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2017年10月 9日 (月)

第383回:主要政党の2017年衆院選公約案比較(知財政策・情報・表現規制関連)

 明日10月10日公示、22日投開票の予定で衆院選が行われる。今回はいつにもまして争点が良く分からない選挙で、各党とも急ごしらえの感が否めず、内容は極めて薄いが、以下の通り主要政党の公約案が出揃ったので、ここで念のため、その中の知財政策・情報・表現規制関連の項目について比較をしておきたいと思う。

<自民党>
○世界最速・最高品質の審査体制の充実、地方と中小・ベンチャー企業の知財活用促進、知財など無形資産の適切な評価、第4次産業革命を加速する著作権制度の早期実現など知財システムの整備、知財創造教育の充実等の知的財産・標準化戦略を成長の基盤として推進し、世界最高の知財立国を目指します。

○「衣」「食」「住」やコンテンツ(アニメ、ドラマ、音楽、映画など)をはじめ「にほんの魅力」の海外発信・展開や海外来訪者の受入を進めるクールジャパン政策を成長戦略の一貫と位置づけ、支援策、人材の育成・人材ハブの構築、国内外のクールジャパン拠点構築等の振興策を積極的に展開します。

○TPPや日EU・EPAに対する農林漁業者の不安を払拭するため、「総合的なTPP関連政策大綱」を見直し、農林漁業者の経営発展を後押しするとともに、経営安定に万全を期します。マルキン等については、早期の充実を図ります。

<公明党>
○環太平洋パートナーシップ協定(TPP協定)や日EU経済連携協定(EPA)などの新たな自由貿易の拡大を契機として、中小企業の海外展開や農林水産物輸出額1兆円の実現、低炭素技術の市場拡大、インフラの戦略的輸出など海外の潜在需要の獲得に向けた政策を総動員します。合わせて、影響緩和のための対策を講じます。

○日EU経済連携協定(EPA)大枠合意等を踏まえ、「総合的なTPP関連政策大綱」を見直し、畜産クラスター、産地パワーアップなどの万全の対策を検討・実施します。

○アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)構想の実現も視野に、環太平洋パートナーシップ協定(TPP協定)の早期発効、大枠合意に至った日EU経済連携協定(EPA)の早期の署名・発効をめざすとともに、これらの協定が貿易・投資に及ぼす影響について情報収集・分析を実施します。また、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)、日中韓自由貿易協定(FTA)等のメガFTAと呼ばれている貿易・投資に関する協定のルールづくりを積極的に進めます。さらに、投資関連協定の交渉を促進し、日本企業の海外進出を後押しします。加えて、アジアを中心とした産業保安体制構築支援等を行うとともに、国際経済紛争処理案件に対する体制強化に取り組みます。

<立憲民主党>
○政府の情報隠ぺい阻止、特定秘密保護法の廃止、情報公開法改正による行政の透明化

<社民党>
○「一億総監視社会」につながる「共謀罪法」は、直ちに廃止します。「特定秘密保護法」や「通信傍受法(盗聴法)」も即時廃止します。通信傍受の対象事件拡大や司法取引の導入は認めません。

〇言論や報道の自由を侵害するメディア規制の動きに反対します。

○TPP(環太平洋経済連携協定)の枠組みからの即時脱退を強く求めるとともに、米国以外の11か国(TPPイレブン)による安易な合意に反対します。日米2国間のEPA(経済連携協定)やFTA(自由貿易協定)交渉を阻止します。日欧EPAの大枠合意の撤回を求めます。TiSA(新サービス貿易協定)への対策を強化します。

<共産党>
○17、TPP-国会決議違反、自由化交渉中止、食・農・地域経済への打撃、ISDS条項、薬価、食料主権
(略)
TPP11、日欧EPA、日米経済交渉などの自由化交渉を中止し、国民に交渉内容と経過を全面的に明らかにさせる
(略)
安価な薬の供給が減り、薬価が高止まりに――「知的財産」の章では、医薬品の特許などの保護を強化する制度がアメリカと発展途上国の最大の対立点となりました。アメリカはバイオ薬品(抗がん剤やC型肝炎の治療薬など)の特許期間13年を要求、5年にすべきという発展途上国と対立しました。結果は、特許期間は、少なくても8年又は5年+他の措置とされました。あわせて、特許が切れたバイオ医薬品のデータ保護期間の設定、ジェネリック薬(後発医薬品)承認決定に特許権者に特許権を侵害していないかを確認するリンケージ制度を設けることが盛り込まれています。

 これら規定は、規制緩和ではなく製薬大企業のための規制強化であり、ジェネリック薬市場への参入規制を長期化させるものです。日本国内だけでなく、多くの途上国では、患者の命をつなぐ安価な医薬品が切望されていますが、手に入りにくい状況は改善されません。しかも、参加国の政府が薬価決定する際に、「直接影響をうける申請者」が、不服審査を開始することができると規定されており、今後、アメリカの製薬企業などが利害関係者として、日本の医薬品・医療機器の保険扱いの可否や公定価格の決定に影響力を強めることが懸念されます。

○38、文化
 芸術・文化の活動を支え、文化が豊かに発展する社会をめざします
(略)
著作者の権利を守り発展させます

 日本の芸術・文化の発展のうえで各ジャンルの専門家の役割はきわめて重要です。著作権は、表現の自由を守りながら、著作物の創造や実演に携わる人々を守る制度として文化の発展に役立ってきました。ところが、映画の著作物はすべて製作会社に権利が移転され、映画監督やスタッフに権利がありません。実演家もいったん固定された映像作品の二次利用への権利がありません。国際的には視聴覚実演に関する条約が作成されるなど、実演家の権利を認める流れや、映画監督の権利充実をはかろうという流れが強まっています。著作権法を改正し、映画監督やスタッフ、実演家の権利を確立します。

 私的録音録画補償金制度は、デジタル録音録画の普及にともない、一部の大企業が協力義務を放棄したことによって、事実上機能停止してしまいました。作家・実演家の利益をまもるために、私的複製に供される複製機器・機材を提供することによって利益を得ている事業者に応分の負担をもとめる、新たな補償制度の導入をめざします。

憲法を生かし、表現の自由を守ります

 芸術活動は自由であってこそ発展します。憲法は「表現の自由」を保障しています。ところが、第2次安倍内閣の発足以降、各地の美術館や図書館、公民館など公の施設で、創作物の発表を不当な理由で拒否するなど、表現の自由への侵害が相次いでいます。

 2013年12月に成立を強行された特定秘密保護法は、国民の「言論・表現の自由」や「知る権利」を脅かすものであり、「ジャーナリストとその情報源に刑罰を課す危険性にさらしている」(デビット・ケイ国連人権理事会特別報告者)と指摘されています。

今年6月に強行された共謀罪法に対しても、多くの芸術家や芸術団体が、自由な創作活動に委縮をもたらすとして反対の声明を挙げています。国連人権理事会からも「プライバシーに関する権利と表現の自由に過度な制限をされる可能性がある」(ジョセフ・ケナタッチ国連人権理事会特別報告者)との指摘をうけています。憲法違反の特定秘密保護法と共謀罪法の廃止を求めます。

6月に改正された新しい「文化芸術基本法」では、前文に「表現の自由」が明記されました。「文化芸術基本法」や憲法の基本的人権の条項をまもり生かして、表現の自由を侵す動きに反対します。「児童ポルノ規制」を名目にしたマンガ・アニメなどへの法的規制の動きに反対します。

 諸外国では、表現の自由を守るという配慮から、財政的な責任は国がもちつつ、専門家が中心となった独立した機関が助成を行っています。文化庁の助成は応募要綱などが行政の裁量で決められ、芸術団体の意見がそこに十分反映されていません。すべての助成を専門家による審査・採択にゆだねるよう改善します。
(略)

 急に決まった解散総選挙で、野党の再編もあったため、やむを得ないこととは思うが、各党とも去年の参院選の時の公約案(第365回)と比較しても、実質あまり違いが見出だせない状況である。敢えて言うなら、現在の与党である自公はTPP推進項目を残しているとは言え、知財政策の面で大きな意味を持つものの、アメリカ脱退後混迷しているTPPは政策的に前面に押し出されなくっているという違いはあるだろうか。

 今回の解散総選挙の理由はやはり良く分からないままだが、こうなって来るともはや憲法改正への賛成反対を軸に投票せざるを得ないように私は思っている。自民党の公約案では明確に言及されていないが、実質的に表現の自由などの基本的人権の制約・国民からの剥奪を狙っているゴミクズ以下の自民党憲法改正案(自民党のHP参照)の危険性はいくら強調してもしすぎではないし、同じく憲法改正を唱える希望や維新への投票も危険性があると私は見ている。(希望の党の政策パンフレットには憲法に知る権利を明確に定める云々と書かれているが、知る権利は今でも憲法上の表現の自由に含まれているとされているのであり、もし本当に行政の情報公開が必要というなら現行憲法の下で強力に推進すればいいだけのことである。希望の党のこのような知る権利に関する言及は私には目くらましとしか思えない。)

 なお、今回も個人に対する投票という意味はかなり薄い選挙となりそうなので、規制強化慎重反対派元国会議員候補リストは省略する。(リストについて興味のある方は、番外その37に載せた2014年衆院選向けに作ったものを参照頂きたい。)

(2017年10月14日夜の追記:内容に特に違いはないが、各党の公示日後の正式版の公約集へのリンクをここに張っておく。

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