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2014年12月26日 (金)

第329回:2014年の落ち穂拾い

 衆議院選挙が終わり、組閣が行われたが、自民党の議席も、内閣のメンバーもほとんど変わらなかった。そのため、やはり当分厳しい状況が続くだろうことはともかく、今年もなかなか書く暇がなかった話を最後にまとめて書いておきたいと思う。

 まず、特許、商標、意匠関連では、この12月25日に、特許庁の産業構造審議会・知的財産分科会・特許制度小委員会で、「我が国のイノベーション促進及び国際的な制度調和のための知的財産制度の見直しに向けて」(案)(pdf)がとりまとめられ、1月15日〆切でパブコメにかけられている(特許庁HPの意見募集ページ、電子政府HPの意見募集ページ参照)。

 この特許庁の報告書案中に含まれている事項は、職務発明制度の見直し、特許料金等の改定、特許法条約及び商標法に関するシンガポール条約の加入の3点である。これらの中でも法改正事項としてもっとも注意すべきなのは、職務発明制度の見直しだろうと思うが、そのポイントだけを抜き出すと、

  • 第一に、職務発明に関する特許を受ける権利については、使用者等に対し、契約や勤務規則等の定めに基づき、発明のインセンティブとして、発明成果に対する報いとなる経済上の利益(金銭以外のものを含む)を従業者等に付与する義務を課すことを法定する。
  • 第二に、職務発明に関する「特許を受ける権利」については、現行制度を改め、初めから使用者等に帰属するものとする。
  • 第三に、政府は、インセンティブ施策の策定の際に使用者等に発生するコストや困難を低減し、法的な予見可能性を高めるため、本小委員会等の場において関係者の意見を聴いて、インセンティブ施策についての使用者等と従業者等の調整の手続(従業者等との協議や意見聴取等)に関するガイドラインを策定する。

と、職務発明に関する特許を受ける権利の帰属を基本的に始めから企業にするとしており、今までの特許法の考え方をかなりラディカルに変える結論になっている。職務発明制度について法改正を是とするに足る立法事実の変化が実のところ大してないことは、文章として書かれていることがどうあれこの報告書案の薄さが端的に示しているとは思うが、特許庁としてはこのまま突っ走るのだろう。(条約等に関する話も実務的には非常に重要なのだが、あまりにマニアックな話となるためここでは省略する。また、基準レベルの検討を行っているものとして、今年、他にも特許庁では特許審査基準WG意匠審査基準WG商標審査基準WGなどが動いており、意見募集として、1月16日〆切で特許異議の申立て制度の運用(案)に対する意見募集無効審判における請求人適格に関する運用(案)に対する意見募集も、1月17日〆切で特許法改正政令案に対する意見募集も、1月22日〆切で省令案に対する意見募集も、1月23日〆切で「商標審査基準」改訂案に対する意見募集も行われている。)

 また、経産省の産業構造審議会・知的財産分科会・営業秘密の保護・活用に関する小委員会では、ガイドラインだけでなく、不正競争防止法の見直しも進められており、こちらの報告書案はまだ作られていないようだが、11月27日の第3回の資料中の営業秘密の流出防止のための制度整備について(論点)(pdf)には、

  • 国外における営業秘密の「不正取得・領得」についても国外犯処罰規定の対象としてはどうか。
  • 営業秘密の取得・領得及び使用・開示行為について、その未遂行為も処罰の対象としてはどうか。
  • 窃取行為者本人からの直接の取得に限らず(三次以降の取得者であっても)、不正に取得されたことを知って営業秘密を使用ないし開示する行為を処罰対象としてはどうか。
  • 営業秘密使用物品について譲渡・輸出入等する行為を、刑事措置・民事措置(差止・損害賠償の対象としてはどうか。
  • 法人重課を含め罰金刑の上限を引き上げることとしてはどうか。
  • 営業秘密侵害罪を非親告罪とする。

などと書かれており、これも未遂罪の追加や非親告罪化なども含め、かなりの厳罰化の方向で検討が進められそうな様子である。

 文化庁では、今年も著作権分科会の下で、著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会法制・基本問題小委員会国際小委員会の3つの委員会が開かれているが、いつも通り利害関係者がそれぞれ言いたいことを言っているだけで、ほとんどどうにもなっていない。

 また、知財本部では検証・評価・企画委員会が開催されており、クールジャパン会議も地方版が開催されたりしているが、今のところこれと言って大した検討はされていない。

 最後に、知財政策とは離れるが、IT本部でこの12月19日にパーソナルデータに関する検討会の第13回が開かれ、そこで個人情報の保護に関する法律の一部を改正する法律案(仮称)の骨子(案)(pdf)の検討がされている。この骨子案でも個人情報の保護について本当の意味で十分とは言い難いが、前の大綱と比べ(前の大綱については第316回参照)、個人情報の定義の拡充や個人情報データベース提供罪の新設などを言っているだけ、かなりマシになっている。恐らくこの骨子案通りに法改正案が作られ、国会に提出されるのではないかと思うが、情報政策の面で非常に重要な法改正であり、実際にどのような条文が国会に提出されるのかも要注意である。

 これらの動きを見るにつけ、知財政策の面では、やはり来年もTPP交渉が最大のトピックであり、職務発明と営業秘密保護法制に関する法改正がそれに次いで重要なトピックとなりそうである。

 それでは、政官業に巣食う全ての利権屋に悪い年を、そして、このつたないブログを読んでくださっている方に心からの感謝を。

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