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2009年7月15日 (水)

第183回:総務省・「利用者視点を踏まえたICTサービスに係る諸問題に関する研究会」第一次提言案に対する提出パブコメ

 表現の自由に関するエントリも書いているところだが、衆議院で不信任案が提出され、参議院で問責決議が可決され、野党が審議拒否に入り、総理が来週の解散を明言する中、児童ポルノ規制法の改正案は今国会では廃案になることがほぼ確定したので、ここで、後2つ残っている総務省のパブコメを先に片付けておきたいと思う。(無論、今国会で廃案になったからと言って、次の国会で再提出される可能性も高いので、児童ポルノ規制法改正問題に関して、今回の選挙が極めて重要であることは言うまでも無く、選挙後も当分この問題については気は抜けないだろう。また、選挙関係のエントリも別途書きたいと思っているところである。)

 今回載せるのは、その内の1つ、「利用者視点を踏まえたICTサービスに係る諸問題に関する研究会」第一次提言案(pdf)に対する提出パブコメ(7月28日〆切。総務省のリリース意見募集要領(pdf)、電子政府の該当ページ参照)である。

 この研究会はストリートビュー問題に関する検討の方が注目されているが、この報告書案における最大の問題は、ストリートビュー問題に関する部分では無く、第24~38ページの「Ⅱ 違法音楽配信対策について」で書かれている、日本レコード協会(RIAJ)が提案している携帯電話における著作権検閲である。詳しくは報告書本文を読んでもらえればと思うが、要するに、ダウンロード違法化が通ったのを良いことに、RIAJが総務省に対して早速著作権検閲を提案し、支援を求めているのである。報告書案で、それなりにコストや法律の面で問題点をある程度あげているものの、悪質なお役所検討会の例に洩れず、利権団体には甘く、本質的な問題点をごまかし、権利者団体による著作権検閲を支援・正当化しようとする意図が見え透いている。だこのような技術による著作権検閲は、表現の自由・通信の秘密・検閲の禁止・プライバシーなどの国民の基本的な権利を侵害する危険なものとしかなり得ないのであり、決して導入されてはならないものだろう。このパブコメも決して見過ごすことのできないものである。

 もう1つ、総務省からは、B-CAS見直しに関する中間答申(pdf)概要(pdf)、正式名称は、「『デジタル・コンテンツの流通の促進』及び『コンテンツ競争力強化のための法制度の在り方』」)も8月28日〆切でパブコメにかかっているので(総務省のリリース、電子政府の該当ページITmediaの記事ITproの記事も参照)、次回は、この中間答申に対する提出パブコメを載せるつもりでいる。

(以下、提出パブコメ)

1.氏名及び連絡先
氏名:兎園(個人)
連絡先:

2.意見要旨
 日本レコード協会が提案している技術による著作権検閲に反対するとともに、特に、以下の5点を強く求める。
・この日本レコード協会が提案している対策は、憲法に規定されている、表現の自由・通信の秘密・検閲の禁止・プライバシーなどの国民の基本的な権利を侵害する危険なものであり、絶対に導入されるべきでないと提言に明記すること。
・国民の基本的な権利を侵害する危険な著作権検閲にしか流れようのない著作権法中のダウンロード違法化条項の削除を、総務省から文化庁に強く働きかけること。
・憲法の「表現の自由」に含まれ、国際人権B規約にも含まれている国民の「知る権利」を、あらゆる公開情報に安全に個人的にアクセスする権利として、通信法にに法律のレベルで明文で書き込むこと、および、憲法に規定されている検閲の禁止から、技術による著作権検閲やサイトブロッキングのような技術的検閲の禁止を通信法に法律のレベルで明文で書き込むこと。
・青少年ネット規制法の廃止及び出会い系サイト規制法の法改正前の形への再改正。
・公平性の観点から及び独禁法上明らかに問題のある、携帯電話事業者による公式サイト以外のサイトからのダウンロード容量制限の排除。

 今後は、国民の基本的な権利を必ず侵害するものとなる危険な技術による著作権検閲の検討ではなく、ネットにおける各種問題は情報モラル・リテラシー教育によって解決されるべきものという基本に立ち帰り、より現実的かつ地道な施策のみに注力する検討が進むことを期待する。

3.意見
(1)第29~30ページ「Ⅱ 3.(1) フィルタリングの普及」について

 ここで、青少年ネット規制法やフィルタリングについて触れられているが、そもそも、青少年ネット規制法は、あらゆる者から反対されながら、有害無益なプライドと利権を優先する一部の議員と官庁の思惑のみで成立したものであり、速やかに廃止が検討されるべきものである。なお、付言すれば、出会い系サイト規制法の改正も、警察庁が、どんなコミュニケーションサイトでも人は出会えるという誰にでも分かることを無視し、届け出制の対象としては事実上定義不能の「出会い系サイト事業」を定義可能と偽り、改正法案の閣議決定を行い、法案を国会に提出したものであり、他の重要法案と審議が重なる中、国会においてもその本質的な問題が見過ごされて可決され、成立したものである。憲法上の罪刑法定主義や検閲の禁止にそもそも違反している、今回の出会い系サイト規制法の改正についても、今後、速やかに元に戻すことが検討されるべきである。

 フィルタリングについても、その過去の政策決定の迷走により、総務省は携帯電話サイト事業者に無意味かつ多大なダメージを与えた。この問題については、フィルタリングの存在を知り、かつ、フィルタリングの導入が必要だと思っていて、なお未成年にフィルタリングをかけられないとする親に対して、その理由を聞くか、あるいはフィルタリングをかけている親に対して、そのフィルタリングの問題を聞くかして、きちんと本当の問題点を示してから検討してもらいたい。また、フィルタリングで無意味に利権を作ろうとしている総務省と携帯電話事業者他の今の検討については、完全に白紙に戻されるべきである。携帯フィルタリングについて、ブラックリスト方式ならば、まずブラックリストに載せる基準の明確化から行うべきなので、不当なブラックリスト指定については、携帯電話事業者がそれぞれの基準に照らし合わせて無料で解除する簡便な手続きを備えていればそれで良く、健全サイト認定第3者機関など必要ないはずである。ブラックリスト指定を不当に乱発し、認定機関で不当に審査料をせしめ取り、さらにこの不当にせしめた審査料と、正当な理由もなく流し込まれる税金で天下り役人を飼うのだとしたら、これは官民談合による大不正行為以外の何物でもない。このようなブラックリスト商法の正当化は許されない。

(2)第31ページ「Ⅱ 3.(4)DRM、ダウンロード容量の制限」について
 ここで、「一部の携帯電話事業者では、公式サイト以外のサイトからダウンロードできるファイルの容量制限等も行っており」、「公式サイトとそれ以外のサイトに対して、提供する回線の水準を携帯電話事業者側で区別することは、公平性の観点からも議論を喚起する可能性がある」としているが、このような容量制限は、議論の可能性の問題では無く、公平性の観点からも、独禁法からも明らかに問題があるものである。このような容量制限は、公平性の観点からも、独禁法からも明確に問題があると、ここに明記するべきである。

(3)第32~35ページ「Ⅱ 4.(1)新たな技術的対策について」について
 この項目において、コンテンツの種類を、①正規コンテンツ、②個人コンテンツ、③違法コンテンツの3つに分類し、それぞれ、レコード会社と契約をした正規のコンテンツ配信業者から配信されたコンテンツ、一般個人が作曲、演奏した楽曲であり、著作権・著作隣接権を一般の作詞家、作曲者、演奏家が個人で保有するもの、権利者に無許諾で配信されたコンテンツと定義しているが、このような分類は適切でない。

 携帯で視聴されるコンテンツには、正規に購入した音楽CDからユーザーが私的に複製したコンテンツも含まれるのであり、配信のみを正規のコンテンツのソースとみなすような不適切な分類・定義を使用するべきでは無い。もし分類の定義を維持するのであれば、「①正規コンテンツ」の名称を「①正規配信コンテンツ」と変え、正規に購入したレコード会社の音楽CD等から私的に複製したコンテンツと定義される、「④正規の私的複製コンテンツ」という分類を追加するべきである。

 また、この項目において、音源識別やサービス識別によって正規コンテンツと違法コンテンツが識別できると書かれているが、正規の私的複製コンテンツと違法コンテンツは識別不可能であり、これらの識別技術によって正規コンテンツと違法コンテンツを一律に識別することはできないとの記載に改めるべきである。

 正規コンテンツとしてDRMのかかっていない音楽CDが存在している限り、このような対策が取られるべきではないことは自明のことである。

(4)第35~37ページ「Ⅱ 4.(2) 新たな技術的対策の課題」について
 この項目において、「携帯電話事業者のゲートウェイサーバにおいて直接ファイルの内容を監視するという方法でなければ、通信の秘密を直ちに侵害していることにはならないと考えられる」としているが、通信の秘密という基本的な権利の適用は監視の位置がサーバーであるか端末であるかによらないものであり、このような通信法を所管する官庁として余りにも浅墓な見解は削除するべきである。

 特に、機械的な処理であっても通信の秘密を侵害したことには変わりはないとされ、通信の秘密を侵害する行為には、当事者の意思に反して通信の構成要素等を利用すること(窃用すること)も含むとされているのであり、このようなことも含めて考えると、日本レコード協会が提案している対策は、通信の秘密を侵害するものと考える方が妥当であり、ここには、そうはっきり書いてもらいたい。

 この項目において、プライバシーの保護についても触れられているが、同意の取得や情報漏洩以前の問題として、本来最も基本的なプライバシーに属する個人端末中の情報について、内容を自動検知し、アクセス制限・再生禁止等を行うことは、それ自体プライバシー権を侵害するものであり、プライバシーの観点からも、このような措置は導入されるべきでないとはっきり書いてもらいたい。

 最も基本的なプライバシーに属する個人端末中の情報について、内容を自動検知し、アクセス制限・再生禁止等を行う日本レコード協会が提案している違法音楽配信対策は、技術による著作権検閲に他ならず、憲法に規定されている表現の自由(情報アクセス権を含む)や検閲の禁止に明らかに反するものである。ここで、表現の自由や検閲の禁止という観点からも、このような対策は決して導入されてはならないものであると明記してもらいたい。

 付言すれば、日本レコード協会の携帯端末における違法音楽配信対策は、建前は違えど、中国でPCに対する導入が検討され、大騒ぎになった末、今現在導入が無期延期されているところの検閲ソフト「グリーン・ダム」と全く同じ動作をするものであるということを政府にははっきりと認識してもらいたい。このような検閲ソフトの導入については、日本も政府として懸念を表明しているはずであり(日経のネット記事http://www.nikkei.co.jp/news/main/20090628AT3S2700A27062009.html参照)、自由で民主的な社会において、このような技術的検閲が導入されることなど、絶対許されないことである。

 また、正規の私的複製コンテンツは決して排除されるべきものでは無く、正規の私的複製コンテンツを全携帯端末において一律再生不能とすることは、独禁法上の問題が生じうるということについても、ここに明記されるべきである。

(5)第37~38ページ「5.今後の方向性」について
 この項目で、日本レコード協会の提案を検討の叩き台とするとしているが、上記の通り、この提案は、通信の秘密や検閲の禁止、表現の自由、プライバシーといった個人の基本的な権利をないがしろにするものであり、叩き台にすらなり得ない。日本レコード協会が提案している、検閲に該当するこのような対策は絶対に導入されるべきでなく、また技術支援・実証実験等として税金のムダな投入がなされるべきではないと、ここに明記するべきである。

 そもそも、ダウンロード違法化の懸念として、このような著作権検閲に対する懸念は、文化庁へのパブコメ(文化庁HPhttp://www.bunka.go.jp/chosakuken/singikai/houkoku.htmlの意見募集の結果参照)や知財本部へのパブコメ(知財本部のHPhttp://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/keikaku2009.htmlの個人からの意見参照)を見ても分かる通り、法改正前から指摘されていたところであり、このような著作権検閲にしか流れようの無いダウンロード違法化は始めからなされるべきではなかったものである。このような百害あって一利ない最低の法改正に基づいて対策がなされるべきでないのは無論のこと、文化庁の暴走と国会議員の無知によって成立したものであり、ネット利用における個人の安心と安全を完全にないがしろにするものである、ダウンロード違法化を規定する著作権法第30条第1項第3号を次回の法改正では削除するべきと総務省から文化庁に強く働きかけてもらいたい。

 この提言案からも明確なように、違法コピー対策問題における権利者団体の主張、児童ポルノ法規制強化問題・有害サイト規制問題における自称良識派団体の主張は、常に一方的かつ身勝手であり、ネットにおける文化と産業の発展を阻害するばかりか、インターネットの単純なアクセスすら危険なものとする非常識なものばかりである。今後は、このような一方的かつ身勝手な規制強化の動きを規制するため、憲法の「表現の自由」に含まれ、国際人権B規約にも含まれている国民の「知る権利」を、あらゆる公開情報に安全に個人的にアクセスする権利として、通信法に法律レベルで明文で書き込むことを是非検討してもらいたい。同じく、憲法に規定されている検閲の禁止から、技術的な著作権検閲やサイトブロッキングのような技術的検閲の禁止を通信法にに法律レベルで明文で書き込むことを是非検討してもらいたい。

 この項目において、本年度中を目途として合意を得ることが望ましいと、平成22年度中に実施できるよう検討するという記載があるが、このような個人の基本的な権利に絡む大問題については極めて慎重な検討が必要であり、拙速な検討が行われるべきでは無く、期限に関する記載は削除するべきである。

 また、上の(2)でも書いたが、公式サイトとそれ以外のサイトに対して提供する回線の水準を携帯電話事業者側で区別することは、公平性の観点からも、独禁法からも明らかに問題があり、このような容量制限を明確に問題と認識し、これを排除する検討を進めることを、この「5.今後の方向性について」の項目に明記してもらいたい。

 違法音楽配信対策として、今後出てくるかも知れない対策まで完全に否定するつもりは無いが、国民の基本的な権利の侵害とならない範囲で対策が進められなくてはならないのは当然のことである。今後は、国民の基本的な権利を必ず侵害するものとなる危険な技術による著作権検閲の検討ではなく、ネットにおける各種問題は情報モラル・リテラシー教育によって解決されるべきものという基本に立ち帰り、公開情報の検索を行うクローリングと現行のプロバイダー責任制限法と削除要請を組み合わせた対策や、この「5.今後の方向性について」の(2)で示されているような、青少年側に立った施策などの、より現実的かつ地道な施策のみに注力する検討が進むことを期待する。

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2009年6月13日 (土)

第177回:参議院文教科学委員会での馴れ合い出来レース審議、ダウンロード違法化を含む著作権法改正案の成立-一億総海賊時代の到来-

 この5月8日に衆議院の文部科学委員会を、5月14日に衆議院を通り、6月11日に参議院文教科学委員会を、6月12日に参議院本会議を通過して、ダウンロード違法化を含む著作権法改正案が、やはり何の修正もなされないまま成立した(その内容と問題点については第160回参照)。参議院でも、法案に対する実質的な審議は何もされていないに等しく、完全な馴れ合い、茶番の出来レースのみで、ダウンロード違法化を含む著作権法改正法案は最後まで通された。(参議院本会議も投票のみで全会一致の完全無風通過である。なお、衆議院文部科学委員会の審議は第171回参照。)

 参議院文教科学委員会の審議の暫定版議事録を下に載せる(国会中継からなるべく丁寧に起こしたつもりだが、どこか間違っている点があれば、是非教えて頂きたいと思う。)が、参議院の審議も、衆議院での審議に勝るとも劣らない非道さである。質問に立っているのは、民主党の2名の議員であるが、やはり、貴重な国会審議において、そんなことは他でやれば良いはずの法案と直接関係ない問題をだらだらと喋っているだけである。

 民主党の友近聡朗議員は、国会図書館とグーグルブック検索について、衆議院での駄弁の繰り返しに等しい、無意味な質問を繰り返し、やはり民主党の那谷屋正義議員は、法案と関係の無い、インフルエンザや特別学校の寄宿舎、拡大教科書そのものの問題についての質問で貴重な時間を大量に浪費した上、法案そのものについては馴れ合いの質問だけで終わらせるという非道さである。

 衆議院・参議院ともに、このような連中が、まがりなりにも選挙で国民の代表として選ばれた者として国会で立法に携わっていることを思う度、私は慄然とする。読めば分かると思うが、国会で、このような馴れ合いの出来レース審議が行われており、また行うことが可能であるというのが、絶望的な今の日本の現状である。どの党も国民と口先では言いながら、本当は国民のことなどカケラも考えていないことを如実に露呈している。与党として閣議決定という形でダウンロード違法化を含む著作権法改正に賛成した自民党(宗教政党である公明党は無論論外である)はおろか、他の党も含め、残念ながら、著作権問題に関して投票できる党は無い。

 国会においても、ダウンロード違法化の本質的な問題点が全く理解されずに終わったことは、痛恨の極みである。即座に影響が出る類の法改正では無いとは言え、どこまで行ってもダウンロード違法化は守られようも守りようもない百害あって一利ない最低の法改正である。このような非道な法改正は、今後、日本をじりじりと蝕んで行くことだろう。

 これで来年の1月からダウンロード違法化が施行されることが確定した訳だが、このようなそもそもの根本から腐った法律は守られようも守りようもない。この国の議員や役人どもは、一億総クリエーターだの、一億総ユーザーだのと口先では調子の良いことばかり言いながら、結局、何のことは無い、国民全員を潜在的な海賊と見なして、ダウンロード違法化を強行し、一億総海賊時代を到来させたのである。この大海賊時代の到来を前に、私も1人の海賊であると、ここに宣言しよう。

 法律は作れば終わりというものではない。私の絶望に底は知れないが、ダウンロード違法化条項は削除されるべきであると今でも私は確信している。日本における政策決定のレベルにまで著作権問題の本質の理解が浸透するにはまだ相当の時間を要するものと思うが、私は、何があろうと反対を続けるつもりである。

(6月28日の追記:以下の議事録も残しておくが、正式な議事録も公開されているので、ここにリンクを張っておく。)

(以下、議事録)

○中川雅治委員長 ただいまから文教科学委員会を開会致します。委員の異動についてご報告致します。昨日、佐藤信秋君、山下栄一君及び藤谷光信君が、委員を辞任され、その補欠として、中曽根弘文君、鰐淵洋子君及び藤原良信君が選任されました。政府参考人の出席要求に関する件についてお諮り致します。著作権法の一部を改正する法律案の審査のため、本日の委員会に、理事会協議の通り、文部科学大臣官房文教施設企画部長布村幸彦君他3名を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することにご異議ございませんか。ご異議ないと認め、さよう決定致します。著作権法の一部を改正する法律案を議題と致します。本案の主旨説明は既に聴取しておりますので、これより質疑に入ります。質疑のある方は順次ご発言願います。友近聡朗君。

○友近聡朗委員(民主党・新緑風会・国民新・日本・愛媛県)おはようございます。民主党・新緑風会・国民新・日本の友近聡朗でございます。今日は大臣を筆頭に、国会図書館の長尾館長さんを始め、政府参考人の皆様ありがとうございます。えー、先日の火曜の委員会で、佐藤信秋さんからも報告のありました、盲目のピアニスト、辻井伸行さんが、国際ピアノコンクールで始めて優勝するという快挙をなしとげられましたけれども、やはり文武平等の文教科学委員会としては、スポーツの話題も取り上げて頂きたいということで、ワールドカップで日本代表が4大会連続の出場を決めました。もう出場するのが当たり前のようになっているのかも知れませんけれども、あまり報道等でも大きく取り上げられないところに、嬉しさと歯がゆさがあるんですけれども、大臣、あのー、静岡県のご出身というところで、サッカーどころでありますが、率直な、ワールドカップ南アフリカ大会に向けまして、期待を込めて、率直なご感想とエールをお願いしたいと思います。

○塩谷立文部科学大臣 このたび、日本代表が、来年のワールドカップサッカーに出場を決めたということは大変喜ばしいことでありまして、あと1年後でありますんで、是非、あのー、目標がベスト4ということでございまして、大いに期待し、また文部科学省としてもできるだけの応援をして行きたいと思っております。おめでとうございます。

○友近委員 私は残念ながら日本代表には入っておりませんので、一生懸命皆さんと一緒に応援させて頂きたいと思います。実は、昨日のカタール戦も、私横浜スタジアムに見に行って参りまして、えー、本当に、6万以上の人が横浜スタジアムに集まってましたけれども、あらためてスポールのすばらしさ、そして、先ほどの辻井、辻井さんの話の通り、文化そしてスポーツのすばらしさををあらためて実感した次第でもあります。ただ、昨日の試合は、かなりフラストレーションの溜まる試合でしたので、今日は、政府には明快なご答弁をお願いしたいと思います。えー、今日はサッカー協会の話では無くてですね、サッカー協会の方なんですけれども、えー、権利者の、著作権の権利者の皆さん方に、黒船来航とも言われております、グーグルブックの検索への対応と、国立図書館の図書館電子化構想に関して主に伺いたいと思います。まず、図書館のですね、基本的なことからお伺いしたいと思うんですけれども、図書館が今抱えている課題として、納本というのがあると思います。国会図書館は日本中のあらゆる出版物をきちんと集めなければならないということだと思うんですけれども、これ私はまだまだ社会的、一般的に知られていないんじゃないかなあという風に感じております。私も先日ある本を探したんですけれども、納本がされていませんでした。えー、自費出版の方々にとっては、著者にとってもインセンティブになると思いますし、完璧に集めて頂くためにも、社会全体にこの納本ということを、納本制度ということを知って頂く必要があると思いますので、是非、長尾館長の方から、声を大にして周知して頂くのと同時にですね、現在の納本率というのが分かりましたら、ご説明お願いします。

○長尾国立国会図書館館長 えー、あのー、ご質問にお答え致します。国立国会図書館法の中には、納本制度というのが義務付けられておりまして、これに従って納本がなされておりますが、実際上は100%、完璧ではございません。でー、昨年、国立国会図書館は60周年記念を迎えました。それを機会と致しまして、5月25日を納本の日、納本制度の日と定めまして、社会的にキャンペーンをするということを、去年から積極的にやり始めております。確かにおっしゃるように、納本制度というのは、日本の隅々まで知られていないというのは残念でございます。従いまして、民間出版社や、あるいは国の機関等に、ここにございますような「良く分かる納本制度」というようなパンフレットを作って広く配布したり、あるいは、ブックフェアなどの時に見てもらうという努力をしているところでございます。納本率につきましては、えー、昨年度、平成19年度に行いました調査によりますと、民間の出版物の内で、図書・雑誌につきましては約90%が納本されているということでございますが、あー、その中では、民間出版物でも、音楽とか映像関係の資料は40%ぐらいしか納本されていない訳でございます。一方、官庁出版物につきましては、国の市販のものが90%納本されておりますけれども、国の市販になっていない出版物が沢山ございまして、これについては50%くらいしか納本されておりませんし、地方自治体のものは、約40%が納本というのが実績でございます。従いまして、この率をなるべく高くするために、昨年から、この、積極的にパンフレットを作って、PRをしたりしておりますが、今後とも努力して行きたいという風に思っております。

○友近委員 はい、ありがとうございます。えー、100%では無いということで、ものによっては3割くらのものもあるということで、今の答弁で、納本率が数%でもあがることを期待したいと思いますが、納本制度というのには、罰則があったりですね、えー、適用はされたことが無いそうですけれども、えー、あと永久に本を保存して頂けるということで、今度、私の本も納本させて頂きたいなという風に思っております。あとですね、書庫があと7、8年経つと満杯になってしまうというようなことも報道されておりますが、この事実は間違いないでしょうか。

○長尾館長 あのー、おっしゃる通りでございます。東京本館の書庫のスペースは1200万冊、それから関西館の書庫のスペースは600万冊なんでございますけれども、東京本館につきましては、既に80%を超えております。それで、関西館も3分の2ぐらいがもう既に埋まっております。従いまして、えー、今年、来年、再来年にかけまして、東京本館の資料を少しずつ関西館の方に移動させまして、えー、両館において空きスペースが均等になるようにしながら蓄積を進めたいということにしておりますけれども、いずれにしましても、ご指摘のありましたように、数年で満杯ということになる訳でございまして、書庫の増設につきましても、できるだけ早い時期に建設を行いたいということで、皆様の理解を得る努力をしているところでございます。

○友近委員 はい、ありがとうございました。えー、きちっと集めないといけない一方で、集めれば集めるほど、書庫が満杯になってしまうという矛盾も抱えている訳なんですけれども、えー、これ、大臣、通告していないんですが、いわゆる国立メディア芸術総合センター、マンガの殿堂でございますが、党内でもゴタゴタされておられるようですけれども、平成21年度117億円の予算が付されました。文化庁の構想では、4、5階建て、そして、延べ床面積1万平方メートル程度と言われておりますが、お台場に国営マンガ喫茶を作るのではなくてですね、国会図書館の書庫に活用すれば、多少なりとも国民の理解が得られると思いますが、お考えをお示し下さい。

○塩谷大臣 あのー、まあ、メディア芸術センターについてはですね、あのー、マンガ館ということではなくて、メディア芸術全般に渡った展示とか保存、あるいは、あー、人材育成等々、様々な機能を含めて、今内容を固めているところでございますが、それはそれとして、しっかりと実行する必要があるし、また、あのー、国立国会図書館についてもですね、書庫が必要であれば、今後、しっかりと検討もさせて頂きたいと思っております。

○友近委員 えー、それではですね、そろそろ本題の方に入って参りたいと思います。まず、国会図書館の方にお伺いしたいと思いますけれども、平成18年の12月に資料デジタル化基本計画というものを作成されて、今年の3月に所蔵資料の媒体変換基本計画というのも作られたと聞いております。この概略について、簡潔にご説明お願いします。

○内海啓也国立国会図書館総務部長 3月に策定致しました、平成21年度以降の当館所蔵資料の媒体変換基本計画につきましてでございますけれども、所蔵資料の保存と利用の両立を図るために、資料の媒体変換の基本的な考え方と、優先順位を示したものでございます。計画の大きな柱は、これまで資料の劣化対策としてマイクロフィルム化を行って来ました。この点を修正致しまして、これからは主にデジタル化によって対応することとしたものでございます。

○友近委員 はい、ありがとうございました。えー、大まかな流れを18年からざっくり言いますと、本は基本的にデジタル化しましょうと、そしてスキャンして、将来的にはインターネットで皆さんが見られるようにしましょうということだと理解しております。そこで確認させて頂きたいんですけれども、本著作権法の改正案31条の第2項でありますけれども、この改正案で、国会図書館に納品されてすぐ速やかに資料のスキャン、デジタル化が可能になるということだと思います。この法律案では、資料のデジタル化のみが権利制限の対象となっているという風に思うんですが、その後、スキャンした資料をどういう風に活用するかというのは特段の定めが置かれていないという風に認識しております。そこで、文化庁にお聞きしたいんですけれども、図書館のデジタル化を進める上でですね、この法案の有する意義は非常に大きいという風に思っておるんですけれども、本改正の意義と、あと権利制限の内容をですね、資料のデジタル化に限った理由というのを教えて下さい。

○高塩至文化庁次長 今回の著作権法改正の31条でございますけれども、国立国会図書館のいわゆる納本制度を受けまして、えー、そのデジタル化をただちに進められるというものでございます。これは、先ほど来お話ございますように、国会図書館は大きな使命として、納本制度によりまして、我が国の官庁印刷物、出版物、民間出版物という資料の保存というものを大変大きな使命として持っております。現行の規定によりますと、所蔵資料につきましては、既に劣化したり、損傷が激しいものにつきましてはデジタル化が可能でございますけれども、現に国会図書館の所蔵資料の中にもですね、非常に保存の状態が悪いというものもございまして、そういう段階でデジタル化、電子化致しましても、なかなか資料の保存状態が良くないということがございます。そうしたことに鑑みまして、今回の法改正におきましては、出版物の納本後直ちにですね、良好な状態のまま、将来の文化的な資産として保存されるよう、デジタル化を可能としたということでございます。今回の法改正につきましてはですね、原本に替えましてその複製物を公衆の利用に供することをしていることから、その原本をデジタル化する方式によって複製することが、資料に掲載された情報を保存する上から有効と考えることから、こうした規定を置いた訳でございますけれども、今後、その電子化された資料についてですね、どのような形で利用して行くかということにつきましては、現在、国立国会図書館におきまして、いわゆる著作権者、出版社も参加致します、資料デジタル化及び利用に関する関係者協議という場が設けられておりまして、出版業への影響等も考慮しながら、検討されるものという風に私どもは理解しているところでございます。

○友近委員 はい。皆さんのお手元にあります資料の1を見て頂きたいんですけれども、国立国会図書館の電子データ化の取り組みですけれども、いわゆる本が入って来て、スキャンして、コンピュータでみれますよという予算、平成12年から、大体1億円とか、多くても2億円程度しか予算づけがされていません。今年の、今年度の当初予算も1.3億円でしたけれども、今回の補正予算で、約100倍ですね、予算がつけられています。10年間分約9倍という予算づけでありますけれども、今回の大規模な予算化によって、資料のデジタル化というのが一気に進むことになるかと思います。それは資料3の方を見て頂きますと良く分かりますけれども、資料の緑の部分、グリーンの部分が既にデジタル化されていた部分で、今回の補正予算でブルーの部分がデジタル化されます。右の戦後刊行図書というのがありますけれども、その部分少し小さく見えますけれども、年代別で表記してありますので、残っているのが4分の3くらい、補正予算でデジタル化した後でも4分の3くらは残って行くのではないかという風にお伺いしておりますけれども、この今回は、100倍以上の予算がつきましたので良かったですけれども、今後ですね、どのようなペースでデジタル化を進めて行くのか、そして、優先的にデジタル化する資料などのようなものかというのをお伺いしたいと思います。

○内海総務部長 現在国立国会図書館の所蔵する明治大正期の資料をデジタル化致しまして、インターネット公開する事業を行っております。その総数は14万8千冊を画像情報の形で提供中でございます。図書館では平成21年3月に、先ほど申し上げました資料のデジタル化につきましての基本計画を策定したところでありますけれども、平成21年度の補正予算では、計画を加速致しまして、図書75万4千冊を始めとした大規模なデジタル化を実施致します。これによりまして、先生がおっしゃいました、デジタル化すべき400万冊の図書については、約4分の1のデジタル化が達成される見込みでございます。で、今後のデジタル化につきましては、多額の予算を必要とするところでありますので、引き続き必要な予算の確保等に努め、計画的に推進して参りたいと思います。それから、優先的にデジタル化する資料でございますけれども、資料の劣化・損傷の度合い、それから利用頻度、それから希少性、あまり世に無いもの、希少性というものを考慮して進めて参りたいと考えております。

○友近委員 えー、ありがとうございます。図書館では先ほどからご説明ありました通り、近代デジタルライブラリーというところで、既に著作権保護期間が満了した資料、あるいは、著作権者から許諾を得た資料、そして、文化庁長官の裁定制度を活用することで、インターネットで広く公開して来ていると思います。長尾館長さんは、こうした取り組みを、さらに発展されられて、電子国立国会図書館がデジタル化した資料をですね、第3者機関などに提供して、料金を徴収した上で、広く一般に利用して頂く、電子図書館構想というものを提唱しておられると思います。資料の4番目を見て頂きますと、その構想の大体全容が把握できるかと思いますけれども、私個人的にはこの電子図書館構想、出版関係者や著作権者等と議論を尽くした上でですね、良いモデルを作って頂きたいという風に思っています。私の地元である愛媛県というのは、長崎県に次いで島嶼部の多い地域でもあります。そこの島の子供たちや、おじいちゃんおばあちゃんがが、今でも現実的に図書館に足を運んで本を見るということは今日でも事実上不可能であります。そこで、長尾館長にですね、ご自身の電子図書館構想についてご説明して頂きたいとお願いします。

○長尾館長 あのー、現在、出版活動が電子的な世界にどんどん移りつつございます。これは世界的な動きでございます。その中で、日本において、出版界と図書館が共存共栄できる関係を構築して行くということが、日本の文化を発展させる上で非常に大事なことだと認識している訳でございます。で、私が提案しておりますビジネスモデルは、この資料4にございますけれども、国立国会図書館が電子出版物の納本を出版社から受けまして、紙の資料の電子データの納本、あるいは購入によりまして、収集しました電子形態の資料を、これがデジタルアーカイブと書いてあるものでございますが、その資料を遠隔地からも利用できるような仕組みを作るということを考えている訳でございます。具体的には、右の方に書いてあります、電子出版物流通センターといった組織を設立することを考えておりまして、利用者はこれを経由して、国立国会図書館に蓄積された電子図書を一定期間利用でき、その際には利用料金をこのセンターに支払うという考え方でございます。支払われたお金は、このセンターから出版社あるいは権利者に還元されるというモデルを考えております。どのくらいの利用料金が適切であるのかどうか、あるいは、これで出版事業が成り立って行きますのかどうかといったことは、これからいろいろな実証実験をしてみなければ分からないところでございますけれども、将来は本の流通経路が、現状とは全く違うものになると考えられますが、こういうモデルを早急に打ち立てて、おっしゃいましたように、東京あるいは関西間の近くにおられない方々にも平等に図書館を利用して頂けるような世界を作って行きたいという風に思っているところでございます。

○友近委員 はい、ありがとうございます。えー、出版関係者の方、著作権者の方と議論を尽くしてですね、是非とも良いモデルを作って頂きたいということで、私も応援させて頂きたいと思います。それでは次にグーグルブック検索についてお伺いさせて頂きたいと思います。冒頭、黒船来航という言葉を使わさせて頂きましたけれども、今回の法改正によりまして、図書館の資料のデジタル化というのが、ようやく権利者の許諾無しに行えるようになろうとしております。一方でアメリカの1私企業が、営利企業ですけれども、書籍のデジタル化とインターネットによる公開が、公正な利用であれば権利者の許諾なしに著作物を利用できるという、フェアユース規定という存在の下で大規模に進められています。このグーグルブック検索の概要と、日本に与える影響について、文化庁に簡潔にお答え願いたいと思います。

○高塩次長 グーグルブック検索につきましては、アメリカのグーグル社が、アメリカ国内の大学図書館などと提携致しまして、デジタル化した書籍をウェブ上で検索し、閲覧できるようにするサービスを始めたものでございます。これに対しまして、全米の作家協会及び全米の出版社協会が、これらの行為を著作権侵害として訴えていたところでございますけれども、昨年の10月に、両者間で和解案が合意されたということでございます。それによりますと、グーグル社による米国内でのウェブ上での検索サービスにつきまして、権利者に一定額使用料を支払うなどの内容となっている訳でございます。この当該アメリカの和解の内容でございますけれども、アメリカにはクラスアクション、集団訴訟という訴訟制度がございまして、アメリカ国内で権利を有する我が国の権利者にもそれが及ぶということになっておりまして、我が国の権利者につきまして、和解の参加の是非の判断が求められているという状況でございます。こうしたことを踏まえまして、国内の出版社、それから関係団体などにおきましては、本和解案に関します、権利者への情報提供、また、団体としての権利者の意思表示の取りまとめなどを行っているところでございます。先般、米国の作家協会等が来日いたしまして、日本の文芸家協会等と協議を行い、私どもとも意見交換したところでございます。こうした問題はですね、我が国の権利者にも大変多大な影響を与えるものでございまして、今後の展開にも、権利者の中には不満や懸念を表明しておられる方もおりますので、文化庁と致しましても、注視して見守っているというところでございます。

○友近委員 はい、ありがとうございます。アメリカのですね、集団訴訟、クラスアクションということによって、日本の著作権者にもかなり多大の影響が及ぶ恐れがあるということだと思いますけれども、えー、文化庁においてですね、本当に適切な対応を取っていかなければならない、早急に対応を取らなくてはならないことだと思っています。5月8日の衆議院の文部科学委員会での中で、大臣が、改めて今の件はもう一度検討して行きたいと、そして、高塩文化庁次長の方からは、必要に応じて2国間協議の場ということがあり、特にアメリカとの間では、日米間の著作権協議というのがあるので、そういう場において、この問題をアメリカ政府としてどういう風に考えるのかということの、問題提起を行って行きたいという風に答弁されております。つまり、5月の8日の時点では、特段の具体的な行動を取っておられないという風に聞こえておりますけれども、つい先日、日本と中国が、偽物のブランド品の取り締まりを強化するということで、知的財産保護について協議する場を設けました。中国との閣僚級階段で、知的財産について政府間で定期協議をするということで合意したということが報道されておりますけれども、大臣、著作権に関してもですね、政府間で新たなルール作りを進めて、国単位で解決して行かなければならないという主張があると思いますが、先ほど紹介した5月8日の答弁から約1ヶ月以上が経過していますけれども、その間に、文化庁としてどのような対応を行ったかご説明お願いします。

○高塩次長 えー、グーグルの問題につきましては、5月の8日に衆議院の文部科学委員会の方で質問がございました。それ以降、私どもと致しましては、その際申し上げましたように、米国政府、それからヨーロッパ、アジアの政府関係者との随時の対話というものを行いまして、情報の収集に努めているところでございます。概ね各国の政府としては、政府としての対応ということについては、静観というのが多いのでございますけれども、その間、先ほど申し上げましたように、訴訟の原告団でございます全米作家協会が来日致しまして、私どもと直接の会談もするということで、それを踏まえて、日本の文芸家協会の対応も若干変わったという風に考えております。文化庁と致しましては、そうしたいろいろな国際間の話し合いとともにですね、今後、このですね、書籍のデジタル化の進展ということがともなうことは、我が国の活字文化、出版文化、それから、国際的な著作権のあり方にも深く関わる問題であるという風に認識致しておりまして、文化庁と致しましては、まず、庁内の関係課によります検討会を設置致しまして、今後国内で同様の事業が行われる場合の課題、書籍のインターネット上の流通が、我が国の活字文化、出版文化に与える影響などについて、幅広い観点から検討を行うということを開始致したところでございまして、こうした国際的な動きと合わせて、今後、国内でもこうしたサービスが始まることを前提にですね、適切に対応して参りたいと考えております。

○友近委員 現段階では特段対応を取っていないという風にも感じられますけれども、大臣のご所見をお伺いしたいと思います。

○塩谷大臣 著作物については、国境を越えて利用されているため、これまでも、日米、今も答弁あったように、日米を含む世界各国と、様々な多国間あるいは2国間の協定を結んで、互いに著作物の保護に努めて来たところでございます。本件につきましては、米国の訴訟制度によって、米国で保護を受ける著作物にかかわる世界中の権利者に効力が及んだものでありまして、国際的な視野に立って、著作物の保護のあり方を検討するということで、大変重要性を改めて国内外に認識させた事案ととらえておる訳でございます。我が国としては、こうした状況を踏まえてですね、米国を含む関係国との2国間あるいは多国間の協議の場等において、国際的な著作物の保護の一層の強化に向けて、議論に積極的に努めて参りたいと思っているところでございます。

○友近委員 はい、ありがとうございました。えー、あまり積極的な答弁は得られなかったという風に感じておりますけれども、えー、国会図書館がですね、デジタル化する、そして、グーグルもデジタル化して行くということで、今の議論の中で、皆さんもお感じになられているかと思いますけれども、使用する方としては、図書館であっても、グーグルであっても、インターネットで見るのは同じことだという風に思います。ただ、インターネットを活用した様々な独創的な取り組みを企業が行うということは、日本でも積極的に推進して行かなくてはならないと、一方では、巨大な電子図書館を作る試みを、外国の1私企業に任せてしまう、言い方を変えれば、営利企業による知の独占という風にも言えますので、我が国の健全な文化の発展という面からも懸念を持っているのも事実であります。えー、もう長尾館長等はご存じの通り、ヨーロッパでは、欧州委員会の主導でですね、ヨーロピアーナという電子図書館の構想が構築され進められていると聞きますが、この取り組みは、グーグルブック検索への危機感から始められたという風にもお伺いしております。グーグルの取り組みというのは、世界中の書籍に含まれた人類の叡智を検索可能にしようとする壮大な取り組みであるという風に認識しております。ただ、一方でですね、一般の読者に便利になるのも事実です。そして、絶版になった本が、また日の目を浴びる、新たな収入源を生むという可能性もあるというのも、また事実だと思います。その一方で、利用者の利便性に片寄りすぎてしまえば、権利者の利益が十分に還元されずに、出版界全体の縮小につながる恐れがあるという、非常にデリケートな問題であるという風にも思いますけれども、先ほど申しました、長尾館長にご答弁頂きたいんですが、グーグル社の取り組みについての評価と、グーグルと国会図書館の目指す方向の違い、対比について、ご説明願いたいと思います。

○長尾館長 今仰いましたように、グーグル社は、世界中の情報を整理して、世界中の全ての人の利用に供するという、非常に壮大な目標を立てておりまして、利便性の高い検索サービスも既に提供しているところでございまして、私ども国立国会図書館におきましても見習うべき点は多いと考えております。ただ、ご指摘にもありますように、グーグル社は民間企業でありまして、事業の継続性や安定性の面で一定の制約があるものと思われますし、また、ご指摘のありましたように、1企業が情報を独占することに結果的になるという危険性がございまして、これについては大きな問題であるという風に認識しているところでございます。日本におきましては、日本の文化財としての出版活動、これをしっかり守っていくというのが、日本としてやるべきことだと私は思っておりまして、国立国会図書館はそうしたことも含めてデジタル化をして行きたいという風に思っておりますけれども、私どもは、先ほどご説明がありましたように、まずは、出版物の長期の保存ということを目的としたデジタル化でございまして、それをどういう風に利用に供するかということにつきましては、権利者と良く話し合いの上、お互いに納得できる形でやれるように努力して行きたいという風に思っている訳でございます。

○友近委員 ありがとうございます。それでは少し具体的なことをお伺いしたいと思います。館長の方から、今資料を保存するんだということを言われましたけれども、デジタル化した資料を、公共の図書館へ送信することの実現性の可能性であります。図書館に来た方が、本で見るのか、デジタルで見るのか、対して、さほど利便性を考えれば変わらないことだと思いますけれども、これを広く一般の有権者、失礼、利用者ですね、利用者に向けてインターネット送信するには、現段階では、著作権法上のハードルが高いんだと思いますけれども、そこで、利用者から、先ほど館長の構想の中で言われました、料金を徴収するという風になりますと、国立図書館の無料の原則ということにも絡むために、しばらく時間がかかるのではないかなーという風に感じております。えー、そこでなんですけれども、国会図書館が全国の公共図書館から要請が来た場合にですね、デジタル資料を提供して、それぞれの公共図書館で、その資料を館内で利用するのであれば、無料の原則を維持したまま、資料のさらなる有効活用ができるのではないかなあと考えますけれども、その点についてご答弁お願いします。

○長尾館長 はい、あのー、今ご指摘のありましたように、私ども現時点では公共図書館に対して、えー、デジタル資料を送信することは、著作権法上できないという状況でございまして、これをまあ何とかできるようにしたいと、できないかということを思っておる訳でございますが、これにつきましては、著作者あるいは出版社と良く話し合いをした上で、了解を取り、そして、公衆送信権によって妨げられないような形で送ると、そして、日本中隅々の方々が公共図書館に来れば、国会図書館のデジタル資料が見れるという形に持って行きたいという風に思っておりますが、これにつきましては、なかなか協議に関して時間がかかるんじゃないかという風に思っているところでございますし、また、この資料4にございますようなモデルを上手く構築するにも、なかなか時間がかかると、国会図書館としましては、あくまでも利用に関しては只で、無料で提供するというのが大原則でございますから、利用料金というようなものは、非常に低額のものとして、それが外部にありますセンターがそれの処理をして、国会図書館としてはあくまでも無料原則を守るという形のモデルを何とかして推進して、実現して行きたいなと思っている訳でございます。

○友近委員 はい、ありがとうございます。文化庁のですね、今後国会図書館における電子データのインターネット送信について、どのような検討を行う予定があるのか、文化庁としての見解を示して下さい。

○高塩次長 この電子化された資料をどういう形で利用に持って行くかということにつきましては、その具体的な内容につきましては、ただ今長尾館長からもお話ございましたように、やはり、図書館側と、それから著作権者、出版社、これらの話し合いというのが大変重要でございまして、先ほど申し上げましたけれども、現在、国会図書館におきまして、資料デジタル化及び利用に関する関係者協議会というのが設けられておりまして、文化庁としましても、オブザーバーとして今参加をしているところでございます。その結果、この3月には、第1次合意というのがまとまったという風に承知を致しておりますけれども、私どもとしては、そういった話し合いというものの検討状況を見守っていくという立場にあるということをご理解賜りたいと思います。

○友近委員 ありがとうございます。先ほど申しましたグーグルの取り組みというのは日本にはまだ無い、アメリカのフェアユース規定ということを、公正な利用であれば、権利者の許諾無しに著作物を利用できるというフェアユース規定でありますけれども、その下に実施されていると認識しておりますけれども、日本でもですね、知的財産戦略本部の専門調査会が、日本版フェアユースの導入を答申して、文化庁の文化審議会で、導入の是非に向けた本格的な議論が開始されようとしていると思います。仮に、フェアユース規定が導入された場合、我が国の大学図書館がグーグルブック検索に参加して、権利者の許諾無く、書籍のデジタル化と開を行う、現在米国で生じている問題と同様の問題が生じる可能性があると思いますけれども、そこで大臣にお伺いしたいんですが、日本版フェアユース規定を導入することの是非について大臣の率直な見解をお伺いしたいと思います。

○塩谷大臣 えー、いわゆる日本版フェアユース規定につきましては、いろんな意見があって、積極的に導入する、あるいは、慎重にすべきだということで、現在様々な意見があるということを承知しておりまして、私どもとしましては、文化審議会著作権分科会において、具体的な議論を開始したところでございます。関係者の見解に相違がある論点や、重要な論点が、多々ある訳でございまして、幅広く論点を整理した上で、慎重かつ多角的に検討を進めていく必要があると考えておりまして、また、その検討の状況をまずは見守って行きたいと思っております。

○友近委員 えー、このグーグルの和解案ですけれども、今年の10月7日に公聴会を経た上でですね、アメリカ連邦裁判所の最終判断が下りるいう風に思いますけれども、是非とも政府としても、国家間の意思として、協議をして頂きたいと思います。デジタル化情報というのがですね、大臣、国境を越えて流通する時代のルール作りのモデルになる今が大きな分岐点だという風に感じておりますので、是非ともご関心をお持ちになってですね、取り組みを進めて頂きたいという風に思います。えー、それでは時間が少ししか無いんですけれども、ジャスラックのことについて今日お伺いしたかったんですが、理事長の年間報酬が2600万円とか、あと、評議会のですね、出席した時の手当が、議長になれば6万円とか、1日3万5千円とか、そういったこともお伺いしたかったんですけれども、本日は割愛させて頂きたいという風に思います。今日はグーグルのことと図書館のことについて縷々質問させて頂きましたけれども、やはり大切なのは、公共の利益と権利者保護のバランスということが非常に大切になって来ると思いますけれども、長尾館長には、是非とも大いに頑張って頂きたいという風に思います。えー、大臣、私もスポーツの世界から政治の世界にピッチを移しまして、来月で2年が建とうとしておりますけれども、1つ感じたことがあります。先ほど冒頭にですね、辻井さんのピアノの話をしましたけれども、政治というのは楽器のアコーディオンに似たところがあるなあと、いろんな利害関係のある中で、その蛇腹を閉じたり開いたりしながら、綺麗な音楽を奏でないといけないと、ですけれども、その蛇腹は今閉じっぱなしで、不協和音が鳴るばかりじゃないかなあという風に感じております。そして、親と子供が命を奪い合って、そして、家族を愛せない子に地域を愛せないと思いますし、地域を愛せない子にましてや日本も愛せないのじゃないかなあという風に思います。昨日の横浜スタジアムでも、改めてスポーツの良さ、文化の良さというものを再認識させて頂きました。自民党の皆さんが綺麗な音楽を奏でられないというのであれば、是非とも政権交代をして、民主党・新緑会・国民新・日本の皆さんで、綺麗な音楽を奏でさせて頂くことをお約束申し上げまして、私の質問を終わります。

○中川委員長 那谷屋正義君。

○那谷屋正義委員(民主党・新緑会・国民新・日本・比例)おはようございます。民主党・新緑会・国民新・日本の那谷屋正義でございます。今日は80分というお時間を頂きましたので、まず法案に関する質問の前にですね、まだいまだに感染が広がっている傾向の新型インフルエンザにかかわって、先の予算委員会におきましてもですね、それについて何らかの補正予算で対応するべきではないかという議論がされたところだと思っておりますけれども、あのー、特に、この今ですね、修学旅行ということで、これはもうご案内だと思いますけれども、多くの学校が、このインフルエンザに感染を懸念してですね、キャンセルをする等々が起こる中で、そのキャンセル料が発生したりしている訳であります。で、文科省としては、このキャンセル料については、地域活性化経済危機対策臨時交付金を活用して、そうしたところを補うという風な方針のようでございますけれども、しかし、これだけではですね、決して100%の解決策とは言えないのではないかという風に思うところであります。まず、この地域活性化経済危機対策臨時交付金というものが、運用されるに当たっては、2つのハードルがあると、1つ目は、まず自治体内でこの臨時交付金の対象事業として申請してもらうための合意形成が無ければならないということ、それから、さらにはですね、最終的には内閣府が承認しなければならないという、この2つのハードル、そしてその手間、今後こういったものが出てくる訳であります。総額1兆円ということになっておりますけれども、これは多いようでありますけれども、各省庁の思惑等も、背景等も見え隠れする自治体間の分捕り合戦という風なことが始まった途端にですね、キャンセル料といった後処理の案件については、片隅に追いやられてしまう危険性が大ではないかと思うところであります。修学旅行の意義というものについては、もう大臣も十分認識されていると思いますけれども、この子供達の思い、願いを大切にしたいということであるならばですね、臨時交付金に仮にあぶれたキャンセル料というものがある場合には、出てきた場合には、人任せでは無く初中局の予算を節減してでもですね、この文科省の責任において面倒を見るということを是非ご約束をして頂けないかという風に思うところであります。とりわけ、今回少しこう収束とか何とかという話にもなっていますけれども、この秋になると、この問題がさらに、ウィルスそのものも何かこう悪性を増すような話になっていますし、秋にも修学旅行が実は多くございますから、そういう意味では、この問題は、ここで終わりでは無くて、この秋以降に非常に重要な、深刻な課題になってくると思いますので、是非、大臣のご決意をお伺いしたいと思います。

○塩谷大臣 えー、新型インフルエンザの影響によりまして、修学旅行等が中止あるいは延期になったということで、最近ではある程度収束して、例えば、中止した場合でも、また改めて計画をして実施するというような傾向が見らている訳でございまして、是非、子供達の気持ちからすれば、できるだけ修学旅行を実施して頂くように、我々としては指導しているところでございます。まあ、しかしながら、実際には、一部キャンセル料が発生しておりまして、今ご指摘のありましたように、このキャンセル料については、地域活性化の経済対策臨時交付金で活用するようにということで周知しているところでございます。現在のところ、これにあふれてという実例はまだ上がって来ていませんが、ご指摘の通り、今後、また、インフルエンザが流行したりして、この修学旅行に影響があった場合には、そういうこともある可能性がある訳でございまして、そういう場合には、しっかりと我々としても対応が必要になって来ると思っておりますので、しっかり検討して参りたいと考えております。

○那谷屋委員 えーと、検討するという風に言って頂いたのは少し前進かと思いますけれども、いや必ず対応するようにしますという風に言って頂けると、スパッとこの質問終わりたかったなというところでございますけれども、はい、よろしくお願い致します。それではですね、この本法案の改正点の3つの柱の中の3本目にですね、障害者の情報利用の機会の確保を図るということが1つあります。そういう意味では、今日は折角の機会ですから、こうした障害者の権利保障、あるいは、それだけでなくて、いわゆるインクルーシブな世界、教育、こういったものに目をですね、少しこう広げて、ご質問をさせて頂きたいという風に思います。まず、寄宿舎という問題についてですね、寄宿舎が置かれている状況について、まず質問をして行きたいという風に思います。特別支援学級にかかる寄宿舎問題がかかえる問題の課題解決について、現実に基づいて確認するためにですね、今日は皆様のお手元に配らせて頂いた資料1と2をまずご覧頂きたいと思いますが、これは文科省にご努力を頂いて関連データを整理して頂いたものであります。ここから見えてくるのは、例えば、2005年ですけれども、定数が5077、07年度は5023、それに対して正規の数が05年度は3928、07年度は3829、正規の割合が83.2%が05年度、07年度が81.6%ということで、まあ、低減傾向にある訳であります。で、この雇用形態というのを見て頂くとお分かりになるかと思いますが、05年度で言うと、東京、富山はその100%が実数に占める正規職員の割合になっていますが、一方で、静岡を見るとですね、実数に占める正規職員の割合が、57.7%、07年度を見ますと、東京は相変わらず100%という風になっていますが、佐賀も100%、この佐賀に至っては、定数は117のところを、実数156ということで、そして、その実数に占める正規職員の割合が100%という大変熱心に取り組まれているところもあるかと思えば、福島の方ではですね、実数に占める正規職員の割合が50.9%と、このように都道府県を見てもですね、非常にばらつきがあるということであります。この実態はですね、やはりその寄宿舎という物の重要性がいろいろと認識されている訳でありますけれども、その重要性を考えた時に、本当にこういう風な状況のままで良いのかということが疑問になって来る訳であります。この寄宿舎のあり方について、地方の実勢に任せたいという、いわゆる待ちの姿勢であってはですね、世界的な潮流になっています、共に生き、共に学び育つインクルーシブ教育の推進というのは、なかなか現実のものとなって来ないのではないかという風に思いますけれども、文科省はどのように認識されているかお訊ねをしたいと思います。

○金森越哉初等中等教育局長 特別指導学校の、寄宿舎指導員の内、正規職員の占める割合は、平成17年度に比べまして、平成19年度は減少しておりますが、その主な理由と致しましては、寄宿舎に入る児童・生徒数が年々減少傾向にございまして、今後の動向が不透明なため、正規職員の新規採用を控えていることによると聞いております。また、都道府県による正規職員の割合の差異は、寄宿舎入居生徒・児童数の現状や動向等の違いによるものと認識を致しております。こうした寄宿舎指導員を実際にどのように配置するかは、都道府県教育委員会の判断によるところではございますが、文部科学省と致しましては、寄宿舎における児童・生徒の入居状況を踏まえ、これら児童・生徒の日常生活上の世話や生活指導がしっかりと行われるよう、各自治体において、寄宿舎指導員を適切に配置すべきものと考えているところでございます。

○那谷屋委員 えーと、今、入居希望者の減少という話がありましたけれども、確かにそういったこともあるかも知れませんが、しかしですね、逆に言うと、そこに入舎したくても、そこに現実に指導員が配置されていないがために、もう手一杯だということで、定員が空いているにもかかわらず、入れないという例も実はあるんで、そういうデータを文科省はご存じなのかどうかということが、ちょっと今のお答えを聞いていて、疑問に思った訳であります。必ずしも少ないからどうのこうのということでは無くてですね、やはり本来の実数に対して、やっぱりこの正規職員でない人達がこんなに沢山いるところもあれば、そうでないところもあると、このばらつきそのものは、やはり誰が見ても、このままでは放置できないなという風な認識に立つのが、私は普通の見方だろうと思います。それは、入居者数がどうのこうのという言い方は、あんまり聞きたくないお話だなという風に思いますけれども、あのー、1つですね、この寄宿舎に対して、学校教育法78条にですね、特別支援学校には寄宿舎を設けなければならないという風になっています。で、まー、ただし書き規定というのが、ありますけれども、それはそれとしてですね、この寄宿舎の設置目的というものを考えた時に、単に遠隔地の子供の通学保証というものに限定されている訳ではないという風に私は認識しておりますが、それで間違いないかどうか、イエスかノーかだけでお願い致します。

○金森局長 ご指摘のように、寄宿舎は入舎した障害のある児童・生徒が、毎日の生活を営みながら、生活のリズムを作るなど、生活基盤を整えることができ、これら児童・生徒の自立と社会参加を図る上で一定の役割を果たしているものと考えております。

○那谷屋委員 この役割についてはもう少し、後ほどお話したいと思いますけれども、そうであるならば、東京都に見られるような通学保証に限定した寄宿舎利用を制限させるやり方というのは、やはりこの法に反するというか、法の理念を踏まえたものではないという風に思う訳であります。また、先ほど言いましたけれども、入舎希望者の減少を理由に、統廃合も進められている訳でありますけれども、利用者が定員に満たない寄宿舎でも、指導員の人手が足りずに入舎を制限しているところもあります。開設時から1度も見直されない定員を基準に議論をするのはおかしいという識者の説得的な疑問もある訳でありますけれども、これについてどのようにお考えでしょうか。

○金森局長 寄宿舎は、基本的には通学が困難な児童・生徒のために特別支援学校の設置者である自治体の判断と責任において設置するものでございます。例えば、こうした寄宿舎を統廃合するかにつきましても、設置者である自治体において、特別支援学校の設置状況や児童・生徒の通学状況などを考慮しつつ、適切に判断されるべきものと考えております。私どもと致しましては、寄宿舎の統廃合などによって、特別支援学校に在籍する児童・生徒の通学が困難となることのないよう、それぞれの設置者において、その措置が講じられることが重要と考えているところでございます。

○那谷屋委員 そこまでは大体認識としては共有できるかなと思うんですが、実は、あのー、高等部の寄宿舎においてはですね、卒業後に自らの居住地域で生活して行くためのスキルや人間関係の形成のためにですね、指導員の方が、銀行、郵便局の使い方、あるいは、社会福祉協議会や支援機関、福祉機関などの利用方法の習熟などなどですね、地域との繋ぎ役というものを果たしているケースがございます。多くの寄宿舎の中ではですね、自立生活体験の一環として、水道、ガスコンロ、炊事用具、これは包丁とかまな板とか、これは私も指導頂かなくてはならないかも知れませんが、包丁とかまな板、鍋、食器等、冷蔵庫等が備えられた部屋でですね、一人で生活するために必要な実践の積み重ねなど、卒業後の暮らしを想定した支援も行っています。このようなですね、日々の暮らしを営むために実際に役立つ、移行支援等も大きな役割を占める高等部の寄宿舎機能の充実強化というものが今求められているのではないかという風に思うところでありますけれども、いかがでしょうか。

○金森局長 寄宿舎は、入舎する児童・生徒の自立と社会参加を図る上で一定の役割を果たしており、特に、ご指摘のございましたように、特別支援学校の高等部の寄宿舎では、卒業後の社会生活への円滑な移行に向けた指導が行われることが期待されているところでございます。また、一部の寄宿舎におきましては、生活や就労などに問題を抱えた卒業生のために、卒業後の支援を行っている事例もございます。もうした寄宿舎機能の充実強化を含め、具体的な寄宿舎のあり方につきましては、設置者である自治体において、児童・生徒の障害の状況や地域の特性などを踏まえ、適切にご判断頂くべき事柄でございますが、卒業後の相談・支援につきましては、在籍する生徒・児童への指導が十分に確保されることを前提として行われるべきものと考えております。文部科学省と致しましては、各自治体において、在籍者のニーズに応じ、寄宿舎の充実強化が必要な場合には、例えば、施設設備の整備補助などを通じて、適切に支援して参りたいと考えているところでございます。

○那谷屋委員 是非適切に、前向きにですね、支援をして頂きたいという風に思うところであります。あの、2006年の4月の本委員会でですね、同僚の神本委員が、寄宿舎指導員の役割について、やはり質問をされました。その際、特別支援学校の転換について、こういった教員以外の方が、様々な先端的機能の発揮のために、いろいろな役割を担って行こうということを、私どもも期待していると、当時の、銭谷初中局長でありますけれども、答弁をされております。で、まあ、地域の幼稚園、保育所、小学校、中学校、そして高校のそれぞれの成長段階で、種々の課題を抱える子供達の生活面の相談支援に関して、この寄宿舎指導員が、貴重な、そして必要な役割を担ってきたという実績がございます。例えば、昼夜逆転といった生活の立て直しですとか、家族環境の立て直しのために、一時的に寄宿舎を利用する子供達へのサポート、あるいは、規則正しい生活や生活場面での集団ルールなどを学ぶためにですね、寄宿舎を利用するケースもあり、指導員は、文字通り、24時間対応に近い形でですね、ねばり強く、接して来られています。これらの取り組みというのは、特別支援地域連絡協議会からも高い評価を得ているところでありますけれども、そして、さらにですね、また今後も、指導員の方にすれば、これからも、様々な課題に対応して行くために、日々、努力、創意工夫を重ねられて行く、そういうつもりもあるということであります。こうした認識をですね、共有して頂けるかどうかお訊ねしたいと思います。

○金森局長 学校教育法上、寄宿舎指導員は、寄宿舎における、幼児・児童・生徒の日常生活上の世話や、生活指導に従事することとされております。お話がございましたように、具体的には、例えば、入舎した生徒の、日常的な食事や入浴、洗濯などに対する支援を通じて、基本的な生活技術を身につけさせたり、掃除などを通じて協力する態度を養ったりする他、日用品を管理させることを通じて、金銭を適切に扱う能力を養う指導などが行われております。このような寄宿舎指導員が行ってきた、日常生活上の世話や生活指導は、児童・生徒が毎日の生活を営みながら、生活のリズムを作るなど、生活の基盤を整え、自立し、社会参加をする力を培う上で重要な役割を果たしてきたものと私どもも考えているところでございます。

○那谷屋委員 まあ、今のようないわゆる寄宿舎の役割、そして指導員の方達の行うべきことというか、やって頂くことについて、ほぼ認識は一致するんですけれども、先ほどお話がありましたように、必要とあれば、文科省も、必要な支援をということがありました、例えば、快適な居住環境の保証という風な観点で行きますと、例えば、今ですね、1室4人部屋という風な状況がございます。これは決してですね、良い環境という風にはならないし、そういう意味では、ここのところはきちっと環境整備をして行かなければならないのではないかという風に思うんですけれども、こうした環境整備ということについて、もう少し決意を聞かせて頂けたらと思います。

○布村幸彦文部科学省文教施設企画部長 お訊ねの寄宿舎の居住環境につきましては、計画設計上の留意事項というものを文部科学省で定めております。具体的には、特別学校施設整備指針というものでございますが、その中で、舎室は、利用する幼児・児童・生徒の障害の状態や特性、また利用人数等に応じた規模とすることということを定め、また、複数人で1室とする場合には、発達段階などに応じまして、個人的な利用のできるスペースを適宜計画することが望ましいという形で定めさせて頂いております。これらを踏まえて、基本的に都道府県におきまして、寄宿舎の居室の利用形態を定められているという実態で、文部科学省におきまして、寄宿舎の居室について具体的に1室に何名とするという定め方はしていないという次第でございます。また、舎室の利用人数を変更されて、より快適な居住環境を確保するために必要となる、寄宿舎の増築あるいは大規模な改造の事業が行われる際には、国として、国庫補助制度を設けているところでございます。先生おっしゃられましたように、寄宿舎につきましては、子供達の日常生活の自立を促す環境として、良好な環条件を確保することは重要な課題であると受け止めております。今後とも、各地方公共団体の要望に応じまして、寄宿舎の整備に対しまして、必要な支援に努めて参りたいと考えております。

○那谷屋委員 あのー、公共団体からのご要望にというような話だったかと思いますけれども、それも大事ですけども、それが基本なんでしょうけれども、是非、現場に行って頂いて、その、まあ、ある意味、これではなというところが必ず出てきます。私も静岡の方見に行って参りましたけれども、実際に、子供達が授業が終わって、部屋に行った時に、私の家みたいに、ランドセル、かばんがあっちこっちにほっぽっていなくて、きちっとかけてあると、そういうところがきちっとしているんですけれども、しかし、今言ったように4人で1つ、1つと言っても広かったらいいんですけれども、そうじゃない、ある意味、申し訳ないけれどもウナギの寝床のようなところに4人いるとか、何か寝台列車を思い出すような、そういう風な状況になっているということがありますので、まあ、そういう意味では、折角のそういった思いを遂げるということであれば、是非、その環境整備に力を前向きにですね、自ら受け身だけではなくて、やって頂きたいという風に思います。もう一つですね、この寄宿舎指導員の現状でありますけれども、正規職員の非正規職員への置き換えとか、退職者の不補充とかいうことがあるんです、退職者の不補充ということがあります。えー、そういう意味では、職場の構成が、いわゆる逆ピラミッド化という風になっておりまして、えー、石川県では、もしも今年、今年度その退職者補充が実施されないと19年間連続放置されたままという風な例もございます。一方で、1つ隣の新潟県では補充が完璧に行われているというような面白いことが起こっている訳ですけれども、いずれにしてもですね、この寄宿舎指導員が担う役割の重要性というものをしっかり位置づけて、定数基準の見直しも含めた必要な改善を早急に行うべきだと考えますけれども、それについてどのようにお考えになりますか。

○塩谷大臣 今の寄宿舎のあり方、あるいは、指導員の定数の問題等、資料等を提示して頂いた各県でかなりばらつきがあるということも踏まえてですね、我々としては、これまでもですね、教職員の定数の改善計画によって、寄宿舎の寄宿する生徒への指導の充実や、小規模の寄宿舎における寄宿舎指導員の勤務条件の改善を図るための、定数改善を行って来たところでございますが、あのー、対応を、しっかり状況を踏まえて、必要な定数の確保に今後とも努めて参りたいと考えております。まあ、あの、静岡県の例とか、いろいろと見て頂いたり、そういったことも含めてですね、今後、必要な対応をして行く必要があるかと思っております。

○那谷屋委員 是非、お願いをしたいと思います。今の大臣のお話はですね、現場の方々に勇気と希望が持てる、そんなお答えになれば、それが実現すればそういう風になる訳で、よろしくお願いいたします。それからもう1つですね、拡大教科書問題について、ご質問をして行きたいという風に思います。これも、理事会の方でお許しを頂いてですね、私が文科省の方に泣いて頼んで、この委員会で皆さんに回覧をさせて下さいということをお願いをしたものでございます。で、今回覧させて頂いていますので、是非ご覧頂ければという風に思いますけれども、えーと昨年ですね、議員立法によって、全会一致で、教科書バリアフリー法というのが成立致しました。教科書発行者自らが拡大教科書を発行することが、まあ義務では無くて、一応努力義務として盛り込まれた訳であります。この法律は、今年度から使用される教科書に適用されることになっている訳でありますけれども、義務教育の検定教科書427点の内、新たに出版された拡大教科書は85点に止まり、これまでに出版されていた69点と合わせるとですね、154点ということで、427点中の154点ということで、全体の約35、6%という風なことになっています。で、小中学校の通常学級に通う弱視の子供達は05年度で約1739人、これは、いろいろと見てもらって申し訳ないんですが、お配りしました資料2の方にも載ってございます。資料2の下の方ですね、1739人、で、この年度にですね、拡大教科書を実際に手にできた子供はこの内の604人に過ぎないということでございます。約3分の1強ということでしょうか。07年度の、給与人数は618人とほぼ横ばいの状態で推移している訳であります。拡大教科書の約8割、これは真ん中の円グラフを見て頂ければと思いますが、このピンク色のものがボランティア団体が作られているということで、81%、そして、民間発行者が13%、教科書発行者が6%という、こういう風な状況になっています。で、正にですね、ボランティアの方々の骨身を削るような日々が費やされても、なおこういう現状になっているということであります。えーと、大臣のお手元に今あるんでしょうか、国語の教科書で、手書きの、これはボランティアの方々が作られた教科書ですので、手書きであります。これはですね、あの、字がうまいなーということもありますけれども、本当に何て言うか、見ただけで心が安らぐ、そういう教科書になっています。で、あれはあの、通常の教科書の3分の1になってまして、実際には、教科書1冊分があれの3倍の厚さになるという、そういう風なものになっておりますけれども、それだけ、非常に時間と手間がかかっている訳であります。そういう方達に頼っているのが、8割強ということになっている訳であります。教科書バリアフリー法というのが折角できたにもかかわらずですね、その効力というのがまだまだだなあと思う訳でありますけれども、その原因は一体どんなところにあるのか、お考えをお聞かせ頂ければと思います。

○金森局長 障害のある児童及び生徒のための教科用図書等の普及の促進等に関する法律の成立を受けまして、できるだけ多くの多くの弱視児童・生徒が利用できる拡大教科書の標準規格を文部科学省として策定、公表し、これを発行を教科書発行者などに周知することによって、拡大教科書の発行を促しているところでございます。こうした取り組みによりまして、ご指摘ございましたように、平成21年度から、新たに85点の小中学校の拡大教科書が発行され、教科書会社から発行された拡大教科書は、義務教育段階で、計154点となったところでございます。ただ、一方で、小中学校のいわゆる5教科、国語、社会、算数、理科、英語といった5教科につきましても、まだ1部発行者の教科書については、拡大教科書が発行されてないものがございますし、図画工作や美術などの教科については作成がなされておられないのが実情でございます。このことにつきましては、拡大教科書の標準規格の策定が昨年の12月でございまして、拡大教科書の製作にかかる編集レイアウトの変更や教科毎の特性のノウハウなどが、まだ教科書発行者に十分浸透していないことや、拡大教科書の作成には、相当な労力と時間が必要であることなどが、その原因として考えられるところでございます。

○那谷屋委員 えー、今、あの、拡大教科書の5教科について云々ということがありましたけれども、実は、図工とか美術とか主要教科以外の教科書で、発行に踏み切った会社は、いまだ出ずじまいという状況です。そして、高校の教科書についても、これまで1点の発行も無いままという、いわゆる不名誉なゼロ記録を更新しているという、そういう状況であります。で、まあ、いろんな理由があるんだろうという風に思いますけれども、やはりまず子供達の利益優先というものを先に考えるならばですね、作成に大きな困難が伴うからとか、あるいは、時間を食う割には利用者が少ないとかですね、いわゆる教科書発行者への配慮に重きを置くやり方というものは、そろそろ改めなくてはいけないという風に思う訳であります。まあ、確かに、昨年の12月からということで、期間が短いと、だから今後は展望されるのだという風な期待があるのかも知れませんが、しかし、その一方でですね、向こう1、2年、2、3年の間に、また新たな学習指導要領に基づく教科書が発行されると、どうせそこで変わるんであるならばというような考え方が仮に出てくるとすれば、これはとんでもないことで、それまでの1、2年、3年の間の子供達の学習の権利を妨げることになる訳でありますから、そういう意味ではですね、子供の権利条約第3条3でも、子供の利益が最先に考慮されるべきとうたっている訳ですので、是非、ここのところは、しっかりと取り組んでもらいたいと思いますけれども、もう一度お願い致します。

○金森局長 私どもと致しましては、教科書発行者による拡大教科書発行を促進致しますため、標準規格を策定し、教科書発行者への周知を行って来たところでございます。今後は、作成にかかるレイアウトの変更や各教科毎の特性など、拡大教科書作成のノウハウなどを伝える研修会などの開催を通じて、教科書発行者に対して、標準規格の主旨や内容をさらに周知して参りたいと考えております。また、教科書発行者による拡大教科書発行情報を、教育委員会や学校に一層周知する取り組みを行い、教科書発行者による拡大教科書の発行を促して行きたいと考えております。こうした取り組みにより、今後とも、教科書発行者による拡大教科書の発行を促進するための必要な措置を積極的に講じて参りたいと考えております。

○那谷屋委員 えー、冒頭申し上げましたけれども、教科書バリアフリー法の中でですね、あのー、努力義務になっているというところ、ここが実は私は大きなネックなんだろうという風に思う訳であります。これはもう完全に義務化するべきではないかというくらいに思う、しかし、今言われたように、様々な条件や問題もある中で、現段階では努力義務がやはり妥当なんだろうというの中の、法案の文なんだと思いますけれども、それでは、この問題は先に進んでいかないという風に思う訳であります。やはり現実に、例えば発行者側がどういうものをハードルと思っているのか、どういうことが問題になっていると思うのかという風なことについてですね、真剣に文科省の方としてですね、そこのところは解決に乗り出して行かなければいけないのだろうという風に思う訳であります。例えば、就学時期、健康診断の際に、これは多く入学前の秋頃、行われる訳ですけれども、対象となり得る子供達について、拡大教科書の必要性や要望等を、各設置者が把握をし、この時点で給与人数を確定し、そして、教科書発行者に通知すればですね、ある意味、十分な作成期間も保証できるし、作り損の弊害も最小限のものにできるのではないかと、こんな風に思う訳であります。ところで、そういう意味では、就学時検診ということは、新入生の需要予測しかできない訳ですから、このニーズというものは、そうは言うものの、中学卒業時までは活用できる訳でございます。そういう風な努力あるいは知恵を出し合う中でですね、子供達に必ず行き渡る方法を見つけるということ、この意欲が非常に大事ではないかと思います。なおですね、この就学時検診の問題について、学校現場ではですね、学校保健安全法の第11条で規定されている訳でありますけれども、障害のある子供達の差別・選別の場とならないよう取り組んでいることも、是非、この場で押さえておかなければならないという風に思うところであります。当事者、子供や保護者の要望、意向等を尊重し、具体的な準備等進めて行くことは学校現場に求められている対応という風に言えると思います。この観点からですね、拡大教科書についても、正確なニーズ把握のための機会として活用することも可能ではないかという風に1つの提言をしているところでありますけれども、いかがでしょうか。

○金森局長 拡大教科書の無償給与につきましては、障害のある児童及び生徒の教科用図書等の普及の促進等に関する法律に基づき、都道府県教育委員会から、拡大教科書の需要数の報告を受け、国が教科書発行者に対し、発行の種類や部数の通知をする仕組みとなっております。拡大教科書を無償給与するに当たりましては、ご指摘のように、必要とする児童・生徒のニーズを正確に把握することは重要なことでございまして、都道府県教育委員会等に対して様々な機会を通じて指導するなど、引き続き正確なニーズの把握に努めて参りたいと考えております。就学時の健康診断を活用することにつきましては、新入生についてのニーズを把握するための参考情報の1つとなり得ると考えられますが、児童・生徒のプライバシーに相応の配慮が求められますとともに、弱視の状態は就学後も変化する場合があることに十分留意する必要があると考えております。いずれに致しましても、拡大教科書のニーズの正確な把握のためには、学校、市町村、都道府県などが密に連携して、対応をして行くことが重要でございまして、引き続き指導を行って参りたいと存じます。

○那谷屋委員 えーと、仮に新学期を迎えてですね、不要になってしまった拡大教科書というのが発生した時にですね、それをどうするか、私は、その分は、文科省がですね、責任を持って買い取る仕組みを講じるべきではないかという風に、まあ、端的に言わせて頂きたいという風に思います。これが無駄であるというようなことには、決してならない、あるいは、言えないのではないかという風に思います。子供達の間に横たわる、このいわゆる格差、不平等、権利侵害を無くすための費用に無駄という概念が、私は、入り込む余地など皆無ではないかという風に思う訳であります。07年度の実績額は、約7600万円で、これも、お配りしました資料2をもう一度ご覧頂けれたらと思いますが、07年度は約7600万円です。で、これにかかわる給与人数の割合が、全体の3分の1強と致しますと、まあ、7600万円の3倍で考えればですね、2億円ちょっとということで事足りる計算になる訳であります。この買い取り料の導入を含めた、拡大教科書作成費確保に向けた決意をお聞かせ頂きたいと思います。

○塩谷大臣 あの、今日拡大教科書を拝見させて頂きまして、大変なボランティアの方の努力で素晴らしい教科書ができている、本当に嬉しく思う次第でございますが、実際はまだ3分の1程度ということで、しかしながら、07年度が7600万ということで、これをしっかり予算も取ると同時に、やはりこの手間が相当かかるということで、教科書発行会社に、私どもとしては、あのー、いろんな形で今努力を促しているところでございますので、確実に全ての生徒にですね、要望に応えることができるように、積極的に今後取り組んで参りたいと考えております。

○那谷屋委員 あの、今日は大臣の顔が神々しく見えるのは気のせいかどうか分かりませんが、力強い決意を今頂いたところだと思っております。ボランティア団体では、拡大教科書を作成した際にですね、マスターコピーを取っておきまして、同じ教科書の依頼があった場合は、マスターコピーを利用して拡大教科書を作成しているという風に伺っています。ところが、先ほど申し上げました、新学習指導要領になりますと、小学校では2011年度、中学校では2012年度からなる訳でありますが、全面実施にともなって、使用される新しい教科書については、マスターコピーがしていません。ボランティア団体は1からの作業となるために、非常に負担が大きくなってございます。是非ですね、必要な子供達全員に拡大教科書を届けるためには、遅くとも、新学習指導要領の全面実施の時点では、教科書発行者が、全ての教科書について拡大教科書を必ず発行せざるを得ない具体的政策誘導策をですね、準備すべきであることを、強く要望をしておきたいという風に思います。さらに、この、拡大教科書というか、教科書バリアフリー法では、視覚障害というか、弱視の方だけで無く、発達障害等も含め、障害のある児童・生徒全てが対象になっております。発達障害の児童・生徒には、例えば、マルチメディアデイジー化された教材が適しているという風にも言われています。今後、発達障害の子供達等に関する環境の充実に向けて、実際に効く有効的な施策等をどう講じて行こうと考えていらっしゃるのか、お考えをお聞かせ頂きたいと思います。

○金森局長 障害のある児童及び生徒のための教科用特定図書等の普及の促進等に関する法律、いわゆる教科書バリアフリー法では、発達障害のある児童・生徒が使用する教科用特定図書等の整備、充実を図るため、必要な調査研究を推進する旨が規定されております。これを踏まえ、文部科学省では、今年度から新たに、発達障害等の子供の障害特性に応じた教科書等のあり方や、これらの教育的効果などについて、実証研究を行うことと致しております。この調査研究事業では、先般、専門の委員による審査評価を経て、4つの団体を実施主体として選定したところでございまして、この内、東京大学先端科学技術研究センターでは、パソコンなどの支援技術を活用し、電子化された教材の作成、教育課程との関連性の研究や、協力校での実証研究を行うことと致しております。また、財団法人日本障害児リハビリテーション協会では、マルチメディアデイジー教材に主眼を置き、電子教科書の備えるべき機能の研究や、教科書の試作及び実証研究などを行うことと致しております。文部科学省と致しましては、これらの調査研究成果を踏まえ、発達障害のある児童・生徒が、教科学習における困難を克服し、障害の有無にかかわらず、十分な教育が受けることができるよう、教材等の学習環境の整備を進めて参りたいと考えてございます。

○那谷屋委員 是非お願いをしておきたいと思います。それでは、すいません、やっと法案に関しての質問に移らさせて頂きます。障害者の著作物利用にかかわる権利制限の見直しということで、第37条3項、そして、第37条の2等にうたわれている訳でございますけれども、まずですね、聴覚障害者にかかわる権利制限規定というのは、放送のリアルタイム字幕にこれまで限定されておりまして、非常に厳しいものであったという風に思う訳ですけれども、その理由をどのように捉えられていらっしゃるでしょうか。

○高塩次長 今、先生からご指摘ございましたように、現行の著作権法によります、障害者に関する権利制限規定につきましては、聴覚障害者の著作物利用につきましては、放送の音声部分のリアルタイムの字幕というものに限られている訳でございます。これを今後、いわゆるリアルタイム以外の異時と言いますか、違った時間帯でも、まあ、字幕送信というのを可能に致しますし、これまで対象とならなかった、映画なども対象にするということで、今回の法改正では、大幅な聴覚障害者に対します権利制限をかけるということになっているのでございます。何故、この字幕についての問題が、これまで難しかったかと言いますと、やはり、その映像の問題につきましては、この字幕つきの映像については、健常者の方でも利用できると、また、健常者に利用された場合には、その、権利者側、映画製作者、映画製作会社などにおきまして影響があるということから、相互間の協議というものに時間がかかるとともに、慎重な意見が多かったということでございますけれども、今回、そうした意見調整がなったということで、法改正を行うと、こういう経緯で至ったということでございます。

○那谷屋委員 えーと、まあ、とりあえず、そこのところは権利者側の部分から出て来た問題ということで認識しておきたいという風に思いますが、この複製等を行うことのできる主体というもの、政令で定める者という風になっておりますが、これは一体どこまで拡大をされるのか、第37条第3項、第37条の2第1号と第2号について、それぞれ別個に示して頂けたらという風に思います。例えば、公共図書館、学校図書館、大学図書館、NPO法人というものは主体となり得るのかどうか、よろしくお願いします。

○高塩次長 今回の改正案におきましては、第37条の3項及び第37条の2でございまして、それぞれ視覚障害者と聴覚障害者につきましての、複製が認められる主体につきまして、その範囲を拡大することでございます。現行法の規定はご存じのように、施設を設置していること、障害者の福祉の増大の促進を目的としていることの限定をかけておりますけれども、今回の法改正では、障害者福祉に関する事業を行う者という規定に改めまして、それらを広く対象とするということになっている訳でございます。現時点でですね、どういう形で、えー、これから指定をして行くかということでございますけれども、利用者確認の体制の整備状況なども、これから指定の際には勘案することになりますけれども、今先生からお話ございましたように、広く公共図書館や関係の事業を行っております民間法人などが新たな対象になり得るということを考えておりまして、今後、関係者の意見も聞きつつ、行って参りたいという風に考えております。先生、条文毎にというお話ございましたけれども、37条の3項は視覚障害者でございまして、現行では点字の図書館や大学図書館、美術大学その他特別支援学校の図書館などが認められておりますけれども、今後、これから、私どもで検討する訳ですけれども、これに加えて、公共図書館や録音図書の作成などを行っております社会福祉法人、NPO法人なども対象に入ってくるのではないかと思っております。また、37条の2の第1号、これは、字幕の公衆送信の方でございますけれども、これは現行の聴覚障害者の関連施設に加えまして、現行では、こうした事業を行っているのは、株式会社がございまして、それらについても対象となり得ると思っております。第2号の方では、これは映像の貸し出しの方でございますけれども、これについても、公共図書館や社会福祉法人というのが、新たに加わってくる可能性が高いと考えております。

○那谷屋委員 えーと、まあ、公共図書館はOKということですけれども、学校図書館や大学図書館も大丈夫と考えて良いのでしょうか。

○高塩次長 そういった録音図書の作成や、字幕の作成等を行っておって、そういった体制が整っていることが認められれば、可能性がございます。

○那谷屋委員 現行法で規定されております、聴覚障害者向けのですね、リアルタイム字幕の作成の実施主体というのは、実は、3法人に今限られているということでございまして、今後は政令で定めることという風になっていますけれども、現状とですね、同じ規模に止まってしまう可能性があるんではないかという風なこともございます。こうした疑問に対して、そしてまたですね、こういったことは、聴覚障害者のための、複製、字幕つきの映像を貸し出しを行うことのできる主体をですね、視覚障害者並にですね、拡大することが必要ではないかという風に思うところでありますけれども、いかがでしょうか。

○高塩次長 今先生おっしゃいましたように、これまでは聴覚障害者のための複製、映像貸し出しのための主体はあまり認められていなかった訳でございまして、新たな事業展開ということになりまして、それにつきましては、これまで指定されておる聴覚障害者の情報提供設備に加えまして、公共の図書館や、そういった事業を行っております民間法人というものが対象になって行くものだという風に考えております。

○那谷屋委員 今回の改正によってですね、その他視覚聴覚による表現の認識に障害がある者にまで対象が拡大されています。つまり、視覚、聴覚障害以外の方にというところまで、対象が拡大されている訳でありますが、発達障害や精神障害等の他の障害を、この著作権法上に明確に位置づけられなかったというか、位置づけなかった理由というのは何かあるんでしょうか。

○高塩次長 先生ご指摘のように、今回の法改正では、著作物を視覚障害者、聴覚障害者に限らず、視覚や聴覚により認識することに障害のある者であれば、広くですね、障害の種類を問わずに、権利制限の対象とするという内容でございます。具体的な規定のしぶりについてのご質問でございますけれども、今回は、典型的なものとして、視覚障害者や聴覚障害者を例として示しているものでございますけれども、これはあくまで例示でございまして、その他発達障害や精神的な障害者も含めまして、実際に認識に障害があれば広く規定の対象となるよう、特定の障害者を列挙する形にはしなかったところでございます。具体的に今の法文が、37条と37条の2と、視覚障害者と聴覚障害者と条文を分けて書いてございますけれども、発達障害者の方は双方にもまたがるという部分がございまして、私どもとしては、広く障害者の方を対象にすることから、条文上は明記をしておりませんけれども、そうした方達を今後対象にして行くという考えでございます。

○那谷屋委員 ありがとうございます。今言われたように、そのー、発達障害や精神障害を持つ方々がですね、通常の著作物を読むこと等が困難だったとしても、それは、聴覚による表現の認識の障害によるものなのか、視覚による表現の認識の障害によるものなのかということについては、なかなか定かではないという部分もあると、そういう意味では、またがる部分があるということは、もっともだろうと思うんですけれども、それではですね、本法律案の書きぶりといいますか、そういったもので、全ての障害者が、全てといってあまり大上段に構えて頂かなくても良いんですが、全ての障害者が自分に合った方式の著作物を入手することが可能となるのでしょうか。

○高塩次長 法律によりましても、障害の方達の障害に応じて、それに理解する方式により、そういう媒体を、著作物を提供できるということでございまして、一般的に広く、様々な障害者のための著作物が出されておりますけれども、それらを一律に決めるのでは無くて、個々の障害者の方々の状況を見てですね、そういったものを発行する可能性を広く捉えようという主旨で、今回の法改正の形にしているところでございます。

○那谷屋委員 是非今後もその主旨を活かしてお取り組みをお願いしたいと思います。それから、細かな話になるかも知れませんが、対象者の範囲の限定というのは、どのような方式によって行われるのかということが1つあります。例えばですね、現在、多くの点字図書館では、利用者の登録要件に、障害者手帳の所有を掲げているところが多くございます。しかしですね、対象者の範囲に、過度な制限がかかるということは、本法案の理念を損ねるのではないかと思う訳で、実際にはどういう風になるのか、お答え頂けたらと思います。

○高塩次長 今回の法律案では、視覚又は聴覚による表現の認識に障害を有する者の用に供するための複製等を認めるということでございまして、そのような障害を有する者を確認する方法につきましては、実際の障害者の必要性に応じて柔軟に対応したいということで、法律上の特段の要件を設けなかったところでございます。このため、その確認方法ということで、先生お話ございましたけれども、障害者手帳ですとか、医師の診断書ですとかというものも、1つの方法でございますけれども、実際に録音図書や字幕の作成を行おうとする事業主体が、個別に確認して行くということでございます。また、図書館と文芸家協会の間では、そういった協定、ガイドラインを結びまして、幅広く、そういう方達を対象とするという取り決めが行われておりますので、その状況に応じて柔軟に対応できるようにしたということでございます。

○那谷屋委員 そういったところの柔軟性も大事だろうと思いますので、よろしくこれからお取り組みをお願いしたいと思います。それから、先ほどから触れている、条文のところにですね、まあ、いわゆる対象者の拡大ということがうたわれている訳ですけれども、その両者に、ただし書きというのがございます。で、このただし書きが設けられている主旨をですね、端的にお答え頂ければと思います。

○高塩次長 今回の第37条第3項及び第37条の2のただし書きは、そのいわゆる権利者が、著作権者又は許諾を受けた者達がですね、自らですね、障害者にとって必要な形での著作物を提供する場合には、権利制限の適用をしないということでございます。これはですね、障害者への提供に当たりましては、本来、先ほど来、お話のございますような、福祉施設やボランティアの方達による支援で、障害者の方達のための様々な著作物が提供されておりますけれども、本来の姿として、権利者自らがですね、障害者に対応する形で著作物を提供するということが望ましいという考え方から、そうしたインセンティブを損なわないようにするために、権利制限を適用しないということで、権利者自らが、そういった障害者のための著作物を発行することを促すということでございまして、こうしたただし書きにつきましては、障害者の権利条約ですね、そうした理念にも合致するものであるという風に考えておるところでございます。

○那谷屋委員 まさに今言われた通りだろうと思うんですが、衆議院の審議においてですね、高塩文化庁次長は、音声カセットが発売されている場合には、第37条第3項に基づき、デイジー図書を作成することについて、単にテープよりデイジーの方が容量が大きいとか、そういった物理的な理由では無くて、真に障害者の方がそういった物でなくては、図書などを認識できないという理由が認められれば可能であるという風に答弁をされております。真に必要な理由というものを広く解釈すればですね、主に健常者向けに市販されているオーディオブックなどもただしし書き対象となることが懸念される訳でありますけれども、その部分についていかがでしょうか。

○高塩次長 あのー、権利者というか、著作権者の方が、自ら障害者のための著作物を発行するということが、これから促進を致します、ある訳でございますけれども、権利者の方で作成しますものは、市販のものということで、著作物の方式というものがある程度パターン化されたものになるということが予想される訳でございますけれども、やはり、個々の障害者を見た場合にですね、それぞれ市販されたものではではですね、やっぱりその著作物を理解できないと、こういった状況が当然あろうかと思う訳でございまして、そういう際には、それは市販されておるから、それはもう権利制限の対象外ということでは無くて、個々の状況に応じて、私どもは、その権利制限では無くて、ボランティア団体の方達などが新たにそういうものを作成するということが可能になるという余地を残したと言いますか、そういう考え方にもとづいたということでございます。従いましてですね、容量の方が衆議院の方でお話ございましたけれども、単になされている物と新たに作ろうというものが、言わば利便性の向上のようなものだけの観点のようなものについては対象になりませんけれども、真にですね、正に障害者のための情報格差の解消という観点から、著作物を作るというものであれば、認められて行くものだという風に考えているところでございます。

○那谷屋委員 はい、ありがとうございます。えー、この、本法律案が施行されましたらですね、録音図書が市販されているにもかかわらず、録音図書を作成してしまった場合、
著作権の侵害行為という風になってしまう訳であります。で、それを防止するためにですね、どのような録音図書が今発行されているのかということをですね、早期に周知することができるような手立てを講じなければならないという風に思う訳であります。例えば、出版社等に対して、発行している録音図書の一覧の公表を求めるお願いの文書を発出するとかですね、そういう風なことが考えられるのではないかと思うんですが、文化庁として、どのような対応を取る予定なのか、そして、ただし書きによって、障害者を巡る情報アクセスの状況が現状よりも悪化しないように、万全を期す必要性があるのではないかと思うところでありますけれども、いかがでしょうか。

○高塩次長 お話がございましたように、障害者用の図書が市販されている状況につきまして把握するということはですね、それをこれから作成しようという方達にとりましても、ただし書きがございますので、不測の権利侵害ということにならないというリスクをある程度軽減できるということがございますし、権利者側の方におきましてもですね、いわゆる無断複製の防止ということも可能になりますし、また自ら提供します著作物の購入促進にもつながる利点があると考えております。このため、権利者側におきましてですね、先生からご提言のございました、障害者用の市販図書の一覧の公表など、自ら積極的に行われることが、期待されるところでございまして、実際今でも、一部の権利者団体と図書館団体の間では、そうした情報提供が行われていると聞いておりますけれども、私ども文化庁と致しましては、こうした法案の成立後、こうした取り組みを参考に致しまして、こうした運用が円滑に行われるよう関係者の取り組みを支援して参りたいという風に考えております。

○那谷屋委員 えーと、大臣にお訊ねをしたいと思いますけれども、障害者権利条約の第30条第3項では、締約国は、国際法に従い、知的財産権を保護する法律が、障害者が文化的な作品を享受する機会を妨げる不当な又は差別的な障壁とならないことを確保するためのすべての適当な措置をとるとされています。障害者の情報アクセスの保障に向けて、政令の内容はもとよりですね、公共図書館や福祉施設における実際の運用についても、文化庁が責任を持って主導して行く必要性があるという風に思いますけれども、いかがでしょうか。

○塩谷大臣 えー、今回の改正案につきましては、今ご指摘のありましたように、障害者に関する条約の主旨を踏まえて、障害者の情報格差を解消するために、著作権に関する法律面での課題を解決するものであります。で、文部科学省としては、文化庁の主導の下でですね、改正法の主旨等について、コンテンツ事業者や関係団体、福祉施設等に対して周知をして行くこと、同時に、これらの事業者を所管する関係省庁とも連携して、障害者に対する著作物等の提供が円滑に行われるように、必要な環境整備を図って参りたいと考えております。

○那谷屋委員 よろしくお願い致したいと思います。えー、次に、違法インターネット配信からのダウンロード違法化関係です。違法インターネット配信からのダウンロード数が増加していると、そういうことがある中でですね、これはまあ、権利者団体であるレコード協会等の推計値を元に、文化庁は説明をしている訳であります。一方で、正規の有料配信も年々増加を続けておりまして、平成20年の売り上げは、平成17年の3倍近くに上っています。ある、この法案に対する様々なご意見の中でですね、権利者団体による調査結果をあまりにも鵜呑みにしすぎて、文化庁が中立的な立場から検証を行ってないじゃないかというような批判がある訳でありますけれども、そうしたことに対してですね、どのようにお答えになるのか、お訊ねしたいと思います。

○高塩次長 インターネットによります、音楽映像作品の違法配信の状況につきましては、今ご指摘ございましたように、社団法人日本レコード協会、社団法人コンピュータ・ソフトウェア著作権協会が調査を行っておりまして、この結果は、今次の改正におきまして、検討の参考として、文化審議会の著作権分科会私的録音録画小委員会において報告をされたものでございます。まあ、これらの調査は利用者に対するアンケート結果に基づくものでございまして、違法配信からのダウンロードの件数が、網羅的に調査したものでは当然ございませんけれども、複数年に渡り継続的に行われておりまして、インターネットにおきます違法な状況を知る上で、一定の評価できる資料だという風に考えております。こうした資料につきましては、著作権分科会の小委員会におきまして、委員の方達のご指摘も踏まえまして、より厳正な推定値となるよう、見直しも行ったところでございます。こうしたことを踏まえまして、文化庁と致しましては、こうした調査は、録音録画の実態を理解するための一定の適切な内容のあるものだという風に考えまして、今回の法改正の参考としたところでございます。

○那谷屋委員 まあ、あの、今回の法律によってですね、いわゆるユーザー側も、違法ダウンロードと分かっていて、違法のものであると分かっていてダウンロードしたらば、法に触れるということになる訳でありますけれども、まあ、具体的には特別な罰則等は直接はうたわれておりません。で、そういったことの中でですね、いくつか懸念される点があるのではないかということ、これは衆議院の議論でも指摘をされていますけれども、1つはインターネット利用そのものがですね、萎縮してしまう可能性があるのではないかという風に言われています。そういう意味ではですね、そのことは、そうであるのかどうかという見解をお訊ねするとともにですね、今後やっぱり一定の期間、利用者に対するアンケート調査を行うなど、状況の把握を行うことが必要ではないかという風に、文化庁自らが行うことが必要ではないかという風に思う訳でありますけれども、いかがでしょうか。

○高塩次長 今回の改正につきましては、違法に配信される音楽や映像を複製、ダウンロードする行為が、正規の配信市場を相当上回っているという状況、これも踏まえまして、現行制度下における違法配信者への対処というだけでは、いわゆるアップロード側だけの対処では難しいと、限界があるということから、ダウンロード行為にも、一定のルールが必要という判断に基づいたものでございます。先生からご指摘がございましたように、そうしたことが、ネット利用の萎縮効果を及ぼすのではないかというご指摘があったところでございますけれども、文化庁と致しましては、そうした影響が無いようにですね、今回の制度の主旨、内容につきまして、文化庁のみならず、民間の団体とも、官民一体となってですね、その制度の周知広報に努めて参りたいと思っておりますし、また、必要に応じて適切な措置を講じて参りたいと思っております。

○那谷屋委員 是非、そのことはですね、必要不可欠なことではないかという風に思う訳であります。ところが、こうした制度を設けた時に、まあ、これは定額給付金ですとか、あるいは裁判員制度も同じでありますけれども、必ずこの不正請求という風なものが、そういったものが多発されることが懸念される訳であります。とりわけ今回のものはですね、違法配信からのダウンロードを行ったという、利用者が感じる罪悪感というものにつけ込むものであるために、より被害が拡大することが予想されるのではないかという風に予想される訳であります。本法律案の内容をですね、利用者に説明すること以外に、具体的にやっぱりもう少し踏み込んだ措置が必要ではないかという風に思うのでありますけれども、そうした予定がおありかどうか確認をしたいと思います。

○高塩次長 先生から、今回の改正を契機にですね、いわゆる本規定を悪用した不正請求の詐欺被害というものが生じるのではないかというご懸念でございますけれども、先ほど申し上げましたように、私どもと致しましては、制度内容につきまして広く国民に周知を図る際にですね、その詐欺に関する注意喚起も行って行くことは重要であるという風に考えております。具体的には、今回の法改正の内容につきましては、メディアを通じました広報、それから文化庁のホームページへの今回の法改正内容の解説文の掲載、各種セミナーの開催、あと学校への資料送付によりまして、広く周知を図ることを予定致しておりますけれども、合わせて、制度を悪用した不正請求等の詐欺に関する注意事項についても、広報の中に取り入れて、行って参りたいという風に考えております。

○那谷屋委員 まあ、今あの学校への配布等々といいうお話をされたかなという風に思うんですけれども、あのー、文部科学省の調査によれば、中学2年生では45%、高校2年生では95%の生徒が携帯電話を所有しているという風になっております。携帯電話向けの違法サイトから着うたのダウンロードを行っている者の割合というのは、10代が最も高くなっています。文部科学省は、携帯電話の利用に際しての留意点や、トラブル、犯罪被害などの対策、アドバイスなどを盛り込んだリーフレットを小学校6年生全員に配っているところでありますけれども、こうした携帯電話の利用の注意点の中にですね、著作権教育を含めることの必要性、先ほど、学校にも送付されるというお話でしたけれども、まあ、具体的にはそういったことという風に理解してよろしいんでしょうか。

○高塩次長 今回の法改正内容の周知でございますけれども、先ほど申し上げましたけれども、特に児童・生徒に対しましては、学校に対しまして、児童・生徒を対象とした教材というもの、これは文化庁で独自に作っておりますけれども、そうした新たなものの中に反映をしたいと、また学校に対する解説書、資料というものを送付したいという風に思っている訳でございます。先生がご指摘のございました、いわゆる小学校6年生向けの携帯電話利用の留意点というのを、私ども、スポーツ・青少年局の方で作成を致しておりまして、今後こうしたリーフレットの中でどういう形で入れるかということを担当部局と十分相談して参りたいと思っております。

○那谷屋委員 まあ、先ほど申し上げましたように、10代が最もそうした着うたのダウンロードが多い、高いということでございますので、是非、そういったところにもお取り組みをお願いしたいと思います。えー、実はこの著作権教育っていう風に敢えて言わせて頂きますけれども、年齢が上昇すればするほど、いわゆるその違法サイトからということ、違法であるということを知っていてもですね、罪悪感が薄くなって行くという、そういう結果も実は出ているところであります。そういう意味ではですね、違法サイトからのダウンロードを含めた著作権教育とか、携帯電話やインターネットの利用上のマナー等について、大人に対しても教育を行う必要性があるんではないかという風に思います。具体的にどうするのかというのは、非常に難しい問題だと思いますけれども、もしお考えがあれば、お聞かせを頂きたいと思います。

○高塩次長 今ご指摘のように、もう現在、インターネットやパソコンの情報化の時代を迎えておりまして、著作権に関する知識というのは、国民全てにですね、必要不可欠なものになっているという風に考えております。今現在、文化庁が今行っております、大人向けの普及・啓発施策と致しましては、文化庁のホームページ上でございますけれども、1つには、著作権制度に関する解説を掲示しております、また、2つ目には、著作権に関する様々な疑問に、いわゆるQ&A方式で解説します、著作権なるほど質問箱というものを提供致しております、また企業や大学向けの映像による著作権教材の提供というものも今取り組んでいるところでございます。さらに、そうしたホームページでは無くてですね、文化庁では、図書館職員、教員というものに対する特別の講習会をやっておりますけれども、一般の方々を対象にした各種講習会というのを、昨年度は全国で10カ所、今年度は全国13カ所でございまして、1カ所大体数百名のご参加を頂いておりますけれども、こうした普及啓発、教育というものを行って参りたいという風に思っております。また、この違法ダウンロードにつきましては、いわゆる適法サイトと違法サイトの区別ということにつきましては、関係団体の方が、今エルマークという表示を行っておりまして、これは音楽につきましては、配信の97%まで今エルマーク、エルマークとはライセンスの意味でございまして、これは適法配信だということを示すものでございますけれども、そうした取り組みを行っておりますけれども、この3月からは映像についてもそういった取り組みを行っておりますので、私ども文化庁と民間の取り組みと合わせてですね、著作権意識の啓発というものに努めて参りたいという風に思っております。

○那谷屋委員 エルマークというお話がありましたけれども、エルマークとは一体何ぞやと思われる方も、分からない方も沢山いるのだろうと思うので、そういったことも含めてですね、やはり、しっかりやって行かなければならない部分なのかなあという風には思う訳であります。最後の質問をさせて頂きたいと思います。違法サイトの利用を止める理由、もしこうだったら止めるという風なことですけれども、権利者側の調査によりますと、ダウンロードが違法になったら、なっちゃったら止めるよという風に答えているのが41.1%だったという風に、これを強く前面に出されている訳です。ところが、これは、一番多かった数では無くてですね、有料着うたの料金が下がった場合、要するに価格がもっと下がった場合には、やっぱり違法サイトだったら止めて、安いから、それだったら、安い額を払ってでもダウンロードしようという風になるということが51.1%ということでありまして、そういう意味ではですね、例えば、この法案が成立後ですね、違法配信からのダウンロードが減った分、有料配信の売り上げがさらに延びた場合、3年間で3倍になっていますから、そういった場合にですね、有料配信の価格を下げることによって、より多くの人がより多くの楽曲に触れ、著作権法の目的であります、文化の発展に寄与することになると、レコード会社等が努力する必要があるという風に考える訳であります。様々な関連するところがあると思いますけれども、文部科学大臣の見解をお聞きをしまして、私の質問を終わりたいと思います。

○塩谷大臣 携帯電話向けの着信音楽の値段につきましては、サービス提供事業者のビジネスモデルや、利用者のニーズ等も反映して決定されるものと考えられておりますので、価格がどうかということ、いろいろ高いという話でございますが、私からは、そういう立場に無いと思っておりますが、いずれにしましても、違法な配信の音楽の複製行為に効果的に対処しようとして行くことで、利益者の便益と権利者への対価の還元を両立できる適正な流通市場が拡大し、利用者の利便性が一層高まるような形で提供されるようになることを期待しているところでございます。

○中川委員長 他にご発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。これより討論に入ります、別にご意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。著作権法の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案通り可決すべきものと決定致しました。この際、鈴木君から発言を求められておりますので、これを許します。

○鈴木寛委員(民主党・東京)私はただ今可決されました、著作権法の一部を改正する法律案に対し、民主党・新緑風会・国民新・日本、自由民主党及び公明党の各派共同提案による附帯決議案を提出致します。案文を朗読致します。

著作権法の一部を改正する法律案に対する附帯決議案

 政府及び関係者は、本法の施行に当たり、次の事項について特段の配慮をすべきである。

一、違法配信と知りながら録音又は録画することを私的使用目的でも権利侵害とする第三十条第一項第三号の運用に当たっては、違法配信と知らずに録音又は録画した著作物の利用者に不利益が生じないよう留意するとともに、本改正によるインターネット利用への影響について、状況把握に努めること。
 また、本改正に便乗した不正な料金請求等による被害を防止するため、改正内容の趣旨の周知徹底に努めるとともに、レコード会社等との契約により配信される場合に表示される「識別マーク」の普及を促進すること。

二、インターネット配信等による音楽・映像については、文化の発展に資するよう、今後見込まれる違法配信からの私的録音録画の減少の状況を勘案しつつ、適正な価格形成が促進されるよう努めること。

三、障害者の情報アクセスを保障し、情報格差を是正する観点から、本法の運用及び政令の制定に当たっては、障害の種類にかかわらず、すべての障害者がそれぞれの障害に応じた方式の著作物を容易に入手できるものとなるよう、十分留意すること。

四、教科用拡大図書や副教材の拡大写本を始め、点字図書、録音図書等の作成を行うボランティアがこれまで果たしてきた役割にかんがみ、今後もボランティア活動が支障なく一層促進されるよう、その環境整備に努めること。

五、著作権者不明等の場合の裁定制度及び著作権等の登録制度については、著作物等の適切な保護と円滑な流通を促進する観点から、手続の簡素化等制度の改善について検討すること。

六、近年のデジタル化・ネットワーク化の進展に伴う著作物等の利用形態の多様化及び著作権制度に係る動向等にかんがみ、著作物等の利用の一層の円滑化に向けて、著作権法の適切な見直しを進めること。
 特に、著作権制度の在り方をめぐり意見の相違が大きい重要課題については、国際的動向や関係団体・利用者等の意見を十分考慮するとともに、技術革新の見通しと著作物等の利用実態を踏まえた議論を進めること。

七、国立国会図書館において電子化された資料については、情報提供施設として図書館が果たす役割の重要性にかんがみ、読書に困難のある視覚障害者等への情報提供を含め、その有効な活用を図ること。

八、文化の発展に寄与する著作権制度の重要性にかんがみ、学校等における著作権教育の充実や国民に対する普及啓発活動に努めること。

九、教科書、学校教育用副教材のデジタル化など教育目的での著作物利用に関しては、その著作権及び著作隣接権の許諾の円滑化に努めること。

右決議する。

以上でございます。何卒委員各位の賛同をお願い申し上げます。

○中川委員長 ただ今鈴木君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。全会一致と認めます。よって、鈴木君から提出されました附帯決議案は、全会一致でもって、本委員会の決議とすることが決定致しました。ただ今の決議について、塩谷文部科学大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。

○塩谷大臣 ただ今のご決議につきまして、その主旨に十分留意を致しまして対処して参りたいと存じます。

○中川委員長 なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長にご一任願いたいと存じますがご異議ございませんか。ご異議なしと認め、さよう決定致しました。本日はこれにて散会致します。

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2009年5月11日 (月)

第171回:衆議院文部科学委員会での著作権法改正法案の馴れ合い出来レース審議

 この5月8日に、衆議院文部科学委員会が、著作権法改正案(その内容と問題点については第160回参照)を何ら修正も無く通した。公式な議事録はまだしばらくかかるものと思うので、暫定版として起こした議事録をここに載せる。(国会中継からなるべく丁寧に起こしたつもりだが、どこか間違っている点があれば、是非教えて頂きたいと思う。)

 貴重な国会審議において、どの党もほとんど、そんなことは他でやれば良いはずの法案と直接関係ない問題をだらだらと喋っているだけであり、法案に対する実質的な審議は何もされていないに等しい。完全な馴れ合い、茶番の出来レースであり、これがまがりなりにも選挙で国民の代表として選ばれた者のやり取りかと思うと、私はほとんど絶望しか覚えない。

 民主党は、その党内会議で、私的録音録画小委員会の委員で最後までダウンロード違法化反対の主張をされていた津田氏から問題点を聞くことまでした上で、この体たらくである。ブログでは、民主党の川内博史議員は「委員会質疑の中で修正を求めます」とまで言っていたが、結局、利用者に対して直接権利行使を行う場合には事前に警告を行うよう文化庁に権利者団体への指導を求め、ユーチューブやニコニコ動画などの動画投稿サイトを見るだけは違法とならないことを確認するに止まり、川内議員からも修正動議は入らなかった。(川内議員は、着うたフルを独禁法違反ではないかとして国会審議内で申告するというトリッキーなことをしているが、これは法案とは直接関係しない。)

 民主党の松野頼久議員は、ジャスラックと独禁法の問題に関して完全な法律の無理解を示して時間をムダに費やし、やはり民主党の和田隆志議員は、教育というところに力点をおいてダウンロード違法化に賛成だという総括をしているが、ダウンロード違法化は教育のためにもならないと私は断言する。和田議員は、やたらに若い人たちのためにと繰り返しているが、その言うところの若い人たちが、この国会でのやり取りを読んだら、日本の未来に対して希望を抱くどころか絶望を感じるだけだろう。

 日本共産党の石井郁子議員も、今回の法案と直接関係しない私的録音録画補償金問題について、権利者団体が言っているようなことをそのままこの場で繰り返し、一方的な見方からメーカーを非難して補償金制度を擁護するなど、著作権法の本質に関わる私的複製問題について、その本質を全く理解していないことを示している。(メーカーの対応にも難はあると思うが、どうせどこかの権利者団体が共産党に吹き込んだのだろう。やはり彼らの手は長い。)

 社会民主党の日森文尋議員も、グーグルブックサーチ問題やフェアユースの話などを聞いているが、これもまた何も言っていないに等しい。(日本文芸家協会が持ち出されているので、吹き込んだのはやはり権利者側だろう。)

 読めば分かると思うが、どの党も国民と口先では言いながら、本当は国民のことなどカケラも考えていないことを如実に露呈している。国会で、このような馴れ合いの出来レース審議が行われており、また行うことが可能であるというのが、絶望的な今の日本の現状である。今後も追いかけて行くつもりだが、与党として閣議決定という形でダウンロード違法化を含む著作権法改正に賛成した自民党(宗教政党である公明党は無論論外である)はおろか、このような審議を見る限り、他の党も含め、残念ながら、著作権問題に関して投票できる党は無い。

 著作権法に限らず多くの法案で、このような腐った馴れ合いの国会審議はザラに見られる。著作権問題を超えて、国会におけるこのような馴れ合いの出来レース審議をいかに無くすか、これを不可能にして行くか、どのように国民の本当の意見が政策決定に反映されて行くようにするかということこそ、今後、考えて行かなくてはならない真の国民的課題である。

 スウェーデンで海賊党が3番目に大きな政党になり次の欧州議会選挙で議席を得るかも知れないということが言われている(TorrentFreakのブログ記事参照)が、ご覧の有様では、日本でもすぐにでも海賊党を作る必要があるのではないかと私は感じている。

(5月12日の追記:特に新しい情報が含まれている訳ではないが、この日の質問概要をまとめた委員会ニュース(pdf)付帯決議は既に公表されているので、念のため、リンクを張っておく。なお、数字を漢数字になおしたり、漢字を開いたりといった程度のものだが、公表されているものの通りに、下の議事録の付帯決議読み上げ部分も直した。)

(5月13日の追記:既に「P2Pとかその辺のお話@はてな」で紹介されているので、興味のある方はリンク先をご覧頂ければと思うが、フランス下院が、一旦は否決したいわゆる3ストライク法案の再議決を行い、今度は通した。この法案はさらに今日明日中くらいに上院でも再可決される予定のようであり、上院も通過して固まったところで、また法案の内容の紹介をしたいと思っている。)

(5月14日の追記:「チラシの裏(3週目)」で既に書かれているので、リンク先をご覧頂ければと十分と思うが、この著作権法改正案は12日に衆議院本会議も通り、参議院(担当委員会は文教科学委員会)に送られた。国会中継を見てもらえばすぐに分かると思うが、議事録を起こす必要性の全くない、質問ゼロ動議ゼロの完全な無風通過である。他の法案も含めてザラに見られる光景であるとは言え、今の国会では、ダウンロード違法化ほどの問題についてこのような馴れ合いの出来レース審議が平気でまかり通るのである。全国会議員が政治に対する参入規制と馴れ合いで心底腐り切っているとしか、これは今の国会議員の誰一人として国民のことなど本当は全く考えていないことを示すものとしか言いようが無い。

 また、フランス上院でも、13日に3ストライク法案が通った(vnunetの記事NetEcoの記事参照)。これで両院を通過したことになるが、EU委員会は事なかれ主義で3ストライク法案は欧州法に違反しないと言おうとしているものの、即座に、3ストライク法案否定条項を主導したEU議会の議員からそのような委員会の態度に文句がつけられるなど(Le Mondeの記事1記事2参照)、さらに憲法裁判所に訴えられる可能性(フランスでは国会を通った法案に対して憲法裁判所に合憲性の審査を求める訴えを提起することが可能。提起された場合は、インターネットへのアクセスがフランス憲法に照らして基本的な権利かどうかという点が争われることになるだろう)も十分にあるなど、もうしばらく混沌とした状況が続きそうである。)

(6月15日の追記:以下の議事録もそのまま残しておくが、正式な議事録も公開されているので、ここにリンクを張っておく。)

(以下、議事録)

○岩屋毅委員長(自民・文部科学委員長・大分県3区)これより会議を開きます。内閣提出著作権法の一部を改正する法律案を議題と致します。本案の審査のため、本日政府参考人として、内閣官房知的財産戦略推進事務局次長内山俊一君、公正取引委員会事務総局審査局長山本和史君、文部科学省スポーツ青少年局長山中真一君、及び、文化庁次長高塩至君の出席を求め、説明を聴取致したいとしたいと存じますが、ご異議はありませんか。ご異議なしと認めます、よって、そのように決しました。これより質疑に入ります。質疑の申し出がありますので、順次これを許します。高井美穂君、高井君。

○高井美穂委員(民主党・無所属クラブ・四国ブロック)おはようございます。民主党の高井美穂です。今日は著作権法の一部を改正する法律案ということで、お時間を頂きましてありがとうございました。ええと、インターネットという手段ができて、著作権が一部の業界人だけが注目していたものが、国民全てがこれに関わるようになったという時代になりまして、まさに誰にどのような著作権を付与するかということは、国民の合意によって決めて行くものだと私は考えております、つまり国民の合意によって決めるということは、この国会で議論して決めると、つまり、著作権法というのは、権利者と利用者のそのどちらもが利害や思想が異なる、どちらの立場を認めて行くかということを国民全てが、国民がかかわる中で、ルールを作るということだと思っておりまして、どちらの立場に立つのが正しいとか、善とか悪とか言う問題ではないと思っております。そうした中で、どういう著作権を付与するのかしないのかを決めて行くのは、産業政策や、人々がどうしたらより利用し易いのか幸福になれるのかという観点から、法律を作る訳だと思いますが、これからさらなる技術の発展や新たなビジネスモデルに対応できるように、不断の改善の努力が必要だという風に考えております。今回の法律改正においては一定の前進だという認識を持っておりまして、とりわけ今日質問させて頂きます、障害者の著作物利用の円滑化という点においては大変な前進だと思いまして、この点から質問を申し上げたいという風に思っております。今回の法改正の中で、国連の障害者の権利条約の第30条3にうたわれている、締約国は、国際法に従い、知的財産権を保護する法律が、障害者が文化的な作品を享受する機会を妨げる不当な又は差別的な障壁とならないことを確保するためのすべての適当な措置をとるという風な精神に則りまして、またこの文化審議会の著作権の分科会の中でも議論がありました、この障害等によって著作物の利用が困難な者を、可能な限り、権利制限の対象に含めるとともに、複製主体、方式も拡大する方向で速やかに措置を講じることが適当という風な、検討結果に沿って今回の法改正がなされようとしている訳で、障害者のために権利者に無許諾で行える範囲を拡大するということは、大変この先ほど申し上げたこの権利条約の主旨にも則ったものとして評価を致しますが、具体的に、この障害者の皆さんや障害児の通う学校や図書館等、また、大きな障害を持つ方々の支えとなっておられるボランティアの方々や様々な活動団体にとってどのようなメリットがあるとお考えになっておられるか、大臣からまずご答弁をお願いしたいと思います。

○塩谷立文部科学大臣 著作権につきましては、今高井委員がおっしゃったように、インターネット等の情報通信が発達する中で、国民全般に関わることとしてこれから状況に応じてしっかりと対応して行かなかければならないということでございまして、今回特に、障害者についての37条3項の改正の意味ということでございますが、これについては、健常者と障害者の情報格差の拡大、さらには障害者の著作権の利用法の多様化、障害者の権利の条約を巡る状況を踏まえてですね、障害者のために権利者の許諾を得ずに著作物を利用できる範囲の抜本的な見直しということで、障害者の情報格差を解消しようとするものでございます。特に具体的にですね。一つは、弱視者、発達障害者なども含めて、視覚による表現の認識に障害のある者が対象となること、二つ目には、録音図書に限らず、拡大写本、デイジー図書の作成など、それぞれの障害者が必要とする方式で複製等が可能となること、また三つ目として、図書館など障害者施設以外の施設でもそれらの作成が可能となること等の改善が図られる訳でございます。こういった措置を通じて、障害者のために著作物の提供が一層、円滑になるようになり、障害者による著作物の利用機会の拡大が図られることとなるものと考えております。

○高井委員 この第37条の3項、今回改正になりますが、障害者福祉に関する事業を行う者を政令で定めることとしております。これまで、弱視の子供たちのための拡大教科書など全国各地のボランティアの皆さんが、一冊一冊手作りで作業を進めて来られて、本来国や教科書会社がきちんとするべき教科書作りを支えて来て頂いた訳です。昨年、教科書バリアフリー法が議員立法で作られ、私もこれに関して何度か質問にも立たせて頂きましたけれども、義務教育段階でかなり普及が進んだことは感謝を申し上げますし、評価致しますが、今度は、ボランティア団体の皆さんも副教材作りについて力を入れて行こうということで、意欲を新たに前向きに頑張っているところでございます。しかし、今回の改正の運用面などの点で、不明確な点がありますので、ちょっと確認させて頂きたいと思うんですが、これからもボランティアで行おうとする教科書以外の拡大写本の作成は、著作権者の許諾を得なければならないのか。そうしなければ違法行為になるのではないか。権利許諾の複雑な手続きが必要になって来るのではないかという風に心配する向きもあがっています。この拡大写本の作成等をしているボランティア等を、例えば事業者として、今回の法律で、この法律の中の政令として組み込むことが難しいのか、定めることが難しくなければ、政令で定めるということになりますと、かなりいろんな団体等を含めなくてはいけない、それ以外の政令で出てこない団体が違法になってしまうのではないかという懸念があるのですけれども、引き続き自発的に行ってる団体等が、権利者の許諾を得なくて済むのかどうかちょっと確認をさせて頂きたいと思います。

○高塩至文化庁次長 先生お訊ねの今回の法律案の改正法の37条3項の複製が認められる主体として政令で定めるものにつきましては、今後、関係者の意見も聞きまして検討を行うこととしております。現時点では、利用者確認の体制整備状況などに応じまして公共の図書館や民間の法人などを対象として行くことを考えているところでございます。このため先生ご質問のございました、拡大図書の作成を行いますボランティア団体が、法人格を得て、組織的に事業の実施ができ、障害者の確認ができる体制が整えられている場合には、政令指定の対象とすることも可能と考えられるところでございます。ただ、個人や少数のグループなどにより活動を規定するは政令としては難しいのではないかと考えます。ただ、政令指定の対象となります公共図書館等の活動に協力するという形態を取ることなどによりまして、これまで同様ですね、ボランティアの方々が拡大写本の作成等を行うことは可能でありますし、そういうことを促進して参りたいと思っております。

○高井委員 今のご答弁からしますと、まあ、政令等にボランティア等を書き込むのは難しいと、ボランティア等の皆さんにNPOなどの法人格を取れば、書き込みやすいということになるのかも知れませんけれども、なかなか個人でやっている方々、いろんなご事情もありますし、そういう風にNPOの資格を取りにくかったりすると思います。でき得る限り、ボランティアの方々がすることについて、違法とならない権利をわざわざ、著作権の利用許諾を得なければならないということが無いように、少なくとも、改正になった後にも皆さんにも広く周知徹底して頂きたいと思います。今のご答弁だと、今まで通りこれからもそういうことでなくて良いと思いますので、ボランティアの皆さんが萎縮しないようにくれぐれも関係者団体の皆さんに対してご支援をお願い申し上げたいという風に思っています。拡大教科書などの電子データが提供されてる場合、今回追加されたこの37条3項のただし書きによってボランティアなどがそれ以上複製できなくなるということは無いと思いますけれども、このただし書きの当該方式の定義の詳細に問題についてお伺いをしたいと思います。音声という媒体についてですけれども、例えば出版社が音読カセットを販売している場合、これを図書館が、視覚障害者のために、デイジー方式といいまして、利用し易い情報システムに、この学習障害とか、障害を持たれている方、高齢や様々な発達障害などにより文章を読むのに困難を有する方々のための、読書の支援のシステムの方式でございますけれども、この音訳図書に複製するということを、図書館がやっても良いということになりますでしょうか。もしくは、そのカセットがある場合、カセットを利用せずに、図書館内で既にカセットがあるものに対して、図書館内でもっと読みやすいデイジー方式、もっと違う形の方式を取る場合、独自で作成したりということはできるのでしょうか。

○高塩次長 先生ご質問の改正案37条第3項のただし書きによりまして、権利者等によりまして障害者に対応した形で著作物の提供が行われている場合には、権利制限を適用しないということをしている訳です。これは、そういう権利者が障害者のための物を作成しているということにつきましてはですね、障害者のための条約でも、それを促進することを求めるということでございまして、このような規定を置いた訳でございます。ただ、このただし書きの適用の有無につきましては、先生からお話のございました、音声カセットが販売されている場合に、デイジー方式の録音図書を複製できるかという問題でございますけれども、これは対象となる障害者が音声のみではその著作物を認識できないと、やはり文字と音声の両方で見聞きする、デイジー方式のみしか、障害上の理由からそういうものが是非必要だと認められる場合には、認められた図書館などで複製が可能だと考えております。ただ、単にテープよりデイジーの方が容量が大きいとか、物理的な理由では無くですね、真に障害者の方がそういうもので無ければ、そのような図書を認識できないという理由が認められれば、音声カセットが販売されておりましても、このデイジー方式のものを複製ということは可能だという風に考えております。

○高井委員 最近のデジタル技術の発展とか情報通信技術の革新は大変目覚ましいものですから、デイジー技術についてもかなりいろんな機能があがってきているのではないかと思いますし、できる得る限り、先ほど冒頭申し上げた権利条約の観点からも、障害者の皆さんが利用しやすいような形を許して行く、許諾して行くということをでき得る限り運用上やって頂きたいという風に思っております。音声というものに加えて、電子データにおいても、同じような問題が生じると思います。例えば、講談社なんかにしても、ドットブックといった形式で、ネット上で、本を、電子図書というものをインターネット上で販売、配信をしています。それを例えば、図書館で、同じようにこのデスのファイル形式に変換をして障害者に貸し出すことは、技術的上は大いに可能だと思いますし、それができるという風に解釈をして行きたいという風に思うんですけれども、スキャナーとかで読み取ってテキストファイル化して行くとかいうことは、今の先ほどのご答弁からすると、同じように障害者のために限定されたものであれば、できるということでよろしゅうございますか。

○高塩次長 今先生からドットブック方式で電子図書がインターネット配信されている場合に、別のファイルに変換する複製ができるのかというようなお話でございますけれども、これは、ドットブック形式が音声読み上げソフトに対応しておらずですね、これが可能となりますファイル形式に変換する必要がある場合など、障害上の理由でですね、ドット方式以外のものが必要であるという場合には、さきほどと同じ考え方で複製できると考えております。

○高井委員 今全ての電子データも音声の読み取り方式にすぐにできるということはないと思いますけれども、それを図書館などが例えば工夫をしながらファイル形式を変換してデイジー方式で対応するようなものに変えて行くということは、一回複製が生じますので、著作権法上問題が生じないかということを確認をさせて頂いた訳ですが、問題が生じないと、限定されたものであり、またそれが必ず障害者のために資する、必要であるということであれば、問題が生じないということで、できるという風に理解を致しました。同条項は、同じく障害者が利用するために必要な方式での公衆への提供がされている場合という風に、その場合は、障害者が利用するために必要な方式での公衆への提供がされている場合には、権利者に無許諾で、許可無く複製ができないという風に規定をされていますが、読み上げソフト等が逆に組み込まれていたりすると、これはダメだということになるんでしょうか。

○高塩次長 この先生から再三ご質問でございますただし書きの主旨というのは、権利者が、自ら障害者に対応した形で著作物の提供が行われている場合にはですね、権利制限を適用しないとするものでございますけれども、こうした主旨に照らせばですね、必要な方式の複製物が形式的に存在すると致しましたとしても、その著作物を実質的に障害者が入手できないような場合にまでただし書きの適用があるという風には考えておりませんので、そういう考え方に立ちまして、ケースバイケースでございますけれども、考えて参りたいと思っております。

○高井委員 ありがとうございます。先ほどご答弁頂きました通り、どうしても入手できないとか、絶版になっているなど、どうしても高くて買えないとか、買いに行けないとか、いろんなケースが、障害者の皆さんにあるかと思いますけれども、そういう場合はできるだけ斟酌をしながら広く適用して頂けるようによろしくお願い申し上げたいと思います。例えば、図書館が、独自に作成をして、それをボランティアの方が音読する、それを例えばテープに取るとか、個々一つ一つやっている場合も図書館によってはあると思います。そういう場合への制約はかからないということで対応よろしくお願いしたいと思います。次に、今回、国立国会図書館のバリアフリー化という条項が入りまして、この点についての質問に移らせて頂きたいと思います。今回は図書館長の長尾館長自らお越し頂きありがとうざいました。かなり積極的にご発言をされているようですので、是非この場でも意見開陳をお願いしたいという風に思っております。今回バリアフリー化ということで条項が入りまして、電子図書館のアーカイブの電子図書が、活字が画像として表示されておりますので、視覚障害者が使う音声読み上げソフトには対応していないと伺っております。ですから、そのスクリーンリーダーなどの音声読み上げソフトを利用する視覚障害者にとって見ると、独力で内容を知ることができないということになっておりますが、社会福祉法人の盲人福祉委員会などから、私の方にも、是非、電子図書館アーカイブも文字として認識できる形式で提供して頂いて、私たち視覚障害者も、拡大文字で読書したり、合成音声で聞くことができるようなホームページにしてもらいたいというご要望もあるのですが、この点いかがでしょうか。

○長尾真国立国会図書館館長 あの、国立国会図書館がインターネットに提供致しますサービスのうち、ホームページによる各種の情報提供と書誌情報の検索サービスにつきましては、文字データである部分については原則として音声読み上げソフトに対応できるようになっております。しかし、電子図書館アーカイブにある本文情報の提供は現状画像情報によるものでありまして、対応するテキスト情報は作成していない訳でございます。その理由は、これまでの対象が明治大正時代の古い資料が中心でありまして、旧かな旧時代資料のテキスト化には多大の費用と労力が必要だからであります。また、刊行年代の新しい時代のテキスト化につきましてては、出版関係者等から商業活動に影響を与える可能性が有るとして強い反対意見が出されています。国立国会図書館と致しましては、昨年度の出版関係者、著作権者等との数回の関係者協議の場を通じまして、利用提供の範囲、条件につきまして合意形成を図る努力を重ねて参りましたんですけれども、テキスト化につきましてはなかなか抵抗が強くて音声読み上げソフトに対応するのは当面難しい状況だということでございます。残念なことではございます。

○高井委員
 確かに、私も昨日通告の段階でいろいろお聞きしまして、昔の資料、明治大正時代の資料、旧字体の資料もなかなか難しいという風にお聞きしましたし、まあ、これから、この電子図書にして行くことに関して、かなりお金も手間暇もかかって行くものと思いますが、ただ、デジタル技術がここまで進んでいる時代において、私はもうちょっと、最近の図書でもどんどん新しく早くできていくものかと思ってたんですが、やはり人手も時間もかかって行くことではありますが、これから是非前向きに検討して行って頂きたいと思います。障害者の権利条約も採択されて、2010年の国民図書年に向けて、図書のバリアフリー化を目指す運動も全国で始まっておりますので、子供たちの読書活動や障害者の皆さんも含めて分け隔てなく情報が手に入りますように、技術的にはこれからできて行くのだと思いますので、我々も含めて努力して行きたいと思いますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。申すまでもなく、教育基本法にも、障害のある者が、その状況に応じて、教育上の必要な支援を講じなくてはならないと規定されておりますので、予算もかかることと思いますが、是非、この点についてこそ、是非、進めて行って頂きたいと、国会の方の意思として予算もつけて進めて行きたいと、私どもの党は少なくとも思っておりますので、よろしくお願いをしたいと思います。そして、今回の改正で、今後、図書館の方で、全ての図書について電子化を進めて行くという風なご予定だと思いますが、アーカイブ形式が促進されるということにおいて、どのようなペースでこれから進めて行かれるのか、この電子保存されたアーカイブ資料は国民の皆さんにどのように活用して頂くご予定があるのか、教えて頂きたいと思います。

○長尾館長 現在国立国会図書館が所蔵する明治大正期の刊行図書を電子化してインターネット公開する事業を行っておりまして、これは14万8千冊を画像情報の形で提供中でございます。それから、国立国会図書館におきましては資料電子化の基本計画を作成しておりますけれども、平成21年度補正予算案では、計画を加速致しまして、図書等の大規模なデジタル画像化を進めるために関係経費127億円を要求しております。これにより、デジタル化すべき図書約400万冊につきましては、その内4分の1が画像形態での電子化がされる見込みでございます。全部やるためにはこの4倍の資金が必要でございますし、さらに雑誌の電子化につきましても同程度の資金が必要であると考えております。で、作成しました電子情報の利用につきましては、原資料の資料の保存の観点から、在館利用者に対して館内提供をするということとともに、今後、出版関係者、著作権者との協議を通じて、さらに利便性の高い利用の仕方を実現するべく努力して行きたいという風に思っているところでございます。

○高井委員 長尾館長、今模範答弁をされましたけれども、館長自身は、いろいろと電子図書館構想等もご検討されているということを報道等で聞きかじりました、もし可能ならばそれを開陳してもらいたいと思いますし、私が新聞報道等で読んだのは、出版社から例えば有料で本やデジタルを購入して、それを外部利用者が利用したい場合には、利用料を頂き、例えばそれを中継役として、単に利用料を単に出版社の方に渡すと、営利目的のものはできないので、単に中継役として、アーカイブを持っている、外部利用者から利用料をもらって出版社に渡すと、そうした構想もお持ちだと伺いましたけれども、これが是非可能であるなら、前向きに検討して頂きたいと思いますし、少なくとも、出版社であったり、図書館の側であったり、利用者の側が、協議をして、現状の枠組みの中でもできるという風にお聞きしたのすけれども、今どのようなお考えで、検討状況にあるのか教えて頂ければと思います。

○長尾館長 あのー、図書館の資料をデジタル化しまして、日本中の人たちに遠いところからでもインターネットを通じて利用して頂くということは理想のところでございますけれども、これを無料でやりますと、出版社あるいは著者が成立しないというところに追い込まれる危険性がございます。日本の文化というのはやはり著者、出版社がしっかりと進んで行く、そして図書館と協調して行くということがなくてはいけない訳でございますので、そういうある種のビジネスモデルを作って行く必要があるのではないかと思っております。これは大雑把に申しますと、音楽のダウンロードで、皆さんがイヤホンで聞いておられる、その時お金を適当に払うというようなモデルでございますが、図書館はあくまでも無料で全ての情報を提供するというのが基本でございますので、お金につきましては、これは、ダウンロードするわずかな金額を集めてこれを出版社あるいは著者に還元するような第3のセンターみたいなものを設けまして、これをうまく活用して、えー、全ての人にこのデジタルな著作物の提供をするということをしてはどうかということを提案しております。で、図書館としましては無料でそのデジタル情報をその外部のセンターなんかにお渡ししまして、そして、そこから要求のある読者に渡すと、こういうモデルを考えておりますが、こういうことにつきましては、著者、出版社あるいは利害関係者と今後良く議論をして、両者が納得する形で作って行ければという風に思っておりまして、今後努力をしたいと思っております。

○高井委員 私はこれから出版社等もまた利用者の利便に資するためにも、すごく前向きな新たなビジネスモデルを提案される館長の姿勢は私はすばらしいと思っておりまして、是非、関係者の方と議論しながら、より前向きに検討を進めて行ってもらいたいと思います。館長おっしゃった通り、私も、徳島でありますけれども、父もちょっと病気をしまして遠くまで外出できません。でも、地方にいても、高齢者であっても、どこからも最新の情報を手に入れられるというのは、そこからお金を払って手に入れられるというのは、本当にすばらしい、技術の発展によりそれができるようになったというのは、私はすばらしいことだと思っておりますので、そうしたビジネスモデルを前向きに検討して行ってもらいたいと思います。今回の改正の中で、聴覚障害者のために、映画や放送番組への字幕や手話の付与を可能とするということも盛り込まれておりますけれども、レンタルのDVD映画等にも義務づけをして頂きたいと運動して来た、バベル、字幕の願いをつなぐ市民の会、今日もお見えになっておりますが、こうした方々からも、様々な期待を持たれております。これまでは、著作権者と映画事業者のコスト負担がネックになっているところもございまして、これはむしろ産業政策の方かも知れませんけれども、できる得る限り、いろいろな形で後押しがして行けるように多くの関係者と協力しながら進めて参りたいと思います。最後の質問になりますけれども、本改正の主旨を、広く国民に周知徹底をして行って頂かなくてはならないと思いますし、最近は、大学のレポートなんかでもコピペという、ウィキペディアからとってそのまま貼付けしたりすということが増えているという話も聞きますし、新聞や週刊誌といったプロの世界でも著作権法違反ということがしばしば問題になります。こういう現状を見るにつけ、冒頭申し上げたように、インターネットという手段を通じて、国民みんなが著作権の利害関係者、利用者となるという立場の中で、著作権の教育の必要性というものに対して、もしかしたら高校生レベルからでも必要ではないかと感じておりますが、大臣はいかがお考えでしょうか。

○塩谷大臣 ご指摘の通り、情報技術の発展によって、国民に広く著作権に関する知識を周知することが必要だと思っておりまして、文部科学省としましても、国民に対する普及啓発事業として、著作権に関する様々な質問に、インターネットを通じて答えるシステムを現在開発しておりまして、運用して行きたいたいと思っております。図書館の職員、教員、一般の方々を対象とした各種講習会の実施に取り組んでいるとことでございます。また生徒や教員を対象にした多様な教材等の作成、配布やホームページを通じた提供など実施して来たところでございますが、特に、平成21年度3月、今年3月ですが、高等学校の学習指導要領の改正において、著作権に関する記述を充実しまして、従来の情報に加えまして、音楽や技術等についても、著作権について指導することとしたところでございます。著作権に関する教育、普及啓発に関しては一層の充実を図って参りたいと考えております。

○高井委員 ありがとうございました。

○岩屋委員長 以上を持ちまして、高井君の質疑は終了致しました。次に松野頼久君、松野君。

○松野頼久委員(民主党・無所属クラブ・熊本県1区)民主党の松野頼久でございます。今日はですね、当文部科学委員会におきましてこうして質問の時間を与えて頂きましたことを委員長、各党の皆様に心から御礼申し上げる次第でございます。早速質問に入りたいと思うんですが、あのー、今年の2月の27日、今日あの公正取引委員長に出席を頂いているんですが、その音楽著作権協会に対して排除命令を出されたということを聞いております。この件についてちょっと若干伺いたいと思うんですが、私も実は学生時代、テレビ局の製作の現場でアルバイトをしていたことがあります。そういう経験から今回の排除命令に非常に違和感を感じたんですね。といいますのは、その、放送事業者、テレビ局の製作の現場では、少なくとも、この曲は、ジャスラックが管理している楽曲だから使いやすいから使おうとかですね、この曲は違う事業者が管理している楽曲だからこれは使うなとかですね、という会話は全くないんですね。で、今回もこの質問に当たって、何人かその知り合いのテレビ局のプロデューサーにヒアリングを致しました、やっぱりこういう現状があるんですかと、どうしてもジャスラックの楽曲以外の楽曲について使いづらいから使わないとかそういう状況なんですかということ伺いましたら、そんなことないぞと、まず自分たちは曲を選ぶ責任者として、これはジャスラックだからとか、これはジャスラックじゃないからとかいう、少なくともそういう選別をした一覧表さえ見たこともないし、そんなことを考えて番組なんか作っていないと。一番考えるのは、まず視聴者にどういうイメージを与えるか、いいイメージを与える曲を選びたいと、そしてそれが自分の作る番組にどういうイメージになるのかと、そういうことだけを考えて、わずか1曲何万円か、数万円か分かりませんけれども、そんなことを気にして番組を作っていないよというのが、やはり現場の実態なんですね。で、確かに、シェアが90数%と高い、そのシェアが高いからこれは私的独占である、その状況だけを見て私は排除命令を出したんではないかという気がしてならない訳です。今日は理事会において承諾を頂いて、その排除命令の文章を配布させて頂きました。この違反行為の概要のところの2番、管理楽曲が放送事業者の放送番組においてほとんど利用されず、また、放送等利用にかかわる管理楽曲としての放送等の利用が見込まれる音楽著作物を、ほとんど確保することができないことから、非常に排除命令にこのほとんどという言葉に違和感を覚えるんですけれども、これは一体どういう根拠でこういう文言になったのか、またどういう状況でこれを調査されたのかということを教えて頂けないでしょうか。

○竹島一彦公正取引委員会委員長 お答え致します。今松野委員が、プロデューサーというのは、そういう誰が管理している楽曲かということにはとらわれずにですね、必要なものを選ぶとこういうことをおっしゃった訳ですが、プロデューサーのレベルは私は良く分かりませんが、少なくとも今回調べた結果そうでは無いと、その、管理しているほうでしょうか、要するに経理のほうなんでしょうか、著作権使用料について管理している放送局の部門から、具体的にはこれはエーベックス、イーライセンスが管理楽曲として扱っていた、エーベックスの関係の楽曲について、これを使用しようとする動きがあったのに対して、そういうことをすると、追加負担が生じると、著作権使用料を余計に支払わなければならないと、だからダメだと、そういう社内における通知なり通達なりががあったと、そういうことがあって、3ヶ月くらいはじゃあ無料で結構ですということまでやったんですけれども、その先が見えないと、結局、まあ使われることに至らずということがあった訳です。で、したがって、これ、ほとんどと書いておりますが、事実上100%に近いということで、100%と書けないからほとんどと書いている訳でございまして、まさしくですね、放送局向けの管理楽曲の許諾ないし利用の使用においてですね、ジャスラックが文字通り私的独占、特に新規参入、平成13年と記憶してますが、この管理事業法ができてですね、新規参入ということが道が開けて、現に手をあげた業者がいて、かつ管理楽曲も確保したにも関わらず、それが放送局において使われることにならなったという事実がある訳でございまして、これはまさに排除型の私的独占に当たるというのが我々の判断でございます。

○松野委員 この独占禁止法第3条、事業者は私的独占、要はこの場合の事業者というのは著作権管理会社だと思うんですね、事業者は私的独占又は不当な取引制限をしてはならない、この第3条に基づいて、今回の排除命令が出されているということであります。それは、あの放送事業者側の問題を今おっしゃっているんではないかと思うんですね、要は、例えば今回で言うと、ジャスラック側が何か私的独占をするとか、これを使わないと一切うちは取引をしませんよとか、何か不当な取引制限をされたという事実はあるんでしょうか。

○竹島公取委員長 おっしゃる通り、これは放送局側がどういう反応を示したかということを今申し上げた。その反応が、その原因を作ったのが我々が見ている、ジャスラック、その原因は何かというと、放送事業収入×契約上は1.5%の利用料を取りますよと、何回使おうがそれで結構でございますと。その結果としてですね、利用割合、逆に言うとその放送局で使われている全管理楽曲に占めるジャスラックの利用割合、我々は利用割合を加味するべきだということをこの命令で言っている訳ですが、そういう風に致しますと、別途イーライセンスのようなものが出て来た場合に、それを使おうとする場合に、それを使ってもですね、追加負担という問題が起きないで済む可能性があると。今はジャスラックのものであれば、もう放送事業収入×1.5%、実際はもうちょっと低い率だと思いますが、それさえ払えばもういい訳なんで、あと別な者と契約しようとすると放送局は追加負担が発生する、追加負担がかかると放送局としては困るもんですから、そうものは使うなということにここでなっちゃいます。したがって、利用割合を加味して下さいと、1%でも2%でも良いのですが、98なり99なりそれはやってみなければ分からないんですが、新規参入者の分が反映されるような、利用割合を加味した徴収、同じ包括徴収であっても、利用割合を加味して頂ければ、今申し上げたような放送局側の反応は無くなるでしょうと。ただ、申し上げておきますが、これは、現行の1.5%で徴収している利用料総額というものが一定、これが正しい、これを維持すべきだということを我々が言っている訳ではありません。それはまさに交渉でですね、当事者同士がお決めになれば良いことです、だけど、利用割合を加味して下さい、そういうことだけ言っています。そういうことが行われた結果、総額としての利用料、利用料総額が増えるか減るかこれは分かりません。これはまさに競争に基づく当事者同士の契約でどうなるか決まって来る訳でございまして、いずれにしても、新規参入者が、利用者側から見てそれを使ったら損だといういうような契約内容をジャスラック側が、これは契約の片方の当事者である訳で、一方に放送局がいる訳ですけれども、そういう契約内容を見直しなさいと言っていう命令をしている訳です。

○松野委員 いやあの、ですからね、ジャスラックが私的独占又は不当な取引制限をしたならば、ジャスラックに対して排除命令を出すことは当然だと思います。ただ、先ほどあげられた、排除命令を出された事実は、それは放送局側の内部通知があったからジャスラックに排除命令を出したんだという、それはちょっと違うんじゃはないかと思うんですよね。この条文によると事業者は私的独占又は不当な取引制限をしてはいけない、ジャスラックが私的独占又は不当な取引制限をしたならば、ジャスラックに対して排除命令を出すのは適当だと思うんですけれども、今回はジャスラックは何も私的独占もしておりませんし、不当な取引制限もしてない訳です。何故ジャスラックに排除命令が出たのかというのは、僕は非常に疑問なんです。ちょっと文科大臣にお聞きするんですけれども、この包括契約というのは世界的に見て日本が独特な契約なんでしょうか、僕は諸外国でほとんど包括契約だと思うんですね。放送事業者と著作権管理者の契約というのは、諸外国もほとんど包括契約をしていると思うんですけれども、その辺ご答弁頂けないでしょうか。

○高塩次長 先生ご指摘の通り、諸外国におきましては、放送事業者が管理事業者に支払う放送使用料につきましては、ほとんどの場合が、欧米先進国も含めまして、ほとんどの場合、包括契約に基づいて行われているとしていると承知しております。

○松野委員 あの、委員長、今聞いて頂いた通りなんですね。要は、諸外国で見ても、ほとんど1曲1曲を放送事業者が、この曲を使いました、これに対する著作権料はいくらです、この曲を使ったんでいくらです、1曲ずつやっている国はほとんど無いんです。どこも包括契約なんです。だから例えば私が今回感じたのは、ジャスラックはジャスラックで包括契約する、新規参入事業者は新規参入時業者でまた別途包括契約をすれば良い訳ですね。決して現場のプロでジューサーにヒアリングしたところ、売れている曲はどこが著作権を持っていても使うんだよと、包括契約があるからと言って絶対に入り込めないような状況じゃあ無いということを何人も証言しているんです。にもかかわらず、先ほど申したように、ジャスラックが私的独占又は不当な取引制限をしていないにも関わらず、そこをしている確認はできているんですか、委員長。

○竹島公取委員長 私どもが言ってますのは、ジャスラックが例えばイーライセンスに対して何か妨害をしたとか排除したとかいったことでは無いんです。このジャスラックが放送事業者側と結んでいる契約、自分のところの利用割合を反映しない、そういう契約を結んでいる行為が排除型私的独占行為に当たると言っているんです。

○松野委員 いや、あの、だからジャスラックが例えばその私的独占をしたり、包括契約をしてうち以外を使ったらばそれはもううちとの取引を止めますよとか、そういう不当な取引制限をしたならば、ジャスラックに対して排除命令が出るのはこれは理解できるんですよ。でも、そういう事実は無い訳ですよね。そういう事実は無いにもかかわらず、この包括契約が他を排除しているから、ジャスラックに排除命令を出したとおっしゃっているんですが、諸外国は皆包括契約なんです。ドイツでは、包括契約をしなければならないと法律で著作権法で決めているんですね。アメリカでも2社が包括契約をしている。ほとんどの国が、1社なり2社という非常に狭い著作権管理事業者が包括契約をしているんです。日本だけそれはダメなんだ、排除命令なんだと、これは私的独占なんだとおっしゃることに、僕は非常に違和感を感じている訳です。で、今回の排除命令で、例えば、じゃあ、公取としては、じゃあ今後どういう風にすれば良いとお考えなんですか。

○竹島公取委員長 今のご質問にお答えする前にですね、私どもも外国において包括契約が行われているということは承知しております。アメリカにおいては、今から数十年前から大変な問題があって、アメリカは確か著作権管理事業者として大きなのが3つあるはずですが、それで包括契約も確かにありますが、パワープログラムちゅうんでしょうかそうじゃないものもありましてですね、それからトラブルがあった場合は、いわば仲裁委員会みたいなもの、料率についての仲裁委員会みたいなものもあって、それで現実に競争が排除されているという状態では無いんだと思うんですが、同じ外見上ですね、ドイツなんかは物の考え方が違うのかも知れませんが、少なくとも日本においては、平成13年に管理事業法を作られて、いわばその1社独占から、そうじゃない新規参入を入れて良い競争をさせることによって、権利者の立場も守り、利用もよりよいもの、より安く利用できるような、そういう条件を整備したはずなんですね。ところが、この契約、こうした利用割合を加味しない契約があるが故に、日本においては少なくとも、全然競争が起きていない、新規参入もない、放送の利用分野においてですね、新規参入はありません。イーラセンスがやろうとして、それが排除されて、それ以来私は無いと理解しておりますが、したがって、あれからもうずいぶん経っているにも関わらず、そういった状態になっている。それは、利用割合を反映して下さいと、利用割合を反映させるために全数を全部把握するということは大変でございます。それは分かります。包括契約の良い点があるということは、十分我々も理解しています。包括契約を止めて下さいとは言っていないんです。言っていないんだけれども、利用割合を加味するようにして下さいと。それは私はできると思っている。今キー曲はもう全数的に把握して、どの曲をどれだけ使ったということをジャスラックさんに報告をしているはずです。それから、それ以外のところも、権利者に対してそのロイヤリティを分配するときに、どなたにいくら払えば良いか分からないんでその目安にするためにサンプル調査もしておられるはずで、精密な利用割合ができなければ、いわばその推計値というようなことは、現実に分配するときにはそういうものが必要な訳ですから、やっている訳なんで、そうした数値を入れるということもことりあえずはできるはずですし、行く行くこれだけ進んでいるそのコンピュータその他が進んでいるときにですね、少なくともキー局は、もう全曲把握して報告もしていることでもある訳なんですから、もっと精密な、誰の曲を何回鳴らしたということはですね、把握できる訳でございますから、ますます精緻な利用割合というものが計算できるようになるはずなんです。そうしたことをお考え下さいと。そのためにそれなり時間が必要でしょう、それは分かっております、常識的に必要な時間は使って下さいと。それから、相手方がある話しですと、放送局側がどういう反映するかによっても変わってくるけれども、そこはまず私どもが指摘している、この、その利用割合を反映しない包括契約というものをですね、直すということで交渉して下さいと、こういうのが公正取引委員会の立場でございます。

○松野委員 そうすると、じゃあ利用割合を割り出して、今のジャスラックとの包括契約のいくらか分かりませんけれども、まあ、いくらの中から割合分で、その新規参入業者に、使ったか使わないか分かんないけれども、今後はその割合で新規参入業者にその割合分を払いなさいと、包括契約の中のお金を外の新規参入時業者に分配をしなさいということですか。

○竹島公取委員長 そうじゃございません。オールジャパンでパイが一定ということではないんです。これはそれぞれの管理事業者が相手方と交渉してお決めになることです。ジャスラックが放送局とお決めになって引き続き包括契約なされれば良い、そのとき利用割合を聞いて下さいと、一方、例えばイーライセンスなり他の管理事業者がいたときにそこともまた包括契約ということもあるでしょう、なされば良い。そういうことでありまして、全体のパイ、今ジャスラックが得ている利用料収入の一部を割愛して誰かに渡して下さいということを言っている訳ではありません。

○松野委員 いや勿論、さきほどからおっしゃっているイーライセンスという会社もですね、僕はすばらしい会社で、今は聞くところによると、インディースという、そういう割と珍しいアーティストの曲を何千曲も今管理をされて、また僕は、それはそれで伸びてくるんだと思うんですよ。それが伸びてくるのは伸びてくるで非常にいいことだと思うんです。また時代を反映して、違う形のマーケットができて、またその事業者も伸びてくると、今あるジャスラックはジャスラックで勿論同じように伸びてくる、それが、僕は、対等な競争で良い事なんではないかと、決して、新規参入業者を排除したとかいう事実は今認定をされてない訳ですから、自由競争の新しい分野をどんどん新規参入業者が広げてくるということで、僕は、何も公取が入って、こうしなさいとか、こうしなさいというようなことでは無かったんじゃないのかなと思っています。自由な競争の中で、世界では、ずーっとそういう形界で、包括契約も当然認められるし、新しいところも、沢山の楽曲を1曲ずつ割り出すのが大変であれば、新規参入業者と放送事業者はまた包括契約をすれば良い。それ以外にも面白い管理をする新規事業者が出てきたならば、またそこも数が沢山になって1曲ずつ出すことが大変であれば、またそこも包括契約をすれば良い。これが、僕はある程度自由な競争なんではないかという風に実は思っているんです。そういう中でいや寡占率があまりにも高いからという事象だけを僕はご覧になって、だから独占しているんだと、だから排除命令をなんだとされたような気がしてならないんで、実は今日こうした質問をさせて頂いている訳です。今何回伺っても、さっきの、えー、法律のですね、ジャスラックが、独占禁止法の第3条に当たる、事業者は私的独占又は不当な取引を制限してはならないに違反しているという事実が無いんですよね、委員長。

○竹島公取委員長 先ほどご答弁申し上げましたように、そういう利用割合を全然加味しない、そういう契約をしたことが排除型私的独占に当たると申し上げているんです。したがって、ただジェアが大きい、よって何か違反だとかそんなことは一切申し上げてません。大きいことが悪いこと必ずしもありませんので。それがこういう契約をすることで、現にイーライセンスという者が参入しようとしたけれどもできなかったという事実がある訳なんで、ただ我々も机上の空論を申し上げている訳ではない。そういう事実があったんで、これは、この契約が、まさに排除型私的独占に当たる、で今委員がおっしゃるような自由な競争、確かにどれもこれも皆さん頑張って包括契約結ぶなら結ばれれば、平成13年に管理事業法ができて、そういう状態が8年経っても一切できていないということに見られるように、決して、今先生がおっしゃったような状態は起きていないと、大きな原因はここにあると、少なくとも、大きな原因の一つがあると見ているんです。

○松野委員 いやいや、そんなことは無いんじゃないんですか。新規参入事業者が管理をしている売れた曲名、僕も聞きましたけれども、テレビでばんばん流れているじゃないですか。あの僕も現場のプロデュサーに聞いたんですが、僕ら使うよと、使っているよと、現に流れているんですよ、委員長、これが全部全くテレビから流れていなくて現に排除されていて、テレビから100%排除されているなら分かります。ただ当然ジャスラックが管理している曲の数と新規参入事業者の管理している現在の数の割合が圧倒的に違うから、新規参入事業者の管理している楽曲の流れる割合が当然低くなるんですけれども、全く流れてないですか、委員長。

○竹島公取委員長 私どもが調べた範囲でですね、特に何回も例に出して恐縮ですが、エーベックス、イーライセンスが扱おうとした管理楽曲、これについて具体的な排除効果が及んだということは我々把握しておりますし、それから冒頭申し上げましたように、放送局の中において、別の管理事業者の曲を使おうをしたらそれはいけないと、追加費用が発生するから使うなと、こういうことになっている。コマーシャルとかなんか使われているものと違う可能性がありますね。コマーシャルでは使われている、それは別な著作権使用料の支払いの形になっている場合があると思いますんで。放送局が流すということに関しては、私が知るところ、ジャスラックの管理楽曲以外は流れていないと理解しております。

○松野委員 まああの概ね時間が来てしまったので、これしかできなかったんですが、何でこんな私は質問をさせて頂くかと言いますと、今日本の音楽にしても、映画にしても、アニメにしても、もう世界的にものすごいレベルにまで達しているんです。特に東南アジアを中心にですね、東南アジアどころか、映画なんかはもうアメリカ本土でも、日本の映画のリメイクをしてですね、ハリウッドが映画を作るような時代にまで来ているんですね。すごく世界標準ということが僕は求められるんではないかという風に思うんです。それで以前から、輸入CD還流防止法案だとか、コンテンツ法案だとか、今回も経済産業の方では、また新しい、コンテンツの管理事業を国が後押しをして作ろうなんていうことを言っている、非常にこのソフトのビジネス、このエンターテイメントのビジネスというものが世界的にものすごく外貨を稼げるんじゃないかと、それくらいのレベルに達しているんで、逆に期待をしているんです。そういう中で、その勿論新規参入事業者もどんどん伸びてもらいたい。いろんな業者が、いろんな管理業者が楽曲を管理して、今度は世界になるともっと著作権の管理はより複雑になってくると思うんです。そういう中で、ある程度世界基準の中で、きちんと日本が、今回の著作権法改正もそうですけれども、きちんと著作権が管理できる状態をまず今固めておかなければならない状況に来ていると思うんですね。世界で日本のアーティストが演奏している音楽が流れる、映画が流れる、そして、その著作権が日本に入るという、こういうことを是非後押しをして行きたいという風な思いがあって、今日あえて、この質問に立たせて頂いたんですけれども、そういう中で、世界的に見て包括契約をほとんどの国をやっていると。で、当事者に対する不当な排除行為が見受けられない状況で、包括契約が新規参入時業者を排除していると、だから、ここに排除命令を出したんだということが、どうも腑に落ちなかったんでですね、今回質問に立たせて頂きました。今日、当委員会にわざわざ委員長にお越し頂きまして、ありがとうございます。議連で一人でやっているときに、いろいろお話を聞かせて頂いて、非常に斬新な考え方をお持ちの委員長で、非常に期待をしているところでございます、どうか今後、是非、そういう観点から私たちもやって行きたいと思って行きますんでよろしくお願い致します。当委員会におきまして、お時間を頂きましたことを心から感謝申し上げまして質問を終わらせて頂きたいと思います。ありがとうございました。

○岩屋委員長 以上で松野君の質疑は終了致しました。次に川内博史君、川内君。

○川内博史委員(民主党・無所属クラブ・九州ブロック)おはようございます。川内でございます。委員長や理事の先生方にお許しを頂きまして、当委員会で発言の機会を頂きましたことにまず心から感謝申し上げたいと思います、ありがとうございます。それでは早速質問をさせて頂きます。著作権法第1条には、この法律は、著作物並びにレコード、放送及び有線放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的とするとこう書いてございます。えー、文化的所産の公正な利用に留意しつつ著作者等の権利の保護を図ると、利用が先で、保護が2番目に来るというこの目的規定、それが文化の発展に資するのだということになろうかという風に思いますが、えー、その著作者、著作物を創造する人たちも最初は著作物の利用者であったと、今はもうインターネット時代で、全ての人がクリエーターで全ての人がユーザーであるという風に言えると思うんでございますが、そこで、この著作権法が非常に大事になる訳でございまして、だからこそですね、私自身はこの著作権に関する議論に関して、私自身は利用者の立場に立っていつも議論するようにしております。それによってバランスが保たれるのじゃないかなあと感じております。ます聞かせて頂きますが、今回の著作権法の改正では、利用者の立場から見て、非常にああこれは問題だなあという風に思うのは、30条の私的複製に関してですね、違法にアップロードされているサイトからダウンロードすることは違法ですよという、まあ、私的複製は著作権法上30条で元々どんなものであれ合法だよという風になっていた訳でございますが、今回の改正でダウンロードが違法化されるということでございますが、まず文化庁にお伺いしますけれども、私的使用のためのダウンロードを違法とする規定を設けるに至った立法事実が何なのかということをご説明頂きたいと思います。

○高塩次長 今回30条の改正をおこないましたのは、近年ですね、インターネットの普及、それから大規模な高度化を踏まえまして、特に携帯電話向けの違法音楽配信サイトやファイル交換ソフトによりまして違法に配信される、音楽や映像作品を複製、ダウンロードする行為が正規の配信事業を上回る規模になっていると、こういった指摘がございまして、そういった指摘を踏まえて、今回著作権分科会で審議をした結果、今回の法改正につながっていると考えております。

○川内委員 指摘があって、それを踏まえてそれを踏まえて法改正をしたと、その指摘をしていたのは誰ですか。

○高塩次長 今回審議会におきましては、様々な資料を検討した訳でございますけれども、それにつきましては、権利者団体でございます、日本レコード協会、さらに財団法人のコンピュータソフトウェア協会などの実態調査結果というものを元に、審議会の方で検討したということでございます。

○川内委員 今あのレコード協会などの業界団体の指摘に基づいて、それを立法事実として審議会で議論をして法改正をしたという風なご説明だったかと思いますが、私は、その権利者団体の指摘に基づいて、著作権法を改正します、新たな権利を設けます、損害賠償を請求する権利を設けますということに関してですね、これはあの非常にネットユーザーを不安定な立場に置く訳ですね、これ損害賠償請求がいつ送られてくるか分からないという状況になる訳でございますから、これはあの手続き的にも厳正にすべきではないかという風に考えます。文化庁からのご説明では、仮に損害賠償請求権の権利行使を行う場合には、事前に警告を行うなど慎重な手続きを取るようにに努めるはずであると、権利者はですね、あるいは権利者団体はそのようにするはずであると説明を受けておりますけれども、文化庁としては、これは法律ができればそれはそもそもそういう権利がそういう権利が創設される訳ですから、法律上はいつでも損害賠償請求ができるということになる訳でございまして、これは、どのように関係団体に指導されるのか。明確にですね、議事録に残したいという風に思いますが、お答えを頂きたいと思います。

○高塩次長 今回の法改正におきましても、権利者団体側におきましても、今回の法改正におきまして、先生からご指摘のございました、利用者への法的な措置、損害賠償をいきなり行うというよりはですね、違法ダウンロードというものが適切でないということを、権利者団体としてのホームページやマスメディアを通じますものを周知致しまして、今の違法なインターネット配信の状況をですね、改善するということに努めたいと、また違法行為を助長するような行為の警告につとめたいということで、権利者団体がいきなり利用者に対して先生ご指摘のございましたような損害賠償を請求するということは基本的にはないと考えております。また、先生もご承知のように、インターネットにつきましては、あるサイトからダウンロードを行っているということについてですね、それを発見することが技術的に困難でございます。ご承知のプロバイダー責任制限法におきましても、サイト運営者に対するダウンロードの個人情報の開示の手続きというものはございませんので、ダウンロードを行う利用者を特定するということは困難ではないかと考えております。ただ、私どもとしては、今回この改正を踏まえまして、先生がご懸念しているような恐れを軽減しなければならないという風に考えておりまして、文部科学省と致しましても、利用者への改正内容の周知徹底、違法サイトを識別するための権利者団体による取り組みの支援に加えましてですね、権利者団体に対しまして、仮に権利行使を行う場合には、先生ご指摘のございましたような、事前の警告を行うなど、慎重な手続きを取るよう指導をして参りたいと思っております。

○川内委員 もう一つ条文の解釈を明確にしておきたいと思うんですけれども、47条の8で、電子計算機における著作物の利用に伴う複製、というところがございます、これ分かりやすく言うとですね、ユーチューブとかあるいはニコニコ動画とか、最近あのもう沢山の人がユーチューブあるいはニコニコ動画にアクセスして、それを、まあ、音楽やあるいは動画を見るということをしている訳でございますが、これは、パソコンていうかコンピュータは使い勝手が良いように自動的にキャッシュという形で見たものを複製するという機能を持っている訳でございまして、これなどもですね、ユーチューブやニコニコ動画を見ただけで、これが違法になってしまうというようなことが想定をされてしまうようでは困るということで47条の8が置かれているのだろうという風に思いますが、どのような手続きでアップロードされているものであろうと、ユーチューブとかあるいはニコニコ動画等でただそれを見るだけでは違法にならないよと、見るだけなのは違法ではないですよにはということを、明確に、47条8の解釈を明確にして頂きたいという風に思いますが。

○高塩次長 先生ご指摘の通りでございまして、この法律案では、動画投稿サイトなどにおきまして、違法投稿された動画を視聴する際にコンピュータ内部に作成されるキャッシュ、情報の蓄積物については、この改正案の47条の8項に盛り込まれております、電子計算機の著作物の利用に伴う複製に関する例外規定をおいておりまして、権利侵害にはならないという風に考えております。ただ、こういったキャッシュをですね、さらにキャッシュホルダから取り出して、別のソフトウェアで視聴したりとか、別の記録媒体に保存したりする場合には、例外規定は適用されず、原則通り著作権が及ぶと解しております。

○川内委員 見るだけだというのは全然問題ないと、今回の対象にならないよということですよね。もう一度ちょっと。

○高塩次長 そうでございまして、あの、今回30条は、いわゆる違法な配信からのいわゆる録音録画、ダウンロードでございまして、視聴というものは違法にならないということでございます。

○川内委員 これ電子計算機という言葉が使われている訳ですけれども、携帯電話などでもですね、ユーチューブとかニコニコ動画とか見れるはだと思うんですが、携帯電話などのモバイル機器も同様であるということでよろしいですね。

○高塩次長 そのように考えております。

○川内委員 えーと、そのように考えているというご答弁はちょっと。電子計算機という言葉の中には、文化庁、というか政府が優先解釈権を持つ訳ですから、電子計算機という言葉の中には携帯電話等のモバイル機器も含むのだと明確におっしゃっていただけますか。

○高塩次長 あの、47条の8の電子計算機には携帯電話などモバイル機器を含むと考えております。

○川内委員 さて、あの、大臣にお伺いを致しますが、私はですね、この著作権法の運用に当たってはですね、著作法第1条の目的規定、その、先ほども私が申し上げた通り、公正な利用に留意しつつ、権利の保護を図るというところが大事だろうという風に思うんですけれども、えー、大臣のご所見を承りたいんですけれども、消費者、利用者が利用しやすいようにしながら権利の保護を図って行くという、著作権法のそもそもの考え方について大臣のご所見を承りたいと思います。

○塩谷大臣 著作権法については、今川内委員がおっしゃったように、利用者の公正な利用あるいは権利者の保護という観点で、まあ、時代の変化によって情報化等が進む中で、その状況に応じて、いろいろと改正を重ねて行かなければならない、また、世界的な問題もありますし、これから国際的にはいろんな課題がやはり出てきていますので、ただ、基本はおっしゃったように公正な利用と権利者の保護と、このバランスをどう取って行くかということが非常に重要だと思っております。

○川内委員 そこでですね大臣、私は音楽が大好きで、この携帯電話の中にですね、音楽配信サービスで着うたフルというサービスがありまして、40曲くらい入っているんですけれども、全て合法的にきちんとお金を払ってダウンロードをさせて頂いておりますが、この着うたフルというのは異様に高いんですよ。1曲400円とかですね、1曲でですよ、450円とか、安いものでも350円とかですね、する訳でございまして。これは世界中探してもですね、着うたは150円とかあるんですれども、短いフレーズですね、でも1曲まるまるで400円とか、450円とか、これは世界中探してもそんな国はどこにも無い訳でありまして、外国なら1曲大体100円くらいだと思うんですけれども、この着うたフルの日本のこの高さ、1曲400円というのは、いかにも高いという風に思うのですが、大臣どう思われますか。

○塩谷大臣 まあ、着うたフルの値段1曲400円か450円ということですが、これについてはやはり、サービス事業者のビジネスモデルや利用者のニーズ等によってですね、価格が決定されると思いますので、私から、それが高いかどうかは判断する立場にございません。今ちょっと声が少しございましたが、CDなんかで、2曲入っては1000円とか1500円とか、それに合わせて行くとそれくらいかなあという考え方もあるし、世界的にもっと安いということになれば、今後の需要供給等のバランスも、これもまた、いわゆる価格を決定するのではないかと考えております。

○川内委員 まあ、この、モバイル機器に様々なデータを蓄積してそれを利用するというのは、非常に今日本では、我が国では、世界中でもそうでしょうけれとも、ポピュラーなもうライフスタイルの一つになっている訳でございまして、そういう意味では、中学生や高校生が携帯電話を持つことの是非はまた別に議論すべきことであろうかと思いますが、しかし実態としてもう中学生、高校生が携帯電話を持ち、そこに音楽や映像をダウンロードし、そして利用をしているというライフスタイルがあると。で、その時にですね、私は、なるべく安くする方が、沢山の人がそれを買い易くなるし、ビジネスモデルとしてもその方が大きく発展をして行くのではないかと思っておりますが、文化庁のご説明ではですね、大臣のご説明でも、パッケージの商品ですね、CDとかDVDとかですね、物として、物に固定して売るという、パッケージの商品が最近はこういう電子配信などでどんどんシェアを食われて売り上げが落ちているので、その売り上げをカバーするために1曲400円くらいにせざるを得ないのではないでしょうかというご説明を受けているんですけれども、しかし、主に音楽や映像を楽しむ世代が、若い世代であると、主にですよ、中学生や高校生あるいは大学生、あるいは20代30代の世代が、そういうことに最もお金を使うであろう世代であるとすればですね、なるべく安くしてなるべく多く利用してもらうということが、私は文化の発展に資するということになるのではないかという風に思います。そこで、さきほど同僚の松野委員から、公正取引委員会にジャスラックの件について、公正取引委員会の今回のジャスラックに対する処分て言うんですかね、がちょっと違うのではないかという主旨のご発言があった訳ですけれども、私は全く違う観点からちょっと聞かせて頂きたいという風に思うんですけれども、着うたについてはですね、公正取引委員会は、レコード会社各社が、レーベルモバイルという会社に業務委託をし、そして、そこから着うたを配信しているということに関して、行政処分を、不公正な取引方法になるんですかね、ということで処分をし、今、裁判で、レコード会社各社はそれを認めずにですね、争っているという風に聞いておりますけれども、まず、この着うたについてですね、えー、審判事件の概要について公正取引委員会からご説明を頂きたいと思います。

○山本和史公正取引委員会事務総局審査局長 お答え申し上げます。ただいま先生ご指摘の着うたの事件につきましては、公正取引委員会は、株式会社ソニーミュージックエンターテイメントなど着うたの提供業者5社が共同して設立致しました会社に対して着うたの提供業務を委託する一方で、共同して他の着うた提供業者に対しては原盤権の利用許諾を行わないようにしているという行為が、不公正な取引方法でそして禁止しております、共同の取引拒絶に該当するとして、独禁法19条の規定に違反すると判断し、昨年、平成20年7月に排除命令を出す審判審決を行ったところでございます。本件につきましては、ただ今、先生ご指摘の通り、その後会社4社から、審決取り消し訴訟を提起され、現在東京高等裁判所において継続中でございます。

○川内委員 まあ着うたについて、そのようなことであるということですが、着うたフルもですね、ビジネスモデルが一緒なんですね、着うたと着うたフルは全くビジネスモデルが一緒ですから、ああ、まー、そもそもですね、その変な相談でもしていなければ、1曲400円で配信をですね、堂々とやるなんていうことは私はできないと思いますよ、大臣ね、恥ずかしいですからね、1曲400円で、着うたフル1曲400円でしか変えませんというようなことは、お互い相談していなければ、あるいは他の業者を排除してなきゃできないことですから、私は、着うたフルについても、数社が共同で設立したレーベルモバイル株式会社に業務委託をし、また諸外国と比べて異常に高い、価格競争が全く働いていないということなどからですね、この着うたフルの業務が、独占禁止法の第19条の不公正な取引方法、独占禁止法の第3条の不当な取引制限に当たると思料致します。よって、独占禁止法第45条に基づいて、この事実を公正取引委員会にこの場で申告したいという風に思いますが、公正取引委員会は、この申告を受理して頂けますでしょうか。

○山本局長 お答え申し上げます。ただいま、先生のご指摘のありました件については、申告としてお受けさせて頂きたいと思います。ただ、今申し上げました通り、着うたの件では、着うたの提供事業者が共同して他の着うた会社に、利用許諾を行わないようにしている行為を、共同取引拒絶行為として問題としたものでございますけれども、申告して頂きました内容を検討の上、適切に対処して参りたいと考えております。

○川内委員 適切に対処して頂きたいと思います。あの、私はですね、あのー、要するに、その、著作権法の目的、文化の発展に資するということを実現をして行くためには、ネット社会では、全ての人がクリエーターであり全ての人がユーザーであるという考え方の元に、もう、なるべく多くの人にコンテンツが利用できるような環境というものを作って行かなければならないんだという風に信念として思っております。で、世界中どこを探しても、1曲400円で着うたフルを配信するなどということをやっている国は無い訳でございまして、そういう意味では、これはどんな理屈をつようが、それはおかしなことはおかしなこととして、それがなるべく安くなる方向にして、そして沢山売ることによって売り上げをあげてちょうだいねというビジネスモデルを作って頂きたいなという思いで申告をさせて頂きました。さて次に、次にというより、もう最後ですが、日本版フェアユース規定の導入について質問致します。先ほど、大臣からもまだまだこれから多くの課題があるというご発言がございました。まず、知財戦略本部に伺いますが、日本版のフェアユース規定の導入について政府の基本方針をご説明頂きたいと思います。

○内山俊一知財戦略本部事務局次長 お答え致します。知的財産戦略本部におきましては、本年4月6日に、2009年度から2013年度におきます知財戦略の基本方針を決定したところでございます。この中におきまして、委員ご指摘の権利制限の一般規定、いわゆる日本版のフェアユース規定については、著作権法における権利者の利益を不当に害しない一定の範囲内で、公正な利用包括的に許容し得る、権利制限の一般規定の導入に向け規定ぶりなどについて検討を行い、必要な措置を講じることとしております。知的財産戦略本部におきましては、本基本方針を踏まえまして、今後知財計画2009の策定などにおいて適切に対応して参りたいと思います。

○川内委員 導入に向けて検討を進めるということで良いんですよね。ちょっともう一回済みません。

○内山次長 お答え致します。第3期の基本方針の中では、委員ご指摘のように、権利制限の一般規定の導入に向け規定ぶりなどについて検討を行い、必要な措置を講じることとしております。

○川内委員 日本版フェアユース規定の導入についての文化庁の、政府の知財戦略本部、これは閣僚全て入っているか、閣僚は全て入っているんだよね、閣議決定と似たような決定になるんですよね、政府の方針になると、そこでそういう方針が決められたと、でまあ、文化庁としては、日本版フェアユース規定の導入について、それを受けてどのようにされるのかということをちょっとご説明頂きたいと。

○高塩次長 知財戦略本部の方から、日本版フェアユース規定の導入が必要とする報告書が提出されたことについては、今答弁があったところでございます、このフェアユースの規定を我が国の著作権法に設けることについては、アメリカではフェアユースがある訳ですけれども、両国の違いから従来慎重な見解が多かった訳でございますけれども、文化庁と致しましては、知財本部からの報告書の内容も踏まえまして、幅広く論点を整理した上で、今年度から文化審議会著作権分科会において、具体的に審議を始めたいと思います。

○川内委員 最後に、大臣からもですね、日本版フェアユース規定の導入に向けて、大臣としてもですね、文化審議会での議論を加速して頂けるように督励をして頂きたいという風に私は思いますが、大臣のとしてのご所見を聞かせて頂きたいと思います。

○塩谷大臣 著作権法につきましては、文化審議会の分科会で検討して、必要な改正を行って来ている訳でございまして、今、あの、知財戦略本部の報告、そして我々文化庁としても、それを踏まえて、今まで慎重だった訳でございますが、しっかりと実際の今までの運用等、あるいはヒアリング等もしっかりこちらで行って審議を進めて参りたいと考えております。

○川内委員 終わります。ありがとうございました。

○岩屋委員長 以上で、川内君の質疑は終了致しました。次に、和田隆志君、和田君。

○和田隆志(民主党・無所属クラブ・中国ブロック)民主党の和田隆志でございます。民主党もう4人目のバッターでございますので、ここらで法案に対する姿勢も示しながら質疑を進めたいと思います。あの塩谷大臣、我々今回の法案提出を受けまして何度か会議を持ちましたけれども、今回、法案の提出理由、主旨等については、概ね非常に理解できるという結論でございます。しかし、これから先是非賛成して頂くためにもですね、これから30分から大臣の前向きの答弁を頂いて、私どもも、安心して文科省にこの行政を任せるられるよう感触を持った上で採決に望みたいと思います。よろしくお願い致します。それでは、先に立たれました3人の我が党の同僚の委員の質疑も参考にしながら、ちょっと進めて参りたいと思いますが、まず、塩谷大臣、今回のこの法改正の内容、目的等を拝見しました際、大体として、価値あるものが、世の中に適正な対価をもって取引される環境を整えて行くために一歩を記すのだというようなイメージをもって私自身は受け入れた次第です。先ほど来、何度もご議論が出ていますけれども、常識的に言って、着うた着メロが1曲400円というのは、誰が考えても高いという風に、この委員会室の中にいらっしゃるほとんどの皆様方がお感じになることだと思います。では、本当に適正な対価で、どのような形で取引されるのが、正しい姿なのかを考えて行くべきということから、今回の法改正を提出頂いたものと推測致します。実は、党内での会議でも申し上げたのですが、私今回この法案を自分で担当させて頂くに当たりまして、やっぱり国民の皆様方の反応を聞かなければならないと思いまして、一番若い者が集まります渋谷に行って参ったんです。何百人か聞いた上なんですけれども、今ほとんど、高校生、大学生以上の方々が、必ず1曲か2曲か着うたをダウンロードしていらっしゃる、その方々に一つ一つ携帯を見せて頂きながら、このダウンロードは本当に適法なものか違法なものか知っているという風に訊ねると、ほとんどはそんなもの知りませんよとおっしゃるんですね。若い方々です。私自身も不勉強でしたが、やるうちに、これは海賊サイトだこれは適正なサイトだと分かってくるんですけれども、これらについて、そう言った、現にダウンロードしている方々の意識を聞くと、違法でも適法でもいいじゃない、ダウンロードできるんだからていう風におっしゃる若い方々が多いんです。私ども、今、委員も合わせまして皆さんで、文部科学行政、つまり子供の教育という観点から最も大きな重点を置いて審議しなければいけない場でございますが、私たちの将来の社会を将来担ってくれる若い人たちが、一つの道徳規範を持たないまま、大人になって行くことに、私自身は、若い方々、200人程度当たっていて、すごく怖い感じが致しました。そういった意味で、今回、どの分野であって、正しいことは正しい、間違っていることは間違っているという風に、この私たちの将来を背負ってくれる、若い人たちに認識してもらいたいということから、私今回、この法改正は良いことではないかと感じております。ただし、先ほど申し上げた通り、400円で1曲ダウンロードさせる世の中は、先ほど川内委員からご指摘があったように、我が国くらいのものです。これが適正な価格で取引されるためには、当然、国民の皆様が本当に価値あるものだと認めた上で、その価値に対して適正な対価を支払うという文化、意識を醸成することが、一つの国の役割だろうという風に考えている次第です。そこでなんですけれど、大臣、今回なんですけれど、内容的にはいろいろございます、障害者の方々の利用を促進する条項、当然入れて頂いて結構だと思いますし、また本当に絶版となっているものが、どういう風に著作物として取り扱われるのかについて、そういうものについての規定をおいて頂くのも結構でございます、国会図書館でいろんなデジタル化を図って頂くのも結構でございます。一番議論になっているのは、結局、先ほど来何度も出ているように、最初の元が違法だという風に知りながら、それをダウンロードする、もしくは販売するといったことについての規定を今回置こうとしている訳でございますが、こういった規定を置くことは、最終的に国民の皆様方の幅広い利用を促進するために置く規定だと私自身は解釈しております。そこで、大臣にご意向をお聞きしたいのですございますが、こうした規定を置く以上は、一歩で終わるのでは無く、二歩三歩と歩を進めて頂いて、著作権を扱う業界におかれても、本当に違法と適法を切り分けた上では、適法なものについては適正な価格をつける、400円は普通常識外だと思いますが、そういったことをですね、業界の方にも行政府のトップとして指導するべきではないかと思うんですが、大臣、いかがでしょうか。

○塩谷大臣 あの、まあ、現状は先ほど渋谷の話があったように、誰もがダウンロードしてですね、それが違法かどうか分からないというようなのが現状だと思っていますが、おっしゃるように、いかにこの正しく広く流通させるかということだと思うんですね、そこら辺で、今回は業界側にも、こういう法改正をして、しっかり正しく利用を広めるという方向でおこなってほしいと、その結果、価格も適正なものになるだろうということを期待しての今回は一歩だと思っておりまして、一方で、権利者の方等もお考えの中で、広く普及利用されれば、その分もしっかり確保できるだろうという方向で、今回検討した結果だと考えております。

○和田委員 あの、当然のことながら、各著作物について、その権利者が自分で自分の作品がどれくらいの価値があるものか、それをですね、それを考えて、価格をつける自由を阻害するべきではないという風に思っています。ただ、世の中には著作物以外にも沢山のものが取引されておりますが、そうしたものは一旦価格がついた後でも、当然ことながら、需給原理によって、価格は動いて参る訳でございます。この曲はすばらしいなあとみんながダウンロードしたいなとわっと需要が高まる場合には、普通の物の取引原理で考えると、その着うたの値段がすーっと下がって行くと、そして適正な価格をつけたつもりなんだけれどもと、なかなか売れないなというときは、ちょっとずつ価格を下げて売れるところまで持って行くと、逆に権利者の方が売れるのは俺の著作物の価値が高いからだと、それであれば、もっと価格を上げる下げるということを考えても良いのではないかと、私自身は、こういった市場原理が著作物の中にもしっかりと行き渡ることが本来必要なのではないかと感じております。今回は、発端となったのが、著作物を扱っている業界の方から、もう既に、適法にダウンロードされたり引っ張られたりするものより、違法にダウンロードされたりするものの方が圧倒的に数が多くなっているんです、これはいかにもおかしいんではないかという声を受けての法改正でございました。しかし、その方々の要望を聞くという形もさることながら、最終的に考えなければならないのは、国民の皆様が、先ほどの川内議員の発言、良い発言だと思ったんですが、全てがユーザーであり全てがクリエータであると、そういう原理の中で動かれていて、じゃあ自分は情報を発信してみよう、情報を受けとって見ようという文化を作って行くことに、この法案改正の目的があるのだと思っております。そうした意味におきまして、先ほどの答弁をお聞きしておりまして、ある程度のところは理解するのございますが、一つポイントとして、もう一つお聞きしたいのは、今後、大臣として、この法改正を行ったあと、著作権を管理する団体等について適正な価格として取引されているかどうかという観点から、指導する所存がおありでしょうか。

○塩谷大臣 現在のところ、まあ、価格については、特にビジネスにかかわる問題でございまして、先ほども著作物の価格がどうかと聞かれて、私どもは、その、それを高いどうのと言う立場にない訳でございまして、あの、希望としては期待をするというような言葉で発信することはあると思いますが、指導というところまでは、なかなか、価格については私どもから言う立場にないと考えております。

○和田委員 行政府のトップとしてはそこまでのご答弁が多分限界だと思ってお聞きしました。しかし、我々が、最終的にこの法改正案に賛否を決するときに、意思として表明したいのは、そこまでが行政の限界であれば、当然、今度は、業界側の自主的な方向付けを望むということを意思として表明しておきたいという風に思う訳でございます。この点は、すぐ後の、付帯決議等でも検討して参りたいと思います。それでは次の問題に移りたいと思います。今回、まあ、外国でもこの著作物についてはいろいろな議論が起こっている最中でございます、委員各位にあっても、各新聞に何度か報道されておりますので、ご存知ではないかと思いますが、今世界の中で最も検索サイトとして知られているものにグーグル社というものがございます。このグーグルという会社が先般、自分が絶版だと見なしたような著作物について、自分でいわゆるスキャンと言いますけれども、映像を取って、それをデジタルコンテンツとして配信することを要するに考えていると。ついては、著作物を編み出した権利者、こういった方々にその使用を認めてもらうよう、権利料をある程度払うから意思のある人は言って来て下さい、というような主旨の和解案といいますか、権利者の間でいくつか訴訟になっておりますので、そうした案を示したところでございます。訴訟、ちょっとまだまだ外国の中で賛否両論あったり、権利者団体からすればどっちに動いてよいか戸惑っているというところもありまして、当初この審議の直前、ゴールデンウィークの最中に、期限を迎えるところだったんですが、期限が4ヶ月延長され、9月までに、応じたらどうかというところを期限延長したという報道が出たばかりでございます。そこで、ここまで紹介したところで、委員各位にもお考え頂ければと思いまして、今日は、法律の解釈論としてですね、一般的にどのようになるかということから始めて行きたいと思いますが、内閣法制局の方に来て頂いております。私事前に通告致しておりますので、大体の主旨はご理解頂いているかと思いますが、今回、このグーグル社が和解案に応じてくれと言って来ている範囲の物ですけれども、当然アメリカにある会社で、アメリカの中で著作された物についてはその範囲となっている訳でございますが、しかしですね、実は、アメリカに持ち込まれているものについては全部対象となるという風にアメリカ側の報道では流れていまして、例えば日本で出版されたものがアメリカに持ち込まれて、アメリカで流通している場合には、これはもう既にグーグルの和解案の対象だと、対象だということは、その和解案に応じなければ、アメリカで訴訟をして自分の権利を守らなくてはならないということになるし、応じるのであれば、そこから応じた後は、自分の権利料をグーグルに払って頂く以外は、自分で権利を主張できない、少なくともアメリカ国内においては、ということになっているようでございます。ここまでご説明した上で、一般的に物を持っている方、一つの権利をもたれている方が日本国民であった場合、この日本国民の持たれている権利を、外国の法制上で、クラスアクションといういうんですか集団訴訟という制度があって、その中に自分が入らなければ、その後は、それに応じたものと見なすという風に考えられているということがアメリカの制度ではございます。これとの間でですね、日本国、我々日本国の国会ですが、日本国の権利をきちんと守るという上で、どんなことが可能なんだろうかということをですね、今日ちょっと内閣法制局の方にご答弁頂きければと思っている訳です。もう一度簡単に言いますとこのようになります。一般的に国民の権利が国外で脅かされる危険性がある場合にですね、その権利の有無の確認や、その内容、そしてその保護のあり方について、どういったことが日本の法制上考えられるのでしょうか、ご答弁頂けますでしょうか。

○宮崎礼壹内閣法制局長官 お答え申し上げます。一般論として、かつ著作権法に関してでございますが、ごく一般論として申し上げれば、各国の国内法は当該国内において適用されるというのが原則だと思います。我が著作権法につきましても、日本国民の著作物についての著作権、これが、国外においての保護がされるかどうかということにつきましては、当該著作物の利用行為が行われる国毎に、それぞれの国の著作権法制によって保護されると、こういうことであると、これが基本であると考えております。したがいまして、例えば、米国の著作権法が適用されます、米国の国内において、我が日本国民の著作物の利用行為が行われたと、こういう関係についての問題でありますれば、それは、直接的には我が国の著作権法の適用があるという問題ではなくて、ただベルヌ条約等の相加盟国になっていることによって、アメリカの著作権法により日本国民の著作権が保護されるという状態になっているということだと思いまして、そこで、保護されます権利の具体的内容については各国法で少しずつ違いがあってもそれはやむを得ないということであると。基本的にはベルヌ条約によって、日本の著作権法はアメリカの著作権者を保護しますし、アメリカの著作権法によって我が国の著作権も保護されますが、細かいところについては各国の法制の具体的な内容がどうなっているかということによると、こういうことだと思います。したがって、我が日本国民の持っている権利について、外国の法制度の元でいわば脅かされるような可能性があるかどうかというご質問でございますけれども、著作権者に関して言うと日本国内における利用行為が妨げられる風になれば、これはもうなかなか考えられないことで、それはあってはならないことだと思いますけれども、どうも問題は、我が国民の著作権ではありますけれども、国外における利用行為について、それは、自分の権利の侵害であるから差し止めを求めるであるとか、損害賠償を求めるであるとか、そういう権利の行使については、それぞれ当該外国の著作権法によって保護されているということでございますので、そういう前提で、それでも良いから、我が国としてどういうことができるかとなりますと、それは権利のそれぞれの内容であるとか、当該分野を規定します国際条約の内容がどうなっている等々見ないといけませんので、私どもの立場として一概にお答えすることが難しいと思います。いずれに致しましても、個別のケースに応じて、必要な場合には、関係各国の間で調整が図られることになるであろうという風に思います。

○和田委員 今のご答弁一生懸命追いながら私も聞いておりまして、まだ十分に理解しがたいとところもございますが、委員の皆様方いかがでしたでしょうか。長官、私自身今、ご答弁をお聞きしておりまして、理解したところまで、もし違っていれば正して頂けばと思いますが、日本国民の持っていらっしゃる権利が、外国に何らかの意味で持ち出し可能な場合は沢山あると思いますが、例えば、動産である車を持って出るときだってそうだと思いますが、その権利は本人が主張し続けることが可能ですね、今おっしゃっていた答弁では、この所有権は外国の法制によって守られているはずであると。そこで、日本の法制上、所有権を規定しているような各法制でございますが、そこから一端国外に出たら、外国の法制によって保護されるはずであるという風に受け止めたんですが、この部分は正しいんでしょうか。いかがでしょうか。

○宮崎長官 あの、なかなかごく一般的に所有権まで対象としてどういうことが言えるかにつきましては、確たることを申し上げる自信がございませんけれども、著作権法に関する限りは、法律によって近代生み出された権利でございますから、したがって、法律によって付与されることで始めて生まれる権利という性格がかなり強いのではないかと、その上で、ベルヌ条約等によって考えられている考え方は、各国のその国内法によってそれぞれが保護するということを基本的には前提にした上で、条約で最小限ここまでは各加盟国でお互いに保護しましょうという、国際約束を結び合って、そうして広く保護を普及させるということになっているのだろうと、著作権法についてはそう風に言えるだろうと、そう申し上げました。

○和田委員 一般的なことについてについてのご答弁が難しいということで、著作権法についてお話し頂きましたが、塩谷大臣、今お聞きした通りです、著作権というものは、長官の答弁の通り、元々存在していたというより、法制によって付与された権利ではないかと思います。いずれにせよ、物の所有権を著作権に置き換えると、我々が申し上げたようなことになるのだと思います、つまり、日本の著作権法は、日本国内で著作権が発生して、それが、権利が取引されるところに規制としてかかると、それが外国に出て行った際には、外国の著作権法の規定にかかるのであるということだろうと思います。それがお互いに、今回の場合は、ベルヌ条約という条約によって相互主義的なところがきちんと定められているからこそ、お互いの権利がどちら側に行ったとしても、ちゃんと守られるはずであると、こんな法制の作りになっているものだと、いう風に答弁を解釈したいと思いますが、それでは、大臣、こうした原則の中で、日本の著作物を出してらっしゃる方は、非常に現実問題、沢山の報道で流れている通り、心配していらっしゃいます。その心配というのは、自分がこの和解案に応じれば、グーグルが何かデジタル化する度に何らかの権利料が発生してそれが入ってくるから実利上よろしいのではないかという方もいらっしゃるし、しかし自分の物は他の世界にもどんどん売れて行くはずであってそれを制約されるのは非常に困ると思っている人もいます、そういった方々がいろんな情報を元に悩みに悩までれ得られた、その結論を国の制度上阻害することがあってはならないと思いますが、どちらかと言うと、こういった問題があることを知らないうちに期限が来てしまって、自動的に自分がどちらかの結論の範疇に組み入れられてしまうという仕組みは、どうも私自身は、日本国民を守るという立場から納得行かないのですが、この点について大臣いかがでしょうか。

○塩谷大臣 今回のグーグル問題については、あのー、今おっしゃったように、基本的なところは、まあ、著作物について相手国の法律に従うということでございますが、ただ、それぞれ団体やらいろんな利害等があって、対応が違って来ている、それを国として一つにまとめるのはなかなか難しいのかなあということもありましてまして、ただ、今おっしゃったように、このことを知らないで、そのままこの和解案の決定に従ってしまうような状況、これを避けるべきではないかなというご質問だと思うのですが、そのことは私どもも情報をしっかり収集しながら、権利者に対していろんな情報提供をするとかですね、そういうことを促して参りたいと思っておりますが、改めて今の点は検討して行きたいと考えます。

○和田委員 是非ご検討頂ければと思います。あのー、残りが5分程度になりましたので、今日の総括に入りたいと思いますが、まず、今回の法改正案について、私ども、権利者の保護という観点という狭い観点ではなくて、やはり国民の皆様方にできるだけ健全な各情報の取引をしてもらいたいという観点から、法改正に望んで参りたいという風に思います。そういった意味で、今回、違法と知りながらダウンロードすることはやはり違法なんですよということを定めることには、先ほど申し上げた通り、私たちが将来を託す若い世代の教育のためにも必要ではないかと考えております。この点について、大臣の総括的なご判断として、若い人たちの教育上、この著作権法をどうあつかって行くかということをご決意として述べて頂けますでしょうか。

○塩谷大臣 特に若い人たちに対しては、最初にお話ございましたように、今の情報化時代には、よりこのいろんな行動にしろ、毎日の生活にしろ、その情報化にかかわっていることが多いということで、私どもとして周知徹底をさせることを考えて行かなければならないと、我々のホームページとか各種講習会等を通じてしっかり徹底する、先ほども答弁しましたが、高校の学習指導要領を改正してですね、この著作権については改めて音楽等にもしっかりとかかわるということについて、内容を含めて充実をさせたところでございますので、より一層、この教育に関して力を注いで参りたいと考えております。

○和田委員 今ご決意として伺ったことは私も同感でございます。一つだけ付け加えさせて頂きますならば、先ほど申し上げました渋谷で若い人たちにアンケート的に聞いて参りました、こういったことが、適正な価格で、何か人に認められるような作品を作れば、それが適正な価格で取引されて、自分が収入を得られると、そして、それに対してやりがいを感じられるということが、国民の情報取引の文化上醸成されるなら、もっともっとこうした芸術や音楽といった分野に対して、若い人がどんどん将来の職業として考えて行こうと思うような雰囲気も生まれてくるのではないかと思う訳です。今回も教育的な見地から、私どもも支援して参りたいと思っています。最後にもう一つございます。先ほど来申し上げて来たことでございますが、今回の法改正が、まずもって、先ほどの、価値あるものを適正な価格で取引して頂くという文化を作るための一歩であるという観点からは、この著作物を扱う業界の方に対しましても、また、一旦流通することになった段階で、流通を担う業界においても、適正な価格とは何ぞやということを常に意識した上で、この著作権を取り扱うような雰囲気を作って行くことが国の責務だという風に考えております。その面からの、大臣のご決意を聞かせて頂けるでしょうか。

○塩谷大臣 当然ながら、法律の改正の主旨としても、今おっしゃったような主旨で考えておる訳でございまして、あの、価値あるものが適正な価格だということで、これは勿論、それがいかにまた利用されるかということにかかわっている訳のでございまして、我々としましては、そのバランスといいますかね、権利保護と合わせて考えて行かなければならない、また、適正な価格という観点では、ビジネスモデルという、これからいろんな手法が出てくることも考えられる、正直、この分野においてはIT化の進展が著しい中でなかなか追いついてないというところが現実だと思っておりまして、むしろ若い人たちが大いに利用することが文化の発展につながるということもありますので、それを正しく促して行くような法律改正であるような気持ちでおりますので、今後も、また、あのー、しっかりと状況を見守りながら、対応して行かなければならないと考えております。

○和田委員 常に国民各層の使いやすい環境を整える国会でありたいと思います。ありがとうございました。

○岩屋委員長 以上で和田君の質疑は終了致しました。次に、石井郁子君、石井君。

○石井郁子(日本共産党・近畿ブロック)日本共産党の石井郁子です。今回の法案は、障害者が多様な情報に接する機会を確保するために公共図書館での障害者サービスを充実するために必要な改正が行われております。またインターネットの情報検索サービスなど現行法上課題となる行為についても対応しておりまして、インターネットの発展にともなった改正となっていることから賛成できるものでございます。まあ、このことを表明した上で、今日は、私的録音録画補償金制度について、ホットな問題も生じておりまして、質問を致します。私的録音録画補償金制度の見直しという問題は、長らく著作権分科会で議論がされておりまして、この間、私どももですね、その動向を注目して来たところでございます。しかし、今までのところ見直しは結局できておりません。まずですね、この制度の今日的な意義というものをどのように考えておられるか、この点は、大臣にお伺いを致します。

○塩谷大臣 えー、私的録音録画制度につきましては、利用者の録音行為を認めつつ、権利者が被る不利益を補償するということで、平成4年に導入された訳でございまして、その後、著作権保護技術の導入や、音楽の配信事業のように、著作権保護技術と契約の組み合わせにより家庭内の録音録画について一定の制限を課したり、また契約により使用料を徴収できるような仕組みが整えられつつあり、補償金制度の見直しを求める声が、意見があるということは承知しておりますが、しかしながら、全ての利用形態について、補償金制度に替わる制度が導入できる環境に無い訳でございまして、新しい仕組みについてもまだ関係者の評価が異なるところでありますので、現行においては、新しい制度がただちに補償金制度に取って替わるという状況に無いと考えております。したがって、現在、今の補償金制度について一定の意義を有するということで考えておりまして、いずれにしても、過渡的な時期に位置していると考えておりますが、現在の制度についても意義があるということで今審議をしているところでございます。

○石井委員 あの、現在の制度も意義があるということをはっきりお述べ頂いたという風に思います。で、デジタル複製ができる電気機器が広がっているにもかかわらずですね、現在対象になっている機器というのはMDなどに限られて、補償金の額というのは年々減少して来ているんですね、制度の見直しというのが議論中と、それが進まない訳ですが、その原因はどこにあるんだろうか、それは良く検討されなければならないと思いますが、まず関係者がいろいろいらっしゃる訳でして、やっぱり関係者の合意が進まないと聞いておりますけれども、それが何故できないのかという点は、いかがございますか。

○高塩次長 この私的録音録画補償金制度の抜本的な見直しにつきましては、平成18年から文化審議会の著作権分科会において3年に渡り検討して来たところですけれども、結論を得るに至らなかったというのが現在の状況でございます。この検討に際しましてはですね、例えば先ほど大臣から様々な状況の話がありましたけれども、携帯用のオーディオレコーダーのような記録媒体を内蔵した一体型の機器や、パソコンなどのような録音録画専用機器でない機器が広く普及致しまして、このような機器を用いまして、広汎に録音録画が行われているという状況がございまして、こうした機器を対象とするべきかどうかということにつきましての、著作権改正の議論が行われて来た訳でございます。この委員の中には、おおまかに申しまして、権利者の方々、家電メーカーの方々、消費者の方々、様々な立場の方がおられまして、それぞれの方々が、私的録音録画小委員会の方で、ご意見をお述べになったということでございます。そういった経緯の中で、文化庁としては、おおまかに分けまして3者がいる訳ですけれども、その中で一つの妥協点として文化庁の提案というものを審議会に行った訳でございますけれども、この提案につきましても、最終的にはメーカー側、それから消費者側を含めまして賛同に至らなかったということでございまして、今日なお引き続き検討すると、こういった状況になっている次第でございます。

○石井委員 3者の関係者の間で合意に至らないと、私は何故至らないのかということをもう少しお述べ頂きたかったんですけれども、私がこの著作権分科会の報告書を見てみますと、やっぱりいろいろ隔たりは大きいなということは感じるんですね。その今お述べになった文化庁の事務局提案に対しまして、権利者側の意見としては一定の結論として評価しているという風に出ています、消費者側の意見としては、整理がなされ一定の評価ができるとあるんですよ、学識経験者の意見として、一定の評価を与えるということもございました。この限りでは一定の評価はされていると。しかしですね、メーカーだけがこう言っています。制度の縮小廃止の道筋が見えない、著作権保護技術が拡大すれば当然補償は不要だということで、明らかにこの補償金制度は不要だという立場からの意見を述べられていると、こうなると隔たりが大きい訳ですよね。ですから、メーカーだけがやっぱり合意できないというのが実際ではないのかと思うのですが、いかがですか。

○高塩次長 今先生からご紹介がございましたけれども、私的録音録画小委員会におきまして、関係者の主張につきましては、確かに、権利者、それから消費者、学識経験者、それぞれが一定の評価ということはお述べになった訳ですけれども、メーカー側におきましては、著作権保護技術が機能すればですね、この補償制度というものは不要であるというお立場をなかなか変えるに至らなかったということでございまして、今回の提案につきましては、当面の措置として一体型の機器等の追加というのがございますけれども、そういった対象の機器を増やすことについて、将来この制度を縮小して行くという文化庁側の提案があった訳ですけれども、それと必ずしもその行き先が見えないということから反対をされたということでございまして、文化庁提案というものがそういう主張が主なものとして、まとまるに至らなかったということでございます。

○石井委員 え−、ところでですね、今こうした見直しの議論が進行中にもかかわらずですね、実は重大な問題が起きているということがありまして、この点でただしておきたいという風に思います。パナソニックというね、会社ですけれども、このように言っているんですね、今後デジタル放送専用チューナー搭載機、これはデジタル放送のみ受信できる機械ということになっていますけれども、今補償金を支払わないという立場を表明するに至っているという風に聞いていますけれども、文化庁ご存知ですか。

○高塩次長 今先生からお話のございました、デジタルチューナーのみを搭載した録画機器というものが、ほとんど今年になりまして、電機メーカーの方から販売をされております。このデジタルチューナーのみに対応した録画機器につきましては、いわゆるダビング10と言われます著作権の保護技術が組み込まれていることから、録画機器の製造業者の団体の方で、補償金の支払いの必要性はないのではないかという風な主張をしていることは承知しております。

○石井委員 そのパナソニック側がですね、こう言っているんですよね、無料デジタル放送のデジタル録画に私的録画補償金が課せられているかどうかについては明らかでない状況にある、ということなんですけれども、現行の制度というのは、デジタル録画録音できる機器媒体を対象にして課金しているという風に理解していますが、これでよろしいですか。

○高塩次長 現行法の私的録音録画補償金の支払い義務を定めております第30条第2項では、私的使用を目的として、政令で定めるデジタル方式の機器記録媒体を用いて録音録画を行う者に支払い義務が発生するとしておりまして、その際に、著作権保護技術の有無が支払い義務の発生要件になるかどうかは明示的に規定していないという風に考えております。

○石井委員 えー、どうなんですか、現行の制度というのは、デジタル録画録音できる機器媒体に課金しているんじゃないんですか。ここをはっきりさせて頂きたいんですけれども、もう一度はっきりさせて頂きたいと思います。

○高塩次長 現在政令によりまして、録画であればDVDなど、それから録音であればCDやMDなどを指定しておりますが、これらは補償金の支払いの義務がある機種や記録媒体でございます。

○石井委員 そうしますとですね、パナソニック側の言っている内容で言いますと、どうなんですか、これ私見せて頂いたんですけれども、社団法人の私的録画管理協会宛に、パナソッニク側からこういう4月8日付けの文章があるんですよね。それによりますとね、デジタル放送用DVD録画機は、そもそも補償金の対象機器であるか否かについて疑義があるということから、デジタル放送用DVD録画機について私的録画補償金の徴収に協力することは差し控えるべきであるとこう言っているんですよね。こういうことが通用するのかどうか、という問題なんです。ですから、私は、こういう主張は、現行法からして見ても、これを無視したものになる訳ですし、それから著作権法を持ち出すまでも無く、104条の5、著作権法ではメーカーに徴収に協力することを義務づけているということがありますよね、徴収に協力することができないということはこの法律にも抵触すると、協力を拒否するということなどはできないと思いますけれども、この点は、いかがですか。

○高塩次長 先生ご指摘の文章が、4月8日付けで私的録音録画管理協会に届いたということを承知しております。この文章につきましては、私的録音録画補償管理協会におきましては、今後、この、これはパナソニック株式でございますけれども、と協議をして参りたいという立場を取っているという風に承知しておりまして、私どもとしてはその推移を見守りたいと思っております。

○石井委員 この文章ですけどね、そして最後に結論づけているんですけども、現状について、著作権保護手段と補償の必要性がはっきりしない以上、これは議論されているところだと思うんですけれど、デジタル放送用DVD録画機についての私的録画補償金の徴収に協力することはできないと通知すると一方的な通知になっているんですよ。だから今議論している最中の問題は問題であると思いますけれども、このデジタル放送用DVD録画機の私的補償金の徴収義務に協力することはできないと、こういう主張ができるかという問題なんですけれども、こういうことはできないんじゃないですか。はっきりさせて頂きたい。

○高塩次長 えー、この30条2項の規定につきましては、著作権保護技術の有無ということを問わずに、対象機器の規定をしているということでございまして、私的録音録画補償金の支払い義務が発生するということであれば、104条の5に定めます、機器の製造業者に課された義務は発生するものと考えております。

○石井委員 こういうパナソニックの主張は、私は、こういう行動は、現行法上からも同意でないと思うんですね。こういうことがどんどん許されるたら、次々協力しなくとも何も問題起こらないということになって行きまして、補償金制度そのものが、これはまあ、崩壊しかねないという風に思うんですね。ですから、私は、こういう一方的な文書というのはですね、この法律上、著作権法上に定められている、協力義務がある訳ですから、これに違反すると、政府としても、法に則って対処して行くと、やっぱり是正を求めるべきだと思いますが、この点については、大臣のご見解を伺いたいと思います。大臣、いかがでしょうか。

○塩谷大臣 確かに、その文書につきましては、この補償金制度に照らし合わせて問題があると考えております。まあ、今後この制度をどうするかということにつきましては、先ほど答弁した通りでございまして、あのー、この問題今後もですね、しっかりとした、あのー、この協議を続けて行く必要があると思っておりますので、今の文書の問題と合わせて検討して参りたいと考えております。

○石井委員 まあ、あの、大臣から著作権法に照らしても問題だということをはっきり言って頂いたと思いますけれども、やっぱり私的録音録画補償金制度って言うのが、なし崩し的にですね、空洞化されて言ったり、形骸化して言ったりってことは、私は大変問題だと思っているんですね。そもそも長い期間をかけて、一定の補償金を支払って私的なコピーを自由にできる、これは消費者のための制度でもある訳ですから、これを充実させて行くことは大事だという風に思いますし、今日は、この議論の経過と、この問題に照らしても、メーカー側の責任というか、この在り方ということが非常に問題だという風に思うんですよね、制度そのものについて、メーカー、権利者を含めて、やっぱり議論をお互いにして行くということが重要なんですけれども、現行の制度に協力しなくて良いのだということになってしまってはですね、これは到底、この制度を否定することですから、認めることはできないという風に思います。付け加えればですね、著作物の複製できる機器や媒体を販売してそのことで莫大な利益を得ているのはメーカーですから、やっぱり、文化の維持発展のためにそういう必要な経費は負担すべきだということを、もっときちんと文化庁としても主張して良いのではないかと、主張すべきだと思います。今回のパナソニックの行動は、メーカーに協力義務があるということから見ても大変問題ですし、義務があると答弁されたということは大変重要だという風に思っております。さて、また法案に戻るんですけれども、最後に一点伺っておきます、今回、裁定制度のことなんですが、著作権だけでなく、著作隣接権、実演などですね、にも拡大しています。供託制度も導入するということで、裁定結果が出る前でも暫定利用が可能になる仕組みというのを導入しています。で、放送番組のネット配信を行う際には、全ての権利者の許諾が必要となります。今回の改正で、所在不明だと、許諾を取ることができない権利者がいる場合ですね、裁定制度を利用することでネット配信が可能となるという風に聞いておりますが、そこで確認させて頂きたいのですが、この制度は、あくまでも所在不明の場合であって、現に存在する権利者、実演家が許諾を拒否している場合にまで適用するものではないという風に理解して良いのかどうか、安易に所在不明とされないように、制度的にはどのように担保されて行くのかという点について、明快に答弁頂ければと思います。

○高塩次長 この権利者不明の場合の裁定制度の拡充を今回の法改正に盛り込ませて頂いているところでございますけれども、第1点の、ご質問がございました、権利者が不明ではなくて、存在している場合についてこの制度を活用するというか使用することはないということはその通りでございます、この制度につきましては、そもそも放送番組の2次利用に関しまして、権利者不明の場合の契約交渉の問題点が様々な場所で指摘をされるということがございますけれども、私ども著作権分科会の報告書におきましては、この権利者不明の場合の措置として、まず権利情報の管理など関係事業者の取り組みが進められる中で、民間の取り組みが引き続き行われることを前提としつつ、その取り組みを補完するものだと位置づけておりまして、文化庁と致しましては、この点を踏まえまして、今回の改正と合わせまして、円滑な契約のための関係者の取り組みへの助言協力を行って参りたいと思っております。また、第2点のご質問にございました、裁定制度を利用するためには、権利者の確認といいますか捜索といいますか、それにつきましては、相当な努力を必要とするということが、従来の裁定制度でもございますけれども、この改正後におきましても、同様に相当な努力を課すということを考えておりまして、十分な捜索が行われない安易な利用を認めるという主旨のものではございません。従いまして、今回、相当な努力につきましては、政令において定めることとしておりますけれども、関係者の意見を聞きながら、慎重に検討して参りたいと思っております。

○石井委員 権利者が不利益になることが無いように、この条文については進めて頂きたいという風に思います。若干残しましたが、今日は以上で質問を終わります。

○岩屋委員長 以上で、石井君の質疑は終了致しました。次に日森文尋君。日森君。

○日森文尋委員(社会民主党・市民連合・北関東ブロック) 社民党の日森でございます。最初にですね、ちょっと基本的なことをお聞きしておきたいと思うんですが、今回の法改正ではですね、まあ、あの、デジタルコンテンツの流通促進あるいはその有効活用と同時に違法な著作物の流通抑止という二つの側面を持った改正が行われるということになるのだと思います。著作権の保護と流通促進というのは相反する面がるのではないかと、こう思っている訳です。インターネットの利用拡大の経済効果、これはもうは計り知れないものがあるという風に私も考えておりますが、その効果を手に入れるために、仮に著作権の保護がおろそかになるとかということがあったら、文化財産を目指す知的創造力の弱体化を招くことにもなりやしないかというような心配もしている訳です。そこで、あのー、文科省になりますか、政府全体ということになりますか、えー、この著作権の保護とですね、デジタルコンテンツの流通促進あるいはインターネットの利用による経済効果拡大、この両立について、どうお考えになって行くのかということを、最初にお聞きしておきたいと思います。

○塩谷大臣 ご指摘の点については、そのバランスが非常に重要でございまして、まあ、今回の法律改正も、適切な流通促進あるいは権利者の適切な保護、バランスを保つという点で改正案を提出した訳でございます。えー、公正な利用に配慮した権利制限規定だけでは無く、違法な著作物流通を抑止するための措置も合わせて盛り込んでおりまして、文部科学省としましても、時代の変化あるいは社会の要請を踏まえて、バランスに留意しながら、著作物の円滑な流通の促進と著作権の適切な保護に努めて参りたいと考えております。

○日森委員 えーと、次にですね、先ほど和田委員からもお話しのございました、例の、例のというとおかしいですが、グーグルの書籍検索を巡る紛争といいますか問題についてお聞きしたいと思うんですが、これは、世界中でかなり大きな問題になっているようです。で、この、最初にですね、このグーグル問題の経緯、それから、米国で成立したと言われているその和解内容ですね、これについて簡単に教えて頂きたいと思います。

○高塩次長 アメリカにおきますグーグル社のブックサーチを巡る紛争の経緯について簡単にご説明申し上げたいと思いますけれども、これは2005年の9月にグーグル社がですね、米国内の大学図書館などと提携致しまして、蔵書のデジタル化を行う事業につきまして、これを著作権侵害として訴えておりました、全米作家協会と全米出版社協会との間で2008年の10月に和解が合意されたということでございます。この和解案では、グーグル社は一定の使用料を支払うことで、今後米国内において、デジタル化した書籍データサービスのアクセス権の販売や広告掲載などが可能になるというものでございます。権利者につきましては、和解に参加した場合には、自らの書籍をウェブ上で公開するかどうかの可否を選択でき、また公開を認めた場合には、その公開によって得られました使用料を受け取ることができるということでございます。一方、この和解に不参加をした場合には、そのことをもって、グーグル社からデジタル化した書籍の公開を停止し、データベースから削除をするという保証は無い訳ではないですけれども、米国におきまして、このグーグル社に対しまして、訴訟を起こすことができるということになります。我が国の著作者の著作物が、このグーグル社のブックサーチの中にも数多く含まれておりますが、これはベルヌ条約に基づきまして、米国内でも我が国の著作者の著作物は権利が保護されている訳でございますけれども、今度の和解案は、アメリカの訴訟制度、これは集団訴訟、クラスアクションと言っておりますけれども、これは代表の方が訴訟したものが、その権利を持つ者に全て及ぶというアメリカの連邦民事訴訟規則に定められている方式でございますけれども、このクラスアクションによりまして米国内において著作権を有する全て者を対象としていうことのため、我が国の権利者にも及ぶということになってございます。一定の期限までに、和解に参加するか否かの期限、5月5日という期限があったのですけれども、これは4ヶ月延びて9月4日ということになっておりますけれども、我が国の権利者がこの和解に参加するか不参加にするかという期限が定められておりまして、それに対しまして、我が国の作家の業界や出版の業界などが様々に検討を行っていると、こうした状況にあると承知しております。

○日森委員 えーっと、その和解案、幸か不幸か延期されたんですが、日本文芸家協会というのがございますが、こう言っている訳です、著作権者が米グーグル社に何らの通知を行わなければ、自動的に和解案記載の条件を原則として受け入れたと見なされ、同社は将来に渡って、2009年1月5日以前に出版された著作物についてデジタル化、ネットワーク上での検索への利用、データベースへのアクセス権の販売、今後開発されるその他の商業的利用までできる権利を有することになっていると、すなわち、日本の著作権者が何も知らないか、あるいは何も積極的な行為を取らないままでいれば、日本の著作権法上違法として許されない行為を承認したものと見なされるのであるという風に言っておりまして、米グーグル社は、アメリカの著作権の常識が他国の固有の文化に基づいたそれぞれの国の著作権の常識を壊すことはできないということを強く認識するべきであるという風に批判している訳です。先ほどは、法的な根拠について内閣法制局長官からお話を伺ったんですが、どうもいまいちはっきりしないということがございました。大臣は、これらについて今後検討を加えて行きたいということも先ほどございましたが、改めて、これほど文芸家協会などが心配されているという問題がある訳ですので、その、アメリカにおける和解というのが、改めてなんですが、日本における権利者を拘束できる法的根拠というのをもう少し分かりやすく示して頂きたいと思います。同時にですね、この問題に対する文科省の見解、先ほど大臣の見解をお聞きをしましたが、これも改めてお聞きしたいと思いますし、同時にですね、著作権について国際協議はどのような枠組みで行われているのか、この協議に、我が国はこの問題を通じて我が国がどうかかわっているのか。この3点についてお聞きしたいと思います。

○高塩次長 えーあの、著作物につきましては、国境を超えて利用されるために、世界各国が様々な多国間条約を結びまして互いに著作物を保護している訳でございます。我が国におきましては、これまでこれらの条約形成に積極的に関与して来た訳でございます。今回先生からご指摘のありました、ブックサーチの問題につきましては、米国の訴訟制度によりまして、米国で保護を受ける著作物を有する、我が国の権利者にも効力が及んだものでございまして、これによりまして大きな影響が生じまして、今後の展開等に、権利者の方々に不安、懸念が広がっていることにつきまして、私どもとしてもも大変憂慮致しているところでございます。文部科学省としましては、各国の権利者、政府の対応状況について引き続き感心を持って情報収集等について努めるとともに、必要に応じて2国間協議を通じて情報交換に努めて参りたいと思います。我が国が国際的枠組みに入る際には、大きな著作権側のベルヌ条約、著作隣接権についてはローマ条約というのがございまして、それらを踏まえた条約交渉、さらには放送番組等の条約交渉が行われておりますけれども、そういった国際的な関連条約に私どもとしては積極的に参加して、著作物が世界的に保護されるといいますか、流通する状況になっておりますので、そういうものに適切に対応して参りたいという風に考えております。

○日森委員 問題は9月4日というですね、当面一定の期限があって、これに間に合わないとですね、日本の権利者が重大な被害を受けるという可能性も否定できないということだと思うんです。そういう意味で、今おっしゃったような具体的な取り組みについて、どのようにおこなって行こうとしているのかについてですね、今分かる範囲でお答え頂ければ有り難いと思います。

○高塩次長 ただいまご答弁申し上げたように、私どもとしては、様々な状況につきましての情報収集や、必要に応じます2国間協議の場いうことでございまして、特にアメリカの間では、日米の著作権協議というのがございますので、そういう場においてこの問題をアメリカ政府としてどう考えるのかなどの問題提起を行って行きたいと思っておりますが、現在私どもはアメリカを含め、欧米の諸国に政府としての対応を確認しつつございますけれども、今回本件につきましては、民間のグーグル社に対して、民間の作家協会等が起こした訴訟ということでございまして、政府レベルでは直接干渉しないという国が多いという情報を伺っておりますけれども、そうした情報も含めまして、我が国の権利者に対してですね、適切な情報を収集をし、それを提供して行くといった努力を続けたいという風に思っております。

○日森委員 一つはですね、著作権協会、失礼、文芸家協会などもですね、一応この和解を受け入れた上で、削除させるとかですね、いろんなことを考えて努力はされていると思うんですよ、こうした問題についてもしっかりと受け止めて、しっかり著作権を保護するという観点からですね、対応して頂きたいという風に、要請だけしておきたいと思います。それから、もう1点、これも先ほど委員からご質問が出ましたけれども、日本版のフェアユースについてお聞かせ頂きたいと思います。文化庁もそれから文科大臣も、積極的であったんですかね、導入したいという意向を先ほど示されました。で、ここで、あの、えー、日本版フェアユースというのはですね、一体どのようなものなのか、アメリカとは若干違うんだということであるんですが、アメリカ版のフェアユースと具体的に、基本的にどこがどう違うのかということも含めて、お聞かせ頂きたいと思います。

○高塩次長 アメリカの著作権法におきますフェアユースという包括的な規定がございますけれども、アメリカにも個別の権利制限がない訳ではございませんで、図書館での利用とか障害者の利用といった個別の権利制限に加えまして、ただその権利制限規定、大変数が少のうございまして、個別の適法性について、逐一定めるのではなく、フェアユースと申しますこの包括的な規定でその利用を認める、仮に権利者の方で問題があったときには裁判で明らかにすると、こういったことでございます。アメリカはご承知のように我が国のような成文法系の国ではございませんで、コモンローということで、フェアユース規定につきまいしては以前から判例によって形成されたという経緯がございます、これに対しまして、我が国は、大陸法に基づきます成文法体系を取っておりまして、これまで著作権法におきましては、個別に権利制限規定をおきまして、様々に判断をして来たということがございます。確かに我が国におきましても、フェアユース規定をおくかどうかにつきましては、先ほど申し上げてきましたように、今年度から、文化審議会の著作権分科会の方で検討したいということでございますけれども、様々に我が国とアメリカではよって立つ法体系の基盤が違いますし、裁判によって物を解決するという土壌が必ずしも日本では育っておりませんし、そのためにまた多額の費用がかかあるということもございます。権利者からは、安易に利用されて、権利侵害が起き易く、その度に裁判を起こすのかというような懸念も示されているところでございまして、先ほど申し上げたように、具体的に知財戦略本部からご提案を頂きましたので、この問題について整理した上で、検討して行く場というものを考えて参りたいと思っております。

○日森委員 確かにその通りで、法体系が違うと、訴訟がなかなかなりにくいということもあるんだと思いますが、まあ、段々そのようになっていますが、この知財制度専門調査会の報告書に対して、また日本文芸家協会で恐縮なんですが、まあこういうコメントを出しています。新しいデジタル時代に対応できる制度は、権利制限に関する細目を整備し、法律改正を迅速にするために、利用者と権利者がワーキングチームを作り、観念的な議論だけでは無くて、実質的、現実的な話し合いで対応できるでしょうと、法令によるだけではなく、双方の話し合いによるガイドラインを設定することで、法令に準じた慣行を作ることも可能と考えますという風にコメントを出しておられます。これ、なかなか傾聴に値するという風に私は思っているんですが、同時に、パブコメも、報告書に対するパブコメもやられたようです。パブコメではどのような意見が寄せられていたのか、そして、文科省自身が、日本版フェアユース、あるいはその導入について、このパブコメ等を見た上で、改めてこれから検討とおっしゃっていますが、どういう風にお考えをお持ちなのか、お聞きをしたいと思います。

○高塩次長 知財戦略本部から伺っているところによりますと、知財本部で昨年の11月に発表した資料、報告書の以前に、昨年10月30日から11月17日までの期間にこの日本版フェアユース導入についてのパブリックコメントを受けたということでございまして、45の法人と、49の個人から意見を出されたということでございます。主な具体的な意見は、一方で導入がもたらす効果を検証しつつ慎重に検討するべきという意見、訴訟コストの増加を含め権利者の負担が増加するのではないかという懸念などがございました、その一方で、報告書の中で提案された権利制限の一般規定の導入に賛成し早急に改正を求める意見もあったということでございます。私ども文化庁の法制問題小委員会の今回の最後のまとめにおきましても、フェアユース規定につきまして、今後の検討ということを示した訳でござますが、これにつきましても、私ども文化庁で行いましたパブリックコメントにおきましても、日本版フェアユースについての意見をいくつか頂いておりますけれども、一方で積極的に導入すべきという意見と、慎重にすべきという意見、制度導入について留意すべき意見等々の具体的な提案などもございますので、こういったこれまで寄せられている意見なども参考に致しまして、今年度より、このフェアユースについての検討を著作権分科会で行って参りたいと思います。

○日森委員 まあ、是非知恵を出して、基本的には保護ということがある訳ですので、進めて頂きたいと思います。文化庁長官の裁定制度についてですね、現状について、先ほどちょっと関連の質問がございましたれども、お聞きをしておきたいと思います。裁定制度が改正される訳ですが、現行はですね、手数料が高いとかですね、手続きに時間がかかる、著作権者の調査に多大な時間と費用がかかるとか、著作隣接権を有する俳優さんなどについては適用対象にならないとか、非常に使い勝手が悪いということが言われているようです。最初にお訊ねしたいと思うんですが、この裁定の申請件数というのは年間どれくらいあるんでしょうか。で、この裁定した後でですね、これはもう、著作権者が良くわからない、著作権者が不明の場合だけある訳ですから、裁定後に著作権者が発見されちゃったという例はこれまであったんでしょうか。同時にですね、まあ、今回改正されることで、この申請などがどの程度増大するのか、まあ、見込みがあったら、3点合わせてお答え頂きたいと思います。

○高塩次長 現在の裁定制度についてのお訊ねでですけれども、現在の著作権法で裁定制度が定められ施行されたのは昭和46年でございますけれども、それ以降の件数は、42件でございます。平均すると年1件に満たないという状況でございますけれども、年によってばらつきがございます。それで、裁定後に、権利者が発見されたという例は報告を受けていないということでございます。これは、先ほど申し上げましたように、権利者不明の裁定の際には利用者の方で相当な努力をして捜索した後にこの裁定制度に来るというような制度の中でですね、こういった結果になっているのではないかという風に思われているものでございます。今回の改正におきましては、今紹介がございますけれども、新たに問題となっております、手続きに時間がかかる、著作隣接権に対する適用がないということを解消致しまして、一点目は、著作隣接権者が不明の場合も対象にするということ、もう一点は、制度の要件を政令で明確化致しまして、一定の条件のもと、裁定結果を待たずに担保金を供託することで利用を開始できることを新設致しまして、図りたいと思っている訳でございますが、具体的にどれくらい増大するかの見込みにつきましては、隣接権の制度が始めてでございます。隣接権につきましては、権利者団体の方で権利者の集中システムの構築などが行われているということもございます。権利者の方でそうしたことをしておりますので、明確な予想は困難でございますけれども、こういった制度が、このような改善を踏まえて有効に活用して頂くことを私どもとしては期待しているところでございます。

○日森委員 資料によりますと、レコードやCD映画、これについては、著作権等に関する権利関係が極めて明瞭であって、パソコンへの配信についてもさして問題は生じていないと書かれておりました。しかし、放送番組についてはですね、製作段階において、その後の利用を含めた契約がほとんど行われて来ておらず、放送事業者への権利が集約されていないため、契約ルールが成立していない分野や、団体に属していない権利者との間で権利処理が滞っているという指摘があるんです、そこでお聞きをしたいんですが、何故、この放送業界においてだけ、放映後の権利関係が契約に盛り込まれてこなかったのか、その経緯、原因といいますか、これについてお聞かせ頂きたいと思いますし、文科省はですね、このような現状についてどのように対処されて行くのか、合わせてお聞きしたいと思います。

○高塩次長 放送番組におきまして、この契約が進んでいないということの原因につきましては、放送に関するビジネス上の課題があるとも言われております。ご承知のように、放送番組は、1回の放送利益を回収する仕組みになっておりまして、ネット配信を行うには、著作権使用料を含めまして、新たな経費というものが必要となるということで、これに見合う収入が見込めるかどうか放送局側で判断しづらい面があるということ、それから、また放送時の契約の際に、ネット配信の利用許諾まで含めるということは、なかなか放送局側の収入見込みを含めた場合、難しい場合が多くて、事後に行うことが多いということでございます。しかしながら、こういった状況がある訳でございますが、今後はネット配信のビジネスモデルということが積極的に確立するという動きもございまして、一昨年の2月には、日本経団連を中心に、出演契約のガイドラインが策定されまして、ネット配信を前提とした契約を促進する取り組みがなされているという状況がございますので、私どもとしては、こうした契約が今後多くなって行くものという風に考えておりまして、そうした取り組みに助言や協力をして参りたいと思っております。

○日森委員 最後になりますけれども、インターネットオークションにおける画像利用の円滑化というのがあるんですが、これについて、お聞きしたいと思います。最初にその認識をお聞きしたいんですが、インターネットオークションについて、販売者が官であろうが、民であろうが、東京都なども、税金滞納者から差し押さえたものを競売しているとかいったことにも使われているようですが、インターネットによる通信販売に全てに適用されると、その画像利用の円滑化はですね、こういう理解でよろしいのかどうかということを、最初にお聞きしたいと思います。

○高塩次長 このインターネットオークションにつきましては、インターネットオークションの際にですね、美術品や写真の取引の際には、商品の説明のために画像掲載は出品者の義務として不可欠であるということから、今回の改正を行うものでございまして、美術又は写真の著作物の譲渡等を適法に行うことができる者がその申し出の用に供するために行う場合であれば、販売者を官民問わず、規定の対象とするものでございます。

○日森委員 分かりました。ちょっと時間あと4分ほどありますが終わりたいと思います。どうもありがとうございました。

○岩屋委員長 以上で日森君の質疑は終わりました。しばらくお待ち下さい。これにて本案に対する質疑は終局致しました。これより、討論に入るのでありますが、その申し出はありませんので、ただちに採決に入ります。内閣提出著作権法の一部を改正する法律案について採決致します。法案について採決致します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。起立総員。よって、本案は原案の通り可決すべきものと決しました。ただいま議決しました本案に対し、馳浩君(注:自民党、石川県1区)他4名から、自民党、民主党・無所属クラブ、公明党、日本共産党及び社会民主党・市民連合の5派共同提案による付帯決議を付すべしとの動議が提出されております。提出者から主旨の説明を求めます。和田隆志君。

○和田委員 民主党の和田隆志でございます。私は提出者を代表致しまして、本動議についてご説明申し上げます。案文を朗読して、説明に変えさえて頂きます。

著作権法の一部を改正する法律案に対する付帯決議案
 政府及び関係者は本法の施行に当たり次の事項について特段の配慮をすべきである。

一 違法なインターネット配信等による音楽・映像を違法と知りながら録音又は録画することを私的使用目的でも権利侵害とする第三十条第一項第三号の運用に当たっては、違法なインターネット配信等による音楽・映像と知らずに録音又は録画した著作物の利用者に不利益が生じないよう留意すること。また、本改正に便乗した不正な料金請求等による被害を防止するため、改正内容の趣旨の周知徹底に勤めるとともに、レコード会社等との契約により配信される場合に表示される「識別マーク」の普及を促進すること。

二 インターネット配信等による音楽・映像については、今後見込まれる違法配信からの私的録音録画の減少の状況を踏まえ、適正な価格形成に反映させるよう努めること。

三 障害者のための著作物の利用の円滑化に当たっては、教科用拡大図書や授業で使われる副教材の拡大写本等の作成を行うボランティア活動がこれまでに果たして来た役割にかんがみ、その活動が支障なく一層促進されるよう努めること。

四 著作権者不明等の場合の裁定制度及び著作権等の登録制度については、著作物等の適切な保護と円滑な流通を促進する観点から、手続きの簡素化と制度の改善について検討すること。

五 近年のデジタル化、ネットワーク化の進展に伴う著作物等の利用形態の多様化及び著作権制度に係る動向等に鑑み、著作権の保護を適切に行うため、著作権法の適切な見直しを進めること。特に、私的録音録画補償金制度及び著作権保護期間の見直しなど、著作権に係る重要課題については、国際的動向や関係団体等の意見も十分に考慮し、早期に適切な結論を得ること。

六 国立国会図書館において電子化された資料については、図書館の果たす役割にかんがみ、その有効な活用を図ること。

七 文化の発展に寄与する著作権保護の重要性にかんがみ、学校等における著作権教育の充実や国民に対する普及啓発活動に努めること。

以上であります。何卒ご賛同下さいますよう、お願い申し上げます。

○岩屋委員長 これにて主旨の説明は終わりました。採決致します。本動議に賛成の諸君の起立を求めます。起立総員。よって、本案に対し、付帯決議を付することに決しました。この際、ただ今の付帯決議につきまして、文部科学大臣から発言を求められておりますので、これを許します。塩谷文部科学大臣。

○塩谷大臣 ただいまのご決議については、そのご主旨に十分留意致しまして、対処して参りたいと存じます。

○岩屋委員長 お諮り致します。ただ今議決致しました法律案についての委員会報告書の作成については、委員長にご一任して頂きたいとおもいますが、ご異議はありませんか。ご異議なしと認めます。そのように決しました。

(以下、略)

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2009年5月 8日 (金)

番外その17:Googleブック検索和解案と一般フェアユース条項の無関係

 極めて不可解なことに、グーグルのブック検索和解を持ち出してフェアユース条項の弊害を唱える権利者団体代表が存在している。個別の事件はあまり取り上げないようにしているのだが、どれほど意味不明の言動でもそれなりの人物がそれなりの場で言うとどこかしらに影響して来ないとも限らないので、念のため、今回は、番外として、グーグルブック検索の話を取り上げたいと思う。(例えば、3月25日の著作権分科会議事録(pdf)参照。)

 グーグルブック検索は、要するに図書館の蔵書なりをグーグルが自らスキャンしてサーバーにアップロードし全文検索を可能としているものであり、検索のみ可能とする場合や出版社・権利者と契約済みの場合、著作権切れの書籍は良いとして、当たり前の話だが、アメリカでも、営利企業がまだ保護期間が過ぎていない著作物の、かなりの部分なり全文なりを勝手に公衆に入手可能とすることにフェアユースが認められる余地は全く無い。だからこそ、使用料を支払う和解に至っているのであり、フェアユースの余地が少しでもあれば、グーグルのことなので最後まで争ったことだろう。(フェアユースの要件については、第117回参照。絶版書籍でも公衆に入手可能とする必要性が認められる場合や孤児作品のケースについては微妙だが、孤児作品について立法による対応も検討されているくらいで、判例が完全に確立している訳でも無く、最後、非常に面倒なケースバイケースの判断が必要となるだろう。)

 アメリカ著作権法のプロバイダーのセーフハーバー規定(著作権情報センターの翻訳の第512条参照)も、プロバイダー以外の第3者・ユーザーの送信・指示による蓄積についてはノーティスアンドテイクダウンで免責しているものの、ブック検索のようにサービス・プロバイダーが自ら行っている場合についてまで免責されることは無論無い。

 グーグルのHPに和解案の説明詳細説明ページ契約案本文(pdf))があるが、結局、今回の和解により、絶版書籍等の一部のページを表示したり、書籍全体へのアクセスを購入したりできるようになるのは、アメリカのユーザーだけと、訴訟の結果、この話は、アメリカ国内における出版関係者とグーグルの間のライセンス契約の問題に落とされたというだけの話である。

 後は当事者間で好きにしてもらえば良いという話であり、グーグルブック検索の和解契約案で追加される絶版書籍等について、ひとからげにフェアユース規定の対象となったり、グーグルの行為についてプロバイダーの免責規定により免責されたりすることは、アメリカでも無く、日本の一般フェアユース導入の議論でこの話を持ち出すことは全くのナンセンスであるということさえ言えれば、私としては十分なのだが、以下少し蛇足として、何故、この話がここまで騒がれているのか、法的にどこに問題があるのかという話も続けて書いておこう。

 完全にアメリカ国内で閉じる出版関係者とグーグルの間のライセンス契約の話であれば、ここまで騒がれなかったと思うが、アメリカの奇妙な集団代表訴訟(class action)の仕組みと珍妙なベルヌ条約の解釈によって、アメリカ国内におけるこの和解契約に参加するかしないかという選択を一方的に迫られることになった各国の権利者(団体)が大騒ぎをしているというのが、今の現状である。

 アメリカの集団代表訴訟については、そのWikiにも書かれている通り、民事手続き連邦規則第23アメリカ訴訟手続法の第1332条(d)第117章「集団代表訴訟」に規定されているが、便利なところもあるものの、様々な問題を抱えており、この制度自体必ずしも褒められたものでは無い。

 訴訟の直接参加者がある特定の集団を代表しており、集団代表訴訟と認められれば、その訴訟の結果は、直接参加者のみでなく、特定の集団に属する者全体に及び得、直接参加者以外も結果の通知を受けて何もしなければ和解あるいは判決を認めたものとして法的に拘束される(オプトアウト方式で良い)という非常に奇妙な仕組みになっているのである。

 しかし、大量の他国の権利者を巻き込む場合に、本当にアメリカの権利者のみで集団代表訴訟として成立しているのかという問題がそもそもあるだろうし、さらに、集団代表訴訟の和解の拘束性について、デフォルトではオプトアウトで連絡すれば良いことになっているが、ここまで大量の他国の権利者に対する、このようなオプトアウトが本当に法的に有効なのかという点も問題となり得るだろう。当然、そのような和解について知らなかったというケースも大量に発生することとなるが、この場合にどうなるかということも明確でない。(判例上(アメリカの最高裁判決参照)、判決に拘束されるか否かはオプトアウトで連絡すれば良いことになっているが、他国の権利者を大量に巻き込む場合にまでそのまま適用することはできないのではないかと思う。)

 それ以前に、他国の権利者を巻き込む理由として、ベルヌ条約が何故か引き合いに出されているが、ベルヌ条約の第5条(3)に「この条約によつて保護される著作物の著作者がその著作物の本国の国民でない場合にも、その著作者は、その著作物の本国において内国著作者と同一の権利を享有する。」(著作権情報センターの翻訳から引用)と書かれているものの、別に同盟他国の権利者まで自国の和解に巻き込まなければならないとする条項は無い。アメリカ国内の全権利者が対象となるからと言って、自分たちのデフォルト、和解契約への参加のみを一方的に権利と見るのは、アメリカらしいデタラメな条約解釈と適用である。この点についても、アメリカ国内の裁判なりで条約問題を提起することができるだろう。(オプトアウトでライセンス契約をあらゆる権利者に強要すること自体、同じ第5条の(2)で規定されている無方式主義に反しているのではないかと私は思う。)

(この問題について、司法省が独禁法の観点から調査をしているというニュースもあった(ITmediaの記事1記事2参照)が、独禁法上の問題も確かにあるだろう。)

 何にせよ、アメリカは訴訟国家なので、日本で騒いでいても何にもならない。このブログをプロの著作権関係者が読んでいるとはあまり思わないが、本当にこの和解案を問題視するのであれば、和解に反対の立場で本訴訟に参加するなり、別訴訟を起こすなりして、アメリカで徹底的に争ってもらいたいものと思う。(グーグルブック検索和解のFAQにも書かれているように、まだ和解は完全に成立していない。関係権利者であれば、オプトアウト以外にも、そもそも和解に対して異議を申し立てるという選択肢もある。集団代表訴訟の和解の成立には裁判官の承認が必要であり、その前に開かれる、異議を検討する公正公聴会に出席を希望することもできるはずである。)

 この問題において責めるべきは、アメリカの奇妙な集団代表訴訟制度と珍妙なベルヌ条約の解釈であって、フェアユース条項では無い。5月12日には今期最初の法制問題小委員会が予定されており(開催案内参照)、今後、一般フェアユース条項の導入の議論が本格化して行くものと思うが、法学者ばかりが並んでいる法制小委員会ではさすがに、権利者団体代表の法律と条約自体に対する無理解を露呈した主張がまともに取り上げられることは無いものと願っている。

 さて、最後に少しだけ、知財関係のニュースも紹介しておくと、フランスで3ストライク法案が揉める中、EU議会が、3ストライクポリシー否定条項を元通り復活させて、この5月6日に通信ディレクティブ案を再び通した。(ZDNetの記事ecransの記事参照。ストライクポリシー否定条項については第116回参照。)EU議会とフランス政府の間のストライクポリシーを巡る争いもまだ続いている。

 「P2Pとかその辺の話」で紹介されているので、リンク先をご覧頂ければと思うが、台湾もダウンロード違法化こそしていないものの、ネット切断型の違法コピー対策を含む著作権法改正案を通した。スウェーデン、韓国、台湾の各国の改正著作権法の内容については、時間がかかるかも知れないが、順次紹介したいと思っているところである。

 また、特許制度ユーザーにしか関係ない話だが、「先端医療分野における特許保護の在り方について(案)(pdf)」(参考資料(pdf))に関する意見募集が、5月17日〆切でかかっていたので、念のためリンクを張っておく。

(5月8日夜の追記:ブルーレイ課金について、施行令よりさらに下のレベルの施行規則について5月10日〆切でパブコメにかかっていたので(文化庁のHP電子政府の該当ページ知財情報局の記事参照。)、これも念のためにリンクを張っておく。将来に禍根を残す形でブルーレイ課金が5月22日から行われるだろうことは残念だと思っているが、この施行規則自体は技術的要件を定めているだけであり、一般ユーザーからどうこう言う話ではあまり無い。

 また、今日、非常に残念ながら、ダウンロード違法化を含む著作権法改正法案が衆議院の文部科学委員会を通過したようである(国会審議中継参照)。次回は、この委員会審議のことを書くつもりだが、法案の修正も無く、解散総選挙もどうなるか分からず、ダウンロード違法化問題も、法案の可決に関してはいよいよ後が無くなって来ている。)

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2009年4月15日 (水)

第167回:アメリカ政府から公表された模倣品・海賊版対策条約の概要資料

 フランスの3ストライクアウト法案の最終形を紹介することになるのではないかと思っていたのだが、意外にも、両院で通過した法案が異なることから来る再議決で3ストライク法案が否決された(「P2Pとかその辺の話」のブログ記事ITmediaの記事cnetの記事参照)ので、今回は、模倣品・海賊版条約に関して、先日、アメリカから公開された文書を取り上げることにする。(ただし、フランスの3ストライク法案は完全に廃案となった訳ではなく、さらに修正・再提出の上、今月末にも再々議決にかけられる予定のようであり、今後もフランスの動きは要注目である。)

 4月6日に公表された概要資料(pdf)(アメリカ通商代表部のリリースも参照)から、条約の構成を示している部分を全訳すると、以下のようになる。(翻訳は拙訳)

CHAPTER ONE INITIAL PROVISIONS AND DEFINITIONS
This chapter will focus on clarifying issues that arise throughout the agreement, such as Objective, Scope and Definitions. The chapter may also include interpretive principles.

CHAPTER TWO LEGAL FRAMEWORK FOR ENFORCEMENT OF INTELLECTUAL PROPERTY RIGHTS
Section 1: Civil Enforcement

Civil enforcement refers to providing courts or other competent authorities with the authority to order/take specific actions when it is established that a party has violated intellectual property laws, and the rules on when and how to use those powers. The issues under discussion in this section include:
- scope of the section - which intellectual property rights would be covered by the provisions of this section;
- the definition of adequate damages and the question of how to determine the amount of damages, particularly when a right holder encounters difficulties in calculating the exact amount of damage it has incurred;
- the authority of the judicial authorities to order injunctions which require that a party desist from an infringement;
- remedies, including the destruction of goods that have been found to be infringing an intellectual property right and under what conditions and to what extent materials and implements that have been used in the manufacture or creation should be destroyed or disposed of outside the channels of commerce;
- provisional measures, such as the authority for judicial authorities or other competent authorities to order, in some circumstances, the seizure of goods, materials or documentary evidence without necessarily hearing both parties; and
- the reimbursement of reasonable legal fees and costs.

Section 2: Border Measures
Border measures refer to actions that customs and other competent authorities would be authorized to take to prevent goods that infringe intellectual property rights from crossing borders. The term also describes the procedures that must accompany these actions. Elements under discussion in this section include:
- scope of the section - which intellectual property rights will be covered, and whether border measures should only apply to importations or should equally apply to the export and the transit of goods;
- a de minimis exception that could permit travelers to bring in goods for personal use;
- procedures for right holders to request customs authorities to suspend the entry of goods suspected to infringe intellectual property rights at the border;
- authority for customs to initiate such suspension ex officio (on their own initiative, without a request from the rights holder);
- procedures for competent authorities to determine whether the suspended goods infringe intellectual property rights;
- measures to ensure that infringing goods are not released into free circulation without the right holder's permission, and possible exceptions;
- the forfeiture and destruction of goods that have been determined to infringe intellectual property rights, and possible exceptions;
- responsibility for storage and destruction fees;
- capacity of competent authorities to require right holders to provide a reasonable security or equivalent assurance sufficient to protect the defendant and to prevent abuse, and - authority to disclose key information about infringing shipments to right holders.

Section 3: Criminal Enforcement
This section relates to the cases for which Parties should provide for criminal procedures and penalties. Issues being discussed under this heading include:
- clarifying the scale of infringement necessary to qualify for criminal sanctions in cases of trademark counterfeiting and copyright and related rights piracy;
- clarifying scope of criminal penalties;
- in which cases the relevant authorities should be empowered to take action against infringers on their own initiative (ex officio, i.e. without complaint by right holders) with respect to infringing activities;
- the authority to order searches and/or seizure of goods suspected of infringing intellectual property rights, materials and implements used in the infringement, documentary evidence, and assets derived from or obtained through the infringing activity;
- the authority of judicial authorities to order the forfeiture and destruction of the infringing goods;
- the authority of judicial authorities to order the forfeiture of the assets derived from or obtained, directly or indirectly, through the infringing activity;
- the authority of judicial authorities to order forfeiture and/or destruction of materials and implements that have been used in the production of the infringing goods;
- criminal procedures and penalties in cases of camcording motion pictures or other audiovisual works; and
- criminal procedures and penalties in cases of trafficking of counterfeit labels.

Section 4: Intellectual Property Rights Enforcement in the Digital Environment
This section of the agreement is intended to address some of the special challenges that new technologies pose for enforcement of intellectual property rights, such as the possible role and responsibilities of internet service providers in deterring copyright and related rights piracy over the Internet. No draft proposal has been tabled yet, as discussions are still focused on gathering information on the different national legal regimes to develop a common understanding on how to deal best with these issues.

CHAPTER THREE INTERNATIONAL COOPERATION
Cross-border trade in counterfeit and pirated goods is a growing global problem that often involves organized criminal networks. ACTA participants need to work together to tackle this challenge. The chapter on international cooperation is expected to address the following types of issues:
- recognition that international enforcement cooperation is vital to realize fully effective protection of intellectual property rights;
- cooperation among the competent authorities of the Parties concerned with enforcement of intellectual property rights, consistent with existing international agreements;
- sharing of relevant information such as statistical data and information on best practices among the Signatories in accordance with international rules and related domestic laws to protect privacy and confidential information; and
- capacity building and technical assistance in improving enforcement, including for developing country parties to the agreement and for third countries where appropriate.

CHAPTER FOUR ENFORCEMENT PRACTICES
Where chapter two will focus on the laws that should be in place to promote better enforcement of intellectual property rights, this chapter is intended focus on the methods used by authorities to apply those laws. Areas that the enforcement practices chapter may cover include:
- fostering of expertise among competent authorities in order to ensure effective enforcement of intellectual property rights;
- collection and analysis of statistical data and other relevant information such as best practices concerning infringement of intellectual property rights;
- internal coordination among competent authorities concerned with enforcement of intellectual property rights, including formal or informal public/private advisory groups;
- measures to allow customs authorities to better identify and target shipments, which are suspected to contain counterfeit or pirated goods;
- publication of information on procedures regarding the enforcement of intellectual property rights, and
- promotion of public awareness of the detrimental effects of intellectual property rights infringement.

The obligations or recommendations in this chapter for enforcement practices and sharing of information with the public shall take into account and be consistent with existing international agreements and the need to protect investigative techniques, confidential law enforcement information and privacy rights.

CHAPTER FIVE INSTITUTIONAL ARRANGEMENTS
This chapter will include all necessary provisions for the institutional set up, including questions related to the implementation of the agreement, how and when to hold meetings of the Parties, and other administrative details of the agreement.

CHAPTER SIX FINAL PROVISIONS
The final provisions of the agreement include details on how the agreement will function, such as how to become a party to the agreement, how to withdraw from the agreement and how to amend the agreement in the future.

第1章 最初の規定と定義
 この章は、条約を通じ、対象、範囲、定義等の事項の明確化に焦点を当てる。この章はまた解釈に関する原則を含む。

第2章 知的財産権のエンフォースメントに関する法的枠組み
第1節:民事的エンフォースメント

 民事的エンフォースメントは、ある者が知的財産法を破ったときに特定のアクションを命じる/取る裁判所あるいは他の権限を有する当局と、この権限はいつどのように使われるかに関する。この節で議論されている事項は以下のことを含む:
-本節の範囲-この節の規定でどの知的財産権がカバーされるか;
-適切な侵害の定義、特に、権利者に生じた侵害の正確な量を計算することが困難である場合に、どのように侵害の量を決定するかの問題;
-侵害停止命令を出す司法当局の権限;
-知的財産権を侵害する発見物品の破棄を含む救済措置、製造に使われた物と装置がどのような条件でどこまで破棄され、あるいは販路から排除されるかについて;
-ある状況において、両者の聴衆を行うことなく、物あるいは証拠資料の差し押さえを命じる、司法当局あるいは他の権限を有する当局の一時的手段;そして
-合理的な法的費用の償還。

第2節:税関取り締まり
 税関取り締まりは、知的財産権侵害物品の越境を阻止するために、税関と他の権限を有する当局が取るアクションに関する。このアクションが伴うべき手続きも記載する。この節で議論されている要素は、以下のようなものである:
-この節の範囲-どの知的財産権がカバーされるか、税関取り締まりは輸入だけに適用されるべきか、それとも、等しく輸出や通過物品にも適用されるべきか;
-旅行者に私的利用のための物品の持ち込みを認める最低限の例外;
-知的財産権を侵害していると考えられる物品の運び込みを税関で止めるための権利者による税関当局への要求手続き;
-(権利者の申し立て無しになされる)非親告で職権差し止めを開始する税関の権限;
-疑義物品が知的財産権を侵害しているかどうかを決定する権限を有する当局の手続き;
-侵害物品が、権利者の許諾無く自由な流通に流されないことを確保する手段;
-知的財産権を侵害していると決定された物品の没収と破棄、および、可能な例外;
-保管と破棄料の責任;
-訴えられた者を保護し、権利の濫用を防ぐ、合理的な保障あるいは公平な安全性を提供するよう権利者に求める、権限を有する当局の、そして-侵害積み荷に関してキーとなる情報を権利者に開示する当局の権能;

第3節:刑事的エンフォースメント
 この節は、各国が刑事手続きと刑罰として提供するべき件に関する。この節で議論されている事項は以下のことを含む:
-商標の模倣品と、著作権と著作隣接権の海賊版のケースで、刑事罰を科すのに必要と認められる侵害のスケールの明確化;
-刑罰の範囲の明確化;
-侵害行為に関して、どのようなケースで関係当局が自ら(非親告で、つまり、権利者による訴え無く)侵害者に対するアクションを開始できる権能を与えられるべきか;
-知的財産権を侵害すると考えられる物品、侵害に用いられた物と装置、証拠資料と、侵害行為から派生するか得られた財産の捜査及び/あるいは押収をする権限;
-侵害物品の製造に用いられた物と装置の没収と破棄を命じる司法当局の権限;
-映画あるいはその他のオーディオビジュアル作品の盗撮のケースにおける刑事手続きと刑事罰;
-模倣ラベルの取引のケースにおける刑事手続きと刑事罰;

第4節:デジタル環境における知的財産権のエンフォースメント
 条約のこの節は、インターネットにおける著作権と著作隣接権の海賊行為の抑止についてのインターネットサービスプロバイダーの役割と責任のような、新技術が知的財産権のエンフォースメントに与えるいくつかの特別な挑戦に向けられている。まだドラフトはテーブルに載せられておらず、議論は様々な国の法制に関する情報を集め、この事項の最も良い取扱い方に関する共通理解を構成しようとしているところである。

第3章 国際協力
 模倣品と海賊版の越境取引は、間々組織的な犯罪ネットワークを含み、大きくなり続けている世界的な問題である。ACTAの参加国はともに協力してこの試練に立ち向かう必要がある。国際協力に関する章は、次のタイプの事項に向けられる予定である:
-国際的なエンフォースメントの協力が、知的財産権の完全に有効な保護を実現するために非常に重要であることの認識;
-既存の国際条約と整合的な、知的財産権のエンフォースメントに関係する各国の権限を有する当局間の協力;
-プライバシーと個人情報を守る国際ルールと各国法を一致する形での、署名国間での統計データやベストプラクティスのような関係データの共有;そして
-エンフォースメントの改善のための能力強化と技術援助が、条約に参加する発展途上国と、適切な第3国のために含まれる。

第4章 エンフォースメントの実務
 第2章が、知的財産権のエンフォースメントのよりよいエンフォースメントを推進するために置かれる法に焦点を置いているのに対し、この章は、それらの法を適用する当局によって使われる手段に力点が置かれる。エンフォースメントの実務の章がカバーするエリアは次のことを含む:
-知的財産権の効果的なエンフォースメントを確保するための権限を有する当局におけるエキスパートの育成;
-統計データや、知的財産権の侵害に関するベストプラクティスのような、その他の関連情報の収集と分析;
-公式あるいは非公式の官民の助言グループを含め、知的財産権のエンフォースメントに関係し、権限を有する当局間の国際協力;
-模倣品あるいは海賊版を含むと考えられる対象の積み荷をより良く特定できるようにするための関税当局の措置;
-知的財産権の侵害の有害な影響に関する公衆の意識の啓発;

エンフォースメントの実務と情報公開のためのこの章の義務あるいは推奨は、情報とプライバシーの権利に関する秘密の法的エンフォースメント、技術的捜査を禁止する、既存の国際条約と必要性を考慮し、それと一致していなければならない。

第5章 機構に関する取り決め
 この章は、条約の実施に関する問題、各国の会合をどのようにいつ開くのか、また、条約その他の管理上の詳細を含め、設置される機構のために必要なあらゆる規定を含む。

第6章 最後の規定
 条約の最後の規定には、各国がどのように条約に参加し、脱退し、将来的に条約をどのように改正するといった、条約がどう機能するのかの詳細を含む。

 資料を見る限り、あまり内容が固まっているとも思えず、すぐに成立するといった様子には見えないが、この概要資料のレベルでも、旅行者に私的利用のための物品の持ち込みを認める最低限の例外や、非親告での税関・刑事取り締まり、インターネットにおける著作権侵害抑止についてのインターネットサービスプロバイダーの責任といった危険な考えが示されていることはいくら注意してもしすぎではない。

 この概要資料だけでは、非親告での取り締まりの対象が著作権まで及ぶかどうかはあまり明らかではないのだが、模倣品・海賊版対策条約について最近Wikileaksにリークされたより詳しい文書(pdf)を読むと、その中の日米共同提案(2008年10月16日付けのもの、pdf全体の第43~48ページ参照)中に、

Section 3 Criminal Enforcement
ARTICLE 2.14: TRADEMARK COUNTERFEITING AND COPYRIGHT OR RELATED RIGHTS PIRACY

1.Each Party shall provide for criminal procedures and penalties to be applied at least in case of willfull trademark counterfeiting [Option J: trademark infringement caused by confusingly similar trademark goods] or copyright or rerated rights piracy on a commercial scale. Willful copyright or related rights piracy on a commercial scale include:
(a)significant willful copyright or related right infringements that have no direct or indirect motivation of financial gain; and
(b)willful copyright or related rights infringements for purpose of commercial
...

ARTICLE 2.17: EX OFFICIO CRIMINAL ENFORCEMENT
Each Party shall provide that its [Option J: competent] authorities may act upon their own initiative to initiate [Option J: investigation][Option US: legal action] with respect to criminal offences described in Section 3 and 4.

第3節 刑事的エンフォースメント
第2.14条:商標の模倣行為と著作権、著作隣接権の海賊行為
.商業的なスケールでの、意図的な商標の模倣行為[日本によるオプション:混同を生じる類似商標品による商標侵害]あるいは著作権、著作隣接権の海賊行為に適用される刑事手続きと刑罰を、各国は規定する。商業的なスケールでの、意図的な著作権、著作隣接権の海賊行為には、以下のものが含まれる:
(a)金銭的な収入を得ようとする直接的あるいは間接的意図を有しない、大量の意図的な著作権あるいは著作隣接権の侵害
(b)商業目的でなされる意図的な著作権あるいは著作隣接権の侵害
(中略)

第2.17条:非親告の刑事エンフォースメント
 第3、4節に書かれた犯罪に関して、各国は、[日本によるオプション:権限を有する]当局が自ら[日本によるオプション:捜査][アメリカによるオプション:法的アクション]を開始できるようにする。

書かれており、この条約の提案事項に明確に著作権の非親告罪化が含まれていると分かるのである。オプションとして著作権を削るという提案が日本からなされている様子も無く、国内での議論がほぼ否定的なところに落ち着いた著作権の非親告罪化の問題について、日本政府(実際に中身を見ているのはどうせ文化庁だろうが)は勝手に国を売ろうとしているのだ。これが国民に対する背任でなくて何だと言うのか。最近の日本政府・規制官庁の極悪非道な所業は本当に止まるところを知らない。(このリーク文書が本物かどうかという問題はあるのだが、偽物にしては出来すぎており、私は本物だろうと考えている。)

 とにかくあらゆる点において今の日本政府は全く信用できない。模倣品・海賊版対策条約も危険であると知れた。すぐに成立する様子は無いとは言え、この条約について、税関取り締まりにおけるプライバシー侵害、インターネットにおける著作権検閲に対する反対に加えて、今後、正確な情報の公開と著作権の非親告罪化条項の削除を強く求めて行かなくてはならないと私は考えている。

 4月20日から、文化庁ので基本問題小委員会が開催される(開催案内参照)が、開催案内に載っている委員17名の内、ぱっと見ただけでも権利者(団体)代表が9名を占めるという非道い人選である。さらにデタラメなことに、前年度の各委員会と比べると、法学者等もどちらかと言えばバランスの取れた発言をしていた人々がほぼ排除されており、この委員会で基本問題など議論できる訳が無い。保護期間延長問題や私的録音録画補償金問題といった著作権法上の極めて重要な基本問題が、天下り利権で権利者団体と癒着し腐り果てた文化庁によってこのように恣意的に選ばれるメンバーのみで検討されるということこそ本当の基本問題であると私は言い続けよう。引き続き追いかけて行くつもりだが、この委員会に期待できるところは全く無い、歪み切った著作権神授説に基づき結論ありきで消費者代表の集団いじめに血道を上げるだろう腐った委員会など即刻解散してもらいたいものと私は心底思っている。

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2009年4月 6日 (月)

番外その16:ダウンロード違法化問題に関する民主党・川内博史議員の質問主意書と政府の答弁書の転載

 民主党の川内博史議員が、ダウンロード違法化問題に関して政府に質問主意書を投げていたが、これに対する政府の答弁書が公表された(経過)。(川内博史議員のブログの関連エントリ1も参照。)

 リンク先を見てもらえば良い話ではあるのだが、法案に関する現時点での政府の見解として重要な内容を含んでいると思うので、念のため、ここにもその全文を転載しておく。

 いつものお役所答弁だが、政府(文化庁)の見解としては、外国では保護期間切れの扱いとなる映画やアメリカでフェアユースが認められた著作物の、その国からのダウンロードについても、その自動公衆送信が国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものであり、かつ、その事実を知りながらダウンロードしてデジタル方式の録音又は録画を行う場合には違法ということのようである。予想通りの答弁だが、このような運用が本当になされた日には、さらに混乱に拍車をかけることになるだろう。

 また、答弁は、このような違法ダウンロードについてもキャッシュの場合は権利制限の対象となるとしているが、第47条の8のキャッシュの権利制限における「これらの利用又は当該複製物の使用が著作権を侵害しない場合に限る。」という限定の解釈についてはぼかして書いており、実際のケースでこの限定がどう効いてくるかについては何とも言えないことに変わりはない。(キャッシュの人為的な再コピーが権利制限の対象とならないとする見解も予想通りだが、第42回でも書いた通り、このように完全に他人が知り得ない行為を違法とする法律は、法律として致命的な欠陥を抱えているのであり、今のままでは社会に変な歪みを与えることになるだろう。)

 便乗詐欺対策についても、各種媒体や講習会等を通じた広報啓発活動によって改正の内容について広く国民へ周知するとしているだけだが、ダウンロード違法化に関して、いつもの広報啓発活動が何らかの対策になるとは全く思えない。ユーザーから見て何が違法で何が合法かの区別は常につかず、その行為に1個人しか絡まないダウンロードにおいて、エスパーでも無い限り証明も反証もできない「事実を知って」という精神的要件も危険なものとしかなりようが無い。これは周知広報すれば良いとかそういうレベルの問題ではないのである。

 この答弁も紋切り型のお役所答弁に過ぎず、去年の法制小委への提出パブコメにも書いた通り、ダウンロード違法化に関して8000件以上のパブコメの7割方で示された国民の懸念は今なおほとんど全くと言って良いほど何も解消していない。

 このような答弁でごまかされる者などいないだろう。こうした活動をして下さる議員が一人でもいることは本当に有り難いのだが、民主党も党としてはどうにも当てにならないので、ダウンロード違法化問題についても先行きは実に不安である。

(なお、答弁では、一般フェアユース条項の導入の議論にこのダウンロード違法化法案は直接影響しないとしているが、「直接」と修飾語をつけているということは、間接的には影響してくる可能性があると政府(文化庁)も認識していると推測される。また、私的録音録画補償金問題は、今後、基本問題小委員会とやらで検討されるのではないかと思っていたが、この答弁は、それとは別に利害関係者の意見交換の場を設けることも検討しているかのように読める。私的録音録画小委員会についてどこでどのように検討されることになるのかも気になるところである。)

 ついでに一つ最近のニュースも紹介しておくと、特許に関して、特許庁の無効審判の制限と裁判所への判断の一本化の検討を開始するという日経のネット記事があった。判断の一本化が望ましいのはその通りだと思うが、実際の整理は非常に難しいのではないかと思う。

(以下、転載)

著作権法の一部を改正する法律案に関する質問主意書

 今国会に提出された著作権法の一部を改正する法律案(平成二十一年三月十日閣法第五十四号。以下「法案」という。)の内容について、第百六十八回国会において提出した質問主意書(質問第二一六号。以下「先の質問」という。)及び答弁書(内閣衆質一六八第二一六号。以下「先の答弁」という。)を踏まえ、先の質問における指摘が本法案において十分に反映されているとは評価し難いとの認識に基づき、以下質問する。

 法案第三十条第一項第三号の新設条項における「著作権を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものを含む。)を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を、その事実を知りながら行う場合」(以下「本項規定」という。)について質問する。
1)本項規定には、専ら映画の著作物につき我が国よりも著作権の保護期間が短く、かつ文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約第七条第八項を根拠とする相互主義を採用している国において自動公衆送信されている昭和二十九年(西暦千九百五十四年)から三十四年(西暦千九百五十九年)に公開された映画を我が国において視聴する目的でダウンロードする行為は含まれるのか。また、この場合において法案第四十七条の八の「当該複製物の使用が著作権を侵害しない場合」が成立し得る事例は想定しているのか。
2)本項規定には、アメリカ合衆国著作権法第百七条におけるフェアユース規定(権利者の利益を不当に害しない公正な利用であれば、許諾なしに著作物の利用ができるとするもの)に基づき当該国の法律上は合法的にアップロードされ、自動公衆送信されている著作物を我が国において視聴する目的でダウンロードする行為は含まれるのか。
3)先の答弁では「適法サイトに関する情報の提供について運用上の工夫が必要であること」を文化審議会著作権分科会私的録音録画小委員会の報告書に記載したと述べているが、本項規定は先の質問において指摘した「一般国民がインターネットにアクセスする行為に対して常に、かつ高確率で損害賠償を負うリスクを生じさせる結果となる」危険性を一方的に増大させる恐れが大きいと評せざるを得ないものと思料される。このような規定を創設すること自体、諸外国の著作権法におけるフェアユース規定の否定に直結するものであり、このことは我が国の知的財産戦略本部においても提言されている将来的なフェアユース規定の創設を著しく妨げる要因と成り得るのではないか。

 法案第四十七条の八の規定について質問する。
1)先の質問において「仮に現行の著作権法でキャッシュが『複製』と解釈されても権利制限を加えるべきではないとする」文化審議会事務局(以下「事務局」という。)の見解につき「見解に基づく条文が法律に明記されなければ意味を為さないのではないか」と指摘したところであるが、本条項を追加しなければキャッシュが外形的に「複製」とみなされ、違法と成り得る恐れが生じた為に創設するのか。
2)一般に、インターネットを閲覧する際に使用されるブラウザと呼ばれるソフトウェアは特定のフォルダにキャッシュを蓄積する構造となっているが、違法複製物のキャッシュがフォルダに収納されている時点では本条項の規定により合法と解される場合、キャッシュをフォルダから内蔵記憶装置の他の領域(自動公衆送信状態に置かないことを前提とする。以下同じ。)や、外部記憶装置に移動する場合、本条項の規定は適用されるのか。

 先の質問において、本法案が成立・施行された場合に便乗して振り込め詐欺やワンクリック詐欺、恐喝行為等が増大する恐れについて指摘したところ、先の答弁では「御指摘のような被害が生じないよう、仮に同項の規定の適用除外の範囲を拡大する場合には、当該制度改正の内容について広く国民への周知を図ることが重要であると考えている」とされているが、現時点で具体的に「御指摘のような被害が生じないよう」どのような対策を実施する予定であるのか。何ら予定が無い場合、係る犯罪の発生が当然に予見し得る政策を平成十九年秋に実施された意見募集で示された多くの一般国民の反対を押し切って強行する以上、無責任との謗りを免れ得ないものと思料されるが、その点につき政府の見解を問う。

 平成二十年度まで文化審議会著作権分科会(以下「分科会」という。)に設置されていた私的録音録画小委員会の後継組織について質問する。
1)事務局が私的録音録画補償金における「利害関係者」と認定している立場の者は、どのような立場の者であるのか、全ての列挙を求める。
2)報道によると、当該組織は非公開の私的懇談会として設置されるとのことであるが、このような形態で設置する理由は何か。分科会はその閉鎖性ないし情報開示に対する消極的姿勢が平成十六年の国会審議において批判に晒され、同年度より公開を原則として来た経緯があるものと承知しているが、当該組織の設置形態はこうした経緯に真っ向から反するものではないのか。
3)当該組織の構成員の選定基準については分科会委員や私的録音録画小委員会の専門委員に準じているのか。特に当該組織の議事が非公開とされていることにつき、事務局の意向に沿った「利害関係者」が優先的に集められると共に私的録音録画小委員会において事務局の議事進行に批判的な立場の委員または専門委員を排除し、事務局の求める結論に沿った形で議事を円滑に進める意図に基づき非公開とするのではないかとの批判が一部で生じているが、その点につき政府の見解を問う。

右質問する。

衆議院議員川内博史君提出著作権法の一部を改正する法律案に関する質問に対する答弁書

一の1)及び2)について
 お尋ねの「自動公衆送信されている昭和二十九年(西暦千九百五十四年)から三十四年(西暦千九百五十九年)に公開された映画を我が国において視聴する目的でダウンロードする行為」及び「自動公衆送信されている著作物を我が国において視聴する目的でダウンロードする行為」については、当該自動公衆送信が国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものであり、かつ、その事実を知りながら当該自動公衆送信を受信してデジタル方式の録音又は録画を行う場合には、今国会に提出している著作権法の一部を改正する法律案(以下「法案」という。)における著作権法(昭和四十五年法律第四十八号)第三十条第一項第三号に該当する。また、1)の後段のお尋ねの趣旨が必ずしも明らかでないが、当該録音又は録画が、当該視聴のための電子計算機による情報処理の過程において、当該情報処理を円滑かつ効率的に行うために必要と認められる限度で当該電子計算機の記録媒体に行われるものである場合には、法案における著作権法第四十七条の八の規定により、当該録音又は録画については、複製権は及ばない。

一の3)について
 文化庁としては、法案における著作権法第三十条第一項第三号の規定は、「デジタル・ネット時代における知財制度の在り方について(報告)」(平成二十年十一月二十七日知的財産戦略本部デジタル・ネット時代における知財制度専門調査会)における「権利制限の一般規定(日本版フェアユース規定)の導入」に関する提言を踏まえた所要の規定を創設するかどうかに関する検討に直接影響するものとは考えていない。

二の1)について
 法案における著作権法第四十七条の八の規定は、平成二十一年一月の文化審議会著作権分科会報告書(以下「報告書」という。)における「機器利用時・通信過程における蓄積等の取扱いについて」の検討を踏まえ、電子計算機において著作物を利用する場合に当該電子計算機による情報処理の過程で行われる著作物の蓄積に関し、複製権が及ばない範囲を明確にするために創設するものである。

二の2)について
 お尋ねの「移動する場合」の趣旨が必ずしも明らかでないが、法案における著作権法第四十七条の八の規定の適用を受けて作成されたキャッシュを用いて当該キャッシュに係る著作物を新たに複製する場合における当該複製行為については、同条の規定により複製権が制限されるものではない。

三について
 文化庁としては、法案が成立した場合には、インターネット、広報誌その他の媒体の活用、「著作権セミナー」その他の講習会や研修会の開催等を通じた広報啓発活動を行うとともに、関係団体による広報啓発活動を支援することにより、改正の内容について広く国民への周知に努めてまいりたいと考えている。

四の1)について
 お尋ねの「利害関係者」の趣旨が必ずしも明らかでないが、報告書においては、私的録音録画補償金制度の見直しに関する関係者として、「例えば権利者、メーカー、消費者など」と記載されている。

四の2)及び3)について
 お尋ねの「私的録音録画小委員会の後継組織」の趣旨が必ずしも明らかでないが、報告書に記載された「関係者が忌憚のない意見交換ができる場」を設けることに関しては、現在検討中である。また、文化庁としては、私的録音録画補償金制度の見直しに関する検討を行うに際して、御指摘のような「事務局の求める結論に沿った形で議事を円滑に進める意図に基づき非公開とする」との意図は有していない。

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2009年3月15日 (日)

第160回:著作権法改正法案の内容

 前回、全文を転載したが、項目で並べると、以下のようになる。

  1. ダウンロード違法化(第三十条第一項第三号)
  2. 国立国会図書館におけるアーカイブ化のための権利制限の導入(第三十一条第二項)
  3. 障害者のための権利制限の拡充(第三十七条第三項及び第三十七条の二)
  4. オークションのための権利制限の導入(第四十七条の二)
  5. 通信機器の障害の防止・復旧のための権利制限の導入(第四十七条の五)
  6. 通信・コンピュータにおけるキャッシュのための権利制限の導入(第四十七条の五第二項及び第四十七条の八)
  7. 検索エンジンのための権利制限の導入(第四十七条の六)
  8. 情報解析のための権利制限の導入(第四十七条の七)
  9. 裁定制度の拡充(第六十七条及び第六十七条の二)
  10. 登録原簿の電子化の可能化(第七十八条等関係)
  11. 海賊版頒布申出規制(第百十三条及び第百二十一条の二)

(なお、施行は、平成二十二年一月一日を予定。ただし、登録原簿の電子化の可能化については、政令で決め二年以内に施行。)

 およそ、文化庁が出した文化審議会著作権分科会の報告書(第153回参照)通りではあるが、報告書で早急に措置する必要があると書かれていたにもかかわらず何故かリバース・エンジニアリングのための権利制限は入らず、報告書に詳細がほとんど書かれていなかったにもかかわらず裁定制度の拡充がこの法改正に組み込まれ、別に悪い話ではないが、唐突に登録原簿の電子化の可能化が入っている。

 他にも注意しておいた方が良いことがいろいろとあり、以下、今後のために、この法改正案の細かな点について書いて行く。

(1)ダウンロード違法化(第三十条第一項第三号)
 ダウンロード違法化を規定するのは、法改正案の第三十条第一項第三号である。

第三十条(赤字強調部分を追加) 著作権の目的となつている著作物(以下この款において単に「著作物」という。)は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。
(中略)
三 著作権を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものを含む。)を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を、その事実を知りながら行う場合

 ここで、「自動公衆送信を受信して行う」とあるので、対象はほぼインターネット上のダウンロードとなり、「録音又は録画」とあるので、プログラム等は対象外となると考えられる。また、刑事罰はついていないことにも注意しておいた方が良いが、ほぼ文化庁が当初考えていた通りの内容であり、文化庁の報告書で書かれているところの、立法化の検討時にはよく留意して消費者保護を図るべきという少数意見は、条文上は全く反映されていない。(ただし、文化庁の報告書で入るとされていた、違法録音録画物からの録音録画の違法化は含まれなかった。また、「デジタル方式の録音又は録画」とあるので、アナログ方式の録音録画は対象外となると考えられるが、実質的な意味はあまり無いのではないかと思う。)

(2)国立国会図書館におけるアーカイブ化のための権利制限の導入(第三十一条第二項)
 私は、他の図書館における資料のデジタル化についても認めるべきではないかと私は思っているが、残念ながら、今回の法改正案では、

第三十一条第二項(新規追加) 前項各号に掲げる場合のほか、国立国会図書館においては、図書館資料の原本を公衆の利用に供することによるその滅失、損傷又は汚損を避けるため、当該原本に代えて公衆の利用に供するための電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。第三十三条の二第四項において同じ。)を作成する場合には、必要と認められる限度において、当該図書館資料に係る著作物を記録媒体に記録することができる。

と、文化庁の報告書通り、図書館のアーカイブ化のための権利制限の対象は国立国会図書館のみとされている。

(3)障害者のための権利制限の拡充(第三十七条第三項及び第三十七条の二)
 障害者のための権利制限についても、何故このような拡充が今までされて来なかったのか理解に苦しむところである。

(4)オークションのための権利制限の導入(第四十七条の二)
 オークションについても権利制限すること自体は妥当だと思うが、

第四十七条の二(新規追加) 美術の著作物又は写真の著作物の原作品又は複製物の所有者その他のこれらの譲渡又は貸与の権原を有する者が、第二十六条の二第一項又は第二十六条の三に規定する権利を害することなく、その原作品又は複製物を譲渡し、又は貸与しようとする場合には、当該権原を有する者又はその委託を受けた者は、その申出の用に供するため、これらの著作物について、複製又は公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。)(当該複製により作成される複製物を用いて行うこれらの著作物の複製又は当該公衆送信を受信して行うこれらの著作物の複製を防止し、又は抑止するための措置その他の著作権者の利益を不当に害しないための措置として政令で定める措置を講じて行うものに限る。)を行うことができる。

と、文化庁が勝手に(といってもドイツの立法例を参考にしたと言うのだろうが)、対象を美術の著作物又は写真の著作物のみに限定していることには注意が必要である。また、この程度の権利制限であれば、著作権者の利益を不当に害しない場合に限る等の条文上のみの限定で良いはずのところを、著作権者の利益を不当に害しないための措置を政令で定めるとしている点もタチが悪い。

(5)通信機器の障害の防止・復旧のための権利制限の導入(第四十七条の五)
 通信機器の障害の防止・復旧のための権利制限も必要なものと思うが、この権利制限も、

第四十七条の五(新規追加) 自動公衆送信装置等(自動公衆送信装置及び特定送信装置(電気通信回線に接続することにより、その記録媒体のうち特定送信(自動公衆送信以外の無線通信又は有線電気通信の送信で政令で定めるものをいう。以下この項において同じ。)の用に供する部分(第一号において「特定送信用記録媒体」という。)に記録され、又は当該装置に人力される情報の特定送信をする機能を有する装置をいう。)をいう。以下この条において同じ。)を他人の自動公衆送信等(自動公衆送信及び特定送信をいう。以下この条において同じ。)の用に供することを業として行う者は、次の各号に掲げる目的上必要と認められる限度において、当該自動公衆送信装置等により送信可能化等(送信可能化及び特定送信をし得るようにするための行為で政令で定めるものをいう。以下この条において同じ。)がされた著作物を、当該各号に定める記録媒体に記録することができる。
一 自動公衆送信等の求めが当該自動公衆送信装置等に集中することによる送信の遅滞又は当該自動公衆送信装置等の故障による送信の障害を防止すること 当該送信可能化等に係る公衆送信用記録媒体等(公衆送信用記録媒体及び特定送信用記録媒体をいう。次号において同じ。)以外の記録媒体であつて、当該送信可能化等に係る自動公衆送信等の用に供するためのもの
二 当該送信可能化等に係る公衆送信用記録媒体等に記録された当該著作物の複製物が滅失し、又は毀損した場合の復旧の用に供すること 当該公衆送信用記録媒体等以外の記録媒体(公衆送信用記録媒体等であるものを除く。)

と非常にややこしいが、要するに、通信業者が、アクセス集中による送信遅延あるいは機器の故障による障害の発生時にサーバーを追加でき(第1号)、故障した機器の復旧を行う際、一時的に他の記録媒体にサーバーの内容を記録することができる(第2号)とするものである。何故ここまで複雑に書かなければならないのかは良く分からないが、本来なら、こういうところこそ、他国の規定を参考にして条文を作るべきところだったろう。

(6)通信・コンピュータにおけるキャッシュのための権利制限の導入(第四十七条の五第二項及び第四十七条の八)
 キャッシュについては、

第四十七条の五第二項(新規追加) 自動公衆送信装置等を他人の自動公衆送信等の用に供することを業として行う者は、送信可能化等がされた著作物(当該自動公衆送信装置等により送信可能化等がされたものを除く。)の自動公衆送信等を中継するための送信を行う場合には、当該送信後に行われる当該著作物の自動公衆送信等を中継するための送信を効率的に行うために必要と認められる限度において、当該著作物を当該自動公衆送信装置等の記録媒体のうち当該送信の用に供する部分に記録することができる。

第四十七条の八(新規追加) 電子計算機において、著作物を当該著作物の複製物を用いて利用する場合又は無線通信若しくは有線電気通信の送信がされる著作物を当該送信を受信して利用する場合(これらの利用又は当該複製物の使用が著作権を侵害しない場合に限る。)には、当該著作物は、これらの利用のための当該電子計算機による情報処理の過程において、当該情報処理を円滑かつ効率的に行うために必要と認められる限度で、当該電子計算機の記録媒体に記録することができる。

と、割とシンプルに書かれている。ただし、通信のキャッシュについては、「業として行う者」という業規制が入っているために、業として行っていない個人サーバーなどについては対象外となると考えられることには注意しておいた方が良い。

 電子計算機という語のみを使っている第47条の8も分かりにくい(デジタルテレビ等各種デジタル視聴機器についてもコンピュータとみなせるので問題は無いとしても)が、そもそも権利を侵害しないとしたら、権利制限は必要ないはずであり、この条文における「これらの利用又は当該複製物の使用が著作権を侵害しない場合に限る。」という限定は、意味不明である。解釈不能だが、このような限定がある以上、実際のケースでダウンロードにおけるキャッシュについてどのような判断がされるかは予測不能であり、ダウンロード違法化問題におけるキャッシュの取り扱いに関する懸念第42回参照)も、この条文では全く払拭されていないと言わざるを得ない。(この点について、どなたか合理的な解釈が可能なら、是非教えて頂きたいものと思う。なお、実質的な意味は無いものと思うが、何故か、通信の場合は「効率的」、コンピュータの場合は「円滑かつ効率的」と書き分けられている。)

(7)検索エンジンのための権利制限の導入(第四十七条の六)
 検索エンジンのための権利制限も遅きに失した感すらあるが、

第四十七条の六(新規追加) 公衆からの求めに応じ、送信可能化された情報に係る送信元識別符号を検索し、及びその結果を提供することを業として行う者(当該事業の一部を行う者を含み、送信可能化された情報の収集、整理及び提供を政令で定める基準に従つて行う者に限る。)は、当該検索及びその結果の提供を行うために必要と認められる限度において、送信可能化された著作物について、記録媒体への記録又は翻案を行い、及び公衆からの求めに応じ、当該求めに関する送信可能化された情報に係る送信元識別符号の提供と併せて、当該記録媒体に記録された当該著作物の複製物のうち当該送信元識別符号に係るものを用いて自動公衆送信を行うことができる。ただし、当該検索結果提供用記録に係る著作物に係る送信可能化が著作権を侵害するものであることを知つたときは、その後は、当該検索結果提供用記録を用いた自動公衆送信を行つてはならない。

と、検索結果の提供に必要な限りにおいて翻案まで含めて認められているのは良いのだが、この権利制限において「業として行う者」と業規制をかけた上で、政令でその基準を定めようとしている点はやはり非常にタチが悪い。

(8)情報解析のための権利制限の導入(第四十七条の七)
 研究目的の権利制限についても、ほぼ文化庁の報告書通りとは言え、

第四十七条の七 著作物は、電子計算機による情報解析(多数の著作物その他の大量の情報から、当該情報を構成する言語、音、影像その他の要素に係る情報を抽出し、比較、分類その他の統計的な解析を行うことをいう。以下この条において同じ。)を行うことを目的とする場合には、必要と認められる限度において、記録媒体への記録又は翻案(これにより創作した二次的著作物の記録を含む。)を行うことができる。ただし、情報解析を行う者の用に供するために作成されたデータベースの著作物については、この限りでない。

と、非常に狭いものとされてしまっている。情報解析分野に限るとしたところで、大量の情報の統計解析のみが情報解析では無いだろう。今後、フェアユースの導入の検討の中でさらなる権利制限の必要性について検討されて行くものと思うが、あまりにも不十分である。さらに、リバース・エンジニアリングのための権利制限が入っていない点もどうかと思う点である。

(9)裁定制度の拡充(第六十七条及び第六十七条の二)
 裁定制度の拡充については、その詳細が文化庁報告書の中に書かれていなかったものの、法改正案には含まれている。

第六十七条(赤字強調部分を追加) 公表された著作物又は相当期間にわたり公衆に提供され、若しくは提示されている事実が明らかである著作物は、著作権者の不明その他の理由により相当な努力を払つてもその著作権者と連絡することができない場合として政令で定める場合できないときは、文化庁長官の裁定を受け、かつ、通常の使用料の額に相当するものとして文化庁長官が定める額の補償金を著作権者のために供託して、その裁定に係る利用方法により利用することができる。

第六十七条の二(新規追加) 前条第一項の裁定(以下この条において単に「裁定」という。)の申請をした者は、当該申請に係る著作物の利用方法を勘案して文化庁長官が定める額の担保金を供託した場合には、裁定又は裁定をしない処分を受けるまでの間(裁定又は裁定をしない処分を受けるまでの間に著作権者と連絡をすることができるに至つたときは、当該連絡をすることができるに至つた時までの間)、当該申請に係る利用方法と同一の方法により、当該申請に係る著作物を利用することができる。ただし、当該著作物の著作者が当該著作物の出版その他の利用を廃絶しようとしていることが明らかであるときは、この限りでない。

と、申請中の利用についての規定が加わった点は良いのだが、著作権者と連絡がつかない場合を政令で定めるとしているので、実際にどこまで使える制度になるかは政令次第となるだろう。

(10)登録原簿の電子化の可能化(第七十八条)
 これは唐突に入って来たものと思うが、法改正案には、

第七十八条第二項(新規追加) 著作権登録原簿は、政令で定めるところにより、その全部又は一部を磁気ディスク(これに準ずる方法により一定の事項を確実に記録しておくことができる物を含む。第四項において同じ。)をもつて調製することができる。

と、登録原簿の電子化を可能とする条文もある。第129回で書いたように、著作権登録制度の問題に対する即効性の抜本的な解決策は無いものの、こうした地道な電子化・省力化の取組自体は決して悪いことではない。

(11)海賊版頒布申出規制(第百十三条及び第百二十一条の二)
 海賊版の譲渡告知行為の規制も、文化庁の報告書では、インターネットのみとされていたが、

第百十三条(赤字強調部分を追加) 次に掲げる行為は、当該著作者人格権、著作権、出版権、実演家人格権又は著作隣接権を侵害する行為とみなす。
 国内において頒布する目的をもつて、輸入の時において国内で作成したとしたならば著作者人格権、著作権、出版権、実演家人格権又は著作隣接権の侵害となるべき行為によつて作成された物を輸入する行為
 著作者人格権、著作権、出版権、実演家人格権又は著作隣接権を侵害する行為によつて作成された物(前号の輸入に係る物を含む。)を、情を知つて、頒布し、頒布若しくは頒布の目的をもつて所持し、若しくは頒布する旨の申出をし、又は業として輸出し、若しくは業としての輸出の目的をもつて所持する行為

第百二十一条の二(赤字強調部分を追加) 次の各号に掲げる商業用レコード(当該商業用レコードの複製物(二以上の段階にわたる複製に係る複製物を含む。)を含む。)を商業用レコードとして複製し、その複製物を頒布し、その又はその複製物を頒布の目的をもつて所持し、又はその複製物を頒布する旨の申出をした所持した者(当該各号の原盤に音を最初に固定した日の属する年の翌年から起算して五十年を経過した後において当該複製、頒布、所持又は申出又は所持を行つた者を除く。)は、一年以下の懲役若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

と、実際に出てきた条文では、インターネットのみでなく、放送、新聞、雑誌やチラシ等についても含め、全てをカバーするものとなっていることに注意しておいた方が良いだろう。

 結局、最大の問題はダウンロード違法化だと思うが、規制緩和と強化が同時に行われているとは言え、各種権利制限は文化庁が今までさぼっていたことを示しているに過ぎず、研究目的利用等の各種公正利用のための権利制限も狭すぎ、条文がおかしいためキャッシュの問題すら解消しているかどうか怪しく法改正案の全ての条文を見ても、このような立法は、知財計画へのパブコメでも書いた通り、8千件以上のパブコメの7割方で示されたダウンロード違法化に対する国民の反対・懸念を一欠片も払拭していないものである。 

法制小委員会へのパブコメで書いた通り、一昨年のパブコメで示された、①そもそも著作権という私法が私的領域に踏み込むこと自体がおかしい、②家庭内の複製行為を取り締まることはほとんどできず、このような法改正には実効性がない、③通常の録音録画物について違法合法を区別することはできない、④特に、インターネット利用では、キャッシュとして自動的になされるコピーがあるなど、違法合法を外形的に区別できないため、ダウンロードが違法と言われても一般ユーザーにはどうしたら良いのかさっぱり分からず、このような法改正は社 会的混乱しかもたらさない、⑤ダウンロードはその行為に1個人しか絡まないため、エスパーでも無い限り「情を知って」の要件は証明も反証もできないものであり、この要件は司法判断でどう倒されるか分からず、場合によってはインターネットへのアクセスそのものに影響を及ぼし兼ねないこのような法改正は極めて危険である、⑥そもそも違法流通は送信可能化権による対応が可能である上、この送信可能化権との関係でダウンロードによる損害額がどう算定されるのかもよ く分からない、⑦パロディの著作物のダウンロードについて、ごく普通のユーザーにまでリスクを負わせるのはおかしい、⑧研究など公正利用として認められるべき目的の私的複製まで影響を受ける、といった各種の指摘を、この法改正案は全て無視している。)

 繰り返しになるが、特に、一人しか行為に絡まないダウンロードにおいて、「その事実を知って」なる要件は、エスパーでもない限り証明も反証もできない無意味かつ危険な要件であり、技術的・外形的に違法性の区別がつかない以上、このようなダウンロード違法化は法規範としての力すら持ち得ないものである。このような法改正を押し通せば、結局、ダウンロード以外も含め著作権法全体に対するモラルハザードがさらに進行するだけであり、これを逆にねじ曲げてエンフォースしようとすれば、著作権検閲という日本国として最低最悪の手段に突き進む恐れしかない。どう転ぼうが、このような形でなされるダウンロード違法化は百害あって一利ない最低の法改正である。

 選挙がどうなるかも良く分からない中、今後の予定は流動的だが、もし審議(経過)にかかるようなら、衆議院文部科学委員会→衆議院本会議→参議院文教科学委員会→参議院本会議の順に進むはずである。個人でできることは限られるが、今後も適宜様子を見ながら、膨大な数のパブコメで指摘されたダウンロード違法化の問題点は改正条文でも全く払拭されておらず、改正法案から第30条第1項第3号を取り除く修正が必須であることを、各党や国会議員等へ地道に指摘して行くことになるだろう。

 また、立法プロセス自体の改革はまだまだ先のことになるだろうが、少なくとも国民の目が注がれていることを、立法に携わる人間に嫌でも分からせるようにして行かなくてはならない。来るべき選挙の参考とするべく、著作権法の改正案が審議にかかったら、これらの委員会や本会議の審議の様子は全てチェックして、各党の各議員の発言について分かり易い形にまとめるつもりである。

 一つだけニュースも紹介しておくと、ITmediaの記事の通り、フランスの3ストライク法案の下院での審議も揉めている。Le Mondeの記事によると、フランスの多数派工作によって理事会レベルで一旦は取り除かれた、3ストライクアウト法案を否定するディレクティブ修正案(第116回参照)が、欧州議会によって通信ディレクティブ案の中に再度取り入れられたようであり、この3ストライク法案の審議がさらに難航することは必死ではないかと思う。

 次回は、また補償金に関する国際動向の話を取り上げたいと思っている。

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2009年3月12日 (木)

第159回:著作権法改正法案全文の転載

 前々回の追記で、ダウンロード違法化を含む著作権法改正法案が閣議決定されたというニュースを紹介したが、その法案が文科省のHP概要(pdf)要綱(pdf)法律案(pdf)理由(pdf)新旧対照条文(pdf)参照条文(pdf))に掲載された。リンク先を見てもらえば良い話ではあるのだが、ここにも、その全文を転載しておく。

 他の点も含めていろいろ言いたいことはあるのだが、特に、ダウンロード違法化については、この法改正案は、第30条第1項第3号の追加によって、情を知ってネットから私的録音録画する行為を、私的複製の範囲から単純に外すという、初期から文化庁が考えていた形になっており、文化庁がユーザー保護策を最後まで法律的にも取ろうとしなかったことが伺い知れる。

 次回も、この法改正案の内容について書きたいと思っているところである。

(1)理由
 著作物等の公正な利用を図るとともに著作権等の適切な保護に資するため、障害者の用に供するために必要な方式による複製、美術の著作物等の譲渡の申出のための複製、送信可能化された情報の検索のための複製、電子計算機による著作物等の利用、著作権者等と連絡することができない場合の著作物等の利用等をより円滑に行えるようにするための措置を講ずるとともに、著作権等を侵害する自動公衆送信をその事実を知りながら受信して行う私的使用を目的とする録音又は録画について著作権者等の許諾を要することとし、あわせて著作権等を侵害する行為により作成された物の頒布の申出を情を知って行う行為を著作権等の侵害行為とみなすこととする等の措置を講ずる必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

(2)要綱
第一 権利制限規定の改正
 私的使用の目的で行う複製のうち、著作権を侵害する自動公衆送信を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を、その事実を知りながら行うものは、複製権が及ぶこととすること。(第三十条第一項関係)

 国立国会図書館においては、図書館資料の原本を公衆の利用に供することによる滅失、損傷又は汚損を避けるため、原本に代えて公衆の利用に供するための電磁的記録を、必要と認められる限度において作成することができることとすること。(第三十一条第二項関係)

 障害者のための著作物利用の円滑化(第三十七条第三項及び第三十七条の二関係)
 視覚障害者等(視覚障害者その他視覚による表現の認識に障害のある者をいう。)の福祉に関する事業を行う者で政令で定めるものは、視覚によりその表現が認識される方式により公衆への提供等がされている著作物について、専ら視覚障害者等の用に供するために必要と認められる限度において、文字を音声にすることその他当該視覚障害者等が利用するために必要な方式により、複製し、又は自動公衆送信することができることとすること。
 聴覚障害者等(聴覚障害者その他聴覚による表現の認識に障害のある者をいう。)の福祉に関する事業を行う者で政令で定めるものは、聴覚によりその表現が認識される方式により公衆への提供等がされている著作物について、専ら聴覚障害者等の用に供するために必要と認められる限度において、音声を文字にすることその他当該聴覚障害者等が利用するために必要な方式により、当該著作物の音声の複製若しくは自動公衆送信をし、又は専ら聴覚障害者等向けの貸出しの用に供するために、その音声の複製と併せて複製することができることとすること。
 著作権者又はその許諾を受けた者等により、著作物について、障害者が利用するために必要な方式による公衆への提供等がされている場合は、これらの規定を適用しないこと。

 美術の著作物又は写真の著作物の原作品又は複製物の所有者その他のこれらの譲渡等の権原を有する者は、著作権者の譲渡権又は貸与権を害することなくその原作品又は複製物を譲渡しようとするときは、譲渡等の申出の用に供するため、これらの著作物の複製又は公衆送信を行うことができることとすること。(第四十七条の二関係)

 インターネットに関する著作物利用及び電子計算機を用いた著作物利用の円滑化
 自動公衆送信装置を他人の送信の用に供することを業として行う者は、自動公衆送信装置の故障等による送信の障害を防止すること若しくはその記録媒体に記録された複製物が滅失若しくは毀損をした場合の復旧の用に供すること又は自動公衆送信を中継するための送信を効率的に行うこと等の目的上必要と認められる限度において、送信可能化等がされる著作物を記録媒体に記録することができることとすること。(第四十七条の五関係)
 送信可能化された情報に係る送信元識別符号を公衆からの求めに応じて検索し、及びその結果を提供することを業として行う者は、必要と認められる限度において、送信可能化された著作物を記録媒体に記録し、及びその記録を用いて、送信元識別符号と併せて自動公衆送信することができることとすること。(第四十七条の六関係)
 著作物は、電子計算機による情報解析を行うために、必要と認められる限度において、記録媒体に記録することができることとすること。(第四十七条の七関係)
 著作物は、電子計算機において著作物を利用する場合には、電子計算機による情報処理の過程において、その情報処理を円滑かつ効率的に行うために必要と認められる限度で、電子計算機の記録媒体に記録することができることとすること。(第四十七条の八関係)

 三から五までの規定の適用を受けて作成された著作物の複製物をこれらの規定の目的以外の目的で利用した場合の取扱いその他所要の規定の整備を行うこと。(第四十九条等関係)

第二 著作権者等不明の場合における著作物等の利用の円滑化
 第六十七条の裁定制度(著作権者不明その他の理由により、相当な努力を払っても著作権者と連絡することができない場合として政令で定める場合に、文化庁長官の裁定を受けて著作物を利用することができる制度をいう。)の申請をした者は、文化庁長官が定める額の担保金を供託した場合には、裁定又は裁定をしない処分を受けるまでの間、裁定の申請に係る利用方法により、著作物を利用することができることとすること。(第六十七条の二第一項関係)

 一により著作物を利用した者が裁定又は裁定をしない処分を受けたときにおいて著作権者が担保金から弁済を受けるべき補償金等に関し、額の決定、手続等の規定を設けること。(第六十七条の二、第七十条、第七十一条等関係)

 著作隣接権(実演、レコード、放送又は有線放送の利用に関する権利をいう。)についても、第六十七条の裁定制度及び一・二に掲げる制度の対象とすること。(第百三条関係)

第三 権利侵害品等の頒布の申出行為についての規制(第百十三条及び第百二十一条の二関係)
 著作権等を侵害する行為によって作成された物等について、情を知って、頒布する旨の申出をする行為を著作権等を侵害する行為とみなす等の措置を講ずること。

第四 その他
 著作権登録原簿、出版権登録原簿及び著作隣接権登録原簿について、その全部又は一部を磁気ディスクで調製できることとすること。(第七十八条等関係)

 その他関係規定について所要の整備を行うこと。

第五 附則関係
 この法律は、平成二十二年一月一日から施行すること。ただし、第四の一については公布の日から起算して二年を超えない範囲内において政令で定める日から施行すること。

 所要の経過措置について規定すること。

(3)改正法案(赤字強調が追加部分である)
(目次)
第二章 著作者の権利
 第九節 補償金(第七十一条—第七十四条)

(定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
九の五 送信可能化 次のいずれかに掲げる行為により自動公衆送信し得るようにすることをいう。
 公衆の用に供されている電気通信回線に接続している自動公衆送信装置(公衆の用に供する電気通信回線に接続することにより、その記録媒体のうち自動公衆送信の用に供する部分(以下この号及び第四十七条の五第一項第一号において「公衆送信用記録媒体」という。)に記録され、又は当該装置に入力される情報を自動公衆送信する機能を有する装置をいう。以下同じ。)の公衆送信用記録媒体に情報を記録し、情報が記録された記録媒体を当該自動公衆送信装置の公衆送信用記録媒体として加え、若しくは情報が記録された記録媒体を当該自動公衆送信装置の公衆送信用記録媒体に変換し、又は当該自動公衆送信装置に情報を入力すること。

(譲渡権)
第二十六条の二 著作者は、その著作物(映画の著作物を除く。以下この条において同じ。)をその原作品又は複製物(映画の著作物において複製されている著作物にあつては、当該映画の著作物の複製物を除く。以下この条において同じ。)の譲渡により公衆に提供する権利を専有する。
 前項の規定は、著作物の原作品又は複製物で次の各号のいずれかに該当するものの譲渡による場合には、適用しない。
 前項に規定する権利を有する者又はその許諾を得た者により公衆に譲渡された著作物の原作品又は複製物
 第六十七条第一項若しくは第六十九条の規定による裁定又は万国著作権条約の実施に伴う著作権法の特例に関する法律(昭和三十一年法律第八十六号)第五条第一項の規定による許可を受けて公衆に譲渡された著作物の複製物
三 第六十七条の二第一項の規定の適用を受けて公衆に譲渡された著作物の複製物
 前項に規定する権利を有する者又はその承諾を得た者により特定かつ少数の者に譲渡された著作物の原作品又は複製物
 国外において、前項に規定する権利に相当する権利を害することなく、又は同項に規定する権利に相当する権利を有する者若しくはその承諾を得た者により譲渡された著作物の原作品又は複製物

(私的使用のための複製)
第三十条 著作権の目的となつている著作物(以下この款において単に「著作物」という。)は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。
 公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製機器(複製の機能を有し、これに関する装置の全部又は主要な部分が自動化されている機器をいう。)を用いて複製する場合
 技術的保護手段の回避(技術的保護手段に用いられている信号の除去又は改変(記録又は送信の方式の変換に伴う技術的な制約による除去又は改変を除く。)を行うことにより、当該技術的保護手段によつて防止される行為を可能とし、又は当該技術的保護手段によつて抑止される行為の結果に障害を生じないようにすることをいう。第百二十条の二第一号及び第二号において同じ。)により可能となり、又はその結果に障害が生じないようになつた複製を、その事実を知りながら行う場合
三 著作権を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものを含む。)を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を、その事実を知りながら行う場合

(図書館等における複製)
第三十一条 国立国会図書館及び図書、記録その他の資料を図書、記録その他の資料を公衆の利用に供することを目的とする図書館その他の施設で政令で定めるもの(以下この条において「図書館等」という。)においては、次に掲げる場合には、その営利を目的としない事業として、図書館等の図書、記録その他の資料(以下この条において「図書館資料」という。)を用いて著作物を複製することができる。
 図書館等の利用者の求めに応じ、その調査研究の用に供するために、公表された著作物の一部分(発行後相当期間を経過した定期刊行物に掲載された個々個個の著作物にあつては、その全部)の複製物を一人につき一部提供する場合
 図書館資料の保存のため必要がある場合
 他の図書館等の求めに応じ、絶版その他これに準ずる理由により一般に入手することが困難な図書館資料の複製物を提供する場合

2 前項各号に掲げる場合のほか、国立国会図書館においては、図書館資料の原本を公衆の利用に供することによるその滅失、損傷又は汚損を避けるため、当該原本に代えて公衆の利用に供するための電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。第三十三条の二第四項において同じ。)を作成する場合には、必要と認められる限度において、当該図書館資料に係る著作物を記録媒体に記録することができる。

(教科用図書等への掲載)
第三十三条 公表された著作物は、学校教育の目的上必要と認められる限度において、教科用図書(小学校、中学校、高等学校又は中等教育学校その他これらに準ずる学校における教育の用に供される児童用又は生徒用の図書であつて、文部科学大臣の検定を経たもの又は文部科学省が著作の名義を有するものをいう。以下次条において同じ。)に掲載することができる。

 前三項の規定は、高等学校(中等教育学校の後期課程を含む。)の通信教育用学習図書及び第一項の教科用図書に係る教師用指導書(当該教科用図書を発行する者の発行に係るものに限る。)への著作物の掲載について準用する。

(教科用拡大図書等の作成のための複製等)
第三十三条の二
4 障害のある児童及び生徒のための教科用特定図書等の普及の促進等に関する法律(平成二十年法律第八十一号)第五条第一項又は第二項の規定により教科用図書に掲載された著作物に係る電磁的記録(同法第二条第五項に規定する電磁的記録をいう。)の提供を行う者は、その提供のために必要と認められる限度において、当該著作物を利用することができる。

視覚障害者等のための点字による複製等)
第三十七条
3 視覚障害者その他視覚による表現の認識に障害のある者(以下この項及び第百二条第四項において「視覚障害者等」という。)の福祉に関する事業を行う者で政令で定めるものは、公表された著作物であつて、視覚によりその表現が認識される方式(視覚及び他の知覚により認識される方式を含む。)により公衆に提供され、又は提示されているもの(当該著作物以外の著作物で、当該著作物において複製されているものその他当該著作物と一体として公衆に提供され、又は提示されているものを含む。以下この項及び同条第四項において「視覚著作物」という。)について、専ら視覚障害者等で当該方式によつては当該視覚著作物を利用することが困難な者の用に供するために必要と認められる限度において、当該視覚著作物に係る文字を音声にすることその他当該視覚障害者等が利用するために必要な方式により、複製し、又は自動公衆送信(送信可能化を含む。)を行うことができる。ただし、当該視覚著作物について、著作権者又はその許諾を得た者若しくは第七十九条の出版権の設定を受けた者により、当該方式による公衆への提供又は提示が行われている場合は、この限りでない。点字図書館その他の視覚障害者の福祉の増進を目的とする施設で政令で定めるものにおいては、公表された著作物について、専ら視覚障害者向けの貸出しの用若しくは自動公衆送信(送信可能化を含む。以下この項において同じ。)の用に供するために録音し、又は専ら視覚障害者の用に供するために、その録音物を用いて自動公衆送信を行うことができる。

(聴覚障害者のための自動公衆送信)
第三十七条の二 聴覚障害者その他聴覚による表現の認識に障害のある者(以下この条及び次条第五項において「聴覚障害者等」という。)の福祉に関する事業を行う者で次の各号に掲げる利用の区分に応じて政令で定めるものは、公表された著作物であつて、聴覚によりその表現が認識される方式(聴覚及び他の知覚により認識される方式を含む。)により公衆に提供され、又は提示されているもの(当該著作物以外の著作物で、当該著作物において複製されているものその他当該著作物と一体として公衆に提供され、又は提示されているものを含む。以下この条において「聴覚著作物」という。)について、専ら聴覚障害者等で当該方式によつては当該聴覚著作物を利用することが困難な者の用に供するために必要と認められる限度において、それぞれ当該各号に掲げる利用を行うことができる。ただし、当該聴覚著作物について、著作権者又はその許諾を得た者若しくは第七十九条の出版権の設定を受けた者により、当該聴覚障害者等が利用するために必要な方式による公衆への提供又は提示が行われている場合は、この限りでない。
一 当該聴覚著作物に係る音声について、これを文字にすることその他当該聴覚障害者等が利用するために必要な方式により、複製し、又は自動公衆送信(送信可能化を含む。)を行うこと。
二 専ら当該聴覚障害者等向けの貸出しの用に供するため、複製すること(当該聴覚著作物に係る音声を文字にすることその他当該聴覚障害者等が利用するために必要な方式による当該音声の複製と併せて行うものに限る。)。

聴覚障害者の福祉の増進を目的とする事業を行う者で政令で定めるものは、放送され、又は有線放送される著作物(放送される著作物が自動公衆送信される場合の当該著作物を含む。以下この条において同じ。)について、専ら聴覚障害者の用に供するために、当該放送され、又は有線放送される著作物に係る音声を文字にしてする自動公衆送信(送信可能化のうち、公衆の用に供されている電気通信回線に接続している自動公衆送信装置に情報を入力することによるものを含む。)を行うことができる。

(営利を目的としない上演等)
第三十八条
 映画フィルムその他の視聴覚資料を公衆の利用に供することを目的とする視聴覚教育施設その他の施設(営利を目的として設置されているものを除く。)で政令で定めるもの及び聴覚障害者等の福祉に関する事業を行う者で前条の政令で定めるもの(同条第二号に係るものに限り、営利を目的として当該事業を行うものを除く。)は、公表された映画の著作物を、その複製物の貸与を受ける者から料金を受けない場合には、その複製物の貸与により頒布することができる。この場合において、当該頒布を行う者は、当該映画の著作物又は当該映画の著作物において複製されている著作物につき第二十六条に規定する権利を有する者(第二十八条の規定により第二十六条に規定する権利と同一の権利を有する者を含む。)に相当な額の補償金を支払わなければならない。

(翻訳、翻案等による利用)
第四十三条 次の各号に掲げる規定により著作物を利用することができる場合には、当該各号に掲げる方法により、当該著作物を当該各号に掲げる規定に従つて利用することができる。
 第三十条第一項、第三十三条第一項(同条第四項において準用する場合を含む。)、第三十四条第一項又は第三十五条 翻訳、編曲、変形又は翻案
 第三十一条第一項第一号第三十一条第一号、第三十二条、第三十六条、第三十七条第一項若しくは第二項第三十七条、第三十九条第一項、第四十条第二項、第四十一条又は第四十二条 翻訳
三 第三十三条の二第一項 変形又は翻案
四 第三十七条第三項 翻訳、変形又は翻案

 第三十七条の二 翻訳又は翻案翻案(要約に限る。)

(美術の著作物等の譲渡等の申出に伴う複製等)
第四十七条の二 美術の著作物又は写真の著作物の原作品又は複製物の所有者その他のこれらの譲渡又は貸与の権原を有する者が、第二十六条の二第一項又は第二十六条の三に規定する権利を害することなく、その原作品又は複製物を譲渡し、又は貸与しようとする場合には、当該権原を有する者又はその委託を受けた者は、その申出の用に供するため、これらの著作物について、複製又は公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。)(当該複製により作成される複製物を用いて行うこれらの著作物の複製又は当該公衆送信を受信して行うこれらの著作物の複製を防止し、又は抑止するための措置その他の著作権者の利益を不当に害しないための措置として政令で定める措置を講じて行うものに限る。)を行うことができる。

(プログラムの著作物の複製物の所有者による複製等)
第四十七条の三第四十七条の二

(保守、修理等のための一時的複製)
第四十七条の四第四十七条の三

(送信の障害の防止等のための複製)
第四十七条の五 自動公衆送信装置等(自動公衆送信装置及び特定送信装置(電気通信回線に接続することにより、その記録媒体のうち特定送信(自動公衆送信以外の無線通信又は有線電気通信の送信で政令で定めるものをいう。以下この項において同じ。)の用に供する部分(第一号において「特定送信用記録媒体」という。)に記録され、又は当該装置に人力される情報の特定送信をする機能を有する装置をいう。)をいう。以下この条において同じ。)を他人の自動公衆送信等(自動公衆送信及び特定送信をいう。以下この条において同じ。)の用に供することを業として行う者は、次の各号に掲げる目的上必要と認められる限度において、当該自動公衆送信装置等により送信可能化等(送信可能化及び特定送信をし得るようにするための行為で政令で定めるものをいう。以下この条において同じ。)がされた著作物を、当該各号に定める記録媒体に記録することができる。
一 自動公衆送信等の求めが当該自動公衆送信装置等に集中することによる送信の遅滞又は当該自動公衆送信装置等の故障による送信の障害を防止すること 当該送信可能化等に係る公衆送信用記録媒体等(公衆送信用記録媒体及び特定送信用記録媒体をいう。次号において同じ。)以外の記録媒体であつて、当該送信可能化等に係る自動公衆送信等の用に供するためのもの
二 当該送信可能化等に係る公衆送信用記録媒体等に記録された当該著作物の複製物が滅失し、又は毀損した場合の復旧の用に供すること 当該公衆送信用記録媒体等以外の記録媒体(公衆送信用記録媒体等であるものを除く。)

2 自動公衆送信装置等を他人の自動公衆送信等の用に供することを業として行う者は、送信可能化等がされた著作物(当該自動公衆送信装置等により送信可能化等がされたものを除く。)の自動公衆送信等を中継するための送信を行う場合には、当該送信後に行われる当該著作物の自動公衆送信等を中継するための送信を効率的に行うために必要と認められる限度において、当該著作物を当該自動公衆送信装置等の記録媒体のうち当該送信の用に供する部分に記録することができる。

3 次の各号に掲げる者は、当該各号に定めるときは、その後は、当該各号に規定する規定の適用を受けて作成された著作物の複製物を保存してはならない。
一 第一項(第一号に係る部分に限る。)又は前項の規定により著作物を記録媒体に記録した者 これらの規定に定める目的のため当該複製物を保存する必要がなくなつたと認められるとき、又は当該著作物に係る送信可能化等が著作権を侵害するものであること(国外で行われた送信可能化等にあつては、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものであること)を知つたとき。
二 第一項(第二号に係る部分に限る。)の規定により著作物を記録媒体に記録した者 同号に掲げる目的のため当該複製物を保存する必要がなくなつたと認められるとき。

(送信可能化された情報の送信元識別符号の検索等のための複製等)
第四十七条の六 公衆からの求めに応じ、送信可能化された情報に係る送信元識別符号(自動公衆送信の送信元を識別するための文字、番号、記号その他の符号をいう。以下この条において同じ。)を検索し、及びその結果を提供することを業として行う者(当該事業の一部を行う者を含み、送信可能化された情報の収集、整理及び提供を政令で定める基準に従つて行う者に限る。)は、当該検索及びその結果の提供を行うために必要と認められる限度において、送信可能化された著作物(当該著作物に係る自動公衆送信について受信者を識別するための情報の人力を求めることその他の受信を制限するための手段が講じられている場合にあつては、当該自動公衆送信の受信について当該手段を講じた者の承諾を得たものに限る。)について、記録媒体への記録又は翻案(これにより創作した二次的著作物の記録を含む。)を行い、及び公衆からの求めに応じ、当該求めに関する送信可能化された情報に係る送信元識別符号の提供と併せて、当該記録媒体に記録された当該著作物の複製物(当該著作物に係る当該二次的著作物の複製物を含む。以下この条において「検索結果提供用記録」という。)のうち当該送信元識別符号に係るものを用いて自動公衆送信(送信可能化を含む。)を行うことができる。ただし、当該検索結果提供用記録に係る著作物に係る送信可能化が著作権を侵害するものであること(国外で行われた送信可能化にあつては、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものであること)を知つたときは、その後は、当該検索結果提供用記録を用いた自動公衆送信(送信可能化を含む。)を行つてはならない。

(情報解析のための複製等)
第四十七条の七 著作物は、電子計算機による情報解析(多数の著作物その他の大量の情報から、当該情報を構成する言語、音、影像その他の要素に係る情報を抽出し、比較、分類その他の統計的な解析を行うことをいう。以下この条において同じ。)を行うことを目的とする場合には、必要と認められる限度において、記録媒体への記録又は翻案(これにより創作した二次的著作物の記録を含む。)を行うことができる。ただし、情報解析を行う者の用に供するために作成されたデータベースの著作物については、この限りでない。

(電子計算機における著作物の利用に伴う複製)
第四十七条の八 電子計算機において、著作物を当該著作物の複製物を用いて利用する場合又は無線通信若しくは有線電気通信の送信がされる著作物を当該送信を受信して利用する場合(これらの利用又は当該複製物の使用が著作権を侵害しない場合に限る。)には、当該著作物は、これらの利用のための当該電子計算機による情報処理の過程において、当該情報処理を円滑かつ効率的に行うために必要と認められる限度で、当該電子計算機の記録媒体に記録することができる。

(複製権の制限により作成された複製物の譲渡) 
第四十七条の九第四十七条の四  第三十一条第一項(第一号に係る部分に限る。以下この条において同じ。)、第三十二条第三十一条第一号、第三十二条、第三十三条第一項(同条第四項において準用する場合を含む。)、第三十三条の二第一項若しくは第四項、第三十四条第一項、第三十五条第一項、第三十六条第一項、第三十七条、第三十七条の二(第二号を除く。以下この条において同じ。)第三十七条第一項若しくは第二項、第三十九条第一項、第四十条第一項若しくは第二項、第四十一条から第四十二条の二まで又は第四十六条から第四十七条の二まで第四十一条、第四十二条、第四十二条の二、第四十六条又は第四十七条の規定により複製することができる著作物は、これらの規定の適用を受けて作成された複製物(第三十一条第一項(第三十一条第一号、第三十五条第一項、第三十六条第一項又は第四十二条の規定に係る場合にあつては、映画の著作物の複製物(映画の著作物において複製されている著作物にあつては、当該映画の著作物の複製物を含む。以下この条において同じ。)を除く。)の譲渡により公衆に提供することができる。ただし、第三十一条第一号、第三十三条の二第一項若しくは第四項、第三十五条第一項、第四十一条、第四十二条又は第四十二条の二の規定の適用を受けて作成された著作物の複製物(第三十一条第一号、第三十五条第一項又は第四十二条の規定に係る場合にあつては、映画の著作物の複製物を除く。)を、第三十一条第一項第三十一条第一号、第三十三条の二第一項若しくは第四項、第三十五条第一項、第三十七条第三項、第三十七条の二、第四十一条から第四十二条の二まで又は第四十七条の二第四十一条、第四十二条又は第四十二条の二に定める目的以外の目的のために公衆に譲渡する場合は、この限りでない。

(出所の明示)
第四十八条 次の各号に掲げる場合には、当該各号に規定する著作物の出所を、その複製又は利用の態様に応じ合理的と認められる方法及び程度により、明示しなければならない。
 第三十二条、第三十三条第一項(同条第四項において準用する場合を含む。)、第三十三条の二第一項、第三十七条第一項、第四十二条又は第四十七条の規定により著作物を複製する場合
 第三十四条第一項、第三十七条第三項、第三十七条の二、第三十九条第一項、第四十条第一項若しくは第二項又は第四十七条の二又は第四十条第一項若しくは第二項の規定により著作物を利用する場合
 第三十二条の規定により著作物を複製以外の方法により利用する場合又は第三十五条、第三十六条第一項、第三十八条第一項、第四十一条若しくは第四十六条の規定により著作物を利用する場合において、その出所を明示する慣行があるとき。

(複製物の目的外使用等)
第四十九条 次に掲げる者は、第二十一条の複製を行つたものとみなす。
 第三十条第一項、第三十一条第一項第一号第三十一条第一号、第三十三条の二第一項若しくは第四項、第三十五条第一項、第三十七条第三項、第三十七条の二本文(同条第二号に係る場合にあつては、同号。次項第一号において同じ。)、第四十一条から第四十二条の二まで、第四十四条第一項若しくは第二項、第四十七条の二又は第四十七条の六又は第四十四条第一項若しくは第二項に定める目的以外の目的のために、これらの規定の適用を受けて作成された著作物の複製物(次項第四号の複製物に該当するものを除く。)を頒布し、又は当該複製物によつて当該著作物を公衆に提示した者
 第四十四条第三項の規定に違反して同項の録音物又は録画物を保存した放送事業者又は有線放送事業者
 第四十七条の三第一項第四十七条の二第一項の規定の適用を受けて作成された著作物の複製物(次項第二号の複製物に該当するものを除く。)若しくは「第四十七条の四第一項第四十七条の三第一項若しくは第二項の規定の適用を受けて同条第一項若しくは第二項に規定する内蔵記録媒体以外の記録媒体に一時的に記録された著作物の複製物を頒布し、又はこれらの複製物によつてこれらの著作物を公衆に提示した者
 第四十七条の三第二項、第四十七条の四第三項又は第四十七条の五第三項第四十七条の二第二項又は第四十七条の三第三項の規定に違反してこれらの規定の複製物(次項第二号の複製物に該当するものを除く。)を保存した者
五 第四十七条の五第一項若しくは第二項又は第四十七条の七に定める目的以外の目的のために、これらの規定の適用を受けて作成された著作物の複製物(次項第六号の複製物に該当するものを除く。)を用いて当該著作物を利用した者
六 第四十七条の六ただし書の規定に違反して、同条本文の規定の適用を受けて作成された著作物の複製物(次項第五号の複製物に該当するものを除く。)を用いて当該著作物の自動公衆送信(送信可能化を含む。)を行つた者
七 第四十七条の八の規定の適用を受けて作成された著作物の複製物を、当該著作物の同条に規定する複製物の使用に代えて使用し、又は当該著作物に係る同条に規定する送信の受信(当該送信が受信者からの求めに応じ自動的に行われるものである場合にあつては、当該送信の受信又はこれに準ずるものとして政令で定める行為)をしないで使用して、当該著作物を利用した者

 次に掲げる者は、当該二次的著作物の原著作物につき第二十七条の翻訳、編曲、変形又は翻案を行つたものとみなす。
 第三十一条第一項第一号、第三十三条の二第一項、第三十五条第一項第三十条第一項、第三十一条第一号、第三十五条、第三十七条第三項、第三十七条の二本文、第四十一条又は第四十二条に定める目的以外の目的のために、第四十三条の規定の適用を受けて同条各号同条第一号若しくは第二号に掲げるこれらの規定に従い作成された二次的著作物の複製物を頒布し、又は当該複製物によつて当該二次的著作物を公衆に提示した者
 第四十七条の三第一項第四十七条の二第一項の規定の適用を受けて作成された二次的著作物の複製物を頒布し、又は当該複製物によつて当該二次的著作物を公衆に提示した者
 第四十七条の三第二項第四十七条の二第二項の規定に違反して前号の複製物を保存した者
四 第四十七条の六に定める目的以外の目的のために、同条の規定の適用を受けて作成された二次的著作物の複製物を頒布し、又は当該複製物によつて当該二次的著作物を公衆に提示した者
五 第四十七条の六ただし書の規定に違反して、同条本文の規定の適用を受けて作成された二次的著作物の複製物を用いて当該二次的著作物の自動公衆送信(送信可能化を含む。)を行つた者
六 第四十七条の七に定める目的以外の目的のために、同条の規定の適用を受けて作成された二次的著作物の複製物を用いて当該二次的著作物を利用した者

(著作権者不明等の場合における著作物の利用)
第六十七条 公表された著作物又は相当期間にわたり公衆に提供され、若しくは提示されている事実が明らかである著作物は、著作権者の不明その他の理由により相当な努力を払つてもその著作権者と連絡することができない場合として政令で定める場合できないときは、文化庁長官の裁定を受け、かつ、通常の使用料の額に相当するものとして文化庁長官が定める額の補償金を著作権者のために供託して、その裁定に係る利用方法により利用することができる。
2 前項の裁定を受けようとする者は、著作物の利用方法その他政令で定める事項を記載した申請書に、著作権者と連絡することができないことを疎明する資料その他政令で定める資料を添えて、これを文化庁長官に提出しなければならない。
 第一項前項の規定により作成した著作物の複製物には、同項の裁定に係る複製物である旨及びその裁定のあつた年月日を表示しなければならない。

(裁定申請中の著作物の利用)
第六十七条の二 前条第一項の裁定(以下この条において単に「裁定」という。)の申請をした者は、当該申請に係る著作物の利用方法を勘案して文化庁長官が定める額の担保金を供託した場合には、裁定又は裁定をしない処分を受けるまでの間(裁定又は裁定をしない処分を受けるまでの間に著作権者と連絡をすることができるに至つたときは、当該連絡をすることができるに至つた時までの間)、当該申請に係る利用方法と同一の方法により、当該申請に係る著作物を利用することができる。ただし、当該著作物の著作者が当該著作物の出版その他の利用を廃絶しようとしていることが明らかであるときは、この限りでない。

2 前項の規定により作成した著作物の複製物には、同項の規定の適用を受けて作成された複製物である旨及び裁定の申請をした年月日を表示しなければならない。

3 第一項の規定により著作物を利用する者(以下「申請中利用者」という。)が裁定を受けたときは、前条第一項の規定にかかわらず、同項の補償金のうち第一項の規定により供託された担保金の額に相当する額(当該担保金の額が当該補償金の額を超えるときは、当該額)については、同条第一項の規定による供託を要しない。

4 申請中利用者は、裁定をしない処分を受けたとき(当該処分を受けるまでの間に著作権者と連絡をすることができるに至つた場合を除く。)は、当該処分を受けた時までの間における第一項の規定による著作物の利用に係る使用料の額に相当するものとして文化庁長官が定める額の補償金を著作権者のために供託しなければならない。この場合において、同項の規定により供託された担保金の額のうち当該補償金の額に相当する額(当該補償金の額が当該担保金の額を超えるときは、当該額)については、当該補償金を供託したものとみなす。

5 申請中利用者は、裁定又は裁定をしない処分を受けるまでの間に著作権者と連絡をすることができるに至つたときは、当該連絡をすることができるに至つた時までの間における第一項の規定による著作物の利用に係る使用料の額に相当する額の補償金を著作権者に支払わなければならない。

6 前三項の場合において、著作権者は、前条第一項又は前二項の補償金を受ける権利に関し、第一項の規定により供託された担保金から弁済を受けることができる。

7 第一項の規定により担保金を供託した者は、当該担保金の額が前項の規定により著作権者が弁済を受けることができる額を超えることとなつたときは、政令で定めるところにより、その全部又は一部を取り戻すことができる。

(裁定に関する手続及び基準)
第七十条
 前項の規定は、同項の規定により手数料を納付すべき者が国又は独立行政法人のうち業務の内容その他の事情を勘案して政令で定めるもの(第七十八条第六項第七十八条第五項及び第百七条第二項において「国等」という。)であるときは、適用しない。

 文化庁長官は、前項の裁定をしない処分をしようとするとき(第七項の規定により裁定をしない処分をする場合を除く。)は、あらかじめ申請者にその理由を通知し、弁明及び有利な証拠の提出の機会を与えなければならないものとし、当該裁定をしない処分をしたときは、理由を付した書面をもつて申請者にその旨を通知しなければならない。

7 文化庁長官は、申請中利用者から第六十七条第一項の裁定の申請を取り下げる旨の申出があつたときは、当該裁定をしない処分をするものとする。

 前各項に規定するもののほか、この節に定める裁定に関し必要な事項は、政令で定める。

第九節 補償金

(文化審議会への諮問)
第七十一条 文化庁長官は、第三十三条第二項(同条第四項において準用する場合を含む。)、第三十三条の二第二項、第六十七条第一項、第六十七条の二第四項、第六十八条第一項又は第六十九条の補償金の額を定める場合には、文化審議会に諮問しなければならない。

(補償金の額についての訴え)
第七十二条 第六十七条第一項、第六十七条の二第四項、第六十八条第一項又は第六十九条の規定に基づき定められた補償金の額について不服がある当事者は、これらの規定による裁定(第六十七条の二第四項に係る場合にあつては、第六十七条第一項の裁定をしない処分)があつたことを知つた日から六月以内に、訴えを提起してその額の増減を求めることができる。
2 前項の訴えにおいては、訴えを提起する者が著作物を利用する者であるときは著作権者を、著作権者であるときは著作物を利用する者を、それぞれ被告としなければならない。

(補償金の額についての異議申立ての制限)
第七十三条 第六十七条第一項、第六十八条第一項又は第六十九条の裁定又は裁定をしない処分規定による裁定についての行政不服審査法(昭和三十七年法律第百六十号)による異議申立てにおいては、その裁定又は裁定をしない処分に係る補償金の額についての不服をその裁定についての不服の理由とすることができない。ただし、第六十七条第一項の裁定又は裁定をしない処分を受けた者が著作権者の不明その他これに準ずる理由により前条第一項の訴えを提起することができない場合は、この限りでない。

(補償金の供託)
第七十四条
 第六十七条第一項、第六十七条の二第四項若しくは前二項又は前二項の規定による補償金供託又は同条第一項の規定による担保金の供託は、著作権者が国内に住所又は居所で知れているものを有する場合にあつては当該住所又は居所の最寄りもよりの供託所に、その他の場合にあつては供託をする者の住所又は居所のもよりの供託所に、それぞれするものとする。
 前項の供託をした者は、すみやかにその旨を著作権者に通知しなければならない。ただし、著作権者の不明その他の理由により著作権者に通知することができない場合は、この限りでない。

(著作権の登録)
第七十七条 次に掲げる事項は、登録しなければ、第三者に対抗することができない。
 著作権の移転(相続その他の一般承継によるものを除く。次号において同じ。)若しくは信託による変更又は処分の制限
 著作権を目的とする質権の設定、移転、変更若しくは消滅(混同又は著作権若しくは担保する債権の消滅によるものを除く。)又は処分の制限

第七十八条 第七十五条第一項、第七十六条第一項、第七十六条の二第一項又は前条の登録は、文化庁長官が著作権登録原簿に記載し、又は記録して記載して行う。

2 著作権登録原簿は、政令で定めるところにより、その全部又は一部を磁気ディスク(これに準ずる方法により一定の事項を確実に記録しておくことができる物を含む。第四項において同じ。)をもつて調製することができる。


 文化庁長官は、第七十五条第一項の登録を行つたときは、その旨を官報で告示する。

 何人も、文化庁長官に対し、著作権登録原簿の謄本若しくは抄本若しくはその附属書類の写しの交付、交付又は著作権登録原簿若しくはその附属書類の閲覧又は著作権登録原簿のうち磁気ディスクをもつて調製した部分に記録されている事項を記載した書類の交付を請求することができる。

5〜10
 4〜9

(出版権の制限)
第八十六条 第三十条第一項(第三号を除く。次項において同じ。)第三十一条第一項第三十一条、第三十二条、第三十三条第一項(同条第四項において準用する場合を含む。)、第三十三条の二第一項、第三十四条第一項、第三十五条第一項、第三十六条第一項、第三十七条第一項及び第三項、第三十七条の二、第三十九条第一項、第四十条第一項及び第二項、第四十一条から第四十二条の二まで並びに第四十六条から第四十七条の二まで、第四十六条並びに第四十七条の規定は、出版権の目的となつている著作物の複製について準用する。この場合において、第三十五条第一項、第四十二条第一項及び第四十七条の二及び第四十二条第一項中「著作権者」とあるのは、「出版権者」と読み替えるものとする。
2 前項において準用する第三十条第一項、第三十一条第一項第一号第三十一条第一号、第三十三条の二第一項、第三十五条第一項、第三十七条第三項、第三十七条の二本文(同条第二号に係る場合にあつては、同号)、第四十一条から第四十二条の二まで又は第四十七条の二第四十一条、第四十二条又は第四十二条の二に定める目的以外の目的のために、これらの規定の適用を受けて作成された著作物の複製物を頒布し、又は当該複製物によつて当該著作物を公衆に提示した者は、第八十条第一項の複製を行つたものとみなす。

(出版権の登録)
第八十八条
 第七十八条(第三項第二項を除く。)の規定は、前項の登録について準用する。この場合において、同条第二項、第四項、第八項及び第九項第一項、第三項、第七項及び第八項中「著作権登録原簿」とあるのは、「出版権登録原簿」と読み替えるものとする。

(商業用レコードの二次使用)
第九十五条
12
 第七十条第三項、第六項及び第八項第七項並びに第七十一条から第七十四条までの規定は、前項の裁定及び二次使用料について準用する。この場合において、第七十条第三項中「著作権者」とあるのは「当事者」と、第七十二条第二項中「著作物を利用する者」とあるのは「第九十五条第一項の放送事業者等」と、「著作権者」とあるのは「同条第五項の団体」と、第七十四条中「著作権者」とあるのは「第九十五条第五項の団体」と読み替えるものとする。

(譲渡権)
第九十五条の二
 第一項の規定は、実演(前項各号に掲げるものを除く。以下この条において同じ。)の録音物又は録画物で次の各号のいずれかに該当するものの譲渡による場合には、適用しない。
 第一項に規定する権利を有する者又はその許諾を得た者により公衆に譲渡された実演の録音物又は録画物
二 第百三条において準用する第六十七条第一項の規定による裁定を受けて公衆に譲渡された実演の録音物又は録画物
三 第百三条において準用する第六十七条の二第一項の規定の適用を受けて公衆に譲渡された実演の録音物又は録画物

 第一項に規定する権利を有する者又はその承諾を得た者により特定かつ少数の者に譲渡された実演の録音物又は録画物
 国外において、第一項に規定する権利に相当する権利を害することなく、又は同項に規定する権利に相当する権利を有する者若しくはその承諾を得た者により譲渡された実演の録音物又は録画物

(譲渡権)
第九十七条の二
 前項の規定は、レコードの複製物で次の各号のいずれかに該当するものの譲渡による場合には、適用しない。
 前項に規定する権利を有する者又はその許諾を得た者により公衆に譲渡されたレコードの複製物
二 第百三条において準用する第六十七条第一項の規定による裁定を受けて公衆に譲渡されたレコードの複製物
三 第百三条において準用する第六十七条の二第一項の規定の適用を受けて公衆に譲渡されたレコードの複製物

 前項に規定する権利を有する者又はその承諾を得た者により特定かつ少数の者に譲渡されたレコードの複製物
 国外において、前項に規定する権利に相当する権利を害することなく、又は同項に規定する権利に相当する権利を有する者若しくはその承諾を得た者により譲渡されたレコードの複製物

(著作隣接権の制限)
第百二条 第三十条第一項、第三十一条、第三十二条、第三十五条、第三十六条、第三十七条第三項、第三十七条の二(第一号を除く。次項において同じ。)、第三十八条第二項及び第四項、第四十一条から第四十二条の二まで、第四十四条(第二項を除く。)並びに第四十七条の四から第四十七条の八まで第四十七条の三の規定は、著作隣接権の目的となつている実演、レコード、放送又は有線放送の利用について準用し、第三十条第二項及び第四十七条の九第四十七条の四の規定は、著作隣接権の目的となつている実演又はレコードの利用について準用し、第四十四条第二項の規定は、著作隣接権の目的となつている実演、レコード又は有線放送の利用について準用する。この場合において、同条第一項中「第二十三条第一項」とあるのは「第九十二条第一項、第九十九条第一項又は第百条の三」と、同条第二項中第四十四条第二項中「第二十三条第一項」とあるのは「第九十二条第一項又は第百条の三」と読み替えるものとする。

 前項において準用する第三十二条、第三十七条第三項、第三十七条の二若しくは第三十七条第三項又は第四十二条の規定又は次項若しくは第四項の規定により実演若しくはレコード又は放送若しくは有線放送に係る音若しくは影像(以下「実演等」と総称する。)を複製する場合において、その出所を明示する慣行があるときは、これらの複製の態様に応じ合理的と認められる方法及び程度により、その出所を明示しなければならない。

3 第三十三条の二第一項の規定により教科用図書に掲載された著作物を複製することができる場合には、同項の規定の適用を受けて作成された録音物において録音されている実演又は当該録音物に係るレコードを複製し、又は同項に定める目的のためにその複製物の譲渡により公衆に提供することができる。

4 視覚障害者等の福祉に関する事業を行う者で第三十七条第三項の政令で定めるものは、同項の規定により視覚著作物を複製することができる場合には、同項の規定の適用を受けて作成された録音物において録音されている実演又は当該録音物に係るレコードについて、複製し、又は同項に定める目的のために、送信可能化を行い、若しくはその複製物の譲渡により公衆に提供することができる。

5〜8 3〜6

 次に掲げる者は、第九十一条第一項、第九十六条、第九十八条又は第百条の二の録音、録画又は複製を行つたものとみなす。
 第一項において準用する第三十条第一項、第三十一条第一項第一号第三十一条第一号、第三十五条第一項、第三十七条第三項、第三十七条の二第二号、第四十一条から第四十二条の二まで、第四十四条第一項若しくは第二項又は第四十七条の六又は第四十四条第一項若しくは第二項に定める目的以外の目的のために、これらの規定の適用を受けて作成された実演等の複製物を頒布し、又は当該複製物によつて当該実演、当該レコードに係る音若しくは当該放送若しくは有線放送に係る音若しくは影像を公衆に提示した者
 第一項において準用する第四十四条第三項の規定に違反して同項の録音物又は録画物を保存した放送事業者又は有線放送事業者
 第一項において準用する第四十七条の四第一項第四十七条の三第一項若しくは第二項の規定の適用を受けて同条第一項若しくは第二項に規定する内蔵記録媒体以外の記録媒体に一時的に記録された実演等の複製物を頒布し、又は当該複製物によつて当該実演、当該レコードに係る音若しくは当該放送若しくは有線放送に係る音若しくは影像を公衆に提示した者
 第一項において準用する第四十七条の四第三項又は第四十七条の五第三項第四十七条の三第三項の規定に違反してこれらの規定同項の複製物を保存した者
五 第一項において準用する第四十七条の五第一項若しくは第二項又は第四十七条の七に定める目的以外の目的のために、これらの規定の適用を受けて作成された実演等の複製物を用いて当該実演等を利用した者
六 第一項において準用する第四十七条の六ただし書の規定に違反して、同条本文の規定の適用を受けて作成された実演等の複製物を用いて当該実演等の送信可能化を行つた者
七 第一項において準用する第四十七条の八の規定の適用を受けて作成された実演等の複製物を、当該実演等の同条に規定する複製物の使用に代えて使用し、又は当該実演等に係る同条に規定する送信の受信(当該送信が受信者からの求めに応じ自動的に行われるものである場合にあつては、当該送信の受信又はこれに準ずるものとして政令で定める行為)をしないで使用して、当該実演等を利用した者
八 第三十三条の二第一項又は第三十七条第三項に定める目的以外の目的のために、第三項若しくは第四項の規定の適用を受けて作成された実演若しくはレコードの複製物を頒布し、又は当該複製物によつて当該実演若しくは当該レコードに係る音を公衆に提示した者

(実演家人格権との関係)
第百二条の二 前条の著作隣接権の制限に関する規定(同条第七項及び第八項同条第五項及び第六項の規定を除く。)は、実演家人格権に影響を及ぼすものと解釈してはならない。

(著作隣接権の譲渡、行使等)
第百三条 第六十一条第一項の規定は著作隣接権の譲渡について、第六十二条第一項の規定は著作隣接権の消滅について、第六十三条の規定は実演、レコード、放送又は有線放送の利用の許諾について、第六十五条の規定は著作隣接権が共有に係る場合について、第六十七条、第六十七条の二(第一項ただし書を除く。)、第七十条(第三項及び第四項を除く。)、第七十一条から第七十三条まで並びに第七十四条第三項及び第四項の規定は著作隣接権者と連絡することができない場合における実演、レコード、放送又は有線放送の利用について、第六十六条の規定は著作隣接権を目的として質権が設定されている場合について、それぞれ準用する。この場合において、第六十三条第五項中「第二十三条第一項」とあるのはあるのは、「第九十二条の二第一項、第九十六条の二、第九十九条の二又は、第七十条第五項中「前項」とあるのは「第百三条において準用する第六十七条第一項」と第百条の四」と読み替えるものとする。

(著作隣接権の登録)
第百四条 第七十七条及び第七十八条(第三項第二項を除く。)の規定は、著作隣接権に関する登録について準用する。この場合において、同条第一項、第二項、第四項、第八項及び第九項第三項、第七項及び第八項中「著作権登録原簿」とあるのは、「著作隣接権登録原簿」と読み替えるものとする。

(侵害とみなす行為)
第百十三条 次に掲げる行為は、当該著作者人格権、著作権、出版権、実演家人格権又は著作隣接権を侵害する行為とみなす。
 国内において頒布する目的をもつて、輸入の時において国内で作成したとしたならば著作者人格権、著作権、出版権、実演家人格権又は著作隣接権の侵害となるべき行為によつて作成された物を輸入する行為
 著作者人格権、著作権、出版権、実演家人格権又は著作隣接権を侵害する行為によつて作成された物(前号の輸入に係る物を含む。)を、情を知つて、頒布し、頒布若しくは頒布の目的をもつて所持し、若しくは頒布する旨の申出をし、又は業として輸出し、若しくは業としての輸出の目的をもつて所持する行為

 プログラムの著作物の著作権を侵害する行為によつて作成された複製物(当該複製物の所有者によつて第四十七条の三第一項第四十七条の二第一項の規定により作成された複製物並びに前項第一号の輸入に係るプログラムの著作物の複製物及び当該複製物の所有者によつて同条第一項の規定により作成された複製物を含む。)を業務上電子計算機において使用する行為は、これらの複製物を使用する権原を取得した時に情を知つていた場合に限り、当該著作権を侵害する行為とみなす。

第百二十一条の二 次の各号に掲げる商業用レコード(当該商業用レコードの複製物(二以上の段階にわたる複製に係る複製物を含む。)を含む。)を商業用レコードとして複製し、その複製物を頒布し、その又はその複製物を頒布の目的をもつて所持し、又はその複製物を頒布する旨の申出をした所持した者(当該各号の原盤に音を最初に固定した日の属する年の翌年から起算して五十年を経過した後において当該複製、頒布、所持又は申出又は所持を行つた者を除く。)は、一年以下の懲役若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
 国内において商業用レコードの製作を業とする者が、レコード製作者からそのレコード(第八条各号のいずれかに該当するものを除く。)の原盤の提供を受けて製作した商業用レコード
 国外において商業用レコードの製作を業とする者が、実演家等保護条約の締約国の国民、世界貿易機関の加盟国の国民又はレコード保護条約の締約国の国民(当該締約国の法令に基づいて設立された法人及び当該締約国に主たる事務所を有する法人を含む。)であるレコード製作者からそのレコード(第八条各号のいずれかに該当するものを除く。)の原盤の提供を受けて製作した商業用レコード

(4)附則
(施行期日)
第一条 この法律は、平成二十二年一月一日から施行する。ただし、第七十条第二項、第七十八条、第八十八条第二項及び第百四条の改正規定並びに附則第六条の規定は、公布の日から起算して二年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。

(視覚障害者のための録音物の使用についての経過措置)
第二条 この法律の施行前にこの法律による改正前の著作権法(以下「旧法」という。)第三十七条第三項(旧法第百二条第一項において準用する場合を含む。)の規定の適用を受けて作成された録音物(この法律による改正後の著作権法(以下「新法」という。)第三十七条第三項(新法第百二条第一項において準用する場合を含む。)の規定により複製し、又は自動公衆送信(送信可能化を含む。)を行うことができる著作物、実演、レコード、放送又は有線放送に係るものを除く。)の使用については、新法第三十七条第三項及び第四十七条の九(これらの規定を新法第百二条第一項において準用する場合を含む。)の規定にかかわらず、なお従前の例による。

(裁定による著作物の利用等についての経過措置)
第三条 新法第六十七条及び第六十七条の二(これらの規定を新法第百三条において準用する場合を含む。)の規定は、この法律の施行の日以後に新法第六十七条第一項(新法第百三条において準用する場合を含む。)の裁定の申請をした者について適用し、この法律の施行の日前に旧法第六十七条第一項の裁定の申請をした者については、なお従前の例による。

(商業用レコードの複製物の頒布の申出についての経過措置)
第四条 新法第百二十一条の二の規定は、著作権法の一部を改正する法律(平成三年法律第六十三号)附則第五項又は著作権法及び万国著作権条約の実施に伴う著作権法の特例に関する法律の一部を改正する法律(平成六年法律第百十二号)附則第六項の規定によりその頒布又は頒布の目的をもってする所持について同条の規定を適用しないこととされる商業用レコードを頒布する旨の申出をする行為であって、この法律の施行後に行われるものについては、適用しない。

(罰則についての経過措置)
第五条 この法律の施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。

(プログラムの著作物に係る登録の特例に関する法律の一部改正)
第六条 プログラムの著作物に係る登録の特例に関する法律(昭和六十一年法律第六十五号)の一部を次のように改正する。
 第二条を次のように改める。
第二条 削除
 第三条中「プログラム登録の」を「プログラムの著作物に係る著作権法第七十五条第一項、第七十六条第一項、第七十六条の二第一項又は第七十七条の登録(以下「プログラム登録」という。)の」に改める。
 第五条第一項中「第二条第二項又は」を削り、「第七十八条第三項」を「第七十八条第四項」に改め、同条第四項中「第二条第二項、」を削り、「第七十八条第一項から第三項まで」を「第七十八条第一項、第三項及び第四項」に、「同法第七十八条第二項」を「同条第三項」に、「行なつた」を「行つた」に改める。
 第九条中「第七十八条第二項」を「第七十八条第三項」に改める。
 第二十六条及び第二十七条中「第二条第三項若しくは」を削り、「第七十八条第四項」を「第七十八条第五項」に改める。

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2008年12月27日 (土)

第145回:今年の落ち穂拾い

 臨時国会も閉幕し、役所も休みに入り、今年のイベントはほぼ終わったと思うので、今年最後のエントリとして落ち穂拾いをやっておきたいと思う。

 この12月22日に、総務省で、デジタル・コンテンツの流通の促進等に関する検討委員会が開かれ、B-CASの見直しを検討(配布資料AV watchの記事ITproの記事日経TechOnの記事参照)したようだが、アナログ停波期限(2011年7月24日)まであと2年半あまりしかないという中で、ソフトウェア方式など悠長に方式変更の検討をしている有様なのは唖然とする他ない。このような調子では、地デジの混乱は今後も加速して行くことだろう。

 12月24日には、知的財産戦略本部会合(議事次第朝日のネット記事参照。)が開かれ、ユーザーに対する意義が結局書き込まれなかったのは残念だが、一般フェアユース条項を導入することが適当とする報告書(「デジタル・ネット時代における知財制度の在り方について」、概要)が無事承認されている。この一般フェアユース条項の導入の先行き自体不透明であることに加え、この報告書には、DRM回避規制の強化やプロバイダに対する標準的な著作権侵害防止技術の押しつけといった危険な規制強化案もそのまま残されており、引き続き知財本部の動向には注意を払っておいた方が良いだろう。

 12月25日には、文化庁で、法制小委員会も開かれているが、案の定、ダウンロード違法化問題については文化庁にスルーされた様である(「Copy & Copyright Diary」のブログ記事参照)。

 マイナーな話になるが、知財法の一つである種苗法に関して、農水省で12月12日に種苗分科会(概要)が開かれ、告示や審査基準の改訂といった実務的な変更が決まっている。

 さらに、国内の話では、青少年ネット規制法のフィルタリング推進機関登録省令が1月19日〆切でパブコメにかかっている(電子政府の該当HP意見公募要領(pdf)省令案(概要)(pdf)省令案(本文)(pdf))ので、念のためにリンクを張っておく。

 また、課長級以上の公務員の天下りについて、今年の状況の公表がされた(内閣府の公表資料(pdf)総務省のリリース独立行政法人等への天下り状況総務省分(pdf)警察庁分(pdf))が、退職者1423人中、公益法人等に就職したのが590人(41・4%)と、平成14年以来過去最多となるなど、天下り役人どもが混乱に乗じて自分たちの天下り利権を図々しく伸ばしていることが見て取れる結果となっている。ビジネス上全く役に立たない薹が立った官僚を喜んで再雇用する会社など皆無であろうから、公益法人等だけではなく、営利企業などへの再就職もほとんど天下りと考えた方が良く、再就職の判明している1239人は内実ほとんど天下りではないかと私は思う。課長級以下も考えると、規模にはさらに膨らむものと思われ、天下りの規模と天下り利権による政策判断の歪みを考えるだけで常に私は慄然とする。(例えば、総務省分を見ると、B-CAS問題と関係するところで、放送関係の規格を決めている電波産業会には今年も総務省の役人が天下りしていると分かる。なお、今年の文部科学省分は何故かまだ公表されていない。)

 世界に目を転じると、アメリカでも、対ユーザー訴訟戦略が破綻し、RIAAは3ストライクポリシーに転じ、インターネットサービスプロバイダー(ISP)への圧力を強めようとしている(CNETの記事ITmediaの記事ロイターの記事参照)。3ストライクポリシーに関しては、フランスの動向が特に要注意だが、アメリカ最大の著作利権団体の一つであるRIAAが3ストライクポリシーに転向したことで、来年以降、世界的に、著作権検閲+サービス制限・ネット切断型の違法コピー対策をどうするかということで混乱することになるのではないかと私は思う。この3ストライクポリシーも混乱必至の対策であり、フランスの状況等、分かる限りで今後も紹介して行きたいと思っている。

 あまりフランスの話は紹介されていないようなのでついでに紹介しておくと、フランスでも音楽著作権団体SACEMと動画共有サイトDailymotionのライセンス契約が行われたというニュースもあった(AFPの記事numeramaの記事01.netの記事参照)。アメリカ(4大レーベルとYoutube。internet watchの記事参照)、イギリス(音楽著作権団体MCPS-PRS AllianceとYoutube。MCPS-PRSのリリース参照)、ドイツ(音楽著作権団体GEMAとYoutube。GEMAのリリース参照)、日本(JASRAC・イーライセンス・JRCとYoutube、JASRAC・イーライセンスとニコニコ動画。Youtubeのリリースニコニコ動画のリリース1リリース2参照)に続く形であり、ワーナーとYoutubeとの契約更新が最近決裂した(CNETの記事ITmediaの記事ITproの記事参照)ものの、全体としては、動画共有サイトにおける契約による権利処理はほぼ世界的な流れとなりつつある。(見かけ上著作権戦争の形を取るので分かりにくいが、ワーナーとYoutubeの交渉決裂がある意味象徴的に示しているように、この点については、今後、動画共有サイト事業者による優越的地位の濫用も問題の一角を形成して行くことになるだろう。)

 海賊版拡散防止条約については、この12月17日に関係国会合が開かれている(経産省のリリース外務省のリリース参照)。EUが交渉の透明性を求めており(IP watchの記事、「P2Pとかその辺の話」のブログ記事参照)、次回3月にモロッコで開かれる予定の関係国会合で、透明性を上げる議論がなされることを期待したいが、今のところ何とも言えない状況である。

 私的録音録画補償金を超える、ドイツの奇怪なスキャナー等への私的複製補償金の話だが、ドイツでは、この12月に、ドイツのメーカー団体BITKOMが、新法におけるスキャナーやプリンター等の料率を発表している(BITKOMのリリースheise onlineの記事参照)。ドイツでは相変わらず、消費者不在の中、メーカーと権利者団体の間で訳の分からない妥協が図られ続けているようであり、このようなやり方で問題の本質が片付く訳はなく、スキャナー等へのバカげた補償金賦課に消費者が気づいたところで、ドイツでも補償金問題は再燃することだろう。

 漠然としたものだが、イギリス政府も著作権法の未来について2月までパブコメを取っている(イギリス知財庁のリリース参考資料(pdf))ので、念のために、リンクを張っておく。

 今年は、青少年ネット規制法が成立し、児童ポルノ規制強化法案が国会に提出され、ダウンロード違法化を文化庁が押し進めようとし続けるなど、極めて非道い一年だった。今の政局と役所の混乱ぶりを見ても、来年も波乱の年となることだろうし、このブログで書くことが尽きることは全くないだろう。

 それでは皆様、良い年を。政官業に巣くう全ての利権屋と非人道的な規制強化派に悪い年を。そして、このつたないブログを読んで下さっている全ての人に心からの感謝を。

(12月27日夜の追記:12月24日に予定されていた総務省の「インターネット上の違法・有害情報への対応に関する検討会」での違法有害報告書の取りまとめは延期になったようだが、この12月22日に犯罪対策閣僚会議12月22日の議事次第)で、問題箇所の変更はないまま、「犯罪に強い社会の実現のための行動計画2008」が決定されている(internet watchの記事も参照)。児童ポルノ規制やネット規制、著作権規制の話は言わずもがな、共謀罪等についても来年は勝負の年になるのだろう。)

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2008年11月19日 (水)

第132回:日本のインターネットを終了させないために

 著作権法改正で気をつけるべきことについては第28回に書いたのだが、最近はインターネットの利用そのものを危険なものとしかねない法改正が政官において平然と検討されていたりするので、今まで書いてきたこととかなり重複するが、ここでもう少し範囲を広げて、特にインターネットとの関連で私が気をつけていることを、まとめて書いておきたいと思う。

(1)ネット事業・利用のために著作権法上より明確なセーフハーバーを作ること
 現在、プロバイダー責任制限法(正式名称は「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」。関連情報Webサイト)によって、インターネットサービスプロバイダー(ISP)の民事上の損害賠償責任にある程度のセーフハーバーが作られているが、動画投稿サイト事業者がJASRACに訴えられた「ブレイクTV」事件や、レンタルサーバー事業者が著作権幇助罪で逮捕された「第(3)世界」事件を考えても、現在のプロバイダー責任制限法では、もはやセーフハーバーとして不十分だろう。今現在、これらの事件の司法判断によっては、間接侵害や著作権侵害幇助のリスクが途方もなく拡大し、甚大な萎縮効果・有害無益な社会的大混乱が生じかねないという非常に危険な状態にあるのである。

 プロバイダー責任制限法を改正して、刑事罰まで含めてプロバイダーの責任を制限することが検討されても良いだろうが、間接侵害事件や著作権幇助事件においてネット事業者がほぼ直接権利侵害者とみなされてしまうのでは、それでも十分な対策とはならない。この問題については、間接侵害や著作権幇助罪も含め、著作権侵害とならない範囲を著作権法上きちんと確定しない限り、本質的な解決にはならないのである。(ここで本当に必要なことは、著作権侵害とならない場合を明文化することであって、著作権侵害となる場合を明文化することではないということはいくら注意しても注意しすぎではない。法律は実運用・解釈まで考えなくてはならないものであり、黒の範囲を明文化しても残りの範囲が白となるとは限らないのである。この違いをごまかして、不当な利権の拡大を後押しする、法律屋の転倒レトリックに騙されてはいけない。)

 また、ネット上の様々な利用については、事業者だけではなく、常にユーザーにも不当に過大な著作権リスクが発生していることも、もはや目をつぶっていることはできない。今現在、限定列挙で権利制限の対象とされている類型以外についても、公正と考えられる利用形態についてやスジの悪い訴えについては、現状親告罪であることが多少のセーフハーバーとなり、さらに司法において黙示の許諾や権利の濫用である程度妥当に処理されるものと期待していたが、アニメ画像一枚の利用による別件逮捕すら正当化されるというのでは、親告罪であることや司法判断にそこまでの期待はできない。この点についても地道な緩和策が取られる必要があり、特に、文化庁と権利者団体がつるんで、どんな些細な権利制限もなかなか進めようとせず、進めても不当なまでにその要件を厳しくするという状況下では、著作物のネット上での利用に関する不当に過大な民事・刑事のリスクを軽減するために、一般フェアユース条項の導入は必要不可欠と私は考えている。

(2)情報アクセスの権利・情報アクセスにおけるプライバシーを守ること
 情報アクセスの権利(知る権利)は、表現の自由に含まれている重要な権利であり、例え民事罰のみであろうと、情報にアクセスしただけで何らかのリスクが発生する法律には私は断固として反対する。個人が私的に情報にアクセスしただけでは、どんな被害も発生し得えないのであり、個人が私的にどのような情報にアクセスしたかということもプライバシーとしてきちんと守らなくてはならないのである。

 ダウンロード違法化問題では、常に、ネットにアップされることによって生じる被害と、ダウンロードの被害を混同する主張が権利者団体によって繰り返され、癒着した天下り役人がそれをそのまま政府の報告書に書いている訳だが、ネットにアップされることによって生じる被害は公衆送信権によって既にカバーされているものであり、その被害とダウンロードとを混同することは絶対に許されない。さらに、このダウンロード違法化問題においては、既にネット上では「情報アクセス=複製」となっていることもきちんと考慮に入れられなくてはならない。

 刑事罰が絡むだけに影響も大きい児童ポルノの単純所持規制問題でも、規制派は常に、頒布による被害と単純所持を混同する狂った論理を主張するが、例えそれが児童ポルノであろうと、情報の単純所持ではいかなる被害も発生し得えない。現行法で頒布及び頒布目的の所持まで規制されているのであり、この問題においても、頒布によって生じる被害と所持やダウンロード、取得、収集との混同は許され得ないのである。

 何度でも繰り返すが、一人しか行為に絡まない、個人的な情報アクセスに関する限り、「情を知って」、「性的好奇心を満たす目的で」、「みだりに」などの精神的要件は、エスパーでもない限り、証明も反証もできないものであり、法律上の要件として客観性を全く欠き、恣意的な運用しか生みようがない危険極まりないものである。そもそも、最も根本的なプライバシーに属する個人的な情報アクセスに関する情報をどうして他人が知って良いということがあるだろう。ネット上においても、通信の秘密やプライバシーが守られなくてはならないのは言うまでもないことである。

 情報アクセスの権利は、著作権法上のDRM回避規制とも絡む。私的な領領域でのコピーコントロール回避規制(著作権法第30条第1項第2号)は、情報アクセスそのもののためにDRMを回避しなければならない場合があることを、個私的なDRM回避行為自体によって生じる被害は無いということを無視して、文化庁の片寄った見方から一方的に導入されたものである。一般フェアユース条項が導入されれば、この点も法的に少しは軽減されるものと思うが、本来導入されるべきではなかったこのような規制は撤廃が検討されてしかるべきである。

 また、日本のISPの自主規制による、ネット切断型違法コピー対策(違法ダウンロード対策ではない)は、第73回で取り上げてい以来、大きな動きになっていないが、このような対策が過剰規制となり、社会的混乱がもたらされることも十分想定されるのであり、今のところダウンロード違法化問題の陰に隠れているが、ダウンロード違法化問題の推移とフランスの動向次第で、著作権団体がこのような対策を強力に押してくる可能性もあり、決して油断は出来ない。

(3)表現の自由そのものを守ること
 さらに、検閲の禁止・通信の秘密とも密接に絡む話だが、民主主義の最重要の基礎である表現の自由や言論の自由、思想の自由等々の最も基本的な精神的自由そのものを危うくするような検討までなされているのは、本当に救いがたいことである。どんな法律に基づく権利であれ、権利の侵害は相対的にのみ定まるものであり、実際の被害者の存在しない創作物・表現に対する規制は何をもっても正当化され得ないのであり、公的あるいはそれに準じる検閲(事後抑制型の検閲を含む)機関がそれを一方的に決めることなど絶対にあってはならないのである。(第76回で書いたように、個人的には現行刑法のわいせつ物規制すらもはやほとんど正当化根拠を失っていると思っている。なお、第51回にも書いたように、無論、表現の自由には、自己の責任において匿名で表現を発表する権利も含まれている。)

 人権擁護法案や、創作物の規制への含みを持つ与党の児童ポルノ改正法案が危険極まりないのは言わずもがな、ほぼフィルタリング義務化だけ(これだけでも不当であり、およそ運用に細心の注意が払われなくてはならないのだが)に留まった青少年ネット規制法についても、その経緯を考えると、今後の検討で、また突拍子もない規制強化案が飛び出して来かねない。番外その8で書いたように、経団連にすらダメ出しされ、また青少年ネット規制法の成立によってネット規制の最後の根拠すら無くなった所為か、その後は割とおとなしいが、第35回で取り上げた、総務省の放送と通信の融合法制の話や、恐らく今後も著作権団体が強行に主張してくるだろう技術的・法律的な著作権検閲の話にも目を光らせておかなくてはならないだろう。

 リアルの規制については他所におまかせするが、特に最近、目に余る有害無益な法規制の話が多すぎる。最近の国籍法改正問題にしてもダガー規制問題にしても、国会議員なり官僚なりが、バランスを欠いた結論ありきの検討でムダに世の中を混乱させているのは、本当に許し難い。永遠に続く権利の闘争に休息はない。

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2008年11月12日 (水)

第129回:現行の著作権登録制度の問題点

 最近巷を騒がせている小室事件については、個別の事件としてスルーしようかと思っていたのだが、意外と政策的にもその余波が長く続きそうなので、ここで少し、現行の著作権登録制度の問題点について書いておきたいと思う。

 小室事件の詳細自体は沢山記事になっているのでここでは立ち入らないが、この事件で、

  • 音楽家が著作権を音楽出版社に譲渡し、音楽出版社がその譲渡された著作権をさらに著作権管理団体に預けるのが通常のケースである現行の音楽著作権ビジネスでは、現行の著作権登録制度はほとんど利用されていない。
  • そのため、かえって著作権の多重譲渡詐欺において現行制度が悪用される可能性がある。
  • 専門家のチェックを経ない契約で億単位の金が動いても不思議ではないと思わせるような雰囲気が著作権業界にはある。

ということがクローズアップされていることは大きい。(なお、JASRACへの登録は民々の信託契約に過ぎず、JASRACへの登録と、文化庁への法定著作権登録とは別物である。著作権と、著作権使用料請求権も異なるので、念のため。)

 現行の著作権登録制度については、文化庁のHP(登録原簿そのものが見られる訳ではないが、登録状況検索もある)に載っている、「登録の手引き」(pdf)に詳しいが、要するに、現行制度においては、著作権の多重譲渡の場合、どの著作権譲渡契約が早く締結されたかにかかわらず、文化庁への登録における登録名義人が著作権者として法律上取り扱われることになるのである(法的には「第3者対抗要件」と呼ばれるものである。著作権法第77条参照)。

 逆に言うと、現行の登録制度のメリットは、この第3者対抗要件にしかないのだが、その手続きは、著作権法第78条

(登録手続等)
第七十八条 第七十五条第一項、第七十六条第一項、第七十六条の二第一項又は前条の登録は、文化庁長官が著作権登録原簿に記載して行う。
 文化庁長官は、第七十五条第一項の登録を行なつたときは、その旨を官報で告示する。
 何人も、文化庁長官に対し、著作権登録原簿の謄本若しくは抄本若しくはその附属書類の写しの交付又は著作権登録原簿若しくはその附属書類の閲覧を請求することができる。
 前項の請求をする者は、実費を勘案して政令で定める額の手数料を納付しなければならない。
 前項の規定は、同項の規定により手数料を納付すべき者が国等であるときは、適用しない。
 第一項に規定する登録に関する処分については、行政手続法(平成五年法律第八十八号)第二章及び第三章の規定は、適用しない。
 著作権登録原簿及びその附属書類については、行政機関情報公開法の規定は、適用しない。
 著作権登録原簿及びその附属書類に記録されている保有個人情報(行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律(平成十五年法律第五十八号)第二条第三項に規定する保有個人情報をいう。)については、同法第四章の規定は、適用しない。
 この節に規定するもののほか、第一項に規定する登録に関し必要な事項は、政令で定める。

や、著作権法施行令の第20条以下

(申請書)
第二十条 登録の申請をしようとする者は、次に掲げる事項を記載した申請書を文化庁長官に提出しなければならない。
 申請者の氏名又は名称及び住所又は居所並びに法人にあつては代表者の氏名
 代理人により登録を申請するときは、その氏名又は名称及び住所又は居所並びに法人にあつては代表者の氏名
 著作物の題号(題号がないとき又は不明であるときは、その旨)又は実演、レコード、放送番組若しくは有線放送番組の名称(名称がないとき又は不明であるときは、その旨)
 登録の目的が著作権、出版権若しくは著作隣接権又はこれらの権利を目的とする質権(以下この章において「著作権等」という。)に関するときは、その権利の表示(これらの権利の一部に関するときは、その部分の表示を含む。)
 登録の原因及びその発生年月日
 登録の目的
 登録の申請に係る著作物、実演、レコード、放送又は有線放送に関する登録がされているときは、その登録の年月日及び登録番号(登録の年月日及び登録番号が不明であるときは、その旨)

(添付資料)
第二十一条 前条の申請書には、次に掲げる資料を添付しなければならない。
 申請者が登録権利者若しくは登録義務者の相続人その他の一般承継人であるとき、又は登録名義人の表示の変更若しくは更正の登録を申請するときは、戸籍の謄本又は抄本、登記事項証明書、住民票の写しその他当該事実を証明することができる書面
 代理人により登録を申請するときは、その権限を証明する書面
 登録の目的に係る著作権等が登録名義人から登録義務者に相続その他の一般承継により移転したものであるときは、戸籍の謄本又は抄本、登記事項証明書その他当該事実を証明することができる書面
 登録の目的が著作権等に関するときは、その登録の原因を証明する書面
 登録の原因について第三者の許可、認可、同意又は承諾を要するときは、これを証明する資料
 登録の変更、更正若しくは抹消又は抹消した登録の回復を申請する場合において、登録上の利害関係を有する第三者があるときは、その者の承諾書又はその者に対抗することができる裁判の謄本若しくは抄本
(以下略)

を読んだけでも分かるように、書類も煩雑(文化庁のHPに様式一式(doc)がアップされているが、この様式を定めているのは施行規則である。)で電子化も不十分なら、国に支払う手続き費用も、登録免許税登録免許税法で定められている。)として、著作権の移転の登録1件につき18000円もかかるという、制度ユーザーにとってすら使う気が起こらないだろうほどのヘビーコスト仕様となっている。(なお、この登録税の額がどういう理屈で決まっているのか良く分からないが、著作隣接権の移転の登録では1件9000円、信託の登録では1件3000円となっている。)

 このような手続きコストを考えると、権利の発生に登録が必須となっている特許の場合と違い、メリットとして第3者対抗しか得られない現行の登録制度は、ビジネス上見合わず、ほとんど利用されていないのも無理はないが、小室氏の関連楽曲の販売が停止されたこと(恐らく背景は、自粛がどうこうという話ではなく、権利関係が確定するまで、ビジネスが出来ないという理由ではないかと思う。)ことからも分かるように、権利関係が確定出来ないと安定してビジネスは出来ないのであり、この事件によって、著作権譲渡をその基本とする著作権ビジネス全体が実は非常に不安定な土台の上に立っているということが露呈してしまったことは、実は大問題である。ビジネスが法的に不安定であることは、ユーザーにとっても決して良いことではないだろう。

 だからと言って、著作権の性質上、権利の発生に登録を必須とすると言った議論や、第56回で書いたように登録制度にさらなるインセンティブを付けるといった議論もナンセンスであり、実際のところ、この著作権譲渡と登録制度の問題は、即効性の解決策がある話ではない。(なお、現行の著作権ビジネスの慣行を考えると、このような第3者対抗のためのみの登録制度は廃止して、全て契約ベースで判断した方がかえってビジネス上は安全性が高まるのではないかと思うが、全体的なバランスを考えると、それもまた難しいのではないかと思う。)

 文部科学大臣は、現行制度には問題がないが周知が不徹底だったと言ったよう(毎日のネット記事日刊スポーツのネット記事参照)だが、即効性の解決策がないのは確かにそうかも知れず、専門家への相談の必要性や現行制度の周知が重要であることもまたその通りだろうが、メリットに比して現行の登録手続きの煩雑さ・料金の高さは目に余るものがあり、制度的対応の検討もまた重要ではないかと私は思う。予算の面から難しいのかも知れないが、登録免許税の減額、登録に必要な項目・書類の削減、登録手続き・登録原簿の電子化や、電子認証・電子(カード)決済の採用による省力化など、やってやれなくはないだろう。ビジネス上も、タイムロスと直接雇用人件費以外のコストは割と簡単に全体のコストに組み入れられるはずである。詐欺自体は無くしようがないにしても、制度及び運用上より詐欺がやりにくくすることは出来るに違いない。

 実のところ、このような登録制度の見直しの検討は、平成17年1月24日の「著作権法に関する今後の検討課題」で、法制問題小委員会・契約・利用ワーキングチームで「今後の登録制度の利用の促進を図る観点から、登録手続の電子化の推進に関して検討する」とされた後、実に3年以上も文化庁がまともに取り上げていないものである。(去年の法制問題小委員会の中間まとめ(pdf)で登録による利用ライセンシーの保護の話が出てきているが、この話は、登録制度の電子化とは直接関係がない。)これもまた、文化庁が如何に恣意的に政策の検討を進めるかの証左の一つだが、ダウンロード違法化のような有害無益な施策ではなく、政府には、このような地道な施策のみを推進してもらいたいと思っているのは私だけではあるまい。著作権登録制度の問題については、あまり一般ユーザーから言い出す話でもなく、即座に解が出てくる話でもないが、今後、その電子化・省力化の検討が進むことを個人的には期待している。

 (恐らくこのブログを読んで下さっている中に億単位の金で著作権ビジネスをやろうとしている方はいないのではないかと思うし、士業規制にも多分に気にくわないところがあるのだが、それでも少額のコストをケチって巨額の詐欺に合うのはバカバカしいので、念のため、もし著作権について何か大きな契約をするということがあるなら、著作権に詳しい弁理士・弁護士・司法/行政書士などの専門家に相談してから事を進めることをお勧めしておく。なお、特許の登録制度にもまだ問題はあるのだが、著作権ほどではないので、また別の機会を見て取り上げたいと思う。)

 最後に、一つだけニュースの紹介もしておくと、レンタルサーバーの管理者が著作権侵害幇助罪に問われ逮捕された(時事通信のネット記事産経のネット記事internet watchの記事JASRACのリリース参照)。起訴されるのかどうかまだ良く分からないが、裁判になったとして、サーバー管理者の責任について刑事上もきちんとセーフハーバーが設けられるようであれば良いが、下手な裁判官や弁護士にぶち当たると、日本のネット事業・利用のリスクをこの上なく高める判決が出されかねない危うさがこの事件にはある。各種サーバー事業に関する危険性だけではなく、そもそもそのような判決自体も出されてはならず、ダウンロード違法化もなされてはならないものと考えるが、仮定の話として、サーバーの管理者が著作権侵害幇助罪に問われ得、サーバーのアクセスログが証拠として一般あるいは権利者団体に開示されて良いというような無茶な判決が出されたとして、さらにダウンロード違法化までされていたとしたら、「情を知って」の要件は証明も反証も不可能であるから、権利者団体により、アクセスログの入手のためのサーバー管理者への刑事訴訟と、プロバイダーへの情報開示請求と、個別のユーザーに対する民事訴訟が濫発され、社会的混乱を無意味に招きかねないいう懸念すら覚えるのである。考えすぎと言われるかも知れないが、この事件の重要性は極めて高い。

(11月13日の追記:Intellectual Property Watchの記事によると、韓国も、フランスの3ストライクアウト式の違法コピー対策を含む著作権法改正案をこの11月に国会審議にかけようとしているらしい。韓国が明確なダウンロード違法化をしたという話も聞かず、翻訳でも違法複製とあるだけなので、これがダウンロードを意味するのか、アップロードを意味するのか良く分からないが、記事中でリンクが張られているIPLEFTの記事で紹介されている部分だけからすると、少なくとも、違法複製を繰り返し行っているユーザーのアカウント停止命令をプロバイダーに出す権限を韓国の文化大臣に与えようとしているようである。さすがの韓国でも、これは国会でもめるのではないかと、本当にこのような法改正がなされたら混乱を来すのではないかと思うが、さらに詳しいことが分かるようであれば、この話も時期を見て紹介したいと思う。)

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2008年8月21日 (木)

第110回:著作物再販制度の謎

 再販制度については、wikiにも詳しいので、そちらを見て頂いても構わないが、大分前に予告してそれ切りになっていたので、今回は、著作物再販制度の話をしておきたいと思う。

 著作物の再販問題は別に喫緊の課題という訳ではないが、著作権問題を追いかけていると、必ずぶつかる問題の一つである。普段あまり気にとめていないかも知れないが、他の商品と比較して、文化的・経済的に、本や雑誌、新聞、CDなどが定価販売とされて良いかというと、これは自明の帰結ではない

 このような再販売価格拘束は、通常は販売業者間の競争を阻害するものとして、独占禁止法(「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」)の不公正な取引方法に該当するものとして、公正取引委員会告示で、以下のように指定され、原則禁止されている。

第12項 自己の供給する商品を購入する相手方に、正当な理由がないのに、次の各号のいずれかに掲げる拘束の条件をつけて、当該商品を供給すること。

一 相手方に対しその販売する当該商品の販売価格を定めてこれを維持させることその他相手方の当該商品の販売価格の自由な決定を拘束すること。

二 相手方の販売する当該商品を購入する事業者の当該商品の販売価格を定めて相手方をして当該事業者にこれを維持させることその他相手方をして当該事業者の当該商品の販売価格の自由な決定を拘束させること。

 しかし、著作物については、独禁法第23条第4項で、以下のように例外的に不公正な取引方法に該当しないものとされ、

第23条第4項 著作物を発行する事業者又はその発行する物を販売する事業者が、その物の販売の相手方たる事業者とその物の再販売価格を決定し、これを維持するためにする正当な行為についても、第一項と同様とする。

 さらに、この条文の中の「著作物」とは、立法当時想定されていたものとして、書籍、雑誌、新聞、レコード盤、音楽用テープ、音楽用CDの6品目に限定されるという解釈・運用が定着しているというややこしい状態にある。(音楽用テープとCDについては、レコードを代替するものとして、後に解釈上追加されたものらしいが、その後の解釈による追加はないようである。)

 この著作物再販制については、毎年の知財計画(2008では第94ページ)に、

④弾力的な価格設定など事業者による柔軟なビジネス展開を奨励する
 消費者利益の向上を図る観点から、事業者による書籍・雑誌・音楽用CD等における非再販品の発行流通の拡大及び価格設定の多様化に向けた取組を奨励し、その実績を公表する。
(公正取引委員会、文部科学省、経済産業省)

とくらいの記載であっさりと書かれ、公正取引委員会で、著作物再販に関する協議会(平成20年度の議事録資料1「書籍・雑誌の流通・取引慣行の現状」資料2「新聞の流通・取引慣行の現状」資料3「音楽用CD等の流通・取引慣行の現状」補助資料)が毎年開催されているくらいのところで、今は落ち着いている。

 今のところはこのくらいで良いのかも知れないが、書籍や新聞、音楽CDについてのみ定価販売を不公正なものでないとする根拠は考えて行くと非常に薄弱である。

 教科書などに書かれている、この再販の例外規定の趣旨は、

  • 戦前からの書籍の定価販売の慣行の存在
  • 不当廉売等の不当競争からの中小の小売りの保護・新聞の個別配達網の維持
  • 多様な書籍・雑誌・新聞・音楽CD等の著作物の発行の確保

などだが、無論、慣行の存在は独禁法上の例外を定める正当化理由にはならず、不当廉売等の不当競争は一般的に独禁法上違反とされるものであるから、特に再販制を認めることまでして業界を保護する必要はなく、再販制を例外的に認めることで著作物の多様性が確保されるという理由ももはや眉唾ものである。再販の例外規定を適用されないDVDやソフトで多様性が確保されていない様子もなく、wikiでも国毎の再販制の状況がまとめられているが、再販制を廃止した国で、文化的な混乱が生じたという話も聞かないのである。(この話でフランスやイタリアにおける制度廃止時の混乱と制度の再導入が引き合いに出されることも良くあるのだが、これらの国においては、法改正時に商慣行のスムースな移行を度外視した硬直的な法運用がなされたことによって混乱が生じたに過ぎず、これらは日本における再販の例外規定存続の理由とはならない。)

 再販制は、販売業者間の競争・消費者による選択を阻害し、その分の利益を販売業者から流通業者、製造業者までで分配するという、消費者が一方的に損をするシステムに他ならず、それは著作物であったとしても違いはない。確かに、著作物の流通・発行コストにそれなりの投資を必要としていたときは、この非競争利益が多少なりとも発行される著作物の底上げ・多様化に役立っていたということがあったかも知れない。しかし、インターネットで非常にローコストで文化・著作物の多様性を確保できるようになった今となっては、この著作物における再販制の許容による非競争利益は有体物による既存の情報流通を必要以上に保護するものとして、既存の著作権関連業をインターネットから必要以上に乖離させるものとして機能してしまっているのではないかと私は思う。

 情報そのものを取引する場合や国際取引の場合は多少注意が必要だが、一旦有体物に定着された著作物の取引については、基本的に他の物と同じように取引されて問題が発生するとは考えがたく、この独禁法の第23条第4項はもう役割を終えたものとしてじきに廃止されて良いものと私は思う。ただ、再販制の許容によって保護されている各業界にはその歪みが蓄積しており、急に廃止すると確かに混乱すると思われるので、その緩和のための地道な政策も必要となるだろうが。(公取も含め、このような地道な政策ができる官庁が存在していないということもこの問題を本当に厄介なものとしている。)

 各業界の状況については、上でリンクを張った公取の資料に詳しいが、これらの資料によると、書籍については、取次の約3割が委託配本取引、約5割が注文品取引(商品の補充のため又は読者からの注文に応じて書店等が取次に注文を行う買い切り扱いの取引)、雑誌は約9割が委託,約1割が注文であると言われているらしい。さらに、委託配本では、書店等の希望とは必ずしも関係なく、出版社による指定又は書店等の入金率、売上実績等に基づいた配本パターンに従い、書籍・雑誌を取次が書店等に配本すると、注文品取引は、返品不可の買切扱いであるにもかかわらず返品が広く行われているとも書かれており、ここ10年近く本の返品率が40%近くで高止まりし、雑誌の返本率も30%を超えて高止まりしていることを見ても、書籍業界では、再販価格維持を含む特殊な契約と返本制に頼り切った馴れ合いの非効率な取引がまかり通っていることが見て取れる。(委託配本に書店の希望があまり通らない状況の中、注文品取引が本来の意味を超えたバッファとして機能しているのだろう。契約と商慣行を詳しく調べてみないと良くは分からないし、公取の資料に堂々と書かれているので何とも言い難いのだが、再販制がどうこう言う以前に、このような馴れ合いのいい加減な取引自体、不公正な取引として独禁法違反のような気が私にはしている。)

 音楽CDについては、やはり上でリンクを張った資料によると、発売ら一定期間(6ヶ月)経過後に再販売価格維持の対象から外される時限再販の音楽用CDの出荷数量割合が2007年12月時点で、邦楽盤でアルバム:81%、シングル:93%、洋楽盤で、アルバム:98%、シングル:100%となっているそうである。ただ、同じ資料中でも突っ込まれているように、確かにその割に値引きが広く行われていないようにも思う。発売後6ヶ月経ったCDがどれくらい売れるのかということもあるのだろうが、CDはずっと定価販売と考える消費者の誤解に便乗して定価販売を続けているレコード屋も多いのではないか。CDとDVDのセット商品が非再販扱いであるにもかかわらず、その販売点数が増えている点からも、再販制と著作物の多様性の確保は実はあまり関係ないことが見て取れるのも興味深い。(なお、この資料には還流防止措置に関しても突っ込みがある。また、確証はないのだが、次世代音楽メディアは再販の例外規定の対象外と考えられているらしく、その所為でSACDやDVD-Audioの普及が阻害されているという話もある。個人的にはSACDやDVD-Audioの普及が進んでいないのは様々な要因が絡んでいて、独禁法の問題ではあまりない気がしているのだが、本当なら、要因の一つになっているのかも知れない。)

 新聞は、特殊指定wiki参照)の問題が絡むだけにさらに厄介である。新聞に関しては、再販制の消極的な許容を超えて、地域・相手による値引きをすることが積極的に不公正な取引に該当するとして公取の指定を受けているのである。しかし、インターネットも含め他の情報通信手段が充実している今の状況において、新聞のみをユニバーサルサービスとしてさらに特別に保護する意味はないだろう。大体新聞業界がこの問題が取り沙汰される度に必死になって廃止反対の大キャンペーンを張るところからして、この特殊指定が新聞社にかなりの不当利得を与えていることがうかがい知れるのである。
 
 著作物再販の例外規定にせよ、新聞の特殊指定にせよ、既存のマスコミが必死で守っている業界保護法制の一種なので、おそらく当分は無くならないものと思うが、別に法改正や運用変更を待たずとも、インターネットとの競争によって、今となっては物による流通のみが文化を担っている訳ではないということを否応なく理解させられ、業界再編を余儀なくされて行くことになるだろう。いい加減、著作権業界は文化と言えば何でも誤魔化せると思うのは止めた方が良い。再販制に守られている3業界が全て斜陽化しているのは決して偶然ではないと私は思っているのである。

 あまり大した記事はないのだが、最後に少し、ここ最近の著作権関係の記事の紹介もしておきたい。まず、ダウンロード違法化で刑事訴訟の乱発を招いたドイツでは、ノルトライン・ヴェストファーレン州の検事が、jetzt.deのインタビュー記事ecransのフランス語の記事にもなっている。)で、非商業的規模のダウンローダーは全て訴追しない方針にしたと答えている。そのクライテリアは3000ユーロらしい(音楽は1曲1ユーロ、映画は1つ15ユーロと勘定するらしい)。この基準自体良く分からないし、またこれでどれくらい訴追から落とされるのかも分からないが、この州だけで著作権法違反で訴えられた者の数がこの上半期で25000人に上るというのではどうしようもない、これらのファイル共有ユーザーのダウンロードファイル数を数えるだけでも一苦労だろう。これだけの数の人間が訴えられる時点で何かがおかしいと思わなくてはならない。(「P2Pとかその辺の話」でも類似記事を紹介されているので、この話に興味がある方は是非リンク先もご覧頂ければと思う。)

 カナダでも、引き続き、オタワ大のGeist教授を中心に、ユーザー側の著作権改正に対する批判運動がさらに高まっているとするCanadian Pressの記事もあったので、一緒に紹介しておく。カナダでは、DRM回避規制の方が中心の問題になっているようだが、オンラインにおける運動は政府が無視できないレベルに達しており、ダウンロード違法化の問題も含め、著作権法の改正がすんなり通るということはないだろう。

 また、英国で著作権侵害の罰金引き上げを検討しているというニュースもあった(IP NEXTの記事英国知的財産庁のレポート)。このレポートを読むとオプションとして書かれているだけなので、まだ検討中といったところのようであるが、政府の肝いりで作成されたものにしては、保護期間延長反対や補償金制度を導入しないままでの私的複製の範囲の拡大を明確に唱えているなど非常にリベラルな2006年12月のGowersレポート資料HP)の中から最も当たり障りのない罰金に関する部分だけを取り上げてオプションを検討している点は実に物足りない。英国政府には、Gowersレポートのリベラルな部分こそ特に早急に取り入れてもらいたいのだが。

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2008年5月30日 (金)

第98回:文化審議会という茶番

 私的録音録画小委員会が延期される(internet watchの記事ITmediaの記事参照)とともに、28日にメーカー(JEITA)から私的録音補償金問題に関するアンケート(ITproの記事internet watchの記事ITmediaの記事アンケート結果1結果2参照)が発表され、この29日には権利者団体による会見も開かれ(時事通信のネット記事internet watchの記事ITmediaの記事ITproの記事ascii.jpの記事AV watchの記事参照)、総務省のデジタルコンテンツ委員会で、ダビング10の開始の延期が報告される(AV watchの記事日経TechOnの記事参照)という状態で、コピーワンスと私的録音録画補償金の問題は、完全な泥仕合と化しつつある。

 もはや収拾は全くつきそうにないが、どう考えても、この火種を点けたのは、文化庁のデタラメな審議会運営である。上でリンクを張った記事によると、文化庁は、私的録音録画小委員会の延期の理由について、補償金問題について、メーカー側の委員から回答が得られそうにないためと説明したらしいが、第92回でもリンクを張ったITmediaの記事などによると、前回の私的録音録画小委員会で、メーカーなどの疑問に応えられる説明を次回(5月29日)の会合までに用意するよう主査に求められていたのは文化庁の方だったはずである。直前の回での主査からの要請すら無視し、消費者も無視し、恫喝してもメーカーがイエスと言わないからと審議会の開催を勝手に伸ばすなど、文化庁の恣意的な議事運営はとどまるところを知らない。決裂するなら決裂するで、その場を作らなければならないにも関わらず、自分たちの案にイエスと言う場だけを与えて、ノーと言う場を与えないとは不公平も甚だしい。

 また、権利者団体も権利者団体である。会見で、権利者側が譲歩をしたと言っているようだが何が譲歩なのだかさっぱり分からない。そもそも不当だった民間規制のコピーワンスについて、利便性の向上に全くつながらない程度にごくわずか緩和するとして、しかもその緩和にかかるコストはメーカーと消費者に押しつけたあげく、譲歩したとは片腹痛い

 新たに機器が追加されれば、補償金は拡大されるのだ、元々不当に得ていた補償金額が減ったからと言って、納得の行く理由も示さないまま、全く性質の異なる機器への追加課金を要求するのは不当以外の何物でもない。被害妄想もいい加減にしてもらいたい。第92回で書いたように、iPodやHDDレコーダーへの課金を正当化するに足る理由は今もって何一つ示されていない。権利者の思い込みに過ぎない架空の経済的不利益に基づいて、補償金が拡大されることなどあってはならないことである。

 あくまで、補償金制度は、私的録音録画によって生じる権利者への経済的不利益を補償するものであって、メーカーなどの利益を不当に権利者に還元するものではない。権利者団体の完全にトチ狂った主張に酌むべきところは何一つない。メーカーだけを叩けば何とかなると踏んでいるのかも知れないが、もはやそんなことでごまかされる消費者はいない。この情報化時代に、消費者パッシングのメーカーバッシングなど通用する余地はない。

(権利者団体が、ダビング10とコピーワンスの混乱について全責任をメーカーに押しつけようとしているが、これもお門違いも良いところだろう。そもそも、コピーワンスは、完全に不当な民間規制である上、総務省は、補償金はおろか、B-CAS・コピーワンスという民間規制に対する緩和の権限すら持ち合わせていない。自分たちの好きなように答申を解釈して、メーカーだけが悪いとするのはあまりにも虫が良すぎる話である。)

 メーカーも、この時期にこのようなアンケートを公表したのは、もはや妥協の余地はないとする宣戦布告だろう。これで退路は断たれた。メーカーはメーカーとして極めて正しいことを主張しているのであり、中途半端な妥協だけは絶対にしてもらいたくない。これでメーカーが中途半端な妥協をしようとするなら、私はメーカーも軽蔑する。

 このブログではさんざん繰り返してきたことだが、文化庁と権利者団体が、今まで必死になってごまかし続けてきた著作権に関する嘘はもはや誰の目にも明らかになりつつある。ほぼコストフリーでのコミュニケーション・コンテンツ流通を可能とするインターネットの登場によって、かえって明らかになったことは、複製という、文化すなわちコミュニケーションの根幹をなす行為の全てに許諾権や対価を及ぼすことは、文化と経済の発展に対して計り知れない弊害をもたらすということである。インターネット登場以前まで問題が顕在化していなかったからと言って、人工的な権利である著作権を絶対視することなどあってはならない。常に「複製=対価」であってはならないし、ましてや、「私的複製=補償金」では絶対にあり得ないと私は断言する

 全面戦争の火蓋が切って落とされることによって、コピーワンスと補償金問題の解決の目はさしあたり完全に消え去った。文化審議会が、消費者を無視して、メーカーを恫喝して、権利者団体のために金を巻き上げる場に過ぎないのなら、もう1回もこのような茶番劇など開いてもらいたくはない。権利者団体に片寄り、公平な議事運営も全く期待できない文化審議会で著作権の法改正を議論すること自体、今の著作権法による弊害を助長することにしかつながっていない。行政の諮問機関である文化審議会の決定を経て著作権法の改正がなされなければならないということもない。どうせ延期するのなら、もうダウンロード違法化も含めて全て白紙に戻して、私的録音録画小委員会など完全に無期延期にしてもらいたいと私は心から思う。開催するのなら、後1回だけ開いて、私的録音録画問題についての結論は出ないとする結論をまとめてもらいたい。これ以上の開催は単なる税金と社会的コストのムダである。日本の著作権法制に100年の禍根を残すことになるだけの中途半端かつ不合理な妥協こそ最も唾棄すべきものである。文化審議会がどうあろうと、B-CASとコピーワンスという不当規制が完全に排除されるのは時間の問題であると、いくら時間がかかろうと真の解決は自ずともたらされるものと私は信じている。

 ドイツの状況も参考に紹介しておくが、第15回で書いたように、補償金制度の合理化を図ろうと、DRMと機器・媒体の価格を考慮して、徴収団体と機器媒体のメーカー団体が、互いに補償金について交渉して補償金額を決めなくてはならないとする形に、今年から制度を変えたところ、ドイツも、最近明らかになった徴収団体の法外な要求金額に騒然となっている(IT-Businessの記事tom's hardwareの記事idealo.deの記事golem.deの記事chip.deの記事heise onlineの記事)。これらの記事によると、DRMを考慮するといった曖昧な法律の規定は全て無視して、ドイツの徴収団体は、容量1GBあたり1ユーロ以上、160GBのiPodで200ユーロ近い額の補償金額を要求して来たようである。例えドイツだろうが、日本円に直してiPodが3万円以上も値上げされる(従前のiPodへの課金は日本円に直して400円くらいだった)ことには、メーカーも消費者も到底耐えられないだろう。これからメーカー団体と協議が始まるようだが、ドイツでも問答無用でもめるに違いない。ドイツでは、補償金制度を合理化しようと法改正をして、かえって料率上げが要求されるという本末転倒なことが起こっている。これほど全世界のメーカーと消費者から絶大な不人気を博している制度もない。世界中見渡しても、私的録音録画補償金の対象と料率に関する客観的な基準はどこにもないのだ、ドイツを他山の石として、日本では絶対にここで踏みとどまらなくてはならない。ここが正念場である。

(5月30日夜の追記:JEITAのHPで、文化庁案と権利者団体側の主張を真っ向から否定する私的録音録画補償金問題に係るJEITAの見解が公開されているので、リンクを張っておく。これで宣戦布告のセレモニーは完了した。

 5月29日には、知財本部で、第3回の知財規制緩和調査会も開かれていた(internet watchの記事知財情報局の記事)。この調査会でもコンテンツ流通というキーワードが出てきているところが不安ではあるが、インターネットの登場によって新たに生まれた公正利用の類型に対する権利制限については、是非、知財計画に明記した上で、法改正まで持って行ってもらいたいと思う。繰り返しておくが、第78回で書いたように、著作権問題の本質は、ネットにおける既存コンテンツの正規流通が進まないことにあるのではなく、インターネットの登場によって新たに出てきた著作物の公正利用の類型に、今の著作権法が全く対応できておらず、この公正利用まで萎縮させ、文化と産業の発展を阻害していることにある。コンテンツ流通という言葉に踊らされるとロクなことはない。できることなら、この調査会では、コンテンツ流通に関する議題を外してもらいたいと思うくらいである。

 これはネット規制の話になるが、新聞業界も、ネット規制法に反対するとの意見書を提出したようである(時事通信の記事新聞協会のプレス記事意見書本文)。ようやく大手メディアも腰をあげたようだが、このネット規制の問題はそれくらいに重い。この話もまだまだこれからである。

 最後に、特許庁から、「イノベーションと知財政策に関する研究会」の政策提言及び報告書(原案)に対するパブリックコメントの募集がかかっているので、これもリンクを張っておく。著作権に比べると地味とは言え、第95回でも触れように、特許なども重要であることに変わりはない。特許政策に意見を言いたいという方は、是非パブコメを出すことをお勧めする。)

(5月31日の追記:JEITAの新会長の会見に関するITmediaの記事もあったのでリンクを張っておく。メーカーは利用者を代弁しているとJEITAの新会長は言ったようだが、メーカーと利用者の主張が完全に一致している訳ではないことは注意しておく必要がある。)

(6月1日の追記:ネット関連大手5社がネット規制法案への反対声明を再び表明したとのニュースもあった(時事通信のネット記事日経のネット記事毎日のネット記事)。

 また、第93回で紹介した前回のものと大きな違いはないが、知財本部のHPにアップされていたので、第3回の知財規制緩和調査会の資料の中から、念のため、「デジタル・ネット時代における知財制度の在り方について<検討経過報告>」にリンクを張っておく。)

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2008年5月 9日 (金)

第92回:文化庁からただよう腐臭

 今日、文化庁の文化審議会・私的録音録画小委員会で、私的録音録画問題についての検討がされた(ITmediaの記事1記事2internet watchの記事日経TechOnの記事マイコミジャーナルの記事Phile webの記事ITproの記事cnetの記事参照)。

 ITmediaの記事に文化庁の資料がそのまま転載されているが、この資料ときたら、もはや消費者・ユーザー軽視どころではなく、消費者・ユーザー無視の極みとしか言いようのないひどいものである。1消費者・1ユーザーとして、この資料に対する憤りは尽きないし、このブログでさんざん繰り返してきたことを繰り返すのもどうかと思うが、これには最低限でも次のような怒りの疑問・意見をぶつけざるを得ない。

  • もはやペーパーに「消費者」の語すら全然出てこないが、いつから補償金制度は権利者団体の思い込みでしかない架空の不利益にもとづいて勝手に拡大されるものとなったのか
  • 中間整理の良いとこ取りを文化庁は勝手にやっているが、去年のこの中間整理に対する厖大なパブコメはどこに行ったのか。ダウンロード違法化問題ほどではないにせよ、決して少なくない数のパブコメが補償金制度そのものに対して強い不信感を示していたのである。
  • iPodや純粋なHDDレコーダーのような、そもそも物理的に家庭内・個人に閉じる利用しか考えられない機器に対して補償金を課す理由に納得性が全くない
  • 対象機器・媒体の範囲・料率についても、評価機関の意見を聞いてやはり文化庁が決定するとしているが、天下り利権の保持・拡大のことしか考えていない腐り切った文化庁による範囲・料率の勝手な決定など全く信用できない

 さらに、コピーワンスなら補償金がいらないということも文化庁は示しているが、複製が1個だけに限定されるような場合にはもはや補償金がいらないということであれば、純粋なHDDレコーダーなど本当に物理的に1個しか複製が作れないのだから、課金されるいわれは全くないだろう。これが、DVDレコーダーとの一体型レコーダーなら、既にDVDレコーダーとして課金されており、DVDも媒体として課金されているのである。これだけでも、このペーパーが課金のための課金を言っているに過ぎないことが分かるのだ。文化庁の役人の低劣ぶりと来たら全くお話にならない。

 いくらお題目のところに見てくれの良さそうなことを並べたところで、煎じ詰めれば、このペーパーの言っていることは、単に天下り先の著作権関係団体に好きに使える小遣いをもっとあげたいから、消費者から広く選択の余地なく金を巻き上げたいというものでしかない。このような天下り団体の既得権益を拡大したいがために作られた案に騙される国民などもはやいない。

 委員会が紛糾したのも当然であり、その場で、試案に対して、メーカー団体の代表から、縮小と言っているのに、判断基準が不明確で、制度が拡大することになる懸念が表明され、消費者・ユーザー代表から、音楽CDと無料放送のみが対象なら、従来の機器についても料率は下げる方向で見直されなくてはならない、補償金がどのようなプロセスを経て誰の手に渡っているのかが現状では見えず、きちんとした情報公開をしない限り対象機器を増やすといった話は消費者の理解が得られないという批判が出たのも、当たり前の話である。

 全く委員会での指摘の通り、補償金の用途・分配については不透明なままであり、資料の軽薄さを見ても文化庁が消費者の批判を真摯に受け止めているとは全く思えない。文化審議会でも、以前の平成17年の第5回法制問題小委員会で、私的録音補償金の分配の流れ私的録画補償金分配の流れという資料が公開されたきり、真面目にこの論点について取り組んだ形跡がない。

 これらの資料からだけでも、各権利者団体がそれぞれ5%から20%の高額の分配手数料を取っていることが分かるのだが、このような高額の手数料は額面通りに分配コストに使われているとは到底受け取りがたい。キャッシュで入ってくるものに管理手数料がかかる訳もない。著作物としての利用率が高いものほど複製されているという近似でほぼ各権利者への利用料分配に一定の率で上乗せするくらいしか分配のやり方はないと思うが、それなら近似式・分配の計算式を立てるだけの話で、このコンピュータ全盛のご時世にさほど余計なコストがかかる訳もない。要するに、このような高額の「手数料」はそのままほぼ団体の純利益・不労所得になっているとしか、分配そのものも不透明なのは無論だが、ここにもピンハネのからくりが存在しているとしか思われない。補償金数十億円マイナス20%の共通目的事業金に対する5~20%なので、団体全部で数億くらいになるだろうか。政治力だけで偉くなった団体のボスと天下り役人で山分けするには十分な原資だろう

 また、共通目的事業に関する論点についても、ほとんど真面目に取り上げられていないが、私的録音補償金管理協会(SARAH)のHP一覧や、私的録画補償金管理協会(SARVH)の資料を見ても、制度の周知広報のようなものを除けば、何故共通目的と言えるのか良く分からない個別の著作権関係団体のイベントや調査への支出も多く、この用途も極めて不透明と言わざるを得ない。

 さらに言えば、やはり文化庁所管の著作権情報センター(CRIC:給料をもらっているかどうかなど不明だが、第81回で取り上げた衆議院調査によると天下りの非常勤理事が1人いる)に、SARAH、SARVHの共通目的事業の事業の多く(平成18年度のCRICの収支計算書によると、共通目的基金受託事業で約2億円、共通目的基金の助成事業で約3000万円と、合わせて共通目的事業全体の3分の一近くになる。さらに言えばCRICの事業収入総額の半額以上をこの委託事業が占めるのもどうかと思われる点である。)が委託され、そこで実施されているというのも不透明性をさらに高めている。両補償金管理協会が自主事業と委託事業を何で分けているのかは良く分からず、これは、事実上、天下り団体に手数料という名の上前を2重か3重にピンハネさせるための不透明な事業の迂回実施としか思われないのである。(前回、あるものを使わないのは損なので有り難く使わせてもらったが、外国著作権法の翻訳なども、別にこのような不透明な資金でやることはないだろう。)

 無論、文化庁と権利者団体が、補償金の意味を、私的録音録画によって権利者にもたらされる経済的な不利益の補償から関係者間の利益分配へと必死にすり替えようとしていることも腹立たしいことこの上ない(知的財産はノーリスクハイリターン、座っているだけで儲かる打ち出の小槌ではない)のだが、このような利権団体と天下り役人による補償金の不透明な利権分配にも私は腐敗臭を否応なく感じるのだ。このように不透明・不公正な補償金の分配に憤りを感じない消費者・ユーザー・国民など一人もいないに違いない

 御用学者は御用学者で文化庁案を懸命に擁護しているようだが、文化庁案で補償金が拡大されたら拡大されただけ、それは必ず利権団体の既得権益となるので、縮小されようがない。このような不労所得を増やすための既得権益の拡大など、経済のためはおろか、文化のためにも絶対ならないと私は断言できる。諸外国の例を見ても、DRMを考慮するといった曖昧な規定は、消費者・ユーザー・国民のためのセーフハーバーとならず、何の役にも立たない。縮小というのなら、今の時点で範囲・料率の両方の面ではっきりと縮小すべきであるし、最低限現状のまま拡大しないようにすることは必須である。まだ、文化庁が案を示しただけだが、この補償金問題はこのような腐臭を放つ案で片付く問題ではないし、片付けてもならない。御用学者と利権団体代表の群れの中では本当に大変なことと思うが、消費者・ユーザー代表の各委員には是非最後までその主張を貫き通してもらいたい、その主張に私は心からエールを送る。

 なお、今日(5月9日)の午後には、知財本部の知財規制緩和調査会の第2回、来週の火曜(5月13日)には、総務省のデジタルコンテンツ委員会と知財政策関連の検討会が続くが、これらも要注目である。

 本当は、アメリカなどで話題になっている孤児作品法案の話などもしたかったのだが、それはまたどこかで別途紹介することにしたい。

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2008年3月29日 (土)

第78回:コンテンツ流通と著作物の公正利用

 天下りについてはまだ考えをまとめるのに時間がかかるので、今回は、軽く書けることとして「コンテンツ流通促進」という良く出てくるキーワードの話をしておきたいと思う。(期待されている方には申し訳ないが、主要各国の著作権法紹介も忘れている訳ではない。4月3日には、文化庁で私的録音録画小委員会がまた再開(開催案内)されるが、文化庁は自分たちに都合の悪い情報は隠すことを常としているので、地道に海外動向の紹介もやって行くつもりである。)

 番外その8で少し紹介したデタラメな「ネット権」の話やら、最近のJASRACシンポジウムに関する記事(ITmediaの記事1記事2cnetの記事マイコミジャーナルの記事ASCII.jpの記事)やらを読むと、「コンテンツ流通促進」というキーワードは引き続き今年も著作権問題と絡んでかなり取り沙汰されそうな雰囲気があるが、何故こうまで著作権法の問題と「コンテンツ流通促進」がキーワードとして短絡的に結びついて語られるのか、よくよく考えても私にはさっぱり分からないのだ。

 既存のコンテンツのインターネット上の正規流通があまり充実していないことは利用者としては残念ではあるが、だからと言って、情報の創作者保護という知財権・著作権の本質を無視してまで、権利を制限し、無理矢理コンテンツを流通させるべきとは私には全く思えない。自らの著作物をどの流通手段にどのように流通させるかは、著作権者がある程度決められて良いはずであるし、この選択がインターネットの存在によっていくらテクニカルに難しくなっているとは言え、この原則に反対する者がそれほど多いとも思えないのである。(番外その9で取り上げたmixi規約改定騒動において、mixi社への無制限の2次利用許諾に対して、多くのユーザーが反発したことも考え合わせてみると良い。)

 これほど「コンテンツ流通促進」というキーワードを世に広めた者は誰か良く分からないが、これを広めた者は、確実に今の知財政策の迷走を加速させた大罪人である。総務省を始めとして各省庁の検討会でも「コンテンツ流通促進」という言葉は良く使われているから、役所が最初の音頭を取った可能性すらあるが、役所が利権とキーワードだけに踊って現実を見ず、ただひたすら政策を迷走させて世の中に害悪を垂れ流しているのは本当に許し難いことである。

 流通手段によって求められるコンテンツが違うのも当たり前のことであり、別にネットでテレビがそのまま見られる必要もない。ネットにおける既存のコンテンツの正規流通は、どこまで行っても、既存のコンテンツホルダーが進めたいと思えば進むが、進めたくないと思えば進まないというだけの話であり、国の政策として法律でどうこうする話ではないだろう。

 はっきり言っておくが、私は、一ユーザー・一消費者・一国民として、コンテンツ流通促進法などカケラも欲しいとは思わない。第28回にも書いたことだが、著作権問題の本質は、ネットにおける既存コンテンツの正規流通が進まないことにあるのではなく、インターネットの登場によって新たに出てきた著作物の公正利用の類型(検索エンジンにおける利用などその典型だろう)に、今の著作権法が全く対応できておらず、この公正利用まで萎縮させ、文化と産業の発展を阻害していることにあるのだと私は考えている。

 知財本部のペーパーに書かれていることで、前回のメモにも箇条書きで書いたが、他にも、図書館におけるデータ蓄積・公開、研究開発のための映像・テキスト情報の利用、ネット環境の安全性確保等のためのソフトウェア解析のための利用など、権利者の利益を害さず、著作物の通常の利用も妨げないような著作物の公正利用の類型についてはきちんとした権利制限による対応が必要である。考えれば他の類型も出てくることだろうが、これらのような公正利用を萎縮させて良いことなど全くないのだ。

 本当に必要なのは、「コンテンツ流通促進」ではなく、あくまで「公正利用のための権利制限」であると、私は言い続けよう。今年もまた、「コンテンツ流通促進」という響きだけは良い言葉に踊らされて日本の知財政策は迷走を続けることだろうが、一刻も早くこのような虚妄から日本全体が目をさますことを私は願っている。

(なお、レコード事業者と放送局という既存の流通事業者が、インターネットという新たな流通手段との競合でパイを減らすのは、これもまたどうしようもないことである。レコード事業者と放送局は何故か著作隣接権者な訳だが、第28回でも書いたように、このフラット化時代には、このような単なる政治力からもたらされた著作権法上の異常な優遇措置は無くす方に是正する努力がなされなくてはならない。逆にインターネットで隣接権を発生させることなど絶対にやってはならない最低の愚策である。同じ隣接権者という枠で語られることもあるが、創作に関与する実演家は無論別である。)

 最後に、警察庁のサイバー犯罪対策HPに、出会い系サイト規制強化案のパブコメ結果が公表されていたのでリンクを張っておく。読んでもらえれば分かると思うが、第54回に載せた私のパブコメの回答にはほとんど全くと言って良いほどなっていない。これもまた事実上のパブコメ無視である。

 第73回で取り上げた、インターネットサービスプロバイダーの違法コピー対策の協議会の発足も近そうである(毎日新聞のネット記事IP NEXTの記事)。そもそも何で業界の自主規制の協議会の必要性やら提言やらが、警察庁の報告書に盛り込まれるのかということからして疑問だが、記事よると、この対策協議会にも警察庁や総務省や文化庁がバックにつくようなので、この協議会は本当に要注意である。この3省庁が絡む検討でロクな結果が出てきたためしがない。

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2008年3月21日 (金)

番外その9:身近な知財問題3題(mixi規約改定騒動、初音ミク騒動、ウィルス作成者別件逮捕事件)

 このブログはあまり個別の事件については、取り上げないようにしているのだが、あまり抽象的に過ぎても分かりにくいだろうし、個別の事件について書くことも、また誰かがパブコメなりを書くときの参考になるかも知れない。今回も番外として、最近の各種事件について、私なりの考えをまとめて書いておきたいと思う。

(1)mixi規約改定騒動
 最初に、一番最近のSNSサービスmixiの規約改定騒動についてである。これは、ソーシャルネットワークサービス最大手のmixiが、規約を改定しようとしたところ、その改訂規約案の中にユーザーの日記等についてmixiに非独占的にほぼあらゆる形態での2次利用を許諾する条項と人格権不行使条項が含まれていたために、ユーザーの反発を招き、株価が下落するまでに至り、mixiは事実上この改定案を撤回するに至ったという騒動である。(この事件については、ネットで検索すれば山ほど記事が出てくるが、最近の記事として、ITmediaの記事マイコミジャーナルの記事にリンクを貼っておく。)

 実際、この騒動は、mixiの知財に関する定見の無さから引き起こされたもので、mixiに同情の余地はあまりないと言ってしまえばそれまでだが、ブログや掲示板などの他のサービスでも同様な騒動は十分起こり得る。

 今回のmixi騒動では、ネットにおけるこのようなサービスにおいて競争が成立しているが故に、ユーザーとサービス提供会社の間にバランスが成立し、結局規定の再改訂ということになったが、今後、独占性の強いサービスで似たようなケースが発生することも十分に想定される。サービスの独占性が強い場合、サービス事業者は、その独占を背景に、ユーザーにとって不利な著作権規約を押しつけようとしてくることだろうが、このような独占の濫用による不利な契約の押しつけが、独禁法違反であることは、誰もが知っていておいて良いことである。

 この問題は著作権問題の一種として語られることが多いが、政策的には、知財権自体の問題というより、ネットにおける各種サービスの競争環境の維持の問題である。事実上の独占・寡占が成立しているサービスにおいては、(役所の常としてあまり信用はできないが)公取への相談・申告も視野に入れ、独占の濫用による不利な規約の押しつけは独禁法違反であるとはっきりサービス提供会社に申し入れて、正当な規約の作成を求めることは誰にでもできることであり、また皆でやらなくてはいけないことでもある。インターネット時代においては、知財法だけではなく、独禁法のような競争法もまた事業者だけの法律ではなくなるのだ。

(2)初音ミク騒動
 また、これは少し旧聞に属するが、「初音ミク」という音声合成・ミュージックソフトで作られた楽曲が動画共有サービスで人気を呼び、着うた・カラオケ配信されようとする際に著作権管理団体に登録されるに及んで、それまでネットでほぼ自由に2次利用が可能であった楽曲がネットで完全に利用不可能になるのではないかと、ネットユーザーのコピーフリー派の反発を受け、着うた配信会社とソフト開発・発売会社の間の行き違いによるゴタゴタも相まって、ネット上での大騒動となった。

 結局、着うた配信会社とソフト開発・発売会社の間で一定の取り決めができ、ネットでの2次利用に関してはほぼ今まで通り権利行使されないだろうことが分かるに及んで、この騒動は大体収束した訳だが、この騒動のお陰で、著作権管理団体と権利者・利用企業との契約の問題と、ネットにおける2次利用の問題に今までにないスポットライトが当たることになった。

 第57回でも書いたように、著作権管理団体には功罪ともにあるが、著作権管理団体と権利者・利用企業の契約の問題も、私は、知財権そのものの問題というより、その運用と独占の弊害の問題だと私は思っている。契約自由の原則がある中、著作権管理団体との契約を権利者や利用企業が、対等な立場でもって正当に結んでいるのであれば良いが、そうではなく、既存の流通手段に対する独占的な地位の濫用により、権利者や利用企業に不利な契約を団体が押しつけているということがあるとしたら、これもまた、例え時間をかけても排除されて行くべきことだろう。

(また、私は著作権管理団体の登録ユーザーでも利用ユーザーでもないので、個別の団体の批判をできる立場にないが、著作権管理団体、例えばJASRACe-licenseの管理委託契約約款を比べてみるのも面白い。

 e-licenseの契約約款では、レコード、ビデオ、配信、カラオケ等の利用類型毎に権利の委託が可能であるのに比べ、JASRACの契約約款では、演奏権や録音権といった形で支分権を4つに分け、これらの分類毎に権利を委託することができるとした上で、映画、ビデオグラム、配信、カラオケなどの利用類型に関する権利委託を除くことができるとしている。一見同じようなことができるように見えるのだが、JASRACの契約では、除外できる利用形態の中にレコードへの録音が含まれていないので、JASRACと契約した場合は、レコードへ録音する権利に関しては必ずJASRACへ委託されることになる。

 要するに、JASRACとの契約だと、カラオケに関する徴収だけをまかせて、CDは自分でプレスするといった融通が利かないので、ユーザーは気をつけた方が良い。(配信に関する利用はJASRACでも除けるので、ネットでの利用に関して委託をしないということは両方ともできる。)これもまた、契約のトリックのようなものだが、誰もが権利者になり得る現在、著作権管理団体と直接契約するユーザークリエーターはこれからももっと出てくるだろう。気にしているユーザーはまだあまりいないのかもしれないが、どんなサービスであれ、規約や契約は、利用する前に本当に細かなところまで良く読み、自分でその意味を考えてみることを強く勧める。)

 このような運用と契約に関する問題は、競争状態さえ維持されていれば、利用者とサービス提供者の間で自然にバランスが取られるはずだが、一旦確立された独占状態を排除するのはなかなか難しいかも知れない。時間をかけても本当に難しいようなら、この著作権管理団体との契約に関する問題に関しても、さらなる規制緩和や独禁法の適用が考えられて良いだろう。(独占状態を排除するために、独占的な地位にある著作権管理団体を解体することや、プラーゲ旋風が吹き荒れた時代でもあるまいし、信託業法の特別法となっている著作権等管理事業法自体を廃止し、このような管理事業を信託業法だけに委ね、この規制業種をさらに一層自由化することが検討されても良い。どこまで行っても、知財権による独占は知財権の不当な独占を正当化しないのである。)

 また、初音ミクに関する話として、音楽やキャラクターのネットにおける2次利用の問題もあるが、2次利用を制限されるとなるとかえってユーザー・クリエータ離れを招き、文化的なクリエイティビティが下がり、全体としてビジネスのパイが減ることは、今回の騒動でも示されている。そこでビジネス的にバランスが取られて行くだろうことを考えると、この点に関する法規制は余計な歪みを生むことになるだけだろう。ネットにおける各種2次利用の問題に関しても、今後時間をかけて、契約と暗黙の了解に基づいた整理をネット上でして行く他ないと私は思っている。(逆にビジネスでこのバランスが崩れ、かえってクリエイティビティが下がるようなら、ここでもまたパロディの権利制限を設けるなどの形で天秤を逆に傾けようとすることが政策的に必要になって来るだろう。第56回で書いたように、インセンティブつき著作権登録制度の創設は、何らこのような著作権問題の解決には立たないに違いない。)

 なお、初音ミクに人格はあるのかといった話がされることもある(ITmediaの記事参照)が、今のところ、初音ミクのような楽器・音楽ソフトに対して重畳的に権利をさらに発生させた方が良いとする理由は何もなく、楽器は楽器のままにしておくべきだろう。(話としては面白いと思うが。)

(3)著作権によるウィルス作成者別件逮捕事件
 最後に、著作権によるウィルス作成者別件逮捕の問題も取り上げておこう。ウィルス作成が良いことなどというつもりもないが、これほど明白な別件逮捕も珍しく、ウィルス作成に関する色眼鏡を外して考えれば、この事件は、アニメ画像1枚の著作権侵害でもいきなり逮捕されることがあることを示した点で、著作権の持つ問題点の大きさを浮き彫りにしている。(参考に、地裁で最初の公判が開かれたという最近の読売新聞のネット記事へのリンクを貼っておく。)

 今、著作権侵害は、基本的に権利者が告訴しなければ刑事訴訟手続きを進めることができない親告罪とされており、この親告罪となっていることが、このような別件逮捕に対する一定のセーフハーバーとなると私は思っていた。だが、警察に言われて協力したのかも知れないが、権利者が別件逮捕に協力することがあると示されたのだ。裁判中でもあり、まだ最終的にどうなるか分からないところもあるが、もし本当にこのような逮捕が法的にも妥当なものとされたら、これは法律上の大問題である、ファンサイトなどでアニメ画像を1枚引用することすらアクロバティックな別件逮捕の引き金となりかねない、ネットの安全性の確保のため、ここにも1クッション、何らかのユーザーのためのセーフハーバーを法的に設ける必要が出てくるだろう。(民事手続きなら、通信の秘密などがあり、プロバイダー責任制限法に従って手続きを進めなくてはならないという点がセーフハーバーになっているが、刑事手続きでは、例えアニメ画像1枚の著作権侵害だったとしても、犯罪行為さえ明確なら、通信ログなどを警察が直接プロバイダーに開示させられる。)

 また、このような別件逮捕を警察が平気で行うことが分かった以上、著作権の非親告罪化は絶対認めてはならない。また、非親告罪化に加えて、ダウンロード違法化がなされた場合、ほとんど全ネットユーザーに対する恣意的な逮捕権を警察に与えることになるだろうということも、この事件は示している。著作権法の非親告罪化もダウンロード違法化も、最近の警察による恣意的な法律の運用を見るにつけ、反対する理由は増えるばかりである。今後も私は、ユーザーとして、これらの法改正には断固反対と言い続けるだろう。

 これらの事件のネットにおける騒がれ方は、インターネットが普及する中、知財問題、特に著作権問題が全ネットユーザー・全国民に関係する大問題となって来つつあることを端的に示している。あらゆる者が知財問題に無関心でいられなくなる時代が既に到来しつつあるのだ。

 次回から、またいくつか表現規制一般に関するエントリを書きたいと思っている。

(3月21日夜の追記:ウィルス作成行為自体をどうするかということも実に厄介な問題なので、また別途考えをまとめたいと思っている。)

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2008年3月16日 (日)

第73回:日本のプロバイダー業界の違法コピー対策

 違法コピー常習者にはネット切断するという対策を推進することが、インターネットサービスプロバイダー(ISP)業界と著作権団体で合意されたという報道(読売のネット記事AFP BBNewsの記事)があった。

 この話は、ダウンロード違法化問題含め、今後の知財の政策判断にも影響してくる話と思うので、取り上げない訳にはいかないだろう。

 恐らく、これは、第29回第30回で取り上げた、フランスの違法コピー対策に触発されたものと思うが、記事を読んでいただければ分かるように、これは業界同士の完全に自主的な取り組みであり、法改正により、違法ダウンロード対策としてインターネットのアクセス停止を考えているフランスなど(他にも、第60回で取り上げたように、イギリスやオーストラリアなども同じような対策を考えているようである)とは大きく趣きを異にしている

 要するに、この話は、あくまで違法コピー・違法アップロード対策であって、違法ダウンロード対策とは考えられないことに注意する必要がある。それも、主として、ファイルのアップロードとダウンロードを同時に行うP2Pファイル共有サービスにおける違法なファイル交換に対する対策だろう。

 ファイル共有サービスで、自分の著作物を、自動公衆送信可能化(アップロード)している者を、IPアドレスレベルで突き止めることは、ネットの非匿名性から、ほぼ誰にでもできることであり、IPアドレスを示し、そのアップロードが著作権侵害行為であるとプロバイダーに言うこともまた誰がやっても良いことのはずである。ISPの規約には、第3者の知的財産権を侵害する行為を禁止事項としているものがほとんどであろうし、提供された情報と規約にもとづいて、規約違反として、ユーザーへの警告やサービスを停止することもまた不可能ではないだろう

 ユーザー情報の開示や、一般的なHPにおける情報の削除要請などなら、通信の秘密や表現の自由との関係から、プロバイダー責任制限法に基づかなくてはならないだろうが、プロバイダーが自主的に規約違反としてユーザーへの警告と、警告を無視した場合のアクセス停止を行うだけであれば、これは確かに、プロバイダーとユーザー間の契約の話に落ちる

 ただし、この対策では、IPアドレスとユーザーの結びつけ、第3者の著作権を侵害しているとする判断において、ISPの役割が非常に重く、そこに何らかの間違いや恣意性、政治力による歪みが入り込む可能性がある。ISPと著作権団体が設置するという協議会では、まずその判断の客観性の担保のところから是非議論してもらいたいと思う。

 また、このような自主対策で、規約違反としてサービスを停止されたとしても、すぐに再契約が可能のため、イタチごっこになる可能性も高いが、他のISPとの再契約にはそれなりの手間がかかること、このネット時代においてインターネットへのアクセス停止による個人の情報アクセスへの影響が甚大であることを考えると、このような対策が過剰規制にならないようにするために、この動きも追っていかないといけない。記事によると、総務省や警察庁も、協議会に参加するようなので、なおさら、その指針作りにはユーザーとして目を光らせておかないといけない

 特に、この対策が、あくまで、権利者自らアップローダーのIPアドレスを突き止めることが可能な、ファイル共有サービスにおける違法アップロード対策であること、ISPとユーザーの契約の話で、ユーザーが直接著作権団体に訴えられる話でないことは、絶対守られるべき一線である。恐らく強力な規制を求める著作権団体は、協議会でこの一線を踏み越える主張をしてくるのではないかと思うが、そのような既存の法律をないがしろにする主張は絶対に認められない。

 また、今までも十分以上に危険だったが、著作権団体とISPによってこのような対策が進められるなら、ダウンロードの違法化の危険性がさらに高まるのは言うまでもなく、ユーザーとしてダウンロード違法化反対をさらに声高に主張しない訳にはいかない。このような対策がなされた中で、ダウンロード違法化がされた場合、著作権団体は全ネットユーザーに対するアクセス停止権が自分たちに無制限に認められたと見て、「情を知って」などという曖昧な要件は無視してこれを濫用し、有害無益な社会的大混乱が引き起こされるだろうことは想像に容易い。

 今回の対策はユーザーとの契約に基づくISPの自主規制に留まるだろうとは思うが、このような対策が過剰規制となり、社会的混乱がもたらされることも十分想定されることを考えると、ネットユーザーの方からも、このような規制を逆に規制するため、インターネットにおけるユーザーの情報アクセス権を法律で明確に規定することを求めて行かなければならないのではないかと私は感じている。最近の動きを見るにつけ、著作権団体や自称良識派団体の情報規制の動きは常に一方的かつ身勝手であり、インターネットにおけるユーザーの情報アクセスの自由をあまりにもないがしろにしていると、私は常に感じるのだ。

 無論、このような権利も制限を受けることになるだろうが、インターネットにおけるユーザーの情報アクセスの自由の確保は、このデジタル時代、インターネット時代において、最も重要なことの一つであり、決してないがしろにされて良いものではないと私は確信している。(知財本部のパブコメもあり、このことに関連して、表現の自由と「知る権利」の関係の話は、近いうちにまとめて書きたいと思っている。)

 この違法コピー対策の話は、「P2Pとかその辺のお話@はてな」の方でも、既に考察されているので、是非こちらもご覧頂ければと思う。

 もう一つ、日経ネットの記事によると、自民党でも、デジタルコンテンツ産業振興の小委員会を設置し、何らかの著作権政策を打ち出すようである。このような多重検討こそ、本当の問題だと常々私は思っているが、国会議員の小委員会でも検討するなら、著作権問題についても、地元の国会議員に手紙を書くなどしても良いだろう。

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2008年2月19日 (火)

第62回:財産権と人格権の混同と保護期間延長問題

 前回、EUで実演家の権利の保護期間延長を検討する予定だという話を紹介したが、海外で延長問題が取り沙汰されると大体日本にも飛び火するので、今回は、先を見越して保護期間延長問題について取り上げておきたいと思う。

 まず始めに、問題とするのが、著作権に関してであるのか、著作隣接権に関してであるのか、さらに著作隣接権の中でも、実演家の権利に関してであるのか、レコード製作者あるいは放送事業者の権利に関してであるのかということは分けて議論されるべきであることは言うまでもない。また、著作権と著作者人格権も異なるものであり、議論する上で、これらもきちんと区別されていなくてはならない。

(1)著作権そのものの保護期間延長問題
 まず、著作権そのものに関しては、現行でも著作者の死後50年という極めて長い期間に渡って著作権が保護されることになっている。また、著作者人格権については保護期間が切れるということはない。
 文化的には、ひ孫の孫くらいのことまで考えて創作をしている人間がいるとも思われず、文化の多様化のためにはこれ以上の延長はほとんど何の役にも経たないだろうし、経済的にも、著作者の死後50年を経てなお権利処理コストを上回る財産的価値を保っている極めて稀な著作物のために、このコストを下回るほとんど全ての著作物の利用を阻害することは全く妥当でないに違いない。

 また、延長問題は金銭的な話でないとするリスペクト論もよく権利者側が持ち出すのだが、創作者が世に出したいと思う形のまま、創作者の名前を付けて著作物を流通させるために、同一性保持権や氏名表示権といった著作者人格権が、既に保護期間が切れることのない権利として規定されているのであり、人格権と財産権を混同した主張は取り上げるに値しない。延長問題は、あくまで権利の財産的な側面のみを考慮して考えられなくてはならない。

 少なくとも、日本国内では、この点に関しては延長しないということでほとんど結論が出ているように思うが、今後も、この結論が変えられてはならないと私は考えている。(保護期間延長問題は、文化審議会・著作権分科会・過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会の第7回(平成19年9月3日)第8回(平成19年9月27日)で議論されて以降、放置されているが、近いうちにまた議論が再開されるのではないか。)

 さらにそもそも論をしておけば、財産権と人格権をごたまぜにした主張によって、今までずるずると死後50年まで著作権は延長されてきた訳だが、これほど長期間にわたり財産権たる著作権が存在していなければならないとする必然性は実はない。著作権も複製物の流通にかかる投資コストの回収を促すという産業財産権的な権利としてスタートしたことは、初期の保護期間が発行後14年程度だったことからも分かることだろう(上の小委員会の文化庁の資料「諸外国における一般著作物の保護期間の変遷」参照)。人間が自ら創作した情報の利用について何年の財産的独占権を得ることが適当かということは、本来社会全体の経済効率をかなり加味して判断されるべきだったろう。経済合理性から延長に対する抑制が働く特許権において、保護期間を20年以上に伸ばそうとする動きがないことが、今までの著作権の議論で全く顧慮されて来なかったのは、世界の文化にとって不幸なことであった。

(2)実演家の著作隣接権の保護期間延長問題
 EUが問題にしているのが実演家の著作隣接権の話のみと考えられることはもう一度強調しておく。著作隣接権の中でも、実演家の権利と、レコード製作者・放送事業者の権利は大きく性質が異なっているものであり、これらを混同することは百害あって一利ない。

 何度も言うようだが、既に同一性保持権や氏名表示権などの実演家の人格権も特に保護期間と一緒に切れるということはないので、ここでも人格権と財産権をごっちゃにするリスペクト論は全く当てはまらない。

 それでも、実演から50年を超えて保護期間を延長することが、文化的な実演を多く生み出すためのインセンティブとなり、このインセンティブが、保護期間延長によって生じる公共利用に対するディスインセンティブを超えるという明確な論拠が示されるならば、実演家の保護期間に限り延長するという選択肢は実はあり得る。(実演から50年という期間はかなり著名かつ長命の実演家でなければ切れることがない期間であり、どこまでインセンティブとなるかは疑問であるが。)

 しかし、今のところ、実演家の著作隣接権の保護期間延長についても、これを是とするに足る根拠は何一つなく、ユーザーとして賛成する理由はない

(前回紹介したEUのプレス記事や同じ内容を書いているITmediaの記事を読むと、EUは実演家が大きなロイヤリティを受け取れるようにするための基金をレーベルに作らせることや、楽曲の再リリースを渋った場合に実演家が他のレーベルに移れるようにすることも考えているようだが、大体、コンテンツ業界では世の東西を問わず、商慣習が法規制を圧倒していまっているので、こんな規制は絵に描いた餅になるだろう。保護期間が延長された場合は、実演家の収入は今のレーベルのビジネスから得られるロイヤリティの単純な外挿になる可能性が高いし、実演家が他のレーベルに移れるようにしたところで、コストパフォーマンスの悪い楽曲はどこのレーベルもリリースしないに違いない。)

(3)レコード製作者あるいは放送事業者の著作隣接権の保護期間延長問題
 今現在もかなりの政治力を保っているレコード屋と放送局が、同じ隣接権だからという訳の分からない理屈で、保護期間を一緒に伸ばせという主張をして来ることが容易く予想されるのだが、これらは実演家の権利と絶対に混同されてはならないし、レコード製作者の権利と放送事業者の権利については絶対延長されてはならないと私は考えている。

 この点については、第28回でも書いたが、レコード製作者と放送事業者という創作者ではない流通事業者の著作隣接権は、単にレコード会社や放送局が強い政治力を持っていたことから無理矢理ねじ込まれた権利に過ぎず、その目的は流通コストへの投資を促すことのみにあったものである。インターネットという流通コストの極めて低い流通チャネルがある今、独占権というインセンティブで流通屋に投資を促さねばならない文化上の理由もほぼ無くなっているのであり、本来なら、これらの保護期間は短縮することが検討されても良いくらいである。

 放送事業者の権利の保護期間については、今でもローマ条約(+TRIPS協定)で放送から20年と規定されているだけ(文化庁が上の小委員会に提出した資料「著作権関連の諸条約における保護期間に関する主な規定」参照)であり、短縮するのに実は国際的障害はない。合理的な理由無く決められた保護期間を短縮することが憲法上問題になる訳もなく、これは政治力の問題から事実上不可能に近いというだけのことである。レコード製作者の権利についても、現行の50年から絶対に伸ばしてはならないし、そもそも論を言えば、短縮のため条約の改定を目指しても良いくらいである。

 要するに、著作権の保護期間延長には無論私は反対であるし、実演家の著作隣接権の保護期間延長についても、今のところユーザーとして賛成する理由は何一つなく、レコード屋と放送局の著作隣接権の保護期間の延長については論外と私は考えているのである

 政策は時代によって変化を受けて当然であり、保護期間についても、その延長によって独占を強めることだけが文化政策上正しいなどということはもはや有り得ないのだ。 

 ついでに、総務省の方では、「通信・放送の総合的な法体系の在り方」の情報通信審議会への諮問がなされた(総務省の報道資料参照)ようであるので、念のために紹介しておく。

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2008年2月 6日 (水)

第57回:著作権管理団体の功罪

 前回に少し書いた通り、著作権管理団体(権利者団体と同義で使われることも多いが、著作権管理をしているからと言って権利者皆が団体に所属している必要は実はなく、権利者が参加している団体だからと言って著作権管理をしているとは限らない。)による杓子定規の権利行使と利用許諾が昔から問題にされており、そしてこれからも問題にされて行くことだろうが、このような杓子定規の著作権運用も、単に経済効率だけを考えれば一概に非難できないので、このような権利の集中管理が、著作物の利用の円滑化にも貢献してきたところがあったことはまず認めておかなくてはならない。少なくとも、それなりの資本力を持ち、まともなコンプライアンスを行う企業にとっては、ある特定の分野の著作権の権利処理コストを包括的に事業の中にビルドインできることは有り難いことでありこそすれ、特に非難することではないに違いない。

 では、何故、今、JASRACを筆頭とする著作権管理団体にユーザーの非難が以前に倍加して集まっているかというと、やはり、インターネットの普及以降の著作権の拡散現象によって、著作物の創作・流通・利用における一般ユーザーの地位が相対的に高まってきているにもかかわらず、この著作権管理団体の管理システムが一般ユーザーのことを考えたものとまるでなっていないことが主な原因であろう。

 要するに、一般ユーザーから見ると、この管理システムは大規模すぎ、運用が硬直的で柔軟性に欠けているため、全く利用する気にならないのである。だからこそ、権利者団体とユーザーの溝がこれほど広がり、著作権管理団体は独占による利益をむさぼっているだけのユーザーの敵と言われたりするのだ。

 ただ、多くの著作権を委ねられた営利団体にとって、完全に一律の権利行使と利用許諾が一番効率が良いのは当たり前であって、文化的にはどうあれ、ビジネス的には全く正しい行動である。著作権では個人だったら見逃すだろうといった些細な利用事例について、このような見逃しをどこまで認めるかは広く多く権利を委ねられた営利団体では判断できない話である。(無論、著作権等管理事業法では、正当な理由なく利用許諾を拒んではならない旨が第16条に規定されている訳なので、ユーザーから利用許諾を求めれば良いという議論もある程度は正しいのだが、この利用許諾にかかるコストのことまで考えると、大規模な利用を考えているのではない一般ユーザーにとってはやはり非常に厳しい。)

 しかし、一般ユーザー・個人による著作の創作・流通・利用が相対的に高まっている中で、このような硬直的な運用はどんどん社会的に通用しないものとなって行くことだろう。各団体がどのような事業運用をするかは、当然のことながら各自のビジネス判断であるため、ユーザーから見てどうこういう筋合いの話ではないが、クリエイティブコモンズのような取り組みの高まりなどを見ても、インターネットによるオンラインでの信託や利用許諾、非商用の利用については権利行使をしないといった柔軟な条件設定を可能とするなどの対策を取らないようでは、時代に乗り遅れ、今後も、ユーザーとの溝はますます広がっていくだけだろう。著作権法や著作権等管理事業法にこのような柔軟な運用を妨げる要素がある訳ではなく、本質的にこのような運用を妨げているのは彼らの中に極めて深く浸透している「複製=対価」という間違った概念のみである。かなり時間のかかることとは思うが、「複製=対価」の世界で全てを塗りつぶすのではなく、「情報の利用=無償かつ自由」の世界を常に作っておいた方が、最終的には文化の発展にも、引いては産業の発展にも寄与するという認識がもっと広まれば、自ずと状況は変わってくるだろうと私は思っている。

 ここまでは、事業運用とビジネスの話であり、ユーザーから見てシステムが使いにくいとは思っても、好きにやっていてもらって全く構わない話である。しかし、独占と天下りの弊害は、著作権管理団体を語る上でどうしても飛ばすことはできない

 既存のコンテンツ流通手段に自らの著作物を乗せるには、そこにほぼ独占的に利用許諾を行っている団体と、選択肢の少ない信託契約を結ぶことを余儀なくされることがあるという状態は、ビジネス環境として全く健全なものではない。さらに、使用料と分配率がこの団体によって主導的に決められるのでは、独占による弊害が発生していないと考える方がおかしいくらいである。さらに、この独占利益で天下り役人を飼い、監督官庁も抱き込んで独占利益を最大化しようとするに至っては弊害はその極みに達しているとしか言いようがない。

 ダウンロード違法化問題一つとっても、このような構図が透けて見えないことはないのであって、このような法律を濫用した官民談合はいくら非難しても非難しすぎということはない。著作権法、あるいは著作権等管理事業法自体が、独占禁止法の例外となっているかのように錯覚している者も多いのかも知れないが、個別の権利において独占的な利益が認められることは、さらに権利を非競争的手段で集めた場合の独占利益まで合法化するものではない。個別のケースで例外にすることが定められているにせよ、独占禁止法や各種知財法をいくらひっくり返したところで、こんな集合的な独占利益を正当化する条文は出てこない。ここにもまた、公正取引委員会の仕事の余地があると思っているのは私だけではあるまい。
 当たり前の話であるが、知的財産権による独占は知的財産権自体の不当な独占を正当化しないのである。

 何にせよ、このような問題を引き起こしているそもそもの根源である著作権等管理事業法施行規則)自体についてももっと詳しいことを書きたいと思っているのだが、それは折りを見て書くとして、ひとまずこれくらいにしておく。

 さて、ついでに、この1月23日に、ドイツのデュッセルドルフ地裁で、著作権管理団体対ファイルホスティングサービス事業者の著作権侵害事件において、サービス事業者側を負けとする判決が出されたというニュース記事(ドイツ語の記事1記事2日本語の記事)が出ているので、遅ればせながら紹介しておこう。英語からの翻訳らしいこの日本語の記事は、この判決でドイツでのオンラインファイル共有サービスがなくなるかのような書き方をしているが、単に地裁の判決が出ただけで、ドイツ語の記事を読むと、サービス事業者側もこの程度で負けを認める気はないようであり、そこまでの話ではない。著作権問題においては、ユーザーの責任もそうだが、サービス事業者の責任についても、今後かなりの時間をかけて判例と法律の整理がなされて行くことになるだろう。

 次回は、少し知財からずれてしまうが、やはり今話題のサイトのフィルタリングの話をしてみたいと思っている。

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2008年2月 5日 (火)

第56回:インセンティブつき著作権登録制度の不可解

 現行の著作権法にも登録制度はあるが、移転などについての第3者対抗要件となっているだけ(著作権法第77条)であり、いわゆるコンテンツ企業などでもこの登録制度を利用しているところはほとんどないのではないかと思われる。このような現行の著作権法に、インセンティブつきの登録制度を上乗せして作るべきか否かということが議論されており、多分今後も議論されて行くことだろうが、まず始めに書いておくと、何故皆そんなにこの登録制度が好きなのか私にはさっぱり分からないのだ。

 登録制にも良いところはあるのは私も認める。著作権法以外の知財法で、特許法・意匠法・商標法などでは、審査登録制が採用され、権利有無と帰属が明確にされるとともに、基本的に利用者の悪意を擬制して権利の存在を知らなかったという抗弁は許されない強い権利とされることで、登録へのインセンティブが与えられ、権利の発生と利用におけるバランスが取られている。このような法制が、技術と業における安定秩序の形成に貢献しているのは確かだろう。(特許権などについては、かえって権利が強すぎて企業コンプライアンスにおいて加重コストが発生しているという問題があるが、ここではひとまず置く。)

 しかし、特許法などの法律が、インセンティブつきの登録制度を取ってそれなりにバランスが保たれているのは、これらの法律が、無体物である情報そのものではなく、基本的に有体物への情報の利用を規制することで知的財産の保護を図っているところにとどまっていること、特定業界を対象としない業規制法である(権利が及ぶのは基本的に業としての権利の実施に限られる)こと、業規制法であるため、権利の発生と利用にそれぞれそれなりのコストがかかったとしても、市場の中にコストとしてビルドインすることが可能であることによっているのは忘れられがちである。

 それに比べ、著作権法についての考察では、文化は経済原則のみによれば良いというものではないということを、今のところ著作権法は複製という情報伝達に必要不可欠な行為を規制しようとしているものであることを、常に頭においておく必要がある

 まず、そもそも現行の著作権法ですら、ウィルス作者の別件逮捕に使われるほど便利で、これ以上の保護強化にはかなりのデメリットをともなうことを考えると、現行制度にさらに登録で何らかのインセンティブを権利者に与えることは、インセンティブ次第でかなり危険なものになると考えざるを得ない。

 そして、市場の中でほぼコストを吸収することが可能な特許法等の世界に比べ、著作権法の世界では、市場で消費されるコンテンツのみを考えれば良いということはなく、かえって市場からはみ出ている著作物の方がはるかに多いくらいであることを考えると、インセンティブとして働くほど強いインセンティブを登録に与えてしまった途端、この登録と利用にかかるコストがかえって大多数の人間に対するディスインセンティブとして働いてしまうことになると思われる。すなわち、登録制度をまともに機能させるためには、著作物の公表・流通・利用の前に、あらゆるユーザーに必ずその登録簿を確認させるに足るくらいの悪意推定が必要なはずであるが、この著作物の登録・利用にかかるコストは制度のデメリットとなり、このコストを下回る創作活動に対するディスインセンティブとして働き、本当に重要な草の根の文化活動をつぶすことにつながりかねないのである。

 人の著作物を勝手に登録する行為や、登録を利用した詐欺が起こる可能性も高いが、審査にかかるコストのことを考えると、著作物の厳格な事前審査も社会的コストの面から言って是認され得ないだろう。

 権利行使のときに登録すれば良いとするような法制も考えられるが、そうした途端、登録の唯一のメリットである権利の帰属関係の明確化すらできなくなり、もはや登録制度は何の意味も持たなくなる。アメリカでは、(侵害に気づいた時点で行っても良いらしいが、)登録の有無により権利侵害における救済に差が出る法制(この点については、ブログ記事が良くまとまっていて分かりやすいと思う。)が今でも残っているが、煩雑な手続きのコストと、救済に差が生じることについて一般ユーザーから見て納得性がないことを考えると、このアメリカの制度も決して褒められたものではない。

 さらに、今も本当の創作者に替わって権利行使と利用許諾を行う登録機関として、各種著作権管理団体が存在している訳だが、あまりに杓子定規な権利行使と利用許諾を行うことから大きな批判を受けている。登録に権利行使や利用許諾まで委ねることまですると、同じくお役所の杓子定規な運用によって、全く同じ批判を集めることになるだろう。

 要するに、経済原則のみによって著作権を成り立たせて良いなら、強力な著作権登録制度の導入も一つの選択肢ではあるが、そもそも文化は単純にコストとメリットで計られて良いものでも、文化的な営為に登録・利用コストという一律の奇妙なしきい値を立てて良いものでもない

 結局、インセンティブつきの著作権登録制度という、一種の経済原則に基づく情報規制は、考えとしては興味深いし、今後も議論されて行くことと思うが、著作権法の本質的な問題解決の役にはあまり立たないだろうというのが私の考えである。

 先週から時間が空いたので、少し溜まってしまったが、あと、一通り国内外のネット記事の紹介もしておきたい。

 まずは、前回も紹介したところで、インターネットサービスプロバイダーからメディア企業への民事裁判における個人情報開示は不適当としたEU裁判所の判決が載っているところへのリンクをここに張っておく。この最終判決は、EU諸国に著作権と他の重要な権利とのバランスをきちんと取るように促しているが、これで今後のEU諸国の政策動向にどのような影響が出てくるかは注目して行きたいと思う。(著作権とプライバシーの問題は今後日本でも問題になって行くだろうと思うので、近いうちに考えをまとめておきたいと思っている。)

 この話も「P2Pとかその辺の話」で先に紹介されているが、念のため、ここでも紹介しておくと、イタリアの新しい著作権法では、非営利の場合に限り、研究・教育を目的として、音質を下げた音楽データをインターネットに無償で自由に公開して良いとされたようである(イタリア語の記事スラッシュドットの記事英語の記事イタリア語の条文)。条文へのリンクを見て頂ければ分かると思うが、特に問題となるのは著作権法の以下の部分(翻訳は拙訳)である。

70. 1-bis E'consentita la libera pubblicazione attraverso la rete internet, a titolo gratuito, di immagini e musiche a bassa risoluzione o degradate, per uso didattico o scientifico e solo nel caso in cui tale utilizzo non sia a scopo di lucro. Con decreto del Ministro per i beni e le attivita culturali, sentiti il Ministro della pubblica istruzione e il Ministro dell'universita e della ricerca, previo parere delle Comissioni parlamentari competenti, sono definiti i limiti all'uso didattico di cui al presente comma.

第70条第1の2項 そして、その利用が営利のためになされるものでない場合に限り、研究あるいは教育のために、解像度を下げられた、あるいは質を下げた、画像と音楽は、無償で、インターネット網で自由に公開することが認められる。この項に記載された教育目的の利用は、公教育大臣と高等教育大臣の意見を聞き、あらかじめ国会の管轄委員会の意見を受けてから、文化活動・文化財大臣の命令によって定められ、制限される。

 確かにこの権利制限の条文は、P2PにおけるMP3データのファイル交換をある程度合法化するもののようにも読めるが、本当にP2Pを合法化する法改正とも思えないので、この運用についての詳細が分かれば是非紹介したいと思う。ただ、このことについてはネットでどこまで分かるか良く分からないので、もし詳しいことをご存じの方がいれば是非教えて頂きたい。

 2007年7月の記事であるため、いささか旧聞に属するが、ドイツの刑事当局がネット上での著作権侵害事件を取り上げることを拒否し始めていたということを示す記事(ドイツ語英語)が上の記事のリンク中にあったので、念のために、これも紹介しておきたい。記事によると、オッフェンブルク地裁が、去年に、全体で多くのファイル交換がなされているにせよ、一人あたりで考えると刑事罰をかけるに足る犯罪事実がないとしてユーザーへの刑事訴追を拒否する判決を出していたようである。やはり同じ記事によると、至極もっともなことに、この判決は、10000件以上の刑事告発をもたらす法律は、立法の方がおかしいとも言っているようである。だが、この判決がどうあれ、最近ダウンロード違法化を明確化した法律を施行したばかりであることを考えると、ドイツの状況は泥沼化の一途をたどるだろう。何にせよ、世界で唯一ダウンロード違法化を強力に推進しているドイツの状況は、今の日本の法改正騒動においても参考になると思うので、今後も分かる限り紹介して行くつもりである。

 先延ばしになっただけであるので、全く安心はできないが、文化庁で、1月末に親審議会である著作権分科会が開催され、ダウンロード違法化問題も、補償金問題も来期に正式に先送りにされたとの記事(日経BPの記事ITmediaの記事internet watchの記事)が出ているので、これも念のためにリンクを張っておく。

 また、知財本部では、2月1日にコンテンツ・日本ブランド専門調査会・コンテンツ企画ワーキンググループが開催(議事次第)され、「デジタル時代におけるコンテンツ振興のための総合的な方策について」(概要本文)といった報告書が出されている。
 今回は、著作権法に関して変な記載がある訳ではなく、非常におとなしい報告書なので、特段突っ込みを入れるところはない。恐らく、次の知財関係の大きなパブコメ募集は知財本部になると思うので、そのときになったら、知財本部絡みの報告書についてまた細かな突っ込みを入れたいと思っている。

 折角今回少し触れたので、次回は、著作権管理団体の功罪について書いてみようかと思っている。

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2008年1月31日 (木)

第55回:文化は天才のみが作るものだという誤謬

 第49回で、権利者団体のみによる「Culture First」宣言など、僭越以外の何物でもないと書いたが、このような宣言の根底に流れているのは「文化とは高尚な芸術であり、常人とは異なる才能を有する者のみが連綿と作り上げてきたもの」というやはり完全に間違っている幻想だろうと思われる。第52回でコピーフリー文化の重要性について書いたところではあるが、この間違いについて今回、さらにダメ押しをしておきたい。

 確かに、今までの文化史において、天才のみが目に付くのはやむを得ないことであるが、その天才たちにしたところで、その業績は必ず先人の仕事の上に積み上げられているのであり、文化は常に無数の模倣と積み重ねのプロセスによって発展してきたということは第52回でも書いたことである。

 そして、複製コストが下がったにしても情報の流通のためにかなりの複製コストが必要である状況において、このコストの回収が可能なほどの情報発信力を発揮できる者のみが、流通事業者からの投資を受け、かなり独占的に情報発信を行っていたとしても、情報の総量の増大、文化の発展という目的から見て、これはそれなりに是認されても良かっただろうと私も思う。

 しかし、この単なる投資コスト回収のためのしきい値を、才能のしきい値と勘違いしてはならないし、この複製による投資コストの回収分配スキームに浴する者だけが情報の発信者となる権利を有すると考えることなど、絶対にあってはならないことである。「文化とは才能のある者のみが作るもの」という概念もまた、「複製=対価」という間違った概念に由来する、しきい値の勘違いから生じた、歪んだ認識に他ならないのである。

 どこであれ、人と人とのコミュニケーションがあるところにはどこでも、著作権法とは全く無関係に、常に草の根の文化活動があったことを、この草の根の文化活動に従事していた名も知れぬ人々こそ、複製コストまで含めて常に文化を本当に下で支えて来た者であることを忘れ、過去の栄光にすがり、権利と称して利権の拡張を主張する者に、文化を語ってもらいたくはない。

 誰であれ、民俗伝承の文化的価値を認めない者はいるまい。しかし、このような伝承は、名も無き民衆が世代から世代へと伝えてきたものであって、誰かの著作物ではない。さらに、今日、インターネットによって新たに切り開かれた地平の中、Wikipediaに、オープンソースコミュニティに、SNS・掲示板・ブログ等々に続々と書き込まれている情報の文化的価値を誰が否定し去ることができよう。ある表現の文化的価値は、一人で書いたか、多数で書いたか、実名で書かれたか、匿名で書かれたかなどということによるものではなく、本質的に媒体によるものでもないのである。

 そもそもインターネットは学者たちが自由かつ無償の知識共有を実現するために開発したものであるが、このインターネットというあらゆる者に平等な情報伝達手段が普及したことによって、かえって明らかになったことは、才能にしきい値などないということ、あらゆる者に創造性を発揮するポテンシャルがあるということである。昔であれば天才しかなし得なかった文化的営為が、情報の共有と多くのユーザーの参加によってなし遂げられるという新たな可能性が作られたのである。この可能性が小さなものでないどころか、文化を牽引する新たな力になっていることは、インターネットにおいて日々莫大な情報が創造され、さらに勢いを増していることからも明らかだろう。

 要するに、独占による利益のみを保護していれば文化の発展を促進していると言える時代は終わったのであり、過去のしがらみから情報独占の方に傾きすぎている著作権法の天秤を傾け直し、情報独占と情報共有との間で正しいバランスを取り戻すべき時が既に到来しているのである。

 このような本当に大きな流れを無視して、自分が認めるもののみを正しい文化として「文化」の意味を歪め、独占によってもたらされる自己の利益を最大化しようとする者が後を絶たないのは実に残念でならない。文化に正しいも正しくないもない、良いも悪いもない。文化においてあらゆる表現は平等であり、文化は万民のものである。この公平の原則に反するあらゆる不当規制は、既に存在しているものも、歪んだ政治的圧力によってこれから入るかも知れないものも、どれだけ長い時間がかかろうと、排除されて行くだろうことを私は信じて疑わない。

 結局、複製がどうとかいうせせこましい話を超え、インターネットの登場によって、しきい値のないグラデーションの中に必然的に分散する表現者に、どのようにして文化的貢献度に応じた正当な社会的報酬を与えたら良いかということが社会に今突きつけられている本当の問いである。既存の概念を全て捨て去り、インターネットの存在を前提としたとき、情報に関する社会契約はどうなるかと言い直しても良い。現実社会において全力で様々な試行錯誤が行われていることからしても、意識的にであれ無意識にであれ、あらゆる者は本能的にこの問いの存在を悟っているに違いない。

 私も一凡才として、自分なりにできる限りのことを、これからもここに書き留めて行くつもりである。

 さて、ネットで見かけた記事の簡単な批評も一緒にしておこう。
 毎日のネット記事で、調査についてはいつも通りの「ため」にする調査なので取り上げるにも値しないと思っていたのだが、違法ダウンロードに関する「盗品」理論は始めて見かけたので、少しだけ突っ込んでおきたいと思う。(Imediaの記事などを見ても、世界的に見ても同じような主張が権利者側からなされているようである。)
 すなわち、この「盗品」理論は、著作権法であれ、特許法であれ、どの知的財産権法でも、知的財産侵害品の単純購入や単純所持を禁じているものはないこと、知的財産権はあくまで社会的な便宜のために創設された人工的な権利であることを完全に忘れている。完全な情報コントロール権をその創作者に与えた場合の弊害は計り知れない。有体物の窃盗と、無体物である知的財産権の侵害を混同するのは、常に論理飛躍をもたらす危険なアナロジーであると、「海賊版、模倣品≠盗品」であると、常に肝に銘じておかなくてはならない。

 また、著作権裁判におけるインターネットサービスプロバイダーからのP2Pユーザー個人情報提出は認められないとする判決が、EU裁判所で出されたというITmediaの記事も、念のため紹介しておく。著作権に気を取られすぎて、他の大事なことを忘れてやしないかというのは、私が常々抱いている疑問であるが、著作権強権国家が居並ぶ欧州でも、このような判決が出されているのは心強い。

 次回は、これまた最近話題の著作権登録制度について自分なりの考えを書いてみたいと考えている。

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2008年1月24日 (木)

第52回:コピーフリー文化の重要性

 今日、文化庁で、今期最後の私的録音録画小委員会が開催され、ダウンロード違法化問題も含めて、私的録音録画関係のとりまとめが先送りになったとネット記事(internet watchの記事ITmediaの記事)でも報道されている。

 結論が先送りになり、またパブコメなりを出す機会があると予想されるのは良いことだが、次のとりまとめに向け、文化庁と権利者団体が、こぞって「複製=対価」の世界のみが文化の発展に寄与するという間違い以外の何物でもない観念による国民への洗脳を強化する恐れが強い以上、それ以外の世界も今まで常に大きな存在であったことを、そして、それ以外の世界の方こそ今広がりつつある世界であることを、あらゆるところで示す必要がある。「複製=対価」の世界も勿論あっても良いだろうが、このルールが「複製=フリー」の世界にまで強制され、全てが「複製=対価」で塗りつぶされることは文化にとって極めて有害であることを示し続けることは、「複製=フリー」の世界に最も近いところにいるネットユーザーの責務だと私は思っている。

 英語でFreeというと自由の意味も、無償の意味もあるのに比べ、フランス語では自由はLiberte、無償はGratuit、ドイツ語ではFreiheitとCostenlosと違う語である。英語でフリーというとすぐごっちゃになるが、自由と無償は違う概念であり、自由なら無償かというとそんなことはないし、無償なら自由かというとそんなこともない。(言葉の違いが法制に影響を与えているのかどうかはよく分からないが、自由あるいは無償ということを言い表すのにはフリーという語感は便利ではある。)

 そして、情報の利用と自由と無償という観点から分類すると、「情報の利用=不自由かつ有償」、「情報の利用=不自由だが無償」、「情報の利用=自由だが有償」、「情報の利用=自由かつ無償」の4パターンがあることは誰にでも分かることであるし、この全てのパターンが現実にあり得ることも分かるだろう。「情報の利用=複製」と考えて、「複製=不自由かつ有償」こそ文化の発展にとってベストソリューションとなる基本概念であると、文化庁と権利者団体が今必死で洗脳工作を展開している訳だが、私は全くこれに賛同しないどころか、「情報の利用=自由かつ無償」こそ文化と産業の発展にとって常に必要不可欠の基本概念だったと、そして、これからもあり続けると私は考えているのである。(このような「自由」に基づく知的財産の分類をしている文章はあまり見かけないが、知財権に限らず、権利すなわち法規制で、権利は全て自由から発生する諸問題を回避するための調整手段なのであり、その逆ではない。そう単純な話でもないが、自由・不自由はDRMの有無と、有償・無償は補償金の有無と読みかえてもらうと分かりやすいかも知れない。)

 今回は文化の話をしたいので、著作権に的を絞るが、そもそも、情報の伝達手段が未発達で、著作権という思想がないころに、コピーが自由かつ無償であることは自明のことであって、その時代に情報の伝達のための複製には許諾が必要だとして金を取ろうとしたら、気違いと思われて終わったことだろう。情報の伝達のため手段が限られていた時代には、その情報が取り締まられるべき思想でない限り、情報伝達のための複製は推奨しこそされ、規制することなど考えられもしなかったろう。ギリシャにせよ、中国にせよ、古代文化として残されているものは全て、当時最も多く読まれたものが最も多くコピーされ、おかげで結果として残っているのである。大体、一部の者が莫大な資産と余暇を持て余している状況では、文化の保護は単純に人の囲い込みによってなされていたのであり、民衆は民衆で自分たちで文化をほぼ無償で伝承していたのであって、そこに「情報の伝達のための複製=対価」の概念など入り込む余地は無かったろう。

 では、著作権思想の発生と拡大の要因は何だったかというと、結局、情報の伝達のための複製のコストが技術の発展により下がったということこそ決定的な要因だったと考えられる。

 印刷技術の発明によって、出版にかかるコストが劇的に下がったため、多くの人々に本を届けることが可能となり、それが商売となった。しかし、コストが下がったと言っても、印刷機と本の流通のためにかかる投資コストはかなりのものであり、あらゆる者に技術的な恩恵を、文化的な創造物を享受する機会を与えるためには、この投資コストを出版業者に回収させることが必要だったからこそ、著作権は発明されたと考えられるのである。そして、この投資コストの回収こそが最大の理由であったのにもかかわらず、この権利の発明にあたっては、創作者へのコスト配分によるインセンティブ論が巧妙に使われたことだろう。

 その後、新たな情報伝達技術が発明される度に、同じ創作者保護の理屈で著作権は拡大されて来た。さらには、20世紀になってレコードや放送といった情報流通(伝達)手段が発明され、これらの流通業が極めて強い政治力を持つに至った結果、これらの業界は、それまで使われてきた著作権の創作者保護の建前すらねじ曲げ、著作隣接権という形で自分たち流通業の投資コストの回収のための権利を、著作権法に無理矢理ねじ込んだ

 しかし、どのような創作者であれ、最初から独創的な創作をして来た者などおらず、最初は必ず模倣から始まり、個人レベルであれ社会レベルであれ、この模倣が自由かつ無償で許される世界の存在こそが常に、次世代の文化の作り手・担い手を育ててきたのであり、著作権思想の拡大によっても、この世界は消極的にもせよ常に守られて来ていたのである。音楽家にせよ、画家にせよ、作家にせよ、プロであれ、アマチュアであれ、子供あるいは青年時代に、他人の音楽なり絵なり文章なりを個人的に複製・模写・模倣・加工して、自分なりの表現手法の模索をしたことがない人間がいるだろうか。これが法律的に悪だと言われたら、一体どうやって文化を学び、発展させれば良いというのか。今の私的複製の議論など、著作権神授説に毒されすぎ、最も基本的なことが忘れられているのである。

 これらの出版やレコードと言った発明は全て、情報の伝達のための複製のコストは下げたせよ、必ず業としてかなりの投資を要求するものであったが、通信技術の発展、特にインターネットの登場が、その状況をさらに劇的に変え、情報伝達のために必要な全ての複製のコストをあらゆるユーザーにとって気にならないほど小さなものに下げた。このような場で、複製に基づくコストの回収と配分という従来のスキームが通用しないのは当たり前であり、この状況の変化が、従来の有体複製物の流通コストに頼ってきた情報流通業の有様に変化を与えるのも当然の話である

 要するに、流通コストへの投資の谷を越えられそうな創作者のみに流通事業者が投資をして著作物を流通させることが正しい文化のあり方だった時代は終わり、誰でも文化の発信者になり得る夢の状況が既にほぼ現出しているのである。投資の谷を越える必要がない以上、何ら金銭的なインセンティブをつけなくとも、自らの創作物を公表する人間は必ずいる。人類全体の文化に貢献するということのみを目的として人が創作することもあるのを否定してはならない。インターネットという技術の開発によって、「情報の利用=自由かつ無償」の世界に新たな地平が開かれたのだ。

 ソフトウェア業界では、フリーソフト・オープンソースソフトのやりとりがインターネット上で極めて盛んに行われている。確かにこのフリーソフトは商用ソフトウェアと競合し、たまに小競り合いも見かけるが、フリーソフトやオープンソースソフトによって、ソフトウェア業界が壊滅的なダメージを受けるどころか、かえって共存繁栄の道を模索していると考えた方が妥当である。

 ゲーム、漫画、アニメに代表されるオタク文化業界も、「情報の利用=自由かつ無償」の世界である同人文化がこれを下支えしていることは公然の秘密であって、これらも、たまに裁判などになったりはするものの、基本的には暗黙の内に共存繁栄を目指していると考えた方が良い。

 これらの業界はよく知られている顕著な例というだけの話であって、他のジャンルの文化であっても変わりはない。文化の発展のためには、潜在的な創造者である利用者に、著作物の無償かつ自由の利用を認めることによって生じる揺らぎが絶対に必要なのであって、これをつぶすことは未来の文化をつぶすことに他ならない。創造は常に模倣からしか生まれないのであり、フリーライドを完全に悪として、あらゆる複製を不自由あるいは有償としてしまうことは、文化政策として絶対にやってはならないことなのである。

 ただし、「情報の利用=自由かつ無償」の世界が必ず必要であるにせよ、これがどの程度必要であるか、さらに、「情報の利用=不自由かつ有償」、「情報の利用=不自由だが無償」、「情報の利用=自由だが有償」の世界も含め、これらの間の線をどこに引くかは非常に難しい問題であり、リアルとバーチャルを通しての共通解は恐らくない上、文化のジャンルによっても最適解は恐らく異なっている。本当の現実解の導出には相当長い時間がかかるだろうと、本当の現実解の導出の前に中途半端な妥協をすることは必ず良くない結果をもたらすだろうというのが私の考えである。

(1月24日夜の追記:コメントを頂いたが、確かにクリエイティブ・コモンズなどの取り組みについて言及し損ねていた。このような取り組みについては、また別途書きたいと思う。なお、細かなライセンス条件が必要なほどのブログとも思っていないので書いていないだけなのだが、念のためにここで書いておくと、このブログはほぼパブリックドメインと思って書いているので、ここで私が書いた情報の利用は全て自由かつ無償と考えてもらって構わない。ただし、引用の部分については、引用元の著作権がある場合があるので気をつけて頂きたいと思う。)

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2008年1月16日 (水)

第49回:「Old Culture First」

 権利者団体が、また集まって「Culture First」なる標語で、補償金制度の維持・拡大を求めているようである。(ITproの記事internet watchの記事ITmedia記事

 今の補償金は文化の発展のためにカケラも役立っておらず、単に既存の権利者団体の既得権益と化していることこそ、補償金制度改革の最大のネックになっているのだと、私はこのブログで何度も繰り返してきた。

 とにかく補償金が減ったので増やして欲しい、ただし、団体同士あるいは団体内での権益配分は今のままどんぶり勘定でと言っても、そんなことで国民の理解が得られると思う方が間違っている。もともと正当性があやふやであった金について、これが減ったから増やせということには、何の利も正義もなく、ただひたすら不当である。

 権利者団体が、補償金を本当に文化全体のことを考えて補償金を使いたいと考えているのなら、そこには、新しい文化への理解が、新しい文化のためにその用途を振り向ける提案があって良かったはずだが、様々な報道や記事を読んでいて、そのような提案はついぞ見かけなかった。彼らの主張は、いくら文化の外面をかぶろうと、要するに、今までの不労所得が減ったので、これを増やしてくれという老人の妄言に過ぎない。

 そんな連中があたかも文化全体を担っているかのごとき顔をするのは許されない。単なる権利者団体が、あたかも自分たちのみが文化全体の旗手であるかのごとき顔をして、「Culture First」など言うのはおこがましい話である。補償金制度について何ら新規な提案をできず、壊れたレコードのように同じことを繰り返し言い続けていること自体、自分たちが伝統文化と化したことを、斜陽文化と化したことを告白しているに等しい。その標語も「Old Culture First」と変えたが良かろう。

(だからと言って私は、古い文化が潰えて良いなどというつもりは全くない。古い文化なら古い文化なりの保護をするべきなのであって、権利者団体は素直に自らの文化とビジネスモデルの敗退を認めて、古い文化としての保護を求めれば良いと言っているだけのことである。)

 補償金が減ろうが増えようが、有ろうが無かろうが、そんなことで本当の文化はびくともしない。そもそも人類の歴史において文化のない時代は無かったが、著作権制度はごく最近に作られたものに過ぎず、補償金制度に至ってはさらに最近のものである。それこそ著作権制度を全て無くしたところで、本当の文化は無くなりはしないだろう。
 既存の既得権益団体のためのみに不当に強化された著作権制度など、もはや文化の営みに歪みをしかもたらさない。文化の最先端は常に新しいところにある。インターネットユーザーこそ今の本当の文化の旗手であると私は断言する。私は無名の一ブロガーに過ぎないが、断固としてここに立つ。

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第48回:コンテンツ産業の真の敵

 今回は、産業論よりの話をしてみたい。(文化と産業は盾の両面であり完全に切り離すことはできないが、それぞれ異なる側面であることを忘れてはならない。しかし、大体どこでも文化論と産業論がごっちゃにされ、さらに議論の混乱に拍車をかけているのは実に残念である。)

 インターネットにおける無許諾コピーによる途方もない被害がコンテンツ産業にとっての敵であり、この敵さえ撲滅すれば皆にとってバラ色の未来が開けるとする意見もある。
 しかし、映像であれ、音楽であれ、ゲームであれ、あらゆるコンテンツの情報化が進み、インターネットの普及も爆発的に進んでいる中、そこでの無許諾コピーを、有体物の流通コストをともなう現実のコピーと同一視して、被害額を計算したら途方もない額となるのは当たり前の話であり、基本的にこのような被害額計算は全てナンセンスである。(真面目に取り合う気すら起きないが、著作権団体などが次々と出してくる報告書のバカバカしい被害額を積み上げると、コンテンツ産業は既に完全に壊滅しているという結論になるのではないか。)

 現実の現象のみを見れば、別にインターネットの普及によってコンテンツ産業が全体として壊滅的なダメージを受けたということはないし、かえって新たな流通チャネルが一つ増えたことでコンテンツ販売の機会が増えたと考える方が妥当なのではないかと私は思う。(例えば、デジタルコンテンツ白書2007では、パッケージメディアのシェアは減ってはるものの、かえってコンテンツ産業全体としては規模が伸びているとしている。本当なら様々な統計と突き合わせなければならないところだが、ここで言いたいことに対する裏付けとしてはこれくらいでも良いだろう。)

 確かに、個人的にも、いくらインターネットで便利になったところで、娯楽のために使用している時間と所得の割合が変わったという気は全くしない。結局、自分たちが儲からなくなったのはインターネットの所為だとする著作権団体の主張は、コンテンツの多様化と景気の動向によって自分たちの旧来のビジネスモデルのパイが相対的に減っただけであるにもかかわらず、そうと認められずにインターネットに責任転嫁をしているだけとしか私には思われない。単なる流通手段に良いも悪いもある訳がなく、旧来のビジネスモデルの敗退を流通手段の所為にしたところで、詮ないことである。

 インターネット上で娯楽を探そうと思えば、別に音楽や映像を探さずとも、掲示板やブログで読んだり書いたりしたところで全く構わないのだし、それこそ、メールのやりとりを最大の娯楽にしている人もいるだろう。これらはインターネット登場前までは考えられなかったコンテンツの形態である。文化の本質は、コンテンツの消費にあるのではなく、人と人とのコミュニケーションにあるのであり、そこからどうビジネスに結びつけていくのかはその次の話である。コンテンツの多様化自体は、コンテンツ産業全体として見れば良いことでありこそすれ、決して悪いことではないはずである。(コンテンツの多様化が一部の既得権益者の不利益となり得るのは確かだが、それは全体を見た話ではない。このような一部の既得権益者のみが強い政治力をもって一国の政策判断を左右しているとしたら、それは社会全体にとって不幸な話である。多様性を規制によって潰すことはほぼ常に文化と産業にとって悪であったし、今後もあり続けることだろう。)

 産業すなわち商売の基本は、いかに消費者の財布をゆるませるかということであって、それ以上でもそれ以下でもない。この商売の本質を忘れて、法律をいくらいじくったところで、旧来のビジネスモデルにこだわり続ける限り、消費者の財布がこれ以上ゆるむことはなく、その業界はさらに斜陽化の一途をたどるだけである。ビジネスとして考えれば、複製に必ず対価を求めなければならないとすることもないし、対価回収のやり方も一つではない。ビジネスの発想においてまで著作権法にとらわれる必要はどこにもないのである。様々なビジネスモデルのトライアルがなされ、ビジネス慣習を打ち破るのに時間もかかると考えられる中で、著作権を無意味に強化することは、かえって将来のビジネスモデルを阻害することになるだろう。法律に現実を合わせることは最後不可能であり、常に現実に法律を合わせるべきなのである

 だが、世の中には個別のビジネスにおいていくら努力したところで、どうにもならない社会全体の問題から派生してくる問題がある。コンテンツが娯楽品であり生活必需品でない以上、コンテンツ産業は確実に景気の影響を色濃く受けるであろうし、実に、この景気の足をこれからも引っ張り続けるであろう、少子高齢化問題と、これと日本の社会構造が組み合わさって生じたニート、フリーター、ワーキングプアと言われている層の固定化の問題こそ、日本のコンテンツ産業にとって致命的なダメージを与える真の敵となるだろうと私は考えている。

 既に少子高齢化の影響は、社会の様々なところに歪みを生みつつあるが、コンテンツ産業も例外ではない。私の見る限り、既に様々なコンテンツの訴求対象年齢は確実にあがっている。訴求対象年齢が人口の中心とともにあがっていくのは、商業主義の必然ではあるが、これは、コンテンツ産業が、全体として若者を見捨てて行くという傾向であり、文化的にも産業的にも決して好ましいものではない

 文化は常に未来のものであり、過去のものとなった瞬間、その文化は死ぬのである。別に老人の老人による老人のためのコンテンツを否定するつもりはないが、若者も子供も、そのようなコンテンツに見向きもしないに違いない。今ですら、業界が日々大量に生産しているコンテンツの中に、若者や子供が本当に求めているものがどれくらいあるのか甚だ心許ない限りである。

 このような既存のコンテンツ業界の有様を見て、自分たちが本当に欲しいコンテンツを自ら生み出し、自ら享受する場として、若者がインターネットを選択しているのも無理のない話である。このような表現の場の自由を守ることには、未来の文化と産業を育てるための投資と考えられなくてはならないし、このような自由を守るためにこそ社会的コストはかけられなければならない。若者への投資は、既得権益者は誰一人得をしないが、必ず社会全体にお釣りつきで返ってくるものである。(ダウンロード違法化は、このような場に既存の利権構造を持ち込もうとしているからこそ、これだけの反発を招いているのである。あれだけのパブコメを見てなお、それは無許諾無償のダウンロードを無限にしたい悪意ユーザーのなせる業だと考えている人間がいるとしたら、そんな人間は即刻気違い病院に入れた方が良い。)

 コンテンツ産業が、常に盾の両面として文化の側面もあることを考えれば、商業主義によるコンテンツそのものの高年齢化の弊害を少しでも緩和するべく、政策的に若者への投資をきちんと行うべきであろうが、法律も国家予算も、政官業の既存の利権屋たちのみの間で完全に食いものにされ、若者への投資という考え方が政策的に全く出て来る余地がないのは本当に残念でならない。さらに、既存の利権では食えなくなったからと言って、若者の可能性まで食いものにしようとするに至っては言語道断である。若者の未来を摘む権利は誰にもない

 このブログをどれほどコンテンツ業界の人間が見ているかは分からないが、もし読んでいるなら、文化的な創造行為とは全て、子供の頃に見た見果てぬ夢を人に伝えようとする飽くなき欲求の発露であることを、子供と若者にこの未来への夢を見せることこそ文化に課せられた最も崇高な使命の一つであることを是非思い出してもらいたい。この未来への投資を怠ったら、法律がどうあろうと、かならず文化は産業としても衰退する。しかし、逆にこの未来への投資さえきちんとしていれば、法律ごときがどうあろうと、かならず文化は産業としても栄えるのだ

 なお、著作権関係の国際動向として、スウェーデンでは、少数派とは言え、P2Pのファイル共有を合法化しようとする国会議員グループの運動がある(英語のネット記事参照)ことを、また、カナダでは、連邦控訴裁判所が、iPodへの補償金賦課の権限はカナダ著作権委員会にないとして、iPod税を否決している(英語の記事1記事2記事3参照)し、カナダにおける著作権問題に対するユーザーの運動がさらに広がりを見せているようである(英語の記事参照)ことを、ここでついでに紹介しておく。

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2008年1月14日 (月)

第47回:文化を保護せず、天下り利権のみを保護しようとする文化庁の醜態

 この1月11日に開催された法制問題小委員会のネット記事(ITproの記事internet watchの記事)などを読んで、コンテンツ産業にとっての敵の話をする前に、国民の敵である文化庁の話をもう一度しておきたくなった。

 ネット記事で、小委員会中、パブコメの形骸化を心配する委員からの発言があったとのことだが、文化庁はこれに対して何と答えたのだろうか。記事が何も伝えていないところを見ると、どうせ要領を得ない回答をしていたのだろう。

 どこにおける意見にせよ、ある発言を自らの意見と違うということをもって黙殺・圧殺することこそ、文化にとって最も忌むべきことである。この文化にとっての本質を、もはや文化庁は認識していないのだろう。自由な意見交換を無意味なものした瞬間、普通の人間であれば、意見を言う気力を失うはずであり、法制問題小委員会が沈黙の支配する重苦しい空気で包まれたのも当たり前の話である。

 自分たちが守ろうとしているものが実は文化ではないことを自ら露呈していながら、もはやそんなことすらどうでも良く、闇雲に天下り利権を守ろうとする今の文化庁の様は、ただひたすら醜悪である。このような醜態をさらしてもなお平然としていられるくらい、官僚のモラルは低下したのだ。しかし、いくら官僚たちが既存の既得権益の強化を図ろうと、時計の針は元に戻らない。時計の針を逆回転させようとする努力は全て社会的コストの無駄であり、無様な醜態をさらすだけのこととなろう。

  法制問題小委員会はさらに24日に予定されており、「機器利用・通信課程における一時的蓄積の取り扱い」や「私的複製の範囲の見直し」といった極めて重いテーマを扱うようであるが、果たしてどうなることだろう。

 17日23日に開催が予定されている私的録音録画小委員会もどうなることだろうか。その文化に対する定見のなさから引き起こされる社会的混乱と国民全体のモラルハザードは、文化庁ごときが責任を取れる話ではない。

 今日の日経新聞の記事でも、国会のねじれ状況もあり、ダウンロード違法化の今後は不透明であるとしていたが、これが正しい認識だろう。文化庁だけで法案が提出できる訳でもなく(法案を提出するのはあくまで内閣であって、文化庁ではない)、さらに衆参両院の可決も必要なのである。さらに言えば、法案提出前に総選挙が挟まる可能性も高い。

 例え何があろうと、不当なものは不当だと言い続けなければならない。私はそれが一国民としての義務であると思っているし、このブログでも言い続けることを止めるつもりは全くない。

 また、自分たちの方針にとって都合の悪い「国際潮流」を日本の政官はほぼ間違いなく黙殺してくるので、欧州も、ネットにおける問題は、規制よりも教育で解決されるべき問題であるとしている(internet watchの記事EUのプレス記事)ことを、ここではっきりと指摘しておく。欧州当局がいかに著作権の強権化を図っていようと、彼らは同時に、その歴史から、自由な意見表明の場の本質的な重要性についてもはっきり認識しているのであり、これもまた、欧州と日本の当局の責任者・担当者の文化的素養の差を示す好例である。

 今まで書き漏らしていたが、MIAUでも、この16日にダビング10シンポジウムを開く予定であるということを、遅ればせながらここでも紹介しておく。コピーワンスあるいはダビング10問題についても混乱を避けるため、今後も最大限の努力がなされなくてはならない。このようなMIAUの地道な活動を私も心から応援したいと思う。

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2008年1月 8日 (火)

第44回:文化庁公表の私的録音録画小委員会パブコメ結果について

 文化庁のパブコメが去年の末に公表されているが、その公表された数字によると、意見総数は8720通とのことである。これだけの数のパブコメが集まったことも前代未聞なら、これだけの数のパブコメを役所が無視したこともまた前代未聞だろう。

 今回は繰り返しも多くなってしまうかも知れないが、今年の最初の回として、公表されたパブコメを読んで気になったことを書き留めておきたい。

 まず、このパブコメを見ていくと、そもそも審議会に委員を出している各団体(消費者団体、ユーザー団体、メーカー団体、権利者団体の数々)が全てパブコメを出してきており、中間整理が審議会としてのコンセンサスすら得られていないものであることを、審議会が完全に崩壊していることを如実に表している。もはや何のために審議会を作っているのかすら良く分からない。

 また、今まで天下りのパイプに頼ってきた所為か、基本的に各権利者団体の意見は了見が狭く、言いさえすれば自分の権利を誰かが守ってくれるとする甘えが目立つ。いい加減、権利者団体も、天下りのパイプを使って法改正をすれば、自分たちの旧来のビジネスモデルが守られるという甘い考えは捨てた方が良いだろう。法律をいくら変えようと本質的に現実に即していないビジネスモデルは消費者の支持を得られず、廃れるだけである。天下り役人なんかに甘えているより、インターネット時代に本当に受け入れられるビジネスモデルを真剣に模索した方がはるかに建設的である。

 ダビング10の暫定合意を盾にとって、メーカーを非難したり、補償金制度維持を訴えたりしている個人の意見も散見されるが、第2~6章の各種現状についても動員をかけなかったのは権利者団体側の手落ちだろう。本来ならば、権利者団体側は、ここでこそ違法ダウンロードが権利者に経済的不利益を与えていることの明白な証拠などをパブコメで示すべきだっただろうに、これらの章についてのパブコメでは、ほぼ現状の調査とダビング10に対する批判しか書かれていないのである。結局、単にパブコメを賛成反対の多数投票だと思っている権利者団体側の文化レベルの低さがここにも現れている。(だからこそ、MIAUのネットユーザー動員活動も意味のあることだったと私は思っている。)

 繰り返しになるが、もともと私的複製の権利制限があって補償金制度は無かったことを考えれば、そもそも「複製=対価」ではあり得ないし、「私的複製の権利制限=補償金制度」でもあり得ないことは明らかだろう。これらの等式を信じ込ませようとする文化庁と権利者団体の悪辣な洗脳にだまされてはいけない。(なお、補償金制度の意味が私的複製の自由を確保するものであるかないかを法的に曖昧にしたまま、現行の横すべりで補償金を拡大しても、私的複製の自由度は確保されるはずがない。ここにもやはり悪辣な洗脳がある。)
 権利者に「複製権」が与えられていたのは、今まで「複製」にそれなりのコストがかかり、「複製」を元に文化の創造のために必要な社会的コストを捻出してもそれほど問題がなかったために過ぎない。知的財産権は全て社会的な目的の達成のために創設された便宜的な権利であり、著作権もそれを免れるものではない。「複製権」は絶対不可侵の権利ではないのである。
 今本当に問われていることは、技術の発展によってコンテンツの流通・複製のコストがほぼ無視できるほどに下がる中、文化の創造のために必要な社会的コストはどこから捻出されるべきかということなのであるが、ユーザー自らによる無償の文化活動もこれからますます増えてくることが予想される中、権利者団体と既存のビジネスモデルのみを不当に利することは、文化と産業の動向を無視した百害あって一利ない施策であると私は確信する。

 最後に、ダウンロード違法化については、大多数の反対意見はダウンロードの違法化をするなと言っているのであって、意見を重く受け止めてダウンロードを違法化して欲しいなどとする意見ではカケラもないのであり、このような意見のすりかえは決して許されてはならない。天下り団体からの突き上げを「諸般の事情」と称すれば国民をごまかせると思っている低脳な文化庁らしい浅はかな論理のすり替えであるが、国民を舐めるにもほどがある。さらに強行すれば、国民に与えられた手段はパブコメだけではないことを文化庁は思い知ることになるだろう。

 ついでに、この1月1日からドイツではダウンロード違法化をさらに明確にした法律が施行され、ドイツでも多くネット記事(記事1記事2記事3記事4記事5)になっているので、ここで紹介しておく。法改正の内容については、今までこのブログでも紹介しているので省くが、何にせよ1クリックで1万ユーロの罰金あるいは3年以下の懲役の可能性が出てくるという状態は決して正しいとは思われない。ドイツはこの法律によってさらに混乱するに違いない。

 また今年は、EUも域内統一オンライン・コンテンツ市場の実現に向けた検討をするようである(ITproの記事EUの発表資料、フランスでのニュース記事1記事2)が、世界的に見ても、著作権を口実に内外価格差と非関税障壁を正当化している著作権業界に、域内統一をさせることは生半可なことではできないに違いない。補償金問題との絡みもあり、私も分かる範囲で、今後もこのEUの動向についても追いかけて行くつもりである。

 著作権等管理事業法の問題についても近いうちに書きたいと思っているが、もう少し下調べに時間がかかると思うので、次回はDRMの話の続きを書きたいと思う。

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2007年12月29日 (土)

第43回:今年最後の落ち穂拾い

 一昨日、MIAUでダウンロード違法化問題に関するシンポジウムが開かれ、盛況だったと聞く。私もできる限りの協力はしたいと思っているし、今後もMIAUには是非頑張ってもらいたいと思う。

 また、昨日、総務省で、情報通信審議会・デジタルコンテンツの流通の促進等に関する検討委員会が開催された(ITproの記事internet watchの記事AV watchの記事)。フリーオ問題の検討によって、コピーワンス問題もようやくその根源たるB-CAS問題に行き着いた。B-CAS問題は、コピーワンス緩和の暫定合意など全て吹き飛ばすだろう爆弾であり、今後もこの問題からは目が離せない。

 これで大体今年のイベントは終わったと思われるので、このブログでも今年最後の落ち穂拾いを2つほどしておきたい。

 一つは、ダウンロード違法化問題についてである。
 小寺氏のブログで文化庁がパブコメの結果を発表したという記事がかかれていたので、ここにも文化庁のパブコメ結果へのリンクを張っておきたいと思う。
 また、ダウンロード違法化問題における外圧の存在について、アメリカ政府の要望(「日米規制改革および競争政策イニシアティブに基づく日本国政府への米国政府要望書」)を酌んで日本政府が動いているのではないかという向きもあるが、要望の同じ並びで入っている非親告罪化や保護期間延長については、文化庁も何事もなく見送っているのであり、アメリカがダウンロード違法化についてだけ特に強い外圧をかけてきているというのも解せない。やはりダウンロード違法化を「不可避」としたのは文化庁の暴走であろうというのが私の読みである。(アメリカの言うことをそのまま受け入れなければならない理由は何一つないが、要望があることも事実なので、ダウンロード違法化問題は、これからも曲折をたどるだろう。)

 もう一つは、総務省で公表された簡易チューナーの仕様についてである。
 この仕様でチューナーが本当に作られるのかどうか良く分からないが、仕様の資料で、特に、「コンポジット出力に対してコピー制御必要」としていることは見過ごせない。これはアナログ出力にCOG(コピーワンジェネレーション)信号を上乗せするということを意味しているのだろう(何せアナログ出力のコピー制御に使えるCGMS-Aでは、コピー制御信号は、コピーネバーかコピーワンジェネレーションかコピーフリーのどれかから選ぶしかない)が、これはこのチューナーの出力からHDやDVDへデジタル録画しようとした瞬間今までのコピーワンス制約が全て再現されるということを意味している。このような簡易チューナーを発売することは、コピーワンス問題の火にさらに油を注ぐだけだろうと私は予測する。

 それでは皆様、良い年を。政官業に巣くう全ての利権屋に悪い年を。そして、このつたないブログを読んで下さっている全ての人に心からの感謝を。

(来年は年明けの第2週くらいから、再開したいと思っている。このインターネットという著作権戦争、知財戦争の最前線において書くことに困る気は全くしない。)

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2007年12月25日 (火)

第42回:ダウンロード違法化におけるキャッシュの問題

 ITmediaの記事に載っている文化庁の資料には、「ストリーミングに伴うキャッシュについては、著作権分科会報告書(平成18年1月)における一時的固定に関する議論の内容等を踏まえた上で、必要に応じ法改正すれば問題がないと考えられるがどうか。」と書かれている。
 検討の順序が、本末転倒であることは、第39回に書いた通りであるが、文化庁が「ストリーミングに伴うキャッシュ」という言葉に込めたのであろう技術の問題も、ダウンロード違法化問題において、決して無視できない大きな問題である。

 そもそも何でも法改正すれば大丈夫だろうと安易に考えている時点でおかしいのだが、この資料でざっくりと「必要に応じ法改正すれば問題がない」とだけしている点からしても、文化庁には、配信で用いられている以下のような技術の詳細も良く分かっていないのではないかと思われる。

・ストリーム:PCの記憶装置(HDD)に一時ファイル(キャッシュ)は作られず、送られてくる映像(音楽)データをそのまま表示する(流す)方式。
・プログレッシブダウンロード(疑似ストリーム):PCの記憶装置(HDD)に一時ファイル(キャッシュ)が作られ、ブラウザなどのソフトが、ユーザーによる映像(音楽)の視聴終了後にこの一時ファイルを自動的に削除する方式。
・通常のダウンロード:PCの記憶装置(HDD)に、ユーザーが能動的に削除しない限りは消えないコピーが作られる方式。
(これらの区別については、アドビのHPの解説や、PHP&java script roomの解説なども分かりやすい。)

 インターネット上の各種コンテンツ提供サービスで使われている技術がほとんどストリーム配信のみであったならばまだ良かったろうが、今のところ、プログレッシブダウンロードも相当使われていると思われる。(これらがどれくらいの比になっているのかはよく分からないが、回線速度上有利なので、プログレッシブダウンロードの方が主流となっているくらいではないだろうか。)

 ここで、完全なストリーム方式において生じるメモリなどへの一時的なデータコピーは、既に「一時的蓄積」として著作権法上の「複製」ではないという整理がされているのではないかと思われるし、通常のダウンロードは、普通に考えて著作権法上の「複製」ということになるであろう。(無論、今のところは30条の私的複製の権利制限内の「複製」なので、権利は及ばない。)

 結局、最後に問題となるのは動画共有サイトなどで良く用いられているプログレッシブダウンロードをどうするかということになると思われるが、プログレッシブダウンロードと、通常のダウンロードの間には、機械が自動的に行っているダウンロードであるか、それとも人間が能動的に行っているダウンロードであるかという、技術的・外形的には全く区別のつかない差しかない

 この中途半端なプログレッシブダウンロードをどうするかということを考えていくと、「一時的蓄積」と「複製」の境界をどこに引くのかという問題、そして、そもそも機械的なコピーから人為的なコピーまで技術的・外形的に判然とした線が引けない中で、コピーに対して著作権はどこまで及ぼされるべきかという極めて難しい問題に行き着くのであり、おいそれと片がつく話では全くないことが分かるはずである。(権利者団体は全部複製だから金をよこせというのかも知れないが、ダウンロード違法化問題や私的録音録画補償金問題と同じく、このキャッシュ問題についても、そんな低レベルな議論をし始めた瞬間おかしな迷走を始めるだろう。)

 例えば、機械が自動的に行う複製、あるいは、視聴のためのみに行われる複製については権利制限の対象とするといった、「情を知って」と同じような主観的な要件で安易に複製行為を切ろうとしたところで、これも技術的・外形的に区別がつかない話であり、法律としてはやはり破綻している。このような安易な権利制限とダウンロード違法化とが組み合わさると、さらに訳の分からないことになるだろう(例えば、プログレッシブダウンロードで作られる一時ファイルをさらにコピーすることは少し技術に詳しいものならば容易にできることなどからしても、社会に変な歪みを与えるに違いない。)。法律は主観のみで記述した途端、おかしくなるのである。

 逆にこの点について解決をしないまま、ダウンロード違法化のみを拙速に行えば、プログレッシブダウンロード配信と本当のストリーム配信が、ユーザーからの見た目は同じであるのに片方だけが違法に近くなるというおかしな状態が生じ、ユーザーに対する萎縮効果とともに、日本におけるコンテンツ配信の技術開発にまで歪みが生じるだろう。

 このようなことをきちんと議論せずにダウンロード違法化のみを決めることなどあってはならない。ダウンロード違法化問題は、まだカケラも終わっていないのである。

 また、ついでに書いておくが、総務省が今週27日の情報通信審議会でフリーオ問題を検討するらしい。日経の記事によると、やはり役人の性で規制強化しか念頭にないようであるが、番外その6で書いたように、もはや日本のDRM回避規制はこれ以上強化することができないくらいまでになっており、著作権法の改正とは何をしたいのかさっぱり分からない。それに、認証制度についても、いくら制度を作ったところで、DRM回避機器の個人輸入や個人使用が止められるものでもなく、これも結局、認証機関で飼っておく天下り役人のコストが国内メーカーの録画機器に上乗せされるだけで終わるだろう最低の愚策であることを、念のために今一度指摘しておく。どこの役所も、社会的コストをドブに捨てる方向に全力で汗をかくのは本当にもう止めにしてもらいたいと思う。

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2007年12月24日 (月)

第41回:ダウンロード違法化問題に関する著作権フリー資料

 既にダウンロード違法化が決定したかのような論調も見かけるが、今のところ、単に文化庁が法改正の方針を示しただけであり、この問題は何一つ終わっていない

 MIAUも緊急シンポジウムを開くという告知をしているし、弁護士の小倉先生などもさらに運動されると表明している。(小倉先生、勝手なトラックバック失礼いたします。ご迷惑でしたら、トラックバックをお切り下さい。)

 今回は、ダウンロード違法化に反対する全ての人に対する個人的な応援として、私なりにダウンロード違法化問題についての概要をまとめた資料(何せ大したコネもない無名の私には使い道のない資料である。)を、ここに載せておきたいと思う。(あまり視覚的にできなかったことはあらかじめお詫びしておく。pptでもpdfでもjpgでも内容は同じである。)

 この程度の資料で大した著作権が発生するとも思っていないが、この資料に関する著作権は完全にフリーとするので、自己責任で使っていただく限りにおいて、どこで利用していただいても構わないし、改変・マッシュアップも完全に自由である。(著作権法上どこまで、著作権の放棄が可能なのかは最後よく分からないが、この資料には財産権も人格権もないと思って使っていただいて全く構わない。その替わり利用に関して責任は負いかねるので、その点はご承知おき願いたい。)

 この問題は既に終わったと考えて冷ややかに笑いたい者は笑えば良い。だが、その冷ややかな笑いも含めてあらゆる表現と文化は守られなくてはならないというのが私の考えである。そのためにできることを私はする。国民投票で決めたというのでもない限り、私がこのような不法を納得することはない。

(12月25日の追記:この資料は、このブログ名なりURLなりを付けて、ここを参考にしたとして使っていただいても構わないが、どなたでもそのまま(あるいは改変したものに)自分のクレジットをつけて使っていただいても一向に構わない。著作権は権利者団体に所属する権利者のためにのみあるのではないことを、著作権は使い方次第であることを、世の中には「無償かつ自由」の活動もあって良いことを、私は示そうとしているのだから。)

「download_siryou.ppt」をダウンロード

「download_siryou.pdf」をダウンロード

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2007年12月19日 (水)

第39回:文化庁の暴挙に対する反旗

 先日、文化庁では私的録音録画小委員会が開催され、ネットでは多くの記事(ITmediaの記事1記事2記事3、internet watchの記事1記事2、日経TechOnの記事)になっている。これらの記事に書かれている、ダウンロード違法化を一方的に不可避とする文化庁のあまりの暴挙に私は唖然とした。

 既に様々なブログや掲示板で批判の嵐が吹き荒れているるが、この暴挙に対しては、例え小さなものでも反旗は一つでも多くあげなくておかなければならない。文化庁は行政として絶対にしてはならないことをしたのだ。

 私もまず記事にかかれているダウンロード違法化に関する各委員と文化庁の発言を簡単にまとめてから、文化庁の暴挙を批判する。(以下は、私が各記事から勝手にまとめたものであることをお断りしておく。強調も私がつけたもの。正確な内容については、上のリンク先の記事をご覧頂きたい。)

・「ダウンロード違法化に反対したパブリックコメントの結果を、重く受け止めてほしい。そもそも、改正の必要性を感じない。違法ダウンロードをさせろとは言っていない。ネット上に安価で、カタログがそろった状態で、危険もない正規品があるなら、消費者はそれを選ぶはずだ。日本の権利者は、やることもやらずに、権利だけを強化してくれと言っているように見える。そこが消費者との溝を生む。今は過渡期で、例えばレコード会社がDRMフリーで音楽配信するなど、さまざまな試行錯誤が行われている。どういった形態がうまくいくかは市場の評価が決めること。コピーワンスやCCCDもそうだが、『著作権保護を強化し、ユーザーに対する規制を強めようという流れが強くなれば、ユーザー側は『じゃあ音楽を買わない』『TVも見ない』という方向になると思うがそれでいいのか。」(IT・音楽ジャーナリスト・津田委員)

・「国際条約や先進諸国の動向を見ても、ダウンロードは違法化すべきというが、『国際的潮流』というのは危険なキーワードである。」(IT・音楽ジャーナリスト・津田委員)

・「パブリックコメントの結果、圧倒的多数が反対だった。それだけの意見が集まった事実がありながら、『それはそれとして』と簡単に進めていいのか。反対意見の数を受け止め、反対した人にも納得してもらえる説明できるようにすべき。疑わしきは権利者の利益に、という方向に議論が流れてきた。行政が消費者保護に力を入れる中、著作権法制は文化と関係あるからといって消費者をないがしろにするのは、公正性・透明性にも欠けている。違法アップロードを取り締まり、権利者はビジネスで戦うべき。」(主婦連合会・河村委員)

・「古い法律でがんじがらめになっていては、新しいビジネスが生まれないのではないか。今は『違法かもしれない』サービスが将来のビジネスを生む可能性がある過渡期。古い法律の規制が行きすぎることは避けなくてはならない。」(イプシ・マーケティング研究所社長・野原委員)

・「このような委員会はその時点の関係者、つまり、今現在被害をこうむるかもしれない人でのみ構成されているために、どうしても近視眼的な議論になる。」(イプシ・マーケティング研究所社長・野原委員)

・「日本の音楽配信は、世界第2位のマーケット。モバイルが圧倒的にシェアが高いが、決して権利者側が配信に後ろ向きなわけではない。ネット上での違法流通は、日本国内でも中国の海賊版と同じぐらいひどい状況。このままではレコード業界のビジネスが立ちゆかなくなる。」(レコード協会・生野委員)

・「著作権は小さな権利で、保護の体制全体が心許ない。消費者は、一部の豊かな権利者を見て、われわれが権利の上で豊かな生活をしていると誤解しているかもしれないが、われわれも一般消費者と変わらない立場。もっと保護してもらいたい。保護されたからといって、それに甘んじてスポイルされることはない。」(日本音楽作家団体協議会・小六委員)

・「米国の調査会社の2005年に、映画の海賊版被害が日米でそれぞれ、年間400億円あるという試算を出した。動画共有サイト流行前の当時ですらそうなのだから、今は増えているだろう。海賊版駆逐の王道は、海賊版とあまり変わらない価格で、正規品と同じ経路で流通させることだが、ネットでは正規品が流通しない。ネットはダークサイドで、全く別世界。違法アップローダーとビジネス上での競争などしたくはない。」(日本映画製作者連盟・華頂尚隆委員)

・「一番大事なのは利用者の保護だが、違法サイトからのダウンロードを違法にすることで、国民の意識は変化するだろう。『情を知って』という言葉も入るし、刑事罰もない。一般のユーザーはそれほどひどい目には遭わないだろう。」(中山主査)

・「意見募集に多くの反対意見が集まったことは重く受け止めているが、第30条の見直しは諸般の事情から避けられない。具体的な被害額に結びつくかどうかという点には異論はあるだろうが、(1)違法サイトからのダウンロードで、正規品ダウンロード市場を凌駕する規模の流通が行われ、権利者が経済的不利益をこうむっている、(2)P2Pファイル交換ソフトによる違法配信は、アップロードしたユーザーの特定が難しい場合があり、送信可能化権だけでは十分に対応できない、(3)国際条約や先進諸国の動向を見ても、ダウンロードは違法化すべきである。」(文化庁)

・「ユーザーの意見を無視したわけではない。ネットからの意見も踏まえたつもりだ。『違法サイトと知らずにダウンロードしてしまった場合、無意識に法を犯してしまうのでは』などといった不安は、十分理解できる。ユーザーの不利益にならないような制度設計をする。具体的には、刑事罰を付けない、法の執行は違法複製物であると知ったうえで利用した場合に限る、法改正内容の周知徹底、権利者が許諾したサイトの情報提供、警告・執行の手順に関する周知徹底、相談窓口の設置等を推進する。権利者も政府も汗をかいて努力し、合法サイトを簡単に見分けることができる仕組み作りをする。仮に、権利者が違法サイトからダウンロードしたユーザーに対して民事訴訟をするとしても、立証責任は権利者側にあり、権利者は実務上、利用者に警告した上で、それでも違法行為が続けば法的措置に踏み切ることになる。ユーザーが著しく不安定な立場に置かれることはない。」(文化庁)

・「違法アップロードしているユーザーに対して、日本レコード協会などが警告すると、9割がアップロードをやめるといったことや、P2Pファイル交換ソフトの利用していた人が利用をやめた理由について、26.4%が『著作権侵害を避けるため』と答えたといったことを踏まえると、カジュアルな権利侵害の大半はこれで無くせると思う。」(文化庁)

・「キャッシュの扱いについて議論した著作権分科会の今年1月の報告書などを踏まえ、必要に応じて法改正すれば問題ないのではないか。」(文化庁)

 上の概要を読んで頂いただけでも分かると思うが、文化庁の事務方の発言はひどすぎる。1800の非テンプレ意見を含む7500件のパブコメの論点整理はどうしたのか。審議会の委員の発言もパブコメで出された意見も全て無視して、勝手に法改正の方針を示すとは一体何様のつもりか

 ダウンロード違法化の根拠にしても、具体的な被害額に結びつくかどうかという点に異論があるとしながら、何故経済的不利益が大きいと断言できるのか、違法アップロードユーザーに対して警告すれば9割がアップロードを止めるとしながら、何故送信可能化だけでは対応できないと断言できるのか、国際条約にダウンロードを明確に違法化すべきと書いている訳でもなく、国際的に見てもダウンロードを違法化している国は決して多くなく(現にスイスの今年の法改正でもダウンロードの違法化は入っていない)、ダウンロードを違法化したことによって社会的混乱を招いている国もあるほどだということを無視して、何故勝手にダウンロード違法化を国際的潮流と決めつけられるのか、全て論理が破綻しているとしか言いようがない。文化庁の役人の辞書に「論理」とか「理性」とかいった文字はないと見える。

 ユーザー保護に関しても、ダウンロードに関しては、その行為に1個人しか絡まないので、エスパーでも無い限り、「情を知って」の要件は証明も反証もできないことを忘れてはならない。文化庁がユーザー保護策と称する施策には、合法サイト認定という裏返しの違法サイト認定でネットを規制したいという思惑しか見えない。パブコメの詳細は公になっていないので良くは分からないが、日本を超えて全世界のユーザーが自由にアクセス可能なインターネットで、そのような国内の権利者団体のみを利する規制が不合理極まりないものであるということを多くのパブコメは主張していたのではないか。合法サイト認定機関か団体でも作って天下り先を増やしたいとでも考えているのかも知れないが、そんなことがこのご時世で通ると本気で思っているバカな官僚に行政官の資格はない。いわんや行政の立場を超え、民意を無視して、立法を語るなど言語道断、外道の所行である。

 そして、警告状と架空請求に大した違いはなく、警告状を装った架空請求は確実に増えるだろう。警告状にしても、それが正当なものであるかどうかは、最後、「情を知って」という証明不能の要件にしかかかりようがなく、実務の話がユーザー保護になるなどということもあり得ない。法改正はまず間違いなく社会的混乱をもたらすだけである。

 キャッシュについても、不安に思う声が極めて強いのであるから、まずこちらの法改正を先に議論してから、さらに必要であれば、ダウンロード違法化について議論するのがスジであろう。全く論理が逆転しており、これだけ取っても、ユーザーを完全に無視していることは明らかである。

 ダウンロード違法化の問題は、罰則が無ければ大した影響はないから良いとかそういう問題ではない。行政で立法の議論をすることには違和感しかないが、そこを100万歩譲っても、いやしくも立法を議論する以上、一般国民のコモンセンスに反する法律、守られようがない法律は百害あって一利ないという法哲学の初歩は知っていてもらいたい。どんな法律であれ、作ればその通りに国民が動くなどと考えるのは、今までの法の歴史を無視した為政者気取りの傲慢である
 罰則があろうとなかろうと、技術的・外形的に違法性の区別がつかない以上、ダウンロード違法化は法規範としての力すら持ち得ない。このような法改正を押し通せば、結局、ダウンロード以外も含め著作権法全体に対するモラルハザードがさらに進行するだけであり、これを逆にねじ曲げてエンフォースしようとすれば、著作権検閲という日本国として最低最悪の手段に突き進む恐れしかない。どう転ぼうが、ダウンロード違法化は百害あって一利ない最低の法改正であることはいくら繰り返しても繰り返しすぎではない。

 ユーザー・消費者代表である津田氏、河村氏、野原氏の意見は極めて正しい。諸氏には文化庁の暴虐にもめげず、今期の審議が終わるまで是非引き続き頑張ってもらいたいと思うが、文化庁は、これらの審議会委員の意見も、パブコメに示された民意も踏みにじり、自らの利権を守るためにのみ勝手に法改正の方針を示すという行政としてやってはならない暴挙に踏み切った。文化庁は全国民の顔に泥を塗りつけたのだ。文化庁が小学生すら騙せないような屁理屈で法案提出をしかけてくるのであれば、今度は立法府が舞台である。日本国民は馬鹿ではない。文化庁よ、国民を舐めるな。

 なお、権利者団体側の意見についてだが、権利者側は配信に後ろ向きでもなかろうが、前向きとも思われない。違法アップローダーとビジネス上での競争などしたくはないというが、権利者側が、正規品として、DRMでがちがちの不便なコンテンツを、他の流通に対する思いやりコストも含めた不当に高い値段でしか流通させないようでは、ネットでの不正流通が無くなる日は永遠に来ない。また、著作権のような極めて強い権利を持ちながら、もっと保護してもらいたいと言えば保護してもらえると思っていること自体、スポイルされていると自ら告白しているに等しい。

 補償金についても、コンテンツの複製回数を、DRMによって完全にコントロールできれば、補償金は不要になるという未来を文化庁が示したらしいが、これもこれだけでは全く評価できない。津田委員の言うように、DRMと契約で複製回数までガチガチにするか、補償金を残すかの二者択一になる未来は全くユーザーにとって好ましいものではなく、河村委員が言うように、補償金がなくなる=30条で定められた私的複製の範囲がなくなるという交換条件も消費者の権利を無視した暴論である。
 ホームユースの録音録画機器の登場によって危殆に瀕した「複製=対価」の概念を、文化庁と利権団体は十数年前、補償金という不合理な発明によってどうにか救った訳であるが、インターネットというコストのほとんどかからない流通手段の登場によって、この概念は完全に崩壊したのである。文化庁と利権団体がいかに足掻こうが、覆水を盆に返すことはできない。後何年、何十年かかるか分からないが、この「複製権」のドグマを乗り越えることこそ、今後の著作権法に課せられた使命であることを私は信じて疑わない。

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2007年11月23日 (金)

第28回:著作権法改正で気をつけるべきいくつかのこと

 著作権法は、極めて複雑な構成の条文によって、数々の民々の利権秩序を構成しているため、この利権秩序の変更を伴うような、抜本的な法改正はまずもって望めない上、著作権神授説を信奉する著作権原理主義者の頭には、消費者・ユーザーの権利とという概念が入り込む余地が全くないため、今後も、著作権団体という利権団体の政治力によって、今まで消極的ながらも守られてきたユーザー・消費者の権利がさらに危機にさらされることがあるかも知れない。
 しかし、多少負けが込むことがあったとしても、私がユーザー・消費者・国民として、最後まで求めていきたいと気をつけていることを今回は書いておきたい。

(1)著作隣接権をこれ以上拡大しないこと
 流通事業者にこれ以上権利を与えてはならない。

 普通の放送局が著作隣接権を持っていることに対し、インターネット上で放送局を開設している者には隣接権が与えられないことや、CDに焼いて売ればレコード製作者として隣接権が得られるのに対し、インターネットに直接音源を乗せたのでは隣接権がつかないことを、流通事業者(放送局、レコード製作者、通信事業者等)が問題にしてくる可能性がある。(放送に関しては第5回にも同じことを書いた。)
 しかし、このようなことを問題とする主張は、これらの隣接権が、単にレコード会社や放送局が強い世界的に政治力を持っていたことからもたらされたものに過ぎないということを忘れている。(創作活動に関与している実演家は別である。)

 これらの者は単なる著作物の伝達屋・流通屋であって、そこには創作活動に準じた活動などない
 そして、インターネットという流通コストの極めて低い流通チャネルがある今、独占権というインセンティブで流通屋に投資を促さねばならない文化上の理由も無くなっている
 音楽にせよ、映像にせよ、創作者が自ら自由に世界に創作物を伝達できるようになった時点で、レコード会社と放送局に対する著作権法上の保護・優遇はその歴史的役割を終えたのである。
 別にこれらの隣接権が無くなったところで、レコード屋や放送局の社会的役割が無くなる訳でもなく、パッケージや放送で流通する著作物に著作権がなくなる訳でもない。本来位置しているべきだったところに彼らが戻るだけのことである。

 このような流通事業者に対する著作権法上の保護は、著作物の流通コストが高く、流通そのものの保護が必要だったときの遺物として、無くしていく努力がなされなければならないのであり、これに反する動きには私は断固として反対して行くだろう。

 特に、インターネットのようなコストの極めて低い自由な流通チャネルで、流通事業者に強力な独占権を発生させることは、文化と経済に無意味に害悪を垂れ流すことにしかならない。インターネットで流通事業者を優遇することは、ユーザーの創作インセンティブを大きく損なうことにしか繋がらないのである。
 情報に関する限り、あらゆる者がインターネットで同じ土俵に立つことが可能になった今、著作権法を創作性の原点に引き戻すことが最も理に適っていることではないかと私は考えている。

(2)公正な利用に関するより広汎な権利制限を作ること
 限定列挙による追加でも構わないが、今後も、インターネットを含め、情報の公正な利用に関する権利制限が検討されて行かなければならない。

 特に、日本では何故かないがしろにされがちであるが、技術の発展を受けた複製の主導権のユーザーへの移行、プライバシーや情報アクセス(知る権利)の社会的重要性を踏まえた上での、より現実的な権利制限が考えられてしかるべきである。
(著作権とは情報を保護する法律であるということも理念としては理解できるが、デジタル化とはすなわち、著作物が物を離れて情報化するこということに他ならないのであり、現実的には、情報そのものを保護することは最後不可能であるという前提に立たなければならない。)

 また、間接侵害に関する問題も同じことである。これは要するに、著作権者の許諾なしで著作物を利用可能な公正利用の範囲はどこまでかということを確定するという問題であり、権利制限によらなければ本質的な解決にはならない。(間接侵害類似事件の概要などについてもまたどこかでまとめたいと思うが、例えば、前回も紹介した、知財事務局の資料でもあげられている、選撮見録事件、録画ネット事件、まねきTV事件、MYUTA事件のうち、現状合法との判断が出されているまねきTV以外のものについて、公正利用と考えられるものがあるとしたら、それを含む形で必要十分な権利制限規定を作ることが必要なのである。)

(3)私的録音録画補償金を既得権益化しないこと
 今まで(第8回や、私的録音録画小委員会パブコメその1その2その3参照)も書いてきたことなので省略するが、今、私的録音録画補償金問題に関する検討がデッドロックに乗り上げているのは、補償金が著作権団体の既得権益化していることが主な原因である。
 ユーザーの観点から私的録音録画補償金制度をとらえ直すことも不可能ではないが、補償金が著作権団体の既得権益とならないようにする、ありとあらゆる仕組みがその前に検討されなければならないのである。

(4)著作権の保護期間をこれ以上延長しないこと
 これについては、様々なところでいろいろな人が考え述べているため、今更追加して言うこともないが、著作者の死後50年を70年にしたりするようなことには、文化的にも経済的にもほとんど意味がないことだろう。
 ひ孫の孫くらいのことまで考えて創作をしている人間がいるとも思われないし、著作権の保護期間を伸ばせという主張は、えらく古い有名人の著作権を持っている会社や遺族の、不労所得が無くなるのが嫌というわがままにしか聞こえない。(財産権ではない、人格権は別に切れることがないらしいので、人格権的なことを織り交ぜた発言にごまかされてはならない。)

(5)独禁法あるいは労働法など他の法律によって本来解決されるべき問題を著作権法に持ち込まないこと
 著作権法に競争法的あるいは労働法的な観点がビルトインされることを完全に否定するつもりはないが、著作権法は著作物を保護して文化を発展させることを目的とするものであって、流通の独占などを正当化するものではないということははっきり認識されていてしかるべきである。

 流通の独占による利益が得られないからと言って、著作権での保護強化を求めることはお門違いも良いところである

 また、クリエータやアーティストという便利な言葉で、保護される者をごまかされてはならない。著作権の保護強化は、著作権を持っている者の保護強化にしかならないことを忘れてはならない
 職務著作は基本的に全て会社が著作権を持つことなっている(特許法のような「相当の対価」規定もない)し、フリーの作家などでも、契約会社や団体に著作権を譲っている者も多いのではないか。
 本当に著作権を全て自分で管理しているフリーのクリエータやアーティストがほとんどおらず、著作権上も契約で不利を強いられているような状況なら、著作権法をいくら強化したところで、下積みのクリエータやアーティストまでその利益は回りようがない
 本当に下積みのクリエータやアーティストの保護・育成に問題があるとするなら、労働法や下請法を強化した上で、コンテンツ業界にこれを徹底的にエンフォースすることでしか解決されないのである。(必ずしもこれが業界全体のためになるかというと微妙なところもあるので、かなり難しい舵取りが要求されることだろうが。)

 結局どう法律をいじろうと、最後法律が守られるかどうかは国民全体のモラルとしてどうかということにしかかかりようがない。国民が持っている本当のコモンセンスと合わせていく努力を法律が忘れたとき、悪法か無法が生まれるのである。

 おまけとして、読みにくい英語なのだが、スペインのインターネット警察のボスが、無料でダウンロードする限りにおいて、ダウンロードユーザーは泥棒とは考えられないという発言をしたという記事があったので紹介しておこう。違法ダウンロードの問題については、私も頭の整理が完全に出来ている訳ではなく、今のところは私的複製の中に入れておくしかないだろうと思っているのだが、ダウンロードが無料か有料かというのは一つの面白い切り口だと思った。

 次回は著作権保護技術(DRM)に関することについて調べて書いてみたいと思っている。

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2007年10月31日 (水)

第14回:著作権神授説という幻想

 ちょっと中休みの話を。
 不思議なことだが、著作権は著作権者だけが行使し得る絶対不可侵の神聖な権利であるという考え方が世の中には存在している。
 私はこれを勝手に著作権神授説と名付けているが、単純で自明のように見え、かつ法律の裏付けもあるように思えるので、権利者は無論のこと、知財の有識者と呼ばれる学者にも似たような考えを振りかざす者がいる。

 そして、昨今の法改正騒動を見ていると、この著作権神授説がひどい悪影響を及ぼしているのではないかと思えて仕方がないのだ。
 そもそも、知的財産権は、文化や産業の発展のために、これくらいは創作者を守ることが必要ということから出てきたもので、絶対的なものでも何でもない。有体物の私有財産の絶対性からそう類推するのかも知れないが、有体物の私有財産より無体物の知的財産の世界が遙かに人工的であることは、よく考えてみれば、知財侵害の損害認定が本質的には不可能であることからも分かるだろう。(本当は有体物の私有財産すら絶対的なものではないのだが。)

 この著作権神授説の最も質の悪いところは、これが思考停止しかもたらさないことである。
 この原則からは、ダウンロードでも何でもとにかく許諾を得ていない複製は全て禁止という結論しか出ようはない。補償金の話を取ってもそうで、著作権神授説に立つ限り、私的な形であれ、著作権という神聖な権利を侵す以上、必ず何らかの代償が必要という結論しか出て来ようがない。しかし、ダウンロードを禁止すれば善意のユーザーの情報入手の妨げとなり、新たな機器に補償金を課せば、それはコストとなって機器の値段を上げ、必ず機器の売り上げを減少させ、社会的・経済的に見て好ましくない影響を与えるのだ。この影響を上回る形で、何らかの益が社会全体にもたらされるのであれば、このような法制度は全体から見て是認されるが、そうでない限り是認されてはならないのである。
 文化の発展は経済的な価値に換算できる訳ではなく、産業の発展は文化的価値に換算できる訳ではないが、文化的・経済的・社会的影響を全て考慮に入れた上で、本当に国とって好ましい方向性は何かということを決めるのが本当の政策判断であろう。知財の有識者と呼ばれる人達も皆知財の観念に凝り固まっていて、このような本当に広い見地から物事をとらえることが出来てないことが残念でならない。

 敢えて言うなら、インターネットにおける情報の自由な流通を確保した方が全体にとって良ければ、インターネットにおける著作権を完全に無くすという法制だってあり得るのだ。その場合、情報の自由な流通を認めないことで成り立ってきた今までのコンテンツ産業は窮地に立たされるかも知れないが、自由な流通を前提にしたコンテンツがそれを上回る勢いで作られ、それによってより文化と産業が発展するなら何も言うことはあるまい。無論、滅び行く産業への対策は別途、地道に行う必要があるが。
 インターネットの登場で流通コストが劇的に下がり、情報の発信にも流通にもコストがほとんどかからなくなった今、文化の発展の主要な推進力はもはや著作権法による保護ではなくなっていることを皆が理解した上で、あらゆる検討が行われることを私は望む。

 著作権神授説を信奉する世の著作権原理主義者達に私は告げる、目を覚ませ、著作権は絶対不可侵のものではない!

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2007年10月24日 (水)

第9回:私的複製の権利(著作権法教科書読み比べ)

 前回の話は、経緯などを書いていたら少し長くなってしまったが、要するに、「ユーザーに納得のいく法的・経済的根拠を示さない限り補償金拡大はあり得ない。私的複製の自由を制限するDRM(コピーワンスやダビング10のような)がかかっている機器・媒体に、さらに補償金が課金されることもあり得ない。」ということである。
 さて、知財法大権威の中山信弘先生の著作権法が出版されたこともあり、今回は、ちょっと手元にある著作権法の教科書から、私的複製関係の記載について読み比べをしてみようかと思う。(個人的には他人の権威でどうこう言うのは嫌いなのだが、こんなことも世の中の役に立つかと思ったので。)
 以下の引用は、各先生方が私的複製(著作権法第30条)の趣旨について特徴的に書いている部分を批評のために私が抜粋したので、どの教科書からも私的複製に関する記載全体を取ってはいないことを始めにお断りしておく。

(1)加戸守行著「著作権法逐条講義」(五訂新版・2006年3月著作権情報センター刊)
 著作権の教科書として、この本を外すことは出来ないであろう。中でも、気になるのは、

「旧著作権法におきましては、複製手段を手書きだけに限定しまして、器械的化学的方法によることを認めておりませんでしたけれども、実際上は家庭内の行為について規制は困難ということで、第30条は複製手段のいかんを問わず複製を認めることと改められたわけであります。もちろん、本条を根拠として作作成された複製物については、後で述べますように第49条の規定によって目的外使用が禁止されておりますが、そのこととは別に、個人的使用のためであるからといって家庭にビデオ・ライブラリーを作りテレビ番組等を録画して多数の映像パッケージを備える行為が認められるかといいますと、ベルヌ条約上許容されるケースとしての「著作物の通常の利用を妨げず、かつ、著作者の正当な利益を不当に害しないこと」という条件を充足しているとは到底いえないという問題が出てまいりましょう。本条の立法主趣旨が閉鎖的な範囲内の零細な利用を認めることにあることからすれば、度を過ぎた行為は本条の許容する限りではないと厳格に解すべきであります。」(第225頁より。赤字強調は私が付けたもの。)

というところである。
 加戸先生によれば、ビデオのライブラリー所有者は全員、厳密な意味では著作権法違反ということになってしまう。以前はどうだか分からないが、昨今のビデオ(DVD)の普及を考えるにと相当数といるであろう録画のヘビーユーザーを全て著作権違反者としてしまうのは大きな違和感を覚える。
 確かに、立法趣旨からすれば、零細な利用というところにも重点が置かれていたのであろうと思われるが、その後の複製機器の普及の実態から考えて、私的複製の権利制限の趣旨の重点は零細であるというところから閉鎖的であるということに移っているのではないだろうか。ビデオが普及していなかった時代ならいざしらず、ビデオがない家庭の方が少ないという時代に、このような厳格な解釈にずっとしがみつくことは間違いであろう。複製機器が当たり前に家庭にある時代に即した、私的複製の意味とは何かが今問われているのだから。

(2)作花文雄著「著作権法」(第3版・2004年10月ぎょうせい刊)
 さて、次はこれもまた有名な教科書で、同じくらい分厚い本のであるが、中には、

「第1に、私的領域における教養・娯楽・文化活動を円滑になし得るようにするため、私的使用のための複製(第30条)が認められている。なお、基本的には、これまで、私的領域内での複製行為による権利者への経済的利益への影響はさほど存しないものと考えられてきたが、近年の複製機器の発達により、その見直しについて種々の議論がなされている。」(第309頁より。赤字強調は私が付けたもの。)

というくだりがある。
 ここでは、作花先生が、私的領域に「教養・娯楽・文化活動」があるとしていることに注目したい。例え極少数のサークルであったとしても、そこには文化活動が存在しており、それを守る意味も私的複製にはあるのだ。
 このことは、ここで取り上げた他の教科書には書いていないが、私的複製の権利制限をなくすことは文化の発展につながらないということを考える上で、一つのキーとなる考え方ではないかと思う。

(3)斉藤博著「著作権法」(初版・2000年3月有斐閣刊)
 上二つを読みこなせる者にとっては、物足りない薄さかも知れないが、やはり極めて有名な先生の本である。私的複製の趣旨については以下のように書かれている。

「そもそもは、個人的にまたは家庭内等で使用する程度であれば著作物等の複製も権利者に及ぼす影響は少なかろうという配慮があったであろうし、法律が個人の領域や家庭等に入り込むことを避けようとした面もあったであろう。そうであれば、無許諾・無償という最も厳しい権利制限を課すことが妥当である。しかし、その後の複製技術、とりわけ録音・録画技術の普及は利益状態を徐々に変え、権利者に補償金を支払うことによって利益の調整を図る途が模索されるようになった。」(第217~218頁より。赤字強調は私が付けたもの。)

 斉藤先生は、権利者に及ぼす影響が少なかったため、法律が個人や家庭内に入り込むのを避けるという趣旨から、無許諾・無償という最も厳しい権利制限を課すことが妥当だったとしている。
 これだけの文章から論理的なつながりを言うのは無理があるかも知れないが、斉藤先生は、著作権法のような私法が、個人や家庭の領域に入り込むことは避けるべきであるという考え方を強く持っていたのではないかと思う。

(4)渋谷達紀著「知的財産法講義Ⅱ著作権法・意匠法」(第2版・2007年6月有斐閣刊)
 特許法なども含めて書かれている知的財産法講義の中の一冊であり、私的複製についても以下のように、特色のある書きぶりとなっている。

「複製権が制限される理由は様々である。たとえば、①私的使用のための複製を権利行使の対象としても、侵害行為の発見が難しく、権利の実効性に問題がある、②侵害行為を発見したとしても、個々の侵害事例については、コストとの関係で権利行使の動機が不足する、③たまたま権利の行使を受けたものと多数のそうでない者との間に、事実上の不公平が生じることも問題である、④遵守されない法を制定することは、法を軽視する風潮を生むおそれもある、などの理由が考えられる。また、今日のように大量のデジタル複製が行われるようになる前は、⑤著作権者に与える影響が軽微である、といったことも指摘されていた。」(第247頁より。赤字強調は私が付けたもの。)

 ここで、渋谷先生は、権利の実効性に問題があること、権利行使にコストの問題があること等をあげているが、中でも、たまたま権利の行使を受けたものとそうでない者の間に、事実上の不公平が生じることを問題視しているのが特徴的である。
 実際、この不公平は、著作権法のみならず、他の知財法でも問題になることであろうが、やはり著作権法が個人をも対象にしていることから、特にあげているのではないかと思う。特に統計を持っている訳ではないので何とも言えないのだが、確かに著作権法は、他の知財法と比べてもみせしめ的な訴訟が数多く提起されているようにも思われ、無視して良い論点であるとは思えない。
 また、いわゆる法を軽視する風潮、法の弛緩についても書いてある。守られない、あるいは守ることができない法律をいくら書いても百害あって一利なく、著作権法というあらゆる個人の文化的営為に関わってくる法律において、法を弛緩させることは、著作権そのものに対するモラルハザードに繋がる危険性がある。どんな法律であれ、法律の根源となる社会規範・コモンセンスを越えては存在し得ないのであって、この点も法改正を議論するときには、必ず考えられるべき点であろう。

(5)中山信弘著「著作権法」(初版・2007年10月有斐閣刊)
 いよいよ中山先生の本であるが、私的複製の趣旨については割とオーソドックスで、この本の面白さが完全に出ている箇所ではないのだが、引用すると、

「30条の立法趣旨としては、次のような点が考えられる。私的領域内で行われる複製は全体的にみてみ微々たるもので権利者に与える影響は少なく、またそのような行為は補足が困難である上、仮に侵害を発見しても個々の複製による損害は少なく、また獲得できる損害賠償額を考えると事実上請求の対象とはなりにくい。また権利者と複製者の交渉の場がなく、事前に両者が契約を締結するには余りに交渉コストが掛かりすぎる。また従来のアナログの複製は精度が落ち、そのような劣化した複製が権利者の利益を不当に害するほどではないとも考えられた。侵害の把握、安価な交渉・課金のような技術上の困難性、あるいは法の実効性の問題については、技術の発展によりある程度は解決可能であるかもしれないそれに対して、そもそも個人の自由という観点から、著作権法が私的領域にまで干渉することが果たして妥当といえるのか、あるいはプライバシーとの関係はどうなるのか、という根本的な問題は残る。」(第244頁より。赤字強調は私が付けたもの。)

という部分になるだろう。
 中山先生は、技術の発展による解決の可能性についても言及しているが、著作権法が私的領域まで干渉することの是非は、最後まで問題になるとしている。
 確かに、著作権法による個人や家庭に対する干渉がどこまで妥当なのかというのは法律的にはかなり本質的な問題である。しかし、この点は未解決のままに、技術的に可能であるからという理由で、著作権保護技術は着実に家庭の中に浸透しつつある。この点は今ここで整理することは到底できず、今後の技術・法制度の動向も考えながら、本質的な議論を積み重ねていくべきところだろう。

(6)最後に
 まとめるのもおこがましい先生方が並んでいるのだが、先生方があげている私的複製を認めるべき理由を並べておくと次のようになるだろうか。

①個人の自由・プライバシーの問題から、そもそも著作権法のような私法が私的領域に踏み込むことは避けるべきである。
②私的領域の文化活動も守られるべきである。
③侵害の発見が難しく、権利の実効性に問題がある。
④権利行使のコストが見合わない。
⑤事前交渉のコストも見合わない。
⑥微々たる複製であり、著作権者に与える影響が軽微である。
⑦守られない法を制定することは、法の弛緩に繋がる。
⑧権利の行使を受けたものとそうでない者との間に不公平が生じる

 この中でも、やはり①②は本質的な問題として、私的複製に関する国民的な議論の中で深められて行くべきポイントとなるだろう。
 さらに、実効性やコストの問題、権利者に与える影響等についても、私的録音録画小委員会での利害関係者のすれ違いの議論だけではなく、真に国民的議論が提起されることを期待したい。

 なお、教科書の中でも特に、中山先生の本は例外的なほどに面白く、興味のある方は是非買って熟読されることをお勧めする。また上にあげた他の教科書も、著作権法を勉強しようと思うなら、全て買って損はないものばかりなので、もしこのブログを読んで気になったものがあれば、購入を検討してはいかがだろうか。(どれもそれなりの値段はするので財布が痛むことを覚悟しなければならないだろうが。)

 さて、以上までで教科書に関する話は終わりだが、著作権法には著作をしない者に権利を与える理屈はない(法目的には公正利用が入っているが)ので、単なるユーザーには何の権利もないというところが、何ともユーザーとして気分が悪いところである。そのため、私はユーザーとして地道により広汎な公正利用の権利を求めて行きたいと思っているが、現行法でも、コモンセンスにのっとり、正規に入手したコンテンツは、私的領域において原則自由かつ無償で楽しめることの確認を是非求めたいと思う。

 次からも、しばらく数回に渡って、主要国の著作権法の私的複製に関する権利制限規定の比較をしてみようかと考えている。

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2007年8月22日 (水)

第5回:放送に関する著作権問題

 少し時間が空いてしまったが、放送に関する著作権問題の話を書いておこう。

(1)放送法と著作権法における「放送」の定義
 まず、放送法における「放送」の定義については、前回も書いたが、以下のようになっている。
「放送」の定義:公衆によって直接受信されることを目的とする無線通信の送信をいう。
 これが著作権法では、
「放送」の定義:公衆送信のうち、公衆によつて同一の内容の送信が同時に受信されることを目的として行う無線通信の送信をいう。
となる。
 ちなみに、著作権法の公衆送信は、
「公衆送信」の定義:公衆送信 公衆によつて直接受信されることを目的として無線通信又は有線電気通信の送信(中略)を行うことをいう。
である。有線放送についても、それぞれの法律に同様に定義されている。

 読んですぐ分かるように、著作権法においては、放送には内容の同一性と同時性の要件が含まれている。 実際、この定義だけなら考えるとさほどの影響もないように思われるかも知れないが、放送に関することで著作権が問題となる場合、実はこの違いがそもそも問題の根であり、この定義の違いをどうにかしない限り、上っ面の糊塗でいくら当座はごまかしても、もめ事の種になり続けるだろう

 その上っ面の糊塗として、最近ではIPマルチキャスト放送に関する著作権法改正のゴタゴタがあったので、このことについて簡単に紹介しておこう。
 そもそもIPマルチキャスト放送はネット技術を用いた放送の一種であるが、これが放送法では「放送」に該当するにも関わらず、著作権法では該当しないということがゴタゴタの発端である。なぜ、この差でゴタつくかと言うと、著作権法で有線放送に該当すると放送局が放送番組を再送信するときに実演家の許諾が不要になっていたからである。(何故不要だったかというと、条件不利地域における再送信を考慮して優遇措置が取られたということであったらしい。)
 また、なぜIPマルチキャスト放送が「有線放送」でないかと言えば、ネット技術を利用しているので、「同一の内容の送信が同時に受信され」ているとは厳密には言えないかである。
 その結果、IPマルチキャスト放送事業者が著作権法上の不公平について問題にし、2011年の地上デジタル放送への移行を前にデジタル放送の再送信を推進したい総務省の思惑とも合致した結果、昨年の文化審議会法制問題小委員会で委員にすら検討内容がよく理解出来なかったほどのスピード審議によって方向性が出され、同時再送信について、IPマルチキャスト放送についても有線放送についても同等に、実演家は報酬請求権を行使できるものとされた。(本当は、レコード製作者の権利もあるのだが、ここでは省略。)

(著作権法改正前)
有線放送:「有線放送」であって、同時再送信の場合、実演家の許諾は不要
IPマルチキャスト放送:「公衆送信」であって、同時再送信の場合でも、実演家の許諾が必要

(法改正後)
有線放送:有線「放送」のまま。同時再送信の場合、実演家の許諾は不要だが報酬を支払うことが必要
IPマルチキャスト放送:「公衆送信」のまま。同時再送信の場合、実演家の許諾は不要だが報酬を支払うことが必要

 ここで、条文を引くことはしないが、この法改正は、著作権法の放送の定義をいじったのではなく、あくまでIPマルチキャスト放送を公衆送信としたまま、公衆送信であっても、放送番組の同時再送信の場合に限って、実演家の権利を制限したということに注意していただきたい。さらに、有線放送の場合は、無権利だったものが、報酬請求権が与えられているので、権利の切り上げになっていることにも注意していただきたい。
 法制問題小委員会の実演家代表委員は、しきりと、これは権利の切り下げであるため受け入れは困難であるとの意見を述べていたが、最後、有線放送について報酬請求権化することで、表向きはどうあれ、これを結構あっさりと受け入れた。結局、表向きはどうあれ、彼らは実ビジネスがいまだ存在していないIPマルチキャスト放送における権利の引き下げを受け入れることで、実ビジネスの存在している有線放送における権利の引き上げを手に入れたのだ。当然のことながら彼らの収入はアップすることになる。このこと一つとって見ても、権利者団体にあるのは、理念ではなく算盤勘定であることはよく分かるだろう。権利者団体がビジネスを行っている利権団体である以上、この行動を非難することは出来ないが、我々国民はこのような利権団体の表向きの主張に騙されないようにしなければならない。

(2)著作隣接権者としての放送局の問題
 さて、まだ大きな問題として顕在化はしていないが、今後十年、二十年のスパンで政策的話題になりそうなこととして、放送局が隣接権者として著作権法上の権利を持っているということがあげられる。
 すなわち、放送を業として行う放送事業者は、その放送に係る音又は影像を複製する権利、再放送権、送信可能化権などを専有している。なぜか、放送の内容に対する創作行為に関与せずとも、放送局は放送を行うだけで放送番組について複製等の許諾権が手に入る。誰かに違法に複製されたら、本当の創作者である著作権者が権利行使を行えば良いはずであるのにだ。法律制定当時は、単なる流通の保護が文化の発展に多少の寄与することもあったのかも知れないが、流通経路が多様化している今、何故放送を著作権法上優遇しなければならないかの根拠はほぼ無くなっていると言っても差し支えない。
 法律の目的にも入ってしまっており、世界的にも条約の議論などもあるので、この権利を無くすことは不可能に近いが、この問題もじりじりと様々な議論に響いてくるに違いない。(そのうち詳しく書きたいと思うが、レコード製作者の権利についても同じことが言える。)

 今後も様々なことで放送に関する著作権のことが話題になっていくことだろうが、その根本は常に上記の2点から派生していると思ってまず間違いはなかろう。

 さて、今総務省の答申がパブコメにかかっている最中ということもあり、知財そのものではないが、放送関連トピックの一つとして、次回はコピーワンス問題について書こうかと思う。

 そういえば、「通信・放送の総合的な法体系に関する研究会 中間取りまとめ」に対する意見募集の結果が出ていたので、念のためここにもリンクを張っておく。匿名だった私の意見も載っているのには少し感心したが、反映されるかどうかは全く疑わしいのは第1回で書いた通り。個人の意見はほとんど規制反対だったのだが。

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