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2015年12月29日 (火)

第355回:2015年の終わりに

 国会は閉会中、役所も正月休みに入り、年内に何か政策的に新しいことが言い出されるということはもうないだろうと思うので、今年も最後にマイナーなことも含め国内の動向についてまとめて書いておきたいと思う。

 まず、知財本部では、知的財産推進計画2016策定に向けた検討が始まっており、検証・評価・企画委員会の下の知財紛争処理システム検討委員会と次世代知財システム検討委員会でそれぞれ知財訴訟制度と自動集積されるデータベースの取り扱いなどに関する検討が進められているが、政策的にはっきりとした方向性はまだ出されていない。第338回で書いた通り、最も気になっているのは、次世代知財システム検討委員会で来年2月に検討される予定の国境を越えるインターネット上の知財侵害への対応についてだが、委員会メンバーはそこまで偏った構成になっておらず、ここでそう変な結論を出して来ることは恐らくないのではないかと踏んでいるがどうだろうか。

 次に、特許庁では、産業構造審議会知的財産分科会の特許制度小委員会や審査基準ワーキンググループ(特許意匠商標)などが開催されており、経産省では、営業秘密の保護・活用に関する小委員会が開催されているが、いずれも地道な法改正のフォローアップや基準の改訂に関する話ばかりで、文化庁と違って、TPPに絡む特許法改正に関する審議会での検討はされていない。(両方ともマニアックなものなので内容の説明は省略するが、それぞれ1月9日と1月19日〆切で、特許庁から、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備等に関する政令案に対する意見募集産業構造審議会知的財産分科会意匠制度小委員会報告書「画像デザインの保護の在り方について」(案)に対する意見募集の2つのパブコメが出されているので、念のためここでもリンクを張っておく。)

 また、農林水産省は、その初回登録に関するリリースにある通り、地理的表示の登録を開始している。

 そして、文化庁では、分化審議会著作権分科会の下で、TPP対応に関することを検討していた法制・基本問題小委員会の他にも、著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会新たな時代のニーズに的確に対応した制度等の整備に関するワーキングチームなども開かれているが、例によって利害関係者の間の意見の隔たりは大きく、現時点でどうともなっていない。

 TPPに絡む法改正については、文化庁、知財本部の検討を経て、TPP総合対策本部の11月25日のTPP関連政策大綱(pdf)において、「Ⅱ TPP関連政策の目標/3 分野別施策展開/(3)知的財産」で、

 TPP協定の締結に必要な国内実施のため、国内法との整合性に留意しつつ、必要な措置を講ずる。また、TPPを契機として、輸出促進に向けた地理的表示(GI)等に関する措置を講ずる。

①特許・商標関係
○不合理な遅延に係る特許権期間延長、特許の新規性喪失例外期間の延長、商標不正使用に対する民法の原則を踏まえた法定の損害賠償制度等に関し、所要の措置を講ずる。
〇地域中小企業等の知財戦略の強化や、特許審査体制の整備・強化を図る。
〇TPP協定実施のための制度の整備状況等を踏まえつつ、知財紛争処理システムの一層の機能強化のための総合的な検討を進める。

②著作権関係
○著作物等の保護期間の延長、著作権等侵害罪の一部非親告罪化、著作権等侵害に対する民法の原則を踏まえた法定の損害賠償制度等に関し、所要の措置を講ずる。その際、権利の保護と利用とのバランスに留意し、特に、著作権等侵害罪の一部非親告罪化については、二次創作への委縮効果等を生じないよう、対象範囲を適切に限定する。
○著作物等の利用円滑化のため、権利者不明等の場合の裁定制度の改善を速やかに行うとともに、社会的諸課題への対応、柔軟性の高い権利制限規定、円滑なライセンシング体制の整備等に関する検討を進める。

と、「Ⅳ 政策大綱実現に向けた主要施策/3 分野別施策展開/(3)知的財産」で、

○地理的表示の相互保護制度整備による農林水産物の輸出促進等
(我が国の地理的表示(GI)の海外での保護を通じた農林水産物の輸出促進を図るための諸外国と相互にGIを保護できる制度整備)

①特許・商標関係
○特許・商標関係の制度整備
(不合理な遅延に係る特許権期間延長、特許の新規性喪失例外期間の延長、商標不正使用に対する民法の原則を踏まえた法定の損害賠償等に関する制度整備)

②著作権関係
○著作権関係の制度整備
(著作物等の保護期間の延長、著作権等侵害罪の一部非親告罪化、著作物等の利用を管理する効果的な技術的手段に関する制度整備、配信音源の二次使用に対する使用料請求権の付与、著作権等侵害に対する民法の原則を踏まえた法定の損害賠償等に関する制度整備)

とまとめられた所で、今後さらに各法改正の詳細が各省庁の審議会と国会で検討されるのではないかと思われる。今年は知財政策についてはTPPに終始したと言っても過言ではない年だったし、来年の通常国会でTPP関連の法改正の審議を行うとの報道もあり、来年もTPP問題が一番の焦点になりそうな様子であるが、そもそも私はTPPに絡む上記の法改正のほぼ全ての点について反対であり、速やかに脱退するべきと思っていることに変わりはなく、TPPについても拙速な検討による法改正がなされないことを、率先して法改正までしたが結局どこの国もついて来なかった海賊版対策条約(ACTA)の二の舞にならないことを強く願っている。

 なお、最後についでに書いておくと、官房長官が図書が有害かどうかで軽減税率の適用・消費税率が変わるような制度を検討すると言い出しているということもあり、どうやら有害図書問題でも来年はきな臭い年になりそうである。

 ここ何年もどうにも良い話がなく、今年も良い年をという気にはならないが、政官業に巣食う全ての利権屋に悪い年を。そして、この拙いブログを読んでくださっている方々に心からの感謝を。

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