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2013年10月 3日 (木)

第297回:文化庁・著作権分科会・出版関連小委員会中間まとめ(電子出版権創設提言)に対するパブコメ募集(10月27日〆切)

 先週9月27日に文化庁から10月26日〆切で、著作権分科会・出版関連小委員会中間まとめに対するパブコメ募集が始まった(電子政府のHP参照)。あわや新隣接権の創設かと思われた話にしては今の出版権の延長での電子出版権の創設という極めて順当なところに落ち着いており、今の方向性で大きな問題があるということはないが、久しぶりの著作権法改正パブコメであり、ここで経緯も含めてその内容を簡単に紹介しておきたいと思う。

 非常にややこしいのだが、この話について1980年代くらいからこれまでの経緯をざっと書いておくと、

1985年〜1990年 文化庁・著作権審議会第8小委員会(出版者の保護関係)で出版社の権利について検討、その報告書で補償金請求権付与を提言するが、結局法改正に至らず

2003年 知財計画2003で版面権に言及するが、結局まとまらず

2005年 知財計画2005から版面権に関する記載が消える

2010年3月〜6月 文部科学省・総務省・経済産業省3省のデジタル・ネットワーク社会における出版物の利活用の推進に関する懇談会で出版社の権利についても検討

2010年12月〜2011年12月 同3省の電子書籍の流通と利用の円滑化に関する検討会議で引き続き検討、特に結論出ず

2012年2月 中川正春衆院議員を座長とする印刷文化・電子文化の基盤整備に関する勉強会で出版社への権利付与について検討開始

2012年2月 弁理士会が知財計画意見(pdf)で電子出版権の創設を提言

2012年5月 知財計画2012(pdf)で出版社への権利付与の検討項目が復活

2012年6月 中川勉強会が中間取りまとめ(pdf)で出版社への隣接権付与を提言

2013年2月 経団連が電子出版権の創設を提言

2013年4月 中山信弘先生らが現行出版権の拡張を提言(pdf)補足説明(pdf) )、中川勉強会も同提言を取り込む(議事録(pdf)参照)

2013年5月〜9月 文化庁・著作権分科会・出版関連小委員会で検討開始、中間取りまとめで電子書籍に対応した出版権の整備を提言

となる。ここ最近では、中川勉強会で隣接権付与が言い出され、すわ議員立法かと思われた時期が一番危なかったが、様々な関係者のロビー活動や中山提言のお陰もあり、最終的に順当なところに落ち着いたのは非常に喜ばしい。

 今回の中間取りまとめ(pdf)の内容は、その概要(pdf)に十分まとまっているとも思うが、念のため、この概要の表を参考にさらに現行の出版権も加えて比較表を作っておくと、

Epub_rights_2

となるだろう。つまり、この提言に沿った法改正がなされても、現行と同様に契約によって出版権あるいは電子出版権を設定するという形になるのであって、元の著作権者の意図にすら反して自動的に出版社に何かしらの隣接権が発生するというようなことはない。(細かなこととしては、電子出版権の基本的な存続期間がどれだけになるのかまだ分からないことや現行の出版権も再許諾が可能になったりとわずかに変わるとされていることに少し注意しておいた方が良いかも知れないが。)

 隣接権創設については、中間取りまとめの第15〜16ページでも、

 その他の関係団体からは、(ⅰ)著作権者の意思に反して権利行使される可能性や権利者数の増加による権利処理コストの増大から、流通阻害効果が予想され、副作用が大きいと考えられること、(ⅱ)印刷会社と出版社の間では、出版物等原版の取扱い等について議論があり、著作隣接権の付与により取扱いや帰属が変わってしまうことが懸念されること、(ⅲ)漫画家が制作する原稿は、本を通じて読者が目にする形そのものであるから、 漫画の原稿の図案にまで出版者に権利を与えることは反対であることなどから、著作隣接権の創設に反対する意見が多く示された。

と書かれており、今後もごく当たり前の話としてこのような否定的な整理を守るべきだろう。

 今回のパブコメは順当な内容のものであり、私もこの方向で進めてもらいたいという意見を書いて送るつもりだが、文化庁が多少なりともまともになったと考えている訳ではカケラもない。権利者と利用者が対立する場合必ず権利者側に立って非道い報告書をまとめる文化庁も、このように著作者と出版社が対立する場合にはそれなりにバランスを取って考えるというだけのことである。TPPとも絡み、日本政府が著作権法改正について今後何を言い出して来るかは本当に要注意である。

 なお、そもそものことを言えば、出版業界で出版権設定契約が必ずしも十分に浸透していないということがあり(この報告書に載っている数字でも73%の出版契約の8割が出版権設定契約とあるので、新刊書籍のうち出版権の設定がされているのは全体の5割程度ということになり、雑誌に至っては事例がないとのことだが、このように十分な契約もできていない状態でとにかく隣接権を寄越せと主張されてもほとんど出版社のわがままとしか思えない)、できればこのような法改正でもう少しきちんとした契約がされるようになればとも思うが、果たしてどうだろうか。

 最後に著作権政策を巡る最近の国内動向も少し紹介しておくと、内閣府の規制改革会議がクラウドと著作権の問題について突っ込んで来ている(毎日新聞の記事、規制改革会議・創業・IT等WGの9月30日資料など参照)。今までのことを考えると規制改革会議にも大きな期待はできないと思うが、例年通り10月31日〆切で意見の集中受付をやっているので、著作権問題について合わせて意見を出しておくのも一案だろう。

 今回のパブコメで提出する意見はここに載せるほどの内容にはならないので、次回は国内外の動向に合わせてまた別の話を書きたいと考えている。

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