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2012年6月10日 (日)

第272回:内閣府「青少年が安全に安心してインターネットを利用できるようにするための施策に関する基本的な計画(第2次)」(素案)に対するパブコメ募集(6月15日〆切)

 何と言っても目下の最大の懸念はダウンロード犯罪化問題をおいて他にないが、並行して内閣府から第2次青少年ネット基本計画に関するパブコメがかかっており、これも決して無視して良いものではないのでここでも取り上げておく。(内閣府の意見募集ページ、電子政府の該当ページ参照。internet watchの記事も参照。)

 第2次青少年ネット基本計画(素案)の概要(pdf)にも見直しの主なポイントが書かれているが、パブコメを書くにあたり、この新たな基本計画素案(pdf)が、3年前の前回の基本計画(内閣府の基本計画ページ参照)からどこがどう変わっているのかという一番重要な点がどうにも分かりにくいので、以下、両者の差を明確に示して行く。(なお、前回の基本計画に対する私のコメント及び提出パブコメは、第170回及び第172回に載せている。)

 この計画案は全体的な出来の面でやはり比較的良いと思うが、まず、第4ページから第5ページにかけて、以下のような項目が追加されている点は重要である。

3.施策実施において踏まえるべき考え方

 上記の基本的な方針に基づき各施策を推進するに際しては、青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備に向けた取組を通じて、青少年有害情報から青少年を守り、インターネットの恩恵を享受させるため、次の5つの考え方を踏まえて実施する。

① リテラシー向上と閲覧機会の最小化のバランス
 青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境を整備するため、あらゆる機会を利用してインターネットを適切に活用する能力の向上を図る施策を行う。これを補完するため、青少年有害情報を閲覧する機会をできるだけ少なくするための施策を行う。

② 保護者及び関係者の役割
 青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備に関する権利を持ち、役割を担うのは、一義的にはその青少年を直接監護・教育する立場にある保護者である。ただし、インターネットの利用環境はその急速な技術革新等により大きく変化するものであり、保護者が単独でその役割を全うすることは困難なため、関係者は連携協力して保護者を補助する各々の役割を果たさなければならない。

③ 受信者側へのアプローチ
 青少年がインターネットを利用して青少年有害情報を閲覧する機会をできるだけ少なくするための施策は、インターネット上の自由な表現活動の確保の観点から、受信者側へのアプローチを原則とする。

④ 民間主導と行政の支援
 青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境を整備するに当たって、まずは、民間による自主的かつ主体的な取組を尊重し、これを更に行政が支援する。

⑤ 有害性の判断への行政の不干渉
 いかなる情報が青少年有害情報であるかは、民間が判断すべきであって、その判断に国の行政機関等は干渉してはならない。

 この5項目は、総務省の「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備に関する提言」(第258回参照)中の基本方針をそのまま持って来ており、入れたのは総務省ではないだろうか。極めて当たり前のことながら、このような謙抑的かつ前向きな方針をこの基本計画案にも入れたことについて総務省の取り組みを私は高く評価したい。

 次に追加されているのは、第7ページの

(2)ポータルサイト等を活用した分かりやすく速やかな情報提供
 違法・有害情報対策のホームページ等のポータルサイトを活用し、違法・有害情報への具体的対策等について、分かりやすく利便性の高い情報の速やかな提供を実施する。
 また、青少年のインターネット環境整備のために各省庁が取り組んでいる施策の一覧、保有するデータ等を内閣府の青少年インターネット環境整備に関するポータルサイトを活用すること等により、一覧性を持たせて分かりやすく提供すると共に、各省庁の施策の連携を深める。

(3)サイバー防犯ボランティア育成・支援の推進
 既にサイバー防犯ボランティアとして活動している団体のノウハウを調査研究するなどして、新たなサイバー防犯ボランティアを育成・支援し、同ボランティアにより青少年のインターネットの適切な利用に関する教育や啓発活動を行って、国民参加の気運を醸成し、安全で安心なインターネット空間の実現に向けた取組を推進する。

(4)インターネットリテラシーに関する指標策定の取組
 スマートフォンを始めとする新たな機器の出現などにより、青少年が安全に安心してインターネットを活用するために必要なリテラシーが多様化しているところ、青少年のインターネットリテラシーに関する指標を策定し、これを青少年に適用することで、青少年のインターネットリテラシーを計測し、その分析結果に基づいたインターネットリテラシーの向上施策を推進する。

の部分であり、この(2)に後半部分が追加され、項目として(3)及び(4)が追加されるという変更が加えられている。そこまで規制的な話が出ている訳ではないが、ボランティアやリテラシー指標については多少注意が必要だろう。

 また、第8ページから第9ページにかけて、

(3)保護者に対する有効な普及啓発支援の検討
 普及啓発活動において、法の趣旨に沿ったフィルタリングの利用や家庭内でのルールづくりなどの取組を推進する上で、保護者に対する更なる理解及び自主的な取組促進が重要であることから、そのための効果的な普及啓発の支援策について、有識者による検討を行い、その検討結果に基づき普及啓発支援を実施する。

という項目が追加され、その後の第9ページで、「(2)保護者に対する効果的な啓発の在り方の検討・推進」という項目中に「これらの取組の効果を高めるため、利用実態の継続的な調査を実施する」という文章が、「(1)社会総がかりで取り組むための広報啓発の実施」という項目中に「青少年が使用する携帯電話・PHS等の購入が多く見込まれる進学・進級時期における集中的かつ効果的な活動などにより、総合的な広報啓発等を継続的に実施する」という文章が追加されている。なお、あまり本質的な修正ではないが、「(2)インターネット利用者・事業者の主体的な活動への支援」という項目から「チーム・マイナス6%」に関する言及が削除されている。

 第10ページでは、「(1)フィルタリング提供義務等の実施徹底」という項目中に「また、インターネットカフェ事業者に対して、青少年に対する有害情報の閲覧防止措置を講ずるなど青少年インターネット環境整備法の遵守等の働き掛けを継続的に推進する」という文章が追加されるとともに、「(2)保護者への説明等の推進」という項目で説明するものとして「利用方法」の語が追加されている。

 第10ページから第11ページにかけては、

(3)望ましいフィルタリング提供の在り方を判断するための基準の普及
 青少年のインターネットの利用環境が変化を続けている中、インターネット接続に際し用いられる携帯電話・PHS・ゲーム機やパーソナルコンピュータ等の端末について、関係事業者がどのように連携してフィルタリングを提供するのが望ましいかを判断できるように、フィルタリング提供の在り方を判断するための基準の周知・普及を進め、関係事業者による適切なフィルタリングサービス等の提供を促進する。

という項目が追加されているが、ここで言うフィルタリング基準についてはやはり画一的なものの押しつけにならないよう気をつけておいた方が良いだろう。

 第11ページでは、書く意味がなくなったのか、「(1)携帯電話・PHSのフィルタリングの多様化・改善の推進」の項目から、平成21年度中にという年度に関する記載が消え、第11ページから第12ページにかけて、

3.新たな機器及び伝送技術への対応

(1)フィルタリングの推進
 環境変化が激しいインターネット利用については、スマートフォンなどの新たな機器やWifiなどの伝送技術が普及することに対応して、民間団体の自主的な取組の在り方も踏まえて、今後の具体的なフィルタリングの実施方策等について、第三者機関の関与も含め、関係省庁が連携して継続的に検討する。
 また、保護者などにフィルタリングの内容や必要性及び利用方法を分かりやすく伝える事業者の自主的な取組を支援する。

(2)青少年保護・バイ・デザインを念頭に置いた新たな機器等の設計等の支援
 青少年を取り巻くインターネット環境においては、次々と新しい機器が出現し、青少年に普及するところ、新たな機器やサービスを提供する場合は、その設計段階から青少年が利用することを想定し、青少年に対するインターネット上の危険性をあらかじめできるだけ小さくしておくことが重要であることから、実効的な青少年保護を組み込んだ形で、機器の設計、サービスの設計、事業者内部及び事業者間の体制の整備等(青少年保護・バイ・デザイン)が行われるように民間の取組を支援する。

という項目が追加されている。

 第13ページの「(2)効率的かつ円滑な活動実現のための支援」という項目で、インターネット上の有害・違法情報検出技術の開発支援や、違法・有害情報選別業務従事者に対する精神的ケアに関する記載が消され、単に対策に関する調査とされたのも意味深い。前者の技術開発はやはり無理だったのだろうと推測するが、後者のケアは書くまでもないと考えたのだろうか。

 第14ページの「4.その他のインターネットの利用環境整備に向けた活動に対する支援」という項目では、安心ネットづくり促進協議会等の活動について、元は単に活動を支援するだけとあったのが、「取組強化、参加者相互間の連携強化を支援する」と強化を打ち出している。

 児童ポルノブロッキングが自主規制という形で導入されてしまったので、第15ページから第16ページにかけての、

(2)事業者や民間団体の効果的な閲覧防止策の支援
 インターネット上の児童ポルノについて、被害者である青少年の権利を保護するため、事業者及び民間団体における効果的な閲覧防止策を支援する。

という児童ポルノに関する項目では、閲覧防止策の検討支援から「検討」が消され、単に閲覧防止策の支援にされている。

 これもあまり本質的な変更ではないように思うが、第17ページの「(3)チェーンメール対策の周知啓発」という項目では、青少年がチェーンメールを受け取っているだけではなく、送ったりしているとの記載が追加された。

 第18ページの「1.国における推進体制」では、さすがにもう書く意味がなくなったのか、平成19年の「インターネット上の違法・有害情報に関する集中対策」に関する記載が削除された。

 同ページの「3.国際的な連携の促進3.国際的な連携の促進」という項目では、平成24年2月に採択された経済協力開発機構(OECD)のオンライン上の青少年保護勧告に関する言及が追加された。OECDのHPで公開されているこの勧告は、表現の自由などに関する言及もあり全体的にバランスの取れた良い勧告だと思うが、いずれにせよ、こうした国際機関における動きには注意しておくに越したことはないだろう。

 最後に第19ページの「4.基本計画の見直し等」で「法令改正も含めた必要な対応の検討を実施する」と法改正の検討に関する明示的な記載が入ったことも注意しておくべきだろう。法改正の方向性までは書かれていないが、書かれた以上は何かしらの検討がされて行くに違いないのである。

 この新たな計画案はやはり基本的に情報モラル・リテラシー教育/啓発運動とフィルタリングの導入促進を中心とした地道な取り組みを推進するとしており、省庁の基本計画としては前回同様かなりマシな出来である。総務省が5つの基本方針を入れてくれたお陰で内容のレベルは向上したと言って良いようにも思うが、新たに入った各種の検討項目も含め、前回の基本計画(第170回及び第172回参照)に含まれていたインターネット・ホットラインセンターや児童ポルノブロッキングなど問題のある施策に関する記載も残されているなど、やはり注意しておいた方が良いことに変わりはなく、私もパブコメを出すつもりでいる。パブコメ期間が5月29日から6月15日までの実質2週間と少しという非常に短い期間になっているが、折角の機会なので、ネット規制に関して関心を寄せている方には是非パブコメを出すことを検討してもらいたいと思う。

(2012年6月12日の追記:誤記を1つ修正した。)

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