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2014年6月24日 (火)

第315回:知財計画2014の文章の確認

 先週6月20日に知財計画2014本文(pdf)が決定された。

 今年の知財計画も途中での番狂わせはなく、前から言われていたように特許法の職務発明制度の見直しと営業秘密の保護強化が2つの大きな目玉になっているくらいで、取り立てて見るべきところがある訳ではないが、知財政策検討項目集としてパブコメを出したところなどがどういう書き方になったかを見て行きたいと思う。(今年の私の提出パブコメは第312回、去年の知財計画2013の内容については第292回参照。)

 目玉項目のうち1つ目の「職務発明制度の抜本的な見直し」については第12ページから書かれているが、第15〜16ページの今後取り組むべき施策で書かれているのは以下のような文章である。

 職務発明制度の在り方について、特許庁において2013年度に実施した調査5において収集した海外における職務発明制度の内容や判例等の情報、企業向けアンケート調査結果や、研究者向けアンケート結果等の客観的資料に基づき、例えば、法人帰属や使用者と従業者などとの契約に委ねるなど、研究者の研究開発活動に対するインセンティブの確保と企業の国際競争力・イノベーションの強化を共に実現できるような制度設計をすべく、産業構造審議会知的財産分科会での議論を加速化させ、今年度(2014年度)のできるだけ早い時期に、法制度上の措置を講ずることの必要性も含め、結論を得る。(短期)(経済産業省)

 職務発明制度の見直しと言っても前回の法改正以降訴訟が乱発されているなどということもなく、法改正を是とするに足る立法事実の変化はなにもないように思うが、去年と比べてもさらに取り上げ方が大きくなっており、特に方針の変更があったという話も聞かないので、ここにも書かれている通り、職務発明の法人帰属化(現行の特許法第35条では従業者の職務発明に関する権利を対価と引き換えに契約等で法人に承継させるのが基本だが、これを始めから法人帰属にする)や完全な契約ベース化(特許法第35条の廃止)のようなかなりラディカルな方向で今後も特許庁の特許制度小委員会で検討が進められるのだろう。

 もう1つの目玉、「営業秘密保護の総合的な強化」については第17ページからで、中でも法制面で検討すべきことについては、第19ページで、

 我が国における流出の実態と課題に照らし、更に実効的な抑止力を持つ刑事規定の整備、実効的な救済(損害賠償・差止)を実現できる民事規定の整備を実現するため、その内容と実現スピードの適切なバランスを考えつつ、優先すべき事項から法制度の見直しを進めていく。例えば、刑事規定については非親告罪化や罰金の上限の引上げなど、民事規定については立証負担の軽減など、その他については水際措置の導入など、知財関連法制の範囲で検討できる事項については、早急に産業界のニーズや実態を踏まえ、次期通常国会への法案の提出も視野に、スピーディーに検討を進めていく。(短期・中期)(経済産業省、財務省、法務省)

と書かれている。営業秘密の保護強化も本当に必要かどうかと考えるとかなり疑問なところが多いが、ここで書かれているように、非親告罪化や罰金の上限の引上げなどの検討が経産省で進められるのだろう。

 あと地道に進めてもらえれば良い特許の運用改善などに関する話を飛ばして法改正に関係する部分をざっと見て行くと、まず、意匠法について、第10ページで、

(画像デザインの意匠法による保護)
・事業者のクリアランス負担を軽減すべく、運用面のインフラ整備を進める。これを前提とし、関係する産業界から広く参画を得つつ、画像デザインの意匠の保護の在り方を検討する。(短期)(経済産業省)

と画面デザインについて書かれているが、去年よりはかなり押さえ気味の書きぶりとなっている。

 商標法や地理的表示保護法についてなどは法改正が通ったためかばっさりと項目がなくなり、著作権改正関係ではほぼ去年通りの記載で第40ページの、

(新しい産業の創出環境の形成に向けた制度等の構築・整備)
・著作物の公正な利用と適切な保護を調和させ、クラウドサービスや情報活用のサービスなどの新たな産業の創出や拡大を促進するため、著作権の権利制限規定の見直しや円滑なライセンシング体制の構築などの制度の在り方について、文化審議会の議論を加速化させ、今年度の出来る限り早期に結論を得て、必要な措置を講ずる。(短期)(文部科学省)

・クリエーターへ適切に対価が還元され、コンテンツの再生産につながるよう、引き続き上記の検討と併せて、私的録音録画補償金制度の見直しや当該制度に代わる新たな仕組みの導入について検討を進め、結論を得て、必要な措置を講ずる。(短期・中期)(文部科学省、経済産業省)

という権利制限や私的録音録画補償金制度に関する項目や、第41〜42ページの

(教育の情報化の推進)
・全ての小・中学校において児童生徒1人1台の情報端末によるデジタル教科書・教材の活用を始めとする教育の情報化の本格展開が急務であり、実証研究の成果等を踏まえつつ、クラウド等の最先端の情報通信技術を活用した教育ICTシステムの標準モデルの確立を進めるとともに、デジタル教科書・教材の位置付け及びこれらに関連する教科書検定制度などの在り方について本年度中に課題の整理を行い、2016年度までに導入に向けた検討を行い結論を得て、必要な措置を講ずる。(短期・中期)(文部科学省、総務省)

・大規模公開オンライン講座等のインターネットを通じた教育や、上記に関する検討と併せてデジタル教科書・教材に係る著作権制度上の課題について検討し、必要な措置を講ずる。(短期・中期)(文部科学省)

という項目が残った。

 著作権法改正関係の中でも、第45ページの、

(アーカイブの利活用促進のための著作権制度の見直し)
・孤児著作物を含む過去の膨大なコンテンツ資産の権利処理の円滑化等によりアーカイブの利活用を促進するため、著作権者不明の場合の裁定の手続の簡素化や、裁定を受けた著作物の再利用手続の簡素化など裁定制度の在り方について早急に検討を進めるとともに、諸外国の取組・動向等も参考としつつ、アーカイブ化の促進に向けて新たな制度の導入を含め検討を行い、必要な措置を講じる。(短期・中期)(文部科学省)

という項目で、アーカイブ化の促進に向けた新たな制度の導入が書かれているのは注目しておいて良いかも知れないが、結局検討するのは文化庁と思うので、あまり期待は持てないだろう。

 その他海賊版対策や海外、条約関係ということでは、第51〜52ページ、第55〜56ページに、

(海外での外国番組の規制等の撤廃)
・海外において、外国製の映画・放送番組・マンガ・アニメ等のコンテンツの輸入や国内放映に係る規制が存在することを踏まえ、二国間や多国間の官民による協議・交渉・対話において、これらの規制の緩和や撤廃を求め、我が国のコンテンツの自由な流通が実現されるよう引き続き働き掛けを行う。(短期)(外務省、経済産業省、総務省、文部科学省)

(海外における正規版流通拡大と一体となった模倣品・海賊版対策の推進)
・模倣品・海賊版対策を強化するため、官民一体となった働き掛けや各国との連携により侵害発生国での模倣品・海賊版の取締りを強化する。また、インターネット上での偽ブランド品や違法コンテンツの排除に向け、インターネットサービスプロバイダ(ISP)と権利者等との連携による自主的な削除対応やセキュリティソフト等を通じた利用者への注意喚起など、民間での取組を促進するとともに、消費者等への被害の発生・拡大防止のための対策なども進めることにより、より効果的なエンフォースメントが実施されるよう必要な取組を行う。(短期)(外務省、経済産業省、総務省、文部科学省、警察庁、財務省、農林水産省、消費者庁)

(グローバルな模倣品・海賊版対策の強化)
・グローバルな模倣品・海賊版対策の実効性を高めるべく、ACTA(偽造品の取引の防止に関する協定)に関し、既署名国を中心とした他国に対して、引き続き参加を働き掛け協定の早期発効を目指す。また、二国間の経済協議等において知的財産の保護強化を積極的に取り上げるなど、各国のエンフォースメント強化に向けた取組を推進する。(短期)(外務省、経済産業省、文部科学省、農林水産省、総務省、法務省、財務省)

(通商関連協定の活用)
・自由貿易協定(FTA)/経済連携協定(EPA)などの二国間・多国間協定を通して、国際的な問題の解決・改善を図る。特に、TPP協定については、産業界を始めとした関係者の意見を踏まえつつ、国益にかなう最善の結果を追求する。(短期・中期)(外務省、経済産業省、農林水産省、文部科学省、財務省)

といった項目が並んでいるが、相変わらず、日本国内におけるコンテンツに対するバカげた規制圧力を政府として本気で止める気はないと見えるし、ほとんど死んでいると言って差し支えない海賊版対策条約(ACTA)も上の文章を読む限り諦めていないと見える。

 今年の知財政策上のホットトピックが職務発明の見直し、営業秘密の保護強化、TPP交渉の3点であろうことは知財計画からも明らかに見て取れるが、いつものこととは言え著作権問題などで利用者の視点も踏まえた検討がまともに進められそうな気配は微塵も感じられないのが極めて残念である。

(2014年7月6日夜の追記:7月4日に特に内容の変更はないものの本文とは別に工程表などを含めた知財計画2014(pdf)が決定された。どうにも分かりにくいが、合わせ上の文章中でリンクを張った部分の言葉を「知財計画2014本文」と改めた。)

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