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2009年12月10日 (木)

第204回:著作権法施行令の一部を改正する政令案・著作権法施行規則の一部を改正する省令案に対する提出パブコメ

 著作権法施行令の一部を改正する政令案・著作権法施行規則の一部を改正する省令案についてパブコメを書いて提出した(両方とも12月13日〆切。文化庁のリリース1電子政府HP1意見募集要領1(pdf)著作権法施行令改正案概要(pdf)、文化庁のリリース2電子政府HP2意見募集要領2(pdf)著作権法施行規則改正案概要(pdf)電子政府HP3意見募集要領3(pdf)告示案概要(pdf)参照)。かなりマニアックな政省令案に関する意見だが、念のため以下に載せておく。

 相変わらず良いニュースはカケラも無いが、ここで、少し最近の話も紹介して行くと、まず児童ポルノ規制に関して、関係省庁が「児童ポルノ排除対策ワーキングチーム」を作り、来夏に総合対策をまとめるという方針を固めたというニュースがあった(毎日の記事参照)。地道な対策を進めることに反対するつもりはさらさら無いが、今の役所のレベルを考えると、この総合対策でも危険かつ有害なことを言い出す可能性が極めて高く、来年の夏にかけて児童ポルノ規制問題について気の休まる時は無いだろう。

 また、警察利権の拡大のみを至上主義として危険極まる児童ポルノ規制強化を目論む警察庁を擁する内閣府が、一昨年の調査とまったく変わりなく、何の予備情報も与えずに性・暴力表現を規制するべきか否かと直接面談で聞くというひどい印象操作調査を再び行い、その結果を公表している(内閣府HPの「男女共同参画社会に関する世論調査」中の「メディアにおける性・暴力表現に関する意識について」参照。サーチナニュースの記事も参照)。このような世論調査どころか世論操作といった方が良い結果に基づいて言えることは何も無いが、この世論操作調査を用いた官製プロパガンダがまた来年にかけて激しくなると予想される。

 第199回で少し紹介した(「P2Pとかその辺のお話」も参照)、イギリスのストライク法については、早速グーグル、ヤフー、フェースブック、イーベイといったネット大企業が反対に回るなど(BBCの記事、記事中のマンデルソン英経済大臣に対する手紙(pdf)参照)、法案の提案早々混乱を予想させる展開となっている。

 スペインは、さらに悪いことに、政府が一方的にサイトの閉鎖を行えるとする法案を提案して来ているが、提案早々反対運動が盛り上がり、炎上の様相を呈して、サイトの閉鎖を行うことは無いと首相が発言するに至るが、なお問題は当分収まりそうにない状況となっている(New York Timesの記事EXPATICAの記事Winnipeg Free Pressの記事boingboingの記事参照)。

 第120回で紹介したアメリカの著作権皇帝法について、ヴィクトリア・エスピネル氏が上院の承認を受け、知財エンフォースメントコーディネーター、いわゆる著作権皇帝となったというニュースもあった(BroadbandBreakfastの記事NationalJournalの記事参照)。エスピネル氏がどう動くかはまだ分からないが、およそロクでもない自国の制度を他国に押し付けるアメリカの動きが活発化する可能性も強く、アメリカからも引き続き目を離すべきではないだろう。

 現行の欧州特許条約との整理をどうするのかという点も含め今のところ具体性に乏しく、話が簡単に進むとは思えないが、EU共通特許制度・域内の特許の紛争処理を一元処理するEU特許裁判所の創設について、EU理事会が合意したとするニュースもあったので(日経の記事、EUのリリース参照)、念のため一緒に紹介しておく。

 これ以上無意味な知財計画など作ること無く、その役割を終えた知財本部は速やかに廃止してもらいたいものと個人的には思っているが、知財本部でこの8日に本部会合が開かれ(議事次第参照)、残念ながら、知財本部は存続するものと、また来年も知財計画が作られるものとされたようである(時事通信の記事参照)。

 また、特許庁からも、その特許制度研究会でまとめられた報告書(pdf)が公表されている(日経の記事も参照)。

 上でざっと話したことも含め、海外動向の紹介の続きもしたいと思っているが、次回は、その前に、これらの知財本部と特許庁の動きについて取り上げておきたいと思っている。

(以下、政令案に対する提出パブコメ)

1.個人/団体の別:個人
2.氏名:兎園
3.住所:略
4.連絡先:
5.項目名
(1)Ⅱ 美術品等の譲渡等の申出のための画像掲載関係
(2)Ⅲ 送信の障害の防止等のための複製関係
(3)Ⅳ 情報検索サービス関係
(4)Ⅴ 電子計算機における著作物利用に伴う複製関係
(5)その他(ダウンロード違法化について)

6.意見
(1)Ⅱ 美術品等の譲渡等の申出のための画像掲載関係

 政令案概要の本項目において、オークションのための画像掲載が認められるには、「①画像を文部科学省令で定める基準に適合する大きさ又は精度にすること」か、「②画像のインターネット送信を行う際に、電磁的方法により複製を防止する手段(コピープロテクション)をかけ、かつ、画像の精度が①の基準より緩やかなものとして文部科学省令で定める基準に適合するようにすること」を必要とするとしている。

 ここで、さらに要件を文部科学省令に委任しているが、関係省庁が多岐に渡るオークションに関する要件を文化庁あるいは文部科学省単独で制定できる省令に委任することは適切でない。最低でも閣議決定を必要とする政令レベルで全ての要件を定めるべきである。

 また、全ての要件を政令で定めるものとして、さらに技術の進展があると考えられ、ケース毎に様々な適切な対応があり得ると考えられるオークションのような分野において、画一的な技術的要件による限定を用いることは、今後の技術の発展を阻害することにつながる恐れが強く、引いては文化の発展をも阻害する恐れがある。この要件は「著作物の表示の精度が、譲渡若しくは貸与をしようとする著作物の原作品若しくは複製物の大きさ又はこれらに係る取引の態様その他の事情に照らし、これらの譲渡又は貸与の申出のために必要と認められる限度のものであり、かつ、公正な慣行に合致すると認められるものであること」といった一般的な要件のみによるべきである。

 なお、さらに言うなら、このような事項について政令委任自体適切では無く、本来、改正法において一般的な要件により規定しておくべきだったものである。

(2)Ⅲ 送信の障害の防止等のための複製関係
 政令案概要の本項目において、改正法第47条の5の「特定送信」を「①受信者からの求めに応じて自動的に行う送信で自動公衆送信以外のもの(例:ストレージサービスにおけるオンデマンド送信等)」、「②受信者からの求めに応じて自動的に行う送信以外の送信で電子メールの送信その他の文部科学省令で定めるもの」とした上で、権利制限の対象となる著作物について、送信可能化されたものと、「①電気通信回線に接続している特定送信装置の特定送信用記録媒体に情報を記録し、情報が記録された記録媒体を当該特定送信装置の特定送信用記録媒体として加え、若しくは当該記録媒体を当該特定送信装置の特定送信用記録媒体に変換し、又は当該特定送信装置に情報を入力すること」、「②その特定送信用記録媒体に情報が記録され、又は当該特定送信装置に情報が入力されている特定送信装置について、電気通信回線への接続を行うこと」をされたものも含むようにするとしている。

 ここで、さらに要件を文部科学省令に委任しているが、関係省庁が多岐に渡るサーバー管理に関する要件を文化庁あるいは文部科学省単独で制定できる省令に委任することは適切でない。最低でも閣議決定を必要とする政令レベルで全ての要件を定めるべきである。

 また、全ての要件を政令で定めるものとして、技術の発展と様々なケースが考えられる通信技術に関して、今の政令案・省令案にあるようにその類型を列挙型で制限することは、技術の発展を阻害し、引いては文化の発展をも阻害する恐れがあり、決して適切でない。「特定送信」の要件は、「通信ネットワークにおいて第3者間の通信を仲介するための送信で自動公衆送信以外のもの」といった一般的な要件のみによるべきである。権利制限の対象となる著作物の行為についても、無意味な規制となる恐れが強い今の案では無く、「通信ネットワークにおいて第3者間の通信を仲介するための送信をし得るようにするための行為」といった一般的な要件のみによるべきである。

 なお、さらに言うなら、このような事項について政令委任自体適切では無く、本来、改正法において一般的な要件により規定しておくべきだったものである。

(3)Ⅳ 情報検索サービス関係
 政令案概要の本項目において、権利制限の対象となる検索サービス事業者について、「①情報の収集、整理及び提供をプログラムにより自動的に行うこと」、「②文部科学省令で定める方法に従い情報検索サービス事業者による情報の収集を禁止する措置がとられた情報を収集しないこと」、「③ネットワーク上の情報を収集しようとする場合において、既に収集した情報について②の措置がとられたことが判明したときは、当該情報の記録を消去すること」を基準とするとしている。

 ここで、情報の収集を禁止する措置の要件をさらに文部科学省令に委任しているが、関係省庁が多岐に渡る検索サービスに関する要件を文化庁あるいは文部科学省単独で制定できる省令に委任することは適切でない。最低でも閣議決定を必要とする政令レベルで全ての要件を定めるべきである。

 また、全ての要件を政令で定めるものとして、技術の発展と様々なケースが考えられる検索サービスに関して、今の省令案にあるようにその類型を列挙型で制限することは、技術の発展を阻害し、引いては文化の発展をも阻害する恐れがあり、決して適切でない。この要件は、「情報の収集、整理及び提供を自動的に行うこと、公正な慣行に従い情報の収集を禁止する措置がとられた情報を収集しないこと、収集した情報について後に情報の収集を禁止する措置が取られたことを知ったときは、当該情報の記録を消去すること」といった一般的な要件のみによるべきである。

 なお、さらに言うなら、このような事項について政令委任自体適切では無く、本来、改正法において一般的な要件により規定しておくべきだったものである。

(4)Ⅴ 電子計算機における著作物利用に伴う複製関係
政令案概要の本項目において、改正法第47条の8の電子計算機における著作物の利用に伴う複製の目的外利用について、受信者からの求めに応じ自動的に行われる送信の受信(項目には第49条第1項第9号と誤記されているが、改正法第49条第1項第7号の規定より。)に準じるものとして「著作物の送信の求めに応じてブラウザキャッシュの使用のために必要なものとして送信される信号の受信」を規定し、これらの受信を行わずに利用する場合は、このような行為を目的外利用として違法とするとしている。

 しかし、電子計算機上で使われる通信プログラムはウェブブラウザに限るものでは無く、一時キャッシュはほぼあらゆる通信において用いられている技術であることを考えると、このように単一のプログラムのみを挙げることは、いたずらに法的不安定性を増すだけである。類型を追加すれば良いというものでは無く、そもそも技術の発展が考えられるこのような事項について列挙型の制限をかけること自体決して行われるべきでないことである。この要件は、「電子計算機におけるキャッシュとして使用されるために必要なものとして送信される信号の受信」といった一般的な要件のみによるべきである。

 なお、さらに言うなら、このような事項について政令委任自体適切では無く、本来、改正法において一般的な要件により規定しておくべきだったものである。

(5)その他(ダウンロード違法化について)
 本意見募集は政令案を対象としており、法改正自体を対象とするものでは無いが、ここで、非道極まる民意無視が行われた前回の法改正についての意見も合わせ述べる。

 文化庁の暴走と国会議員の無知によって、今年の6月12日に、「著作権を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものを含む。)を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を、その事実を知りながら行う場合」は私的複製に当たらないとする、いわゆるダウンロード違法化条項を含む、改正著作権法が成立し、来年の1月1日の施行を待つ状態である。

 しかし、一人しか行為に絡まないダウンロードにおいて、「事実を知りながら」なる要件は、エスパーでもない限り証明も反証もできない無意味かつ危険な要件であり、技術的・外形的に違法性の区別がつかない以上、このようなダウンロード違法化は法規範としての力すら持ち得ない。このような法改正によって進むのはダウンロード以外も含め著作権法全体に対するモラルハザードのみであり、これを逆にねじ曲げてエンフォースしようとすれば、著作権検閲という日本国として最低最悪の手段に突き進む恐れしかない。改正法は未施行であるが、既に、総務省の「利用者視点を踏まえたICTサービスに係る諸問題に関する研究会」第一次提言案において、中国政府の検閲ソフト「グリーン・ダム」導入計画に等しい、日本レコード協会による携帯電話における著作権検閲の提案が取り上げられるなど、既に弊害は出始めている。

 そもそも、ダウンロード違法化の懸念として、このような著作権検閲に対する懸念は、文化庁へのパブコメ(文化庁HPhttp://www.bunka.go.jp/chosakuken/singikai/houkoku.htmlの意見募集の結果参照。ダウンロード違法化問題において、この8千件以上のパブコメの7割方で示された国民の反対・懸念は完全に無視された。このような非道極まる民意無視は到底許されるものではない)や知財本部へのパブコメ(知財本部のHPhttp://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/keikaku2009.htmlの個人からの意見参照)を見ても分かる通り、法改正前から指摘されていたところであり、このような著作権検閲にしか流れようの無いダウンロード違法化は始めからなされるべきではなかったものである。文化庁の暴走と国会議員の無知によって成立したものであり、ネット利用における個人の安心と安全を完全にないがしろにするものである、百害あって一利ないダウンロード違法化を規定する著作権法第30条第1項第3号を即刻削除するべきである。

(以下、省令案に対する提出パブコメ)

1.個人/団体の別:個人
2.氏名:兎園
3.住所:略
4.連絡先:
5.項目名
(1)Ⅱ 著作物の表示の大きさ又は精度に係る基準
(2)Ⅲ 電子メールの送信その他の送信
(3)Ⅳ 送信可能化された情報の収集を禁止するための措置の方法

6.意見
(1)Ⅱ 著作物の表示の大きさ又は精度に係る基準

 省令案において、著作物の表示の大きさ又は精度に係る基準を定めるとしているが、政令案への意見に書いた通り、関係省庁が多岐に渡るオークションに関する要件を文化庁あるいは文部科学省単独で制定できる省令に委任することは適切でない。最低でも閣議決定を必要とする政令レベルで全ての要件を定めるべきである。

 また、政令案への意見で書いた通り、さらに技術の進展があると考えられ、ケース毎に様々な適切な対応があり得ると考えられるオークションのような分野において、画一的な技術的要件による限定を用いることは、今後の技術の発展を阻害することにつながる恐れが強く、引いては文化の発展をも阻害する恐れがあることを考え、オークションに関する権利制限については、政令において、一般的な要件のみにより規定するべきである。

(2)Ⅲ 電子メールの送信その他の送信
 省令案において、改正法第47条の5の特定送信に含まれる送信の列挙を行うとしているが、政令案への意見に書いた通り、関係省庁が多岐に渡るサーバー管理に関する要件を文化庁あるいは文部科学省単独で制定できる省令に委任することは適切でない。最低でも閣議決定を必要とする政令レベルで全ての要件を定めるべきである。

 また、政令案への意見で書いた通り、技術の発展と様々なケースが考えられる通信技術に関して、今の政令案・省令案にあるようにその類型を列挙型で制限することは、技術の発展を阻害し、引いては文化の発展をも阻害する恐れがあり、決して適切でないことを考え、「特定送信」は、政令において、一般的な要件のみにより規定するべきである。

(3)Ⅳ 送信可能化された情報の収集を禁止するための措置の方法
 省令案において、検索サービスの情報の収集を禁止する措置に関する類型の列挙を行うとしているが、政令案への意見に書いた通り、関係省庁が多岐に渡る検索サービスに関する要件を文化庁あるいは文部科学省単独で制定できる省令に委任することは適切でない。最低でも閣議決定を必要とする政令レベルで全ての要件を定めるべきである。

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2009年2月13日 (金)

第154回:ブルーレイ課金著作権法施行令案への提出パブコメ

 前々回取り上げた、ブルーレイ課金著作権法施行令案へのパブコメを書いて提出したので、ここにも載せておく。

(以下、提出パブコメ)

1.個人/団体の別:個人
2.氏名:兎園
3.住所:(略)
4.連絡先:

5.意見
(概要)
 本施行令改正案は、ブルーレイを私的録音録画補償金の対象に加えようとするものであるが、私的録音録画小委員会で補償金のそもそもの意義が問われた中で、その解決をおざなりにしたまま、このような合理的根拠に乏しい対象拡大をするべきではない。

(意見)
 確かにこのブルーレイ課金は、ダビング10解禁のために文部科学大臣と経済産業大臣の間で暫定的な措置として合意されたという経緯がある(平成20年6月の両大臣記者会見http://www.meti.go.jp/speeches/data_ed/ed080617j.html及びhttp://www.mext.go.jp/b_menu/daijin/08070402.htm参照)が、ダビング10への移行で多少混乱が生じたことを除けば、前後で何かが大きく変わった気はしない。

 確かに今はコピーフリーのアナログ放送もあるが、ブルーレイにアナログ放送を録画することはまずもって無いと考えられるため、アナログ放送の存在もブルーレイ課金の根拠としては薄弱であり、そのアナログ放送も2011年には止められる予定となっているのである。

 特に、権利者団体は、ダビング10への移行によってコピーが増え自分たちに被害が出ると大騒ぎをしたが、移行後半年以上経った今現在においても、ダビング10の実施による被害増を証明するに足る具体的な証拠は全く示されておらず、現時点でブルーレイ課金に合理性があるとは私には全く思えない。

 わずかに緩和されたとは言え、今なお地上デジタル放送にはダビング10という不当に厳しいコピー制限がかかったままである。こうした実質的に全国民に転嫁されるコストで不当に厳しい制限を課している機器と媒体にさらに補償金を賦課しようとするのは、不当の上塗りである。

 本施行令改正案は、ブルーレイを私的録音録画補償金の対象に加えようとするものであるが、私的録音録画小委員会で補償金のそもそもの意義が問われた中で、その解決をおざなりにしたまま、このような合理的根拠に乏しい対象拡大をするべきではない。

 必要であれば、最近の著作権分科会報告書で今後文化庁が設けるとされた、権利者、メーカー、消費者などの関係者が忌憚のない意見交換ができる場で、ブルーレイについても合わせて合意形成を目指すべきである。この意見交換の場は、公開にするとともに、より公平を期して、消費者・ユーザー代表を3分の1、メーカー代表を3分の1、権利者代表を3分の1とするべきである。権利者が不利という声があがるのかも知れないが、この程度の数の有識者を納得されられなくて、国民の理解が得られると思うことなど片腹痛い。真に国民の理解が得られない法改正・対象範囲の拡大などされるべきではない。(学者を入れて、全て4分の1ずつとしても良いが、私的録音録画小委員会において、補償金制度に対して国民視点に立った真の政策提言が出来なかった法学者を入れる必要はない。)

 なお、本施行令案では、追加指定が暫定的な措置であることが全く担保されていないため、去年6月の文部科学大臣・経済産業大臣間の合意は実質破棄されているのではないかと思うが、間接的にではあるが国民によって選ばれた両大臣間の合意に基づいて課金を行うことが各省庁に求められているということであれば、この追加指定を時限措置とし、暫定的な措置であることが明確に担保されなくてはならない。(記者会見でも、両大臣は、ブルーレイ課金は「暫定的な措置」であると明言している。)現行の私的録音録画補償金の仕組みは、一旦新たな対象を追加してしまうと、また各省の合意が無ければそれを取り除くことができなくなるという点でも問題を抱えているのであり、そうした本質的な問題点の検討をなおざりにしたまま、恒久的な形でブルーレイ課金を行うことは、両大臣の合意に基づいても不適切である。

 最後に念のため、上の意見の前提兼今後の検討の参考として、一昨年の私的録音録画小委員会の中間整理に対して私が提出した意見のまとめを以下に転記しておく。

1.そもそも、著作権法の様な私法が私的領域に踏み込むこと自体がおかしいのであり、私的領域での複製は原則自由かつ無償であることを法文上明確にすること。また、刑事罰の有無に関わらず、外形的に違法性を判別することの出来ない形態の複製をいたずらに違法とすることは社会的混乱を招くのみであり、厳に戒められるべきこと。

2.特に、補償金については、これが私的録音録画を自由にすることの代償であることを法文上明確にすること。すなわち、私的録音録画の自由を制限するDRM(コピーワンスやダビング10ほどに厳しいDRM)がかけられている場合は、補償措置が不要となることを法文上明確にすること。

3.また、タイムシフト、プレースシフト等は、外形的に複製がなされているにせよ、既に一度合法的に入手した著作物を自ら楽しむために移しているに過ぎず、このような態様の複製について補償は不要であることを法文上明確にすること。実質権利者が30条の範囲内での複製を積極的に認めているに等しい、レンタルCDやネット配信、有料放送からの複製もこれに準じ、補償が不要であることを明確にすること。

4.私的録音録画の自由の確保を法文上明確化するとした上で、私的録音録画を自由とすることによって、私的複製の範囲の私的録音録画によってどれほどの実害が著作権者に発生するのかについてのきちんとした調査を行うこと。
 この実害の算定にあたっては、補償の不必要な私的複製の形態や著作権者に損害を与えない私的複製の形態があることも考慮に入れ、私的録音録画の著作権者に与える経済的効果を丁寧に算出すること。単に私的録音録画の量のみを問題とすることなど論外であり、その算定に当たっては入念な検証を行うこと。

5.この算出された実害に基づいて補償金の課金の対象範囲と金額が決められること。特に、その決定にあたっては、コンテンツ産業振興として使われる税金も補償金の一種ととらえられることを念頭に置くこと。この場合でも、将来の権利者団体による際限の無い補償金要求を無くすため、対象範囲と金額が明確に法律レベルで確定されること。あらゆる私的録音録画について無制限の補償金要求権を権利者団体に与えることは、ドイツ等の状況を見ても、社会的混乱を招くのみであり、ユーザー・消費者・国民にとってきちんとセーフハーバーとして機能する範囲・金額の確定を行うこと。
 あるいは、実害が算出できないのであれば、原則にのっとり、私的録音録画補償金制度は廃止されること。

6.集められた補償金は、権利者の分配に使用されることなく、全額違法コピー対策やコンテンツ産業振興などの権利者全体を利する事業へ使用されること。

(12月14日の追記:メーカー側(JEITA)がパブコメを提出したとのリリースがあった(リリース意見本文(pdf)AV watchの記事ITmediaの記事参照)。)

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2009年2月 7日 (土)

第153回:文化審議会著作権分科会報告書

 文化庁のHPに文化審議会著作権分科会の今年度の報告書(pdf)が掲載された。中身は、今までの小委員会の報告書の寄せ集めに過ぎないのだが、これからのために少しメモを作っておきたいと思う。

 1月26日の著作権分科会の資料中の概要(pdf)でも分かるが、この報告書に含まれている法改正事項をまとめると以下のようになるだろう。

  • 情を知ってインターネット上で海賊版の販売等の申出をすることを著作権侵害行為とみなす。
  • 障害者のための権利制限の範囲の拡大。
  • オークション等における販売のための画像複製・掲載を権利制限の対象とする。
  • 検索エンジンのための複製等を権利制限の対象とする。(ただし、ロボット型のみ。ウェブサイトの設定により情報収集を拒否する旨の意思表示を行っている場合は権利制限の対象外。他者の著作物が侵害されていると知ったとき、または、他者の著作権を侵害するものであると知ることが出来たと認めるに足りる相当の理由がある場合は、サービス提供者に対して違法複製物の削除義務を課す。)
  • 相互運用性の確保や障害の発見等の一定の目的で行うリバース・エンジニアリングを権利制限の対象とする。
  • 情報解析分野の研究開発を権利制限の対象とする。
  • 機器利用時における蓄積及び通信を巡る蓄積等を権利制限の対象とする。
  • 違法録音録画物・違法配信からの情を知っての録音録画を、利用者保護に配慮した上で、私的複製(第30条)の適用除外とする。(いわゆるダウンロード違法化。プログラム他について引き続き検討。)

 他の点についてもいろいろ言いたいことはあるが、特にダウンロード違法化について、8000通以上のパブコメでユーザーが伝えようとしたことを、結局、文化庁は最後まで理解しようとしなかった。第157ページで、

意見募集では利用者が法的に不安定な立場におかれるのではないかとの疑念が多く寄せられたが、仮に現実に民事訴訟を提起する場合においても、利用者が違法録音録画物・違法配信であることを知りながら録音録画を行ったことに関する立証責任は権利者側にあり、権利者は実務上は利用者に警告を行うなどの段階を経た上で法的措置を行うことになると考えられるため、利用者が著しく不安定な立場に置かれて保護に欠けることになることはないと考えられる。

と、答えられないものは全て無視し、勝手にパブコメをあまりにも簡単にまとめて片付けているが、このような非道い回答で誤魔化される者がいるだろうか。立証責任が権利者側にあるといったところで、一個人しか行為に絡まないダウンロードにおいて「情を知って」という要件は、証明も反証も出来ないものであるし、警告自体濫用や詐欺が懸念されていたものである。法制小委へのパブコメでも書いたが、私的録音録画小委員会に対するパブコメでユーザーが数多く挙げた懸念は、このような単純な答えで片付けて良いようなものでは全く無かった。

 「第30条の範囲の見直しについては、特に違法録音録画物、違法配信からの録音録画について、利用者保護に配慮した上で著作権法改正を行うことに賛成する意見が大勢であったことから、文化庁は所要の措置を講じる必要がある」(第159ページ)らしいが、ダウンロード違法化と利用者保護は両立しない。だからこそ、あれだけのパブコメが集まったのだし、今でも反対の声は非常に強いのである。

(ダウンロード違法化問題に関して、第156~157ページの「この点については、例えば日本と欧米では違法複製の状況、法制及び技術的保護手段の実態が異なっているので国際的な動向を慎重に見極める必要がある、有料音楽配信の売り上げは伸びており現状において法改正の必要性はないのではないか等とする慎重な意見や、コンテンツホルダーは利用者が高い利便性のもとで合法的にコンテンツを享受できるような環境を充分提供したうえで権利侵害に対処すべきであるが、その点について日本の現状では不十分であり、権利者はそうした点を充分考えるべきである」という指摘は実にもっともだと思うが、残念ながら結論に結びついていない。)

 最終報告書がまとまったとは言え、まだ改正法案は影も形も見えず、提出されたとしても可決前に選挙が挟まる可能性が高い。知財政策・情報政策上も次の選挙の重要性は極めて大きい。ダウンロード違法化問題の次の舞台は国会である。

 最後に、「P2Pとかその辺の話」(元になったheise onlineの記事Spreeblickのブログ記事)で、ダウンロード違法化にともなって生じた混乱に懲りたのか、ドイツの法務大臣が3ストライクアウトポリシーの採用に否定的な見解を述べたとする記事を紹介しているので、念のため、リンクを張っておく。悪辣なダウンロード違法化を先駆けて行い、混乱の種を世界に撒いたドイツの罪も極めて重く、どっちもどっちだと思うが。

(2月7日夜の追記:公取がJASRACに包括許諾契約の改善命令を出す予定という記事があった(ITmediaの記事47newsの記事読売のネット記事参照)。番外その10のついでに書いたように、他社・他団体からの楽曲を使っても、びた一文まからない包括許諾契約というのも変なものであり、公正透明な契約がなされるようになればと思っているが、コストとメリットのバランスを考えた適正な改善策が取られないようでは意味がない。この問題についても、今後の展開が気になるところである。)

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2009年2月 3日 (火)

第152回:ブルーレイを補償金の対象とする著作権施行令のパブコメ募集

 ブルーレイを私的録画補償金の対象とする施行令案がパブコメにかかった(3月4日〆切。文化庁のリリース電子政府の該当ページ意見募集要領(pdf)施行令案概要(pdf)新旧対照条文(pdf)AV Watchの記事ITproの記事internet watchの記事cnetの記事マイコミジャーナルの記事も参照)。

 ブルーレイは現行のDVD課金の延長にあり、法律改正をせずとも、このような政令改正で追加出来てしまうので、法律が悪いと言ってしまえばそれまでだが、私的録音録画小委員会であれだけ私的録音録画補償金のそもそもの意義が問われたにもかかわらず、そのことを全て棚上げにしたあげく、消費者の頭越しに補償金の対象拡大をするのは本当にどうかと思う。(同じことは第102回のついでにも少し書いたが。)

 既に「Copy&Copyright Diary」で細かな突っ込みをされている(エントリ1エントリ2)ので、リンク先を読んで頂くだけでも十分だと思うが、この施行令案は技術的な要件のみで対象を限定しており、この施行令案がそのまま実施されれば、ほぼブルーレイ課金は恒久的なものとして既成事実化されてしまうことになるだろう。

 だが、わずかに緩和されたとは言え、今なお地上デジタル放送にはダビング10という不当に厳しいコピー制限がかかったままである。繰り返しになるが、こうした実質的に全国民に転嫁されるコストで不当に厳しい制限を課している機器と媒体にさらに補償金を賦課しようとするのは、不当の上塗りである。

 確かに今はコピーフリーのアナログ放送もあるが、ブルーレイにアナログ放送を録画することはまずもって無いだろうし、そのアナログ放送も2011年には止められる予定となっている。ダビング10への移行によってコピーが増え自分たちに被害が出ると言って権利者団体は大騒ぎをしたが、移行で多少混乱が生じたことを除けば、前後で何かが大きく変わった気はせず、現時点でブルーレイ課金に合理性があるとは私には全く思えない。

 ブルーレイ課金についても、補償金のそもそもの意義が問われた中で、その解決をおざなりにしたまま、中途半端にこのような対象拡大をするべきではないという意見を私は出すつもりである。

(政令で料率は決まっていないのでパブコメの対象外だとは思うが、上でリンクを張った各種記事によると、文化庁はブルーレイの料率を現行のDVDと同じとすることを目論んでいるようである。消費者から意見を出す機会はもう無いかも知れないので、料率についても突っ込んでおいても良いかも知れない。)

 最後に、EU議会の海賊版対策報告書案に関する記事が「P2Pとかその辺の話」で紹介されているので、興味のある方はリンク先をご覧頂ければと思う。以前、フランスの3ストライク法案を否定する議決をEU議会はした訳だが、その後、フランスの多数派工作によって、その修正条項は除かれ、今度は逆に著作権検閲を是認するかのような報告書案がスペイン出身の議員から出されているようであり、EU議会レベルでのロビー活動も激しくなっていると見え、ヨーロッパの情勢も混沌としている。

(2月4日の追記:コメントで、2008年6月の文科省と経産省で合意されたものという文書に対するリンクを張って頂いた。補償金問題に関する重要な参考資料の一つであり、国の告示等に類し、著作権の権利の目的とならないものと私は判断するので、以下に転載する。出所は確認できていないが、偽物にしてはできすぎており、確かに情報公開請求なりで公開されたものではないかと私も思う。しかし、暫定措置として合意したと各省が言ったところで、そのような合意には本当の拘束力は無い。現行の私的録音録画補償金は、現行の政令指定の仕組みでは一旦対象を追加してしまうと、また各省の合意が無ければそれを取り除くことができないという点でも本質的な問題を抱えているのである。(匿名希望様、情報ありがとうございます。))

June_2008


(2月6日の追記:権利者団体が集まっていつものようにブルーレイ課金を求める記者会見を開いたようであり、念のために各種記事(AV watchの記事ITmediaの記事ITproの記事日経TechOnの記事Phile webの記事権利者団体連合のリリース)へのリンクを張っておく。他にも突っ込みどころは山ほどあるが、2点だけ突っ込んでおくと、著作権法第30条第2項には「政令で定めるもの」という限定が明文で入っており、日本の私的録音録画補償金制度は、私的録音録画が出来たら何でもかんでも補償金という制度には元からなっていないし、両省合意の重みを言うなら、ブルーレイの政令指定が「暫定的な措置」であることが明確に担保されなくてはならないだろう。いつも通りと言えばいつも通りだが、いい加減この程度で人を欺けると思わないでもらいたいものである。)

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2008年12月17日 (水)

第143回:文化庁天下りリスト

 先日、文化庁の私的録音録画小委員会が開かれ、ダウンロード違法化の方針を含む報告書がまとめられた(ITmediaの記事ITproの記事1記事2internet watchの記事日経のネット記事47newsの記事マイコミジャーナルの記事)。

 文化庁は、ダウンロード違法化問題について8千件以上集まったパブコメを完全に無視し去ったのである。まだ、12月25日の法制問題小委員会(開催案内)、来年1月6日の過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会(開催案内)、さらにその後2月くらいまでに開かれるだろう上位審議会の著作権分科会などが残っているが、文化庁や文化審議会には期待するだけムダだろう。

 ダウンロード違法化の問題点は、法制小委員会への提出パブコメ第126回でも書いており、ここで繰り返すことはしないが、文化庁が多くの国民の意見を無視して有害無益な結論を出す根はどこにあるのかと考えていくと、第81回でも書いたように、私の考えはどうしても天下りによる腐敗に行き着く。

 第81回では、衆議院の天下り調査(正式名称は「中央省庁の補助金等交付状況、事業発注状況及び国家公務員の再就職状況に関する予備的調査」)から、計算した合計数字だけを示したが、より詳しい情報も何かの役に立つかも知れない、この調査から文化庁関連部分を抜き出してここに載せておきたいと思う。(行政府から国会に提出された資料として、国会図書館等で誰でも読めるものであり、単に事実を示しているに過ぎず、著作物性はないものと私は判断するが、再配布等を行う場合は自己責任で行って頂けるようお願いする。)

 資料を見るにあたっては、以下の点に注意頂きたい。、

  • 調査全体は非常に膨大であり、ここで抜き出したのはあくまで文化庁所管団体部分のみである。
  • 平成18年4月1日現在での調査であり、現時点のものではない。(例えば、Wikipediaの注にもあるように、JASRAC理事長はもう天下りではない。)
  • およそのことは分かるが、いわゆる公益法人等の各省庁の所管団体への公務員再就職者数を示しているだけで、天下りの実態を本当に正確に表している訳ではない。公務員再就職者の給与等も不明であり、中には他愛のない再就職も含まれていると考えられる。
  • 文化庁分の合計は257人(内訳:非常勤職員1人、常勤職員22人、非常勤役員225人、常勤役員9人。天下り先:公益法人121。)。(文科省全体では、文部科学省全体では、天下り人数は3007人、天下り先団体数934と跳ね上がり、それも大学などの学校が多く、文科省全体としては、教育行政の方が病根は深いことをうかがわせる。)

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 何度でも私は繰り返すが、法改正や規制を盾にした天下りなど再就職ポストを用いた汚職以外の何物でもない。自分たちの利権のみ伸ばせれば良いとばかりに、天下り役人どもはダウンロード違法化のような有害無益な規制強化を押し進めようとするが、その前に、文化庁のような規制官庁と規制業界の天下りによる癒着・腐敗関係の精算こそ必要であると私は言い続けるだろう。

 第41回に載せたダウンロード違法化問題に関する著作権フリー資料もほとんど手を加える必要性を感じない。現時点では文化庁が単に方針を示しただけで、閣議決定・国会提出すらされた訳ではなく、今の政局の混迷具合を見ても、ダウンロード違法化問題の先は長い。著作権問題の中では、ダウンロード違法化問題と一般フェアユース条項の導入は、選挙の争点としても良いくらいの大問題だと私は思っている。

 最後に、最近の知財関連のニュースも少し紹介しておくと、カナダ政府は、ブランクCDへの補償金料率を21セントから29セントに引き上げようとしているようである(「P2Pとかその辺の話」の紹介記事cyberpresseの記事(フランス語))。オーディオカセットについては料率を据え置きとしている点などを見ても、iPhoneに対する課金が最高裁判決によって止まったため、やはり消費者のあずかり知らないところで、カナダでも珍妙な妥協が図られようとしているのではないかと私は思う。

 なお、権利者(放送局)側が最高裁に持ち込むと公言しているので、まだ片付いたとは言えないが、「まねきTV」のサービスを合法とする判決が知財高裁でも支持された(internet watchの記事ITmediaの記事知財情報局の記事)ので、念のために記事へのリンクを張っておく。

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2008年11月 8日 (土)

第128回:文化庁・法制問題小委員会の中間まとめに対する提出パブコメ

 文化庁・文化審議会著作権分科会・法制問題小委員会の中間まとめに対するパブコメも書いて提出したので、ここに載せておく。

(以下、提出パブコメ)

 法制問題小委員会中間まとめについて下記の通り、意見を提出します。

     記

1.個人/団体の別:個人
2.氏名:兎園
3.住所:
4.連絡先:

5.該当ページおよび項目名:
(1)第2節 私的使用目的の複製の見直しについて(11~20ページ)
(2)第3節 リバース・エンジニアリングに係る法的課題について(21~39ページ)
(3)第4節 研究開発における情報利用の円滑化について(40~49ページ)
(4)第5節 機器利用時・通信過程における蓄積等の取扱いについて(50~62ページ)
(5)中間まとめ全体

6.意見
(1)「第2節 私的使用目的の複製の見直しについて(11~20ページ)」に対する意見
 第11~12ページにおいて、平成19年12月18日時点のペーパーを意見募集後の私的録音録画小委員会の論点整理として固定化しようとしているが、このペーパーは8720通にも及ぶパブコメを完全に無視して文化庁が勝手に作ったもので、同日の小委員会に出席していた消費者代表委員からも激しい批判を浴びたものであり、平成19年度の私的録音録画小委員会の論点整理として全く不適切なものである。最終報告書においては、この論点整理に関する記載は全て削除するか、平成1月23日時点の「私的録音録画小委員会の審議の経過について」(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/bunka/gijiroku/020/08012413/001.htm参照)の内容のみをもって平成19年度の私的録音録画小委員会の整理とするべきである。

 また、第16ページの「② 利用者保護について」で、利用者保護対策が進んでいるかの如き印象操作を行っているが、日本レコード協会の権利者団体のエルマークもあくまで日本レコード協会所属のレコード会社と、その音楽配信サイトが何らかのライセンスを結んでいることを示すものに過ぎず、どこまで行っても、エルマークのありなしはそのサイトのコンテンツが著作権法上適法に提供されたものか、違法に提供されたものかを示すクライテリアたり得ない上、自らが作製した著作物を離れてサイトそのものを違法と著作権者団体が認定することは、明らかに権利の乱用であり、到底認められるべきことではない。最終報告書においては、この部分に、このような否定的評価も明記するべきである。

 そもそも、平成19年度の私的録音録画小委員会中間整理に対するパブコメにおいて、ダウンロード違法化に対する大多数の反対意見はダウンロードの違法化をするなと言っているのであって、意見を重く受け止めてダウンロードを違法化して欲しいなどとする意見ではカケラもないのであり、このような意見のすりかえは決して許されない。

 去年のパブコメでは、ダウンロード違法化について、①そもそも著作権という私法が私的領域に踏み込むこと自体がおかしい、②家庭内の複製行為を取り締まることはほとんどできず、このような法改正には実効性がない、③通常の録音録画物について違法合法を区別することはできない、④特に、インターネット利用では、キャッシュとして自動的になされるコピーがあるなど、違法合法を外形的に区別できないため、ダウンロードが違法と言われても一般ユーザーにはどうしたら良いのかさっぱり分からず、このような法改正は社会的混乱しかもたらさない、⑤ダウンロードはその行為に1個人しか絡まないため、エスパーでも無い限り「情を知って」の要件は証明も反証もできないものであり、この要件は司法判断でどう倒されるか分からず、場合によってはインターネットへのアクセスそのものに影響を及ぼし兼ねないこのような法改正は極めて危険である、⑥そもそも違法流通は送信可能化権による対応が可能である上、この送信可能化権との関係でダウンロードによる損害額がどう算定されるのかもよく分からない、⑦パロディの著作物のダウンロードについて、ごく普通のユーザーにまでリスクを負わせるのはおかしい、⑧研究など公正利用として認められるべき目的の私的複製まで影響を受ける、といった懸念・不信がユーザーなどから示されているが、このうち、④の問題が、わずかに、本中間まとめにおいてブラウザキャッシュなどが権利制限の対象されるべきとされていることで、かろうじて緩和されそうなことを除き、去年から状況にほとんど変化はないのであり、ダウンロード違法化の合理的な根拠はほとんど全くと言って良いほど何もないのである。

 国際的に見てもダウンロードを違法化している国は決して多くなく、ダウンロード違法化をした上でエンフォースを試みたただ一つの国であるドイツでは、エンフォースに失敗し、その実効性は何らあがっておらず、フランスは、条文に3ステップテストを入れただけでダウンロードについてまだ最高裁の結論が出ていないところで、俗に3ストライクアウト法案と呼ばれるバランスを欠いた取組を無理矢理押し進めようとしているが、最近のEUの通信に関するディレクティブでネット切断型の対策を否定されるなどその先行きは不透明となっており、判例法の国アメリカでも、P2P訴訟が猖獗を極め、何ら出口は見えていないなど、欧米の動向も、この点に関しては混乱するだけ混乱しており、反面教師にしかならない。国際条約にダウンロードを明確に違法化すべきと明記されている訳でもなく、ダウンロード違法化が国際潮流になっているなどということは今もってない。

 プログラムも含め、あらゆる著作物のダウンロード違法化に、私は今なお完全に反対する。このような有害無益な法改正の方針は、技術の発展の真の意味を全く理解しておらず、一般国民の行動原理とモラルとも乖離した、天下り役人の独善的な妄想に基づくものでしかない。違法ダウンロードによる権利者の経済的不利益が大きいとする根拠も薄弱であり、違法ダウンロードについては、拙速な法改正は行わず、解釈論による対応なども検討しつつ、様々な司法判断や状況が積み重なってきたときに改めて立法の是非を判断するべきである。

(2)「第3節 リバース・エンジニアリングに係る法的課題について(21~39ページ)」に対する意見
 第23ページに、「国際的に見ても、リバース・エンジニアリングの取扱いに関して大きな議論が存在する状況ではなくなってきている」と書かれているが、同じ中間まとめ中にある諸外国の立法例だけを見ても、ドイツ、フランス、スイス、イギリス、オーストラリア、アメリカ等があげられており、最終報告書においては、このような不適切な記載は削除するべきである。

 技術的な調査・解析は、権利者の利益を害するどころか、技術の発展を通じて社会全体を裨益するものであり、著作権法によってこのような利用まで萎縮することは、その法目的に照らしても本来あってはならないことである。遅きに失した感すらあり、このリバース・エンジニアリングに関する権利制限を早期に確実に導入することを私は求める。

(3)「第4節 研究開発における情報利用の円滑化について(40~49ページ)」に対する意見
 上でも書いたことだが、技術的な試験・研究は、権利者の利益を害するどころか、技術の発展を通じて社会全体を裨益するものであり、著作権法によってこのような利用まで萎縮することは、その法目的に照らしても本来あってはならないことである。さらに、主として情報解析分野のみについて一定の条件の下で権利制限を行うべきとしている点は権利制限の範囲としてあまりにも狭く不十分である。この点については、研究開発のための広く一般的な権利制限を早期に確実に導入することを私は求める。研究開発のための広く一般的な権利制限は、特に、技術動向に対する柔軟な対応が必要とされるため、列挙型ではなく、一般的な制約要件のみを設けた包括的なものとされるべきである。

 さらに、特にインターネットのように、ほぼ全国民が利用者兼権利者となり得、考えられる利用形態が発散し、個別の規定では公正利用の類型を拾い切れなくなるところでは、フェアユースのような一般規定は保護と利用のバランスを取る上で重要な意味を持つものである。一般フェアユース条項についてもその検討を進め、可能な限り早期に導入することを私は求める。

(4)「第5節 機器利用時・通信過程における蓄積等の取扱いについて(50~62ページ)」に対する意見
 利用者の通常の機器利用において生じる一時的蓄積について法的安定性を高めることもまた必要なことであり、この機器利用時の一時的蓄積に対する権利制限もまた早期に確実に導入することを私は求める。この点について今整理されている以上の要件は不要であり、法的安定性と萎縮効果の防止の必要性を十分に認識し、これ以上の要件を追加することは厳に戒められるべきである。

 通信過程における一時的蓄積等についても権利制限はやはり同様に必要であり、これを早期に確実に導入することを私は求める。特に、この点については、技術動向への柔軟な対応ができない機能列挙型の権利制限ではなく、著作物の通常の利用を害さず、権利者の正当な利益を不当に害しない限りにおいて、というような一般的な制約要件を設けた上で、全ての蓄積等の行為について包括的に権利を及ぼさないこととされるべきである。

 また、この第5節には、諸外国の立法例が引用されていないが、去年の著作権分科会報告書にも書かれている通り、EUディレクティブから、英仏独を含む各国の立法例があり、きちんと諸外国の立法例を参考として引用するべきである。

(5)中間まとめ全体について
 繰り返すが、私は、ダウンロードの違法化をするなと言っているのであって、意見を重く受け止めてダウンロードを違法化して欲しいなど言っているのではない。この点について腐った天下り役人の遁辞など全く求めていない。本来法改正は立法府の権限であるが、いやしくも立法を議論する以上、一般国民のコモンセンスに反する法律、守られようがない法律は百害あって一利ないという法哲学の初歩は知っていてもらいたい。どんな法律であれ、作ればその通りに国民が動くなどということはない。技術的・外形的に違法性の区別がつかない以上、ダウンロード違法化は法規範としての力すら持ち得ない。このような法改正を押し通せば、結局、ダウンロード以外も含め著作権法全体に対するモラルハザードがさらに進行するだけであり、これを逆にねじ曲げてエンフォースしようとすれば、著作権検閲という日本国として最低最悪の手段に突き進む恐れしかない。どう転ぼうが、ダウンロード違法化は百害あって一利ない最低の法改正である。

 それに対し、本中間まとめで取り上げられている権利制限は、どれも社会全体を裨益し、経済はおろか、引いては文化の発展にも寄与するものである。次の法改正においては、ダウンロード違法化を除き、権利制限のみの法改正のみを是非行ってもらいたい。

 文化庁あるいは文部科学省にあっては、パブコメを無視せず、真に公平かつ妥当な国民視点に基づく検討が行われるよう、今後、その審議会運営の正常化を真摯に行うことを、私は一国民として強く求める。文化庁あるいは文部科学省がこのような正常化が不可能であるとするなら、これは、行政府が特定業界との癒着を断ち切ることが不可能であると告白したに等しく、私は一国民として、今後真に公平かつ妥当な国民視点に基づく著作権法改正の検討を直接立法府で行うべきであると立法府に求めていくと最後に付言しておく。

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第127回:文化庁・過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会の中間整理に対する提出パブコメ

 文化庁・文化審議会著作権分科会・過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会の中間整理に対するパブコメを書いて提出したので、ここに載せておく。

(以下、提出パブコメ)

過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会中間整理について下記の通り、意見を提出します。

     記

1.個人/団体の別:個人
2.氏名:兎園
3.住所:
4.連絡先:

5.該当ページおよび項目名:
(1)第2章第3節 権利者不明の場合の利用の円滑化について(19~37ページ)
(2)第2章第4節 次代の文化の土台となるアーカイブの円滑化について(38~48ページ)
(3)第3章 保護期間の在り方について(51~97ページ)

6.意見
(1)「第2章第3節 権利者不明の場合の利用の円滑化について(19~37ページ)」に対する意見
 権利者が不明であることによって著作物が死蔵され、社会全体にとっての損失となる事態を防ぐために、権利者不明の場合の利用の円滑化について必要な制度的な対応が取られることを期待する。その際には、特に、余計なコストを発生させることがないA案(権利者の捜索について相当の努力を払っても権利者と連絡することができない場合に、著作物の利用をできることとする)を軸に検討が進められるべきである。ここで、第3者機関を介在させた場合、天下りの温床となり、その手続きコストによって貴重な社会的コストがムダに浪費されることになると考えられ、B案には全く賛同できない。

 また、「写り込み」等の場合についても、権利制限の見直しなどの検討が今後進むことを期待する。

(2)「第2章第4節 次代の文化の土台となるアーカイブの円滑化について(38~48ページ)」に対する意見
 図書館の権利制限について、国立国会図書館における納本直後のデジタル化を法改正で認める方針とされていることに賛成する。しかし、国会図書館はあらゆる資料の保存という特殊な使命を帯びているのは確かにその通りであるが、他の図書館も、多かれ少なかれ資料の保存を目的としていることに変わりはなく、同時に、他の図書館についても、納本直後の資料のデジタル化を認めるようにすることを検討するべきである。デジタル化された資料の館内閲覧やコピーサービスのルール等について、関係者間で協議し、著作物の通常の利用を妨げず著作者の正当な利益を不当に害しない形にするならなおさらである。

 また、記録のための技術・媒体の急速な変化に伴う旧式化により、媒体の内容を再生するために必要な機器が市場で入手困難となり、事実上閲覧が不可能となってしまう事態が生じていることから、新しい媒体に移し替えて保存する必要があるという問題点について、このようなデジタル化が現行法上可能であることを早期に明確化するべきである。同時に、他にも、文化庁の異様に厳格な条文解釈によって、本来認められるべき公正な利用まで萎縮しているということがないかということを全権利制限条項についてきちんと洗い直し、問題のある権利制限条項の解釈について同様の対応を検討するべきである。

(3)「第3章 保護期間の在り方について(51~97ページ)」に対する意見
 ひ孫の孫くらいのことまで考えて創作をしている人間がいるとも思われず、文化の多様化のためにはこれ以上の延長はほとんど何の役にも経たず、経済的にも、著作者の死後50年を経てなお権利処理コストを上回る財産的価値を保っている極めて稀な著作物のために、このコストを下回るほとんど全ての著作物の利用を阻害することは全く妥当でない。

 また、実演家の著作隣接権の保護期間延長についても、今のところ賛成する理由は何一つない。

 レコード屋と放送局という流通業者の著作隣接権の保護期間の延長は論外である。レコード会社や放送局の著作隣接権は、彼らが強い政治力を持っていたことから無理矢理ねじ込まれた権利に過ぎず、その目的は流通コストへの投資を促すことのみにあったものであるが、インターネットという流通コストの極めて低い流通チャネルがある今、独占権というインセンティブで流通業者に投資を促さねばならない文化上の理由はほぼ無くなっているのである。

 著作権の保護期間の延長について私は完全に反対する。文化庁と権利者団体を除けばほぼ否定的な結論が出そろっているこの問題について、検討が先延ばしにされたこと自体残念であり、最終報告書においては、この問題についてこれ以上検討する必要はないとするべきである。

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2008年11月 5日 (水)

第126回:ダウンロード違法化問題の現状

 文化庁などへのパブコメのための個人的なメモに近く、特に目新しいことは含まれていないが、今後の参考に、特にダウンロード違法化問題に関する現状のまとめを書いておきたいと思う。

 見えないところで何が行われているかまでは分からないが、目に見える限りでは、9月19日の第9回の法制問題小委員会の中間整理案(11月10日を〆切としてパブコメにかかっている。第119回参照)で、

第2節 私的使用目的の複製の見直しについて
(中略)
3 検討結果
 以上のように、本小委員会としては、私的録音録画小委員会の検討の成果を踏まえることを基本としつつも、この課題が、理論的には録音・録画に限定される問題ではないことを踏まえ、録音・録画以外の著作物の私的複製について、それと同様の取扱いとすべきかどうかを主として検討してきた。この点に関しては、プログラムの著作物(特にゲームプログラム)について関係者からの要望が強く寄せられており、現在のところ、違法複製物からの複製の実態が相当量にのぼっていることが報告されている状況にある。その他の分野の著作物については、現在のところ大きな要望は寄せられていない。
 一方、私的録音録画小委員会における検討は、私的録音録画補償金制度の見直しを主たる検討事項としている中で行われてきた経緯があり、私的複製の範囲の見直し以外の検討事項も含めた同小委員会全体の取りまとめが行われていないことから、これらの検討事項間の関係をどのように考えていくのか、同小委員会の検討の方向性も踏まえるべきものと考えられる。
 プログラムの著作物等の他の著作物の取扱いについては、このような周辺状況も勘案しながら、また利用者に混乱を生じさせないとの観点にも配意して、場合によっては、検討の熟度に応じて段階的に最終的な取扱いを判断していくことも視野に入れつつ検討を行っていくことが適当と考える。

と書かれた後、10月20日の私的録音録画小委員会(第4回)で、

第2章 著作権法第30条の範囲の見直し
第1節 中間整理の概要
第2節 違法録音録画物,違法配信からの私的録音録画

 中間整理以降の意見募集の結果と,中間整理後に行われた利用者の懸念への対応策の集中的検討を踏まえ,対応策をまとめる

第3節 適法配信事業者から入手した著作物等の録音録画物からの私的録音録画
 中間整理以降の論点整理の内容等を踏まえ,対応策をまとめる。

第3章 今後の進め方
 今年度の本小委員会での検討結果を総括し,私的録音録画問題の解決に向けての対応方法等をまとめる。

という内容の報告書骨子案に基づいて、第119回の追記に書いたように、ダウンロード違法化を行うという方針を確認したところというのが現在の状態である。

 保護期間延長とiPod課金という、天下り先の権利者団体の収入が多少増すことがあるかも知れないが全体として文化的にも経済的にもマイナスにしかなりようがない、有害無益な保護強化策が様々な事情で流れたために、文化庁としては、保護強化策の選択肢として唯一残されたダウンロード違法化に賭けて来たのだろう。

 骨子案には、集中検討を行うなどと調子の良いことを書いているが、ダウンロード違法化の内容自体は、違法な録音録画物を情を知ってダウンロードする行為を私的複製の権利制限から外すということで、去年から何も変わっておらず、恐らく変えようもない(去年から、刑事罰はつかず、録音録画に限るということだった。プログラムが入るかどうかという点は新しい論点だが。)。このような既定路線ありきの中でいくら集中的に検討しようが、大騒動時のパブコメで示された利用者の懸念・不信感はほとんど払拭されないどころか、さらに増すだけのことだろう。

 去年の中間整理に対して、自分のパブコメで書いたダウンロード違法化問題に関する問題点(第20回参照)と、文化庁に提出された他のパブコメに書かれた懸念(第44回参照)から気になったものを合わせ、私なりに箇条書きにまとめると、

  1. そもそも著作権という私法が私的領域に踏み込むこと自体がおかしい。
  2. 家庭内の複製行為を取り締まることはほとんどできず、このような法改正には実効性がない。
  3. 通常の録音録画物について違法合法を区別することはできない。
  4. 特に、インターネット利用では、キャッシュとして自動的になされるコピーがあるなど、違法合法を外形的に区別できないため、ダウンロードが違法と言われても一般ユーザーにはどうしたら良いのかさっぱり分からず、このような法改正は社会的混乱しかもたらさない。
  5. 情を知ってという条件も、司法判断でどう倒されるか分からず、場合によってはインターネットへのアクセスそのものに影響を及ぼし兼ねないこのような法改正は極めて危険である。
  6. そもそも違法流通は送信可能化権による対応が可能である上、この送信可能化権との関係でダウンロードによる損害額がどう算定されるのかもよく分からない。
  7. パロディの著作物のダウンロードについて、ごく普通のユーザーにまでリスクを負わせるのはおかしい。
  8. 研究など公正利用として認められるべき目的の私的複製まで影響を受ける。

となる(もし興味があれば、キャッシュの問題について第42回、知る権利について第75回もご覧頂ければと思う。)。

 このうち、3の違法合法の区別については、法制小委員会の報告書でプログラムのダウンロード違法化の検討のところで、

② 利用者保護について
 前述のとおり、私的録音録画小委員会では、第30条の改正を行う際には、利用者保護対策を措置すべきとしており、その中では、
・権利者が許諾したコンテンツを扱うサイト等に関する情報の提供、警告・執行方法の手順に関する周知、相談窓口の設置など
・適法マークの推進
といった対応を権利者が行うこととされている。
 これについては、録音・録画の分野においては、例えば、社団法人日本レコード協会が、適法な音楽配信事業者であることを識別するための「エルマーク」を導入するとともに、エルマーク配布先である当該事業者に関する情報をHPに掲載し、利用者への情報提供に努めるなど、その取組が進められている。

とあたかも利用者保護の取組が進んでいるかのような印象操作が行われているが、日本レコード協会の権利者団体の適法マークは実質無意味である上、自らが作製した著作物を離れてサイトそのものを違法と著作権者団体が認定することは、明らかに権利の乱用であり、到底認められるべきことではない。(突っ込むのもバカバカしいのだが、録画(映像)はどうなっているのか良く分からないし、エルマークもあくまで日本レコード協会所属のレコード会社と、その音楽配信サイトが何らかのライセンスを結んでいることを示すものに過ぎないので、どこまで行っても、エルマークのありなしはそのサイトのコンテンツが著作権法上適法に提供されたものか、違法に提供されたものかを示すクライテリアたり得ない。)

 7や8のパロディや研究目的の私的複製などについては、一般フェアユース条項で救われる部分も出てくるのではないかと思っていたが、ThinkCのシンポジウムで知財本部の委員も務めている中山信弘先生が次の通常国会での成立は難しいと発言しており、これもあやしくなって来ている。(ITmediaの記事internet watchの記事参照。やはり記事によると、元著作権課長の甲野氏が「権利を侵害するかしないかは刑事罰がかかるかかからないかの問題でもあり、厳密に条文を書こうとすると大変な手間。『公正な』という概念で刑事罰の問題を解決できるのか。実現のためにはいろいろな壁がある」と発言したらしい。これが典型的な役人の考え方だと思うが、親告罪であることが多少セーフハーバーになっているとはいえ、かえって、アニメ画像一枚でも捕まり得るという現状の刑事罰リスクからも、フェアユースは必要なものと私は考える。)

 ただ、今現在検討されている機器利用時の複製に対する権利制限で、4のキャッシュの問題は少しは緩和されることになるだろう。ただし、これも、法制問題小委員会の報告書で、ブラウザキャッシュに対する権利制限の適用について、「ブラウザキャッシュの例では、一般に行われている視聴方法でブラウザによりオンラインの著作物等を視聴している限りにおいては、その際に生じる蓄積物(ブラウザキャッシュ)を作成する行為は、本要件に該当すると考えられるが、例えば、ユーザーが設定を変更して、ブラウザで予定されている範囲を超えて視聴等を行うことを意図して蓄積する場合や、蓄積後に他のアプリケーションを用いて視聴等を行うなどしてこの蓄積物をいわば独立した複製物として視聴に供するような場合には、本要件には該当しないものと考えられる(ただし、このような場合であっても、私的使用目的の場合(第30条)など、他の権利制限規定の対象となる場合はありうる)。」と書かれているものの、条文に書かれる話でもなく、この適用自体かなり曖昧であり、この権利制限とダウンロード違法化が一緒にされた場合、その後に、権利者団体がいわゆる動画投稿サイトの単なる視聴ユーザーにまで難癖をつけに来る可能性があることには注意しておいた方が良い。

 詳しくは第40回第80回で書いたことや、他のエントリなどをご覧頂ければと思うが、ダウンロード違法化が国際潮流になっているなどということは今もってない。ダウンロード違法化をした上でエンフォースを試みたただ一つの国であるドイツでは、エンフォースに失敗し、その実効性は何らあがっていないし、フランスでは、条文に3ステップテストを入れただけでダウンロードについてまだ最高裁の結論が出ていないところで、3ストライクアウト法案という特殊な取組を押し進めようとしている(ecransの記事などによると、この法案はネット切断を残したまま上院を通り、次は下院での審議へと移るようである。)。判例法の国アメリカでも、P2P訴訟が猖獗を極め、何ら出口は見えていない。イギリスはイギリスで、ネット切断型の対策をプロバイダにやらせようとしていたりとバラバラである。欧米の動向も、この点に関しては混乱するだけ混乱しており、反面教師にしかならない。

 結局、フェアユース導入の情勢の微妙さも考慮に入れると、今のところ、ブラウザキャッシュがわずかに権利制限の対象となりそうなことを除き、去年から状況にほとんど変化はないのであり、ダウンロード違法化の合理的な根拠はほとんど全くと言って良いほど何もないのである。これから先は、文化庁と天下り先の著作権団体の政治力次第のところもあるが、これほど不合理な法改正を最後までごり押しするのは非常に困難ではないかと私は見ている。

 私的録音録画小委員会ではパブコメを募集しないようなので、私としては、多少変則的な形とはなるが、まずは上の法制問題小委員会へのパブコメで、他の論点と一緒に、ダウンロード違法化問題についても上のような問題点を指摘し、ダウンロード違法化反対の意見を提出したいと思っている。

(11月5日夜の追記:なお、上の法制問題小委員会の中間整理には、研究のための権利制限についても記載されているが、今のところ追加されそうなのは情報解析のためのみとあまりにも狭く、この問題ではほとんど考慮に入れるに値しない。無論、情報解析研究のための権利制限が重要でないということではないので、念のため。)

(11月6日の追記:また、第121回のついでに紹介した、検索エンジンを合法とするスペイン地裁の判決を含む記事として、フランスのjuriscom.netの記事判決文へのリンク(スペイン語))があったので、念のためにここにリンクを張っておく。)

(11月8日の追記:上では1行で済ませてしまったが、フランスの3ストライクアウト法案の上院通過について、「P2Pとかその辺の話」で詳細な記事の紹介がされているので、興味のある方は是非リンク先をご覧頂ければと思う。)

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2008年10月14日 (火)

第119回:文化庁・著作権分科会・法制問題小委員会の中間まとめと過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会の中間整理に対する意見募集の開始

 文化庁から、今年度の法制問題小委員会の中間まとめと過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会の中間整理の二つがこの9日から、11月10日を〆切としてパブコメにかかっている。(法制小委のパブコメについて、文化庁のリリース電子政府の該当ページ、過去小委のパブコメについても、文化庁のリリース電子政府の該当ページ参照)

 これらには、それぞれ大問題となっている著作権問題の2つの大論点、ダウンロード違法化と保護期間延長の取扱いが含まれており、決して見過ごすことは出来ない。ダウンロード違法化については多少トーンダウンした書き方になっており、保護期間延長についても両論併記の形になっているところを見ると、今回は文化庁もさすがに様々な情勢から様子見と決め込んだものと見えるが、両論点とも単なる先延ばしの記載であり、隙あらば権利者団体とつるんで文化庁が法改正をねじ込んで来ようとすることもまた間違いなく、安心できる状況にはないことを如実に示している。

(1)法制問題小委員会の中間まとめ
 およその内容については、概要を読んでもらっても良いのだが、法制小委の中間まとめの主な論点は以下の5つである。

  • デジタルコンテンツ流通促進法制
  • 私的使用目的の複製の見直し
  • リバース・エンジニアリングに係る法的課題
  • 研究開発における情報利用の円滑化
  • 機器利用時・通信過程における蓄積等の取扱い

 大した方向性の出ていないコンテンツ流通促進法制に関する検討はともかく(第78回で書いたように、コンテンツ流通促進法制を検討すること自体無意味だと私は思っている。権利者不明の場合の著作物の取扱いは確かに重要だが、コンテンツ流通促進法制と称して大騒ぎをしている話とは論点がずれているだろう。)、私的使用目的の複製の見直しについて、即座にダウンロード違法化をするとは書かれていないものの、意見募集の結果をほぼ無視して大批判を浴び、その後一度もロクに議論していない、平成19年12月時点のペーパーを私的録音録画小委員会の意見募集後の論点整理(第11~12ページ参照)として固定化し、「検討の熟度に応じて段階的に最終的な取扱いを判断」すると、ダウンロード違法化を既定路線としようとしているなど相変わらず油断も隙もない。ダウンロード違法化には今なお完全に反対するという意見を私はまた出すつもりである。(去年の12月時点の話は、第39回参照。)

 また、リバース・エンジニアリングや、研究開発、機器利用時・通信過程における蓄積等の取扱いについて、権利制限を行うとされていることについては、遅きに失した感すらあり、できる限り早期に行ってもらいたいものと思うが、それぞれ、権利制限の範囲が十分かという問題がある。リバース・エンジニアリングの権利制限について、相互運用性の確保や障害の発見等の一定の目的のためのみで良いのか、研究開発について、情報解析分野のみとして良いのかと考えると、必ずしも十分ではないと私は思っているがどうだろうか。(無論、後で他の点も検討すると書いてあるのだが、一旦ある点について法改正をしてしまうと、さらに同じ点について追加の法改正をするということはまず当分有り得ないので、ここも勝負所である。是非、このパブコメには、情報系の研究者のみならず、自然科学一般・人文・社会系の研究者にも意見を出して欲しいと私は思っている。)

(2)過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会の中間整理
 やはり概要を読んでもらっても良いのだが、過去小委の中間整理の論点は、以下の4点になるだろう。

  • 多数権利者が関わる場合の利用の円滑化
  • 権利者不明の場合の利用の円滑化
  • アーカイブの円滑化
  • 保護期間延長問題

 中でも一番の大問題が、保護期間延長問題であることは間違いないが、この論点に関する限り、小委員会における完全にすれ違いの議論がほぼそのまま中間整理にも反映され、両論併記で先延ばしの記載となっている。今回は保護期間延長について即座に法改正という様子は無いが、文化庁と権利者団体を除けばほぼ否定的な結論が出そろっているこの問題について、先延ばしとされたこと自体残念であり、ここでも私は、延長に反対し、これ以上検討する必要はないとする意見を出すつもりである。

 他の点は保護期間延長問題と比べるとあまり騒がれていないが、権利者不明の場合の著作物の取扱いや、図書館における資料のデジタル化のための権利制限なども重要な問題である。

 権利者不明の場合の対応については、いまいち実現に向けた具体性に欠けるものの、A案(権利者を捜す相当な努力の後、使用)・B案(努力の後、第3者機関に使用料相当額を支払って使用)として制度的対応の案が書かれており、どちらが良いか、また別な案があるかということを考える必要があるだろう。(個人的には、余計な第3者機関などは無い方が良いと思うが、中間整理をもう少し良く読んで意見を考えるつもりである。)

 また、図書館の権利制限について、国立国会図書館における納本直後のデジタル化を法改正で認める方針とされているが、これも国会図書館のみで良いのかということがある。国会図書館はあらゆる資料の保存という特殊な使命を帯びているのは確かにその通りであるが、他の図書館も、多かれ少なかれ資料の保存を目的としていることに変わりはなく、納本直後の資料のデジタル化を認めても良いのではないだろうか。デジタル化された資料の館内閲覧やコピーサービスのルール等について、関係者間で協議し、通常の利用を妨げず著作者の正当な利益を不当に害しない形にするならなおさらである。

(図書館に関することでは、記録のための技術・媒体の急速な変化に伴う旧式化により、SPレコード、5インチフロッピーディスク、ベータビデオのように、媒体の内容を再生するために必要な機器が市場で入手困難となり、事実上閲覧が不可能となってしまう事態が生じていることから、新しい媒体に移し替えて保存する必要があるという問題点が指摘され、これについては解釈変更で対応するとしているのだが、むしろ、こうした複製すら認めて来なかった文化庁の異様に厳格な権利制限の条文解釈にこそ問題があったとするべきだろう。なお、こうしたメディア移行の問題は、まだあまり私的複製問題との絡みでは指摘されていないが、そのうち私的複製問題とも大きく絡んでくることになるだろう。)

 私的録音録画小委員会の中間整理は今回は作られていないようだが、次回の私的録音録画小委員会は10月20日に開催されるようであるので、念のため一緒に紹介しておく。

 まだしばらく出す意見の内容は考えたいと思っているが、私のパブコメは提出次第ここに載せるつもりである。

(10月14日夕方の追記:グーグルのイメージ検索が著作権侵害に当たるという判決がドイツで出され、グーグルは控訴する予定とのcnetの記事があったので、ここにリンクを張っておく。両方とも地裁レベルの話と思われ、確定している訳でもないので、これ以上の紹介はしないが、上位裁判所での確定判決が出されたらまた取り上げたいと思う。なお、この裁判で問題にしているのはイメージ検索のみのようだが、通常の記事に対するグーグル検索は合法との判決がドイツでは最高裁で確定していることを考えると、最終的な判断はまた変わってくるのではないかと個人的には思っている。

 第88回で取り上げたニュージーランドの改正著作権法について、「P2Pとかその辺のお話」で、案の定ニュージーランドでインターネットサービスプロバイダーから反対の声が上がっているとの記事が紹介されているので、興味のある方は是非リンク先ご覧頂ければと思う。

 また、「著作権皇帝」法との批判を浴びているアメリカの改正著作権法は、残念ながらブッシュ大統領の署名によって成立してしまったようである(WIREDの記事PC MAGAZINEの記事参照)ので、次は、この法案(WIREDの記事中の法案(pdf)へのリンク)についてのエントリを書きたいと思う。)

(10月20日の追記(目次4のついでに書いたことの転記):47NEWSの記事internet watchの記事ITproの記事などによると、今日10月20日の文化庁・私的録音録画小委員会で、報告の骨子案が示され、iPod課金は先送りとなったものの、録音録画のダウンロード違法化についてはしぶとく来年の法改正を目指して報告書をまとめる方針とされたようである。最終的な報告書を見るまで何とも言えないが、去年壮絶なパブコメ無視をしたあげく、今年このような重要な法改正事項を含む私的録音録画小委員会の報告書をパブコメにかけようとしないなど、相変わらず文化庁の態度は国民をバカにしているとしか思えない。文化庁がこのような方針だとすると、第119回で取り上げた法制小委員会のパブコメの重要性は否が応でも高まる。時勢上あらゆることは流動的だが、できる限りのことをして行きたいと私は思っている。(追加参考記事:ITproの記事2ITmediaの記事。))

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2007年11月19日 (月)

第26回:文化庁のパブコメは多数決か。

 今回は、パブコメに関するちょっとした余談をしよう。

 そもそも、パブコメは個別の論点に係る賛否の数を問うものではないということは、どの意見募集要項(例えば、私的録音録画小委員会の意見募集要項参照)にも書かれていることであり、答えから言うとパブコメは多数決ではない。(実際、パブコメの意図としてはその通りであろうから、私も自分の出した意見では自分なりの主張をするよう気をつけた。)

 そのため、果たして、内容(質)を無視したパブコメ動員がどこまで有効かどうかということがあるのだが、こと文化庁のパブコメに関する限り、文化庁は、過去、パブコメにおける賛否の数を民意として取り扱って来た節があるのだ。(文化庁も最近はあまりこのようなまとめをしていないとは断っておく。)

 例えば、レコードの還流防止措置などが問題となった、平成15年度の著作権分科会(第12回)で公表された意見募集の結果の資料は、リンク先を見てもらえれば分かるように、単に以下のように賛否の数をまとめているひどいものである

「書籍・雑誌等の貸与に係る暫定措置の廃止」について、賛成1,211、反対73、その他29
「日本販売禁止レコードの還流防止措置」について、 賛成676、反対293、その他68
「保護期間の延長」について、賛成2、反対16、その他1

 結果、「書籍・雑誌等の貸与に係る暫定措置」は廃止され、「日本販売禁止レコードの還流防止措置」も導入されている。
 この分科会中でも、委員から「内容では,賛成意見において,事業者団体が傘下の会員などに呼びかけて,そのコピーに署名して送っているというような意見もかなりあったが,賛否両論とも,それぞれの個人の考えをしっかり記述している意見が多かった。」と言われているくらいで、この時は数字から見ても明らかに権利者団体側に動員がかかっていたものと思われる

 また、iPod課金が問題となった平成17年度の法制問題小委員会(第8回)では、当時の著作権課長が、

「私的録音録画補償金の見直しにつきましては、若干重複いたしますが、167件ほどになりますけれども、非常に多くの意見が寄せられました。現行制度自体につきましては、現行制度は制度の周知も図られていないし、補償金の分配等も不透明であるとの否定的なものが16件ございました。
 また、ハードディスク内蔵型録音機器等の追加指定につきましては、追加指定すべきというものが17件、追加指定すべきでないというものが80件ございました。追加指定すべきというものは、MDとの公平性、あるいは個別課金はユーザーの経済的負担がかえって増加する、完全なDRMは存在しないというような意見でございました。追加指定すべきでない80件の内訳といたしましては、二重課金に当たるのではないか、ハードディスク内蔵型は汎用機器である、DRMによる個別課金にすべきという意見のほか、ハードディスク内蔵型はコンピュータにコピーできないように実際なっているのではないか、こうした意見もございました。」

と報告している。このパブコメのおかげかどうかはよく分からないが、結局この時はiPod課金はされていない。
 なお、その次の小委員会(第9回)では、全ての意見をまとめた上で、やはり当時の著作権課長が「ここで件数を言うこと自体もはばかられる状況でもございます」と言っているので、件数をあげつらうことはパブコメの意図から考えて問題があると、この時にようやく文化庁も認識したのであろうと思われる。

 その後はあまりこのようなまとめをしてきていないが、このような前例がある以上、今回の私的録音録画問題(ダウンロード違法化やiPod課金など)等についても、文化庁がまた同じように賛否の数でまとめをしてくることも想定しておかなければならない。今のところ、権利者側のパブコメ動員と文化庁の賛否集計の可能性を否定し切れない以上、MIAUネットユーザー動員活動も誤ったやり方とすることはできないだろう。

 まとめをどうするかは文化庁次第のところもあるが、個人のパブコメについて数のみを集計して、そこに含まれている新たな論点を文化庁で勝手に握りつぶしたりすることがあってはならない。ネットでも大々的な話題となったのだ、数はどうあれ、パブコメ全体を見れば、そこには自ずと本当の民意が現れて来るだろう。
 いかに提出された意見の数が多かろうと、その些細な論点でも握りつぶすことなく、次回の私的録音録画小委員会までに文化庁は全てのパブコメをきちんとまとてくれるものと私は期待する。このような丁寧な整理こそ、行政府に本来求められている機能なのだから。

 ついでに、ここで、行政手続法に基づく意見募集と任意の意見募集の違いの話もしておこう。
 行政手続法には、意見公募手続について、以下のような規定がある。

(意見公募手続)
第39条  命令等制定機関は、命令等を定めようとする場合には、当該命令等の案(命令等で定めようとする内容を示すものをいう。以下同じ。)及びこれに関連する資料をあらかじめ公示し、意見(情報を含む。以下同じ。)の提出先及び意見の提出のための期間(以下「意見提出期間」という。)を定めて広く一般の意見を求めなければならない。
(中略)

(提出意見の考慮)
第42条  命令等制定機関は、意見公募手続を実施して命令等を定める場合には、意見提出期間内に当該命令等制定機関に対し提出された当該命令等の案についての意見(以下「提出意見」という。)を十分に考慮しなければならない。

(結果の公示等)
第43条  命令等制定機関は、意見公募手続を実施して命令等を定めた場合には、当該命令等の公布(公布をしないものにあっては、公にする行為。第五項において同じ。)と同時期に、次に掲げる事項を公示しなければならない。
一  命令等の題名
二  命令等の案の公示の日
三  提出意見(提出意見がなかった場合にあっては、その旨)
四  提出意見を考慮した結果(意見公募手続を実施した命令等の案と定めた命令等との差異を含む。)及びその理由
(後略)

 しかし、電子政府の窓口からたどっていけば分かるように、今回の文化庁のパブリックコメントは任意の意見募集であって、行政手続法に基づく意見募集ではない

 これは、電子政府の用語集にもある通り、「行政手続法に規定する意見公募手続とは、行政機関が命令等(政令、省令など)を制定するに当たって、事前に命令等の案を示し、その案について原則として30日以上の意見提出期間を定めて、広く一般から意見や情報を募集する手続のこと」であるため、政令や省令を超える法改正に関する意見募集は、当然のことながら、行政手続法に基づきようがないからである。
 要するに、厳密なことを言えば、本来立法権限をもたない行政府が法改正について国民の意見を問うこと自体がおかしいのだ。このような法改正に関する行政府の意見募集という手続き自体、日本における行政と立法の役割分担の曖昧さからもたらされた歪んだ手続きである。このことは、もっと国民に広く知られて良いことに違いない。(なお、これを無くすためには、あらゆる法改正の検討を直接出来るくらいに立法府のキャパシティを高めた上で、内閣法を改正し、行政府からの法案の国会提出(内閣立法)を禁止しなければならない。)

 さて次は、少し河岸を変えて、知財事務局での検討について書いてみようかと思っている。

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