2019年3月31日 (日)

第406回:閣議決定されなかった、ダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲の拡大とリーチサイト規制(リンク規制)を含む著作権法改正案条文

 ダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲の拡大を含む著作権法改正案は、2月から3月にかけての法案の与党・自民党への説明プロセスの中で差し戻され、閣議決定及び今国会への提出が見送られる事となった。

 この事自体は去年の著作権ブロッキング導入検討の中止と並んで喜ばしい事だが、著作権法も含め知財に関する法案の閣議決定がこの様に与党への根回しの過程で見送られるのは極めて異例であり、文化庁と一部の団体が、また、一部の国会議員が、なお法案の次期(臨時)国会への提出を目指し、これからも表裏で活発な動きを続けて行くだろう事は間違いなく、全く気の抜ける状況ではない。

 今後の議論では、今国会への提出は見送られたものの、政府内プロセスはほぼ終了していたであろう、自民党の部会・調査会に出された説明資料の条文案が軸となると思うので、ここでもその内容を見ておく。

 弁護士ドットコムの記事中の説明資料(pdf)に書かれている法案の概要は、以下のようなものである。

著作物等を巡る近時の社会状況の変化等に適切に対応するため、インターネット上の海賊版対策をはじめとした著作権等の適切な保護を図るための措置や、著作物等の利用の円滑化を図るための措置を講するもの【平成32年1月1日から施行(7.の一部は、「公布日から起算して1年を超えない範囲内で政令で定める日」から施行)】

【著作権等の適切な保護を図るための措置】
1.リーチサイト等を通じた侵害コンテンツへの誘導行為への対応【第113条第2項~第4項、第119条第2項第4号・第5号、第120条の2第3号等】
2.ダウンロード違法化の対象範囲の拡大【第30条第1項第3号・第2項、第119条第3項・第4項等】
3.アクセスコントロール等に関する保護の強化【第2条第1項第20号・第21号、第113条第7項、第120条の2第4号等】
4.著作権等侵害訴訟における証拠収集手続の強化【第114条の3】

【著作物等の利用の円滑化を図るための措置】
5.著作物等の利用許諾に係る権利の対抗制度の導入【第63条の2等】
6.行政手続に係る権利制限規定の整備(地理的表示法・種苗法関係)【第42条第2項】

【その他】
7.プログラムの著作物に係る登録制度の整備(プログラム特例法)【プログラム特例法第4条、第26条等】

 私は自分の提出パブコメ(第402回参照)でも書いた通り、上の法案概要中の「3.アクセスコントロール等に関する保護の強化」にも反対の立場だが、これについては提出パブコメの内容を見て頂くとして、今回は、やはり最も大きな問題を含む「2.ダウンロード違法化の対象範囲の拡大」と、それに次ぐ「1.リーチサイト等を通じた侵害コンテンツへの誘導行為への対応」を順に取り上げる。

(1)ダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲の拡大
 上でリンクを張った文化庁作成の説明資料は、吹き出しの説明つきでかなりごちゃごちゃしているが、書かれている条文案を抜き出して現行条文と突き合わせて改正条文を作ると以下の様になる。(下線が追加部分。)

(私的使用のための複製)
第三十条 著作権の目的となつている著作物(以下この款において単に「著作物」という。)は、個人的に又は家庭内その他これに準する限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。
(略)
 著作権を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものを含む。)を受信して行うデジタル方式の録音又は録画複製(以下この号及び次項において「特定侵害複製」という。)を、その事実特定侵害複製であることを知りながら行う場合

 前項第三号の規定は、特定侵害複製であることを重大な過失により知らないで行う場合を含むものと解釈してはならない。

第百十九条(略)
(略)
 第三十条第一項に定める私的使用の目的をもつて、録音録画有償著作物等(録音され、又は録画された著作物又は実演等(著作権又は著作隣接権の対象となつているものに限る。)であつて有償で公衆に提供され、又は提示されているもの(その提供又は提示が著作権又は著作隣接権を侵害しないものに限る。)をいう。)著作権又は著作隣接権を侵害する自動公衆送信著作権(第二十八条に規定する権利を除く。以下この条において同じ。)を侵害する自動公衆送信又は著作隣接権を侵害する送信可能化に係る自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権又は著作隣接権の侵害となるべきもの著作権の侵害となるべきもの又は著作隣接権の侵害となるべき送信可能化に係るものを含む。)を受信して行うデジタル方式の録音又は録画複製(以下この条において「有償著作物等特定侵害複製」という。)を、自らその事実有償著作物等特定侵害複製であることを知りながら行つて著作権又は著作隣接権を侵害した侵害する行為を継続的に又は反復して行つた者は、二年以下の懲役若しくは二百万以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

 前項に規定する者には、有償著作物等特定侵害複製を、自ら有償著作物等特定侵害複製であることを重大な過失により知らないで行つて著作権又は著作隣接権を侵害する行為を継続的に又は反復して行つた者を含むものと解釈してはならない。

 ここの条文は、私的複製の例外の例外という形で作られているので元から分かりにくいのだが、その最大のポイントは、第30条第1項第3号と第119条第3項中の「録音又は録画」を「複製」とし、ダウンロード違法化・犯罪化の範囲を録音録画のみからあらゆる著作物の複製に拡大する事にある。

 これらの条文において、民事に関する第30条の方で、「その事実を知りながら行う場合」を「特定侵害複製であることを知りながら行う場合」に変え、「特定侵害複製であることを重大な過失により知らないで行う場合を含むものと解釈してはならない」といった条件をつけ加える事で、文化庁としては限定を加えたつもりなのだろうが、これらはともに主観要件であって、はっきり言って、これで現行条文との間で解釈上本当に違いが出て来るかどうか疑問であり、一個人しか絡まないダウンロードにおける要件の立証・反証の問題に対する解決になるものでは全くない。

 刑事に関する第119条の方では、対象者について、第30条と同様の、「有償著作物等特定侵害複製であることを知りながら行」った者という条件と「自ら有償著作物等特定侵害複製であることを重大な過失により知らないで行」った者は含まれないという条件に加えて、「継続的に又は反復して行つた」者という条件もつくが、「継続」や「反復」とはどの程度の継続や反復なのか不明であり、ネット利用者に対するセーフハーバーになっていると言えるものでは到底ない。なお、刑事罰規定において、著作権法第28条の2次著作物についての原著作者の権利が除かれているが、この事はこの問題の本質とは関係がない。(昨今のウィルス(不正指令電磁的記録関連)罪の摘発の状況を見ても、親告罪とされるだろうとはいえ、今後警察や検察が著作権法の違法ダウンロード罪について無茶な摘発をしようとして来る可能性は常にあり、その時、現行法だろうが、改正条文案だろうが、無罪の立証にはかなりの労力を要するであろうし、場合によっては、恣意的に摘発されたネット利用者の生活と安全が一気に危険に晒される事になる。)

 このダウンロード違法化・犯罪化の拡大については、国際日本文化研究センターの山田奨治教授がそのブログ記事でまとめられている様に、以下の団体から反対や懸念の意見が出されている。

・日本マンガ学会・声明(1月23日)
・情報法制研究所・表明(pdf)(2月8日)
・中山信弘東京大学名誉教授他の呼びかけによる・声明(pdf)(2月19日)
・出版広報センター・意見(pdf)(2月21日)
・アジアインターネット日本連盟・意見(pdf)(2月21日)
・日本独立作家同盟・意見(2月25日)
・日本知的財産協会・意見(2月26日)
・日本漫画家協会・意見(2月27日)
・マンガジャパン・声明(3月1日)
・全国同人誌即売会連絡会・意見(3月10日)
・エンターテイメント表現の自由の会 (AFEE)・声明(3月10日)
・日本建築学会・声明(3月11日)
・日本グラフィックデザイナー協会・声明(3月13日)
・弁護士有志・声明(3月13日)
・日本学術会議有志・意見(3月13日)

 文化庁は相変わらず誤解が広まったと言って回っている様だが、専門家や研究者のレベルで誤解して反対や懸念を述べている様な者がいる訳がない。文化庁の言い分は相変わらず意味不明と言う他ないが、ダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲をあらゆる著作物に広げようとする話で、スクリーンショットのみに問題を矮小化する事ほど危険な事はないだろう。

 私自身はそもそも現行の条文にも問題があり、この問題はそもそも解決不能であって、著作権法第30条第1項第3号及び第119条第3項は削除するべきと思っている事に変わりはない。ただ、それでも、明治大学知的財産法政策研究所の高倉成男明治大学教授・中山信弘東京大学名誉教授・金子敏哉明治大学准教授の3氏が出された意見(pdf)要旨(pdf))の通り、「原作のまま」という条件と「著作権者の利益を不当に害することとなる場合」という条件を追加すればかなりましになるとも思っているが、この様な限定すら文化庁が嫌がっていると見えるので、ダウンロード違法化・犯罪化問題について今後も危うい状況が続くだろう。

(2)リーチサイト規制(リンク規制)
 リーチサイト規制部分も文化庁の資料は説明が前後していて分かりにくいのだが、順番を直して書き起こすと以下の様になる。

(侵害とみなす行為)
第百十三条(略)
 送信元識別符号又は送信元識別符号以外の符号その他の情報であつてその提供が送信元識別符号の提供と同一若しくは類似の効果を有するもの(以下この項及び次項において「送信元識別符号等」という。)の提供により侵害著作物等(著作権(第二十八条に規定する権利を除く。以下この項及び次項において同じ。)、出版権又は著作隣接権を侵害して送信可能化が行われた著作物等をいい、国外で行われる送信可能化であつて国内で行われたとしたならばこれらの権利の侵害となるべきものが行われた著作物等を含む。以下この項及び次項において同じ。)の他人による利用を容易にする行為(同項において「侵害著作物等利用容易化」という。)であつて、第一号に掲げるウェブサイト等(同項及び第百十九条第二項第四号において「侵害著作物等利用容易化ウェブサイト等」という。)において又は第二号に掲げるプログラム(次項及び同条第二項第五号において「侵害著作物等利用容易化プログラム」という。)を用いて行う行為は、当該行為に係る著作物等が侵害著作物等であることを知つていた場合又は知ることができたと認めるに足る相当の理由がある場合には、当該侵害著作物等に係る著作権、出版権又は著作隣接権を侵害する行為とみなす。
 次に掲げるウェブサイト等
 当該ウェブサイト等において、侵害著作物等に係る送信元識別符号等(以下この項において「侵害送信元識別符号等」という。)の利用を促す文言が表示されていること、侵害送信元識別符号等が強調されていることその他の当該ウェブサイト等における侵害送信元識別符号等の提供の態様に照らし、公衆を侵害著作物等に殊更に誘導するものであると認められるウェブサイト等
 イに掲げるもののほか、当該ウェブサイト等において提供される侵害送信元識別符号等の数、当該数が当該ウェブサイト等において提供される送信元識別符号等の総数に占める割合、当該侵害送信元識別符号等の利用に資する分類又は整理の状況その他の当該ウェブサイト等における侵害送信元識別符等の提供の状況に照らし、主として公衆による侵害著作物等の利用のために用いられるものであると認められるウェブサイト等
 次に掲げるプログラム
(略)(注:リーチサイトと同様にプログラムについて規定している模様。)

 侵害著作物等利用容易化ウェブサイト等に該当するウェブサイト等の公衆への提示を行つている者又は侵害著作物等利用容易化プログラムに該当するプログラムの公衆への提供又は提示を行つている者が、当該ウェブサイト等において又は当該プログラムを用いて他人による侵害著作物等利用容易化に係る送信元識別符号等の提供が行われていることを知つている場合であつて、かつ、当該送信元識別符号等に係る著作物等が侵害著作物等であることを知つている場合又は知ることができたと認めるに足りる相当の理由がある場合において、当該侵害著作物等利用容易化を防止する措置を講ずることが技術的に可能であるにもかかわらず当該措置を講じない行為は、当該侵害著作物等に係る著作権、出版権又は著作隣接権を侵害する行為とみなす。

 前二項に規定するウェブサイト等とは、識別するために用いられる部分が共通するウェブページ(インターネットを利用した情報の閲覧の用に供される電磁的記録で文部科学省令で定めるものをいう。)の集合物の全部又は一部であつて、同一の者が公衆への提示を行つているものとして政令で定めるものをいう。

第百十九条(略)
 次の各号のいずれかに該当する者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
(略)
 侵害著作物等利用容易化ウェブサイト等の公衆への提示を行つた者
 侵害著作物等利用容易化プログラムの公衆への提供又は提示を行つた者

第百二十条の二 次の各号のいすれかに該当する者は、三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、文はこれを併科する。
(略)
 第百十三条第二項の規定により、著作権、出版権又は著作隣接権を侵害する行為とみなされる行為を行つた者
(略)

 このリーチサイト規制の条文案も、法律用語を用いて書かれているので、分かりにくいが、第113条第2項は、「公衆を侵害著作物等に殊更に誘導するものであると認められるウェブサイト等」又は「主として公衆による侵害著作物等の利用のために用いられるものであると認められるウェブサイト等」における、「送信元識別符号」の「提供」により「侵害著作物等の他人による利用を容易にする行為」を、「当該行為に係る著作物等が侵害著作物等であることを知つていた場合又は知ることができたと認めるに足る相当の理由がある場合」に、著作権侵害とみなすというものであって、要するに、著作権侵害のために公衆に利用されるウェブサイト等で、リンク先の著作物が侵害著作物である事を知りながら又は知る事ができたとする相当の理由がありながら、リンクを提供する事を規制し、さらに、第120条の2で、刑事罰(3年以下の懲役又は300万円以下の罰金)もつけて犯罪化するというものである。(プログラム(アプリ)を用いる場合も同様とされている。)

 また、第113条第3項では、ウェブサイト等の運営者には放置に関する責任があるとし、第4項で、ウェブサイト等の範囲は政令で定められるものとし、第119条で、ウェブサイト等の運営者をリンク提供者より厳罰(5年以下の懲役又は500万円以下の罰金)に処すとしている。

 リーチサイト規制(リンク規制)についても、以前書いた事と重なるのだが(第401回で書いた文化庁の報告書案の内容や第402回の提出パブコメ参照)、一応もっともらしく限定されている様に読めるものの、これは、著作権侵害ウェブサイト等における、侵害とされ得るあらゆる著作物への単なるリンク提供行為を規制するものである。しかも、ウェブサイト等の範囲は文化庁主導の政令で定められるので、当初の範囲がどうあれ、今後、検索やSNSなど様々なサービスにおける細かなリンクの提供あるいはサービス自体の提供まで法改正抜きで広範な規制が可能となる様に作られているのは悪質である。さらに、ダウンロード犯罪化と同様リンク提供行為については非親告罪とされる様だが、サイト運営者については非親告罪とされる様である点も問題だろう。

 このリーチサイト規制(リンク規制)の条文案は、予想通り、みなし侵害規定の追加だけで、特にこの部分でセーフハーバー規定は入らないと見えるので、この条文案で本当に法律ができれば、リンクの提供がインターネット上で非常にカジュアルに行われている事を考えると、まず間違いなく、国内のネットサービス提供者や利用者のリンク提供行為に対する脅しや嫌がらせが増え、インターネット利用における民事・刑事のリスクが無意味に高まる事になるだろうと私は思っている。

 このリーチサイト規制(リンク規制)の問題については、高木浩光氏がそのブログ記事で的確に批判されている事を除くとまだあまり広まっていない様であるが、この部分についても問題点が広く知られ、規定の削除あるいは条文修正の議論が進められる事を私も願う。

 3月29日の知財本部の評価・企画委員会コンテンツ分野会合の事務局資料(pdf)の第2ページで、

・著作権を侵害する静止画(書籍)のダウンロードの違法化のための法制度整備を速やかに行う【文化庁】
・インターネットユーザーを侵害コンテンツへ誘導するウェブサイト(リーチサイト)に対応するための法制度整備を速やかに行う【文化庁】

と書かれている通り、文化庁としては修正なしの法案提出をなお狙っているだろうし、さらに、同ページに、

(アクセス警告方式について)・法制度の変更を前提とせずにユーザーのアクセス抑止効果を最大限高める方式を検討し、海賊版サイトへの対策として実効的な枠組みを提示した上で、速やかに導入する(関係者と協議しながら検討・導入)【総務省】
・ブロッキングに係る法制度整備については、他の取組の効果や被害状況等を見ながら検討【内閣府及び関係省庁】

とある通り、ブロッキングについては抑え気味になっているものの、政府は、今度は代わりにアクセス警告方式を前面に押し出して来ているので、4月以降半年から1年くらいの間で検討・議論が進められる喫緊かつ危険な知財政策上の問題は、ダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲の拡大、リーチサイト規制(リンク規制)、アクセス警告方式の検討の3つという事になるのだろう。

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2018年12月30日 (日)

第403回:2018年の終わりに

 TPP11協定の発効に伴って今日まさに著作権の保護期間の延長が施行された事を始めとして今年も非道い一年だったが、取り上げる暇があまりなかった各省庁の細かな動きについて最後にまとめて書いておきたいと思う。

 まず、知的財産関係の法改正に絡む動きとしては、特許庁から、1月16日〆切で産業構造審議会・知的財産分科会・意匠制度小委員会報告書「産業競争力の強化に資する意匠制度の見直しについて(案)」に対する意見募集の実施についてというパブコメが掛かっている。

 この特許庁の意匠制度の見直しについて(案)という報告書案は、意匠制度小委員会で検討されていたもので、意匠法の大幅な改正、保護強化を打ち出して来ており、「1.画像デザインの保護」、「2.空間デザインの保護」、「3.関連意匠制度の拡充」、「4.意匠権の存続期間の延長」、「5.複数意匠一括出願の導入」、「6.物品区分の扱いの見直し」、「7.その他」という各項目に書かれている事はどれも重要な法改正事項を含むが、ここでは、中でも大きなものと言えるだろう、「1.画像デザインの保護」、「2.空間デザインの保護」、「4.意匠権の存続期間の延長」の内容について以下簡単に紹介する。

 画像デザインの保護については、既存の意匠法の話が前提となっているので分かりにくいが、「操作画像や表示画像については、画像が物品(又はこれと一体として用いられる物品)に記録・表示されているかどうかにかかわらず保護対象とすることが適当」(第3ページ)、「他方、壁紙等の装飾的な画像や、映画・ゲーム等のコンテンツ画像等は、画像が関連する機器等の機能に関係がなく、機器等の付加価値を直接高めるものではない。これらの画像については、意匠法に基づく独占的権利を付与して保護する必要性が低いと考えられることから、保護対象に追加しないこととするべき」(同)と書かれている通りで、物品と一体となっていないような操作画像まで意匠保護の対象とするが、コンテンツ画像までは対象としないという事が書かれている。

 空間デザインの保護では、「現行意匠法の保護対象である『物品』(動産)に加え、『建築物』(不動産)を意匠の保護対象とすべき」(第5ページ)と、建築物の外観や内装まで意匠保護の対象とするとしている。

 意匠権の存続期間の延長としては、「意匠権の存続期間を20年から25年に延長すべき」(第10ページ)、「意匠権の存続期間を『登録日から20年』から、『出願日から25年』に見直すべき」と、保護期間を延長するとしている。

 特に、意匠権の保護期間延長については、報告書案の第10ページで、「意匠権の15年目現存率が、平成24年の17.3%から平成28年の22.0%へと増加していることから、意匠権を長期的に維持するニーズが高まっていることがうかがえる」、「諸外国と比較しても、欧州において、最長25年の意匠権の存続期間が認められている」と一応もっともらしい根拠も少し書かれているが、これも、本当に25年前のデザインを使う事があるのか、使う事があるとして、特許の保護期間ですら通常は20年で25年は例外的な延長の結果として認められるものに過ぎない中で、それは産業の発達のための創作保護法である意匠法で保護するべきものなのかという根本から考えるとかなり疑わしいものである。ただし、意匠権者が専有する権利は、特許と同じく、審査登録制を前提として、あくまで業として意匠の実施をする権利なので、著作権の保護期間の延長によって生じる様な問題は生じないだろう。(本報告書案の内容はともかく、意匠法の本当の問題はやはり著作権法との関係にあるのだが、そのレベルの問題の整理は極めて難しく、世界的に見ても当分進む事はないだろう。)

 特許庁が次に提出する事を考えているのだろう法改正はパブコメに掛かっている報告書案の内容の通り、意匠法中心なのだろうと思うが、特許制度小委員会商標制度小委員会も開催されており、それぞれ直近の12月25日の配布資料と12月27日の配布資料を見ると、証拠収集手続の強化や損害賠償額算定などについて検討が進められているようであり、他の事項も追加されるのかもしれない。

 経産省では、不正競争防止小委員会が11月20日に開催され、その配布資料として、限定提供データに関する指針(案)が示されている。この指針案に対するパブコメはもう締め切られているが、じきに案の取れた正式版の指針が出されるのだろう。(指針のレベルでどうこう言う事はないが、そもそもの法改正の必要性については私はいまだに疑問に思っている。)

 文化庁では、前回その報告書案に対するパブコメを載せた法制・基本問題小委員会以外にも、文化審議会・著作権分科会の下で、著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会国際小委員会が開催されている。直近の12月4日の利用・流通に関する小委員会で、配布資料として、著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会の審議の経過等について(クリエーターへの適切な対価還元関係)(案)という資料が出されており、文化庁と権利者団体は相変わらず私的録音録画補償金の対象拡大を狙っていると知れるが、金さえ取れれば後は何でもいいと言わんばかりで、徹頭徹尾意味不明の理屈をずっと捏ね回している。12月19日の国際小委員会(配布資料参照)では追及権について議論された様だが、文化庁が最終的にどうするつもりなのかは良く分からない。

 知的財産戦略本部では、検証・評価・企画委員会知的財産戦略ビジョンに関する専門調査会が開催されており、各種タスクフォースも開催されているが、来年の知財計画がどうなるのか、ブロッキング問題について知財本部として今後どうするつもりなのかは良く分からない状況である。

 今年は知財本部における著作権ブロッキングの検討が止まった事はかろうじて良かった事の一つとしてあげられるが、本来必要のなかったはずの著作権保護期間延長がTPP関連と称して不合理極まる形で国会を通されて施行されてしまうなど、ここ10年ほどの間で知財政策上悪い意味で大きなターニングポイントとなってしまった年として後世評価される事になるだろう。だからと言って私は諦めるつもりもない。今年も非道い一年だったが、政官業に巣食う全ての利権屋に悪い年を、このブログを読んで下さっている方々に心からの感謝を。

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2018年12月27日 (木)

第402回:文化庁・著作権分科会・法制・基本問題小委員会中間まとめに対する提出パブコメ

 前回取り上げた、文化庁の法制・基本問題小委員会の中間まとめに関する意見募集(電子政府のHP、文化庁のHP参照。2019年1月6日〆切。)について、以下のような意見を出したので、内容はほとんどいつも書いていることの繰り返しだが、念のため、ここに載せておく。前回も書いた通り、文化庁がどこまで意見を聞く気があるのか疑問ではあるが、このような著作権問題に関心のある方は是非意見を出す事をお勧めする。

(1)リーチサイト等を通じた侵害コンテンツへの誘導行為への対応について

①意見提出対象の区分:A:リーチサイト等を通じた侵害コンテンツへの誘導行為への対応

②賛成/反対:反対

③御意見(2000字以内):

 現行現行の著作権法における民事の間接侵害(カラオケ法理)あるいは刑事の著作権侵害幇助との関係整理をおざなりにした、著作権侵害コンテンツへのリンク行為に対するみなし侵害規定の追加及び刑事罰付加に反対する。

 本当に悪質な場合について現行法で不十分というところがあれば、その点について立法による対処も当然あり得るだろうが、本中間まとめを読んでも、権利者団体の一方的かつ曖昧な主張が並べられているだけで、権利者団体側がリーチサイト等に対して現行法に基づいてどこまで何をしたのか、現行法による対処に関する定量的かつ論理的な検証は何らされておらず、本当にどのような場合について現行法では不十分なのかは全く不明である。

 例えば、本中間まとめの第12ページでロケットニュース事件やリツイート事件を取り上げているが、これらの事件はニュースサイトやツイッターの様なSNSサイトにおけるリンク行為を取り扱ったものであって、いわゆるリーチサイトとは性質を異にすると考えるべきものである。カラオケ法理に関してはネットワークを通じた提供を含めて各種の民事での判例があり、著作権侵害幇助に関する刑事事件もあるのであって、本中間まとめは判例と現行法の解釈についての分析すら不十分であると言わざるを得ない。さらに言えば、ここで本当に問われるべきは、権利者団体が悪質なケースがあると主張しているにもかかわらず、その悪質なリーチサイトに対して何故いまだに民事・刑事での明確な裁判例が積み重なっていないのかということであろう。

 さらに、このような間接侵害あるいは幇助の検討において当然必要とされるはずのセーフハーバーの検討も極めて不十分であって、インターネット利用における民事・刑事のリスクに関する不確実性を増すだけである、このような不十分な検討に基づくリンク行為へのみなし侵害規定の追加及び刑事罰付加に私は断固反対する。

 今現在、カラオケ法理の適用範囲がますます広く曖昧になり、間接侵害や著作権侵害幇助のリスクが途方もなく拡大し、甚大な萎縮効果・有害無益な社会的大混乱が生じかねないという非常に危険な状態がなお続いている。間接侵害事件や著作権侵害幇助事件においてネット事業者がほぼ直接権利侵害者とみなされてしまうのでは、プロバイダー責任制限法によるセーフハーバーだけでは不十分である。本中間まとめにおけるこの部分は全て白紙に戻し、間接侵害や著作権侵害幇助罪も含め、間接侵害や刑事罰・著作権侵害幇助も含め、著作権侵害とならない範囲を著作権法上きちんと確定し、著作権法へセーフハーバー規定を導入することのみを速やかに検討するべきである。

(2)ダウンロード違法化の対象範囲の見直しについて

①意見提出対象の区分:B:ダウンロード違法化の対象範囲の見直し

②賛成/反対:反対

③御意見(2000字以内):

 ダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲の拡大に反対する。

 本中間まとめの第47ページから、諸外国における取り扱いについて書かれており、ドイツ、フランス、カナダ、アメリカ、イギリスの条文等を載せ、これらの国でダウンロード違法化がされており、効果が上がっているような印象操作がされているが、アップロードとダウンロードを合わせて行うファイル共有サービスに関する事件を除き、どの国においても単なるダウンロード行為を対象とする民事、刑事の事件は1件もなく、日本における現行の録音録画に関するダウンロード違法化・犯罪化も含め、このような法制が海賊版対策として何の効果も上がっていないことは明白である。

 本中間まとめの第47ページの注41で、平成25年12月の調査を引用しているが、この調査は文化庁と権利者団体中心のお手盛り調査であって何ら信頼に足るものではない。ファイル共有ソフトのノード数の減少はダウンロード犯罪化の運用が不明な中での一時的な現象であろうし、政府の委託調査で広くアンケートを取り違法行為をしているかと聞けば控えたと答えるに決まっているのでそのような回答の傾向はユーザーの行動の実態を表しているとは言えない。この様なお手盛り調査の我田引水は論外であるが、ダウンロード違法化・犯罪化がされた当時と比較して音楽と映像に関して違法にアップロードされている著作物のダウンロードは減っているのではないかとも思うが、それは単にストリーミングサービスも含めて利便性の高い正規のサービスが充実して来たことの結果に過ぎず、ここでダウンロード違法化・犯罪化がほとんど何の役にも立ってない事は日本のみならず世界的に同じ傾向が見られる事からも明らかであろう。

 本中間まとめの第56ページで権利者団体側の一方的な主張に基づき被害額を試算して被害が甚大であるかのような印象操作がされているが、これも一方的な主張に過ぎず、送信可能化・アップロードとの関係でダウンロードによる損害額がどう算定されるのかすら分からない中、推定に推定を重ねたアクセス数に著作物の単価を掛けるような試算は乱暴の極みと言うほかなく真摯な立法論の基礎とするに足るものでは全くない。

 違法サイトかどうか利用者からは区別がつかないという事はダウンロード違法化・犯罪化の議論当初から問題にされており、当時音楽団体がエルマークを持ち出したと記憶しているが、本中間まとめの第68ページで言及されている、出版社の「ABJマーク」なども、残念ながら、上の平成25年の文化庁委託調査ですら認知度が低い事が示されており、その後も認知が進んでいるとは到底思えない音楽団体のエルマークと全く同じ道を辿る事であろう。

 さらに言えば、このようなダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲の拡大は、研究など公正利用として認められるべき目的のダウンロードにも影響する。

 すなわち、何ら合理的な根拠もなく、結論ありきでダウンロード違法化・犯罪化の範囲の拡大を正当化している、本中間まとめにおけるこの部分は全て白紙に戻すべきである。

 過去の意見募集においても繰り返しているが、一人しか行為に絡まないダウンロードにおいて、「事実を知りながら」なる要件は、エスパーでもない限り証明も反証もできない無意味かつ危険な要件であり、技術的・外形的に違法性の区別がつかない以上、このようなダウンロード違法化・犯罪化は法規範としての力すら持ち得ず、罪刑法定主義や情報アクセス権を含む表現の自由などの憲法に規定される国民の基本的な権利の観点からも問題がある。このような法改正によって進むのはダウンロード以外も含め著作権法全体に対するモラルハザードのみであり、今のところ幸いなことに適用例はないが、これを逆にねじ曲げてエンフォースしようとすれば、著作権検閲という日本国として最低最悪の手段に突き進む恐れしかない。過去の文化庁へのパブコメ(文化庁HPhttp://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/chosakuken/hokoku.htmlの意見募集の結果参照)や知財本部へのパブコメ(知財本部のHPhttp://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/keikaku2009.htmlの個人からの意見参照)等を完全に無視して行われたものであり、さらなる有害無益な規制強化・著作権検閲にしか流れようの無い、百害あって一利ないダウンロード違法化・犯罪化を規定する著作権法第30条第1項第3号及び第119条第3項の削除を速やかに行うべきである。

(3)アクセスコントロール等に関する保護の強化について

①意見提出対象の区分:B:ダウンロード違法化の対象範囲の見直し

②賛成/反対:反対

③御意見(2000字以内):

 不正競争防止法と著作権法による二重保護の問題やDRM保護のそもそもの必要性について本来なされるべき検討もせずに行われようとしている、2つの法律の条文の辻褄合わせのような法改正のための法改正に反対する。

 経済産業省の産業構造審議会知的財産分科会不正競争防止小委員会において2018年1月にとりまとめられた「データ利活用促進に向けた検討中間報告」において書かれたDRM回避規制強化のための法改正を是とするに足る立法事実の変化はなく、このような法改正のための法改正はされるべきではなかったものである。

 このような無意味なDRM規制強化の検討は全て白紙に戻し、今ですら不当に強すぎるDRM規制の緩和のための検討を不正競争防止法と合わせ速やかに開始するべきである。

 特に、DRM回避規制に関しては、有害無益な規制強化の検討ではなく、まず、私的なDRM回避行為自体によって生じる被害は無く、個々の回避行為を一件ずつ捕捉して民事訴訟の対象とすることは困難だったにもかかわらず、文化庁の片寄った見方から一方的に導入されたものである、私的な領域でのコピーコントロール回避規制(著作権法第30条第1項第2号)の撤廃の検討を行うべきである。コンテンツへのアクセスあるいはコピーをコントロールしている技術を私的な領域で回避しただけでは経済的損失は発生し得ず、また、ネットにアップされることによって生じる被害は公衆送信権によって既にカバーされているものであり、その被害とDRM回避やダウンロードとを混同することは絶対に許されない。それ以前に、私法である著作権法が、私的領域に踏み込むということ自体異常なことと言わざるを得ない。また、同時に、何ら立法事実の変化がない中、ドサクサ紛れに通された、先の不正競争防止法改正で導入されたDRM回避規制の強化や、TPP関連として入れられたものも含め以前の著作権法改正で導入されたアクセスコントロール関連規制の追加についても、速やかに元に戻す検討がなされるべきである。

(4)その他

①意見提出対象の区分:G:A~F以外

②賛成/反対:反対

③御意見(2000字以内):

 著作権の保護期間の延長について元に戻す事を求めるとともに、私的録音録画補償金の対象範囲の拡大に反対し、一般フェアユース条項の導入を求める。

 TPP11協定の発効に合わせて著作権の保護期間の延長が今まさに施行されようとしているが、TPP11協定では保護期間の延長は凍結されたのであって、この保護期間の延長は本来必要ではなかったものである。このように何ら国民的なコンセンサスを得ることもないまま、不合理ななし崩しの法改正により甚大な国益の喪失をもたらした事について私は日本政府を強く非難する。

 日EU(欧)EPA協定にも著作権の保護期間の延長は含まれているが、これもTPP協定同様の姑息かつ卑劣な秘密交渉で決められたものであって、著作権の保護期間の延長の様に国益の根幹に関わる点について易々と譲歩して協定を発効させようとしているなど、日本政府は完全に国民をバカにしているとしか言いようがない。この日EU(欧)EPA協定に含まれる著作権の保護期間の延長にも私は反対する。

 このように何ら国民的なコンセンサスを得ることもないまま、不合理ななし崩しの法改正あるいは秘密の条約交渉によってなされた著作権の保護期間の延長については必要な法改正及び条約改定によって元に戻す事を検討するべきである。

 また、別の委員会で検討されている事であるが、私的録音録画補償金問題について、補償金のそもそもの意味を問い直すことなく、今の補償金の矛盾を拡大するだけの私的録音録画補償金の対象拡大を絶対にするべきではなく、私的録音録画補償金の対象範囲の拡大にも私は反対する。

 そして、ユーザーに対する意義からも、アメリカ等と遜色ない形で一般フェアユース条項を可能な限り早期に導入するべきである。特に、インターネットのように、ほぼ全国民が利用者兼権利者となり得、考えられる利用形態が発散し、個別の規定では公正利用の類型を拾い切れなくなるところでは、フェアユースのような一般規定は保護と利用のバランスを取る上で重要な意義を持つものである。

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2018年12月10日 (月)

第401回:ダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲の拡大とリーチサイト規制(リンク規制)の法制化を含む文化庁・著作権分科会・法制・基本問題小委員会中間まとめに関する意見募集の開始(2019年1月6日〆切)

 最後の12月7日の文化審議会・著作権分科会・法制・基本問題小委員会の資料がまだ文化庁のHPにアップされていないが、先日から報道されている通り、文化庁の法制・基本問題小委員会の中間まとめが2019年1月6日〆切でパブコメにかかった。(電子政府のHP、文化庁のHP参照。)

 文化庁の今回の中間まとめはダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲の拡大とリーチサイト規制(リンク規制)の法制化を含むものであって、インターネットにおける情報・表現の自由に非常に大きな影響を及ぼす可能性のあるものであり、ここでも、その内容を見て行きたいと思う。

 この中間まとめ(pdf)の章立ては、「第1章 リーチサイト等を通じた侵害コンテツへの誘導行為への対応」、「第2章 ダウンロード違法化の対象範囲の見直し」、「第3章 アクセスコントロール等に関する保護の強化」、「第4章 著作権等侵害訴訟における証拠収集手続の強化」、「第5章 著作物等の利用許諾に係る権利の対抗制度の導入」、「第6章 行政手続に係る権利制限規定の見直し(地理的表示法・種苗法関係)」、「第7章 その他(改正著作権法第47条51項3号規定に基づく政令ニーズ)」となっており、第7章を除いてそれぞれ全て法改正事項として書かれており、以下で順に取り上げて行くが、中でも「リーチサイト等を通じた侵害コンテツへの誘導行為対応」、「ダウンロード違法化の対象範囲見直し」は問題が大きく、「アクセスコントロール等に関する保護の強化」はそれに次ぐと言っていいだろう。(なお、これらは意見募集要領(pdf)ではA~Gの区分とされている。)

(1)リーチサイト規制(リンク規制)の法制化
 まず第1章のリーチサイト等を通じた侵害コンテツへの誘導行為への対応は第2ページから始まるが、権利者団体のリーチサイトについてどこまで現行法による対応を真剣に試みたのか不明な規制強化ありきの主張と、消費者団体等のリンク規制には慎重であるべきとする主張が両論併記の形で並べられた後、第22ページからの検討結果から、リーチサイト規制(リンク規制)の法改正のポイントとなるだろう部分を抜き出して行くと以下のようになる。

(1)民事(差止請求について)(第22ページ~)
ア.総論(略)

イ.場・手段について:「差止請求の対象とするべき『場・手段』は,社会通念上いわゆる『リーチサイト』・『リーチアプリ』として認知されているような,類型的に侵害コンテンツの拡散を助長する蓋然性が高い悪質なものに限定することが適当」(第24ページ)

ウ.主観について:「侵害コンテンツであることへの認識に関し一定の主観要件を課すことが適当」、「具体的には,『違法にアップロードされた著作物と知っている場合,又はそう知ることができたと認めるに足る相当の理由がある場合』等として,侵害コンテンツであることについて故意・過失が認められる場合に限定することが適当」(第24ページ)

エ.行為について:「実質的に侵害コンテンツへの到達を容易に行えるようにする情報の提供等と評価できる行為であれば,これを差止請求の対象とすること(が)適当」(第26ページ等)

オ.対象著作物について
ⅰ 有償著作物等への限定を行うべきか否かについて:「限定を行わないこととするのが適当」(第27ページ)
ⅱ いわゆるデッドコピー等への限定を行うべきか否かについて:「オリジナルの著作物の相当部分をそのまま利用しているようなケースについては差止めの対象とするべきという考え方を基本としつつ,具体的な制度設計に当たっては,差し当たり緊急に対応する必要性の高い悪質な行為類型への対応という今般の制度整備の考え方,対象範囲を限定することによる潜脱のおそれ,対象範囲の限定の仕方が明確でない場合には萎縮効果を生じるおそれがあること,立法技術上の対応可能性なども踏まえ,どのような形で対象を規定するのが妥当かについて検討が行われることが適当」(第29ページ)
ⅲ 国外における侵害コンテンツの取扱い:「国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものに係るリンク情報等についても差止請求の対象とすることが適当」(第29ページ)

カ.その他の要素(正当な目的を有する場合の取扱い等)について:「具体的な制度設計に当たり,場・手段に関する要件の設定の仕方も念頭において,そうした場等において行われる侵害コンテンツへのリンク情報等の提供をする行為のうち差止めの対象外とするべきケースとしてどのようなものがあるかを検討した上で,場・手段の要件の内容も踏まえて特別な除外規定の要否の判断が行われることが適当」(第30ページ)

キ.リーチサイト運営者に対する差止請求について
ⅰ 個々の著作物に係るリンク情報等の提供行為に関する差止請求について:「リーチサイト運営者の個々のリンク情報等に関する責任についての立法的な対応の当否については,以上の点を勘案して検討が行われる必要がある」(第31ページ)
ⅱ リーチサイト運営行為そのものに関する差止請求について:「サイト運営の差止めを請求する権利を個々の権利者に付与することは過剰差止めとなるおそれがあること,及びサイトの中に含まれる適法な情報との関係でも過剰差止めの問題が生じることから,慎重な検討が必要」(第32ページ)

(2)刑事について(第32ページ~)
ア.新たな罰則を設ける必要性について(略)

イ.具体的な制度設計について
ⅰ リーチサイト・リーチアプリ等におけるリンク情報の提供行為に係る罰則:「みなし侵害になるようなリーチサイト等の侵害コンテンツを拡散する蓋然性の高い場等において侵害コンテンツのリンク情報等を提供する行為は,悪質性が強いと認められ,抑止効果が生じるようにすることが適当」(第33ページ)
ⅱ リーチサイト運営・リーチアプリ提供行為に係る罰則:「リーチサイトやリーチアプリといった,侵害コンテンツへの到達を容易にすることによって侵害コンテンツを拡散する蓋然性の高い場の運営や手段の提供を行うことは,個々のリンク情報等の提供を行う者との比較において,違法行為を助長する度合いがより大きく,社会総体として見たときに著作権者により深刻な不利益を及ぼしていると評価できることから,個々の著作物等に係るリンク情報等の提供行為とは独立して,社会的な法益侵害を及ぼすものとして,罰則の対象とするべき」(第33ページ)
ⅲ 法定刑について:「現行著作権法における罰則の法定刑の考え方との整合性に留意しつつ,今般創設する各罰則の法益侵害の度合いに照らして適切な法定刑が検討されることが適当」(第34ページ)

 第35ページ以降の「インターネット情報検索サービスへの対応について」で、「現時点において直ちに立法的対応の検討を進めることはせずに,まずは当事者間の取組みの状況を見守ることとし,協議が一定程度進捗した段階で進捗状況等の報告を受け,必要に応じ対応を検討していくことが適当」(第42ページ)とされているので、検索エンジンについて特別な法改正がされることはなく、また、「最初の対応に当たっての基本的な考え方」で「海賊版蔵置サイトやリーチサイトのような場以外の場(例えば個人が一般的な言論活動を行うことを目的として開設しているSNSのアカウント等)において行われる表現の中に侵害コンテンツのリンク情報が単発的に含まれているようなケースについては,(ゲーム関係者から要望のあった汎用的なUGCサイトにおける事案も含め)その被害実態が必ずしも明らかではない。したがって,正当な表現行為の萎縮が生じないよう,こうした場における表現行為は今般の法的措置の対象とはしないこととし,当該行為に対する差止請求の可否については,引き続き現行法の解釈・運用に委ねることとすることが適当」(第23ページ)と書かれていることにも注意しておくべきだろうが、上で抜き出した部分をまとめると、良く分からない部分も多いものの、文化庁がリーチサイト規制(リンク規制)として考えている法改正は、著作権法第113条のみなし侵害規定の項の一つとして以下のようなものを追加し、合わせて刑事罰も付加しようとするものではないかと思える。(いつものことだが、報告書だけで具体的な条文案をつけない役所のやり方は卑怯という他なく、以下はあくまでダウンロード違法化や検索エンジンの例外などの条文から私が類推したものである。)

著作権又は著作隣接権を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものを含む。)に係る送信元識別符号(注:リンク情報)等を、その事実を知りながら又はそう知ることができたと認めるに足る相当の理由がある場合に、その著作権の侵害を助長する蓋然性が高い方法により、提供する行為は、それらの著作権又は著作隣接権を侵害する行為とみなす。

 このようなリーチサイト規制(リンク規制)の法制化は一応それらしく限定されているようにも読めるが、ここでの最大の問題点は、この文化庁の検討が生煮えもいいところであって、本来先に検討するべき現行の著作権法における民事の間接侵害(カラオケ法理)あるいは刑事の著作権侵害幇助との関係整理を投げ捨てて、みなし侵害規定の追加ありきで法制化を考えている点である。本当に悪質な場合について現行法で不十分というところがあれば、立法による対処も当然あり得るだろうが、本当にどのような場合について現行法では不十分なのか残念ながら報告書を読んでも良く分からず、このような間接侵害あるいは幇助の検討において当然必要とされるはずのセーフハーバーの検討も極めて不十分であって、このような生煮えの検討に基づくみなし侵害規定の追加は、インターネット利用における民事・刑事のリスクに関する不確実性が増すだけと私には思える。

(2)ダウンロード違法化・犯罪化の範囲の拡大
 そのインターネット上の海賊版対策に関する検討会議が頓挫したことから、知財本部が急いで文化庁にねじ込んだためだろうが、次の第43ページからの第2章ダウンロード違法化の対象範囲の見直しとなるとさらに生煮えの感が高まる。

 この点について他の国の状況が何ら参考にならないことはここで繰り返し書いて来ており、日本でも現行の録音録画に関するダウンロード違法化・犯罪化について海賊版対策として何ら効果が上がっていないことは明白だと思うが、文化庁はこの報告書で取ってつけた様に各国でダウンロード違法化がされており、効果が上がっているような印象操作を書いて、第66ページで「録音・録画と同様の要件の下,対象範囲を著作物全般に拡大していくことについては相当程度の合理性が認められる」、第67ページで「対象範囲の拡大に当たっても,抑止効果を確保する観点から,同様に,有償で提供・提示されたものに限って刑事罰を科すことが適当」と、結論ありきでダウンロード違法化・犯罪化の範囲の拡大を正当化しているのである。

 第66ページには、「具体的な対象範囲の在り方としては,録音・録画と同様の要件の下,対象範囲を著作物全般に拡大していくことを基本としつつ,並行してパブリックコメント等を通じて,事務局において引き続きユーザー保護が必要となる事例の有無について更なる検証を進めることが適当である。仮に,その中で,ユーザー保護の必要性・正当性が明らかな事例等が確認された場合には,それに即して,上記(4)で示した選択肢も参考に,悪影響が生じない形での限定方法を検討の上,立法措置に反映させることが適当であると考えられる」と、あたかもパブリックコメントで集めた意見を取り上げるかのような記載もあるが、拡大の結論ありきで報告書が書かれ、ほとんど大した根拠もなく「対象範囲を著作物全般に拡大していくことを基本」とすると決めつけているところで、広く集めた意見を本当にきちんと取り上げる気があるのか甚だ疑わしい。

(ダウンロード犯罪化の拡大については、TPP11関連法で導入される一部非親告罪化との関係も問題となるが、第68ページの「ダウンロード違法化に係る刑事罰については,全て親告罪のまま維持することが適当」ということはあまりにも当然の事でしかない。)

 このダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲の拡大について、また昔のように大量のパブコメが提出される事を恐れてか、文化庁らしくもなく、「ダウンロード違法化の対象範囲の見直し」に関する留意事項(pdf)という参考資料がついており、「パブリックコメントに意見を提出いただく前に、必ず御一読ください」という文章とともに、「ダウンロード違法化に関して(中略)ダウンロード型の海賊版サイト等も多数存在しており、それらのサイトによる被害の拡大を防止するための措置として一定の効果が見込めるもの」だとか、「ダウンロード違法化についても(中略:海賊版対策の)手法の一つとして有効かつ重要なもの」だとか、「単に視聴・閲覧する行為は違法となりません」だとか、「視聴・閲覧に伴うキャッシュやプログレッシブダウンロードについても、著作権法第47条の8(平成30年改正後は第47条の4第1項)により適法となります」だとか、「特定少数者間でのメール送信や、個人が使用するクラウドロッカーからの送信等は含まれません」だとか、「ウェブサイトに掲載されたテキスト・画像をプリントアウトする行為や、そこでプリントアウトされたものを更にPDF化してコンピュータに保存する行為は違法とはなりません」だとか、「『複製』とは、手段を問わず著作物を有形的に再製することを指すものですので、右クリックによる保存のほか、スクリーンショット等も対象に含まれます」だとか、「『違法か適法か判断がつかなかった』、『通常であれば、違法だと当然に知っているべき状況だったが、本人は知らなかった』等の場合には、違法となりません」だとか、くどくど書いているが、私はこんなところで誤解などしていないし、今まで文化庁関連のパブコメの結果は十年以上見て来ているが、昔も今も全くないとまでは言わないが、このような基本的なところで誤解して出されている意見はそこまで多く見かけるものではない。

(3)アクセスコントロール等に関する保護の強化
 上の2つに比べると、法改正としては小さい話だが、第70ページからの第3章アクセスコントロール等に関する保護の強化も問題がある。

 細かな条文に関する話は省略するが、ここで書かれているのは、以下の通り、要するに不正競争防止法の技術的制限手段の規制と著作権法の技術的利用制限手段(前は技術的保護手段)の規制を合わせようとするものである。

・「著作権法においても,定義規定の文言上の疑義により近時のソフトウェアの不正使用の態様に適切な対応ができない状況が生じるのは望ましくないと考えられることから,『技術的利用制限手段』の定義規定における『・・とともに』という文言を削除し,アクティベーション方式が含まれることを明確化することが適当」(第73ページ)

・「不正なシリアルコード(指令符号)の提供等は,回避装置・プログラムの提供等と同様に,多くのユーザーによる技術的利用制限手段の回避行為を助長する悪質な行為であり,正規のライセンス購入を減少させ,当該ソフトウェア等の著作権者の経済的利益を不当に害するものであることから,著作権法においても,著作権者の経済的利益の保護に万全を期す観点から,新たに規制対象とすることが適当」(第75ページ)

 既に不正競争防止法の改正が成立しているので、このような法改正の提案は予想されたこととはいえ、私は不正競争防止法やTPP11関連法によるDRM規制の強化にも反対であり、不正競争防止法と著作権法による二重保護の問題やDRM保護のそもそもの必要性についてなされるべき検討もせずに、このような2つの法律の条文の辻褄合わせのような改正には全く賛成できない。

(4)その他
 その他の話はマニアックでかつ特に大きな問題がある訳ではないので、ポイントの抜粋だけに留めるが、第81ページからの第4章著作権等侵害訴訟における証拠収集手続の強化では、今年の不正競争防止法や特許法等の改正に合わせ、「『文書提出命令の申立ての対象書類等が侵害立証・損害額計算のために必要な書類であるか否かを判断する場合』にもインカメラ手続を用いることができるよう見直しを行うのが適当」(第85ページ)、「インカメラ手続に専門委員を関与させることができるよう見直しを行うのが適当」(第86ページ)とされ、第87ページからの第5章著作物等の利用許諾に係る権利の対抗制度の導入では、ライセンスの対抗要件として登録を求めない「対抗要件を要することなく当然に対抗できることとする制度(当然対抗制度)を導入することが妥当」(第108ページ)(平成23年特許法改正に対応するもの)とされ、第135ページからの第6章行政手続に係る権利制限規定の見直し(地理的表示法・種苗法関係)では、「地理的表示法に基づく審査手続や種苗法に基づく審査手続・調査手続において,必要と認められる限度で行われる著作物の複製を権利制限の対象とすることが適当」(第144ページ)(特許庁での手続きについて平成18年著作権法改正で対応されていることから、それに続くもの)とされている。

 ざっと読んだだけだが、この文化庁の報告書に含まれているものの中でも、リーチサイト規制(リンク規制)の法制化とダウンロード違法化・犯罪化の範囲の拡大の問題は非常に大きく、私は今回のパブコメも提出するつもりである。

(2018年12月12日夜の追記:幾つか誤記を直した。)

(2018年12月13日夜の追記:文化庁のHPにも中間まとめに対する意見募集の案内が掲載されていたので上でリンクを追加した。)

(2018年12月30日夜の追記:技術的制限手段は定義として技術的保護手段の次に入れられるもので(このTPP関連として入れられたアクセスコントロール規制の条文については第360回参照)、「技術的利用制限手段(元は技術的保護手段)」というのは少し変なのでこれを「技術的利用制限手段(前は技術的保護手段)の規制」という書き方に改めた。)

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2018年3月 4日 (日)

第389回:閣議決定された著作権法改正案の条文(リバースエンジニアリング、所在検索・情報解析サービスのための権利制限の拡充他)

 先月から各知財法の改正案の閣議決定がされ、その条文が公開されているので、順番に見て行きたい。まずは2月23日に文科省のHPで公開された著作権法改正案(概要(pdf)要綱(pdf)案文・理由(pdf)新旧対照表(pdf)参照条文(pdf))についてである。

 このうち、概要(pdf)には、以下のような改正の概要が書かれている。

①デジタル化・ネットワーク化の進展に対応した柔軟な権利制限規定の整備(第30条の4、第47条の4、第47条の5等関係)
・著作物の市場に悪影響を及ぼさないビッグデータを活用したサービス等※のための著作物の利用について、許諾なく行えるようにする。
・イノベーションの創出を促進するため、情報通信技術の進展に伴い将来新たな著作物の利用方法が生まれた場合にも柔軟に対応できるよう、ある程度抽象的に定めた規定を整備する。
(※)例えば現在許諾が必要な可能性がある以下のような行為が、無許諾で利用可能となる。
○所在検索サービス(例:書籍情報の検索)
→著作物の所在(書籍に関する各種情報)を検索し、その結果と共に著作物の一部分を表示する。
○情報解析サービス(例:論文の盗用の検証)
→大量の論文データを収集し、学生の論文と照合して盗用がないかチェックし、盗用箇所の原典の一部分を表示する。

②教育の情報化に対応した権利制限規定等の整備(第35条等関係)
・ICTの活用により教育の質の向上等を図るため、学校等の授業や予習・復習用に、教師が他人の著作物を用いて作成した教材をネットワークを通じて生徒の端末に送信する行為等について、許諾なく行えるようにする。
【現在】利用の都度、個々の権利者の許諾とライセンス料の支払が必要
【改正後】ワンストップの補償金支払のみ(権利者の許諾不要)

③障害者の情報アクセス機会の充実に係る権利制限規定の整備(第37条関係)
・マラケシュ条約※の締結に向けて、現在視覚障害者等が対象となっている規定を見直し、肢体不自由等により書籍を持てない者のために録音図書の作成等を許諾なく行えるようにする。
(※)視覚障害者や判読に障害のある者の著作物の利用機会を促進するための条約
【現在】視覚障害者や発達障害等で著作物を視覚的に認識できない者が対象
【改正後】肢体不自由等を含め、障害によって書籍を読むことが困難な者が広く対象

④アーカイブの利活用促進に関する権利制限規定の整備等(第31条、第47条、第67条等関係)
・美術館等の展示作品の解説・紹介用資料をデジタル方式で作成し、タブレット端末等で閲覧可能にすること等を許諾なく行えるようにする。
・国及び地方公共団体等が裁定制度※を利用する際、補償金の供託を不要とする。
(※)著作権者不明等の場合において、文化庁長官の裁定を受け、補償金を供託することで、著作物を利用することができる制度
【現在】裁定制度により著作物等を利用する場合、事前に補償金の供託が必要
【改正後】国及び地方公共団体等については、補償金の供託は不要(権利者が現れた後に補償金を支払う)
・国会図書館による外国の図書館への絶版等資料の送付を許諾無く行えるようにする。
デジタル・ネットワーク技術の進展により、新たに生まれる様々な著作物の利用ニーズに的確に対応
するため、著作権者の許諾を受ける必要がある行為の範囲を見直し、情報関連産業、教育、障害者、
美術館等におけるアーカイブの利活用に係る著作物の利用をより円滑に行えるようにする。
【現在】小冊子(紙媒体)への掲載は許諾不要。タブレット等(デジタル媒体)での利用は許諾が必要。
【改正後】小冊子、タブレット等のいずれも場合も許諾不要。

施行期日 平成31年1月1日 ②については公布の日から起算して3年を超えない範囲内において政令で定める日。

 この著作権法改正案は、第375回で取り上げた去年の文化庁の法制・基本問題小委員会の中間まとめに対応するもので(内容として違いはないが、最終的な報告書としては去年4月の文化審議会著作権分科会報告書(pdf)にまとめられている)、基本的に権利制限の拡充をするものであり、その限りにおいて問題はない。

 上の改正事項順に条文を見て行くと、「①デジタル化・ネットワーク化の進展に対応した柔軟な権利制限規定の整備」であげられている各改正条項の第30条の4、第47条の4、第47条の5は以下のようなものとなっている。

(著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない利用)
第三十条の四
 著作物は、次に掲げる場合その他の当該著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させることを目的としない場合には、その必要と認められる限度において、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。
 著作物の録音、録画その他の利用に係る技術の開発又は実用化のための試験の用に供する場合
 情報解析(多数の著作物その他の大量の情報から、当該情報を構成する言語、音、影像その他の要素に係る情報を抽出し、比較、分類その他の解析を行うことをいう。第四十七条の五第一項第二号において同じ。)の用に供する場合
 前二号に掲げる場合のほか、著作物の表現についての人の知覚による認識を伴うことなく当該著作物を電子計算機による情報処理の過程における利用その他の利用(プログラムの著作物にあつては、当該著作物の電子計算機における実行を除く。)に供する場合

(電子計算機における著作物の利用に付随する利用等)
第四十七条の四
 電子計算機における利用(情報通信の技術を利用する方法による利用を含む。以下この条において同じ。)に供される著作物は、次に掲げる場合その他これらと同様に当該著作物の電子計算機における利用を円滑又は効率的に行うために当該電子計算機における利用に付随する利用に供することを目的とする場合には、その必要と認められる限度において、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。
 電子計算機において、著作物を当該著作物の複製物を用いて利用する場合又は無線通信若しくは有線電気通信の送信がされる著作物を当該送信を受信して利用する場合において、これらの利用のための当該電子計算機による情報処理の過程において、当該情報処理を円滑又は効率的に行うために当該著作物を当該電子計算機の記録媒体に記録するとき。
 自動公衆送信装置を他人の自動公衆送信の用に供することを業として行う者が、当該他人の自動公衆送信の遅滞若しくは障害を防止し、又は送信可能化された著作物の自動公衆送信を中継するための送信を効率的に行うために、これらの自動公衆送信のために送信可能化された著作物を記録媒体に記録する場合
 情報通信の技術を利用する方法により情報を提供する場合において、当該提供を円滑又は効率的に行うための準備に必要な電子計算機による情報処理を行うことを目的として記録媒体への記録又は翻案を行うとき。

 電子計算機における利用に供される著作物は、次に掲げる場合その他これらと同様に当該著作物の電子計算機における利用を行うことができる状態を維持し、又は当該状態に回復することを目的とする場合には、その必要と認められる限度において、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。
 記録媒体を内蔵する機器の保守又は修理を行うために当該機器に内蔵する記録媒体(以下この号及び次号において「内蔵記録媒体」という。)に記録されている著作物を当該内蔵記録媒体以外の記録媒体に一時的に記録し、及び当該保守又は修理の後に、当該内蔵記録媒体に記録する場合
 記録媒体を内蔵する機器をこれと同様の機能を有する機器と交換するためにその内蔵記録媒体に記録されている著作物を当該内蔵記録媒体以外の記録媒体に一時的に記録し、及び当該同様の機能を有する機器の内蔵記録媒体に記録する場合
 自動公衆送信装置を他人の自動公衆送信の用に供することを業として行う者が、当該自動公衆送信装置により送信可能化された著作物の複製物が滅失し、又は毀損した場合の復旧の用に供するために当該著作物を記録媒体に記録するとき。

(電子計算機による情報処理及びその結果の提供に付随する軽微利用等)
第四十七条の五
 電子計算機を用いた情報処理により新たな知見又は情報を創出することによつて著作物の利用の促進に資する次の各号に掲げる行為を行う者(当該行為の一部を行う者を含み、当該行為を政令で定める基準に従つて行う者に限る。)は、公衆への提供又は提示(送信可能化を含む。以下この条において同じ。)が行われた著作物(以下この条及び次条第二項第二号において「公衆提供提示著作物」という。)(公表された著作物又は送信可能化された著作物に限る。)について、当該各号に掲げる行為の目的上必要と認められる限度において、当該行為に付随して、いずれの方法によるかを問わず、利用(当該公衆提供提示著作物のうちその利用に供される部分の占める割合、その利用に供される部分の量、その利用に供される際の表示の精度その他の要素に照らし軽微なものに限る。以下この条において「軽微利用」という。)を行うことができる。ただし、当該公衆提供提示著作物に係る公衆への提供又は提示が著作権を侵害するものであること(国外で行われた公衆への提供又は提示にあつては、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものであること)を知りながら当該軽微利用を行う場合その他当該公衆提供提示著作物の種類及び用途並びに当該軽微利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。
 電子計算機を用いて、検索により求める情報(以下この号において「検索情報」という。)が記録された著作物の題号又は著作者名、送信可能化された検索情報に係る送信元識別符号(自動公衆送信の送信元を識別するための文字、番号、記号その他の符号をいう。)その他の検索情報の特定又は所在に関する情報を検索し、及びその結果を提供すること。
 電子計算機による情報解析を行い、及びその結果を提供すること。
 前二号に掲げるもののほか、電子計算機による情報処理により、新たな知見又は情報を創出し、及びその結果を提供する行為であつて、国民生活の利便性の向上に寄与するものとして政令で定めるもの

 前項各号に掲げる行為の準備を行う者(当該行為の準備のための情報の収集、整理及び提供を政令で定める基準に従つて行う者に限る。)は、公衆提供提示著作物について、同項の規定による軽微利用の準備のために必要と認められる限度において、複製若しくは公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。以下この項及び次条第二項第二号において同じ。)を行い、又はその複製物による頒布を行うことができる。ただし、当該公衆提供提示著作物の種類及び用途並びに当該複製又は頒布の部数及び当該複製、公衆送信又は頒布の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。

 この部分についてはかなり条文の整理が入っており、新旧の対比が分かりにくいので、ここでさらに簡単な対比表を作ると以下のようになる。

(新)第30条の4(思想感情非享受利用)
・第1項(非享受利用一般):新規
・・第1号(技術開発・試験):(旧)第30条の4
・・第2号(情報解析):(旧)第47条の7
・・第3号(情報処理他):新規

(新)第47条の4(電子計算機付随利用)
・第1項(円滑・効率的):新規
・・第1号(情報処理):(旧)第47条の8
・・第2号(自動公衆送信):(旧)第47条の5第1項第1号、第2項
・・第3号(情報提供):(旧)第47条の9
・第2項(状態維持・回復):新規
・・第1号(保守・修理):(旧)第47条の4第1項
・・第2号(交換):(旧)第47条の4第2項
・・第3号(復旧):(旧)第47条の5第1項第2号

(新)第47条の5(電子計算機軽微利用)
・第1項(軽微利用):新規
・・第1号(検索情報提供):(旧)第47条の6
・・第2号(解析情報提供):新規
・・第3号(国民生活利便性向上(政令)):新規
・第2項(準備):新規

 こうして見ると、情報処理関連の権利制限については、私はこれを本当の意味で柔軟な一般フェアユース条項であるとは評価しないが、思想又は感情の享受を目的としない利用、付随利用、軽微利用という3つの類型に整理し直され、それぞれ少しずつ一般化が図られていることが分かる。

 特に新しい点は、思想又は感情の享受を目的としない利用一般のための権利制限として第30条の4が作り直されている点であり、明示的には書かれていないが、中間まとめで権利制限の対象とするべきとされていたリバースエンジニアリングはここで読めると考えられる。

 そして、第47条の5第1項第1号の検索情報提供も、元の第47条の6から比べると、送信可能化された情報以外の情報も含むように少し広げられ、書籍情報の検索のような所在検索サービスが含まれるようになっており、その下の第2号に解析情報提供もあるので、論文の盗用の検証のような情報解析サービスも含まれると読める。中間まとめで権利制限の対象とすべきとされていた、外国人のための翻訳サービスは法改正条文としては入っていないが、第3号に政令で定めるものを対象とできるとあるので、政令で指定するつもりなのだろう。

 次に、「②教育の情報化に対応した権利制限規定等の整備」に関する第35条は以下のようになっている。(下線が追加部分。以下同じ。)

(学校その他の教育機関における複製等)
第三十五条
 学校その他の教育機関(営利を目的として設置されているものを除く。)において教育を担任する者及び授業を受ける者は、その授業の過程における使用利用に供することを目的とする場合には、必要その必要と認められる限度において、公表された著作物を複製する複製し、若しくは公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。以下この条において同じ。)を行い、又は公表された著作物であつて公衆送信されるものを受信装置を用いて公に伝達することができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びにその複製の部数及び当該複製の部数及び当該複製、公衆送信又は伝達の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。
 前項の規定により公衆送信を行う場合には、同項の教育機関を設置する者は、相当な額の補償金を著作権者に支払わなければならない。
(第3項:略)

 また、「③障害者の情報アクセス機会の充実に係る権利制限規定の整備」に関する第37条は以下のようになっている。

(視覚障害者等のための複製等)
第三十七条

(略)
3 視覚障害者その他視覚障害その他の障害により視覚による表現の認識に障害のあるが困難な者(以下この項及び第百二条第四項において「視覚障害者等」という。)の福祉に関する事業を行う者で政令で定めるものは、公表された著作物であつて、視覚によりその表現が認識される方式(視覚及び他の知覚により認識される方式を含む。)により公衆に提供され、又は提示されているもの(当該著作物以外の著作物で、当該著作物において複製されているものその他当該著作物と一体として公衆に提供され、又は提示されているものを含む。以下この項及び同条第四項において「視覚著作物」という。)について、専ら視覚障害者等で当該方式によつては当該視覚著作物を利用することが困難な者の用に供するために必要と認められる限度において、当該視覚著作物に係る文字を音声にすることその他当該視覚障害者等が利用するために必要な方式により、複製し、又は自動公衆送信(送信可能化を含む。)公衆送信を行うことができる。ただし、当該視覚著作物について、著作権者又はその許諾を得た者若しくは第七十九条の出版権の設定を受けた者若しくはその複製許諾若しくは公衆送信許諾を得た者により、当該方式による公衆への提供又は提示が行われている場合は、この限りでない。

 最後に、「④アーカイブの利活用促進に関する権利制限規定の整備等」に関する第31条、第47条、第67条は以下のようになっている。

(図書館等における複製等)
第三十一条

(略)
3 国立国会図書館は、絶版等資料に係る著作物について、図書館等又はこれに類する外国の施設で政令で定めるものにおいて公衆に提示することを目的とする場合には、前項の規定により記録媒体に記録された当該著作物の複製物を用いて自動公衆送信を行うことができる。この場合において、当該図書館等においては、その営利を目的としない事業として、当該図書館等の利用者の求めに応じ、その調査研究の用に供するために、自動公衆送信される当該著作物の一部分の複製物を作成し、当該複製物を一人につき一部提供することができる。

(美術の著作物等の展示に伴う複製等)
第四十七条
 美術の著作物又は写真の著作物の原作品により、第二十五条に規定する権利を害することなく、これらの著作物を公に展示する者(以下この条において「原作品展示者」という。)は、観覧者のためにこれらの著作物の解説又はこれらの展示する著作物(以下この条及び第四十七条の六第二項第一号において「展示著作物」という。)の解説若しくは紹介をすることを目的とする小冊子にこれらの著作物を掲載する当該展示著作物を掲載し、又は次項の規定により当該展示著作物を上映し、若しくは当該展示著作物について自動公衆送信(送信可能化を含む。同項及び同号において同じ。)を行うために必要と認められる限度において、当該展示著作物を複製することができる。ただし、当該展示著作物の種類及び用途並びに当該複製の部数及び態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。

 原作品展示者は、観覧者のために展示著作物の解説又は紹介をすることを目的とする場合には、その必要と認められる限度において、当該展示著作物を上映し、又は当該展示著作物について自動公衆送信を行うことができる。ただし、当該展示著作物の種類及び用途並びに当該上映又は自動公衆送信の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。

 原作品展示者及びこれに準ずる者として政令で定めるものは、展示著作物の所在に関する情報を公衆に提供するために必要と認められる限度において、当該展示著作物について複製し、又は公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。)を行うことができる。ただし、当該展示著作物の種類及び用途並びに当該複製又は公衆送信の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。

(著作権者不明等の場合における著作物の利用)
第六十七条

(略)
 国、地方公共団体その他これらに準ずるものとして政令で定める法人(以下この項及び次条において「国等」という。)が前項の規定により著作物を利用しようとするときは、同項の規定にかかわらず、同項の規定による供託を要しない。この場合において、国等が著作権者と連絡をすることができるに至つたときは、同項の規定により文化庁長官が定める額の補償金を著作権者に支払わなければならない。
(第3項以下略)

 これらの②~④に関する改正も決して十分とまでは言えないが、単純な拡充であり、内容としては比較的分かりやすい。

 その他にもそこかしこに入っているテクニカルな改正についての説明は省略するが、この著作権法改正案は、基本的に個別の権利制限を拡充する方向のものであり、その限りにおいてそれなりに評価できるものとなっている。ただし、これは本当の意味で柔軟な一般フェアユース条項を入れるものではなく、この法改正が通ったとしても、私は一般フェアユース条項の導入を求めて行く必要があると考えている。

 政府が著作権の保護期間を50年から70年に延長する方針であるという報道もあったが、この先月閣議決定され国会に提出された著作権法改正案には保護期間延長は含まれていない。第386回で書いた通り、保護期間延長は日欧EPAに伴うものなので、政府としては別にするつもりなのだろう。今後政府がごり押ししてくるに違いない日欧EPA署名・批准とそれに伴う著作権法改正は本当に危険であり、要注意である。

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2017年3月22日 (水)

第376回:文化庁・法制・基本問題小委員会の中間まとめに関する意見募集(3月29日〆切)への提出パブコメ

 書いていることはいつも通りだが、前回取り上げた、文化庁の文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会の中間まとめ(pdf)に関する意見募集に対して私が提出したパブコメをここにに載せておく。(意見募集は3月29日〆切。文化庁のHP又は電子政府のHP参照。)

 例によって文化庁にはあまり期待はできないが、法改正前に政府に意見を言える数少ない機会ではあるので、このような問題に関心のある方は是非意見の提出を検討することをお勧めする。

(以下、提出パブコメ)

(1)4つの新しい権利制限の導入について
 本中間まとめにおいて導入するべきとされている、4つの新しい権利制限、すなわち、(a)リバースエンジニアリング、(b)機械翻訳に係る技術開発のためなど、システムのバックエンドで行われる複製等、(c)所在検索・情報分析サービスのための、検索・分析用データベースの作成及び著作物の本来的市場と競合しない一部の表示等、(d)外国人が観光又は一般生活上必要とする、公衆に無償で提供又は提示されている著作物に係る翻訳サービスについて速やかに導入することを求める。

 また、これらの権利制限を導入するにあたり、必要以上に権利制限の範囲を狭めることはあってはならないことであり、その範囲の制限は「ただし、権利者の利益を不当に害することとなる場合を除く」といった一般的な記載のみに留めるべきである。ここで、特に、(d)の翻訳サービスについては、日本人向けや日本語への翻訳が必要とされることもあり得るのであって、対象を外国人に限る必然性はなく、「観光又は一般生活上必要とする、公衆に無償で提供又は提示されている著作物に係る翻訳サービス」一般を広く権利制限の対象とするべきである。

 なお、そもそもリバースエンジニアリングが過去の平成21年当時の審議会で検討済みの事項であることは第43ページの注にも書かれている通りであり、この事項が今までの内閣提出の法改正案に含まれていなかったことは行政の怠慢以外の何物でもない。

(2)5つの権利制限の拡充について
 さらに、本中間まとめの第2章以下で拡充すべきとされている、5つの権利制限、すなわち、(e)著作権法第35条における授業における教材等の異時公衆送信、(f)著作権法第33条におけるデジタル教科書への著作物の掲載、(g)著作権法第37条第3項における受益者への身体障害等により読字に支障のある者の追加等、(h)著作権法第31条第3項における国立国会図書館の自動公衆送信先への外国の図書館等の追加、(i)著作権法第47条における展示著作物の情報提供のための電子機器を用いた複製等についても速やかに拡充することを求める。

 ここで、真に2次利用可能な形で各種アーカイブの構築・充実を考えるのであれば、裁定制度の見直しや法解釈による対応に関する検討だけでは不十分であり、国会図書館にのみアーカイブ機能を集中させることも適切ではない。特に日本において十分になされているとは言い難いパブリックドメイン資料や絶版資料の利活用をより強力に促進するべきであり、著作権法の改正により、(i)現行著作権法第31条で国会図書館のみに可能とされている絶版等資料の電子利用をあらゆる図書館及び文書館に可能とすること、合わせて(ii)同条における絶版等資料以外の資料についての「滅失、損傷若しくは汚損を避けるため」という電子化のための要件を緩和してここにアーカイブ化のためという目的を追加し、著作権保護期間満了後の資料公開に備えた事前の電子化を明確に可能とすること、及び(iii)個人アーカイブの作成が第30条の私的複製の範囲に含まれることを条文上明記し、個人資料の利活用及び著作権保護期間満了後の公開を促すことを私は求める。このような権利制限又は例外が不必要に狭くされるべきではなく、その他者がアーカイブを直接利用しないことを前提として他者の力を借りたアーカイブ化も可能とされるべきである。

(3)一般フェアユース条項の導入について
 本中間まとめは幾つかの権利制限の導入や拡充をしようとしているという点では一定の評価はできるものの、一般フェアユース条項の導入について否定的な結論を出していることは到底納得のできるものではない。一般フェアユース条項については本中間まとめの整理を全て白紙に戻した上で、一から再検討を行い、アメリカ等と遜色ない形で一般フェアユース条項を導入するべきである。

 まず、本中間まとめの第1章で意見募集やヒアリング等から聞き取った様々なニーズについて検討を加え、個々に是非を判断しようとしているが、このようなやり方で取り上げられるのは既存のニーズのみであり、将来に渡っての対応を問題とする一般フェアユース条項の導入の是非についてこのようなやり方を取るのはそもそも適切ではない。

 さらに、個々のニーズについても「A:権利制限規定の見直しによる対応の検討が求められているもの」、「B:他の政策手段による対応の検討が求められているもの」、「C:既に審議会等で検討中又は過去の審議会で検討済のもの」という分類をした上でさらにAの中で優先度までつけてふるい落としををして問題の極小化を図っているので、折角広くニーズを聞き取った意味が完全に減殺されており、第23ページから第40ページまでの検討も文化庁自身のお手盛り調査であり、一般フェアユース条項導入否定の結論ありきの内容で、ほとんど取るに足らない。例えば、「権利者に及び得る不利益の度合い等に応じて分類した3つの『層』について,それぞれ適切な柔軟性を確保した規定を整備することが適当である」(第38ページ)と、良く分からない類型分けをして、「柔軟性のある権利制限規定」の「柔軟性」の意味を個別の権利制限規定の柔軟性に置き換え、問題を個別の権利制限規定の範囲の話に押し込めているのはほとんど詐欺に等しい言葉遊びである。

 本中間まとめで取り上げられているニーズだけを見ても、その全てについて個別の権利制限規定による対処を行うことは現実的には不可能であり、個別の権利制限規定による対処が不可能な全ての公正利用の類型が含まれるよう、その範囲・要件はアメリカ等と比べて遜色の無いものとして、権利制限の一般規定を導入するべきという以外の結論は考えられない。

 さらに言えば、そもそも、現行の個別の権利制限規定自体非常に狭く使いにくいものとされているという現状の問題をなおざりにするべきではない。本中間まとめは幾つかの権利制限の導入を提言しているが、これらはあった方が良いものとは言え、到底一般フェアユース条項と言うに足るものではなく、これでは著作権をめぐる今の混迷状況が変わることはない。

 特に、インターネットのように、ほぼ全国民が利用者兼権利者となり得、考えられる利用形態が発散し、個別の規定では公正利用の類型を拾い切れなくなるところでは、フェアユースのような一般規定は保護と利用のバランスを取る上で重要な意義を持つものである。

 著作物の公正利用には変形利用もビジネス利用も考えられ、このような利用も含めて著作物の公正利用を促すことが、今後の日本の文化と経済の発展にとって真に重要であることを考えれば、不当にその範囲を不当に狭めるべきでは無く、その範囲はアメリカ等と比べて遜色の無いものとされるべきである。ただし、フェアユースの導入によって、私的複製の範囲が縮小されることはあってはならない。

 また、「まねきTV」事件などの各種判例からも、ユーザー個人のみによって利用されるようなクラウド型サービスまで著作権法上ほぼ違法とされてしまう状況に日本があることは明らかであり、このような状況は著作権法の趣旨に照らして決して妥当なことではない。ユーザーが自ら合法的に入手したコンテンツを私的に楽しむために利用することに著作権法が必要以上に介入することが許されるべきではなく、個々のユーザーが自らのためのもに利用するようなクラウド型サービスにまで不必要に著作権を及ぼし、このような技術的サービスにおけるトランザクションコストを過大に高め、その普及を不当に阻害することに何ら正当性はない。この問題がクラウド型サービス固有の問題でないのはその通りであるが、だからといって法改正の必要性がなくなる訳ではない。著作権法の条文及びその解釈・運用が必要以上に厳格に過ぎクラウド型サービスのような技術の普及が不当に阻害されているという日本の悲惨な現状を多少なりとも緩和するべく、速やかに問題を再整理し、アメリカ等と比べて遜色の無い範囲で一般フェアユース条項を導入し、同時にクラウド型サービスなどについてもすくい上げられるようにするべきである。

 権利を侵害するかしないかは刑事罰がかかるかかからないかの問題でもあり、公正という概念で刑事罰の問題を解決できるのかとする意見もあるようだが、かえって、このような現状の過剰な刑事罰リスクからも、フェアユースは必要なものと私は考える。現在親告罪であることが多少セーフハーバーになっているとはいえ、アニメ画像一枚の利用で別件逮捕されたり、セーフハーバーなしの著作権侵害幇助罪でサーバー管理者が逮捕されたりすることは、著作権法の主旨から考えて本来あってはならないことである。政府にあっては、著作権法の本来の主旨を超えた過剰リスクによって、本来公正として認められるべき事業・利用まで萎縮しているという事態を本当に深刻に受け止め、一刻も早い改善を図ってもらいたい。

 合わせ、本中間まとめに含まれていない事項であるが、次の法改正案により、文化庁へのパブコメ(文化庁HPhttp://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/chosakuken/hokoku.htmlの意見募集の結果参照)や知財本部へのパブコメ(知財本部のHPhttp://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/keikaku2009.htmlの個人からの意見参照)等を完全に無視して行われたものであり、さらなる有害無益な規制強化・著作権検閲にしか流れようの無い、百害あって一利ないダウンロード違法化・犯罪化を規定する著作権法第30条第1項第3号及び第119条第3項の削除を行うことも私は求める。

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2017年3月 9日 (木)

第375回:一般フェアユース条項の導入を否定する文化庁の法制・基本問題小委員会中間まとめ(3月29日パブコメ募集〆切)

 特許庁の報告書と前後して文化庁の文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会の中間まとめ(pdf)も3月29日〆切でパブコメにかかっている。(文化庁のHP又は電子政府のHP参照。)

 この文化庁の報告書は、「第1章 新たな時代のニーズに的確に対応した権利制限規定の在り方等」、「第2章 教育の情報化の推進等」、「第3章 障害者の情報アクセス機会の充実」、「第4章 著作物等のアーカイブの利活用促進」という章立てが示している通り、特に危険な規制強化が含まれているということはなく(去年のTPP関連法改正で危ない法改正事項を突っ込んでしまっている所為だろうが)、幾つかの権利制限の導入や拡充をしようとしているという点では一定の評価はできるものの、一般フェアユース条項の導入について否定的な結論を出しているものであり、私としては全く納得のできるものではない。

 この報告書では、第3ページからの「第1章 新たな時代のニーズに的確に対応した権利制限規定の在り方等」で意見募集やヒアリング等から聞き取った様々なニーズについて検討を加え、個々に是非を判断しようとしている。しかし、当たり前の話だが、このようなやり方で取り上げられるのは既存のニーズのみであり、将来に渡っての対応を問題とする一般フェアユース条項の導入の是非についてこのようなやり方を取るのはそもそも適切ではない。

 さらに、個々のニーズについても「A:権利制限規定の見直しによる対応の検討が求められているもの」、「B:他の政策手段による対応の検討が求められているもの」、「C:既に審議会等で検討中又は過去の審議会で検討済のもの」という分類をした上でさらにAの中で優先度までつけてふるい落としををして問題の極小化を図っているので、折角広くニーズを聞き取った意味が完全に減殺されていると言っていい。

 結果、検討対象として残ったのは、第15ページにある通り、

ⅰ 優先的に検討を行うこととされたニーズ

◎a 公衆がアクセス可能な情報の所在検索サービスの提供(例:書籍検索サービス、テレビ番組検索サービス、街中風景検索サービス)
◎b システムのバックエンドにおける情報の複製(例:音楽曲名検索サービス)

ⅱ ニーズ提出者に追加説明を依頼することとされたニーズ

c パロディ・二次創作としての著作物利用
d 教科書・入試問題の二次利用
◎e CPS(サイバーフィジカルシステム)による情報提供サービス(例:機械翻訳サービス、教育支援サービス、障害者等支援サービス)
f 障害者の情報アクセシビリティ向上のためのサービス
◎g リバース・エンジニアリング
◎h 自動翻訳サービス(例:屋内外の看板や案内図、食堂のメニュー表等や、インターネット上の情報の翻訳サービス)
◎i ビッグデータの解析結果提供,情報分析サービス(例:評判情報分析サービス、論文剽窃検出サービス)
j メディア変換サービス
k 図書館における図書検索等サービス
l 企業等で一般的に行われている軽微な複製等

ⅲ 優先的な課題の検討を行った後に順次検討することとされたニーズ

m 図書館における公的機関が作成した広報資料の複製
n 図書館におけるインターネット上の情報のプリントアウト
o 商品の批評や販売目的の写真(書影,ジャケット等)のウェブサイト掲載

(上の一覧では、見やすさのため、第15ページのものから分類番号等を削除し、サービスの具体例を第17〜23ページから追記し、この報告書で検討されている項目に下線を追加した。)

の15項目であり、そして、ⅰのa、bと、新産業創出環境整備関連らしいⅱのe、g、h、iについて、この中間まとめで検討結果が示されているという状況である。(ワーキングチームでどういう議論がされたのかは良く分からないが、新産業創出環境整備云々と言ったところで、まず検討しやすい項目を選んだようにしか私には見えない。そもそもリバースエンジニアリングが過去の審議会で検討済みの事項であることは第43ページの注にも書かれている通りだが、これがCではなくAに分類されているところからして理解に苦しむ。なお、本題とは無関係なのでここではさておくが、「サイバーフィジカルシステム」というのは「デジタルデータの収集,蓄積,解析,解析結果の実世界へのフィードバックという実世界とサイバー空間との相互連関」らしいが、こういう意味不明の概念を持ちだしているのも頭の悪いことこの上ない。)

 この中間まとめの第23ページから第40ページまで権利者団体のヒアリング結果や文化庁自身が発注している著作権法における権利制限規定の柔軟性が及ぼす効果と影響等に関する調査研究報告書(pdf)の内容を引き写した検討が書かれているが、これらは例によって文化庁のお手盛り調査であり、一般フェアユース条項導入否定の結論ありきの内容で、ほとんど取るに足らない。非常に馬鹿々々しいので一々突っ込まないが、文化庁がくどくどとしょうもない理屈を書いた上で、「権利者に及び得る不利益の度合い等に応じて分類した3つの『層』について,それぞれ適切な柔軟性を確保した規定を整備することが適当である」(第38ページ)と、良く分からない類型分けをして、「柔軟性のある権利制限規定」の「柔軟性」の意味を個別の権利制限規定の柔軟性に置き換え、問題を個別の権利制限規定の範囲の話に押し込めているのはほとんど詐欺に等しい言葉遊びである。

 ここまで意味不明の理屈で一般フェアユース条項が導入できないということを述べ立てているだけでほとんど大したことは書かれていないのだが、ここから先、第41〜68ページに書かれていることも無意味にくどくて非常に分かりにくいので、結論として権利制限が導入されそうな項目だけで書くと、要するに、

  • リバースエンジニアリング
  • 機械翻訳に係る技術開発のためなど、システムのバックエンドで行われる複製等
  • 所在検索・情報分析サービスのための、検索・分析用データベースの作成及び著作物の本来的市場と競合しない一部の表示等(ただし、表示等について権利者の利益を不当に害することとなる場合を除く)
  • 外国人が観光又は一般生活上必要とする、公衆に無償で提供又は提示されている著作物に係る翻訳サービス(ただし、権利者の利益を不当に害することとなる場合を除く)

の4つのみである。

 第2章以下も法改正のポイントのみの抜粋に留めるが、「第2章 教育の情報化の推進等」では、授業における教材等の送信について「異時公衆送信についても、権利者の利益を不当に害しない一定の条件の下で法第35条の権利制限の対象とすることが適当」(第81ページ)、「新たに権利制限を設ける異時公衆送信についてのみ補償金請求権を付与することが適当」(第84ページ)と、デジタル教科書への著作物の掲載について「法第33条の対象となるよう必要に応じて規定の見直しを行うことが適当」(第104ページ)、「デジタル教科書への著作物の掲載行為についても,一定の補償金の支払を求めるべき」(第105ページ)とされ、「第3章 障害者の情報アクセス機会の充実」では、「法第37条第3項における受益者の範囲について,身体障害等により読字に支障のある者を加えるための所要の規定の整備を行うことが適当」(第112ページ)、「法第37条第3項に基づき図書館等がメール送信サービスを行うことができるよう,所要の規定の整備を行うことが適当」(同上)、「ボランティアグループ等についても(中略)権利者の利益を不当に害さないための一定の条件を課した上で,現行制度よりも簡易な方法で複製等を行うことができる主体になり得ることができるようにするための所要の措置(例えば,一定の類型については個別に文化庁長官の個別指定を受けずとも主体になり得るよう政令に規定する等)を講じることが適切」(第113ページ)とされ、「第4章 著作物等のアーカイブの利活用促進」では、「法第31条第3項の規定に基づき国立国会図書館が絶版等資料に係る著作物を自動公衆送信できる送信先の施設に,同条第1項に規定する図書館等に類する外国の施設を追加する法改正が求められる」(第124ページ)、「美術の著作物又は写真の著作物の原作品を適法に展示する者は,これらの著作物に係る情報を提供することを目的とする場合には,必要と認められる限度において,当該著作物等を複製し,又は公衆送信を行うことができることとすることが望ましい」(第126ページ)と書かれ、箇条書きにすると以下のような権利制限の拡充が行われそうである。

  • 著作権法第35条において、授業における教材等の異時公衆送信についても権利制限の対象とする(補償金請求権つき)
  • 著作権法第33条において、デジタル教科書への著作物の掲載についても権利制限の対象とする(補償金請求権つき)
  • 著作権法第37条第3項において、権利制限の受益者に身体障害等により読字に支障のある者を加えるとともに、図書館等がメール送信サービスを行うことができるようにし、また、ボランティアグループ等も複製等を行うことができる主体になり得るようにする
  • 著作権法第31条第3項において、国立国会図書館が絶版等資料に係る著作物を自動公衆送信できる送信先の施設に外国の図書館等を追加する
  • 著作権法第47条において、美術又は写真の著作物の原作品を適法に展示する者がその著作物に係る情報の提供のために必要と認められる限度において電子機器を用いた複製又は公衆送信も行うことができるようにする

 この中間まとめは全体で180ページ近くもある非常に大部なもので、いろいろと書かれているようにも見えるが、一般フェアユース条項を導入したくないがために結論ありきで意味不明の理屈を無駄に捏ねているいつもの文化庁の駄弁の部分を除けば、上で抜き出した通り、4つの個別の権利制限を新たに導入し、5つの権利制限を拡充するということを書いているに過ぎない。このような審議会の報告書では提出される法律の条文の詳細までは分からないが、報告書の書きぶりから見る限り新たに導入される個別の権利制限も狭く使い勝手の悪いものになるのではないかと私は予想している。リバースエンジニアリングのための権利制限など、この中間まとめの注にもある通り、平成21年時点で既に導入するべきとの結論がほぼ出ていたのであり、今まで放置しているのは文化庁の怠慢以外の何物でもない。ある意味想定通りとは言え、この中間まとめもまた、文化庁と権利者団体のスクラムによる審議会検討では、著作権の権利制限について迅速な検討も、公平な検討も望めないということを如実に示している。

 繰り返しになるが、この中間まとめは幾つかの権利制限の導入や拡充をしようとしているという点では一定の評価はでき、その限りにおいて特に問題はないが、一般フェアユース条項の導入について否定的な結論を出していることは到底納得のできるものではなく、今回も私は意見を出すつもりでいる。

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2016年12月28日 (水)

第372回:2016年の終わりに

 トランプ氏のアメリカ大統領選挙当選の結果発効の見込みが全く立っていないことが不幸中の幸いとは言え、日本の国会で極めて問題の多いTPP協定と関連法案が可決されるなど今年もおよそロクでもない年だったが、今日で各省庁も休みに入り、年内のイベントは一通り終わったと思うので、ここで、今まで取り上げる暇があまりなかった細かな話をまとめて書いておきたいと思う。

 まず、知財本部では、10月から検証・評価・企画委員会が開催されており、今のところほぼ今までの取り組みのフォローアップをしているだけで何か新しい方向性が出ているということはないが、産業財産権分野、コンテンツ分野、新たな情報財検討委員会と3つに分かれて検討が進められている。この中では、新たな情報財検討委員会がAI(人工知能)の作成・保護・利活用の在り方を検討しているようだが、例によって具体的に何をどうしたいのかいまいち良く分からない。

 次に文化庁では、例年通り文化審議会著作権分科会の下で、著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会法制・基本問題小委員会新たな時代のニーズに的確に対応した制度等の整備に関するワーキングチーム国際小委員会が開催されている。茂木和洋氏が最近の検討資料を氏のサイトに上げて下さっているが、私的録音録画補償金制度に関しては関係者の意見が対立したままで、一般的な権利制限規定(フェアユース)の導入には否定的と文化庁の検討は相変わらず全く期待できない状況である。さらに、まだかなり整理が必要だろうと思うが、法制・基本問題小委員会でリーチサイト対策についての検討が進められていることも要注意だろう。

 特許庁では、産業構造審議会知的財産分科会の下で、審査基準に関する検討なども行われているが、法制度に絡むものとして特許制度小委員会商標制度小委員会が開催されている。このうち7月に開催されていた商標制度小委員会の方ではすぐに法改正をするような話にはなっていないようだが、特許制度小委員会の方では知財計画2016(第363回参照)を受けて知財紛争処理システムの在り方に関する検討が行われている。

 また、経産省では、営業秘密の保護・活用に関する小委員会も開催されているが、これもまた資料を見ても何をどうしたいのか良く分からない。

 農水省では、種苗分科会が開催されているが、農水省関連としてはそのHPに書かれている通り、TPP関連法として成立した地理的表示保護法の改正法が既に施行されていることに注意が必要だろう。(無論改正法の他の部分はTPP協定の発効と結びついているので施行されていないが。)

 最後に、総務省では、知財とは直接関係がないが、放送を巡る諸課題に関する検討会放送コンテンツの製作・流通の促進等に関する検討委員会が開催されており、放送番組のネット同時配信の検討が行われている。

 TPP協定と関連法が国会を通った上、いつも通り各省庁は何のためか良く分からない検討のための検討をこぞって繰り広げており、来年も良い年にはなりそうもないが、だからと言って諦めるつもりもない。政官業に巣食う全ての利権屋に悪い年を。そして、この拙いブログを読んで下さっている方々に心からの感謝を。

(2017年1月11日の追記:特許庁のHPに資料が掲載されているが、昨日10日に意匠制度小委員会も開催されていたようである。意匠分野における優先権書類の電子的交換の仕組みの導入などそれなりに実務的に重要な検討もしているようだが、資料を見る限り、意匠法について大きな法改正が今すぐ動きそうな様子ではない。)

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2016年2月11日 (木)

第357回:文化審議会・著作権分科会・法制・基本問題小委員会の文化庁資料から見るTPP対応著作権法改正案の方向性

 昨日2月10日に文化庁で文化審議会・著作権分科会・法制・基本問題小委員会が開催され、TPP対応のための著作権法改正についての議論が行われた。(NHKの記事、Togetterの審議実況まとめ参照。)

 文化庁のHPにはまだ資料は掲載されていないが、茂木和洋氏がサイトに上げてくれている文化庁資料の環太平洋パートナーシップ(TPP)協定に伴う制度整備の在り方等について(案)(pdf)には、①著作物等の保護期問の延長、②著作権等侵害罪の一部非親告罪化、③著作物等の利用を管理する効果的な技術的手段(アクセスコントロール)に関する制度整備、④配信音源の二次使用に対する使用料請求権の付与、⑤「法定の損害賠償」又は「追加的損害賠償」に係る制度整備の5つの法改正事項の内容が書かれ、合わせて施行期日についても書かれており、法改正案の条文そのものではないが、これは今までの資料の中では一番詳細なものなので、ここでもその方向性を見ておきたいと思う。

(1)著作権の保護期間延長
 順に見て行くと、まず、第2節の「著作物等の保護期間の延長」では、第8ページに、

 著作物等の保護期間の延長に当たっては、延長の対象となる著作物を著作者の死後50年又は公表後50年の経過以前に著作権登録がされたものに限ることや、これから創作される著作物あるいは現在存命の著作者による著作物に限ること、また、少なくとも大正12年以前の著作物についてはすべてについて、昭和20年以前の著作物については登録の申請がなければ、当該著作物を公有とすることや図書館における著作物利用について保護期間の例外を設けることなど、著作物の保護期間を延長する際の制度設計について、本小委員会における意見聴取の場において関係団体より意見が出された。
 保護期間の延長を行うべき対象として、改正時に著作権が存続するにも関わらずそのうち延長の対象とするものを一定の年以降に創作されたものに限定することや著作者の生死により区別することはTPP協定上許容されないものと考えられる。また、延長の対象を著作権登録がなされている著作物に限定することは、TPP協定や我が国がすでに締結している文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約パリ改正条約(以下「ベルヌ条約」という。)との関係上困難であると考えられる。また特定の利用目的や利用主体を対象とした著作物等の利用円滑化方策については、保護期間における取扱いではなく、権利制限規定において検討されるべき事項であり、今後の必要に応じて検討を行うことにより対応すべきである。以上のことから、保護期間の延長に当たっては、これらの限定を付すことなく、保護期間内にある著作物について一律にその保護期間を延長することとすることが適当である。

と書かれている通り、特に限定もなく保護期間の70年への延長を是認している。

 ただし、第6〜8ページで、「視聴覚的実演についても音の実演と同様に延長の対象とし、保護期間を実演後70年とすることが適当」、「映画の著作物の保護期間をTPP協定上の義務を超えて延長することの要否及びその在り方については、国際的動向や他の著作物とのバランス、映画の著作物の利用状況等を踏まえて、改めて検討することが適当」、「放送事業者等の権利の保護期間を延長することの要否及びその在り方については、国際的動向や放送の利用状況等を踏まえて、改めて検討することが適当」とされているので、法改正案の方向性としては、ほぼTPP協定の要件通り、実演についても保護期間が延長されるが、映画と放送についてまでは延長されないという整理のようである。

(2)著作権侵害の非親告罪化
 次に、第3節の「著作権等侵害罪の一部非親告罪化」では、「著作権等侵害罪の非親告罪化については、一律に非親告罪化するのではなく、著作権等侵害罪のうちいわゆる海賊行為(著作物等の市場と競合する海賊版による侵害行為)のように、被害法益が大きく、また、著作権者等が提供又は提示する著作物等の市場と競合するため著作権者等の事後追認等により適法化されることが通常想定できない罪質が重い行為態様によるものについて、非親告罪とすることが適当」(第12ページ)とされ、さらに、第13〜14ページで、

 TPP協定においては、非親告罪の対象とすべき範囲が、「故意により商業的規模で行われる」侵害行為に限定されており、また、「商業的規模で行われる」行為には、少なくとも「商業上の利益又は金銭上の利得のために行われる行為」及び「商業上の利益又は金銭上の利得のために行われるものではない重大な行為であって、市場との関連において当該著作権者等の利益に実質的かつ有害な影響を及ぼすもの」が含まれるとされている。非親告罪とすべき範囲は、この趣旨を踏まえ、一定の目的をもって行われた悪質な著作権等侵害行為に限定することが適当である。
 具体的には、侵害者が、侵害行為の対価として利益を受ける目的を有している場合や、著作権者等の利益を害する目的を有している場合であることを要件とすることが考えられる。

 また、TPP協定において、非親告罪とする範囲を、「市場における著作物等の利用のための権利者の能力に影響を与える場合」に限定することができるとされている趣旨を踏まえ、非親告罪の対象とすべき著作権等侵害罪を、著作権者等の著作物等の提供又は提示に係る市場と競合する場合に限定することが適切である。換言すれば、市販されている漫画や小説を基に二次創作作品を作成する等、著作権者等の著作物等の提供又は提示に係る市場と競合しない行為態様については非親告罪の対象外とすることが適切である。
 具体的には、まず、侵害される著作物等は、現に市場において権利者により有償で提供又は提示されている著作物等であることを要件とすることが適当であると考えられる。この点に関しては、関係団体からの意見聴取においても、侵害の対象を既に市販している作品等に限定するべきであるとの意見が示されている。
 また、原作のまま、すなわち著作物等に改変を加えずに著作物等を利用する侵害行為であることを要件とすることが考えられる。加えて、著作権者等の得ることが見込まれる利益が不当に害されることとなる場合であることを要件とすることが考えられる。なお、権利者の利益が不当に害されることとなるか否かの判断は、著作物等の種類や用途、侵害行為の態様、正規品の提供又は提示の態様など様々な事情を総合的に勘案して、正規品の販売市場との競合性があるか否かによって判断することが適当であると考えられる。この点に関して、関係団体からの意見聴取においても、非親告罪化の対象を海賊行為に限るため「原作のまま」の用語を用いたり、原著作物の市場での収益性に重大な影響がある場合のみに対象を限定したりすべきであるとの意見が示されたところである。
 非親告罪の範囲については、上記の3つの要件を設けることにより、市販されている作品等に対する海賊行為を非親告罪の対象となる一方で、二次創作行為については、原作のまま著作物等を利用する行為に該当せず、また権利者の利益が不当に害されることとなる場合に該当しないため、非親告罪の対象とならないこととなる。

と書かれているので、かなりの限定が加えられそうな様子であるが、対象となる支分権の範囲は複製権侵害だけではなく、「譲渡権侵害や公衆送信権侵害についても非親告罪の対象とすることが適切」(第15ページ)とされ、権利者の範囲についても、「視聴覚的実演に係る実演家の権利、放送事業者及び有線放送事業者の権利を侵害する行為のうち、権利者へ及ぼす被害が大きく、悪質な権利侵害については、他の権利侵害の場合と同様に非親告罪化の対象とすることが適切」(第16ページ)とされている。

(3)アクセスコントロール回避規制
 第4節の「著作物等の利用を管理する効果的な技術的手段(アクセスコントロール)に関する制度整備」では、「アクセスコントロールにより確保される著作権者等の利益は基本的に著作権法による保護の対象とすべきものと評価し、当該手段の回避行為及び回避機器の流通等に一定の救済を認めることが適切」(第20ページ)とされ、さらに、第21ページで、

 一方、アクセスコントロールを回避する行為については、支分権該当行為ではないものの、多くの場合、回避行為そのものがアクセスコントロールにより著作権者等が確保しようとする対価の回収を困難とする点において著作権者等の保護されるべき経済的利益を直接害する行為であると評価できることに加えて、回避後に行われる視聴行為等は支分権該当行為ではない。このため、権利者の利益を保護するため、回避行為に対して民事上の権利行使が可能となるよう、これを保護の対象とすることが適当である。その方法としては、例えばみなし侵害(第113条)の形で保護することが考えられる。制度設計にあたっては、前述のとおり、国民の情報アクセスや表現の自由との均衡に配慮した制度とすることが適当である。

 次に、技術的保護手段の回避に使用される装置等を流通させる行為や公衆の求めに応じて反復継続してこれを回避する行為については、権利侵害につながる準備的行為として著作権者等の利益を害するものと評価できるため、罰則の対象となっているところである(第120条の2)。アクセスコントロールについても、回避行為を保護の対象とする場合は、同様の趣旨が妥当することとなるため、同様に刑事罰の対象とするのが適切である。

 なお、アクセスコントロールの回避行為に対して刑事罰を科すことについては、回避行為は支分権該当行為ではなく、それと同視できるほどの重大性はないと評価されること、当該回避行為の多くが個人で私的に行われるものであることが想定されるところ国民の情報アクセスや表現の自由との均衡を図る必要があること、及び回避装置の流通行為等を別途刑事罰の対象とすることで著作権者等の利益保護が図られることを踏まえ、慎重であるべきである。

と書かれている通り、著作権法においてアクセスコントロール回避規制を導入するべきとしている。

 ただし、例外について、「権利者に不当な不利益を及ぼさない形で行われる回避行為が広く例外規定の対象となり得るような制度設計とすることが適当」(第22ページ)と書かれ、アクセスコントロール規制に対して広めの例外を設けるべきともされている。

(4)配信音源の二次利用に対する使用料請求権の付与
 これは非常にマニアックな話なので、細かな所までは引かないが、第5節の「配信音源の二次使用に対する使用料請求権の付与」において、「配信音源の二次使用について、商業用レコードの場合(第95条第1項及び第97条第1項)と同様に使用料請求権を付与することが適当」(第25ページ)と書かれている。

(5)法定損害賠償
 第6節の「『法定の損害賠償』又は『追加的損害賠償』」では、「今回の制度整備においては、TPP協定の求める趣旨をより適切に反映する観点から、第114条第3項等の現行規定に加えて、填補賠償原則等の枠内で、実際に生じる損害との関係について合理的に説明が可能な額を法定する規定を別途設けることが適当」(第32ページ)とされ、さらに、第32〜33ページで、

 この点、第114条第3項は、「権利の行使につき受けるべき額に相当する額」(使用料相当額)を権利者が損害額として請求することができるとされている。この使用料相当額の算定方法は基本的には個々の事案に応じて異なり得るものであるが、侵害された権利が著作権等管理事業者によって管理されているものである場合は、当該著作権等管理事業者の定める使用料規程がその算定根拠として広く用いられており、基本的に当該規程により算出した額が同項の使用料相当額として認定されている。このような運用がなされている理由としては、著作権等管理事業者の使用料規程は、著作権等管理事業法に則って定められたものであり、実際に当該事業者に権利が委託されている著作物の利用について許諾する際に受けるべき額を示すものであること、及び使用料規程を定めるに当たっての一定の手続が同法上定められていること等が勘案されているためであると考えられる。
 しかし、その点につき同項においては明文上の定めはなく、使用料規程により算出した額を同項の使用料相当額として請求可能であるのか否かは必ずしも明確ではない。また、使用料規程において適用可能な規定が複数存在する場合、いずれの規定を用いて算出した額を同項の使用料相当額として請求できるのかについても明らかではない。

 このような状況に鑑み、また、使用料規程により算出された額は基本的に「権利の行使につき受けるべき額」に相当するものであること、すなわち、当該額は実際に生じる損害との関係について合理的に説明が可能な額であると評価できることを踏まえ、著作権等管理事業者の管理する権利について同項の規定による請求を行う場合においては、当該著作権等管理事業者の使用料規程により算出した額を同項の使用料相当額として請求することができる旨を法律上明記することが適当である。また、この場合において、使用料規程のうち適用可能な規定が複数存在する場合は、算出された使用料額のうち最大のものを請求することができることとすることが適当である。

と書かれており、アメリカなどがこのような法改正で納得するかは良く分からないものの、法定損害賠償については、実質的に現行の損害額推定規定の範囲内で対処するという方向性になっている。

(6)施行期日
 第7節の「施行期日について」では、「TPP協定の締結に向けた制度整備については、既に検討した国内的な制度整備の必要性に加え、これらの事項が国際的な制度標準となることも考慮すべきであること、また、本小委員会における意見聴取においても、利用者団体より、制度整備がTPP協定の発効に先立ち施行されることに強い懸念が表明されていること等を踏まえれば、これらの事項の制度整備を行う改正法の施行については、TPP協定の発効とあわせて実施することが適切である。」(第35ページ)と、さすがに海賊版対策条約(ACTA)の醜態を踏まえたのか、改正法の施行はTPP協定の発効と合わせることが書かれている。

(7)その他(柔軟性の高い権利制限規定)
 また、同資料の第36ページに、「TPP協定を契機としていわゆる『柔軟性の高い権利制限規定』の導入を求める声が関係団体から複数寄せられたところであるが、これに関連して、新産業創出環境の形成をはじめとするデジタル・ネットワークの発達に対応した権利制限規定の見直しについて、昨年本小委員会に設置した『新たな時代のニーズに対応した制度等の整備に関するワーキングチーム』において検討が進められている。同ワーキングチームにおいては、文化庁の行った著作物等の利用円滑化に関するニーズの募集に寄せられた広範なニーズを基に整理された課題の解決に向けた検討が始められているところであり、引き続き着実に検討を進めることが期待される。」と、柔軟性の高い権利制限規定についての記載もあるが、検討を進めているのが文化庁という時点で正直あまり期待は持てない。

(8)法改正事項の内容のまとめ
 資料に書かれた上の法改正事項の内容をまとめると次のようになるだろう。

保護期間延長
 著作物と実演について保護期間を70年に延長、ただし、映画と放送については延長せず

非親告罪化
 侵害者が、侵害行為の対価として利益を受ける又は著作権者等の利益を害する目的で、現に市場において権利者により有償で提供又は提示されている著作物等を、改変を加えず利用する侵害行為について、かつ、著作権者等の得ることが見込まれる利益が不当に害されることとなる場合について非親告罪化

アクセスコントロール回避規制
 著作権法第113条のみなし侵害規定の改正によりアクセスコントロール回避行為に対して民事上の権利行使を可能とし、合わせてアクセスコントロール回避に使用される装置等を流通させる行為や公衆の求めに応じて反復継続してこれを回避する行為に刑事罰を付加、ただし、アクセスコントロールの回避行為そのものは刑事罰の対象とせず、権利者に不当な不利益を及ぼさない形で行われる回避行為を例外とする

配信音源の二次利用に対する使用料請求権の付与
 商業用レコードの場合と同様に配信音源の二次使用について使用料請求権を付与

法定損害賠償
 使用料相当額を損害額と推定する著作権法第114条第3項において、著作権等管理事業者の使用料規程により算出した額を使用料相当額として請求できることを明記、また、適用可能な規定が複数存在する場合は算出された使用料額のうち最大のものを請求できることとする

 これらの内、多くの限定が入った非親告罪化と実質的に現行法の枠内で対処することとされている法定賠償については悪影響がかなり低減されると思われ、法改正の施行をTPP発効と合わせるとしたことで国内改正まで行ったにもかかわらずいまだに日本しか批准していないACTAの二の舞は最低限避けられると思われるものの、全ての法改正事項についてACTAの時同様結論ありきで、全てTPP批准のためという以外にほとんど法改正の理由はないと言って良く、このような方向性の法改正案は極めて大きな問題を含むものである。前に書いた通り、恐らくもはや政府に対して意見を提出する機会はなく、次の舞台は国会における審議になるのではないかと思っているが、このような大きな問題を含む著作権法改正案、TPP関連法改正案が国会を通らないことを、TPP協定の批准、発効がなされないことを私は心の底から願っている。

(2016年2月22日夜の追記:文化庁のHPに2月10日の法制・基本問題小委員会の環太平洋パートナーシップ(TPP)協定に伴う制度整備の在り方等について(案)(pdf)が掲載されているので、念のため、ここにリンクを張っておく。)

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2015年12月29日 (火)

第355回:2015年の終わりに

 国会は閉会中、役所も正月休みに入り、年内に何か政策的に新しいことが言い出されるということはもうないだろうと思うので、今年も最後にマイナーなことも含め国内の動向についてまとめて書いておきたいと思う。

 まず、知財本部では、知的財産推進計画2016策定に向けた検討が始まっており、検証・評価・企画委員会の下の知財紛争処理システム検討委員会と次世代知財システム検討委員会でそれぞれ知財訴訟制度と自動集積されるデータベースの取り扱いなどに関する検討が進められているが、政策的にはっきりとした方向性はまだ出されていない。第338回で書いた通り、最も気になっているのは、次世代知財システム検討委員会で来年2月に検討される予定の国境を越えるインターネット上の知財侵害への対応についてだが、委員会メンバーはそこまで偏った構成になっておらず、ここでそう変な結論を出して来ることは恐らくないのではないかと踏んでいるがどうだろうか。

 次に、特許庁では、産業構造審議会知的財産分科会の特許制度小委員会や審査基準ワーキンググループ(特許意匠商標)などが開催されており、経産省では、営業秘密の保護・活用に関する小委員会が開催されているが、いずれも地道な法改正のフォローアップや基準の改訂に関する話ばかりで、文化庁と違って、TPPに絡む特許法改正に関する審議会での検討はされていない。(両方ともマニアックなものなので内容の説明は省略するが、それぞれ1月9日と1月19日〆切で、特許庁から、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備等に関する政令案に対する意見募集産業構造審議会知的財産分科会意匠制度小委員会報告書「画像デザインの保護の在り方について」(案)に対する意見募集の2つのパブコメが出されているので、念のためここでもリンクを張っておく。)

 また、農林水産省は、その初回登録に関するリリースにある通り、地理的表示の登録を開始している。

 そして、文化庁では、分化審議会著作権分科会の下で、TPP対応に関することを検討していた法制・基本問題小委員会の他にも、著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会新たな時代のニーズに的確に対応した制度等の整備に関するワーキングチームなども開かれているが、例によって利害関係者の間の意見の隔たりは大きく、現時点でどうともなっていない。

 TPPに絡む法改正については、文化庁、知財本部の検討を経て、TPP総合対策本部の11月25日のTPP関連政策大綱(pdf)において、「Ⅱ TPP関連政策の目標/3 分野別施策展開/(3)知的財産」で、

 TPP協定の締結に必要な国内実施のため、国内法との整合性に留意しつつ、必要な措置を講ずる。また、TPPを契機として、輸出促進に向けた地理的表示(GI)等に関する措置を講ずる。

①特許・商標関係
○不合理な遅延に係る特許権期間延長、特許の新規性喪失例外期間の延長、商標不正使用に対する民法の原則を踏まえた法定の損害賠償制度等に関し、所要の措置を講ずる。
〇地域中小企業等の知財戦略の強化や、特許審査体制の整備・強化を図る。
〇TPP協定実施のための制度の整備状況等を踏まえつつ、知財紛争処理システムの一層の機能強化のための総合的な検討を進める。

②著作権関係
○著作物等の保護期間の延長、著作権等侵害罪の一部非親告罪化、著作権等侵害に対する民法の原則を踏まえた法定の損害賠償制度等に関し、所要の措置を講ずる。その際、権利の保護と利用とのバランスに留意し、特に、著作権等侵害罪の一部非親告罪化については、二次創作への委縮効果等を生じないよう、対象範囲を適切に限定する。
○著作物等の利用円滑化のため、権利者不明等の場合の裁定制度の改善を速やかに行うとともに、社会的諸課題への対応、柔軟性の高い権利制限規定、円滑なライセンシング体制の整備等に関する検討を進める。

と、「Ⅳ 政策大綱実現に向けた主要施策/3 分野別施策展開/(3)知的財産」で、

○地理的表示の相互保護制度整備による農林水産物の輸出促進等
(我が国の地理的表示(GI)の海外での保護を通じた農林水産物の輸出促進を図るための諸外国と相互にGIを保護できる制度整備)

①特許・商標関係
○特許・商標関係の制度整備
(不合理な遅延に係る特許権期間延長、特許の新規性喪失例外期間の延長、商標不正使用に対する民法の原則を踏まえた法定の損害賠償等に関する制度整備)

②著作権関係
○著作権関係の制度整備
(著作物等の保護期間の延長、著作権等侵害罪の一部非親告罪化、著作物等の利用を管理する効果的な技術的手段に関する制度整備、配信音源の二次使用に対する使用料請求権の付与、著作権等侵害に対する民法の原則を踏まえた法定の損害賠償等に関する制度整備)

とまとめられた所で、今後さらに各法改正の詳細が各省庁の審議会と国会で検討されるのではないかと思われる。今年は知財政策についてはTPPに終始したと言っても過言ではない年だったし、来年の通常国会でTPP関連の法改正の審議を行うとの報道もあり、来年もTPP問題が一番の焦点になりそうな様子であるが、そもそも私はTPPに絡む上記の法改正のほぼ全ての点について反対であり、速やかに脱退するべきと思っていることに変わりはなく、TPPについても拙速な検討による法改正がなされないことを、率先して法改正までしたが結局どこの国もついて来なかった海賊版対策条約(ACTA)の二の舞にならないことを強く願っている。

 なお、最後についでに書いておくと、官房長官が図書が有害かどうかで軽減税率の適用・消費税率が変わるような制度を検討すると言い出しているということもあり、どうやら有害図書問題でも来年はきな臭い年になりそうである。

 ここ何年もどうにも良い話がなく、今年も良い年をという気にはならないが、政官業に巣食う全ての利権屋に悪い年を。そして、この拙いブログを読んでくださっている方々に心からの感謝を。

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