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2018年3月25日 (日)

第390回:閣議決定された不正競争防止法案の条文(限定提供データ規制の追加とDRM規制の強化)

 政府・与党で検討されているという著作権ブロッキングや国会の動向など気になることは幾つもあるが、前回の続きで、先に今国会に提出されている知財関連法改正案の条文の話をしておきたい。

 やはりこの2月に不正競争防止法と特許法等を含む法改正案が閣議決定され、国会に提出されている(経産省のリリース参照)。これほど多くの法律をまとめる意味は謎という他ないが、この法改正案(概要1(pdf)概要2(pdf)参考資料(pdf)要綱(pdf)法律案・理由(pdf)新旧対照表(pdf)参照条文(pdf)参照)は、不正競争防止法、特許法、意匠法、商標法、弁理士法から工業標準化(JIS)法まで含むものになっている。

 ここではまず、中でも私が最も問題点の多いと思っている不正競争防止法の主要な改正条文を見て行くが、概要1(pdf)には、不正競争法改正の概要について以下のように書かれている。

(1)不正競争防止法の一部改正
①相手方を限定して業として提供するデータ(ID/パスワード等の電磁的方法により管理されているものに限る。)の不正な取得、使用及び開示を不正競争に位置づけ、これに対する差止請求権等の民事上の措置を設ける。
②暗号等の技術的制限手段について、その効果を妨げる機器の提供等だけでなく、その効果を妨げる役務の提供等も不正競争とする。
③書類提出命令における書類の必要性を判断するためのインカメラ手続、専門委員のインカメラ手続への関与【(3)②と同じ】

 このうち、①の限定提供データ関連で新しく追加される条文は以下のようになっている。(以下、下線を引いた部分が追加部分。)

(定義)
第二条
 この法律において「不正競争」とは、次に掲げるものをいう。
(略)
十一 窃取、詐欺、強迫その他の不正の手段により限定提供データを取得する行為(以下「限定提供データ不正取得行為」という。)又は限定提供データ不正取得行為により取得した限定提供データを使用し、若しくは開示する行為
十二
 その限定提供データについて限定提供データ不正取得行為が介在したことを知って限定提供データを取得し、又はその取得した限定提供データを使用し、若しくは開示する行為
十三
 その取得した後にその限定提供データについて限定提供データ不正取得行為が介在したことを知ってその取得した限定提供データを開示する行為
十四
 限定提供データを保有する事業者(以下「限定提供データ保有者」という。)からその限定提供データを示された場合において、不正の利益を得る目的で、又はその限定提供データ保有者に損害を加える目的で、その限定提供データを使用する行為(その限定提供データの管理に係る任務に違反して行うものに限る。)又は開示する行為
十五
 その限定提供データについて限定提供データ不正開示行為(前号に規定する場合において同号に規定する目的でその限定提供データを開示する行為をいう。以下同じ。)であること若しくはその限定提供データについて限定提供データ不正開示行為が介在したことを知って限定提供データを取得し、又はその取得した限定提供データを使用し、若しくは開示する行為
十六
 その取得した後にその限定提供データについて限定提供データ不正開示行為があったこと又はその限定提供データについて限定提供データ不正開示行為が介在したことを知ってその取得した限定提供データを開示する行為
(略)

 この法律において「限定提供データ」とは、業として特定の者に提供する情報として電磁的方法(電子的方法、磁気的方法その他人の知覚によっては認識することができない方法をいう。次項において同じ。)により相当量蓄積され、及び管理されている技術上又は営業上の情報(秘密として管理されているものを除く。)をいう。

(略)

(適用除外等)
第十九条
 第三条から第十五条まで、第二十一条(第二項第七号に係る部分を除く。)及び第二十二条の規定は、次の各号に掲げる不正競争の区分に応じて当該各号に定める行為については、適用しない。
(略)
 第二条第一項第十一号から第十六号までに掲げる不正競争
 次のいずれかに掲げる行為
 取引によって限定提供データを取得した者(その取得した時にその限定提供データについて限定提供データ不正開示行為であること又はその限定提供データについて限定提供データ不正取得行為若しくは限定提供データ不正開示行為が介在したことを知らない者に限る。)がその取引によって取得した権原の範囲内においてその限定提供データを開示する行為
 その相当量蓄積されている情報が無償で公衆に利用可能となっている情報と同一の限定提供データを取得し、又はその取得した限定提供データを使用し、若しくは開示する行為

 次に②のDRM規制関連の強化については、以下のような条文改正になっている。

(定義)
第二条
 この法律において「不正競争」とは、次に掲げるものをいう。
(略)
十一十七 営業上用いられている技術的制限手段(他人が特定の者以外の者に影像若しくは音の視聴若しくはプログラムの実行に影像若しくは音の視聴、プログラムの実行若しくは情報(電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。)に記録されたものに限る。以下この号、次号及び第八項において同じ。)の処理又は影像、音若しくはプログラムの記録、プログラムその他の情報の記録をさせないために用いているものを除く。)により制限されている影像若しくは音の視聴若しくはプログラムの実行制限されている影像若しくは音の視聴、プログラムの実行若しくは情報の処理又は影像、音若しくはプログラムの記録、プログラムその他の情報の記録(以下この号において「影像の視聴等」という。)を当該技術的制限手段の効果を妨げることにより可能とする機能を有する装置(当該装置を組み込んだ機器及び当該装置の部品一式であって容易に組み立てることができるものを含む。)若しくは当該機能、当該機能を有するプログラム(当該プログラムが他のプログラムと組み合わされたものを含む。)を含む。)若しくは指令符号(電子計算機に対する指令であって、当該指令のみによって一の結果を得ることができるものをいう。次号において同じ。)を記録した記録媒体若しくは記憶した機器を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、若しくは輸入し、又は当該機能を有するプログラム若しくは当該機能を有するプログラム若しくは指令符号を電気通信回線を通じて提供する行為(当該装置又は当該プログラムが当該機能以外の機能を併せて有する場合にあっては、影像の視聴等を当該技術的制限手段の効果を妨げることにより可能とする用途に供するために行うものに限る。)又は影像の視聴等を当該技術的制限手段の効果を妨げることにより可能とする役務を提供する行為
十二十八 他人が特定の者以外の者に影像若しくは音の視聴若しくはプログラムの実行、プログラムの実行若しくは情報の処理又は影像、音若しくはプログラムの記録、プログラムその他の情報の記録をさせないために営業上用いている技術的制限手段により制限されている影像若しくは音の視聴ー若しくはプログラムの実行、プログラムの実行若しくは情報の処理又は影像、音若しくはプログラムの記録、プログラムその他の情報の記録(以下この号において「影像の視聴等」という。)を当該技術的制限手段の効果を妨げることにより可能とする機能を有する装置(当該装置を組み込んだ機器及び当該装置の部品一式であって容易に組み立てることができるものを含む。)若しくは当該機能、当該機能を有するプログラム(当該プログラムが他のプログラムと組み合わされたものをー含む。)を含む。)若しくは指令符号を記録した記録媒体若しくは記憶した機器を当該特定の者以外の者に譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、若しくは輸入し、又は当該機能を有するプログラム若しくは当該機能を有するプログラム若しくは指令符号を電気通信回線を通じて提供する行為(当該装置又は当該プログラムが当該機能以外の機能を併せて有する場合にあっては、影像の視聴等を当該技術的制限手段の効果を妨げることにより可能とする用途に供するために行うものに限る。)又は影像の視聴等を当該技術的制限手段の効果を妨げることにより可能とする役務を提供する行為

 この法律において「技術的制限手段」とは、電磁的方法(電子的方法、磁気的方法その他の人の知覚によって認識することができない方法をいう。)により影像若しくは音の視聴若しくはプログラムの実行、プログラムの実行若しくは情報の処理又は影像、音若しくはプログラムの記録、プログラムその他の情報の記録を制限する手段であって、視聴等機器(影像若しくは音の視聴若しくはプログラムの実行、プログラムの実行若しくは情報の処理又は影像、音若しくはプログラムの記録、プログラムその他の情報の記録のために用いられる機器をいう。以下この項において同じ。)が特定の反応をする信号を影像、音若しくはプログラムとともに記録媒体に記録し、若しくは送信する方式又は視聴等機器が特定の変換を必要とするよう影像、音若しくはプログラムを、プログラムその他の情報を変換して記録媒体に記録し、若しくは送信する方式によるものをいう。

(適用除外等)
第十九条
 第三条から第十五条まで、第二十一条(第二項第七号に係る部分を除く。)及び第二十二条の規定は、次の各号に掲げる不正競争の区分に応じて当該各号に定める行為については、適用しない。
(略)
 第二条第一項第十一号及び第十二号第二条第一項第十七号及び第十八号に掲げる不正競争 技術的制限手段の試験又は研究のために用いられる同項第十一号及び第十二号同項第十七号及び第十八号に規定する装置若しくはこれらの号、これらの号に規定するプログラム若しくは指令符号を記録した記録媒体若しくは記憶した機器を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、若しくは輸入し、又は、若しくは当該プログラム若しくは指令符号を電気通信回線を通じて提供する行為又は技術的制限手段の試験又は研究のために行われるこれらの号に規定する役務を提供する行為

 この法改正案は、経産省の産業構造審議会・知的財産分科会・不正競争防止小委員会の中間報告(pdf)をほぼそのまま条文化したものだが、その中間報告案に対する提出パブコメ(第385回参照)で書いた通り、これが有害無益な法改正のための法改正であるという私の考えに何ら変わりはない。

 「限定提供データ」とは、「業として特定の者に提供する情報として電磁的方法により相当量蓄積され、及び管理されている技術上又は営業上の情報」らしいが、具体的なデータとして何がどこまで規制の対象となるのかはやはり良く分からない。無償で公衆に利用可能となっている情報と同一の情報については適用除外も設けられているものの、そもそもこのような過度に曖昧かつ広範な定義の限定提供データについてその不正取得行為や不正開示行為を規制の対象とすること自体が間違いである。はっきり言って契約と既存の法規制による対応の方がましであり、この法改正が成立したら、かえってデータの利活用を阻害することになるだろう。

 また、DRM規制の強化も有害無益なものであるとやはり私は考えている。上の条文案は非常にややこしいが、要するに、規制の対象となる技術的制限手段の定義を、影像・音の視聴、プログラムの実行又は影像・音・プログラムの記録を制限するものから、影像・音の視聴、プログラムの実行、情報の処理又は情報の記録を制限するものに拡大するとともに、この技術的制限手段の回避手段として指令符号を追加し、規制されるサービス(役務提供)を追加するというものである。これは、技術的制限手段として情報処理一般、情報記録一般を制限するものまで含まれるようにするという意味で同じく規制を過度に広範なものとするものであり、一応今までと同様に試験又は研究の目的での回避手段の譲渡等が適用除外とされているが、このような適用除外で十分とは到底言い難い。やはり、この法改正が成立すると、場合によって必要となる機器の解析やリバースエンジニアリングなどが阻害されることにつながるだろう。アクティベーション方式への対応を意味する回避手段としての指令符号の追加や、サービス規制も現時点で法改正をする意味は全くない。

 私としてはこの不正競争防止法の改正に反対であることに変わりはなく、このような法改正が成立しないことを願っている。

 ③のインカメラ手続に関する改正部分については特許法等と同じなので回を分けて他の知財関連法改正と合わせて次回にまとめて取り上げたいと思う。

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コメント

ご指摘の通り、有害無益だと思います。政府内のだれかのメンツのために、無理やりに作られたものでしょう。審議会委員会の進め方も強引で酷かったと思います。

投稿: | 2018年4月12日 (木) 11時53分

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