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2011年10月 5日 (水)

第257回:現行著作権等管理事業法の問題点(文化庁提出パブコメ)

 著作権等管理事業法の改正についてのパブコメが10月11日〆切でかかっており(文化庁のHP電子政府の該当ページ参照)、私もパブコメを提出した。最後に私の提出パブコメも載せたが、折角の機会なので、ここで、今の著作権等管理事業法施行規則)の問題点も簡単にまとめて書いておきたいと思う。

 プラーゲ旋風の頃までさかのぼる気はないが、最初に前回の平成12年法改正の経緯について少しだけ書いておくと、この法改正を実質的に検討したのは、当時の文化庁の著作権審議会(今の文化審議会著作権分科会に相当)の権利の集中管理小委員会専門部会である。

 この権利の集中管理小委員会の中間まとめや、文化庁のHPに書かれているが、平成12年当時の法改正の最大の背景・目的は、もはや時代にそぐわなくなっていた(著作権に関する仲介業務の)「許可制」による新規参入の制限を止め、これを(著作権等管理事業の)「登録制」に改めることにより新規参入を容易にすることにあったと言って良いだろう。

 しかし、ジャンルによって状況が異なることにも注意する必要があるが、この法改正の施行後10年を経てもあまり新規参入が進んでいないという現状を見る限り、当時の法改正ではやはり不十分だったと言わざるを得ない。要するに、著作権等管理事業において新規参入を容易にしたといいながら、実際のところ、そこまで容易になっておらず、元の規制から存在していた独占による弊害を防ぐ措置も不十分なのである。

 さらに言えば、許可制を登録制とすることで文化庁の関与は多少は弱まったが、なお文化庁の影響力を排除できていないこと、利用者の意見聴取に関する規定等が不十分であること、特に、指定著作権等管理事業者と使用料規程に関する協議が可能な利用者代表の要件が厳しすぎ、この協議を求めることが非常に困難となっていることなどが利用者から見た大きな問題点としてあげられるだろう。

 このような問題点についてどのような対策があり得るかについては人によって考えが分かれるところだろうが、最後に載せたパブコメを読んで頂ければ分かるように、私はさらに法改正を一歩進めて自由な競争を促した方が良いと思っている。

 場合によっては法改正によって別の弊害が発生する可能性も考えられなくもないが、プラーゲ旋風の時代でもあるまいし、ただでさえジャンルによって独占による弊害が目につく中で、私がパブコメで書いた程度のことを実行したからといってそこまで大きな問題が発生するとは私には思えない。かえって、今の時代なら、より自由な競争を促すことで、利用者も権利者もともに得るところがあるだろうと私は思っているが、このパブコメも一方当事者の著作権管理団体とずぶずぶの関係にある文化庁が処理するというのでは、その真剣な検討にあまり期待が持てないのが残念である。

(以下、提出パブコメ。なお、私は他の条文についても書いているが、意見募集要項を見れば分かる通り、パブコメ自体は8つの条文・項目のみについて募集されていることにご注意頂きたい。)

(1)著作権等管理事業の登録(第3条)について
 2009年の文化庁・文化審議会におけるダウンロード違法化の検討において、8千件以上のパブコメの7割方で示された国民の反対・懸念は完全に無視され、法改正が強行されたが、このような一方当事者である著作権等管理事業者のみに有利な非道極まる法改正が再びなされないようにするためにも、文化庁と著作権等管理事業者の間の不透明な関係は完全に断ち切るべきであり、第3条以下の全ての届出・登録先を例えば内閣府として、著作権等管理事業法を完全に文化庁の所管から外すべきである。

 この点において、信託業法の平成16年法改正により、著作権を含む知的財産の信託が信託業法の対象となっていること、平成18年の公益法人制度改革関連法改正により、主務官庁制が廃止され、法人の公益認定の申請先が内閣総理大臣とされたことなども考慮されてしかるべきである。

 また、さらに、文化庁と著作権等管理事業者の間の不透明な関係を完全に断ち切るために、天下りを受け入れた団体は、著作権等管理事業を営むことができないとされるべきである。具体的には、著作権等管理事業法の第6条の登録を拒否される団体の要件として、第1項第5号の役員規制に「文化庁において職員であった者」を追加し、第7号として「職員のうちに文化庁において職員であった者のある法人」を追加し、文化庁から著作権管理団体への天下りを完全に禁止するべきである。

(2)使用料規程の届出(第13条)について
 著作権等管理事業法第13条第2項において、「著作権等管理事業者は、使用料規程を定め、又は変更しようとするときは、利用者又はその団体からあらかじめ意見を聴取するように努めなければならない」と利用者への聴取が努力規定とされているが、利用者に対する使用料規程の重要性を考慮し、「利用者又はその団体からあらかじめ意見を聴取しなければならない」と利用者への事前聴取をきちんとした義務にするべきである。同時に、施行規則第14条の規定も、「意見を聴取したことを疎明する書面を提出しなければならない」と改めるべきである。

 同条第3項において、「著作権等管理事業者は、第1項の規定による届出をしたときは、遅滞なく、その届出に係る使用料規程の概要を公表しなければならない」と、届出の場合に遅滞なく公表するのは概要のみで良いとされているが、同じく、利用者に対する使用料規程の重要性を考慮し、この条文から「の概要」を削除し、使用料規程全体が遅滞なく公表されるようにするべきである。ここで、インターネットによる公開が最も簡便で多くの人に閲覧可能となることを考え、施行規則において、この公表は、原則としてインターネットによる公開により行わなければならないと定めるべきである。

 また、施行規則第18条において定められている法第15条の公示についても、同じく、インターネットによる公開を原則とするべきである。

(3)その他
(協議及び裁定(第23条及び第24条)について)
 著作権等管理事業法第23条及び第24条において、使用料の総額が相当の割合である等の場合に指定される著作権等管理事業者と利用者代表との間の協議・裁定等を規定している。さらに、施行規則第21条において、利用者代表と認められるためには、少なくとも、利用者比率及び使用料比率がともに20%を超えることが必要と定めている。

 しかし、利用者代表となるのに必要とされる利用者比率及び使用料比率はあまりにも大きく、この協議及び裁定制度が実効あるものとなっていない。指定著作権等管理業者が徴収において相当のシェアを有することことを考慮し、協議は、比率から代表と認められる者に限らず利用者であれば誰でも求めることが可能とするべきである。また、使用料規程について著作権等管理事業者間での協議が必要になることもあり得るため、指定著作権等管理業者に対しては他の著作権等管理事業者も協議を求められるとするべきである。また、指定における事業者シェアの「相当の割合」の基準を施行規則で明確に規定するべきである。

 そして、現状の文化庁と既存の著作権等管理事業者の関係を考慮すると、命令や裁定を求める先として文化庁長官は適切でなく、文化庁の文化審議会を裁定の諮問機関とすることも適切でない。このようなシェアの大きな事業者と利用者又は他の事業者の間の争いが主として独占に関わる問題となることを考え、利用者又は他の著作権等管理事業者が協議を求めたにもかかわらず指定著作権等管理事業者が当該協議に応じず、又は協議が成立しなかった場合には、当事者は、使用料規程について消費者庁長官の裁定を申請することができるとされるべきである。同時に、諮問機関を消費者庁の審議会に移し、さらに、消費者庁は、必要があると認めるときは、意見を附して事件を公正取引委員会に移すことができるとされるべきである。協議及び裁定の濫発防止は、裁定に適切なコストを設定することで可能であると考える。

(著作物等の円滑な利用を阻害するおそれがあると認める場合(施行規則第15条)について)
 施行規則第15条において、使用料規程が著作物等の円滑な利用を阻害するおそれがあると認める場合が規定されているが、相当高いシェアを有する著作権等管理事業者によって包括許諾契約がなお行われている現状を考慮し、第5号として、シェアを考慮していない包括許諾の場合も類型として追加するべきである。

(著作物及び利用方法に関する情報の提供(第17条)について)
 法第17条において、「著作権等管理事業者は、著作物等の題号又は名称その他の取り扱っている著作物等に関する情報及び当該著作物等ごとの取り扱っている利用方法に関する情報を利用者に提供するように努めなければならない」とされ、著作物及び利用方法に関する情報の提供が努力義務とされているが、情報技術の発展により情報の提供が容易になっていることを考慮し、この規定を「利用者に提供しなければならない」として、このような情報の提供をきちんと義務化するべきである。

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コメント

件のTPPが知的財産関係も含んでいるとの記事です

http://internet.watch.impress.co.jp/docs/special/fukui/20111031_487650.html

投稿: 迷い人 | 2011年11月 1日 (火) 12時43分

迷い人様

コメントありがとうございます。
私もTPPに関する議論の行方を注視しています。

アメリカはいつも通り仕掛けて来ていると思いますが、

http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/news/CK2011103002000025.html
TPP会合 合意持ち越し 推進、慎重両派「歓迎」(東京新聞・10月30日)

の記事にもあるように、自国の知的財産規制を全て押しつけるのはさすがにアメリカでも困難と見え、実際何がどこまで協定に含まれてくるのかが全く見えないのが非常に不安です。

全体としてメリット・デメリットが良く分からないまま、日本で結論ありきの議論がなされることを私は一番懸念しています。

投稿: 兎園 | 2011年11月 2日 (水) 00時13分

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