。

下村委員:アメリカの土俵の上に乗ってですね、議論が進まないようにしっかり政府として対応をして頂きたいという風に思います。さて、日本レコード協会の調査によりますと、一年間に違法ダウンロードされるファイルの数は43.6億ファイルにのぼると推計されております。これは正規音楽配信のダウンロード数の約10倍のファイルが違法にダウンロードされているという計算になるわけです。また同じく日本レコード協会等の調査によると、違法にダウンロードされているファイルを正規に配信されている音楽の販売価格に換算した場合、約6683億円になるという風に推計されております。違法に配信されているファイルの違法ダウンロードは、例えばそれが音楽ファイルの違法ダウンロードであれば、1つにはアーティストの著作権やレコード会社の著作隣接権を侵害する行為であるということ、それから多くの人に繰り返しおこなわれること、このことによって音楽産業に多大な損害を与え、引いてはアーティストが次の作品を世に送り出すことが難しくなるということにもつながるわけでございます。こういうことから、自民党、公明党は、これから共同提案で音楽等の私的違法ダウンロードを処罰する規定を整備するための閣法の修正案を提出したいという風に考えております。で、まず、この修正案に対しては、私的使用目的で違法に配信されている有償の音楽、映像を違法と知りながらダウンロードする行為を処罰の対象とすることにより、インターネット社会の健全な発展が阻害されるのではないかという懸念が一部示されております。インターネット上に著作権を侵害する違法なファイルが次々に配信され、多くの人々がそれをダウンロードするような事態が生じていることについては憂慮すべきことであると、これは言わざるを得ないと思います。知的財産立国をかかげる我が国においては、このような事態に適切に対処することがインターネット社会を発展させる上でも非常に重要であるという風に考えます。そもそも、今回のこの修正案で罰則を課そうとしている、違法に配信されているものであることを知りながら有償の音楽、映像を私的使用目的でダウンロードする行為は、1つにはアーティストの著作権やレコード会社の著作隣接権を侵害する行為であるとともに、2つ目に多くの人に繰り返しおこなわれることにより音楽産業に多大な損害を与え、引いてはアーティストが次の作品を世に送り出すことが難しくなる、こういう行為であると、そのようなダウンロード行為が繰り返し行われる状況を放置している、そういうことの方がですね、むしろインターネット社会の健全な発展を阻害するということになるのではないかと考えますが、政府の見解をお聞きしたいと思います。

石毛委員長:平野文部科学大臣。

平野博文文部科学大臣:委員はこの関係のものについての議論の経過も十分ご理解を頂いていると思っております。今わたくしも委員から指摘されて1年間にダウンロードされるファイルの数がかなりの数になるということ、及び、ビジネスベースの換算をすると6000億円を超えてくると、こういうことでございます。そういう意味におきまして、委員ご指摘のように、わたしはやっぱりインターネットの著作物の違法流通に関する権利者の被害というのは深刻な状況にあると、こういう認識に立ってございます。そういう意味合いにおきましても、平成21年の改正法におきましても、私的利用であっても、違法配信と知りながらダウンロードするという行為は違法としていると、こういうことでございます。音楽産業の発展やインターネット社会の健全な発展のためには、このようなルールがきちんと守られる、こういうことが非常に重要であると、かように考えております。また、加えて、この著作権というのは、過去の歴史から見ましても、非常に技術の進歩と、権利と、あるいは保護と、こういう観点でいたちごっこのような状況に来ていることも事実でありますから、やっぱり我々としては、的確に権利者の保護ということをしっかり守っていかなければならない、その対応策が重要であると、こういう認識でございます。

石毛委員長:下村委員。

下村委員:ありがとうございます。これから出す修正案でございますけれども、この文言が、違法に配信されているものであることを知りながら有償の音楽、映像を私的使用目的で複製する行為、私的違法ダウンロードということでございますが、この解釈次第では、ネット社会全体の検閲につながり、警察の捜査権の肥大化を招く危険があるのではないかということを表明する人たちもおられます。さらに、罰則に実効性を持たせようとすると、かなり薄い嫌疑で個々の個人のパソコンを押収できるようにすることになるということになると、それは人々のプライバシー侵害をする、プライバシー侵害する度合いが大きいのではないかと、こういう危惧を持たれる方々もおられます。で、公権力である捜査機関のネットへの介入の典型としてプロバイダからアクセスログを提出させることなどがあげられると考えられますけれども、現在そのような行為は裁判官の発する令状に基づいて行われる、令状主義ですね、ですからいきなり入ってですね、介入すると、個人の自宅に入って回収するということはあり得ないわけでございますし、まして、この修正案においても、この令状主義の範囲内にあるわけでありまして、無制限に捜査機関のネットへの介入を認めるものではないわけでございます。この令状を要しないというような、介入の性質が変容するものではなくて、今までの令状主義の中できちっとやるものであると、したがって、捜査機関がネットへ過剰に介入するのではないかという懸念はあたらないという風に思ってますし、また、薄い嫌疑で個人のパソコンが押収され、プライバシーが侵害されるのではないかという懸念もあたらないという風に我々思っておりますが、一般論として警察から見解をお聞きしたいと思います。

石毛委員長:警察庁岩瀬生活安全局長。

岩瀬警察庁生活安全局長:お答え申し上げます。犯罪捜査は法と証拠に基づいて進められるものでございまして、サイバー犯罪捜査におきましてもこのことは当然のことでございます。したがいまして、今ご指摘のありましたように、捜索、差し押さえ等、証拠収集を行う場合には、裁判官から発布された令状に基づき行なっているものでございます。ご質問のダウンロードにかかるような犯罪というものについて、これがもし新設されまして、警察においてそのような捜査を行う場合でありましても、法と証拠に基づきまして適正捜査に努めて参りたいと考えております。

石毛委員長:下村委員。

下村委員:はい。それから、ネット上に配信されているファイルは違法なものと適法なものが、これが混在していると、そのため、利用者がどれが違法か適法か区別できずですね、ネット上の表現やネットの利用に萎縮効果をもたらすのではないか、こういう懸念を表明されている方々もおられます。今回の修正案においては、故意犯のみ、意図的に分かってですね、犯罪を犯す、こういう故意犯のみを処罰の対象としておりまして、構成要件に該当する客観的事実の認識が必要であります。したがって、ダウンロードしようとする有償著作物等が著作権又は隣接著作権を侵害して違法に配信されたものであると知っていることが必要でありまして、配信されているファイルが違法であるか適法であるかの区別がつかない場合については罪に問われないということでございます。また、今回これから出すこの修正案では、著作、有償著作物等を公衆に提供し又は提示する事業者に対し、違法に配信されているものであることを知りながら有償の音楽、映像を私的使用目的でダウンロードする行為を防止するための措置を講ずるよう努めることとなっておりまして、既に一般に浸透しつつあるLマークの普及等がなお一層進むことが期待されます。で、この事業者の措置にかかる規定は、罰則の規定よりも早く、公布の日から施行することとなっており、罰則の規定が施行するまでの間に利用するサイトが適法か違法かの区別が容易になることが見込まれるところでもございます。したがって、適法か違法かの判断に躊躇してネット上の表現やネットの利用に萎縮効果をもたらすという懸念はあたらないという風に考えますが、政府の見解をお聞きしたいと思います。

石毛委員長:高井文部科学副大臣。

高井副大臣:デジタル化、ネットワーク化の進展にともなって、著作権法が国民生活に深いかかわりを持つようになって来ている、それに加えて、著作権侵害について刑事罰が課される可能性があるということから、著作権法改正にあたっては、著作物の利用に過度な萎縮が生じないように、明確性の原則に十分留意することが必要という風に思ってまして、今回の改正の検討にあたっても関係省庁とも協議を重ねて慎重に検討を行なって参りました。で、平成21年の著作権法改正において、いわゆる違法ダウンロードについて、刑事罰ではないが違法としたと、その時にも違法サイト、今ご紹介頂いた、違法サイトを識別するためのLマークのような取り組みを推進をして参りまして、政府としてもこのような取り組みが広く普及するように、今後も支援して行きたいと思っております。

石毛委員長:下村委員。

下村委員:同様の罰則規定が諸外国では既に実施されておりますが、罰則規定どんな国でどんなことがあるのか、そして、このことによって罰則された事例があるのかどうか、諸外国の例をちょっとあげて頂きたいと思います。

石毛委員長:河村次長。

河村次長:違法な配信からの私的な複製行為、いわゆる違法ダウンロードに対しましては、アメリカですとかドイツなどでは、刑事罰の対象としておりますが、英国では、我が国と同様に、現在の我が国と同様に違法ではございますが、刑事罰の対象とはなっておりません。刑事罰の対象としている国における法定刑の定め方は、一律ではないんでございますけれども、今わたしどもの把握しているところでは、例えばアメリカの場合には1年以下の懲役10万ドル以下の罰金、またはその併科、両方合わせて課すということとされ、ドイツの場合には3年以下の自由刑又は額は定められておりませんけれども、裁判所が決する所定の額の罰金を支払う仕組みという風になっているものと承知をいたしております。で、これらに基づいて現実に刑事罰の対象となった事例は、わたくしども今のところは承知をいたしておりません。

石毛委員長:下村委員。

下村委員:あの、抑止力によって業界が健全に発展されますよう、またネット社会において正常な中で、我が国において発展がされますように、我々は同時にですね、それを目指しながら修正案を出して行きたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。以上で終わります。ありがとうございました。

石毛委員長:次に石井登志郎委員。石井委員。

石井委員(民主党):おはようございます。民主党の石井登志郎でございます。引き続き著作権法の改正について質疑をさせて頂きたいと思います。著作権法は日進月歩の技術開発、特にネット社会への対応等から、大変頻繁に改正が行われておりまして、数えてみましたが、平成に入ってから、これが成立すれば十四回目の改正ということでございます。平成に入ってから十四回目ですから、1年か2年に1回というすごいペースでございます。そして、前回はこの2009年でございますが、その際にですね、衆議院、参議院それぞれ附帯決議が様々なされたところでございます。今質疑された下村委員の中でもですね、その違法ダウンロードに関する件であるとか、もろもろ言及がありました。衆議院の2009年の附帯決議の中でですね、これを1つ1つ確認しているとこれだけで30分過ぎてしまいますので、一番ある意味わたしが大切だなと思いますのがですね、学校等における著作権教育の充実、国民に対する普及啓発活動、これについてがわたしは重要だと思っております。これに努めることと書いてありますが、この前ですね、ちょっとこの著作権ののりとは変わりますけれども、消費者庁の話で、コンプガチャと言いまして、わたしあの時単語を始めて知ったんですけれども、子供がカチャカチャと携帯をいじっておったら請求が何十万円も来たと、まあ、そりゃ子供は何も分からずに一生懸命やるわけですね、まさにそういう意味では、このダウンロードに関してもですね、今の下村委員の質疑の中でも知らなければ、まあセーフということであろうと思いますが、しかしいずれにしましても、こうした違法にダウンロードしてしまう、そして著作者の権利を知らず知らずに侵害をしてしまうことが健全な発展を阻害をしてしまうということが、やはり教えてもらわなければ分からないわけであります。そうした中で、特にこの著作権教育の充実という点に関してですね、この2009年の附帯決議に示されておるところでありますが、文部科学省としての取り組み、現状認識についておうかがいをしたいと思います。

石毛委員長:河村次長。

河村次長:委員からご指摘頂きました附帯決議の中には、学校等における著作権教育の充実や国民に対する普及啓発に努めることといったことがあげられております。で、こうしたご決議に対しまして、文部科学省といたしまして、各種講習会の開催や啓発教材の作成、提供などを通じまして、著作権に関する普及啓発を行なっているところでございます。具体的には、教職員の理解を深めるということのために、教職員を対象とした著作権の講習会によりまして毎年著作権制度の説明、小中高の教員による著作権を題材とした授業の事例発表などをおこないまして、これによって地域で中心となる教職員の育成に努めているということもございますし、また、ホームページを活用いたしました様々な資料の提供もおこなっているという対応状況でございます。

:石井登志郎君。

石井委員:これですね、大臣、やはりよくこの省庁と言いますか、ああいう答弁ではありますが、やっているかやっていないかというとやってるんです。ただ、やっているんですけれども、それが十分かと、著作権というそういう言い方が果たして中学生に浸透しているかというと、それは果たして十分でない部分があろうと思います。中学校の学習指導要領の中を見ると、例えば音楽、美術、技術課程そして芸術、様々なそうした教科書の中にそうした知的財産権そして著作権に対する記述等々あるようでございますが、こうしたことがあるから大丈夫ということではなくて、本当に浸透しているのかというのをしっかりと見て頂いて、そういう、そして今のまま単に、次長の答弁はあれはあれで結構なわけでありますけれども、是非この問題にですね、アンテナの高い大臣でありますから、指導力を発揮頂ければと思います。あの、一方的で恐縮です。それで、あの、続いてですね、またこの2009年の改正の際に附帯決議でありました、障害者のための著作物利用の円滑化にあたってしっかりと一層促進するようにというような項目がございます。この障害者にしてみますと、このIT技術と言いますのは、まさにある意味福音でございましてですね、そういう意味では、これが今まで触れることのできなかった文学に触れることができると、そういう素晴らしい側面があるわけでございます。2009年のその改正の際にはですね、37条3項改正によって法人格のあるボランティアグループは、文化庁に申請して認められれば、著作権者の許諾がなくても視覚障害者のために録音図書や拡大図書を作ることが可能になったと、これは大変歓迎をされているわけでありますけれども、一方でさらにもう一歩、個人で、こうした何と言うんでしょう、ボランティアをやっているような方はですね、法人格を持っていないとなかなかやりにくいというような声があるようでございますが、このことに関して現状の認識と、何か検討の方向性があるのであればお聞かせ頂きたいと思います。

:文化庁河村次長。

河村次長:委員からお話のございました、著作権法第37条第3項の規定に関して若干のご説明をさせて頂きたいと存じます。で、この著作権法第37条第3項により、視覚障害者等のための複製が認められる主体には、一定の条件を満たした者であれば、法人格のないボランティア団体であっても対象となることが実は可能となっております。この一定の条件は著作権法の施行令に書いてございますけれども、視聴覚障害者等のための複製等を的確、円滑に行うことができる、そういう技術的な能力を持っていること、それから経理的な基礎その他の団体としての体制を有することということを求めておりますけれども、そうした場合であれば、法人格がなくても大丈夫でございます。で、一方、個人についてのお尋ねでございますが、これはなかなか個別の視点を個人ということでは今の仕組みではできないわけでございますけれども、その志のある個々人のボランティアの方がある程度集まりましてグループを作り、一定の条件、さきほど申し上げました条件を満たせば、やはり現行法において主体として認められることが可能でございます。現にそうした録音ボランティアグループ、法人格がなくても指定をされている例がございます。で、こうした志のある多くの方が法令の規定に基づいて複製を行えるように、やっぱり今後もう少しこの主旨を広くお伝えすることが重要かなと、今の委員からの話も拝聴して感じましたので、周知指導に努めて参りたいと存じます。

:石井登志郎君。

石井委員:是非今おっしゃって頂いた通り周知等に努めて頂きたいと思います。わたしどもの方にやはり法人格がないと駄目というのはハードルが高いじゃないかと、ただ相談すれば道は開くんだと思います。ただ、それは法人格がなければ駄目と思い込まれている方もいらっしゃるのかと推察いたしますんで、是非そうしたことを周知、普及をして頂ければと思います。続いて、次これは厚生労働省におうかがいをいたしますが、インターネット上で点字図書や録音図書を視覚障害者に配信しているサピエ図書館というシステムがありまして、厚生労働省の方から補助金を毎年支払って運営をしているということであります。ただこの補助金だけの運営では大変限界に来ていると、視覚障害者から個人の会費を徴収しなければならない、もしくは盲学校、障害児の学校で有効活用したいんだけれども、年会費、これ4万円と聞いておりますけれども、これが工面できなくて十分に活用できる環境になっていないというところもあろうと思います。この点に関してですね、やはりそういう意味では、可能であるならば環境をしっかり整備して行きたいというような思いがわたしもあるわけですが、厚生労働省といたしまして、本件に関してのですね、認識と見解、方向性などあればお聞かせ頂ければと思います。

:岡田厚生労働省障害保険福祉部長。

岡田厚生労働省障害保険福祉部長:ご指摘のサピエでございますが、視覚に障害のある方々に対して点字であるとかそれから音声のデイジーデータと言われるデータ、そういった情報を提供する情報システムでございます。日本点字図書館がシステムを管理いたしまして、全国の点字図書館の集まりであります全国視覚障害者情報提供施設協議会が運営をして頂いているという状況でございます。厚生労働省といたしましては、日本点字図書館に対しましてサピエの運営に応じます費用を補助しておりまして、個人会員であります視覚に障害のある方々は無料でサピエが利用できるという形になっています。なお、サピエにつきましては、点字図書館のサービスを充実させるものでありまして、全国の点字図書館による共同運営をおこななって頂くという観点もございますので、全国の点字図書館の他、サピエの利用をおこなう公立の図書館、それから公共図書館であるとか私設団体の方々に年間利用料をご負担頂いているという状況でございます。今後、日本点字図書館に対する補助金をどう効率的、効果的に使って行くかというような観点から、サピエの運営につきまして、日本点字図書館、それから全国視覚障害者情報提供施設協議会など、先生のご指摘も踏まえまして、そういう点も含めて運営のあり方について相談して参りたいという風に考えているところでございます。

:石井登志郎君。

石井委員:この日進月歩の技術の進歩の時代でありますから、単に補助金を増やせということだけでなくて、今回国会図書館にですね、様々な図書館資料の、何て言うんでしょう、この電子納本の制度も整備されたというところであろうと思います。ですから、いい意味でですね、融合できるようなこともあろうと思いますんでですね、是非この技術の革新をドラスティックに、まさに障害者の利益に資するよな形で前に進めて行って頂ければと思います。次に、これは著作権法と少し外れるんですが、ネットの利用とですね、著作権の整備、最終的に著作権法の35条の方にまた行く訳ですけれども、ちょっと外れまして、免許外教科担任に関してですね、少しお話をさせて頂ければと思います。

(中略:免許外教科担任やインターネットを使った教育に関する質疑応答。質疑の中途で平野大臣が退席)

石井委員:関連して著作権35条に関して1点おうかがいをしたいと思います。教育に関する著作権の制限規制を整備、これは平成15年の改正でされたところであります。その後、著作権法第35条ガイドラインというのが、関連の主に著作権者の皆様方が中心となって作られたと、どういうのが良くてどういうのが良くないかということについてガイドラインが作られたということであります。その中でですね、そのガイドラインの前に1点おうかがいしたいのがですね、この第2項関係でですね、つまりこのeラーニングの授業をやる時に、つまり同時送信の時だけよろしいというようなこれ規定なんですが、これを何と言うか録画の方でも、録画をしている場合でもですね、この著作権法35条の規定に準じて著作権が制限されないというような道を開いてくれたらより幅が広がるというようなことを言う仲間がおるんですが、この同時に送信を受けるものに対して公衆送信を行うことができるというところが引っかかっているわけですけれども、これに関してですね、検討状況もしくは何かご所見があればですね、お聞かせ頂ければと思います。

石毛委員長:河村次長。

河村次長:同時中継による遠隔授業のみならず、eラーニングの場合にも著作権者の許諾なく著作物の送信を行えるように、例えば著作権法を改正してはどうかということについては、これまでも文化審議会著作権分科会において審議はされて参りました。で、この審議会の議論では、権利者、その送信される著作物の権利者の立場から、基本的には個々の利用許諾契約によって対応すべきではないかと、で、著作権者に許諾なく行えるようにすることは現時点では必要以上に著作権者の利益を害するという懸念が示されております。で、このために、eラーニングの実態等を踏まえて権利者や学校教育関係者ともさらに検討をおこなって行くことが現時点では適当と考えているところでございます。

石毛委員長:石井委員。

石井委員:このガイドラインにしてみても、今の答弁にしてみてもですね、重要なことなんですが、著作権者の立場が何か強いんですよね、もちろん著作権者の立場が強いんです、強いんで守らなきゃいけない部分は守らなきゃいけないんですけれども、ただ、わたしが先般、高井さん、あのアメリカのですね、フィラデルフィアにあるフューチャースクールというところへ行きました。そこに行きますとですね、生徒一人一人に対して教材をカスタマイズしてですね、そしてほとんどバウチャーをもらっているような、そういう何と言うんでしょう、貧困の地域ですけれども、しかしITというツールを使うことによって、何て言うんでしょうね、その学びの意欲が大いに高まっているわけです。それは今文科省でやっているようなデジタル教科書ができたとかそういう話ではなくてですね、それぞれが教育のために世の中に転がっている様々なそうしたものを組み合わせてそして教育に資するというようなことをやっているわけであります。著作者の権利を守るということが重要である一方で、このインターネットという特性を活かして、より前向きにプログレッシブにですね、対応できるようなことも、是非副大臣、次長ともにお考えを頂ければと思います。ちょっと時間がなくなって参りましたので、後2点淡々とおうかがいしたいと思います。先ほど下村委員の中でもありました、このTPPと著作権に関して1点端的に高井さん、副大臣に所見を確認したいと思います。これよく言われておりますのが、今回議論になって行けばですね、この著作権の保護期間、死後50年というのが我が国でありますけれども、映画は今70年になってますが、他のものは50年ということであります。この50年と70年とどっちがいいのかなと、日本の漫画のことを考えると70年がいいのかなと、ただミッキーマウスのことを考えるとこれ50年の方がいいのかなと、いろいろ考えるんですけれども、どっちですか。

石毛委員長:高井文部科学副大臣。

高井副大臣:あのー、これは本当に両面あると思います。保護期間について延長すべきという意見として、漫画アニメ等の海外での使用にあたって保護期間の延長されることによる国際収支の改善が見込まれるということや、保護期間の延長により収益の増加が見込めるものであるとすれば創作へのインセンティブとなると、そうしたことから延長すべきという意見もございます。ただ、一方この延長に反対する意見としては、国際取引の収支が赤字である中保護期間の延長によって輸入超過の傾向が続くこととなるのではないか、それから著作物が公用となることによって当該著作物の利用の拡大等が逆に図られなくなるという風な、まさに両面本当にいろんな意見がございます。で、双方ともわたくしは傾聴する点があるという風に思ってまして、国益の観点からただちにどちらかという結論を導くということは難しいと思っておりますが、少し今後とも関係者との意見を重ねながら、より国際的な状況も踏まえた上でしっかり検討して行きたいと思います。

石毛委員長:石井委員。

石井委員:今度会った時には高井さんの意見をまとめておいて頂ければと思います。最後に奧村副大臣1点、著作権法と全く関係ありませんが、是非この機会におうかがいしたいと思います。

(中略:海洋研究開発機構の交付金に関する質疑応答)

石毛委員長:次に池坊保子委員。池坊委員。

池坊保子委員(公明党):おはようございます。公明党の池坊保子でございます。著作権法の一部を改正する法律案について何点か質問させて頂きたいと思います。今日ではインターネットが急速に普及して参りました。スマホと言われるようなスマートフォン、この登場によって24時間いつでも世界のどこにいても簡単に映画や音楽を楽しむようになれる、つまり誰もがある意味気楽に文化、芸術に親しめる環境、時代になって来たということは、今を生きているわたくしとしては幸せだなという思いがいたします。でも、そういうことは同時に著作物を巡る環境も急速に大きく変貌を遂げているということでもあって、こうした環境の変貌に著作権法も法制もしっかりと対応することが求められているのが今日の現状ではないかと思っております。で、著作権法の第1条には、文化の発展に寄与すると書かれておりますから、何よりも文化の発展に寄与するようなきめ細やかな著作権法でなければならないと思います。で、先日大臣からの提案理由説明では、著作物等の利用の円滑化を図るとともに著作権等の適切な保護を図るため、必要な改正を行うとのことでございました。で、それを読んだだけでは、そしてこの法律を読んだだけでは本当にちんぷんかんぷんの方が多いと思うんですよね、で、わたくしは説明を聞きました、本当にこういうことなのか、なかなか面白いな著作権法というのはと思いまして、以来わたしは講演なんかでよく皆様方に説明するのですが、まずおうかがいしたいのが著作物の利用の円滑化という観点からおこなわれるいわゆる写り込みなどにかかわる規定の整備です。今回の法案では、著作権者の許諾がなくても自由に利用できる範囲についていくつかの条文、4つの条文というのがあげられております。30条の2の付随対象著作物の利用、30条の3の検討の過程における利用、30条の4の技術の開発又は実用化のための試験の用に供するための利用、47条の9の情報通信技術を利用した情報提供の準備に必要な情報処理のための利用、これ委員長もお分かりになりますか。これだけ聞いただけでね、ぱっと分かる方はわたしよっぽど専門家なんだと思います。ですけれども、法律というのは一人でも多くの方に理解してもらわなければならないわけです。で、今回の改正で、何が具体的に自由利用の対象となるのか、そしてそれをどうなって行くのかということをちょっとご説明頂けたらという風に思います。で、先ほど説明を求めた内容はデジタル化、まずこれについてはいかがですか。

(ここで、平野文部科学大臣が戻って来る。)

石毛委員長:高井文部科学副大臣。

高井副大臣:おっしゃる通りだと思います。この条文を見ると、本当著作権用語とでも言うべきワードが並んでいて大変読んですぐにすっと頭に入るという感じではわたくしもございませんでした。で、ご指摘のこの30条の2、それから3、4、47条の9条という風なことを少し丁寧にご説明したいと思いますけれども、著作物の利用の円滑化を図るというために、権利者の利益を不当に害しない著作物の利用であっても形式的には違法となるというものについて、権利の侵害とならないということを明確にしようとしております。30条の2では、例えば写真撮影の際に背景に有名なキャラクターが写り込む行為とか、キャラクターが写り込んだ行為を自分のブログに載せてインターネットで送信する行為などが対象となります。30条の3は、例えばある企業がキャラクター商品の販売を検討する過程の中で、例えば会議のために用意した企画書にキャラクターが載っているという行為などが対象となります。また30条の4は、例えばある企業が録画機器を開発するために実際に録画を試験的に行うという行為などが対象となると、最後にその47条の9は、例えば動画配信サービスとかSNS、ソーシャルネットワークサービスなどで、データを高速処理するために行われるサーバー内でのデータの大量複製行為などが対象となり、これらを要するに法改正により適法であるということを明確化しようとする法改正でございます。で、こういうことをホームページの活用とか自治体での説明会の実施を通じて可能な限り分かりやすく説明するために努力して参りたいと思います。

石毛委員長:池坊委員。

池坊委員:ありがとうございます。今までだったら会議があって、ディズニーランドのキャラクターを使っちゃいけなかった、これからは拡大されるから、それはいいよと、だけどそれを一般的に流したりしてはいけないよと、そういう種類のことが多いということですよね。で、先ほどご説明を求めた内容は、デジタル化、ネットワーク化の推進の中で、様々な産業のいろんな場面で著作物を利用する機会が増え、誰もが気楽に著作物を利用できるようになっているという点において、わたくしは大事な規定だと思うんですね。しかし、著作物の流通の促進という観点からは、まだまだ十分ではなくて、著作権者の許諾なく自由に利用できる場面について目的を限定するのではなく、自由に著作物を利用できる場面かどうかは、いくつかの考慮要素に基づいて司法が判断して決めるような、いわばアメリカ型のフェアユース規定、米国著作権法第107条のような規定をおくべきだという声も聞かれているんですね。で、今回の一連の規定も、こうした声をきっかけに検討が進められた結果であるとわたくし思っておりますけれども、このようなアメリカ型のフェアユース規定をおくということについてどのようにお考えか、大臣お帰り早々でお大変かも知れませんがご答弁頂けますでしょうか。

石毛委員長:平野文部科学大臣。

平野大臣:今、池坊先生のおっしゃられたように、わたくしはいろんな意味において権利の保護があって始めていろんなものが発展して行くと、こういうことだと思っております。特に、この文化ということにあっては、やっぱりそれぞれ芸術を営んでおられる方々がやっぱり創作意欲と同時にしっかりと権利で守られているということが基本前提であり、その結果の結論として文化活動が活性化して来ると、こういう理念でございます。そういう中で、アメリカ型のフェアユース規定が今アメリカにはありますが、日本にはおかれていないということでございますが、先ほど申し上げた通り、しっかりと、先ほど申し上げましたように、先生も華と、そういう中での創作活動をやっておられる方でございますから、そういうことをしっかり踏まえた上で、これだけ今日科学技術の進展、特にデジタル技術の進展にともないまして、権利とその技術進歩のミスマッチがやっぱり起こって来ているということでございますから、しっかりとしたそういう規定を適切に対応して行く、こうしたことが非常に大事だろうとわたくしは思っております。したがいまして、先生が今おっしゃられたような部分では、いろんな場面で著作物が利用されていると、こういうことでございますし、いくつかの著作物の利用場面を特定せず自由に利用される、こういうことは、司法の判断というのは、こういうことも今先生のご案内の通りでございます。しかし、アメリカのフェアユース、こういう概念の部分で行きますと、百数十年という長い歴史でいろんな経過を積み上げて来た結果のものだと思っておりますし、また、我が国の実法定主義と、こういう考え方の部分と少し違うような気がいたします。したがいまして、わたくしは我が国への導入というのは非常に難しいという風には思っておりますけれども、しかし一方でそういう権利者の保護と、こういうところをしっかり守って行かなければならないと、かように今思っているところです。

石毛委員長:池坊委員。

池坊委員:わたくしも大臣と同じでございます。国民の知的財産に関する権利意識がわたくしはまだまだ極めて低いのではないかという風に思っております。文化がこれから活性化して行くためには、やはりしっかりとした権利が守られなければ誰も文化活動をおこなって行かないとわたくしは考えておりますので、検討しながら、より前進的に、権利、様々な分野における知的財産の権利者の権利が守られるべきである、それがわたくしは消費者にとっても長い目で見ていいことであると信じてやみません。で、これまでの質問は著作物の利用の促進という観点からの規定についての問題提起でございましたが、今回の法案ではもう1つ音楽や映画といった著作物の違法利用、違法流通対策の観点から、技術的保護手段の見直しを行うという規定が盛り込まれております。そこで大臣の提案理由説明にもございましたように、今回の法案では、DVD等に用いられている暗号型技術を技術的保護手段の対象に加えるとのことですが、そもそも暗号型技術とはどういったものなのか、そして、技術的保護手段の対象に加えることでどのような効果をもたらすのかをお答え頂けますでしょうか。

石毛委員長:高井文部科学副大臣。

高井副大臣:今回ご指摘のあったとおり、この暗号型技術を対象とするということで、暗号型技術とは、コンテンツ提供事業者が映画などのコンテンツを暗号化して、そして機器での視聴とか複製を、勝手に複製をさせないようにすることも含めて、ちょっと何回かにするとか、コントロールするという技術であります。で、現在DVDとかブルーレイディスクなどに一般的に用いられておりますが、この暗号型技術というものの回避を可能とするプログラムを頒布する、広げるということを刑事罰の対象とするということであります。このことによって、この暗号型技術というものを不正に回避して複製を可能とするプログラムが広がって行くことを防ぐと、そしてこのようなプログラムにより作成された、不正に作成された映画などの違法物、違法な複製物が瞬時かつ広汎にネット上に広がって行くということを防ぐということを狙いとしております。

石毛委員長:池坊委員。

池坊委員:現在主流となっております著作権保護技術をこうむるようなプログラムをしっかりと押さえなければ、海賊版と言われる、音楽、映画などがインターネットを通じて流通してしまいますので、今回の法改正でしっかりと対応して頂きたいとわたくしは願っております。わたくしは、丁度もう何年になるんでしょうか、文部科学委員長をしておりました時に、その海賊版の逆輸入ですね、日本にやって来ちゃう、それを防ぐための刑罰などを作りました。その時は本当に消費者の方が安く手に入ればいいんじゃないかって、こういう意識があって反対の声もあったのですが、そうじゃないと、しっかりと守るべきものは権利としてしっかりと守って行く法律を作らなければいけないのだと、そういう信念を持っておりましたので、これをおこなったことを、今ご答弁頂きながら思いました。しかし、その一方でこうした著作権保護技術をこうむるようなプログラムが規制されてしまうと、他の権利制限規定で許されている複製、例えば学校の授業でおこなう場合あるいは障害者の方が利用する場合に、技術的保護手段を回避しての複製が結果的に困難になってしまうのではないかと思うんですね。で、このことについては、障害者関係の方々とか、学校現場の方々にはそういう危惧もおありになると思いますけれども、これはいかがでしょうか。

石毛委員長:河村次長。

河村次長:技術的保護手段についての回避規制、それを回避するためのプログラム規制によって事実上そうしたプログラムが出回らなくなってしまう、そうしますと別の障害者や教育の目的で本来使うことができたはずの人たちまで使えなくなってしまうと、そういう効果が生じるという懸念はおっしゃる通りかと存じますので、そこは権利者と利用を必要とする人たちの橋渡しを、わたくしどもとしても何らかの場を設けて行くというような工夫、努力をして参りたいと存じます。

石毛委員長:池坊委員。

池坊委員:この知的財産の権利を守るということは、ある意味で消費者と深くかかわっておりますので、消費者にもそれぞれの立場の方々がいらっしゃいます。ですから、それらのことをやはり考慮しながら、学校現場においてあるいは障害者の方々などが困らないようなことにも目配りをして頂けたらと思います。で、著作権保護の観点から著作物の違法利用、違法流通の元を絶つためには、暗号型技術を技術的保護手段の対象とすること自体は有意義であると思いますが、このことによって、先ほど申し上げたような教育の現場や福祉の現場で混乱がおきてはわたくしはやっぱりならないと思うのですね。ですから、それはきっちりと守って頂きたいと思います。で、もう1つ著作物の違法利用、違法流通の観点から看過できない問題が今起こっているのではないかと思います。それは人気作家の小説や漫画が違法に複製されて、あっという間にインターネット上で流通しているという問題なんですね。で、小説や漫画も、当然のことながら日本の大切な文化です。しかし、こうした小説や漫画といった出版物の権利侵害に対しては、有効に対処できていないのが現状です。例えば小説家が個人で訴訟を起こそうとしても大変な労力が必要となるために、つい二の足を踏んでしまうということがあるということを、失礼いたしました、ちょっと水がこぼれました、これはちょっとカットしておいて下さい、関係者の方々からうかがっております。で、小説家の方々が連名で著作者の権利を守って欲しいというようなことも署名していらっしゃるんですね。で、確かに物をお書きになる方って、訴訟なんてことは苦手な、そういう環境の中にいらっしゃいます。ですから、それをもし出版者が代行してくれたらいいなと、ところが出版者っていうのは訴えられることがあっても訴えることができないということになっております。で、また、こうした出版物の違法流通は、それを世の中に広く送り出している出版者に大きな打撃を与えております。今申し上げたように、出版社に何ら権利がないためにこのような出版物の違法流通に対応できていないというのが問題なんではないかと思います。一生懸命作りましたわたくしの一冊の本が、ばっとこう何と言うんですかしゃ断されましてね、そしてがっとこうインターネットになって、それをまた組み合わせて安くて10分の1くらいで売られてしまいますと、何か涙が出るほど悲しいというような気がいたします。で、わたくしは出版者にも何だか権利を認めることによって、こうした出版物の違法流通に対応する必要があるのではないかという風に考えておりますけれども、この点については、大臣、どのようにお考えでいらっしゃいますか。

石毛委員長:平野文部科学大臣。

平野大臣:今池坊先生のおっしゃられた一番の大きな問題というのは、ご質問は、作家の権利という部分と、その作家が創作した物を出版社がマーケットに出していると、こういう中にあって、侵害をされた時に、作家自身が本来権利者ですから、権利要求をすると、これが非常に面倒くさい、面倒くさいという表現がいいかどうか分かりませんが、作家の活動に専念できないと、しかし、一方、じゃあ出版社がそれを代行してやるというのは何の権利でもって代行するのかという、こういうことなんだろうという風に思います。したがいまして、そういう出版社に何らかの権利を認めて行くべきではないかと、こういうご意見があることも承知をいたしております。先生はこういうご趣旨で、権利を認めて行くべきではないかと、こういうことでございます。したがって、一方では出版社に作家と同じ著作権ということを新たに設けることについても、一方ではそれはいかがなものかという慎重なご意見もあることは事実でございます。したがいまして、文科省としては、こういうご議論があるということがございますので、調査研究をこれからしっかりすると、それで何らかの法制面からの対応ができないかと、法制面的にどう言うかわたし分かりませんが、間接侵害みたいな部分を含めてですね、法制面で対応できないかどうかを今検討しなければならない、いずれにしましても、著作権者がしっかりとした権利が担保できるということが基本にあっての対応をしていかなきゃならないという風に考えております。

石毛委員長:池坊委員。

池坊委員:1つの出版物ができるまでには長い年月を要します。それは著作者だけでなくて、出版社も校正を重ねたり、編集者との打ち合わせとか様々な作業が必要なんですよね。で、それを経て1冊の本ができあがっていく。で、それが安く読めたら消費者にとっては大変嬉しいことではあります、ありますが、じゃあその元の権利がちゃんと保存されなければ、例えば卵はわたくしたち安い方がいいですよね、安くて手に入りたい、手に入れたい、ですが、卵を産む鶏が死んじゃったら、これは卵は産まれないんですよ。それを思いますと、やっぱりきっちりとした権利が守られてこそ、わたくしは、いい卵を産むその鶏の部分がね、もう滅亡しちゃったならば、卵すら手に入らない、だから、消費者がいい卵を手に入れるためにはまずこのいい鶏を飼わなけりゃいけない、まずこの保護が必要じゃないかとわたくしは思っておりますことを申し上げておきたいと思います。それから1点、TPPに関する著作権について、ちょっとおうかがいしたいんですけれども、政府が交渉参加をしているTPPと著作権法の関係についてちょっとおうかがいしたいんですね。で、TPPって21分野が交渉の対象となっております。わたくしどもが目にするのは農産物に関する貿易自由化といった観点、これがあまりにもわたくしは議論になりすぎているのではないかと思います。で、著作権を含む知的財産権も21分野の中によく見ましたら出ているんですね。で、これは著作権については、著作権の保護期間の延長、アクセスコントロールの回避規制などが議論の対象になったと報道では見ております。で、場合によっては我が国の著作権制度の変更をともなうことも考えられるのではないかとわたくしは思います。で、この報道が正しいものであり、こういった制度の変更がなされるのであれば、我が国の著作権制度、ひいては文化政策自体にとっても大きな影響を生じるのではないかと思います。一方、その具体的な内容についてははっきりしたことは示されておりませんので、わたくしたちも議論したくてもできない状況下におります。わたくしは、TPP交渉の中で経済的な視点のみを重視するのではなくて、文化的な視点がないがしろにされないことも、ないがしろにされないか心配しているんですね。経済的な農産物のことなどにみんなの目が行って、そこで大きな流れになって行く中にあって、ふと見たら文化的な視点がそのままTPPの中に織り込まれていると、で、著作権は経済的な視点もさることながら、我が国の文化の保護、発展といった視点から考えて行くべきであると考えております。そのために我が国の文化の価値や重要性について理解している我々日本国民が、国内における議論を十分におこなう必要がある、特にその関係に携わっていらっしゃる方々のご意見なども聞く必要があるという風に考えております。で、文部科学省においては、国内の議論が十分におこなわれるよう、関連情報を適切に公表して頂きたいとわたくしは希望しております。で、TPPにおける著作権制度にかかわる部分について、文部科学省として把握されている内容と、TPPに対する対応方針についておうかがいできたらと思います。合わせて、より広い視野で見た時に、TPPへの参加が我が国の文化芸術に与える影響について、文部科学省としてはどのように考えていらっしゃるのかもちょっとおうかがいしたいと存じます。

石毛委員長:平野文部科学大臣。

平野大臣:先ほど下村議員からもこのTPPに関する議論の状況についてということでご質問ございました。で、特にこのソフトの部分という部分で行きますと、マーケット的に言っても7兆円ぐらいあると、こういうご指摘も頂戴をいたしました。で、文科省といたしましても、昨年11月に発表いたしましたTPP協定交渉参加、この協議を開始すると、こういう方針が出されたわけでありますが、関連する分野情報については今現在収集をいたしているところでございます。加えて、具体的にどういう議論がされているかということについてはまだ十分承知をいたしておりませんけれども、文科省のこの関連に関して行けば、知的財産権分野における著作権関連事項と、こういうことに1つはなろうと思います。もう1つは越境サービス分野における教育サービスの関連分野等々のものがあると考えております。先ほど池坊議員からございました、アメリカとの関係で、海賊版の話、わたしは非常によく承知をいたしております。議員が委員長の時だったと思いますし、わたしは野党の筆頭でございました。あの、党内にもいろいろご議論がございましたが、積極的に委員長の言う通りに対応したつもりでございます(周りで笑い)。したがいまして、わたしはこの問題というのは第一に国益と、やっぱり我が国の文化と、こういうことをしっかり踏まえて、特に著作権保護の観点から模造品とか海賊版の対策強化をしっかりするということを考え、具体的な交渉の中にあっては、我が国の国内の事情を十分に踏まえて判断をしていかなきゃならないと、このように文科省としては思っております。

石毛委員長:池坊委員。

池坊委員:いつも平野文部科学大臣には文化に対しての、文化芸術への力強いご理解とご支援を頂いていることに心から感謝しておりますし、わたくしが委員長時代に本当に党内をまとめて頂くのにご苦労して頂きましたので、わたくしはそのことをしっかりと心に刻んでおりますので、大臣に頭が上がらないという思いが今もしております(周りで笑い)。で、これで最後になりますけれども、これは著作権に関することに対して、あの、大臣のご決意をうかがったらという風に思っております。で、先ほども申し上げましたけれども、第1条に文化の発展に寄与することというのが規定されております、それがこの著作権法のわたくしは目的ではないかと思います。でも、今日ではそれだけではなくて、いわゆるK−POPや韓流映画などが象徴していますように、日本の音楽、映画などがより一層広く海外で受け入れられ浸透して行けばそれだけ日本のファンが増えることになり、大きな収益にもなって行くと思うんですね。やはり文化が果たす経済的力、それからやっぱり人類のこの感性の問題で、何か心の絆ということも見逃すことはできないと思います。で、日本のこうしたコンテンツの振興、文化の振興について、今後どのように取り組んでいらっしゃるかご決意をうかがって、あのわたくしの質問を終わらせて頂きたいと思います。

石毛委員長:平野文部科学大臣。

平野大臣:わたくし先ほど少し席を外しておりましたので、お聞きしておりませんが、池坊議員の方から、著作権法第1条の理念について全て語っておられるという風にお聞きをいたしました。わたくしやっぱり文化活動というのは、わたし非常に大事であると、しかし大事であるが故にきちっとした権利を守るというこの意識をやっぱり啓発しなきゃいけませんし、我が国国民全体がやっぱり持たなければならない。しかし一方、科学技術の進展、デジタル技術の進展、情報化時代に入って来る、権利の保護の範囲が、より技術が先に行くと、こういういたちごっこのような状況にありますが、やっぱり所管をする文部科学省といたしましてはしっかりと著作権者の権利をしっかり守ることによって文化活動のより発展に寄与したいと、かように考えております。

池坊委員:力強いご決意ありがとうございます。それでは終わらせて頂きます。

石毛委員長:次に宮本岳志委員。宮本委員。

宮本岳志委員(共産党):日本共産党の宮本岳志です。政府提出法案はいわゆる写り込み等にかかる制限規定の改正、国会図書館や国立公文書館の利用にともなう権利制限、著作権等の技術的保護手段にかかる規定の整備などいずれも必要なものであり、我が党も基本的には賛成できるものだと考えております。ただ、1点だけ確認をいたしたいと思います。今回の政府案には写り込み等の制限規定が設けられておりますけれども、これらの法改正は写り込み等ある程度事例を限定した上で、現行では形式的に違法となる行為を容認しようとするものであり、現実の利用実態を踏まえたやむを得ないものであると考えます。しかし、これも当初は日本型フェアユース規定の整備ということで検討が進められ、権利者側からは一般規定の導入には異論がありました。そこで確認するんですけれども、今回の規定で、例えば会議資料として新聞記事を大量にコピーしたり、新聞記事の全文をネット上で引用したりする行為が容認されるものではないと思うんですけれども、これはご確認頂けますか。

石毛委員長:平野文部科学大臣。

平野大臣:宮本議員もよくご理解を頂いた上での確認事項だとわたくしも思っていますが、委員ご質問の新聞記事の各利用行為、いずれもいわゆる写り込み等に関する規定の要件を満たすものではない、こういう行為が、本行為が本改正法により適法となるということではございません。こういうことでよろしいでしょうか。

石毛委員長:宮本委員。

宮本委員:今後も一般規定のありようについては議論が続くと思うんです。関係者間でよく議論して慎重に進めて頂きたいと思います。前回の著作権法の改正時に、つまり2009年5月8日の当委員会で、我が党の石井郁子議員が私的録音録画補償金制度の問題を取り上げました。私的録音録画補償金制度はですね、利用者の録音行為を認めつつ、権利者がこうむる不利益を補償する目的で1992年にスタートし、20年が経過しました。この間、デジタル式の録音録画機は様々な形態の機器が開発をされまして、急速に広がり、デジタル複製が誰でも容易にできるという状況になっております。当時の塩谷大臣は石井議員の質問に答えて、全ての利用形態について補償金制度に代わる制度が導入できる環境にないと、現状においては新しい制度がただちに補償金制度に取って代わるという状況にないとしてですね、現在の制度についても意義があると答弁をされておりますけれども、現在でもこの補償金制度の評価は変わっておりませんね、大臣。

石毛委員長:平野文部科学大臣。

平野大臣:今委員ご指摘の補償金制度の意義、これについては変わっていないのかと、こういうご質問でございますが、この私的録音録画補償金制度と、こういうことでは、特に機器の開発、普及によって家庭の中で録音録画が大量におこなわれるようになったと、こういうことから、利用者の録音録画行為を認めつつ、権利者のこうむる不利益を補償すると、こういうことで平成4年に導入された制度でございます。その後、著作権保護技術の導入やパソコン等など録音録画以外の用途に用いられる機器等の普及など録音録画の実態の急速な変化、進展にともないまして、制度の見直しが求められておるわけでございます。これまで文化審議会で検討がおこなわれて来ておりますが、まだ結論を導いておりません。平成21年当時の答弁の通り、補償金制度については見直しが求められている、こういう意味では過渡的な時期においてなお一定の意義が有していると、こういうことでございます。

石毛委員長:宮本委員。

宮本委員:見直しが続けられているが、現状で同じ意義を有していると、こういうことでありますね。この制度の現状なんですけれども、今日は資料をつけておきました。資料1を見て頂きたい。資料1は私的録音補償金の推移であります。2001年度の40億円あまりをピークにして、激減をしております。あの、これは文化庁に確認しますが、どうして私的録音補償金の額はこんなに激減をしておるのですか。

石毛委員長:文化庁河村次長。

河村次長:私的録音補償金の額の減少は、補償金の対象となっていないiPodなどの新たな録音機器等に需要が移って参りまして、補償金の対象である、MDプレイヤー、CDプレイヤーなどの機器や、それに用いられる媒体の販売数の減少にともなうものとわたくしどもは理解しております。

石毛委員長:宮本委員。

宮本委員:新しい機器になかなか対象が広がっていないと、資料の2を見て頂きたい。私的録画補償金、これの推移をつけておきました。これはおおむね20億円前後で推移をして横ばいとなっております。これも文化庁におうかがいするんですが、この私的録画補償金は今後どのような見通しになりますか。

石毛委員長:河村次長。

河村次長:平成22年度、23年度に権利者へ分配されました、私的録画補償金の額は、はい、ほぼ横ばいとなっておりますけれど、今後メーカーが支払いを停止しているアナログチューナーを搭載していない録画機器が販売の中心になることから、減少して行くことが見込まれております。

石毛委員長:宮本委員。

宮本委員:そうなんですね。メーカーが支払いを停止するってことが起こり、今訴訟もやられているようですが、これからこれは減っていくわけですね。現在においても意義ある制度というんですけれども、現状は補償金の額が激減し、もはや崩壊寸前という状況になっております。で、もちろん、対象機器がMDなどの今やもう誰も使わないようなもの、録音で言えばそういうものしかないという状況もあるわけです。それで、知的財産推進計画では毎年見直しが言われておりますし、当委員会でも前回、2009年改正の際に、特に私的録音録画補償金制度については、国際的動向や関係団体等の意見も十分に考慮し、早期に適切な結論を得ることと全会一致の附帯決議までしているわけですね。しかし、この2年間ほとんど検討が進んでいない。これはどういう理由ですかね、大臣。

石毛委員長:平野文部科学大臣。

平野大臣:この制度の見直しについてと、こういうことで附帯決議が課せられております。それを踏まえて、審議会では平成18年から3年間、検討を行なって参りました。特に、この経過の中で、権利者とメーカーの意見対立が起こっておりまして、合意の形成に至っていないと、こういうこと、また、平成21年1月の報告書では、審議会を離れた意見交換の場を設けるなどして関係者の合意形成を目指すということが必要であるという風にされております。その後、文科省としては、関係省庁でございます、経済産業省との事務レベルにおける合同検討会、こういうこともおこなって来ました。また、関係者に対しても、意見交換の場への参加も呼びかけて来たわけでありますが、その支払いを、先ほどもございましたが、拒否をしたと、こういうことで民事訴訟が提起され、現在最高裁で係争中と、こういうことでなかなか関係者の協力が得られていない状況にあると、こういうことでございます。しかしながら、合意形成が得られるように今後とも引き続き努力はして参りたいと、かように思います。

石毛委員長:宮本委員。

宮本委員:訴訟があるということでありますけれども、争われているのは録画補償金の部分であって、録音の部分については争われていないんですね。でまあ、今商品名も出ましたが、携帯オーディオレコーダーなど新たな補償金制度に組み入れることが必要な利用形態が広がっていると、これもしっかり見直す必要があると思うんですね。わたし、少なくともこの録音の部分だけでもですね、やはり見直しを進めるべきではないかと思いますけれども、大臣のご見解をお願いいたします。

石毛委員長:平野文部科学大臣。

平野大臣:録画の部分だから、録音だけでもいいんじゃないかと、それだけでも進めて行くべきだと、こういうご意見だと思いますが、実態の変化にどのように対応するかと、こういうことに対しては録音録画に共通する問題であるわけですから、録音だけを切り離して、やっぱり委員ご指摘のように、そこを先行してそれをやったらどうだということですが、それを録音だけを取り出してやるというこの検討については、なかなか困難性がともなうと、このように認識しております。

石毛委員長:宮本委員。

宮本委員:メーカーが拒否しているってのは、わたしはとんでもないことだと思うんですね。この制度の導入に至るですよ、15年に渡る長い議論の中で、当時JASRAC理事長であった芥川也寸志さんが1988年8月著作権審議会の第10小委員会に提出した意見書「私的録音録画問題と報酬請求権の導入について」という、この文書をわたくしも読ませて頂きました。あの、そこではこう述べられております。「詩人や作曲家たちが音楽を作り、演奏家の皆さんがその音楽を世に送り出します。その受け手は聴衆であり、視聴者であり、ホームテーピングする人たちです。この3者の輪の交流こそ音楽の営みであり、その中で音楽文化は生きて発展して行くのです。作り手、送り手、受け手という循環の中にこそ音楽の営みが存在するという原理は、遠い昔も、科学技術が発達した今日、また将来とも変わりないはずです。この制度によってユーザーの自由は確保され、しかも著作権者等の権利侵害の恐れがなくなるという優れた工夫なのですが、メーカーの方々には販売の前に手数を煩わせなければならないのです。現代の企業が持っている大きな社会的役割や責任から言っても、是非これを引き受けて頂きたいと思っております。」これが芥川さんのお言葉なんですね。こう言って、ソフトとハード、文化と経済の両立は企業にとってもよい結果をもたらすことを指摘し、企業にそれにともなう必要限度の社会的責任を果たすことを求めております。この言葉は今も変わらぬ意義をわたしは持っていると思うんですが、大臣、そう思われますね。

石毛委員長:平野文部科学大臣。

平野大臣:現在のその仕組み、制度につきましては、委員ご指摘のように、その意見に沿ったものであり、基本的な考え方は現在も意義があると、こういう風に思っております。

石毛委員長:宮本委員。

宮本委員:芥川さんも指摘するように、企業にとってもよい結果をもたらす制度なのにですね、それに協力を拒否している企業の側こそ問題だとわたくしは思います。そもそも、この制度は権利者とメーカーが協力してユーザーから補償金を預かり、制度を運用するという前提の下に作られたものなんです。ところが、この間の経過を見れば、メーカー側は協力義務を果たさず、対象機器の減少と自ら補償金の支払いに協力しないことでまるでこの制度の死滅化を待っているかのような対応に終始していると、わたしは思うんですね。で、今やそのメーカーの側から協力の前提が崩されている以上ですね、諸外国のようにメーカーに補償金の支払い義務を負わせることを検討すべきだと、わたくしは思いますが、大臣、そうは思われませんか。

石毛委員長:平野文部科学大臣。

平野大臣:今議員が申されましたように、義務をかけろと、こういうことでございますが、訴訟の状況等々踏まえながら、引き続き検討して行きたいと思っております。しかし、メーカー等が補償金の支払い義務者ではなく、協力義務者とする現行制度、これが実は平成4年の著作権法改正になっておりまして、関係者の大いなる議論の下にこれができあがったものでございます。したがいまして、それを超えていく改正を、見なおそうとこういう方向に今言及することは困難であると、わたくしはそういう風に思います。

石毛委員長:宮本委員。

宮本委員:大臣、いくら優れた録音録画の機械があってもですよ、肝心のコンテンツ、音楽や映像がなくなれば、折角の機器も使われることはないんです。日本の音楽や映像文化を支えて来たクリエーターに対する対価の還元をどうするかってのは重大問題であって、もっと正面からメーカーにはっきり迫るべきだと、わたくしは思うんですね。そうでなければ日本のコンテンツ産業は死滅してしまうと、このことは本当に重大なことだと思います。ところがですね、こともあろうに、メーカーに対しては腰が引けて要求しないまま、今度はユーザーを刑事罰で脅しつけて問題を解決しようという動きが起こっております。本日政府提出の著作権法改正案に対して自民公明両党から、第119条に3項を加え、違法に配信された音楽や映像などを私的使用目的であってもダウンロードしたユーザーに2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金又はそれを併科するなどという重大な修正案が提案されることになっております。我が党は断固これには反対です。そもそも違法ダウンロードに対する刑事罰導入に関しては、日弁連からも厳しい反対の意見書及び会長声明が発出されております。個人の私的生活領域におけるダウンロードに対して刑事罰を課そうとする議論を是認すれば、国家権力が私的領域に直接入り込む余地を与えることになるものであるとまで日弁連は警告しております。そのような重大な内容の修正案をしかも質疑終局後に提出するなどということは言語道断だと言わなければなりません。そこでお聞きしますけれども、そもそも今回問題になっています私的領域において違法にアップロードされた音楽、映像などのダウンロードについては、わずか3年前の2009年の法改正で始めて違法とされたものであります。それ以前は私的領域については違法ですらなかったですね、文化庁。

石毛委員長:河村次長。

河村次長:はい。平成21年の改正により始めて私的使用目的であっても違法配信と知りながら音楽、映像をダウンロードする行為が違法とされたものでございます。

石毛委員長:宮本委員。

宮本委員:この法改正が施行されたのは2010年1月1日ですよ。ですから、そもそもわずか2年あまり前までは、私的領域におけるダウンロードは基本的には違法ですらなかったわけです。これを始めて違法とした3年前の改正時にも、この問題を巡って大きな議論がございました。しかし、この時は、我が党も違法ダウンロードが正規の配信事業を上回る規模になり、正規コンテンツの流通に支障をきたしていること、そして、このような状況が放置されることは由々しき事態であり、日本のコンテンツ産業の成長が阻害される懸念があることから、賛成の立場を取りました。しかし、それはあくまで罰則規定の導入など、国民の基本的人権を脅かすような内容がそこに含まれていなかったからであります。平成21年改正の時には、政府自身がそのことを力説していたと思うんですね。当時の塩谷文部科学大臣は、この2009年の法改正案の法案主旨説明で、なおこの30条の改正については違法なものと知りながらおこなった場合に限るとともに、罰則は課さないこととしておりますと述べております。あの確認しますが、大臣、この時なぜ罰則を課さないことにしたんですか。

石毛委員長:平野文部科学大臣。

平野大臣:そもそも論のところについて、わたくし全てを承知をいたしておりませんが、先ほど来から申し上げておりますように、日進月歩で技術の進展があると、特にネットの社会を含めていろんな意味で、技術進歩が日進月歩だと、こういう背景が1つ。そして、もう1つはやはり何をおいても大事なことは権利者の保護ということをすることによってこの世界が導かれて行く、さらに発展をして行くというのが基本であろうというように思っております。そういう中で、平成21年の改正時どうだったんだと、こういうご指摘でございますが、平成21年の改正の際には、私的利用でも違法配信と知りながらダウンロードすれば違法と、こういう風にしてございます。刑事罰をじゃあなぜかかけなかったのかと、こういうことでございますが、個々の人の違法ダウンロードの事態は非常に軽微であると、こういう判断をその当時されたんだろうという風にわたくしは思っております。もう1つは、やっぱり実効性が、どういう風に違法をトラップするかというところの実効性がどうなのかと、こんなこともご議論されたように思います。しかし、一方ではネット上がより発展すれば、より広汎に広がって行くということも事実と、こういう風に思っておりますし、またなかなかその検証して行く、あの部分が難しいということはありますが、やっぱり刑事罰をかけていくということによって抑止的効果が大いに期待ができるんではないかと、こういう風なご意見もあったと承知をいたしておりまして、そういう両方ある中で、21年度改正の時にはそうしなかったと、こういうことだとわたしは理解しております。

石毛委員長:宮本委員。

宮本委員:この時は違法化ですけれども、罰則はつけなかった、軽微だということでありますけれども、それでも民主党の議員も当委員会でいつ損害賠償請求が送られて来るか分からないというユーザーの不安にどう答えるのかといった議論を相当詳しくしております。この時、高塩文化庁次長は、権利者団体がいきなり利用者に対して損害賠償請求をおこなうことは基本的にないと答弁し、プロバイダー責任制限法におきましても、サイト運営者に対するダウンロードについての個人情報開示の手続きというものはございませんので、ダウンロードをおこなう利用者を特定することは困難だと述べております。その後、何か事情が変わったのか、文化庁、お答え頂けますか。

石毛委員長:河村次長。

河村次長:ご指摘の点につきましては、事情の変更はないものと承知をいたしております。

石毛委員長:宮本委員。

宮本委員:事情の変更はないんですね。それで、このプロバイダー責任制限法、正式には、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律という、まあ長い名前の法律でありますけれども、これを2001年11月6日参議院総務委員会で審議した際、我が党から質問に立ったのは他ならぬわたくしでございました。今日は総務省にも来て頂いております。わたしは2001年11月6日参議院総務委員会でのプロバイダー責任制限法案の質疑で、インターネットでいつどんなサイトにアクセスしたかといったことは個人のプライバシーにかかわる問題であり、法律上も電気通信事業者はそれを通信の秘密として守る責務を負っていると指摘をした上で、電気通信事業者がみだりにそれを開示することは許されないばかりでなく、それを開示させる法令を作ろうという場合でも、憲法上の通信の秘密の適用から除外するに足るだけの十分な理由がある場合に限られるのでなければ憲法違反となると厳しく指摘をいたしました。それに対して、当時の片山総務大臣も、総務省も、発信者情報開示請求権の要件を厳格に定め、通信の秘密をいささかも犯すことのない運用に努めると繰り返し答弁したと覚えておりますが、間違いないですね。

石毛委員長:総務省原口電気通信事業部長。

原口総務省電気通信事業部長:先生おっしゃいました通り、当時宮本委員からご質問頂きまして、当時、総務大臣、総合通信基盤局長から、1点目といたしまして、いわゆる通信の秘密につきましては、憲法上の基本的人権として保障されていること、また、インターネット上のいわゆる電子掲示板への接続の記録も、これは通信の秘密として保護の対象となること、それから、いわゆるこのプロバイダー責任制限法におきまして、発信者情報開示請求の要件については非常に厳格に定められていること、それから、最後に、プロバイダー責任制限法の施行にあたっては、その主旨が十分に理解され、適切な運用が図られるように必要に応じて関係者に周知徹底を図ること、このように答弁をさせて頂いたと承知しております。

石毛委員長:宮本委員。

宮本委員:そうとう厳密な議論をやったんですね。それで、今既に罰則が付されているアップロードという行為、これはもちろん、プロバイダーのところでそのアドレスを特定するということは可能であります。しかし、ダウンロードしたかどうかということをプロバイダーが特定するってのは不可能でありまして、やろうと思えば全てのアクセスを手あたり次第に調べてみる必要が出て来るわけであって、アクセスした全てのIPアドレスを開示請求するってことは許されないことであって、開示請求を受けたところを1つ1つ踏み込んで、パソコンの中を調べてみるってことはとんでもない騒ぎに、とんでもない話になるわけであって、できようがないわけなんですね。ですから、そういう点でも、こういうものに罰則をかけるってのは技術的にもそして憲法上も許されないということを申し上げなければなりません。それで、こういう議論が文化審議会の著作権分科会でもやられて来たと思うんです。で、文化審議会著作権分科会では、昨年著作権法第30条の見直しの議論がされ、関係者からもヒアリングをされて来たと聞いております。そこで、私的違法ダウンロード行為に罰則をかけるというようなことがですね、関係者間で合意されたという事実がございますか。

石毛委員長:河村次長。

河村次長:昨年度文化審議会では、著作権法第30条、その私的使用のための複製の規定でございますが、この規定全般について関係者から広くヒアリングを行い、検討課題を整理したと、そういう段階でございます。

石毛委員長:宮本委員。

宮本委員:合意はできてないですね。

石毛委員長:河村次長。

河村次長:はい、検討課題を整理したという段階ですから、まだそうした、そうした議論をしているということではございません。

石毛委員長:宮本委員。

宮本委員:文化審議会の著作権分科会でも合意に至っていない。こういうものであります。そこでですね、この違法ダウンロードの、この違法ダウンロードが動画投稿サイトで多いと言われております。そこで、その実態について聞くんですが、動画サイトは音楽の利用について権利者と包括的に許諾を得ているサイト、具体名をあげるとニコニコ動画など、それと放送局などの公式ページと、違法にアップロードされた動画が混在するサイト、具体名をあげますとユーチューブなどがあると思うんですが、これは事実ですね、文化庁。

石毛委員長:河村次長。

河村次長:お話のように動画サイトの中には、運営事業者とJASRAC等の著作権等管理事業者やレコード製作者との間で包括的な利用許諾契約を締結している例もある一方で、適法なものと違法にアップロードされた動画が混在しているサイトも存在しているという風に承知しております。

石毛委員長:宮本委員。

宮本委員:動画投稿サイトにある音楽や映像には、適法にアップロードされたものと違法なものが混在しているっていうのが今答弁にあったように実態なんです。これでは、音楽や映像のダウンロードが果たして違法な行為にあたるのかどうかを理解できないままに行われる場合も多く、処罰の対象にすることは過剰な対応だと言わざるを得ないと思います。さらにおうかがいしますが、放送局などの場合ですね、その多くが無償で提供するサイトとそして有償で提供するサイトの両方を運営している他、映画、音楽などもそれぞれの販売目的に応じて期間を限定して無償で提供したり、一部分を無償で提供したりする、そういう実態があると思うんですけれども、これも、文化庁、事実ですね。

石毛委員長:河村次長。

河村次長:お尋ねの点につきましては、放送局が無償又は有償で放送番組等の動画を提供するサイトを運営している例や、映画製作者、音楽事業者が販売促進等の目的に応じて期間や提供部分を限定するなどして無償で提供している例があるという風に承知をいたしております。

石毛委員長:宮本委員。

宮本委員:有償と無償の区別をつけることさえ難しいというのが実態です。こんな状態では、ダウンロードすれば処罰の対象となる音楽、映像なのか、利用者が事前に判断、判別するということは困難であると言わざるを得ないと思います。何が罪になるのか明確になっていないものを、その刑罰を定めるというようなことは許されることではありません。そもそも、新たな刑罰を課す場合、賛否はどうあれ、当然国会において慎重な質疑がなされ、その立法事実、構成要件等を明らかにしなければなりません。とりわけ、この修正案が提起している、違法ダウンロードの処罰化は、今や多くの国民が利用するインターネット利用に大きく影響するものであります。修正案提案者にはそのような修正案の提案は取りやめること、またそのような修正案に何の審議もなく賛成するというようなことはくれぐれも思いとどまることを強く訴えて、わたくしの質問を終わります。

石毛委員長:これにて本案に対する質疑は終了いたしました。副大臣、政務官が席に戻るのを少しお待ち下さい。この際、本案に対し、池坊保子委員他4名から自由民主党無所属の会及び公明党の2派共同提案による修正案が提出されております。提出者から主旨の説明を求めます。池坊保子委員。

池坊委員:ただいま議案となりました修正案につきまして、提出者を代表いたしまして、その主旨及び内容の概要をご説明いたします。本修正案は、違法に発信されているものであることを知りながら、有償の音楽又は映像を私的使用目的で複製する行為、いわゆる私的違法ダウンロードについて罰則を設けるとともに、私的違法ダウンロードの防止に関し、国民に対する啓発、関係事業者の措置などについての規定を追加するものであります。その内容の概要をご説明いたします。まず、私的違法ダウンロードに対する罰則を設けることといたしました。すなわち、一、私的使用の目的をもって、二、有償著作物等の著作権又は著作隣接権を侵害する自動公衆送信を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を、三、自らその事実を知りながら行って著作権又は著作隣接権を侵害した者は、四、二年以下の懲役若しくは二百万円以下の罰則に処し、又はこれを併科することとしております。また、私的違法ダウンロードの防止の重要性についての国民の理解を深めることが重要であると考え、国及び地方公共団体に対し、私的違法ダウンロードの防止に関する啓発、未成年者に対する教育の充実を義務づけることといたしました。その他関係事業者の措置に関する規定、法律の施行後一年を目途とする検討条項を設けることとしております。以上が修正案の主旨及び内容の概要でございます。なにとぞ委員各位のご賛同をお願い申し上げます。

石毛委員長:これにて主旨の説明は終わりました。これより原案及び修正案を一括して討論に入ります。討論の申し出がありますので、これを許します。宮本委員。

宮本委員:わたくしは日本共産党を代表して内閣提出の著作権法の一部を改正する法律案に賛成、自民党公明党共同提出の修正案に反対の立場から討論します。内閣提出の法律案は写り込みなどある程度事例を限定した上で現行では形式的には違法となる行為を容認しようとするものですし、国会図書館が所有する電子化資料の利用拡大など国民の利便性が向上する面もあり、賛同できるものです。これに対し、自民党公明党共同提案による修正案は、共同提出の法律案とは全くかかわりがない違法ダウンロードを処罰化するものです。まず、このような国民の基本的人権にかかわる重大な内容を含む修正案を政府案の質疑終局後に提出するという委員会運営を強引に進めた修正案提出者及び民主党に対し、厳しく抗議します。現在、動画投稿サイトやファイル交換ソフト等を通じて違法にアップロードされたコンテンツが簡易に無料で入手できる状況にあり、正規コンテンツの流通に支障をきたしていることはもちろん問題です。しかし、その対処は処罰化ではなく、まずはインターネット上にある違法にアップロードされたものの削除などの対策のさらなる強化であるべきであって、違法ダウンロードの処罰化ではありません。そもそも、この問題は個人のインターネット利用のありようにかかわる私的な領域であり、ダウンロードをおこなっているのは未成年者を含む若者が多く、その影響も考慮し、慎重に検討されなければなりません。著作権法制のあり方を検討する、文化庁の文化審議会著作権分科会では、昨年9月に違法ダウンロードの処罰化については、賛否両論の論点整理をまとめているのみで、今年2月の審議経過報告では、今後適宜検討するとされているにすぎず、関係者間の合意はありません。また、現在、ダウンロード違法化の施行からわずか2年あまりが経過したにすぎず、わずかな期間での処罰化は国民の理解を得られません。国民的な合意もないまま、関係者間の議論の途上で、審議会での議論さえ踏まず、罰則を導入するなどは言語道断です。違法ダウンロードがおこなわれているとされる動画投稿サイトには、音楽の利用について権利者と包括的に許諾を得ているサイトと、放送局などの公式ページと、違法にアップロードされた動画が混在するサイトがあり、ユーザーにとってインターネット上にある音楽、映像が違法にアップロードされたものかどうかを事前に判断することは困難です。また、修正案は、有償であるもののみを対象としていますが、放送局などの場合その多くが無償で提供するサイトと有償で提供するサイトの両方を運営している他、映画、音楽などもそれぞれの販売目的に応じて期間を限定して無償で提供したり、一部分を無償で提供したりもしています。有償か無償かを見分けることも容易ではありません。さらに処罰する場合、誰がどのようにして違法ダウンロードをおこなったのかを証明、把握する必要が生じます。日常的に権利者、捜査当局が、個人のインターネット利用の内容、音楽、映像のダウンロード状況を監視、把握することが予想されます。親告罪で、著作権者の告発により捜査がおこなわれると言っても、憶測や疑惑の段階から取り締まりを可能にすることにつながりかねず、結果として、捜査当局の恣意的な捜査を招く危険を排除できません。このような問題の多い修正案をまともな審議ぬきで採決することの不当性を厳しく指摘して、わたくしの討論を終わります。

石毛委員長:これにて討論は終局いたしました。これより採決に入ります。内閣提出著作権法の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。まず、池坊保子委員他4名提出の修正案について採決いたします。本修正案に賛成の委員の起立を求めます。(賛成委員の起立)起立多数、よって本修正案は可決されました。次に只今可決いたしました修正部分を除く原案について採決いたします。これに賛成の委員の起立を求めます。(賛成委員の起立)起立総員、よって本案は修正議決すべきものと決しました。お諮りいたします。只今議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては委員長にご一任願いたいと存じますが、ご異議ありませんか。(異議なしの声)異議なしと認めます、よってそのように決しました。次回は公報を持ってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。

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2012年6月12日 (火)

第273回:「『違法ダウンロードへの罰則導入』に関するQ&A」に関するQ&A

 ダウンロード犯罪化に反対するための資料としては、日弁連の意見会長声明)やMIAUの反対声明が簡にして要を得ており、さらに追加するべきこともないくらいだが、著作権団体のロビー資料のQ&A(MIAUのツイートあるいは津田大介氏のツイート参照)に書かれているような間違った理解が広まったらそれはそれで大問題なので、前々回で取り上げた海外事情に加えて、そのQ&A全体に対する反論をやはりQ&A形式でここに書いておく。(ただし、ダウンロード犯罪化に関する私の意見自体は第256回でも書いており、内容に大差はない。)

(以下、Q&A。Q19までは著作権団体のロビー資料のものと1対1に対応させたものだが、ロビー資料の回答を見て質問を少し作り変えていることにご注意頂きたい。)

Q1:違法ダウンロードを罰則の対象とすることは「知財立国」や「健全なインターネット社会の発展」のためになるか?

⇒ダウンロード犯罪化はまず間違いなく社会のためになりません。政策決定において、「知財立国」や「健全な社会」のような見てくれの良い言葉で思考停止することほど危険なことはありません。どのような規制にもメリットだけではなくデメリット・コストも存在しています。既に著作権保護強化は行き過ぎて文化や経済の発展を阻害しており到底「知財立国」などとは言えない状態ですし、単なるインターネットアクセスで山のように青少年が逮捕されるような社会は到底「健全」とは言えないでしょう。短絡的な思考停止を避け、メリットだけではなくきちんとデメリットも踏まえ、政策決定はされなくてはいけません。

Q2:平成21年の著作権法改正以降立法事実の変化はあるか?

⇒いまだに単なるダウンロードに対する民事訴訟の例はなく、前回のダウンロード違法化の法改正以来何ら立法事実の変化はありません。もしダウンロード違法化に効果がないというのなら、前回の法改正自体、改正の根拠となる立法事実がなかったということでしょう。

Q3:違法アップロード者を取り締まることでは十分に対応できないのか?

⇒インターネットにおける海賊版対策は基本的に違法アップロードの取り締まりで対応することが可能です。アップロードへの対処で不十分だとする理由は説得力を欠きます。海外においても多くの国でアップロードは違法・犯罪とされているのでしょうから、対応が不可能ということはないでしょう。アップロードへの対処に困難性があるのであれば、その困難性を下げることをまず考えるべきであって、そこからダウンロードを違法化する・犯罪化するといったようなさらにエンフォースに困難性がともなうだろうような規制強化に短絡的に飛びつくのは非常に危険なことです。

Q4:Lマークでコンテンツの合法違法を区別がつけられるか?

⇒Lマークはネット全体のなかでごくわずかなサイト・コンテンツにつけられているだけであって、あらゆるサイト・コンテンツの合法違法の区別をできるものでは到底ありません。そもそもLマークのようなごく一部の業界団体が権利を所有しているマークがネットにおけるあらゆるコンテンツの違法合法の区別を示すなどということは不当以外の何物でもないでしょう。さらに言えば、Lマークの存在自体普通の人はほとんど知らないでしょう。

Q5:違法ダウンロード者を取り締まることは可能なのか(罰則をつけても効果がないのではないか)、違法ファイル共有ユーザーに対する量刑が重くなるか?

⇒故意性やコンテンツの違法性の認識の立証、プライバシーなどに関する数々の問題点をまともに考えたらダウンロードに対する取り締まりは実際にはほとんど不可能です。全ての問題点を踏みにじって著作権団体と警察によりエンフォースが行われることも考えられなくはありませんが、その場合は摘発は恣意的なものたらざるを得ず、やはり非常に大きな問題が発生します。いずれにせよ、ダウンロード違法化や犯罪化のようなやり方は、法のさらなる弛緩か、恣意的な執行による正当な利用の萎縮のどちらかに転ぶしかない最低最悪の手段と言えます。また、実際の司法判断を待たなければ何とも言えないところもありますが、アップロードとダウンロードを同時に行う違法ファイル共有における罪数処理は難しく、量刑が重くなるとは一概に言えないでしょう。そもそも違法ファイル共有が問題であるのならば、スジ違いのダウンロードに対する罰則付与ではなく、違法ファイル共有への対策を特に講じるべきでしょう。

Q6:正規サービスの充実こそ最大の違法コピー対策ではないのか?

⇒ここで問題となるのは価格だけではなくDRM・利便性も含めたサービス全体ですが、正規サービスの充実以外の対策はどこをどうやっても付け焼き刃にしかならないでしょう。

Q7:ダウンロードできないように技術的にコントロールできないのか?

⇒DRMによるコピー・アクセスコントロールの問題はユーザーの利便性や情報アクセス権の観点からも含め別途議論されるべき問題で、ダウンロード違法化・犯罪化問題とは直接関係ありません。

Q8:他国の法制はどうか?

⇒世界でもダウンロードを違法化・犯罪化してまともにエンフォースしようとした国はドイツくらいしかありませんが、そのドイツでは法改正の結果生じた刑事訴訟の乱発による混乱の反動がなお続いており、反面教師としてしか参考にならないでしょう。第271回参照。)

Q9:世界で単なるダウンロードに対する刑事訴追事例はどれくらいあるのか?

⇒単なるダウンロードに対する刑事訴追は世界でも1例もありません。第271回参照。)

Q10:国民への周知はどこまで可能か?

⇒ダウンロード違法化と同程度には文化庁・著作権団体が周知しようとするでしょうが、一般国民の常識と乖離した法改正の周知には自ずと限界があります。ダウンロード違法化すら十分に周知されているとは言い難い現状で犯罪化までしたのではさらに混乱に拍車がかかるでしょう。

Q11:罰則の導入によりインターネットの利用は萎縮しないのか?

⇒あらゆるコンテンツについて合法違法の区別が明確につくなどということはありえず、著作権団体と警察による法律の恣意的な運用によりインターネット全体の利用が萎縮する可能性は十分にあるでしょう。ダウンロード犯罪化条項が実質的にエンフォースされないことにより、萎縮が一時的なものにとどまる可能性もありますが、そのような場合も、やはり法改正は有害無益なものであるとしか言いようがありません。

Q12:罰則の導入は、違法ダウンロードを理由とした警察権力の不当介入につながらないのか?

⇒強制捜査に令状が必要なのは当然のことですが、ダウンロードについて令状の必要性を疎明するために警察がどれだけの事実・資料を必要とするのかという点こそが本質的な問題点です。運用次第ですが、ダウンロードに利用されたと思われるIPアドレスと権利者の告発だけで疎明に足るとしたらほとんど何の制約にもなっておらず、濫用される懸念は非常に強いと言わざるを得ません。アニメ画像1枚の利用でウィルス作成者が逮捕された過去の事件のことを考えても、警察は別件逮捕などのためにこのような条項を使いに来ることでしょう。過剰捜査ということとは少しずれますが、ドイツではダウンロード違法化・犯罪化にともなう刑事訴訟の乱発が社会問題化したことがあります。

Q13:ダウンロードで子供・青少年が摘発されるだろうことについてその育成上の問題はないのか?

⇒このような法改正がなされた場合、子供がコンテンツをダウンロードしたというだけで警察が家に踏み込んで来ることになりかねませんが、このようなことで家庭をメチャクチャにすることが正しいこととは到底私には思えません。後に不起訴となったとしても、警察による捜査・逮捕の時点で家庭は崩壊の危機に瀕することでしょう。なお、このような警察権力の家庭への侵入の問題は別に子供・青少年に限った話でもありません。

Q14:ダウンロードに罰則を付けた場合、動画ダウンロード支援サイト「TUBEFIRE」のようなサイトからのダウンロードユーザーに対する適用があり得ることになるのか?

⇒場合によってダウンロード支援サイトのユーザーに対する罰則の適用もあり得るということになるのでしょうが、本当に適用された場合、コンテンツの違法性の認識の立証、故意性の立証の面で非常に大きな問題が生じるでしょう。このようなサイトを利用していたことのみをもってその証拠とするような運用がされたとしたら、リンクを踏むだけでも警察の捜査・逮捕があり得ることになり、インターネットの利用に対して甚大な萎縮が発生することになるでしょう。また、幇助(民事なら間接侵害)の問題もあり、リンクを張ることすら危なくなるでしょう。

Q15:違法ダウンロードに罰則をつければCDの売り上げが増加するか?

⇒ダウンロード犯罪化でCDの売り上げが増加することはないでしょう。世界を見渡しても、著作権の保護強化がCDの売り上げに有意なプラスの影響を与えた例はありません(第271回参照)。世界で一般的に見られる音楽配信の売り上げ増についても、カタログの充実やDRMの廃止などの正規サービスの充実の方が一般国民の常識を離れた著作権法改正よりはるかに効いていると考える方が妥当です。

Q16:「刑法の謙抑性」の原則から、私的領域における行為に対する刑事罰の導入には極めて慎重であるべきではないのか?

⇒情報へのアクセス・単なるダウンロードは本来他人が知るべきでない私的な行為であり、このような行為に対する刑事罰の導入には極めて慎重であるべきなのは無論のことです。知的財産権はあくまで社会的な便宜のために創設された人工的な権利であり、知的財産侵害品の単純購入や単純所持を禁じていることはありません。この点で、有体物の窃盗と、無体物である知的財産権の侵害を混同するのは、常に論理飛躍をもたらす危険なアナロジーです。

Q17:個人のプライバシー権侵害の懸念はないのか?

⇒Q12に対する答えでも書きましたが、運用次第とは言え、令状の必要性を疎明するためにダウンロードに利用されたと思われるIPアドレスと権利者の告発だけで足りるとしたらほとんど何の制約にもなっておらず、警察の濫用による個人のプライバシー権侵害の懸念は非常に大きいものと言わざるを得ません。

Q18:スイスやオランダは市場規模や自国音楽シェアのみからダウンロードを合法のままとしたのか?

⇒スイスやオランダも市場規模や自国市場における自国音楽のシェアのみからダウンロードを合法のままとしたのではありません。両国とも、ダウンロード違法化・犯罪化のようなやり方が自由でオープンなインターネットに反すること、プライバシーや表現の自由の観点から問題があること、告発・訴訟の乱発・濫用の懸念があることなどを正しく認識してダウンロード違法化・犯罪化をしないと決定しています。第271回参照。)

Q19:ダウンロード行為に刑事罰を付することとした場合、権利者によって情報の流通がコントロールされ、国民の情報アクセス権が害されるおそれはないのか?

⇒ダウンロード犯罪化は、運用次第でインターネットの利用に甚大な萎縮が発生し、引いては国民の情報アクセス権を害しかねない危険な規制強化です。対象を有償著作物に限れば良いとするようなことはあくどい問題のすり替えであって、このような対象の限定は問題の本質とは関係ありません。今のところは恣意的な運用の懸念があるというレベルの問題だと思っていますが、これを本当に完全にエンフォースしようとしたら、あらゆる情報アクセスを監視するために一大ネット検閲システムを警察で構築することが必要になって来るでしょう。そこまでの懸念は杞憂であって欲しいと私も思っています。

<おまけのQ&A>
Q20:3行でお願いできますか?

⇒3行でまとめるのは無理ですが、以前Twitterで上で書いたようなことをつづめて「ダウンロード犯罪化の動きの問題点:1.不透明な立法プロセス、2.違法ダウンロードの民事訴訟もなく立法事実に変化なし、3.違法・合法の区別がつかない、4.パロディ・研究等との関係が未整理、5.警察権力の不当な伸長の恐れ、6.ネット検閲につながる恐れ、7.海外でも訴追例・成功例は皆無」と書きました。さらに言えば、前回のダウンロード違法化自体間違った法改正であり、合法化するべきと私は考えています。

Q21:ダウンロード犯罪化の立法プロセスにおける問題はどこにあるのでしょうか?

⇒議員立法あるいは内閣提出法案の修正自体はあり得るプロセスであり、立法プロセスそのものが違法だということはありませんが、このような全国民に大きな影響を与えかねない法改正を不透明な与野党談合で実質審議なしで通そうとしていることが大問題です。立法府の本来の職務を放棄しているに等しい、このような不透明なやり方は大きな禍根を将来に残すことになるでしょう。

Q22:パロディとの関係はどうでしょうか?

⇒今のところパロディに関する明確な規定は著作権法上になく、パロディとの関係でもコンテンツが合法か違法かを見分けるのは難しいというのが現状です。また、ダウンロード犯罪化は、公正な利用と考えられる、一般的な研究などのための情報入手に影響を及ぼす可能性もあるでしょう。ここで、ダウンロード犯罪化の話は、文化庁が今期の文化審議会で検討するとしているパロディ規定の話とは直接関係ないことにも注意が必要です。

Q23:この問題に懸念を持つネットユーザーはどうしたらいいのでしょうか?

⇒一番重要なことは自分で情報を集め自分の頭で考えて自分で行動することです。衆議院文部科学委員会でダウンロード犯罪化がすぐにも採決されるかも知れないという予断を許さない情勢ですが、もし本当に懸念を持っておられ、何かできることはないかとお考えのようでしたら、メールでも電話でも構わないと思いますが是非まず地元の国会議員の方にご自分の懸念を丁寧に自分の言葉でお伝え下さい。

(2012年6月12日夜の追記:Q7の回答に「や情報アクセス権」という言葉を追加するとともに、いくつか誤記を直して文章を整えた。)

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2011年9月11日 (日)

第256回:レコ協・音事協のロビー活動を受け、自民党が作成したダウンロード犯罪化法案

 「P2Pとかその辺のお話@はてな」でも書かれている通り、先月以来、日本レコード協会や日本音楽事業者協会も出席する自民党の部会でダウンロード違法化法案が検討され、その推進が決議されている。その案と思われるものが手に入ったので、ここでこの自民党部会で検討されていた条文案を掲載するとともに、このダウンロード犯罪化問題についてさらに書いて行きたいと思う。(私自身は大体このようなものだろうと想定していたので本物と踏んでいるが、法案の真偽の判断は読者の皆様にお任せする。)

 細かな点が気になるようであれは最後に載せた条文案を見て頂ければと思うが、法案の内容は、要するに、有償で提供されているか又は後に有償で提供されることが明らかな著作物を、事実を知りながらダウンロードすること(自動公衆送信を受信してデジタル方式の録音又は録画を行うこと)に100万円以下の罰金を課せるようにするというものである。

 このような法改正を日本レコード協会などが求めて来ること自体、あれだけの大騒ぎをしたあげくユーザーの意見を完全に踏み躙って強行したダウンロード違法化が有害無益であったことを自白しているに等しく、突っ込むのもバカらしいのだが、ダウンロード違法化を超えて犯罪化を目指すなどふざけるのもいい加減にしろと言いたい。ダウンロード違法化自体間違っていたことが証明されつつある中、その上罰則をつけることにどのような正当性があるのか、このような法改正を求める連中の正気を私は疑う。

 大体彼らが著作権規制の強化の根拠として持ち出すのは自分たちの売り上げが減っているのは莫大な海賊版被害の所為だといういつものお伽話だが、そもそも、レコード業界すなわち音楽業界ではないことにも注意が必要な上、レコード業界が自分たちの売り上げ減を海賊版の所為だけにすること自体間違いであり、海賊版被害に関する限り彼らの話は統計上全くといって良いほど信用できない。(レコード業界のロビイストは、どうやら業界のビジネスモデルの問題を法律の問題に押しつけていたずらに昔日の隆盛の再来を夢見ていたいようだが、ダウンロード違法化で有意な差が見られなかったというなら、例え犯罪化がなされたとしても、彼らの売り上げにプラスの効果が見られることはあり得ないだろう。法改正以前の問題として、著作権ロビイストの主張には常にどうしようもない矛盾を私は感じる。)

 さらに、罰則をつけようにも、ダウンロード違法化の検討の際に指摘された問題(例えば、第126回参照)はいまだにほとんどなにも解決されていない。ユーザーから見て著作物の違法合法の区別がつくのかという問題1つとっても何も解決されていないだろう。レコード協会がしきりと売り込んでいるエルマークがどれほど認知されているか甚だ疑問である上、音楽配信サイトであればエルマークのついていないサイトを全て、動画サイトであれば彼らの認める公式チャンネル以外を全て違法サイト扱いにしてそこからのダウンロードをほぼ犯罪にしようとするなど非道にもほどがある話である。

 外国の状況については前回書いた通り、著作権団体の好きな著作権強権国家の英米独仏などでは、P2P違法ファイル共有ユーザーに対する訴訟が猖獗を極め社会問題化し、ダウンロード合法化の議論すら出てきているというのが現状であり、他国でダウンロード違法化・犯罪化が問題なく運用されているなどという主張はデタラメも良いところである。そして、世界中見渡しても単なるダウンロードを刑事訴追したケースは1件もないことを考えれば、ダウンロードを犯罪化してユーザー一人々々を推定有罪の裁判で追い込みたいなどという主張がいかに気違いじみているか分かるというものだろう。(なお、ついでに書いておくと、アメリカはフェアユースとの関係でダウンロードがどのように取り扱われるかはなお分からず、ストライクポリシー国のフランスをダウンロード犯罪化の文脈で持ち出すのはスジ違いであり、イギリスもストライクポリシーと私的複製の範囲の拡大の間で揺れ、ドイツについては前回書いた通り、デタラメな運用によって反動が出ているくらいである。)

 それまで違法でなかったことを違法にするということも非常に影響は大きいが、それまで犯罪でなかったことを犯罪にするのはさらに影響が大きい。違法にできたから今度は犯罪にしても良いなどというのは非道い問題のすり替えである。何も知らないところに著作権侵害で警告状や民事訴訟の訴状が送られてくるのも大変な話だが、これを超えて突然家庭に警察が踏み込んでくる話と言えばこれがいかに非道い話か分かるだろうか。

 親告罪であるからそこまで大きな問題にならないだろうというのも同じく非道い問題のすり替えである。著作権団体が与えられた力を濫用しないという保証はどこにもないのである。ことインターネットにおいては普通に使っていても完全に著作権侵害をしないということは難しく、ダウンロード犯罪化は、ひいては著作権団体か警察・検察にインターネットを殺す1つのスイッチを渡すことに繋がりかねないだろう。(当然のことながら違法ダウンロードに対する罰則の付加は警察権力の伸長も招くだろうし、ここで、著作権団体が著作権侵害罪の非親告罪化を求めていることも忘れてはならない。)

 どだいダウンロード違法化をして早々の段階で、民事訴訟すら起こさずに、刑事罰の付加を求めること自体おかしいのだが、著作権団体のロビイストが法律を何だと思っているのか実に不可解としか言いようがない。(少し前に、ユーチューブのダウンロード支援サイトが訴えられているが(Internet Watchの記事参照)、これはどちらかと言えば間接侵害の話で、直接的なダウンロードの話ではない。なお、著作権の間接侵害や侵害幇助の問題についても立法的にセーフ-ハーバーが規定されるべきと私は考えているが、このダウンロード犯罪化法案は間接侵害や幇助との関係でも慎重な検討が必要である。)

 繰り返しになるが、一人しか絡まない行為であるダウンロードについて違法性の認識・故意を証明するのは基本的に不可能である。アップロード側や掲示板等に残された記録を手がかりにして良いとは到底思えないが、一大ネット検閲システムを構築した上で、ダウンロード者のIPアドレスを見て適当に悪質そうなものからデタラメに告発して行くといったことを彼らは考えているのだろうか。それで推定有罪の裁判に引き出された日には目も当てられない惨状が現出することだろう。

 また、法案の第3条に、「有償著作物等を公衆に提供し、又は提示する事業者は、音楽等の私的違法ダウンロードを防止するための措置を講ずるよう努めなけれぱならない」という条文が入っているが、この事業者にどこまで含まれるのか曖昧であり、曖昧であることを良いことに、さらにストライクポリシーやブロッキングのような著作権検閲をインターネット関連事業者に求めてくることすら考えられる。

 要するに、レコード協会などの主張に取るべきところは何一つなく、一体どのような理由で彼らがこのような法改正を求めてきているかをよくよく考えると、単に自分たちのビジネスモデルの失敗を法律の所為にしてごまかしているだけと知れる。これでごり押ししようとするレコード業界もレコード業界だが、この程度でごまかされる国会議員も国会議員である。ただし、「P2Pとかその辺のお話@はてな」でも書かれている通り、自民党内でも完全に意見の統一ができている訳ではないようであり、自民党内でも下村博文衆院議員(文部科学部会長)や河村健夫衆院議員(元文部科学大臣)、三原じゅん子参院議員、馳浩衆院議員などは著作権団体よりと見えるが、逆に、山本一太議員や世耕弘成議員、佐藤正久参院議員などが慎重な立場を表明している。昨今の混沌とした政治情勢を見るにつけ、先は読めないが、これらの名前はよく覚えておく必要があるだろう。

 民主党の出方や文化庁の出方を含め、ダウンロード犯罪化に関する議論が今後どうなるのかよく分からないが、全ネットユーザー、全IT業界に関係することとして、憲法、刑法の原則にまで立ち返った議論、より国民的な議論を経て、ダウンロード犯罪化法案のような非道極まる法案が永遠に葬り去られることを私は期待している。

(以下、8月11日の自民党部会で検討された「音楽等の私的違法ダウンロードの防止に関する法律(案)」。なお、過去の悪例として映画盗撮防止法(Wiki)があるが、このように特別法で著作権侵害の罰則を設けること自体、立法技術的にも非常にセンスが悪い。)

(1)理由
 音楽等の私的違法ダウンロードが多数の者によって行われることにより、音楽等に係る産業に多大な損害が発生していることに鑑み、音楽等に係る文化の振興及び産業の健全な発展に寄与するため、音楽等の私的違法ダウンロードを防止するために必要な事項を定める必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

(2)条文案
(目的)
第一条 この法律は、音楽等の私的違法ダウンロードが多数の者によって行われることにより、音楽等に係る産業に多大な損害が発生していることに鑑み、音楽等の私的違法ダウンロードを防止するために必要な事項を定め、もって音楽等に係る文化の振興及び産業の健全な発展に寄与することを目的とする。

(定義)
第二条 この法律において「著作物」、「著作者」、「実演」、「レコード」、「放送」、「有線放送」、「自動公衆送信」、「録音」、「録画」、「変名」、「著作権」及び「著作隣接権」の意義は、それぞれ著作権法(昭和四十五年法律第四十八号)第二条第一項第一号から第三号まで、第五号、第八号、第九号の二、第九号の四、第十三号及び第十四号、第十四条、第十七条第一項並びに第八十九条第六項に規定する当該用語の意義による。

 この法律において「有償著作物等」とは、録音又は録画をされている著作物、実演、レコード又は放送若しくは有線放送に係る音若しくは影像(著作権又は著作隣接権の目的となっているものに限る。次項第二号において「著作物等」という。)であって、有償で公衆(特定かつ多数の者を含む。次条において同じ。)に提供され、又は提示されているもの(その提供又は提示が著作権又は著作隣接権を侵害しないものに限る。)をいう。

 この法律において「音楽等の私的違法ダウンロード」とは、著作権法第三十条第一項に規定する私的使用の目的をもって、次に掲げるものの著作権又は著作隣接権を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であって、国内で行われたとしたならぱ著作権又は著作隣接権の侵害となるべきものを含む。)を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を、自らその事実を知りながら行って著作権又は著作隣接権を侵害する行為をいう。
 有償著作物等
 その録音又は録画の時においてその後有償著作物等とされることが明らかな著作物等

(音楽等の私的違法ダウンロードを防止するための関係事業者の措置)
第三条 有償著作物等を公衆に提供し、又は提示する事業者は、音楽等の私的違法ダウンロードを防止するための措置を講ずるよう努めなけれぱならない。

(罰則)
第四条 音楽等の私的違法ダウンロードを行った者は、百万円以下の罰金に処する。
 前項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
 無名又は変名の著作物の発行者は、その著作物に係る第一項の罪について告訴をすることができる。ただし、著作権法第百十八条第一項ただし書に規定する場合及び当該告訴が著作者の明示した意思に反する場合は、この限りでない。

(3)附則
(施行期日)
 この法律は、公布の日から施行する。ただし、第四条の規定は、公布の日から起算して六月を経過した日から施行する。

(検討)
 この法律の規定については、この法律の施行後一年を目途として、この法律の施行状況等を勘案し、検討が加えられ、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられるものとする。

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