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2017年12月17日 (日)

第386回:著作権保護期間延長を含む日EU経済連携協定(EPA)の妥結条文

 先月にはアメリカ抜きの11カ国でのTPPの交渉妥結もあったが、この12月8日に日本と欧州連合(EU)の間で経済連携協定(EPA)も妥結されている。

 この日欧EPAの内容に関してはそこまで詳細に報道されていないように思うが、政府が12月15日になってようやく外務省のHPに出したファクトシート(pdf)の第37ページに、

●著作権及び関連する権利
 著作者,実演家,レコード製作者及び放送機関の権利の保護,著作物等の保護期間の延長(著作者の死後70年等),権利の制限と例外等について規定する。

とはっきり書かれているように、この条約は日本にとって著作権の保護期間の延長を含む致命的な内容ものとなっている。

 いまだに日本政府からはこのEPAの妥結条文の詳細も訳も公表されていないが、EUのHPでは妥結と同時に公表されており、その第14章知的財産(pdf)から、著作権保護期間延長に関する第13条を抜き出すと以下のようになる。

Article 13 Term of Protection

1. The rights of an author of a literary or artistic work within the meaning of Article 2 of the Berne Convention shall run for the life of the author and for 70 years after the author's death, irrespective of the date when the work is lawfully made available to the public.

1.1. Whenever the term of protection for the rights referred to in paragraph 1 is calculated on a basis other than the life of a natural person, such term shall be no less than 70 years after the work is lawfully made available to the public. Failing such making available within 70 years after the creation of the work, such protection shall be no less than 70 years from the work's creation.

2. The rights of performers shall expire not less than 50 years after the date of the performance.

3. The rights of producers of phonograms shall last, at least, until the end of the period of 70 years calculated from the end of the year in which the phonogram was published, or failing such publication within at least 50 years from the fixation of the phonogram, at least 50 years from the end of the year in which the fixation was made (Footnote: The Parties may adopt effective measures in order to ensure that the profit generated during the 20 years of protection beyond 50 years are shared fairly between the performers and producers of phonograms.).

4. The term of protection for rights in broadcasts shall expire not less than 50 years after the first transmission of the broadcast.

5. The terms laid down in this Article shall be calculated from the first of January of the year following the year of the event which gives rise to them.

第13条 保護期間

第1項 ベルヌ条約第2条の意味における文学的又は芸術的著作物の著作者の権利は、その著作物が適法に公衆に入手可能とされた日とは無関係に、著作者の存命中及び著作者の死後70年続く。

第1.1項 第1項に記載された権利の保護期間が自然人の存命以外の根拠にもとづき算定される場合は、そのような期間はその著作物が適法に公衆に入手可能とされた日の後70年未満であってはならない。その著作物の創作後70年以内にそのように公衆に入手可能とされなかったときは、そのような保護はその著作物の創作から70年未満であってはならない。

第2項 実演家の権利は、その実演の日の後50年未満で消滅してはならない。

第3項 レコード製作者の権利は、少なくとも、そのレコードが出版された年の終わりから算定して70年の期間の終わりまで存続し、そのレコードの固定から少なくとも50年以内にそのような出版がなされなかったときは、その固定がなされた年の終わりから少なくとも50年存続する(原注:加盟国は、50年を超える20年の保護の間に生じた利益が実演家及びレコード製作者の間で公平に分配されることを確保するための有効な手段を取ることができる。)。

第4項 放送における権利の保護期間は、放送の最初の送信の後50年未満で消滅してはならない。

第5項 本条で規定される期間は、それを発生させる事象の年に続く年の1月1日から算定される。

 見れば分かる通り、TPP交渉で既に譲歩した点だからいいだろうとばかりに、日本政府は日EU間の交渉においても50年から70年への著作権の保護期間延長を何の留保もつけずにまるごと受け入れているが、このような秘密の条約交渉でほとんど何の説明もなく国益の根幹に関わる点について日本政府が易々と譲歩したことに私は激しい憤りを覚える。その上例によってEU側で公表している条文の内容についてすらなお概要説明だけで、その翻訳すら公開しないなど完全に国民をバカにしているとしか言いようがない。

 日欧EPAも妥結されたことを受けて次の通常国会でその批准と国内関連法の改正法案が提出される可能性が高いが、これほど国民をバカにした形でなされた条約の批准に、著作権の保護期間延長に私は反対する。

(2017年12月19日夜の追記:翻訳中の誤記を修正した(「保」→「保護」、「利益」→「利益が」)。)

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