カテゴリー「文化審議会著作権分科会パブコメ」の18件の記事

2009年2月13日 (金)

第154回:ブルーレイ課金著作権法施行令案への提出パブコメ

 前々回取り上げた、ブルーレイ課金著作権法施行令案へのパブコメを書いて提出したので、ここにも載せておく。

(以下、提出パブコメ)

1.個人/団体の別:個人
2.氏名:兎園
3.住所:(略)
4.連絡先:

5.意見
(概要)
 本施行令改正案は、ブルーレイを私的録音録画補償金の対象に加えようとするものであるが、私的録音録画小委員会で補償金のそもそもの意義が問われた中で、その解決をおざなりにしたまま、このような合理的根拠に乏しい対象拡大をするべきではない。

(意見)
 確かにこのブルーレイ課金は、ダビング10解禁のために文部科学大臣と経済産業大臣の間で暫定的な措置として合意されたという経緯がある(平成20年6月の両大臣記者会見http://www.meti.go.jp/speeches/data_ed/ed080617j.html及びhttp://www.mext.go.jp/b_menu/daijin/08070402.htm参照)が、ダビング10への移行で多少混乱が生じたことを除けば、前後で何かが大きく変わった気はしない。

 確かに今はコピーフリーのアナログ放送もあるが、ブルーレイにアナログ放送を録画することはまずもって無いと考えられるため、アナログ放送の存在もブルーレイ課金の根拠としては薄弱であり、そのアナログ放送も2011年には止められる予定となっているのである。

 特に、権利者団体は、ダビング10への移行によってコピーが増え自分たちに被害が出ると大騒ぎをしたが、移行後半年以上経った今現在においても、ダビング10の実施による被害増を証明するに足る具体的な証拠は全く示されておらず、現時点でブルーレイ課金に合理性があるとは私には全く思えない。

 わずかに緩和されたとは言え、今なお地上デジタル放送にはダビング10という不当に厳しいコピー制限がかかったままである。こうした実質的に全国民に転嫁されるコストで不当に厳しい制限を課している機器と媒体にさらに補償金を賦課しようとするのは、不当の上塗りである。

 本施行令改正案は、ブルーレイを私的録音録画補償金の対象に加えようとするものであるが、私的録音録画小委員会で補償金のそもそもの意義が問われた中で、その解決をおざなりにしたまま、このような合理的根拠に乏しい対象拡大をするべきではない。

 必要であれば、最近の著作権分科会報告書で今後文化庁が設けるとされた、権利者、メーカー、消費者などの関係者が忌憚のない意見交換ができる場で、ブルーレイについても合わせて合意形成を目指すべきである。この意見交換の場は、公開にするとともに、より公平を期して、消費者・ユーザー代表を3分の1、メーカー代表を3分の1、権利者代表を3分の1とするべきである。権利者が不利という声があがるのかも知れないが、この程度の数の有識者を納得されられなくて、国民の理解が得られると思うことなど片腹痛い。真に国民の理解が得られない法改正・対象範囲の拡大などされるべきではない。(学者を入れて、全て4分の1ずつとしても良いが、私的録音録画小委員会において、補償金制度に対して国民視点に立った真の政策提言が出来なかった法学者を入れる必要はない。)

 なお、本施行令案では、追加指定が暫定的な措置であることが全く担保されていないため、去年6月の文部科学大臣・経済産業大臣間の合意は実質破棄されているのではないかと思うが、間接的にではあるが国民によって選ばれた両大臣間の合意に基づいて課金を行うことが各省庁に求められているということであれば、この追加指定を時限措置とし、暫定的な措置であることが明確に担保されなくてはならない。(記者会見でも、両大臣は、ブルーレイ課金は「暫定的な措置」であると明言している。)現行の私的録音録画補償金の仕組みは、一旦新たな対象を追加してしまうと、また各省の合意が無ければそれを取り除くことができなくなるという点でも問題を抱えているのであり、そうした本質的な問題点の検討をなおざりにしたまま、恒久的な形でブルーレイ課金を行うことは、両大臣の合意に基づいても不適切である。

 最後に念のため、上の意見の前提兼今後の検討の参考として、一昨年の私的録音録画小委員会の中間整理に対して私が提出した意見のまとめを以下に転記しておく。

1.そもそも、著作権法の様な私法が私的領域に踏み込むこと自体がおかしいのであり、私的領域での複製は原則自由かつ無償であることを法文上明確にすること。また、刑事罰の有無に関わらず、外形的に違法性を判別することの出来ない形態の複製をいたずらに違法とすることは社会的混乱を招くのみであり、厳に戒められるべきこと。

2.特に、補償金については、これが私的録音録画を自由にすることの代償であることを法文上明確にすること。すなわち、私的録音録画の自由を制限するDRM(コピーワンスやダビング10ほどに厳しいDRM)がかけられている場合は、補償措置が不要となることを法文上明確にすること。

3.また、タイムシフト、プレースシフト等は、外形的に複製がなされているにせよ、既に一度合法的に入手した著作物を自ら楽しむために移しているに過ぎず、このような態様の複製について補償は不要であることを法文上明確にすること。実質権利者が30条の範囲内での複製を積極的に認めているに等しい、レンタルCDやネット配信、有料放送からの複製もこれに準じ、補償が不要であることを明確にすること。

4.私的録音録画の自由の確保を法文上明確化するとした上で、私的録音録画を自由とすることによって、私的複製の範囲の私的録音録画によってどれほどの実害が著作権者に発生するのかについてのきちんとした調査を行うこと。
 この実害の算定にあたっては、補償の不必要な私的複製の形態や著作権者に損害を与えない私的複製の形態があることも考慮に入れ、私的録音録画の著作権者に与える経済的効果を丁寧に算出すること。単に私的録音録画の量のみを問題とすることなど論外であり、その算定に当たっては入念な検証を行うこと。

5.この算出された実害に基づいて補償金の課金の対象範囲と金額が決められること。特に、その決定にあたっては、コンテンツ産業振興として使われる税金も補償金の一種ととらえられることを念頭に置くこと。この場合でも、将来の権利者団体による際限の無い補償金要求を無くすため、対象範囲と金額が明確に法律レベルで確定されること。あらゆる私的録音録画について無制限の補償金要求権を権利者団体に与えることは、ドイツ等の状況を見ても、社会的混乱を招くのみであり、ユーザー・消費者・国民にとってきちんとセーフハーバーとして機能する範囲・金額の確定を行うこと。
 あるいは、実害が算出できないのであれば、原則にのっとり、私的録音録画補償金制度は廃止されること。

6.集められた補償金は、権利者の分配に使用されることなく、全額違法コピー対策やコンテンツ産業振興などの権利者全体を利する事業へ使用されること。

(12月14日の追記:メーカー側(JEITA)がパブコメを提出したとのリリースがあった(リリース意見本文(pdf)AV watchの記事ITmediaの記事参照)。)

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2009年2月 7日 (土)

第153回:文化審議会著作権分科会報告書

 文化庁のHPに文化審議会著作権分科会の今年度の報告書(pdf)が掲載された。中身は、今までの小委員会の報告書の寄せ集めに過ぎないのだが、これからのために少しメモを作っておきたいと思う。

 1月26日の著作権分科会の資料中の概要(pdf)でも分かるが、この報告書に含まれている法改正事項をまとめると以下のようになるだろう。

  • 情を知ってインターネット上で海賊版の販売等の申出をすることを著作権侵害行為とみなす。
  • 障害者のための権利制限の範囲の拡大。
  • オークション等における販売のための画像複製・掲載を権利制限の対象とする。
  • 検索エンジンのための複製等を権利制限の対象とする。(ただし、ロボット型のみ。ウェブサイトの設定により情報収集を拒否する旨の意思表示を行っている場合は権利制限の対象外。他者の著作物が侵害されていると知ったとき、または、他者の著作権を侵害するものであると知ることが出来たと認めるに足りる相当の理由がある場合は、サービス提供者に対して違法複製物の削除義務を課す。)
  • 相互運用性の確保や障害の発見等の一定の目的で行うリバース・エンジニアリングを権利制限の対象とする。
  • 情報解析分野の研究開発を権利制限の対象とする。
  • 機器利用時における蓄積及び通信を巡る蓄積等を権利制限の対象とする。
  • 違法録音録画物・違法配信からの情を知っての録音録画を、利用者保護に配慮した上で、私的複製(第30条)の適用除外とする。(いわゆるダウンロード違法化。プログラム他について引き続き検討。)

 他の点についてもいろいろ言いたいことはあるが、特にダウンロード違法化について、8000通以上のパブコメでユーザーが伝えようとしたことを、結局、文化庁は最後まで理解しようとしなかった。第157ページで、

意見募集では利用者が法的に不安定な立場におかれるのではないかとの疑念が多く寄せられたが、仮に現実に民事訴訟を提起する場合においても、利用者が違法録音録画物・違法配信であることを知りながら録音録画を行ったことに関する立証責任は権利者側にあり、権利者は実務上は利用者に警告を行うなどの段階を経た上で法的措置を行うことになると考えられるため、利用者が著しく不安定な立場に置かれて保護に欠けることになることはないと考えられる。

と、答えられないものは全て無視し、勝手にパブコメをあまりにも簡単にまとめて片付けているが、このような非道い回答で誤魔化される者がいるだろうか。立証責任が権利者側にあるといったところで、一個人しか行為に絡まないダウンロードにおいて「情を知って」という要件は、証明も反証も出来ないものであるし、警告自体濫用や詐欺が懸念されていたものである。法制小委へのパブコメでも書いたが、私的録音録画小委員会に対するパブコメでユーザーが数多く挙げた懸念は、このような単純な答えで片付けて良いようなものでは全く無かった。

 「第30条の範囲の見直しについては、特に違法録音録画物、違法配信からの録音録画について、利用者保護に配慮した上で著作権法改正を行うことに賛成する意見が大勢であったことから、文化庁は所要の措置を講じる必要がある」(第159ページ)らしいが、ダウンロード違法化と利用者保護は両立しない。だからこそ、あれだけのパブコメが集まったのだし、今でも反対の声は非常に強いのである。

(ダウンロード違法化問題に関して、第156~157ページの「この点については、例えば日本と欧米では違法複製の状況、法制及び技術的保護手段の実態が異なっているので国際的な動向を慎重に見極める必要がある、有料音楽配信の売り上げは伸びており現状において法改正の必要性はないのではないか等とする慎重な意見や、コンテンツホルダーは利用者が高い利便性のもとで合法的にコンテンツを享受できるような環境を充分提供したうえで権利侵害に対処すべきであるが、その点について日本の現状では不十分であり、権利者はそうした点を充分考えるべきである」という指摘は実にもっともだと思うが、残念ながら結論に結びついていない。)

 最終報告書がまとまったとは言え、まだ改正法案は影も形も見えず、提出されたとしても可決前に選挙が挟まる可能性が高い。知財政策・情報政策上も次の選挙の重要性は極めて大きい。ダウンロード違法化問題の次の舞台は国会である。

 最後に、「P2Pとかその辺の話」(元になったheise onlineの記事Spreeblickのブログ記事)で、ダウンロード違法化にともなって生じた混乱に懲りたのか、ドイツの法務大臣が3ストライクアウトポリシーの採用に否定的な見解を述べたとする記事を紹介しているので、念のため、リンクを張っておく。悪辣なダウンロード違法化を先駆けて行い、混乱の種を世界に撒いたドイツの罪も極めて重く、どっちもどっちだと思うが。

(2月7日夜の追記:公取がJASRACに包括許諾契約の改善命令を出す予定という記事があった(ITmediaの記事47newsの記事読売のネット記事参照)。番外その10のついでに書いたように、他社・他団体からの楽曲を使っても、びた一文まからない包括許諾契約というのも変なものであり、公正透明な契約がなされるようになればと思っているが、コストとメリットのバランスを考えた適正な改善策が取られないようでは意味がない。この問題についても、今後の展開が気になるところである。)

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2009年2月 3日 (火)

第152回:ブルーレイを補償金の対象とする著作権施行令のパブコメ募集

 ブルーレイを私的録画補償金の対象とする施行令案がパブコメにかかった(3月4日〆切。文化庁のリリース電子政府の該当ページ意見募集要領(pdf)施行令案概要(pdf)新旧対照条文(pdf)AV Watchの記事ITproの記事internet watchの記事cnetの記事マイコミジャーナルの記事も参照)。

 ブルーレイは現行のDVD課金の延長にあり、法律改正をせずとも、このような政令改正で追加出来てしまうので、法律が悪いと言ってしまえばそれまでだが、私的録音録画小委員会であれだけ私的録音録画補償金のそもそもの意義が問われたにもかかわらず、そのことを全て棚上げにしたあげく、消費者の頭越しに補償金の対象拡大をするのは本当にどうかと思う。(同じことは第102回のついでにも少し書いたが。)

 既に「Copy&Copyright Diary」で細かな突っ込みをされている(エントリ1エントリ2)ので、リンク先を読んで頂くだけでも十分だと思うが、この施行令案は技術的な要件のみで対象を限定しており、この施行令案がそのまま実施されれば、ほぼブルーレイ課金は恒久的なものとして既成事実化されてしまうことになるだろう。

 だが、わずかに緩和されたとは言え、今なお地上デジタル放送にはダビング10という不当に厳しいコピー制限がかかったままである。繰り返しになるが、こうした実質的に全国民に転嫁されるコストで不当に厳しい制限を課している機器と媒体にさらに補償金を賦課しようとするのは、不当の上塗りである。

 確かに今はコピーフリーのアナログ放送もあるが、ブルーレイにアナログ放送を録画することはまずもって無いだろうし、そのアナログ放送も2011年には止められる予定となっている。ダビング10への移行によってコピーが増え自分たちに被害が出ると言って権利者団体は大騒ぎをしたが、移行で多少混乱が生じたことを除けば、前後で何かが大きく変わった気はせず、現時点でブルーレイ課金に合理性があるとは私には全く思えない。

 ブルーレイ課金についても、補償金のそもそもの意義が問われた中で、その解決をおざなりにしたまま、中途半端にこのような対象拡大をするべきではないという意見を私は出すつもりである。

(政令で料率は決まっていないのでパブコメの対象外だとは思うが、上でリンクを張った各種記事によると、文化庁はブルーレイの料率を現行のDVDと同じとすることを目論んでいるようである。消費者から意見を出す機会はもう無いかも知れないので、料率についても突っ込んでおいても良いかも知れない。)

 最後に、EU議会の海賊版対策報告書案に関する記事が「P2Pとかその辺の話」で紹介されているので、興味のある方はリンク先をご覧頂ければと思う。以前、フランスの3ストライク法案を否定する議決をEU議会はした訳だが、その後、フランスの多数派工作によって、その修正条項は除かれ、今度は逆に著作権検閲を是認するかのような報告書案がスペイン出身の議員から出されているようであり、EU議会レベルでのロビー活動も激しくなっていると見え、ヨーロッパの情勢も混沌としている。

(2月4日の追記:コメントで、2008年6月の文科省と経産省で合意されたものという文書に対するリンクを張って頂いた。補償金問題に関する重要な参考資料の一つであり、国の告示等に類し、著作権の権利の目的とならないものと私は判断するので、以下に転載する。出所は確認できていないが、偽物にしてはできすぎており、確かに情報公開請求なりで公開されたものではないかと私も思う。しかし、暫定措置として合意したと各省が言ったところで、そのような合意には本当の拘束力は無い。現行の私的録音録画補償金は、現行の政令指定の仕組みでは一旦対象を追加してしまうと、また各省の合意が無ければそれを取り除くことができないという点でも本質的な問題を抱えているのである。(匿名希望様、情報ありがとうございます。))

June_2008


(2月6日の追記:権利者団体が集まっていつものようにブルーレイ課金を求める記者会見を開いたようであり、念のために各種記事(AV watchの記事ITmediaの記事ITproの記事日経TechOnの記事Phile webの記事権利者団体連合のリリース)へのリンクを張っておく。他にも突っ込みどころは山ほどあるが、2点だけ突っ込んでおくと、著作権法第30条第2項には「政令で定めるもの」という限定が明文で入っており、日本の私的録音録画補償金制度は、私的録音録画が出来たら何でもかんでも補償金という制度には元からなっていないし、両省合意の重みを言うなら、ブルーレイの政令指定が「暫定的な措置」であることが明確に担保されなくてはならないだろう。いつも通りと言えばいつも通りだが、いい加減この程度で人を欺けると思わないでもらいたいものである。)

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2008年12月17日 (水)

第143回:文化庁天下りリスト

 先日、文化庁の私的録音録画小委員会が開かれ、ダウンロード違法化の方針を含む報告書がまとめられた(ITmediaの記事ITproの記事1記事2internet watchの記事日経のネット記事47newsの記事マイコミジャーナルの記事)。

 文化庁は、ダウンロード違法化問題について8千件以上集まったパブコメを完全に無視し去ったのである。まだ、12月25日の法制問題小委員会(開催案内)、来年1月6日の過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会(開催案内)、さらにその後2月くらいまでに開かれるだろう上位審議会の著作権分科会などが残っているが、文化庁や文化審議会には期待するだけムダだろう。

 ダウンロード違法化の問題点は、法制小委員会への提出パブコメ第126回でも書いており、ここで繰り返すことはしないが、文化庁が多くの国民の意見を無視して有害無益な結論を出す根はどこにあるのかと考えていくと、第81回でも書いたように、私の考えはどうしても天下りによる腐敗に行き着く。

 第81回では、衆議院の天下り調査(正式名称は「中央省庁の補助金等交付状況、事業発注状況及び国家公務員の再就職状況に関する予備的調査」)から、計算した合計数字だけを示したが、より詳しい情報も何かの役に立つかも知れない、この調査から文化庁関連部分を抜き出してここに載せておきたいと思う。(行政府から国会に提出された資料として、国会図書館等で誰でも読めるものであり、単に事実を示しているに過ぎず、著作物性はないものと私は判断するが、再配布等を行う場合は自己責任で行って頂けるようお願いする。)

 資料を見るにあたっては、以下の点に注意頂きたい。、

  • 調査全体は非常に膨大であり、ここで抜き出したのはあくまで文化庁所管団体部分のみである。
  • 平成18年4月1日現在での調査であり、現時点のものではない。(例えば、Wikipediaの注にもあるように、JASRAC理事長はもう天下りではない。)
  • およそのことは分かるが、いわゆる公益法人等の各省庁の所管団体への公務員再就職者数を示しているだけで、天下りの実態を本当に正確に表している訳ではない。公務員再就職者の給与等も不明であり、中には他愛のない再就職も含まれていると考えられる。
  • 文化庁分の合計は257人(内訳:非常勤職員1人、常勤職員22人、非常勤役員225人、常勤役員9人。天下り先:公益法人121。)。(文科省全体では、文部科学省全体では、天下り人数は3007人、天下り先団体数934と跳ね上がり、それも大学などの学校が多く、文科省全体としては、教育行政の方が病根は深いことをうかがわせる。)

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 何度でも私は繰り返すが、法改正や規制を盾にした天下りなど再就職ポストを用いた汚職以外の何物でもない。自分たちの利権のみ伸ばせれば良いとばかりに、天下り役人どもはダウンロード違法化のような有害無益な規制強化を押し進めようとするが、その前に、文化庁のような規制官庁と規制業界の天下りによる癒着・腐敗関係の精算こそ必要であると私は言い続けるだろう。

 第41回に載せたダウンロード違法化問題に関する著作権フリー資料もほとんど手を加える必要性を感じない。現時点では文化庁が単に方針を示しただけで、閣議決定・国会提出すらされた訳ではなく、今の政局の混迷具合を見ても、ダウンロード違法化問題の先は長い。著作権問題の中では、ダウンロード違法化問題と一般フェアユース条項の導入は、選挙の争点としても良いくらいの大問題だと私は思っている。

 最後に、最近の知財関連のニュースも少し紹介しておくと、カナダ政府は、ブランクCDへの補償金料率を21セントから29セントに引き上げようとしているようである(「P2Pとかその辺の話」の紹介記事cyberpresseの記事(フランス語))。オーディオカセットについては料率を据え置きとしている点などを見ても、iPhoneに対する課金が最高裁判決によって止まったため、やはり消費者のあずかり知らないところで、カナダでも珍妙な妥協が図られようとしているのではないかと私は思う。

 なお、権利者(放送局)側が最高裁に持ち込むと公言しているので、まだ片付いたとは言えないが、「まねきTV」のサービスを合法とする判決が知財高裁でも支持された(internet watchの記事ITmediaの記事知財情報局の記事)ので、念のために記事へのリンクを張っておく。

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2008年11月 8日 (土)

第128回:文化庁・法制問題小委員会の中間まとめに対する提出パブコメ

 文化庁・文化審議会著作権分科会・法制問題小委員会の中間まとめに対するパブコメも書いて提出したので、ここに載せておく。

(以下、提出パブコメ)

 法制問題小委員会中間まとめについて下記の通り、意見を提出します。

     記

1.個人/団体の別:個人
2.氏名:兎園
3.住所:
4.連絡先:

5.該当ページおよび項目名:
(1)第2節 私的使用目的の複製の見直しについて(11~20ページ)
(2)第3節 リバース・エンジニアリングに係る法的課題について(21~39ページ)
(3)第4節 研究開発における情報利用の円滑化について(40~49ページ)
(4)第5節 機器利用時・通信過程における蓄積等の取扱いについて(50~62ページ)
(5)中間まとめ全体

6.意見
(1)「第2節 私的使用目的の複製の見直しについて(11~20ページ)」に対する意見
 第11~12ページにおいて、平成19年12月18日時点のペーパーを意見募集後の私的録音録画小委員会の論点整理として固定化しようとしているが、このペーパーは8720通にも及ぶパブコメを完全に無視して文化庁が勝手に作ったもので、同日の小委員会に出席していた消費者代表委員からも激しい批判を浴びたものであり、平成19年度の私的録音録画小委員会の論点整理として全く不適切なものである。最終報告書においては、この論点整理に関する記載は全て削除するか、平成1月23日時点の「私的録音録画小委員会の審議の経過について」(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/bunka/gijiroku/020/08012413/001.htm参照)の内容のみをもって平成19年度の私的録音録画小委員会の整理とするべきである。

 また、第16ページの「② 利用者保護について」で、利用者保護対策が進んでいるかの如き印象操作を行っているが、日本レコード協会の権利者団体のエルマークもあくまで日本レコード協会所属のレコード会社と、その音楽配信サイトが何らかのライセンスを結んでいることを示すものに過ぎず、どこまで行っても、エルマークのありなしはそのサイトのコンテンツが著作権法上適法に提供されたものか、違法に提供されたものかを示すクライテリアたり得ない上、自らが作製した著作物を離れてサイトそのものを違法と著作権者団体が認定することは、明らかに権利の乱用であり、到底認められるべきことではない。最終報告書においては、この部分に、このような否定的評価も明記するべきである。

 そもそも、平成19年度の私的録音録画小委員会中間整理に対するパブコメにおいて、ダウンロード違法化に対する大多数の反対意見はダウンロードの違法化をするなと言っているのであって、意見を重く受け止めてダウンロードを違法化して欲しいなどとする意見ではカケラもないのであり、このような意見のすりかえは決して許されない。

 去年のパブコメでは、ダウンロード違法化について、①そもそも著作権という私法が私的領域に踏み込むこと自体がおかしい、②家庭内の複製行為を取り締まることはほとんどできず、このような法改正には実効性がない、③通常の録音録画物について違法合法を区別することはできない、④特に、インターネット利用では、キャッシュとして自動的になされるコピーがあるなど、違法合法を外形的に区別できないため、ダウンロードが違法と言われても一般ユーザーにはどうしたら良いのかさっぱり分からず、このような法改正は社会的混乱しかもたらさない、⑤ダウンロードはその行為に1個人しか絡まないため、エスパーでも無い限り「情を知って」の要件は証明も反証もできないものであり、この要件は司法判断でどう倒されるか分からず、場合によってはインターネットへのアクセスそのものに影響を及ぼし兼ねないこのような法改正は極めて危険である、⑥そもそも違法流通は送信可能化権による対応が可能である上、この送信可能化権との関係でダウンロードによる損害額がどう算定されるのかもよく分からない、⑦パロディの著作物のダウンロードについて、ごく普通のユーザーにまでリスクを負わせるのはおかしい、⑧研究など公正利用として認められるべき目的の私的複製まで影響を受ける、といった懸念・不信がユーザーなどから示されているが、このうち、④の問題が、わずかに、本中間まとめにおいてブラウザキャッシュなどが権利制限の対象されるべきとされていることで、かろうじて緩和されそうなことを除き、去年から状況にほとんど変化はないのであり、ダウンロード違法化の合理的な根拠はほとんど全くと言って良いほど何もないのである。

 国際的に見てもダウンロードを違法化している国は決して多くなく、ダウンロード違法化をした上でエンフォースを試みたただ一つの国であるドイツでは、エンフォースに失敗し、その実効性は何らあがっておらず、フランスは、条文に3ステップテストを入れただけでダウンロードについてまだ最高裁の結論が出ていないところで、俗に3ストライクアウト法案と呼ばれるバランスを欠いた取組を無理矢理押し進めようとしているが、最近のEUの通信に関するディレクティブでネット切断型の対策を否定されるなどその先行きは不透明となっており、判例法の国アメリカでも、P2P訴訟が猖獗を極め、何ら出口は見えていないなど、欧米の動向も、この点に関しては混乱するだけ混乱しており、反面教師にしかならない。国際条約にダウンロードを明確に違法化すべきと明記されている訳でもなく、ダウンロード違法化が国際潮流になっているなどということは今もってない。

 プログラムも含め、あらゆる著作物のダウンロード違法化に、私は今なお完全に反対する。このような有害無益な法改正の方針は、技術の発展の真の意味を全く理解しておらず、一般国民の行動原理とモラルとも乖離した、天下り役人の独善的な妄想に基づくものでしかない。違法ダウンロードによる権利者の経済的不利益が大きいとする根拠も薄弱であり、違法ダウンロードについては、拙速な法改正は行わず、解釈論による対応なども検討しつつ、様々な司法判断や状況が積み重なってきたときに改めて立法の是非を判断するべきである。

(2)「第3節 リバース・エンジニアリングに係る法的課題について(21~39ページ)」に対する意見
 第23ページに、「国際的に見ても、リバース・エンジニアリングの取扱いに関して大きな議論が存在する状況ではなくなってきている」と書かれているが、同じ中間まとめ中にある諸外国の立法例だけを見ても、ドイツ、フランス、スイス、イギリス、オーストラリア、アメリカ等があげられており、最終報告書においては、このような不適切な記載は削除するべきである。

 技術的な調査・解析は、権利者の利益を害するどころか、技術の発展を通じて社会全体を裨益するものであり、著作権法によってこのような利用まで萎縮することは、その法目的に照らしても本来あってはならないことである。遅きに失した感すらあり、このリバース・エンジニアリングに関する権利制限を早期に確実に導入することを私は求める。

(3)「第4節 研究開発における情報利用の円滑化について(40~49ページ)」に対する意見
 上でも書いたことだが、技術的な試験・研究は、権利者の利益を害するどころか、技術の発展を通じて社会全体を裨益するものであり、著作権法によってこのような利用まで萎縮することは、その法目的に照らしても本来あってはならないことである。さらに、主として情報解析分野のみについて一定の条件の下で権利制限を行うべきとしている点は権利制限の範囲としてあまりにも狭く不十分である。この点については、研究開発のための広く一般的な権利制限を早期に確実に導入することを私は求める。研究開発のための広く一般的な権利制限は、特に、技術動向に対する柔軟な対応が必要とされるため、列挙型ではなく、一般的な制約要件のみを設けた包括的なものとされるべきである。

 さらに、特にインターネットのように、ほぼ全国民が利用者兼権利者となり得、考えられる利用形態が発散し、個別の規定では公正利用の類型を拾い切れなくなるところでは、フェアユースのような一般規定は保護と利用のバランスを取る上で重要な意味を持つものである。一般フェアユース条項についてもその検討を進め、可能な限り早期に導入することを私は求める。

(4)「第5節 機器利用時・通信過程における蓄積等の取扱いについて(50~62ページ)」に対する意見
 利用者の通常の機器利用において生じる一時的蓄積について法的安定性を高めることもまた必要なことであり、この機器利用時の一時的蓄積に対する権利制限もまた早期に確実に導入することを私は求める。この点について今整理されている以上の要件は不要であり、法的安定性と萎縮効果の防止の必要性を十分に認識し、これ以上の要件を追加することは厳に戒められるべきである。

 通信過程における一時的蓄積等についても権利制限はやはり同様に必要であり、これを早期に確実に導入することを私は求める。特に、この点については、技術動向への柔軟な対応ができない機能列挙型の権利制限ではなく、著作物の通常の利用を害さず、権利者の正当な利益を不当に害しない限りにおいて、というような一般的な制約要件を設けた上で、全ての蓄積等の行為について包括的に権利を及ぼさないこととされるべきである。

 また、この第5節には、諸外国の立法例が引用されていないが、去年の著作権分科会報告書にも書かれている通り、EUディレクティブから、英仏独を含む各国の立法例があり、きちんと諸外国の立法例を参考として引用するべきである。

(5)中間まとめ全体について
 繰り返すが、私は、ダウンロードの違法化をするなと言っているのであって、意見を重く受け止めてダウンロードを違法化して欲しいなど言っているのではない。この点について腐った天下り役人の遁辞など全く求めていない。本来法改正は立法府の権限であるが、いやしくも立法を議論する以上、一般国民のコモンセンスに反する法律、守られようがない法律は百害あって一利ないという法哲学の初歩は知っていてもらいたい。どんな法律であれ、作ればその通りに国民が動くなどということはない。技術的・外形的に違法性の区別がつかない以上、ダウンロード違法化は法規範としての力すら持ち得ない。このような法改正を押し通せば、結局、ダウンロード以外も含め著作権法全体に対するモラルハザードがさらに進行するだけであり、これを逆にねじ曲げてエンフォースしようとすれば、著作権検閲という日本国として最低最悪の手段に突き進む恐れしかない。どう転ぼうが、ダウンロード違法化は百害あって一利ない最低の法改正である。

 それに対し、本中間まとめで取り上げられている権利制限は、どれも社会全体を裨益し、経済はおろか、引いては文化の発展にも寄与するものである。次の法改正においては、ダウンロード違法化を除き、権利制限のみの法改正のみを是非行ってもらいたい。

 文化庁あるいは文部科学省にあっては、パブコメを無視せず、真に公平かつ妥当な国民視点に基づく検討が行われるよう、今後、その審議会運営の正常化を真摯に行うことを、私は一国民として強く求める。文化庁あるいは文部科学省がこのような正常化が不可能であるとするなら、これは、行政府が特定業界との癒着を断ち切ることが不可能であると告白したに等しく、私は一国民として、今後真に公平かつ妥当な国民視点に基づく著作権法改正の検討を直接立法府で行うべきであると立法府に求めていくと最後に付言しておく。

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第127回:文化庁・過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会の中間整理に対する提出パブコメ

 文化庁・文化審議会著作権分科会・過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会の中間整理に対するパブコメを書いて提出したので、ここに載せておく。

(以下、提出パブコメ)

過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会中間整理について下記の通り、意見を提出します。

     記

1.個人/団体の別:個人
2.氏名:兎園
3.住所:
4.連絡先:

5.該当ページおよび項目名:
(1)第2章第3節 権利者不明の場合の利用の円滑化について(19~37ページ)
(2)第2章第4節 次代の文化の土台となるアーカイブの円滑化について(38~48ページ)
(3)第3章 保護期間の在り方について(51~97ページ)

6.意見
(1)「第2章第3節 権利者不明の場合の利用の円滑化について(19~37ページ)」に対する意見
 権利者が不明であることによって著作物が死蔵され、社会全体にとっての損失となる事態を防ぐために、権利者不明の場合の利用の円滑化について必要な制度的な対応が取られることを期待する。その際には、特に、余計なコストを発生させることがないA案(権利者の捜索について相当の努力を払っても権利者と連絡することができない場合に、著作物の利用をできることとする)を軸に検討が進められるべきである。ここで、第3者機関を介在させた場合、天下りの温床となり、その手続きコストによって貴重な社会的コストがムダに浪費されることになると考えられ、B案には全く賛同できない。

 また、「写り込み」等の場合についても、権利制限の見直しなどの検討が今後進むことを期待する。

(2)「第2章第4節 次代の文化の土台となるアーカイブの円滑化について(38~48ページ)」に対する意見
 図書館の権利制限について、国立国会図書館における納本直後のデジタル化を法改正で認める方針とされていることに賛成する。しかし、国会図書館はあらゆる資料の保存という特殊な使命を帯びているのは確かにその通りであるが、他の図書館も、多かれ少なかれ資料の保存を目的としていることに変わりはなく、同時に、他の図書館についても、納本直後の資料のデジタル化を認めるようにすることを検討するべきである。デジタル化された資料の館内閲覧やコピーサービスのルール等について、関係者間で協議し、著作物の通常の利用を妨げず著作者の正当な利益を不当に害しない形にするならなおさらである。

 また、記録のための技術・媒体の急速な変化に伴う旧式化により、媒体の内容を再生するために必要な機器が市場で入手困難となり、事実上閲覧が不可能となってしまう事態が生じていることから、新しい媒体に移し替えて保存する必要があるという問題点について、このようなデジタル化が現行法上可能であることを早期に明確化するべきである。同時に、他にも、文化庁の異様に厳格な条文解釈によって、本来認められるべき公正な利用まで萎縮しているということがないかということを全権利制限条項についてきちんと洗い直し、問題のある権利制限条項の解釈について同様の対応を検討するべきである。

(3)「第3章 保護期間の在り方について(51~97ページ)」に対する意見
 ひ孫の孫くらいのことまで考えて創作をしている人間がいるとも思われず、文化の多様化のためにはこれ以上の延長はほとんど何の役にも経たず、経済的にも、著作者の死後50年を経てなお権利処理コストを上回る財産的価値を保っている極めて稀な著作物のために、このコストを下回るほとんど全ての著作物の利用を阻害することは全く妥当でない。

 また、実演家の著作隣接権の保護期間延長についても、今のところ賛成する理由は何一つない。

 レコード屋と放送局という流通業者の著作隣接権の保護期間の延長は論外である。レコード会社や放送局の著作隣接権は、彼らが強い政治力を持っていたことから無理矢理ねじ込まれた権利に過ぎず、その目的は流通コストへの投資を促すことのみにあったものであるが、インターネットという流通コストの極めて低い流通チャネルがある今、独占権というインセンティブで流通業者に投資を促さねばならない文化上の理由はほぼ無くなっているのである。

 著作権の保護期間の延長について私は完全に反対する。文化庁と権利者団体を除けばほぼ否定的な結論が出そろっているこの問題について、検討が先延ばしにされたこと自体残念であり、最終報告書においては、この問題についてこれ以上検討する必要はないとするべきである。

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2008年11月 5日 (水)

第126回:ダウンロード違法化問題の現状

 文化庁などへのパブコメのための個人的なメモに近く、特に目新しいことは含まれていないが、今後の参考に、特にダウンロード違法化問題に関する現状のまとめを書いておきたいと思う。

 見えないところで何が行われているかまでは分からないが、目に見える限りでは、9月19日の第9回の法制問題小委員会の中間整理案(11月10日を〆切としてパブコメにかかっている。第119回参照)で、

第2節 私的使用目的の複製の見直しについて
(中略)
3 検討結果
 以上のように、本小委員会としては、私的録音録画小委員会の検討の成果を踏まえることを基本としつつも、この課題が、理論的には録音・録画に限定される問題ではないことを踏まえ、録音・録画以外の著作物の私的複製について、それと同様の取扱いとすべきかどうかを主として検討してきた。この点に関しては、プログラムの著作物(特にゲームプログラム)について関係者からの要望が強く寄せられており、現在のところ、違法複製物からの複製の実態が相当量にのぼっていることが報告されている状況にある。その他の分野の著作物については、現在のところ大きな要望は寄せられていない。
 一方、私的録音録画小委員会における検討は、私的録音録画補償金制度の見直しを主たる検討事項としている中で行われてきた経緯があり、私的複製の範囲の見直し以外の検討事項も含めた同小委員会全体の取りまとめが行われていないことから、これらの検討事項間の関係をどのように考えていくのか、同小委員会の検討の方向性も踏まえるべきものと考えられる。
 プログラムの著作物等の他の著作物の取扱いについては、このような周辺状況も勘案しながら、また利用者に混乱を生じさせないとの観点にも配意して、場合によっては、検討の熟度に応じて段階的に最終的な取扱いを判断していくことも視野に入れつつ検討を行っていくことが適当と考える。

と書かれた後、10月20日の私的録音録画小委員会(第4回)で、

第2章 著作権法第30条の範囲の見直し
第1節 中間整理の概要
第2節 違法録音録画物,違法配信からの私的録音録画

 中間整理以降の意見募集の結果と,中間整理後に行われた利用者の懸念への対応策の集中的検討を踏まえ,対応策をまとめる

第3節 適法配信事業者から入手した著作物等の録音録画物からの私的録音録画
 中間整理以降の論点整理の内容等を踏まえ,対応策をまとめる。

第3章 今後の進め方
 今年度の本小委員会での検討結果を総括し,私的録音録画問題の解決に向けての対応方法等をまとめる。

という内容の報告書骨子案に基づいて、第119回の追記に書いたように、ダウンロード違法化を行うという方針を確認したところというのが現在の状態である。

 保護期間延長とiPod課金という、天下り先の権利者団体の収入が多少増すことがあるかも知れないが全体として文化的にも経済的にもマイナスにしかなりようがない、有害無益な保護強化策が様々な事情で流れたために、文化庁としては、保護強化策の選択肢として唯一残されたダウンロード違法化に賭けて来たのだろう。

 骨子案には、集中検討を行うなどと調子の良いことを書いているが、ダウンロード違法化の内容自体は、違法な録音録画物を情を知ってダウンロードする行為を私的複製の権利制限から外すということで、去年から何も変わっておらず、恐らく変えようもない(去年から、刑事罰はつかず、録音録画に限るということだった。プログラムが入るかどうかという点は新しい論点だが。)。このような既定路線ありきの中でいくら集中的に検討しようが、大騒動時のパブコメで示された利用者の懸念・不信感はほとんど払拭されないどころか、さらに増すだけのことだろう。

 去年の中間整理に対して、自分のパブコメで書いたダウンロード違法化問題に関する問題点(第20回参照)と、文化庁に提出された他のパブコメに書かれた懸念(第44回参照)から気になったものを合わせ、私なりに箇条書きにまとめると、

  1. そもそも著作権という私法が私的領域に踏み込むこと自体がおかしい。
  2. 家庭内の複製行為を取り締まることはほとんどできず、このような法改正には実効性がない。
  3. 通常の録音録画物について違法合法を区別することはできない。
  4. 特に、インターネット利用では、キャッシュとして自動的になされるコピーがあるなど、違法合法を外形的に区別できないため、ダウンロードが違法と言われても一般ユーザーにはどうしたら良いのかさっぱり分からず、このような法改正は社会的混乱しかもたらさない。
  5. 情を知ってという条件も、司法判断でどう倒されるか分からず、場合によってはインターネットへのアクセスそのものに影響を及ぼし兼ねないこのような法改正は極めて危険である。
  6. そもそも違法流通は送信可能化権による対応が可能である上、この送信可能化権との関係でダウンロードによる損害額がどう算定されるのかもよく分からない。
  7. パロディの著作物のダウンロードについて、ごく普通のユーザーにまでリスクを負わせるのはおかしい。
  8. 研究など公正利用として認められるべき目的の私的複製まで影響を受ける。

となる(もし興味があれば、キャッシュの問題について第42回、知る権利について第75回もご覧頂ければと思う。)。

 このうち、3の違法合法の区別については、法制小委員会の報告書でプログラムのダウンロード違法化の検討のところで、

② 利用者保護について
 前述のとおり、私的録音録画小委員会では、第30条の改正を行う際には、利用者保護対策を措置すべきとしており、その中では、
・権利者が許諾したコンテンツを扱うサイト等に関する情報の提供、警告・執行方法の手順に関する周知、相談窓口の設置など
・適法マークの推進
といった対応を権利者が行うこととされている。
 これについては、録音・録画の分野においては、例えば、社団法人日本レコード協会が、適法な音楽配信事業者であることを識別するための「エルマーク」を導入するとともに、エルマーク配布先である当該事業者に関する情報をHPに掲載し、利用者への情報提供に努めるなど、その取組が進められている。

とあたかも利用者保護の取組が進んでいるかのような印象操作が行われているが、日本レコード協会の権利者団体の適法マークは実質無意味である上、自らが作製した著作物を離れてサイトそのものを違法と著作権者団体が認定することは、明らかに権利の乱用であり、到底認められるべきことではない。(突っ込むのもバカバカしいのだが、録画(映像)はどうなっているのか良く分からないし、エルマークもあくまで日本レコード協会所属のレコード会社と、その音楽配信サイトが何らかのライセンスを結んでいることを示すものに過ぎないので、どこまで行っても、エルマークのありなしはそのサイトのコンテンツが著作権法上適法に提供されたものか、違法に提供されたものかを示すクライテリアたり得ない。)

 7や8のパロディや研究目的の私的複製などについては、一般フェアユース条項で救われる部分も出てくるのではないかと思っていたが、ThinkCのシンポジウムで知財本部の委員も務めている中山信弘先生が次の通常国会での成立は難しいと発言しており、これもあやしくなって来ている。(ITmediaの記事internet watchの記事参照。やはり記事によると、元著作権課長の甲野氏が「権利を侵害するかしないかは刑事罰がかかるかかからないかの問題でもあり、厳密に条文を書こうとすると大変な手間。『公正な』という概念で刑事罰の問題を解決できるのか。実現のためにはいろいろな壁がある」と発言したらしい。これが典型的な役人の考え方だと思うが、親告罪であることが多少セーフハーバーになっているとはいえ、かえって、アニメ画像一枚でも捕まり得るという現状の刑事罰リスクからも、フェアユースは必要なものと私は考える。)

 ただ、今現在検討されている機器利用時の複製に対する権利制限で、4のキャッシュの問題は少しは緩和されることになるだろう。ただし、これも、法制問題小委員会の報告書で、ブラウザキャッシュに対する権利制限の適用について、「ブラウザキャッシュの例では、一般に行われている視聴方法でブラウザによりオンラインの著作物等を視聴している限りにおいては、その際に生じる蓄積物(ブラウザキャッシュ)を作成する行為は、本要件に該当すると考えられるが、例えば、ユーザーが設定を変更して、ブラウザで予定されている範囲を超えて視聴等を行うことを意図して蓄積する場合や、蓄積後に他のアプリケーションを用いて視聴等を行うなどしてこの蓄積物をいわば独立した複製物として視聴に供するような場合には、本要件には該当しないものと考えられる(ただし、このような場合であっても、私的使用目的の場合(第30条)など、他の権利制限規定の対象となる場合はありうる)。」と書かれているものの、条文に書かれる話でもなく、この適用自体かなり曖昧であり、この権利制限とダウンロード違法化が一緒にされた場合、その後に、権利者団体がいわゆる動画投稿サイトの単なる視聴ユーザーにまで難癖をつけに来る可能性があることには注意しておいた方が良い。

 詳しくは第40回第80回で書いたことや、他のエントリなどをご覧頂ければと思うが、ダウンロード違法化が国際潮流になっているなどということは今もってない。ダウンロード違法化をした上でエンフォースを試みたただ一つの国であるドイツでは、エンフォースに失敗し、その実効性は何らあがっていないし、フランスでは、条文に3ステップテストを入れただけでダウンロードについてまだ最高裁の結論が出ていないところで、3ストライクアウト法案という特殊な取組を押し進めようとしている(ecransの記事などによると、この法案はネット切断を残したまま上院を通り、次は下院での審議へと移るようである。)。判例法の国アメリカでも、P2P訴訟が猖獗を極め、何ら出口は見えていない。イギリスはイギリスで、ネット切断型の対策をプロバイダにやらせようとしていたりとバラバラである。欧米の動向も、この点に関しては混乱するだけ混乱しており、反面教師にしかならない。

 結局、フェアユース導入の情勢の微妙さも考慮に入れると、今のところ、ブラウザキャッシュがわずかに権利制限の対象となりそうなことを除き、去年から状況にほとんど変化はないのであり、ダウンロード違法化の合理的な根拠はほとんど全くと言って良いほど何もないのである。これから先は、文化庁と天下り先の著作権団体の政治力次第のところもあるが、これほど不合理な法改正を最後までごり押しするのは非常に困難ではないかと私は見ている。

 私的録音録画小委員会ではパブコメを募集しないようなので、私としては、多少変則的な形とはなるが、まずは上の法制問題小委員会へのパブコメで、他の論点と一緒に、ダウンロード違法化問題についても上のような問題点を指摘し、ダウンロード違法化反対の意見を提出したいと思っている。

(11月5日夜の追記:なお、上の法制問題小委員会の中間整理には、研究のための権利制限についても記載されているが、今のところ追加されそうなのは情報解析のためのみとあまりにも狭く、この問題ではほとんど考慮に入れるに値しない。無論、情報解析研究のための権利制限が重要でないということではないので、念のため。)

(11月6日の追記:また、第121回のついでに紹介した、検索エンジンを合法とするスペイン地裁の判決を含む記事として、フランスのjuriscom.netの記事判決文へのリンク(スペイン語))があったので、念のためにここにリンクを張っておく。)

(11月8日の追記:上では1行で済ませてしまったが、フランスの3ストライクアウト法案の上院通過について、「P2Pとかその辺の話」で詳細な記事の紹介がされているので、興味のある方は是非リンク先をご覧頂ければと思う。)

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2008年10月14日 (火)

第119回:文化庁・著作権分科会・法制問題小委員会の中間まとめと過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会の中間整理に対する意見募集の開始

 文化庁から、今年度の法制問題小委員会の中間まとめと過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会の中間整理の二つがこの9日から、11月10日を〆切としてパブコメにかかっている。(法制小委のパブコメについて、文化庁のリリース電子政府の該当ページ、過去小委のパブコメについても、文化庁のリリース電子政府の該当ページ参照)

 これらには、それぞれ大問題となっている著作権問題の2つの大論点、ダウンロード違法化と保護期間延長の取扱いが含まれており、決して見過ごすことは出来ない。ダウンロード違法化については多少トーンダウンした書き方になっており、保護期間延長についても両論併記の形になっているところを見ると、今回は文化庁もさすがに様々な情勢から様子見と決め込んだものと見えるが、両論点とも単なる先延ばしの記載であり、隙あらば権利者団体とつるんで文化庁が法改正をねじ込んで来ようとすることもまた間違いなく、安心できる状況にはないことを如実に示している。

(1)法制問題小委員会の中間まとめ
 およその内容については、概要を読んでもらっても良いのだが、法制小委の中間まとめの主な論点は以下の5つである。

  • デジタルコンテンツ流通促進法制
  • 私的使用目的の複製の見直し
  • リバース・エンジニアリングに係る法的課題
  • 研究開発における情報利用の円滑化
  • 機器利用時・通信過程における蓄積等の取扱い

 大した方向性の出ていないコンテンツ流通促進法制に関する検討はともかく(第78回で書いたように、コンテンツ流通促進法制を検討すること自体無意味だと私は思っている。権利者不明の場合の著作物の取扱いは確かに重要だが、コンテンツ流通促進法制と称して大騒ぎをしている話とは論点がずれているだろう。)、私的使用目的の複製の見直しについて、即座にダウンロード違法化をするとは書かれていないものの、意見募集の結果をほぼ無視して大批判を浴び、その後一度もロクに議論していない、平成19年12月時点のペーパーを私的録音録画小委員会の意見募集後の論点整理(第11~12ページ参照)として固定化し、「検討の熟度に応じて段階的に最終的な取扱いを判断」すると、ダウンロード違法化を既定路線としようとしているなど相変わらず油断も隙もない。ダウンロード違法化には今なお完全に反対するという意見を私はまた出すつもりである。(去年の12月時点の話は、第39回参照。)

 また、リバース・エンジニアリングや、研究開発、機器利用時・通信過程における蓄積等の取扱いについて、権利制限を行うとされていることについては、遅きに失した感すらあり、できる限り早期に行ってもらいたいものと思うが、それぞれ、権利制限の範囲が十分かという問題がある。リバース・エンジニアリングの権利制限について、相互運用性の確保や障害の発見等の一定の目的のためのみで良いのか、研究開発について、情報解析分野のみとして良いのかと考えると、必ずしも十分ではないと私は思っているがどうだろうか。(無論、後で他の点も検討すると書いてあるのだが、一旦ある点について法改正をしてしまうと、さらに同じ点について追加の法改正をするということはまず当分有り得ないので、ここも勝負所である。是非、このパブコメには、情報系の研究者のみならず、自然科学一般・人文・社会系の研究者にも意見を出して欲しいと私は思っている。)

(2)過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会の中間整理
 やはり概要を読んでもらっても良いのだが、過去小委の中間整理の論点は、以下の4点になるだろう。

  • 多数権利者が関わる場合の利用の円滑化
  • 権利者不明の場合の利用の円滑化
  • アーカイブの円滑化
  • 保護期間延長問題

 中でも一番の大問題が、保護期間延長問題であることは間違いないが、この論点に関する限り、小委員会における完全にすれ違いの議論がほぼそのまま中間整理にも反映され、両論併記で先延ばしの記載となっている。今回は保護期間延長について即座に法改正という様子は無いが、文化庁と権利者団体を除けばほぼ否定的な結論が出そろっているこの問題について、先延ばしとされたこと自体残念であり、ここでも私は、延長に反対し、これ以上検討する必要はないとする意見を出すつもりである。

 他の点は保護期間延長問題と比べるとあまり騒がれていないが、権利者不明の場合の著作物の取扱いや、図書館における資料のデジタル化のための権利制限なども重要な問題である。

 権利者不明の場合の対応については、いまいち実現に向けた具体性に欠けるものの、A案(権利者を捜す相当な努力の後、使用)・B案(努力の後、第3者機関に使用料相当額を支払って使用)として制度的対応の案が書かれており、どちらが良いか、また別な案があるかということを考える必要があるだろう。(個人的には、余計な第3者機関などは無い方が良いと思うが、中間整理をもう少し良く読んで意見を考えるつもりである。)

 また、図書館の権利制限について、国立国会図書館における納本直後のデジタル化を法改正で認める方針とされているが、これも国会図書館のみで良いのかということがある。国会図書館はあらゆる資料の保存という特殊な使命を帯びているのは確かにその通りであるが、他の図書館も、多かれ少なかれ資料の保存を目的としていることに変わりはなく、納本直後の資料のデジタル化を認めても良いのではないだろうか。デジタル化された資料の館内閲覧やコピーサービスのルール等について、関係者間で協議し、通常の利用を妨げず著作者の正当な利益を不当に害しない形にするならなおさらである。

(図書館に関することでは、記録のための技術・媒体の急速な変化に伴う旧式化により、SPレコード、5インチフロッピーディスク、ベータビデオのように、媒体の内容を再生するために必要な機器が市場で入手困難となり、事実上閲覧が不可能となってしまう事態が生じていることから、新しい媒体に移し替えて保存する必要があるという問題点が指摘され、これについては解釈変更で対応するとしているのだが、むしろ、こうした複製すら認めて来なかった文化庁の異様に厳格な権利制限の条文解釈にこそ問題があったとするべきだろう。なお、こうしたメディア移行の問題は、まだあまり私的複製問題との絡みでは指摘されていないが、そのうち私的複製問題とも大きく絡んでくることになるだろう。)

 私的録音録画小委員会の中間整理は今回は作られていないようだが、次回の私的録音録画小委員会は10月20日に開催されるようであるので、念のため一緒に紹介しておく。

 まだしばらく出す意見の内容は考えたいと思っているが、私のパブコメは提出次第ここに載せるつもりである。

(10月14日夕方の追記:グーグルのイメージ検索が著作権侵害に当たるという判決がドイツで出され、グーグルは控訴する予定とのcnetの記事があったので、ここにリンクを張っておく。両方とも地裁レベルの話と思われ、確定している訳でもないので、これ以上の紹介はしないが、上位裁判所での確定判決が出されたらまた取り上げたいと思う。なお、この裁判で問題にしているのはイメージ検索のみのようだが、通常の記事に対するグーグル検索は合法との判決がドイツでは最高裁で確定していることを考えると、最終的な判断はまた変わってくるのではないかと個人的には思っている。

 第88回で取り上げたニュージーランドの改正著作権法について、「P2Pとかその辺のお話」で、案の定ニュージーランドでインターネットサービスプロバイダーから反対の声が上がっているとの記事が紹介されているので、興味のある方は是非リンク先ご覧頂ければと思う。

 また、「著作権皇帝」法との批判を浴びているアメリカの改正著作権法は、残念ながらブッシュ大統領の署名によって成立してしまったようである(WIREDの記事PC MAGAZINEの記事参照)ので、次は、この法案(WIREDの記事中の法案(pdf)へのリンク)についてのエントリを書きたいと思う。)

(10月20日の追記(目次4のついでに書いたことの転記):47NEWSの記事internet watchの記事ITproの記事などによると、今日10月20日の文化庁・私的録音録画小委員会で、報告の骨子案が示され、iPod課金は先送りとなったものの、録音録画のダウンロード違法化についてはしぶとく来年の法改正を目指して報告書をまとめる方針とされたようである。最終的な報告書を見るまで何とも言えないが、去年壮絶なパブコメ無視をしたあげく、今年このような重要な法改正事項を含む私的録音録画小委員会の報告書をパブコメにかけようとしないなど、相変わらず文化庁の態度は国民をバカにしているとしか思えない。文化庁がこのような方針だとすると、第119回で取り上げた法制小委員会のパブコメの重要性は否が応でも高まる。時勢上あらゆることは流動的だが、できる限りのことをして行きたいと私は思っている。(追加参考記事:ITproの記事2ITmediaの記事。))

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2007年11月19日 (月)

第26回:文化庁のパブコメは多数決か。

 今回は、パブコメに関するちょっとした余談をしよう。

 そもそも、パブコメは個別の論点に係る賛否の数を問うものではないということは、どの意見募集要項(例えば、私的録音録画小委員会の意見募集要項参照)にも書かれていることであり、答えから言うとパブコメは多数決ではない。(実際、パブコメの意図としてはその通りであろうから、私も自分の出した意見では自分なりの主張をするよう気をつけた。)

 そのため、果たして、内容(質)を無視したパブコメ動員がどこまで有効かどうかということがあるのだが、こと文化庁のパブコメに関する限り、文化庁は、過去、パブコメにおける賛否の数を民意として取り扱って来た節があるのだ。(文化庁も最近はあまりこのようなまとめをしていないとは断っておく。)

 例えば、レコードの還流防止措置などが問題となった、平成15年度の著作権分科会(第12回)で公表された意見募集の結果の資料は、リンク先を見てもらえれば分かるように、単に以下のように賛否の数をまとめているひどいものである

「書籍・雑誌等の貸与に係る暫定措置の廃止」について、賛成1,211、反対73、その他29
「日本販売禁止レコードの還流防止措置」について、 賛成676、反対293、その他68
「保護期間の延長」について、賛成2、反対16、その他1

 結果、「書籍・雑誌等の貸与に係る暫定措置」は廃止され、「日本販売禁止レコードの還流防止措置」も導入されている。
 この分科会中でも、委員から「内容では,賛成意見において,事業者団体が傘下の会員などに呼びかけて,そのコピーに署名して送っているというような意見もかなりあったが,賛否両論とも,それぞれの個人の考えをしっかり記述している意見が多かった。」と言われているくらいで、この時は数字から見ても明らかに権利者団体側に動員がかかっていたものと思われる

 また、iPod課金が問題となった平成17年度の法制問題小委員会(第8回)では、当時の著作権課長が、

「私的録音録画補償金の見直しにつきましては、若干重複いたしますが、167件ほどになりますけれども、非常に多くの意見が寄せられました。現行制度自体につきましては、現行制度は制度の周知も図られていないし、補償金の分配等も不透明であるとの否定的なものが16件ございました。
 また、ハードディスク内蔵型録音機器等の追加指定につきましては、追加指定すべきというものが17件、追加指定すべきでないというものが80件ございました。追加指定すべきというものは、MDとの公平性、あるいは個別課金はユーザーの経済的負担がかえって増加する、完全なDRMは存在しないというような意見でございました。追加指定すべきでない80件の内訳といたしましては、二重課金に当たるのではないか、ハードディスク内蔵型は汎用機器である、DRMによる個別課金にすべきという意見のほか、ハードディスク内蔵型はコンピュータにコピーできないように実際なっているのではないか、こうした意見もございました。」

と報告している。このパブコメのおかげかどうかはよく分からないが、結局この時はiPod課金はされていない。
 なお、その次の小委員会(第9回)では、全ての意見をまとめた上で、やはり当時の著作権課長が「ここで件数を言うこと自体もはばかられる状況でもございます」と言っているので、件数をあげつらうことはパブコメの意図から考えて問題があると、この時にようやく文化庁も認識したのであろうと思われる。

 その後はあまりこのようなまとめをしてきていないが、このような前例がある以上、今回の私的録音録画問題(ダウンロード違法化やiPod課金など)等についても、文化庁がまた同じように賛否の数でまとめをしてくることも想定しておかなければならない。今のところ、権利者側のパブコメ動員と文化庁の賛否集計の可能性を否定し切れない以上、MIAUネットユーザー動員活動も誤ったやり方とすることはできないだろう。

 まとめをどうするかは文化庁次第のところもあるが、個人のパブコメについて数のみを集計して、そこに含まれている新たな論点を文化庁で勝手に握りつぶしたりすることがあってはならない。ネットでも大々的な話題となったのだ、数はどうあれ、パブコメ全体を見れば、そこには自ずと本当の民意が現れて来るだろう。
 いかに提出された意見の数が多かろうと、その些細な論点でも握りつぶすことなく、次回の私的録音録画小委員会までに文化庁は全てのパブコメをきちんとまとてくれるものと私は期待する。このような丁寧な整理こそ、行政府に本来求められている機能なのだから。

 ついでに、ここで、行政手続法に基づく意見募集と任意の意見募集の違いの話もしておこう。
 行政手続法には、意見公募手続について、以下のような規定がある。

(意見公募手続)
第39条  命令等制定機関は、命令等を定めようとする場合には、当該命令等の案(命令等で定めようとする内容を示すものをいう。以下同じ。)及びこれに関連する資料をあらかじめ公示し、意見(情報を含む。以下同じ。)の提出先及び意見の提出のための期間(以下「意見提出期間」という。)を定めて広く一般の意見を求めなければならない。
(中略)

(提出意見の考慮)
第42条  命令等制定機関は、意見公募手続を実施して命令等を定める場合には、意見提出期間内に当該命令等制定機関に対し提出された当該命令等の案についての意見(以下「提出意見」という。)を十分に考慮しなければならない。

(結果の公示等)
第43条  命令等制定機関は、意見公募手続を実施して命令等を定めた場合には、当該命令等の公布(公布をしないものにあっては、公にする行為。第五項において同じ。)と同時期に、次に掲げる事項を公示しなければならない。
一  命令等の題名
二  命令等の案の公示の日
三  提出意見(提出意見がなかった場合にあっては、その旨)
四  提出意見を考慮した結果(意見公募手続を実施した命令等の案と定めた命令等との差異を含む。)及びその理由
(後略)

 しかし、電子政府の窓口からたどっていけば分かるように、今回の文化庁のパブリックコメントは任意の意見募集であって、行政手続法に基づく意見募集ではない

 これは、電子政府の用語集にもある通り、「行政手続法に規定する意見公募手続とは、行政機関が命令等(政令、省令など)を制定するに当たって、事前に命令等の案を示し、その案について原則として30日以上の意見提出期間を定めて、広く一般から意見や情報を募集する手続のこと」であるため、政令や省令を超える法改正に関する意見募集は、当然のことながら、行政手続法に基づきようがないからである。
 要するに、厳密なことを言えば、本来立法権限をもたない行政府が法改正について国民の意見を問うこと自体がおかしいのだ。このような法改正に関する行政府の意見募集という手続き自体、日本における行政と立法の役割分担の曖昧さからもたらされた歪んだ手続きである。このことは、もっと国民に広く知られて良いことに違いない。(なお、これを無くすためには、あらゆる法改正の検討を直接出来るくらいに立法府のキャパシティを高めた上で、内閣法を改正し、行政府からの法案の国会提出(内閣立法)を禁止しなければならない。)

 さて次は、少し河岸を変えて、知財事務局での検討について書いてみようかと思っている。

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2007年11月14日 (水)

第25回:文化審議会著作権分科会法制問題小委員会提出パブコメ

 こちらは、私的録音録画小委員会ほど問題はないと思うため、簡単に書いたが、文化審議会・著作権分科会・法制問題小委員会の中間まとめへの意見を提出したので、ここに載せておこう。

1.個人/団体の別:個人
2.氏名:兎園
3.住所:(略)
4.連絡先(電話番号、電子メールアドレスなど):
5.該当ページおよび項目名
(1)「18ページ~、第2節 2 親告罪の範囲の見直しについて」について
(2)「45ページ~、第4節 検索エンジンの法制上の課題について」について
(3)「71ページ~、第6節 いわゆる「間接侵害」に係る課題等について」について

6.御意見
(1)「18ページ~、第2節 2 親告罪の範囲の見直しについて」について
 著作権侵害を非親告罪化することに反対する。
(理由)
 著作権法が、極めて公益性の強い場合を除いて、全て非親告罪とされているのは、中間整理に書かれている通り、「著作権、著作者人格権、出版権、実演家人格権及び著作隣接権という私権であって、その侵害について刑事責任を追及するかどうかは被害者である権利者の判断に委ねることが適当であり、被害者が不問に付することを希望しているときまで国家が主体的に処罰を行うことが不適切であるため」であり、人格権の保護という色彩が、著作権においては極めて強いためである。
 技術の進歩により、著作権者の主体がかえって会社から個人へ移りつつあること、インターネットの普及により、個人の著作が爆発的に増えつつあることを考えると、今後も著作権から人格権の保護という色彩が払拭されることはまずもってあり得ず、著作権のこのような整理が動かされることはあってはならないと考える。
 世界的に見ても類を見ないほど重い罰則との関係もあり、いわゆる著作権侵害罪の非親告罪化は今後も絶対になされるべきではない。

(2)「45ページ~、第4節 検索エンジンの法制上の課題について」について
 検索エンジンに関する権利制限を設けることに賛成する。
(理由)
 このような権利制限は、検索エンジンの公益性、すなわちインターネットにおける情報アクセスの社会的重要性を認める画期的なものである。
 このような権利制限を設けた上で、インターネットにおける様々な著作物の公正な利用形態に対する権利制限について、さらに来年以降も検討がなされることを期待する。

(3)「71ページ~、第6節 いわゆる「間接侵害」に係る課題等について」について
 著作権法に間接侵害の規定を設けることに反対する。
(理由)
 インターネットの登場以降、間接侵害的な著作権侵害について続々と提起された訴訟の判決の中には、侵害主体性等の認定について疑義があるものも多いと考える。
 今後も様々なサービス・機器が現れるであろうことを考えると、一般的な間接侵害規定を設けることは、差止請求の対象を不明確なものとし、いたずらに訴訟の頻発を招くことにつながり、著作物の公正な利用を阻害することになるのみと考えられるため、このような間接侵害の規定を設けることに反対する。
 なお、どうしても法律屋の自己満足として法改正を行いたいということであれば、一般的な間接侵害規定を設けることを必要とする立法事実がないことから、カラオケ等、既に最高裁で判例が確定している業態のみが対象となるように、その規定は極めて限定的なものとなされるべきである。

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2007年11月10日 (土)

第23回:権利者団体の公開質問状

 昨日、権利者団体がJEITAに公開質問状を出したというニュース(ITproの記事権利者団体の発表資料質問状の全文)があった。

 どこから突っ込んで良いのかよく分からないが、権利者団体がダビング10+録画補償金でユーザー・消費者が納得していると勝手に決めつけているのはいかがなものか。そもそも総務省の答申には、録画補償金の話は一言も出てきていないので、こんなことが総務省の審議会で合意された訳でもあるまい。そのパブコメの結果も発表されておらず、ダビング10を本当に民意が望んでいるかすらよく分からないのだ。

 一人のユーザーの意思表示がどれほど意味があるのかは分からないが、少なくとも私は、どれほどごまかしの機能が付いていようとダビング10録画機を買うつもりは全くないとはっきり言っておこう。録画補償金が上積みされるというならなおさらである。ほとんど欠陥商品と言っても良いデタラメなダビング10録画機(どうしてデタラメなのかは以前に書いた。しかもこのデタラメさはメーカーの技術者がどんなに頑張ろうと回避不能である。)を録画補償金を維持して売るくらいなら、まだ現行のコピーワンスを維持したまま、まず録画補償金を廃止した方が、まだしも混乱を回避できるだろう。

 そうなるとテレビも見なくなるであろうし、ダウンロードも違法化されるとなると、私が取る行動は、インターネットで自分が合法だと思うコンテンツのみをメインで楽しむということになるだろう。しかし、私のように行動する者が多いとしたら、テレビというメディアの衰退がさらに加速するだけのことである。その時一番困るのは、テレビというメディアに依存してコンテンツと機器を売ってきた、既存の権利者団体に所属する有力な権利者や、JEITAに所属する有力メーカーだと思うのだがどうだろうか。

 テレビが完全に衰退した後で、彼らが頭を下げて、インターネットという流通チャネルに参入しようとしても、既にそこには視聴のために特別な機器を必要としない、ユーザーが自ら作り出したコンテンツであふれており、彼らにつけいる隙は無くなっているに違いない。このような未来は、個人的には時間の問題だとは思うが、老婆心ながら、権利者団体ももう少し自分のことを考えて、テレビというコンテンツの流通チャネルを維持するにはどうしたら良いのかを考えた方が良いのではないかと思えてしまう。

 私的複製がどうこうとか、対価云々の前に、何をどう言ったところで、コンテンツはまずユーザーに見られ、聞かれなければどうしようもないのだ。法律だの契約だの技術だの言う前に、本当にユーザーが欲しいと思う機器とコンテンツを作って欲しいと私は思う。ほぼ断言できるが、それさえ作っていれば、制度なんてものは必ず後からついてくる。このように法律と契約と技術のそもそも論で彼らが戦っていること自体、魅力的な機器とコンテンツを作れていないということを自ら告白しているに等しいと私は思っている。

 私的録音録画補償金制度に関して妥協点を探る努力はまだまだこれからの話であろう。法改正の話がまとまらなければ、自動的に今の録画補償金が維持されるので、権利者団体はそれをねらっているのかも知れないが。

 そうは言っても、折角の公開質問状なので、メーカーにも是非率直なところを公開回答状で示してもらいたいと思う。

 本当は、ユーザー・消費者離れの話として、今回はレンタルCDのことを書きたかったのだが、それはまた次回に。

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2007年11月 9日 (金)

第21回:文化審議会著作権分科会私的録音録画小委員会提出パブコメその3

 最後に、補償金制度に関するところから、終わりまで。この意見の中にも少しは書いたことも含め、次回こそ、レンタルCD問題について調べたことをもう少し詳しく書いてみたいと思っている。

(12)「110ページ~、第7章第3節 補償の必要性について」に対する意見:
 本来行政府に求めるべきことではないが、私が補償の必要性に関する法改正事項として求めるのは以下の事項であり、これ以外の方向性に反対する
1.以下で引用する第10小委員会の報告書でも、はっきりと記載されているように、そもそも著作権法の様な私法が私的領域に踏み込むこと自体がおかしいこと等から、元々私的録音・録画は自由かつ無償とされていたのである。今現在、ないがしろにされているこの原則を再び法文上明確にすること
2.そして、それに加えて、この第10小委員会の報告書の記載では曖昧であるが、補償金については、私的録音録画を自由にすることの代償であることを法文上明確にすること。すなわち、私的録音録画の自由を制限するDRM(コピーワンスやダビング10ほどに厳しいDRM)がけられている場合は、補償措置が不要となることを法文上明確にすること。

 この項目についても削除あるいは修正されるべき点について、以下に指摘して行く。

・110ページの制度導入時の整理について、最終報告においては、第10小委員会の報告書からの引用は、より適切な以下のものに差し替えるべきである。
「第4章 報酬請求権制度の在り方
 私的録音・録画問題とは、権利の保護と著作物等の利用との間の調整をいかに行うか、言い換えれば、現行第30条の規定している私的録音・録画は自由かつ無償という秩序を見直すかどうかという問題である。
(中略)
 報酬請求権制度を我が国の著作権制度の上でどのように位置付けるかという問題については、私的録音・録画は、従来どおり権利者の許諾を得ることなく、自由(すなわち現行第30条の規定は維持)としつつも、一定の補償(報酬)を権利者に得さしめることによって、ユーザーと権利者の利益の調整を図ろうとするものであり、私的録音・録画を自由とする代償として、つまり、権利者の有する複製権を制限する代わりに一種の補償措置を講ずるものであると位置付けることが適当である。」

・111ページの注釈で、タイムシフトは消去されなければならないことが最高裁判例で判示されたと記載されているが、私には確認できなかった。明確に記載を引用するか、あるいは、この注釈は削除されるべきである。

・112ページで、第10小委員会での基本的考え方を勝手に決めつけているが、これも正しくない。このような記載は元々私的複製の自由・無償の原則があったことを忘れている。上の引用でも分かるように、第10小委員会の報告書には、私的録音録画を自由とする代償ということもはっきりと書かれている。

・112ページで、単に録音録画機器が普及したことのみを強調しているが、これは一方的な見方である。技術の発展を受けて、既に複製の主導権がユーザーに移りつつある、コンテンツの利便性すなわち複製の利便性となってしまっている、情報アクセスすなわち一時的固定あるいは複製となってしまっている状況こそ真に考慮されるべきで、このような状況下で著作物を提供することの意味をもう一度とらえ直すべきである。

・また、112ページで、もう一つの考え方を、新たな権利の付与としているが、元々原則は私的複製は自由かつ無償であったのであり、これを新たな権利の付与と称することは妥当ではない。このような誤解を招く語は、最終報告からは削除されるべきである。

・115ページで、「ただし、著作権保護技術には、私的録音録画自体を厳しく制限するというよりは、通常の利用者が第30条の範囲内で必要とする私的録音録画の機会は確保しつつ、デジタル録音録画された高品質の複製物が私的領域外へ流出するのことを抑制するものという捉え方も可能なものもある。このような捉え方は、現行法でも複製物を使用しない者の複製を禁止し、私的複製に作成した複製物の頒布を目的外使用として原則禁止としていることとも合致していると言える。」と記載されているが、コピーワンスやダビング10など、明らかに私的録音録画自体を厳しく制限しているものもあり、このような捉え方を一方的に現行法と合致しているとすることは妥当ではない。この文章は削除されるべきである。

・118ページに、「一人の利用者の行う私的録音録画の全体に着目すれば、経済的不利益を生じさせていることについてはおおむね共通理解があると考えられる。」ということが記載されているが、各複製形態毎に経済的影響の評価をして、補償の要否を決めるべきとされているときに、このような全体的な記述を行うことは乱暴である。共通理解があるとすることも疑わしい。
 また、その評価は事実上困難であることなどから、私的録音録画からの利益は否定できないかもしれないが、権利者が被る経済的不利益を上回るものではないという意見が大勢であったとも記載されているが、評価が困難であるにもかかわらず、不利益を上回るものでないとするとは理解不能である。また、なぜ不利益の方のみを評価が困難でないと勝手に決めつけられるのかも不明である。困難なことは分かるが、利益不利益の両方をきちんと評価することが今まさに必要とされているのであり、この評価が不能であるとするなら、私的複製の元々の原則に立ち返り、補償は不要とされるべきである。
 したがって、この118ページの(2)の記載は全て削除されるべきである。

・119ページの受忍限度と補償の必要性について、権利者の受忍限度のみを補償の必要性のクライテリアとすることは、そもそも公平の原則に反し、真の国民視点に立った検討を不可能にする、一方的かつ独善的な整理である。
 また、プレイスシフトやタイムシフトについては補償の必要性は無い。このことは額の算定ではなく、制度の必要性・補償金の対象とするべきかどうかというところで、まず判断されるべきことである。
 したがって、この119ページの(3)の記載は全て削除されるべきである。

・120ページで、「個々の権利者の意思とは関わりなく、厳しい制限が課された著作権保護技術が導入されることが一般化されることを想定しているが、現実には、社会全体がこのような状況になる可能性は少ないのではないかと考えられる。」と記載されているが、既に、地上デジタル放送については、コピーワンス制限がかかっており、ダビング10になったとしても厳しい制限がかかっていることに変わりはない。この記載は、特に、地上デジタル放送については、コピーワンスのような厳しいコピー制限が課され、一般化していると修正されるべきである。

・120ページで、個々の権利者が選択権を行使できる場合についての記載があるが、既にネットではこのような状況となっていることが明記されるべきである。ネットにおいて権利者が自らDRMつきあるいはDRMなしのコンテンツの配信事業を行うことを妨げる要因は何一つない。

・121ページで、「CCCD(コピーコントロールCD)の例のように、厳しい利用制限の選択肢があるとしても、市場がこの方法を受け入れなければ、そうした選択ができないこと、また著作物等の提供者の優越的地位により、権利者に自由な選択権が確保されない場合も想定されるので、権利者の意思にのみ補償の要否を委ねるのは問題である。」という意見が記載されているが、CCCDを市場が受け入れなかったのは、コンテンツの利便性すなわち複製の利便性となってしまっているために、CDの代金がほぼ私的複製の対価ととらえられていることの証左にすぎない。また、著作物の提供者の優先的地位の乱用は、独禁法で解決されるべき問題であって、補償金の積み増しで解決されるべき問題ではなく、このような全く妥当でない記載は、削除されるべきである。

・122ページの、「仮に現状では著作権保護技術と補償金制度が併存する状況にあったとしても、著作権保護技術の影響度を補償金額に反映させることや、場合によっては対象機器等の特定に反映することについては、おおむね異論のないものと思われる。」という記載も、明らかに補償金制度ありきの文章であり、予断を与えるこのような文章は削除されるべきである。

(13)「123ページ~、第7章第4節 補償措置の方法について」に対する意見:
 (12)で書いたように、そもそも制度の廃止も含めて検討されるとされている中、補償の必要性についてすら明確に整理できていないところで、補償措置の方法について検討することは妥当でない。補償の必要性についてきちんと明確に整理できるまでは、現行制度の方法を変更するべきではない

 本来ならば、最終報告に当たっては、これ以降の全ての記載を削除するべきであると考えるが、特に削除されるべき事実誤認に基づく記載、あるいは不合理な記載を以下に指摘しておく。

・123ページで、機器媒体への課金することを補償金制度を採用している全ての国と同様の制度としているが、上に書いた欧州消費者組合の意見書の第3ページに書かれているように、ノルウェーでは税金により著作権者への補償を行っており、このような記載は修正されるべきである。

・124ページで、「録音録画源に注目すると、私的録音録画の可能性を一切無視して補償金を徴収することになることなど、制度の不合理さが目立つ制度にならざるをえず、仮に補償金制度を導入するとすれば、アの制度が適当であるとする意見が大勢であった。」としているが、録音録画機器に課金するとしても、iPod含め汎用録音録画機器に対象を拡大するとすれば、補償が必要な私的録音録画の可能性を無視して補償金を徴収することになることは全く同じことになるので、このような記載は妥当でない。削除されるべきと思われるが、強いて言うなら、この記載は「仮に補償金制度を維持するとすれば、分離型専用機器を対象とする現行の制度を維持することが適当であるとする意見が大勢であった。」とするべきである。

・125ページで、「民間同士の契約に任せても、利用者から料金等を徴収している場合は、録音録画機器を有しない人も事実上その経費を負担することになること、第30条が改正され無許諾無償の録音録画が再び認められるようになったのに事実上録音録画の対価が徴収されることについて、利用者の納得が得られるかどうか疑問が残る。」としているが、これは法律屋の論理であって、一般国民のコモンセンスからは乖離している。
 例えば、CDを買うとき、私的複製も含めて音楽を個人的に楽しむ権利を買っていると普通のユーザーは認識しているのであり、単なるプラスチックコートのアルミ板を買っているなどと思っている一般ユーザーは恐らく一人もいないということを、法律屋はもっと認識するべきである。解釈によっても良いし、立法によっても良いが、このような本当のコモンセンスと法律を合わせることが、本来の法律屋の職務であろう。このような理屈は本末転倒も良いところである。

・125ページで、コンテンツホルダーである以外の権利者について述べているが、そもそもコンテンツホルダー以外の権利者とは一体何者なのか不明である。また、権利を持っている者以外の者に対して何か補償するべきことがあるというのも理解不能である。

(14)「126ページ~、第7章第5節 私的録音録画補償金制度のあり方について」に対する意見:
 (12)で書いたように、そもそも制度の廃止も含めて検討されるとされている中、補償の必要性についてすら明確に整理できていないところで、制度設計について検討することは妥当でない。補償の必要性についてきちんと明確に整理できるまでは、現行制度の設計を変更するべきではない。
 敢えてさらに言っておくと、私は、ユーザーとして、私的録音録画補償金は、私的録音録画の自由が確保された場合の私的録音録画により生じる権利者の経済的不利益の補償であるという立場に立つ。私的録音録画の自由が制限される場合、あるいは、私的録音録画の自由が制限されずとも一般ユーザーの利用形態を考えたときに権利者に大きな経済的不利益が生じていないと考えられる場合は、補償は不要という立場である
 したがって、対象機器・媒体について、その機器・媒体における私的録音録画の自由度、及び、一般ユーザーの利用形態を考えずに、単にその機器・媒体が主に私的録音録画に使われることをもって対象を拡大することに反対する
 文化庁が、この中間整理においてこのようなユーザー無視の姿勢を取る以上、文化庁長官が勝手に機器・媒体の範囲を決められるような、文化庁の横暴を許す形への法令の変更にも反対する
 また、そもそも補償金の根拠があやふやであるため、今の制度すら、対象機器・媒体及び補償金額がユーザーから見て納得の行かない形で、既存の利権団体同士の談合のみで決まっている。今後も制度が維持されるのであれば、仕組みが見直されたとしてもこのようなそもそもの制度の矛盾が無くなるとは思えず、どのような形であれ補償金制度がある限り、返還制度を無くすことには絶対反対である
 すなわち、一ユーザー・一消費者・一国民として、よって立つべき前提を無視した、このような方向性には断固として反対する。
 また、現在、日本では、コンテンツ産業振興を名目に少なくない税金が投入されている。この国費をコンテンツ業界はもらって当然のように考えているのかも知れないが、これは、大きくとらえれば、著作権業界のために本当に薄く広く国民に補償金が課されている状況であることに他ならない。このような、特定の業界に対する税金投入の意味、今後の国費による補助事業のあり方も含め、より大きな観点から、私的録音録画補償金問題は考え直されるべきであると私は考える。
 また、念のため、保護期間の延長問題と同じく、補償金制度についてもEUで統一するとしたら、現実的には保護レベルの高い方に合わせるしかないと思われることも指摘しておく。したがって、ヨーロッパにおける補償金拡大の動きを、EU統一の大きな流れを無視して、補償金の対象拡大だけをとらえて世界動向だと断じることは明らかな間違いである。

 本来ならば、最終報告に当たっては、ここの全ての記載を削除するべきであると考えるが、特に削除されるべき事実誤認に基づく記載、あるいは恣意的かつ不合理な記載を以下に指摘しておく。

・129ページに、専用記録媒体(例えば録音用CD-R)が、政令指定の対象になっていない機器(例えばパソコン)でも使えることを問題にしているが、これがどうして問題になるのかよく分からない。あくまでパソコンは汎用性から対象外とされているのであって、これを補償金の対象範囲内とするべきであるかのごとき記載は絶対に削除されるべきである。媒体の汎用性に関する記載についても同様である。

・130ページに、「現行制度の対象となっている分離型専用機器と専用記録媒体については、特に対象から除外する理由はなく従来どおり対象にすべきであることでおおむねの了承を得た。」と記載されているが、そもそも補償の必要性が問われている中で、従来通りとすることでおおむねの了承が得られる訳がない。最終報告をまとめるにあたっては、この記載は必ず削除されるべきである。特に、コピーワンスあるいはダビング10といった極めて厳しいコピー制限が維持されるのであれば、録画補償金はそもそも無くすべきである。

・130~131ページに、「私的録音録画を主たる用途としている機器である限りは、特に分離型機器と一体型機器を区別する必要はないので、対象にすべきであるとする意見が大勢であった。」と書かれているが、そもそも補償の必要性が問われている中で、このような対象機器を拡大する意見が大勢である訳がない。最終報告をまとめるにあたっては、この記載は必ず削除されるべきである。
 同じく、「例えば最近の携帯用オーディオ・レコーダーの中には、附属機能かどうかは別にして、録音録画機能以外に静止画・文書等の記録やゲームのサポート機能等の機能を有しているものがある。このような機器については、製造業者の販売戦略、利用の実態等から少なくとも現状においてはほとんどのものが録音録画を主たる用途としていると考えられるので、対象機器に加えて差し支えないと考えられるとの意見があった。」との記載も、そもそも汎用性まで含めてこのような整理が可能であるかどうかすら分からない中では、全く妥当でない意見であり、必ず削除されるべきである。
 特に、この整理は、ごく普通の一般ユーザーはiPodを分が購入したCDのプレースシフトとiTunesからの配信の視聴用に用いていると考えられ、このiPodから他人への音楽の拡散が考えられない以上、このような機器に補償金を課すことに国民の納得感がそもそも得られないということの理解が完全に欠けている。このような機器に課す場合は、国民が真に納得できる根拠を示すべきである。単に私的録音録画がなされているからなどという理由はお話にならない。

・131ページで、パソコンについて意見の一致に至っていないとしながら、あたかも、パソコンに補償金がかけられるべきということを前提にした意見のみが載っており、全く恣意的かつ独善的な意見のまとめがなされている。これらの意見は全て削除されるべきである。

・133ページで、平成18年1月の報告書から、政令方式の問題点をあげているが、この報告書では同時に、法的安定性の観点から、現行の政令指定方式を変えるべきでないともされているのであり、仮にこの部分の記載を残すのであれば、このような報告書の整理もきちんと書かれるべきである。
 また、方向性の中であげられている、評価機関方式について、関係者の意見を聞いて、文化庁がデタラメかつ勝手に対象機器と媒体の範囲を決めると言っているようにしか見えず、この中間整理において示されている独善的な文化庁の姿勢を考えても、文化庁に補償金の対象範囲と金額の決定権限をゆだねるような法改正には全く賛同できない。
 こんなことが書かれているのでは、何のために私的録音録画小委員会を作ったのかすらよく分からない。そもそも、この対象範囲と金額を例え時間がかかってもきちんと関係者間で決めるために、わざわざ著作権分科会の下に私的録音録画小委員会を設置したのではなかったのか。
 なお、今後私的録音録画と補償金問題を継続的に検討するために新たな小委員会を文化審議会に設置するにしても、この小委員会の構成は、より公平を期して、消費者・ユーザー代表を3分の1、メーカー代表を3分の1、権利者代表を3分の1とするべきである。権利者が不利という声があがるのかも知れないが、この程度の数の有識者を納得されられなくて、国民の理解が得られると思うことなど片腹痛い。真に国民の理解が得られない法改正などされるべきではない。(学者を入れて、全て4分の1ずつとしても良いが、この中間整理に対して国民視点に立った真の政策提言が出来なかった法学者を入れる必要はない。ただし、現委員長の中山信弘先生だけは、その卓越した見識から留任されることを強く希望する。)
 さらに言うなら、対象機器・媒体の範囲・補償金額等の決定は必ず関係省庁全ての了解を必要とするべきである。

・135~137ページにかけて、メーカーを負担者とし、返還制度を無くしても公平性が保たれる可能性があることなどが書かれているが、このような整理は世迷い言も良いところである。今後も補償金制度を維持した場合、補償を必要とする私的録音録画をしてないユーザーがますます出てくるだろうと予想されるにもかかわらず、返還制度をなくして公平性が保たれるとする理屈は常識的に考えてあり得ない。現行制度でも、補償金の妥当な算定がなされているとは言い難く、返還制度はユーザー・消費者にとって絶対必要なセーフハーバーの一つである。
 また、同じ中間整理に書かれていることであるが、フランスではメーカーが負担者とされながら、補償金の返還制度も存在しており、このような制度設計が考えられないとする理由もなく、メーカー負担すなわち返還制度なしとすること自体、極めて危険な論理のすり替えである。

・138ページで、「契約に基づく私的録音録画や、プレイスシフト、タイムシフトなどの要素は補償金額の決定にあたって反映させるべきであるとすることについてもおおむね異論はなかった。」と記載されているが、これらの複製はそもそも補償の必要がないものであって、反映させるべきところは補償金額ではなく、補償の必要性、あるいは、機器・媒体を補償金の対象とするか否かというところである。そもそも補償の必要性が問われている中、このようなことに異論がないとすることは妥当ではなく、最終報告において、この記載は必ず削除されるべきである。
 金額に関することについても、評価機関での審議の上文化庁が勝手に決められるようにすることなど論外である。

・139~142ページについて、管理協会を一つにすることには賛成である。特に二つも天下り先の協会を用意することはない。その方が事務経費も減るはずである。
 また、最近のUGC(User Created Contents)の勃興などを考えても、今後、クリエイティビティの中心がますますユーザーに移っていき、権利者の捕捉はますます困難になっていくものと思われる。そのため、補償金制度が維持されるとしても、その補償金は全額全額違法コピー対策やコンテンツ産業振興などの権利者全体を利する事業に使われるべきであると考える。
 また、制度が維持される場合は、より広報が行われるべきであることにも異論はない。

(15)「143ページ~、参考資料1~3」に対する意見:
 (5)~(8)で書いたように、私的複製規定の国際比較が不十分であり、国の選択に恣意性が見られるため、この参考資料についても、最終報告において修正することを求める。
 また、ベータマックス判決の少数意見はあくまで少数意見に過ぎず、これを特に引用することで予断を与える可能性があるため、これは削除されるべきである。

(16)報告書全体に対する意見:
 上に書いたように、この中間整理は、一方当事者の恣意的な調査しか引用しておらず、国際的な著作権法の比較も不十分であり、検討結果についても整合性・合理性を全く欠いており、法改正の根拠としては全く不十分かつデタラメなものである。このような天下り役人の妄想ペーパーで法改正を行うことなどあり得ない。
 本来、公平であるべき審議会の運営をねじ曲げ、癒着業界のためにのみ報告書を取りまとめた文化庁の罪は重い。
 文化庁あるいは文部科学省にあっては、このような審議会運営について猛省した上で、真に公平かつ妥当な国民視点に基づく検討が行われるよう、その審議会運営の正常化を真摯に行うことを、私は一国民として強く求める
 なお、文化庁あるいは文部科学省がこのような正常化が不可能であるとするなら、これは、行政府が特定業界との癒着を断ち切ることが不可能であると告白したに等しく、私は一国民として、行政府におけるこのような明らかに国民視点を欠いた検討を凍結し、今後一切の著作権の法改正の検討を直接立法府で行うべきであると立法府に求めていくことをここに付言しておく。

 最後にまとめとして、私的複製と補償金制度に関する今後の法改正において、私が一国民として強く求めることを以下にあげておく。

1.そもそも、著作権法の様な私法が私的領域に踏み込むこと自体がおかしいのであり、私的領域での複製は原則自由かつ無償であることを法文上明確にすること。また、刑事罰の有無に関わらず、外形的に違法性を判別することの出来ない形態の複製をいたずらに違法とすることは社会的混乱を招くのみであり、厳に戒められるべきこと

2.特に、補償金については、これが私的録音録画を自由にすることの代償であることを法文上明確にすること。すなわち、私的録音録画の自由を制限するDRM(コピーワンスやダビング10ほどに厳しいDRM)がかけられている場合は、補償措置が不要となることを法文上明確にすること。

3.また、タイムシフト、プレースシフト等は、外形的に複製がなされているにせよ、既に一度合法的に入手した著作物を自ら楽しむために移しているに過ぎず、このような態様の複製について補償は不要であることを法文上明確にすること。実質権利者が30条の範囲内での複製を積極的に認めているに等しい、レンタルCDやネット配信、有料放送からの複製もこれに準じ、補償が不要であることを明確にすること。

4.私的録音録画の自由の確保を法文上明確化するとした上で、私的録音録画を自由とすることによって、私的複製の範囲の私的録音録画によってどれほどの実害が著作権者に発生するのかについてのきちんとした調査を行うこと。
 この実害の算定にあたっては、補償の不必要な私的複製の形態や著作権者に損害を与えない私的複製の形態があることも考慮に入れ、私的録音録画の著作権者に与える経済的効果を丁寧に算出すること。単に私的録音録画の量のみを問題とすることなど論外であり、その算定に当たっては入念な検証を行うこと。

5.この算出された実害に基づいて補償金の課金の対象範囲と金額が決められること。特に、その決定にあたっては、コンテンツ産業振興として使われる税金も補償金の一種ととらえられることを念頭に置くこと。この場合でも、将来の権利者団体による際限の無い補償金要求を無くすため、対象範囲と金額が明確に法律レベルで確定されること。あらゆる私的録音録画について無制限の補償金要求権を権利者団体に与えることは、ドイツ等の状況を見ても、社会的混乱を招くのみであり、ユーザー・消費者・国民にとってきちんとセーフハーバーとして機能する範囲・金額の確定を行うこと。
 あるいは、実害が算出できないのであれば、原則にのっとり、私的録音録画補償金制度は廃止されること。

6.集められた補償金は、権利者の分配に使用されることなく、全額違法コピー対策やコンテンツ産業振興などの権利者全体を利する事業へ使用されること。

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第20回:文化審議会著作権分科会私的録音録画小委員会提出パブコメその2

 次に、基本的視点と30条の範囲論の部分について書いたことは以下の通り。

(10)「97ページ~、第7章第1節 私的録音録画の検討にあたっての基本的視点について」に対する意見:
 文化審議会著作権分科会の過去の検討の結果(平成18年1月の報告書の52~55ページ)について、恣意的な省略をすることなく、きちんと抜粋を行うべきである。
 全て指摘することはしないが、特に、以下の部分の省略などに強い恣意性が感じられるので、特に注意を促しておく。
「ア 著作権分科会が示した各検討事項について
②現在対象となっていない,パソコン内蔵・外付けのハードディスクドライブ,データ用CD-R/RW等のいわゆる汎用機器・記録媒体の取扱いに関して,実態を踏まえて検討する。 (中略)
・この点,汎用機器等については,以下のような理由から,補償金の対象とすべきでないとする意見が多数であった。
(i)録音や録画を行わない購入者からも強制的に一律に課金することになり,不適切な制度となる。また,補償金返還制度も機能しづらい。
(ⅱ)課金対象を無制限に拡大することにつながる。
(ⅲ)実態として,他人の著作物の録音・録画が利用の相当割合を占めるとは考えにくい。
(ⅳ)現行の補償金制度の問題点を増幅させる結果を招く。

③現行の対象機器・記録媒体の政令による個別指定という方式に関して,法技術的観点等から見直しが可能かどうか検討する。
(中略)
・しかし,法的安定性,明確性の観点から,現行の制度の下では,現行の方式を変更すべきではない。
(中略)

イ 私的録音録画補償金制度の課題について
(ア)私的録音・録画についての抜本的な見直し
(中略)
・なお,検討に当たっては,補償金制度に対し,本小委員会において指摘された点や以下の点等について十分留意すべきである。
(中略)
(ⅱ)また「ユーザー」の視点を重視し,提案されるべき将来あるべき姿は,ユーザーにとって利用しづらいものとならず,かつ納得のいく価格構造になるよう留意する必要があるとともに,ユーザーのプライバシー保護にも十分留意しなければならない。(後略) 」

(11)「100ページ~、第7章第2節 著作権法第30条の見直しについて」に対する意見:
 立法によって、違法録音録画物や違法サイトからの私的録音録画を30条の範囲から明確に除外することに反対する
 適法配信事業者から入手した著作物からの私的録音録画を30条の範囲から除外することにも反対する。

 これらの結論は、以下に指摘するように、整合性の取れていない不合理な整理に基づく結論であり、全く支持することが出来ない。また、以下で指摘する部分の記載は、最終報告においては、全て削除あるいは修正されるべきである。

・101ページからの私的録音録画の実態について、違法録音録画物や違法サイトからの私的録音録画について、「正規商品等の流通や適法ネット配信等を阻害している実態が報告された」と記載されているが、(3)で書いたようにこの調査報告は全く取るに足らない。同じく、他人から借りた音楽CDからの私的録音の実態報告についても、果たして過去の調査と比較できるのかどうか極めて疑わしい。適法配信についても、インディーズによる無料配信やプロモのための無料配信、あるいは、コピーフリー・黙示の許諾等により配信されていると考えられるもののことを全く考慮に入れておらず、真の実態を把握しているとは言い難い。
 また、レンタルCDについても、平成19年の第3回私的録音録画小委員会(議事録http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/bunka/gijiroku/020/07051108.htmを参照のこと。)において委員から明確に指摘されていること、すなわち、レンタル事業者が、「私的録音補償金制度が導入された現在、各権利者はユーザー及びレンタル店双方からコピーに関する代償を二重に受け取っていることになるため、CDレンタル使用料の早急な見直しが必要です。CDレンタルに関する使用料はユーザーのコピーの代償という観点から決められた経緯からしますと、平成5年に私的録音補償金制度が導入され、デジタル式のハードやソフトを購入するユーザーが各権利者に対してコピーに関する補償金を支払うシステムが構築されたことにより、各権利者はユーザー及びレンタル店の双方からそのコピーに関する補償金を受け取っていることになります。よってCDV-Jでは早急な使用料の見直しが必要であると考えております」という理屈によって権利者団体と交渉した経緯があるということ、及び、需要拡大協力金という形で実質ビジネス的な補償金の上積みと考えられる事実上の使用料値上げを行っていることが恣意的に中間整理から落とされている。これらのことは最終報告にははっきりと明記されるべきである。

・104ページからの違法録音録画物、違法サイトからの私的録音録画を30条の範囲から除外するという話については、そもそも前提となる利用実態から来る損害について疑問があるが、それ以前に、①そもそも著作権という私法が私的領域に踏み込むこと自体がおかしい、②家庭内の複製行為を取り締まることはほとんどできず、このような法改正には実効性がない、③通常の録音録画物について違法合法を区別する手がかりがない、特に、インターネット利用では、自動的になされるコピー(「一時的固定」か「複製」かもよく分からない)があるなど、違法・合法を外形的に区別できないため、ダウンロードが違法と言われても一般ユーザーにはどうしたら良いのかさっぱり分からず、このような法改正は社会的混乱しかもたらさない、④情を知ってという条件も、司法判断でどう倒されるか分からず、場合によってはインターネットへのアクセスそのものに影響を及ぼし兼ねないこのような法改正は極めて危険である、⑤そもそも違法流通は送信可能化権による対応が可能である上、この送信可能化権との関係でダウンロードによる損害額がどう算定されるのかもよく分からない、⑥自らが作製した著作物を離れてサイトそのものを違法と著作権者団体が認定することは、明らかに権利の乱用であり、到底認められるべきことではない、といった基本的なことがまるで考慮されていない。
 104~106ページの整理は、技術の発展の真の意味を全く理解しておらず、一般国民の行動原理とモラルとも乖離した、役人の独善的な妄想の垂れ流しにしかなっていない。
 したがって、違法ダウンロードについては、拙速な法改正は行わず、解釈論による対応なども検討しつつ、様々な司法判断や状況が積み重なってきたときに改めて立法の是非を判断するべきである。
 また、付言すれば、保護強化で先端を行くドイツですら、違法複製物を越えて、サイトそのものの違法性を勝手に著作権団体に認定させた上で、そこからのユーザーの私的な複製を違法とすることまではしていない。違法複製物があるから違法サイトなのであって、違法サイトがあるから違法複製物がある訳ではないという単純なことが何故分からないのか。文化庁の役人の知能レベルを私は疑う。丁寧に注までつけられているが「違法サイト」という誤解を招く語は、最終報告からは全て削除されるべきである。

・106ページに記載されている、他人から借りた音楽CDからの私的録音について、これも単なるモラルの問題になるので30条の範囲から外すことには反対であるが、このような私的複製の30条の範囲からの除外は、借りたCDから複製をしてはいけないということが少なくとも個人レベルで外形的に区別がつき、単純で普通の者にもよく分かるだけ、ダウンロードの違法化よりはるかにましである。このような整合性のない整理をする者の良識を私は疑う。

・106ページからの整理について、まず、30条の制定経緯において、権利者の権利行使ができないことが主たる理由であるかのように書かれているが、それ以外にも、そもそも著作権の様な私法が私的領域に踏み込むべきでないという理由、あるいは、30条には、私的領域における文化活動を守るという意味などもあるのであり、より詳細に立法主旨については調べ、記載されるべきである。(この点については、中山信弘、作花文雄、斉藤博、渋谷達紀各先生方の著作権法に関する教科書の私的複製に関する趣旨の記載を参照のこと。)

・108ページの整理では、2重取りの回避のために、適法配信から入手した録音録画物からの私的録音録画を30条の範囲から外すべきとしているが、インディーズによる無料の音楽配信、プロモーションのための無料配信、値段に差をつけたDRMなしの音楽配信、コピーフリーや黙示の許諾により提供されている配信など様々な形態のことを考慮に入れておらず、30条の範囲から除外するのに十分な検討がなされていない。よって、除外するのが適当であるという意見が大勢とすることは適当ではない。
 したがって、適法配信から入手した録音録画物からの私的録音録画についても従来通り30条の範囲内とした上で、2重取りの回避のためには、これは補償の必要性がない私的録音録画の形態とされるべきである。
 ネット配信においては、複製の範囲をDRM等で有効に確定することが出来、別に著作権者自らがサイトを立ち上げ配信を行っても良いのである。したがって、ネット配信から入手した録音録画物からの私的録音録画は、DRM(技術的保護手段)等で複製の範囲が確定される場合はその範囲内について、確定されない場合は30条の範囲の最大限まで私的録音録画を権利者が積極的にユーザーに認めているに等しく、DRMの有無にかかわらず、補償の必要はないとされるべきである。
 なお、適法配信の30条の範囲からの除外によって2重取りの回避を行うことは、明らかにiPod課金を前提としており、そもそも妥当でない。このような整理は、あらゆる私的録音録画に補償が必要とする偏った前提に基づいており、報告書全体として見たときに自己矛盾するものである。

・109ページで、レンタル事業者について、契約によることが難しいとしているが、レンタル事業者と権利者の間、レンタル事業者と利用者の間に契約は存在しているのであって、契約による対応が難しいとすることは合理的ではない。
 私的複製について、それぞれの契約で明記しても良いだろうが、これについても、ほとんどあらゆる者が私的複製をすることを前提にレンタルCDの料金を支払っていることを踏まえ、DRMをかけない場合のネット配信と同じ扱いとするべきと考えられる。すなわち、このような場合についても、30条の範囲の最大限まで私的複製を権利者が積極的にユーザーに認めているに等しいものであり、補償の必要はないとされるべきである。

・109ページの、有料放送事業者についてもレンタル事業者と同様のことが言え、放送事業者と権利者の間、放送事業者と利用者の間に契約は存在しており、契約による対応が難しいとすることは合理的でない。
 そして、有料放送では、コピー不可も含め様々なDRMがかけられること、及び、既にそのようなDRMがかけられていること(例えばスカパー!について、http://faq.customer.skyperfectv.co.jp/EokpControl?site=sptv&tid=10775&event=FE0006http://faq.customer.skyperfectv.co.jp/EokpControl?&site=sptv&tid=10779&event=FE0006を参照のこと)を考慮すれば、ネット配信と同じく、DRM等で複製の範囲が確定される場合はその範囲内について、確定されない場合は30条の範囲の最大限まで私的複製を権利者が積極的にユーザーに認めているに等しく、基本的に補償の必要はないとされるべきである。
 また、無料放送については、まずコピーワンスやダビング10のようなユーザーにとってデメリットしかない方式を撤廃し、ノンスクランブル・コピー制限なしという原則を法制化することが先であり、そうでない限り、私的録音録画が厳しく制限されている無料放送からの私的録画についても、補償の必要はないとされるべきである。

・これらの形態について30条の範囲から外すことには反対するが、109ページで、これらの形態について外すと、違法状態が放置されるだけとなるという記載と、レンタル事業や有料放送事業で各者間に契約があるという記載とは矛盾するものであることを念のため指摘しておく。

・最後に、中間整理の整理に従って、それぞれの私的複製の形態毎の30条の範囲からの除外と補償の必要性に関して、私がこうあるべきと考えていることを、ここに念のため書いておく。

① 私的録音
(ア)購入した音楽CDからの録音 → 30条の範囲内にとどめ、補償の必要はないとされるべき
(イ)他人等から借りた音楽CDからの録音 → 30条の範囲内にとどめるが、コピー制限をしないことが法的に確保される条件の下で、権利者に与える経済的影響を入念に検証して、補償の必要性を決定するべき
(ウ)レンタル店から借りた音楽CDからの録音 → 30条の範囲内にとどめ、補償の必要はないとされるべき
(エ)違法録音録画物からの録音 → 原則30条の範囲内にとどめるが、現行の30条の解釈と権利者に与える経済的影響を入念に検証して、補償の必要性を決定するべき
(オ)違法配信からの録音 → そもそも、違法録音録画物があるから違法配信なのであって、この形態を考えること自体が間違っている
(カ)適法放送からの録音 → 30条の範囲内にとどめるべき。コピーワンスやダビング10のような私的録音録画の自由を制限するDRMがかけられている場合は、補償の必要はないとされるべき。あるいは、コピー制限をしないことが法的に確保される条件の下で、権利者に与える経済的影響を入念に検証して、補償の必要性を決定するべき
(キ)適法ネット配信からの録音 → 30条の範囲内にとどめ、補償の必要はないとされるべき

② 私的録画
(ア)購入したパッケージ商品からの録画 → 30条の範囲内にとどめ、補償の必要はないとされるべき
(イ)他人等から借りたパッケージ商品からの録画 → 現状のDRM下で、原則不可能である
(ウ)レンタル店から借りたパッケージ商品からの録画 → 現状のDRMの下で、原則不可能である
(エ)違法録音録画物からの録画 → 原則30条の範囲内にとどめるが、現行の30条の解釈と権利者に与える経済的影響を入念に検証して、補償の必要性を決定するべき
(オ)違法配信からの録画 → そもそも、違法録音録画物があるから違法配信なのであって、この形態を考えること自体が間違っている
(カ)適法放送からの録画 → 30条の範囲内にとどめるべき。コピーワンスやダビング10のような私的録音録画の自由を制限するDRMがかけられている場合は、補償の必要はないとされるべき。あるいは、コピー制限をしないことが法的に確保される条件の下で、補償の必要性について、入念に検証された権利者に与える経済的影響から決定されるべき
(キ)適法ネット配信からの録画 → 30条の範囲内にとどめ、補償の必要はないとされるべき

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第19回:文化審議会著作権分科会私的録音録画小委員会提出パブコメその1

 文化審議会・著作権分科会・私的録音録画小委員会の中間整理への意見をようやく書き終わって提出したところである。誰かの参考になるかも知れないので、ここにその全文を載せておこう。

 あまりにも長いので、3回に分ける。まずは、今まで書いてきたこととかなり重複するが、国際動向に関するところまで。

1.個人/団体の別:個人
2.氏名:兎園
3.住所:(略)
4.連絡先(電話番号、電子メールアドレスなど):

5.該当ページおよび項目名:
(1)「6ページ~、第1章第2節私的録音録画補償金制度の制定経緯について」
(2)「11ページ~、第2章第1節私的録音録画の現状について」
(3)「59ページ~、第5章違法サイトからの私的録音録画の現状について」
(4)「78ページ~、第6章第1節 ヨーロッパ連合(EU)」
(5)「80ページ~、第6章第2節 ドイツ」
(6)「86ページ~、第6章第4節 イギリス」
(7)「87ページ~、第6章第5節 アメリカ合衆国」
(8)「90ページ~、第6章第6節 その他の国」
(9)「95ページ~、第6章第7節 世界知的所有権機関(WIPO)」
(10)「97ページ~、第7章第1節 私的録音録画の検討にあたっての基本的視点について」
(11)「100ページ~、第7章第2節 著作権法第30条の見直しについて」
(12)「110ページ~、第7章第3節 補償の必要性について」
(13)「123ページ~、第7章第4節 補償措置の方法について」
(14)「126ページ~、第7章第5節 私的録音録画補償金制度のあり方について」
(15)「143ページ~、参考資料1~3」
(16)報告書全体

6.意見
(概要)
この中間整理は法改正の前提とするにはあまりにずさんである
したがって、ダウンロード違法化、適法配信の30条からの除外、iPodやHDD録画機等への補償金の対象拡大という、この中間整理に示された3点の法改正の方向性に全て反対する
今後は、このようなずさんな整理を全て改め、真の国民視点に立った有益な検討がなされることを期待する

(1)「6ページ~、第1章第2節私的録音録画補償金制度の制定経緯について」に対する意見:
 第10小委員会報告書(http://www.cric.or.jp/houkoku/h3_12/h3_12.html)には、私的複製は本来自由かつ無償であったこと、及び、補償金制度は私的録音録画の自由を確保する代償であることが明記されており、制度導入時、権利者の利益保護のみに重点があったかの如き引用は公平性を欠く。
 特に、最終整理では、このような公平性を欠く引用に替え、第10小委員会報告書からは、以下の記載を制度創設の趣旨として引用するべきである。
「第4章 報酬請求権制度の在り方
 私的録音・録画問題とは、権利の保護と著作物等の利用との間の調整をいかに行うか、言い換えれば、現行第30条の規定している私的録音・録画は自由かつ無償という秩序を見直すかどうかという問題である。
(中略)
 報酬請求権制度を我が国の著作権制度の上でどのように位置付けるかという問題については、私的録音・録画は、従来どおり権利者の許諾を得ることなく、自由(すなわち現行第30条の規定は維持)としつつも、一定の補償(報酬)を権利者に得さしめることによって、ユーザーと権利者の利益の調整を図ろうとするものであり、私的録音・録画を自由とする代償として、つまり、権利者の有する複製権を制限する代わりに一種の補償措置を講ずるものであると位置付けることが適当である。
この考え方は、
1) 制度の見直しによる新しい秩序への移行について国民の理解が得られやすい考え方である、
2) 制度導入の理由として、私的録音・録画によって生ずる権利者の得べかりし利益の「損失の補償」という理由付けをとるとしても、現行法立法当時には「予測できなかった不利益から著作者等を社会全体で保護する」という理由付けをとるとしてもいずれにしても、なじみやすい考え方である、
3) あくまでも補償措置の一種であるから、個別処理の方法ではなく、後述の録音・録画機器又は機材の購入と関連付けて、包括的な報酬支払方法をとるという議論ともなじみやすい考え方である 」

(2)「11ページ~、第2章第1節私的録音録画の現状について」に対する意見:
 私的録音録画補償金管理協会という補償金を徴収する立場にある者が、明らかに補償金制度拡大を目的として行った調査を、公平であるべき審議会の報告書に引用するべきではない。最終報告からは、これらの調査報告は全て削除されるべきである。
 注釈の7に、言い訳のように管理協会の理事にメーカー代表や消費者代表が入っていることが書かれているが、ネットの記事(http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0710/30/news125.htmlhttp://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2007/10/12/17169.html)を見ても明らかに中間整理についてメーカー代表や消費者代表の賛同が得られておらず、この調査が偏ったものであることは明白である。
 審議会で私的録音録画の現状を把握するにあたっては、少なくとも審議会の私的録音録画小委員会の委員全員が納得する形で調査項目・調査方法を設定し、現状調査をするべきである。

 念のために指摘しておくと、以下のような記載に恣意性があからさまに出ている。
・12ページ、「・・・現行の補償金制度の対象となっていないデジタル録音機器も相当程度普及している実態が伺える。」:前に記載されている機器が補償金制度の対象であるべきかどうかということが問われているにもかかわらず、あたかも補償金制度の対象であることが前提であるかのように、対象となっていないことが強調されている。
・19ページ、「パソコンやポータブルオーディオはもともと大容量の記録能力を持つ機器であるところから、多くの楽曲が録音されている実態が分かる。」:特に、ポータブルオーディオで行われている複製などは、プレースシフトも多いと思われるが、録音録画がどのようなものであるかということを問題にせずに、単に多く録音されていることのみが強調されている。
・21ページ、「デジタル録画に関しては、現在補償金制度の対象となっていない機器での録画行為が相当程度行われていることが分かる。」:12ページについてと同じく、あたかも前に記載されている機器が全て補償金制度の対象であるべきような強調がなされている。
・22ページ、HDD内蔵状況:これらの機器はDVDレコーダーとして課金されている。ここでこのような図を入れることは、あたかも課金されていない部分が増えていると人を騙すために入れているとしか見えない。
・23ページ、録画媒体需要推移:参考としてデータ用DVDを入れているが、データ用DVDを録画調査の図に一緒に入れることは妥当でない。
・25ページ、録画の経験と頻度:単純に比較できないとしながら、録画の頻度、経験が高まっているとすることは間違っている。
・26ページ、「「興味ある番組やその一部を保存するため」(約81.9%)と、保存目的の録画も経験率が高い。なお、平成17年録画調査における録画の理由の調査結果と比較すると、特に保存目的の録画経験者の割合が高まっている。」:恣意的な調査項目の変更による異常値と思われる。

(3)「59ページ~、違法サイトからの私的録音録画の現状について」に対する意見:
 この調査も、ダウンロード違法化を目的として、権利者という一方当事者が行った調査であり、公平であるべき審議会の報告書に引用するべきものではない。これらの調査報告は全て削除するべきである。
 特に、違法サイトとは何かについて、サイトやパソコン自体が違法な訳ではないと注釈で書かれているが、違法サイトとは誤解を招く表現であり、報告書を通じて使用されるべきではない。

 念のため、この調査についても特に恣意的な記載を以下に指摘しておく。
・59ページ、ファイル交換ソフトの利用率:過去に利用していた者を含めて、あたかも利用者が増えているかの如き数字による印象操作を行っている。利用率ということでは現在の利用率のみを考えるべきなのは言うまでもない。61ページについても同様であり、過去経験者は累積されるため、増えるのは当たり前である。
・66ページ、ダウンロード数の比較:世の中にはコピーフリー・あるいは黙示の許諾により提供されている楽曲もあり、ダウンロードされる音楽があたかも全て違法であるかの如き比較は妥当でない。
・71ページ、違法な携帯電話向け音楽配信からの私的録音の現状:調査結果の概要では勝手に違法な携帯電話向け音楽配信という語を「違法サイト」にしているが、誤解を招く表現である。特に、音楽を無料でダウンロード出来るサイト、すなわち違法サイトというのは間違っている。世の中には、インディーズ系のミュージシャンが自ら開設したサイトや、音楽以外の物のプロモーションのためのサイトで、期間を限らずに無料で音楽をダウンロードできるようにしているものもあり、この調査結果は全く信頼できない。

(4)「78ページ~、第6章第1節 ヨーロッパ連合(EU)」に対する意見:
 EU理事会指令公表後のEUの動向として、欧州の補償金改革について極簡単にしか触れていないが、この補償金改革についてはネットでも膨大な資料が公開(http://circa.europa.eu/Public/irc/markt/markt_consultations/library?l=/copyright_neighbouring/stakeholder_consultation&vm=detailed&sb=Title)されており、このような資料を丹念に検討して本当の国際動向を確かめるべきである。
 特に、この検討の中で提出された、欧州のメーカー団体が集まって作っている補償金制度改革協議会(Copyright Levies Reform Alliance)の資料(http://ec.europa.eu/avpolicy/docs/other_actions/hearing%20col/eicta_clra_hear_col_2006_en.pdf)や欧州消費者組合(Bureau European des Unions de Consomateurs)の意見書(http://circa.europa.eu/Public/irc/markt/markt_consultations/library?l=/copyright_neighbouring/stakeholder_consultation/europeen_consommateurs/_EN_1.0_&a=d)を見ると、世界的に見ても明らかに補償金制度は消費者とメーカーに反対されているのであり、このような真の国際動向について、最終報告には明記されるべきである。

(5)「80ページ~、第6章第2節 ドイツ」に対する意見:
 ドイツの補償金制度改革について、極簡単にしか記載されていないが、ドイツではありとあらゆる複製機器に補償金がかかり得るため、裁判で補償金の有無や多寡を決めるしかなく、この補償金に関する裁判闘争が最高裁まで行くほど泥沼の様相を呈し、かつその結果として出される補償金額に根拠はないという状況の中、81ページに書かれているように、5%の上限規定を入れようとするなど、ドイツでも補償金は合理化に向けた努力がなされているという真の動向について、最終報告には明確に記載されるべきである。
 また、ドイツにおいては、研究目的の私的複製や絶版物の私的複製についても、私的複製の権利制限の範囲内であることが法律に明記されており、日本の私的複製規定と同じ扱いをする訳にいかないことも明記されるべきである。

(6)「86ページ~、第6章第4節 イギリス」に対する意見:
 イギリスにおける私的複製の規定は、研究・学習目的イギリスにおいても、CDリッピングのような私的複製の権利を認めるべきとする意見(http://journal.mycom.co.jp/news/2006/10/30/001.htmlhttp://www.ippr.org.uk/members/download.asp?f=%2Fecomm%2Ffiles%2FPublic%5Finnovation%5Freport%5Ffinal%2Epdf参照)があることも紹介されるべきである。
 また、イギリスでは、このようにタイムシフトを目的とした私的複製の権利制限を認めながら、補償金制度はないため、私的複製の権利制限、すなわち補償金ではないこと、特にタイムシフトは補償を必要とする複製ではないことが国際的に認められていると考えられることを、最終報告には明記するべきである。
 
(7)「87ページ~、第6章第5節 アメリカ合衆国」に対する意見:
 以下のような恣意的な記載は、最終報告からは削除されるべきである。
・87ページ、「なお、同法は、汎用コンピュータやその関連の機器・記録媒体は対象とされていないが、これは、同法制定当時、コンピュータを介して音楽を録音する行為を想定していなかったためである。」:アメリカでは今もなお汎用コンピュータ等の機器に対する課金は検討されておらず、対象とされることが当然であるかのような印象を与える記載は不適切である。

(8)「90ページ~、第6章第6節 その他の国」に対する意見:
 その他の国として、補償金制度がある国のみをあげており、明らかに国の選択に恣意性が見られる。特に、中国や韓国のようなアジア諸国の私的複製・補償金制度に関する規定とその法改正動向についても記載されるべきである。
 また、スペイン等の諸国についても、権利制限に関する元の条文をきちんと翻訳で示すべきである。例えば、スイスでは、企業内の閉鎖的な複製が私的複製の権利制限の範囲に明確に入っていることも参考になるであろう。
 最終報告では、国際動向について、より詳細かつ広汎な調査が記載されるべきである。

(9)「95ページ~、第6章第7節 世界知的所有権機関(WIPO)」に対する意見:
 WIPOのホームページに載っている著作権テキスト(http://www.wipo.int/freepublications/en/copyright/935/wipo_pub_935.pdf)の第53ページには、クラスメイトのCDから自分のMP3プレーヤーにコピーすることは違法と書かれており、世界的に見て必ずしも、友人から借りたCDからの複製が適法とされている訳でないことも参考情報として書かれるべきと思われる。

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2007年11月 2日 (金)

番外その3:崩壊する文化審議会

 先日、著作権分科会の私的録音録画小委員会にも委員を出しているメーカーの業界団体、電子情報技術産業協会(JEITA)が、文化庁の中間整理に対して真っ向から反対する説明会を開いたというニュース(ITmediaの記事)があった。この見解は、その前にJEITAのHPに載せられていたものである。

 また、このブログでも応援していると書いたが、同じく私的録音録画小委員会でユーザーを代表していた津田委員(肩書きはIT・音楽ジャーナリストだったが)が発起人に名前を連ねる形で、MIAUという団体が作られ、中間整理に盛り込まれたダウンロード違法化に反対する運動をネット中心に展開している。

 さらに言うならば、上位の委員会である著作権分科会そのものでも、私的録音録画小委員会に出席していた、消費者代表の河村委員、野原委員から、補償金ありきの議論はおかしいという主張が相次いで出されている(Internet Watchの記事参照)。

 それぞれ微妙にニュアンスは違うのだが、要するに、文化庁が文化審議会の中間整理としてまとめたものは、メーカー・ユーザー・消費者の代表委員が納得しておらず、その中の「という意見が大勢」だとか「おおむねの了承を得た」だとかいう記載が全て嘘っぱちであることが誰の目から見ても明らかになっているということだ。

 それにしても、本来、丹念に有識者レベルでの共通認識を得るための検討を重ねるべき役所の審議会で、その代表委員の意見すら無視して役所が一方の利害関係者の言うことだけを聞いて強行に報告書を整理するとはどういうことか。さらにはこれをパブコメにかけるに至っては言語道断である。もはや文化審議会は審議会の体をなしていない。

 文化庁の妄想ペーパーで法改正をされては堪らない。何度も言うようだが、法律は天下り役人の玩具ではない。

 あまりにも腹が立ったので、このような記事を書いたが、日本は何故か沈黙が了承とみなされる社会である。1人でも反対は多い方が良いと、私もこの怒りをパブコメに書き込んでいるところである。

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2007年10月25日 (木)

第10回:文化審議会パブコメ準備(追加:著作権侵害罪の非親告罪化問題)

 私的録音録画の問題ばかり取り上げていたが、文化審議会著作権分科会からは、もう一つの小委員会である法制問題小委員会の中間まとめもパブコメにかかっている。
 この中で特に問題となるのが、著作権侵害罪の非親告罪化の問題であろう。
 今回はほぼ法改正が見送りとなっている上、他の多くのブロガーの方々が取り上げていることもあって、この問題については、こんなパブコメを出したということだけ後で紹介しようと思っていたのであるが、見たところ、特許法が非親告罪化されたときとの比較をしている方はあまりいないようなので、先に、このことを取り上げておこうかと思う。

 特許法における非親告罪化の導入が適当とした審議会報告書は、その趣旨について以下のように記載している。

「工業所有権審議会損害賠償等小委員会報告書」(平成9年11月25日)
第2章 知的財産権の侵害に対する救済等のあり方について
第4節 知的財産権の侵害に対する救済等のあり方について
2 . 親告罪規定の見直し
(中略)
(3)旧法(大正10年法)においても、工業所有権侵害罪は、商標権侵害罪を除きすべて親告罪とされていたが、昭和34年の全面改正の際において、「財産権を侵害とする罪として自然犯的な性格を有する特許権等の侵害罪の罪質と悪質事犯防遏の必要性から」、工業所有権四法をすべて非親告罪とするべき、とする意見があり、検討されたが、結局、見送られることとなり、現行法は、旧法をそのまま踏襲することとなった。
 また、見送られた理由は、「特許、実用新案、意匠の三権の侵害罪は、これによって社会的又は公共的な法益が害される面が皆無であるとはいえないとしても、発明又は意匠の保護という点において私益に関する面が強く、また、著作権侵害と同様に人格権の保護という色彩をも具有するものであって、窃盗、詐欺等の一般の財産権の侵害とは同視し得ないこと等からみて、被害者である権利者が不問に付することを希望するにもかかわらず、あえてこれを訴追処罰することは妥当ではないと考えられた」(法務省刑事局検事臼井滋夫著『新工業所有権関係諸法の罰則』)ためとされている。

(4)昭和40年において、特許・実用新案権と意匠権の個人出願人が約4割前後であるのに対し、非親告罪たる商標権の個人出願人は約2割であったところ、平成8年には、特許・実用新案、意匠、商標ともに、個人出願人は減少し、約1割となっている。そこで、これらの権利者の個人・法人の割合についてほぼ出願人の個人・法人の割合と同視できると考えると、昭和34年改正時に近い昭和40年当時と比べ、現在では、ほとんどの権利者を法人として考えてもよい状況にあるということができる。このことから、特許権等の保護は、私益であるとしても、見送られた理由の1つである「人格権の保護という色彩」は、ほとんど払拭されることになるのではないかとの指摘が可能である。

(中略)

(5)また、我が国の研究開発費が増加している中で、例えば、医薬品の研究開発に通常10年前後をかけ、その間、200億円から300億円の研究開発費を使っているとの意見も踏まえると、知的財産権は、こうした研究開発成果を保護する権利として極めて重要な財産として位置付けざるを得ないとの考えもある。従来のキャッチアップ型研究開発からフロンティア型研究開発への移行に向けた経済構造改革を進めていく中で、研究開発成果を保護する知的財産を他の一般財産権よりも、むしろ手厚く保護しなければならないとする強い要請もある。加えて、今後の政策としても、特許の流通市場の創設や知的財産権の担保化という特許ライセンス等の公的性格の高まりの観点も併せると、あえて「被害者である権利者が不問に付することを希望する」場合を想定して、親告罪としておく必然性はすでに失っているとし、したがって、以下の考え方を採ることも一案と考えられる。

(S案)特許法等の侵害罪を、非親告罪とする考え方

(後略)」(第135頁~137頁より。赤字強調は私が付けたもの。)

 これをまとめると、特許権侵害が親告罪だった理由は、元々
・特許の侵害罪は、発明の保護という点において私益に関する面が強かったため、と
・人格権の保護という色彩もあり、窃盗、詐欺等の一般の財産権の侵害とは同視し得なかったため
であったが、

平成9年当時には、
・特許権者がほとんど法人となり、人格権の保護という色彩がほとんど無くなり、
・研究開発成果の保護強化の強い政策的な要請、と
・特許の流通市場の創設や知的財産権の担保化という特許ライセンス等の公的性格の高まりがあったことから、
特許権の非親告罪化が適当とされたということが分かる。

 確かに、技術の高度化によって特許権者の主体が個人から会社へ移り、特許権から人格権的な色彩がほぼなくなってしまったのは、時代の移り変わりというものだろう。しかし、著作権法のことを考えると、技術の高度化によって個人の表現はより簡単にできるようになっており、著作権者の主体はかえって会社から個人へ移りつつある。例え、著作権においても、流通市場の創設や担保化という公的な要請の高まりがあるにせよ、今後も、著作権から「人格権の保護という色彩」が払拭されることは、まずもってあり得ないだろう。
 したがって、同じ知的財産権だから横並びで著作権も非親告罪とするべきという議論など、二つの権利の性質を無視しした、ほとんど取るに足らない暴論である。(世の中にある著作物のほとんどが法人著作となり、登録管理によって著作権の帰属が誰にでも明確に分かる状況が現出すれば非親告罪化もあり得なくはないが、そんな状況は文化の死滅以外の何物でもない。)

 今も、インターネットの普及により、質はどうあれ、個人の著作は爆発的に増えつつある。今後これがさらに増えるだろうことを考えると、著作権を親告罪としておくことは、かえって正しいことであり、この理屈は国際的に見ても通用すると私は思う。

 著作権法は、公益と私益、法人と個人の権利と義務が入り交じった複雑な体系をしており、もはや担当官庁にも訳が分からなくなっているのかも知れないが、文化庁にはまず、とにかく権利者団体の言いなりに、法益や国益すら無視して保護強化の方向性を打ち出そうとすることを止めて欲しいものだ。

 ちなみに、この法制小委員会では、検索エンジンに関する権利制限も行うべきとしている。直接ユーザーに絡む話ではないが、このように現在の技術の発展に対応した権利制限を新たに作るべきとしているところは高く評価したい。是非、今後はより一歩踏み込んで、文化の一層の発展のため、ユーザーとのバランスを考えた、より広汎な公正利用の権利が創設されることを期待する。

 さて、ご大層な話をするつもりは毛頭ないが、回を変えて、権利制限規定の国際比較をやって行こう。

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2007年10月23日 (火)

第8回:文化審議会著作権分科会パブコメ準備(後編:私的録音録画補償金問題)

 パブコメ準備の一貫として私的録音録画補償金問題についての考え方を簡単にまとめておきたい。といっても、この問題は文化審議会での議論が混迷を極めていること(中間整理審議会の議事録、各種ネット記事参照。)からも分かるように、決して単純な問題ではない。

(1)経緯
 まず、経緯について表だった記録としては、過去の関連審議会報告書(著作権審議会第10小委員会報告書第5小委員会報告書第4小委員会報告書等)が残っている。(本当は裏の話もあったはずだがよく分からない。)中でも、補償金制度導入を決めた第10小委員会報告書は、この問題に関する必読文献の一つである。(本当のそもそも論を言えば、行政の審議会で法改正を決めていることがおかしいのだが。)

 中間整理では文化庁の思惑に都合の良い部分のみを引用しているが、この第10小委員会報告書には、

「第4章 報酬請求権制度の在り方
 私的録音・録画問題とは、権利の保護と著作物等の利用との間の調整をいかに行うか、言い換えれば、現行第30条の規定している私的録音・録画は自由かつ無償という秩序を見直すかどうかという問題である。
(中略)
 報酬請求権制度を我が国の著作権制度の上でどのように位置付けるかという問題については、私的録音・録画は、従来どおり権利者の許諾を得ることなく、自由(すなわち現行第30条の規定は維持)としつつも、一定の補償(報酬)を権利者に得さしめることによって、ユーザーと権利者の利益の調整を図ろうとするものであり、私的録音・録画を自由とする代償として、つまり、権利者の有する複製権を制限する代わりに一種の補償措置を講ずるものであると位置付けることが適当である。
この考え方は、
1) 制度の見直しによる新しい秩序への移行について国民の理解が得られやすい考え方である、
2) 制度導入の理由として、私的録音・録画によって生ずる権利者の得べかりし利益の「損失の補償」という理由付けをとるとしても、現行法立法当時には「予測できなかった不利益から著作者等を社会全体で保護する」という理由付けをとるとしてもいずれにしても、なじみやすい考え方である、
3) あくまでも補償措置の一種であるから、個別処理の方法ではなく、後述の録音・録画機器又は機材の購入と関連付けて、包括的な報酬支払方法をとるという議論ともなじみやすい考え方である 」(赤字強調は私が付けたもの)

とも書かれており、補償金制度導入当時、私的複製の自由の確保にも力点が置かれ、必ずしも補償金を権利制限の代償の側面のみからとらえていたのではないということは、もっと皆が理解していてしかるべきことだろう。
 そもそも論としては、この第10小委員会当時、原則全ての私的複製に補償が必要なのか、私的複製により生じる権利者の経済的不利益が生じない場合は補償は不要なのかの結論を出さないまま、制度導入を決めてしまった禍根が、今も私的録音録画小委員会に尾を引いている

(2)現行制度の概要
 第10小委員会の結論を受けて、導入された現行制度は概略以下のようになっている。

1.対象機器・媒体:
 デジタル録音録画専用機器・媒体であって分離型のもの。要するにMDとか録画用CDーRなどとそれに対応する録音録画機器にそれぞれ価格の数%が課金されている。今のところiPodは一体型なので対象外となっている。
2.指定方法:
 対象機器・媒体は、法律より一つ落ちる政令でその方式が技術的に規定されている。
支払いスキーム:
3.支払い義務者:
 一義的な支払い義務者は消費者(私的録音録画をする者だから。当たり前と言えば当たり前。)だが、消費者からは直接補償金を取れないため、メーカーが機器・媒体に上乗せして徴収する協力義務を負う。(その結果、補償金(総額で数十億円程度)の流れは次のようになっている。消費者 → メーカー → メーカーの団体 → 補償金管理協会(20%共通目的事業に天引き) → 権利者団体 → 権利者)
4.返還制度:
 消費者が補償金管理協会に自分のCD-Rは他人の著作物のコピーに使っていませんよと言うとCD-Rの値段内の補償金分を返してくれる

(3)今回の中間整理の方向性
 補償の必要性がある場合という括弧書きが付いているが、権利者団体寄りの審議会で補償の必要がないなどという結論は出ようがないから、文化庁が大体この方向性を既定路線としようとしていることは明白である。

1.対象機器・媒体は一体型専用機器まで拡大。要するにiPodとかHDDレコーダーとかまで対象を拡大。理由はほぼ私的録音録画に使われているからで、それ以上の理由はない。
2.政令指定方式は改め、対象機器等は文化庁長官が評価機関の審議を経て定める
3.支払い義務者については意見が一致していないとしながらも、メーカー負担でも良いのではないかということが強調されている。
4.返還制度は、メーカー負担なら無くなるらしい。

(4)このような方向性について
 私は、ユーザーとして、私的録音録画補償金は、私的複製の自由が確保された場合の私的録音録画により生じる権利者の経済的不利益の補償であるという立場に立つ。私的複製の自由が制限される場合、あるいは、私的複製の自由が制限されずとも一般ユーザーの利用形態を考えたときに権利者に大きな経済的不利益が生じていないと考えられる場合は、補償は不要という立場である。
1.したがって、対象機器・媒体について、その機器・媒体における私的複製の自由度、及び、一般ユーザーの利用形態を考えずに、単にその機器・媒体が主に私的録音録画に使われることをもって対象を拡大することに反対する。
2.文化庁が、審議会においてこのようなユーザー無視の姿勢を取る以上、文化庁長官が勝手に機器・媒体の範囲を決められるような、文化庁の横暴を許す形への法令の変更にも反対する。
3~4.そもそも補償金の根拠があやふやであるため、対象機器・媒体及び補償金額がユーザーから見て納得の行かない形で、既存の利権団体同士の談合のみで決まる可能性が極めて高い以上、返還制度を無くすことには絶対反対である。
 したがって、一ユーザー・一消費者・一国民として、よって立つべき前提を無視した、このような方向性に反対する。

(5)特にiPodやHDDレコーダーについて
 特に、音楽ユーザーとして言いたいことは、私はCDを買うとき、私は音楽を楽しむ権利を買っているつもりで、プラスチックコートのアルミ板を買っているのではないということだ。CDを買ったとき、この買った音楽を自分で聞く場合に、例え外形的に複製がなされるからと言って、さらに何らかの対価を要求されることには極めて強い抵抗感を覚える。自分の使い方から考えても、一般ユーザーはiPodを分が購入したCDのプレースシフトとiTunesからの配信の視聴用に用いていると考えられ、このiPodから他人への音楽の拡散が考えられない以上、このような機器に補償金を課すことに納得感はない。そうでないとするならば、その根拠は、課金を求める権利者側が、国民の目から見て納得のいく形で提供するべきであろう。
(レンタルCD問題については、補償金で解決されるべき筋合いの話ではないので、また別途ブログに書きたいと思う。)

 また、HDDレコーダーについては、コピーワンスのパブコメに書いた通り、まずコピーワンスやダビング10のようなユーザーにとってデメリットしかない方式の撤廃が先であり、そうでない限り、補償金拡大などとんでもない話である。

(6)最後に
 私がユーザーとして望むことは極めて単純であり、利便性の高い機器・媒体、及び、利便性の高いコンテンツが、両方とも豊富にリーズナブルな値段で手に入ることに過ぎない。私はこのような状態が、コンテンツ業界やメーカーにとって不幸なものであるとは到底思えない。(知財法が法律上認めている独占ではなくて、知財(著作権)そのものの集中という独占によって利益を受けている者にとっては好ましくないことだろうが。)

 敢えて言うなら、技術の発展を受けて、既に複製の主導権がユーザーに移りつつあること、コンテンツの利便性=複製の利便性となってしまっていること、情報アクセス=コピーとなってしまっていること、コピーフリーにしたときに著作物の拡散の恐れがあること等を考慮して、著作物のコピーフリー提供に補償金の拡大が必要だというのであれば、まだ考慮に値するが、それ以外の場合に、ユーザーに対する補償金拡大のメリットは何もない。(この場合でも、コピーフリーが確保されること、すなわち、著作権法に技術あるいは契約による私的複製の制限を禁じることを書き込む必要があり、さらに、その場合でも補償金の対象機器・媒体の範囲・補償金額は権利者に対してその機器・媒体が与える実害に基づく必要がある。)

 しかし、本当のそもそも論を言えば、このように機器・媒体メーカーにぶら下がる形でコンテンツ業界が金銭を得ることは、ビジネスとして極めて不健全である。このような補償金の存在はコンテンツにおける本来のサービス競争を阻害することになりかねず、既存のコンテンツ業界が本来の競争を捨てて補償金だけで生き残る未来すら容易く想像出来てしまうのだ。複製の主導権、コンテンツの利便性や情報アクセスと複製の関係を考え、本当に未来のコンテンツ産業を見据えたとき、その中で補償金が果たす役割はほとんど無いと私は思う

 なお、仮に補償金を存続させるとしても、ほとんど何のインセンティブにもならず、無意味に溶けてしまうだけの権利者への細かな分配を止め、集めた補償金は、ネットにおける海賊版(アップロード)対策や、コンテンツ産業振興(例えば、政府主催でコンテンツコンテストを開催し、その賞金(総額数十億円?)の原資として使うなど。私的複製との関係が問題なら入賞作品はコピーフリーとすることを参加条件としても良いだろう。)といったところにまとめて使った方がよほど有意義であり、このようなことももっとまじめに議論されてしかるべきだと思う。

 パブコメには、大体以上のようなこと+αの意見を出すことを考えているが、その意見書は出した後でこのブログにも載せるとして、著作権関係の参考情報を、また数回に渡って書いて行こうかと思う。

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2007年10月18日 (木)

第7回:文化審議会著作権分科会パブコメ準備(前編:ダウンロード違法化問題)

 ようやく公表された文化審議会・著作権分科会・私的録音録画小委員会の中間整理のパブコメの〆切まで、自分が提出する意見の内容をよく考えたいと思っているところだが、そのためにちょっと頭の整理をしておきたい。

 まずは私的複製の範囲論、特にダウンロード違法化問題についてである。

 さて、今話題になっているダウンロード違法化問題とは、要するに、審議会で出された方向性の通り法改正がなされると、違法と知りつつ違法サイトから私的に録音録画する場合や、明らかな違法録音録画物から私的に録音録画する場合が私的複製の範囲外となるので、今までノーリスクに近かったこのような複製に著作権者(団体)からの損害賠償請求の訴訟リスクが発生するという問題である。

 この点については、音楽ITジャーナリストの津田委員が審議会では最も問題意識を持って反対意見を表明されていたが、多勢に無勢で中間整理にはこのような方向性が盛り込まれてしまった。
 権利者団体側の、ダウンロードは権利者に大きな被害を与えているという主張も、単純なだけにそれなりに説得力はあるのだが、デメリットを考えていくと、ダウンロード違法化はどうしてもするべきではないと思われる。その理由は大体以下の通りである。

(1)そもそも家庭内の複製行為を取り締まることはほとんどできず、実効性がない

(2)ユーザーの側で自分が接している著作物というのが、利用許諾のもとに提供されたものなのか判断する手がかりがない。権利者団体がつける違法マークなど機能する訳がない。結果として、常に不安な状態でユーザーはインターネットを利用しなければならなくなり、悪影響・萎縮効果が大きい。(特に、インターネットでは、違法も合法もなく、自動的に機械がコピーしてしまっている。ダウンロードした者の意思の有無について外形的な区別が不可能である以上、ユーザーが違法と知っていたかどうかは裁判所でどうにでも認定されてしまう。)
 また、今後、これに罰則の適用や非親告罪化を加えることを権利者団体が求めることが容易く想像されるが、そのような法改正までなされると、インターネットを使うこと自体が犯罪行為となり多大な悪影響が懸念される。

(3)このような混乱をもたらすだけの法改正で、国民の情報入手の自由を制限することがそもそもおかしく、情報入手の自由が制限される結果、表現の自由にまで影響が及ぶ

(4)送信可能化権によって違法アップロードを取り締まれば十分であり、新たに違法サイトからのダウンロードを取り締まる必要はない。
 また、既に送信可能化権があるため、送信可能(ダウンロード可能)としたことによって生じる損害は、著作者に許諾を取らず送信可能とした者(アップロードした者)に請求されるべきもののはずである。

(5)自らが作製した著作物を離れてサイトそのものを違法と著作権者団体が認定することは、明らかに権利の乱用である。これは著作権団体によるサイトそのものの検閲に他ならず、到底認められるべきではない。

 これらの影響を考えるとどう考えても法改正はメリットよりデメリットの方が大きい。
 また、そもそも論から行けば、何故あらゆる場合について皆がダウンロードを完全に合法と解釈しているのか理解に苦しむところである。ダウンロードについては解釈でグレーとしておき、拙速な法改正は行わず、様々な司法判断や状況が積み重なってきたときに改めて立法の是非を判断するべきであろう。

 次回は、今回の著作権改正騒動の2大論点のもう一つ、私的録音録画補償金問題についてどう考えるべきかというこことについて、パブコメ準備用に頭の整理をしてみたい。

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