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2011年8月 9日 (火)

第254回:民主党の新たな児童ポルノ法改正案全文の転載

 最近の動きについては「表現規制について少しだけ考えてみる(仮)」などを読んでもらえれば十分だとは思うが、念のため、ここでも民主党の新たな児童ポルノ法改正案(衆議院HPの経緯議案参照)を転載しておく。

 既に今日から衆議院法務委員会での審議に入っており、今後の動向に気をつけて行かなければならないが、この民主党の新たな法改正案は、定義の問題こそ多少残るものの、実質2ストライク法案だった前の改正案(第162回参照)と比べて、

  1. 取得罪の要件が、「有償で又は反復して取得」から「対償を供与し又はその供与の約束をして反復して取得」とされた点(「有償又は反復」か「有償かつ反復」かで条件は大きく異なる。)
  2. 「架空のものを描写した漫画、アニメーション、コンピュータゲーム等」が児童ポルノ法の規制対象外であることが条文上明確にされた点、
  3. 「専ら医学その他の学術研究の用に供するもの」に対する適用除外が設けられた点、
  4. 附則で、児童ポルノの取得・所持等を処罰する地方条例規定の失効を規定した点、
  5. 製造罪において、複製して製造する場合が除かれた点(マニアックな点なので、あまり騒がれていなかったが、製造罪において「姿態をとらせ」の要件を除く場合、このように複製を除かないと、単なる複製が製造とされ得るため、製造罪で実質的に単純所持・取得罪と同じ行為が処罰されるということになりかねない。)

で格段に良くなっている。民主党の先生方が、このかなり特殊な法律の問題点を理解して、このような案をまとめて下さったことを私も有り難く思う。(自公案については、前と同じで全くお話にならないが。)

 震災後の延長国会で何故児童ポルノ法の改正を審議をするのかという根本的な疑問は拭えないが、審議するのであれば、与野党の間で修正協議と称して密室協議に入ることなく、きちんと公開される国会の場で、現行法の問題点についても含め、徹底的な議論がなされることを願っている。今日の衆議院法務委員会(衆議院のインターネット審議中継参照)は主旨説明だけだったが、今後の各党の動向や次回以降の法務委員会の審議には、本当に要注意である。

(以下、法改正案の転載。)

(1)理由
 児童ポルノに係る問題により適切に対処するため、児童ポルノの定義を明確化するとともに、みだりに児童ポルノを有償でかつ反復して取得すること等を処罰する規定を設けることとし、あわせて心身に有害な影響を受けた児童の保護に関する施策を推進する必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

(2)要綱
第一 児童ポルノの定義の明確化等

 児童ポルノ等の定義からの学術研究の用に供するものの除外(第二条第三項並びに新第七条第一項及び第三項関係)
 児童ポルノ及びこれに係る電磁的記録等の定義から「専ら医学その他の学術研究の用に供するもの」を除くこと。

 児童ポルノの定義の明確化(第二条第三項第二号及び第三号関係)
 いわゆる二号ポルノの定義を「他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって殊更に性欲を興奮させ又は刺激するもの」に、いわゆる三号ポルノの定義を「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、児童の性的な部位(性器等若しくはその周辺部、臀部又は胸部をいう。)が露出され又は強調されているものであり、かつ、殊更に性欲を興奮させ又は刺激するもの」に改めること。

第二 適用上の注意規定の明確化等
 適用上の注意規定の明確化(第三条第一項関係)
 この法律の適用に当たっては、学術研究、文化芸術活動、報道等に関する国民の権利及び自由を不当に侵害しないように留意し、児童に対する性的搾取及び性的虐待から児童を保護しその権利を擁護するとの本来の目的を逸脱して他の目的のためにこれを濫用するようなことがあってはならないものとすること。

 解釈規定の新設(第三条第二項関係)
 この法律のいかなる規定も、架空のものを描写した漫画、アニメーション、コンピュータゲーム等を規制するものと解釈してはならないものとすること。

第三 児童ポルノ等取得罪の新設等
 児童ポルノ等取得罪の新設(新第七条第一項及び第十条関係)
 みだりに、児童ポルノを対償を供与し又はその供与の約束をして反復して取得した者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処するものとすること。みだりに、これに係る電磁的記録等を対償を供与し又はその供与の約束をして反復して取得した者も、同様とすること。
 1に係る国民の国外犯は、これを処罰するものとすること。

 児童ポルノ製造罪の処罰範囲の拡大(新第七条第四項関係)
 提供目的以外の児童ポルノの製造の罪について、意図的に児童に一定の姿態をとらせて製造した場合に限らず、盗撮等の場合にも処罰範囲を拡大すること。

第四 心身に有害な影響を受けた児童の保護に関する制度の充実及び強化
 心身に有害な影響を受けた児童の保護のための措置を講ずる主体及び責任の明確化(第十五条関係)
 心身に有害な影響を受けた児童の保護のための措置を講ずる主体として、厚生労働省、法務省、都道府県警察、児童相談所及び福祉事務所を例示し、措置を講ずる主体及び責任を明確化すること。

 心身に有害な影響を受けた児童の保護に関する施策の検証等(新第十七条関係)
 社会保障審議会及び犯罪被害者等施策推進会議は、相互に連携して、児童買春の相手方となったこと、児童ポルノに描写されたこと等により心身に有害な影響を受けた児童の保護に関する施策の実施状況等について、当該児童の保護に関する専門的な知識経験を有する者の知見を活用しつつ、定期的に検証及び評価を行うものとすること。
 社会保障審議会又は犯罪被害者等施策推進会議の厚生労働大臣又は関係行政機関に対する意見具申及び意見具申があった場合の厚生労働大臣又は関係行政機関が講ずる措置に関する規定を置くこと。

第五 施行期日等
 施行期日(附則第一条関係)
 この法律は、公布の日から起算して二十日を経過した日から施行すること。

 罰則に関する経過措置(附則第二条関係)
 この法律の施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例によること。

 条例との関係(附則第三条関係)
 地方公共団体の条例の規定で、児童ポルノを取得し、又は所持する行為、これに係る電磁的記録等を取得し、又は保管する行為等を処罰する旨を定めるものの当該行為に係る部分は、この法律の施行と同時に、その効力を失うものとすること。
 1により条例が効力を失う場合において、当該地方公共団体が条例で別段の定めをしないときは、その失効前にした行為の処罰については、なお従前の例によること。

 その他
 その他所要の規定の整備を行うこと。

(3)法改正案(赤字強調部分が追加部分)
(前略)

(定義)
第二条
 この法律において「児童ポルノ」とは、写真、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に係る記録媒体その他の物であって、次の各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したもの(専ら医学その他の学術研究の用に供するものを除く。)をいう。
 児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態
 他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって殊更に性欲を興奮させ又は刺激するもの
 衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、児童の性的な部位(性器等若しくはその周辺部、臀部又は胸部をいう。)が露出され又は強調されているものであり、かつ、殊更に性欲を興奮させ又は刺激するもの

(適用上の注意)
第三条  この法律の適用に当たっては、国民の権利を不当に侵害しないように留意しなければならない。

(適用上の注意等)
第三条 この法律の適用に当たっては、学術研究、文化芸術活動、報道等に関する国民の権利及び自由を不当に侵害しないように留意し、児童に対する性的搾取及び性的虐待から児童を保護しその権利を擁護するとの本来の目的を逸脱して他の目的のためにこれを濫用するようなことがあってはならない。

2 この法律のいかなる規定も、架空のものを描写した漫画、アニメーション、コンピュータゲーム等を規制するものと解釈してはならない。

(中略)

(児童ポルノ取得、提供等)
第七条 みだりに、児童ポルノを対償を供与し又はその供与の約束をして反復して取得した者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。みだりに、電気通信回線を通じて第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録(専ら医学その他の学術研究の用に供するものを除く。次項及び第五項において同じ。)を対償を供与し又はその供与の約束をして反復して取得した者も、同様とする。

 児童ポルノみだりに、児童ポルノを提供した者は、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。電気通信回線みだりに、電気通信回線を通じて第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を提供した者も、同様とする。

 前項に掲げる行為の目的で、みだりに、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録(専ら医学その他の学術研究の用に供するものを除く。第六項において同じ。)を保管した者も、同様とする。

 前項に規定するもののほか、児童に第二条第三項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ、これを写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係るみだりに、児童ポルノを製造(これを複製して製造する場合を除く。)した者も、第一項第二項と同様とする。

 児童ポルノみだりに、児童ポルノを不特定若しくは多数の者に提供し、又は公然と陳列した者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。電気通信回線みだりに、電気通信回線を通じて第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を不特定又は多数の者に提供した者も、同様とする。

 前項に掲げる行為の目的で、みだりに、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。

 第四項第五項に掲げる行為の目的で、みだりに、児童ポルノを外国に輸入し、又は外国から輸出した日本国民も、同項と同様とする。

(中略)

(児童の年齢の知情)
第九条 児童を使用する者は、児童の年齢を知らないことを理由として、第五条から前条まで、第六条、第七条第二項から第七項まで及び前条の規定による処罰を免れることができない。ただし、過失がないときは、この限りでない。

(国民の国外犯)
第十条  第四条から第六条まで、第七条第一項から第五項第六項まで並びに第八条第一項及び第三項(同条第一項に係る部分に限る。)の罪は、刑法 (明治四十年法律第四十五号)第三条 の例に従う。

(中略)

(教育、啓発及び調査研究)
第十四条 国及び地方公共団体は、児童買春、児童ポルノの取得、提供等の行為が児童の心身の成長に重大な影響を与えるものであることにかんがみ鑑み、これらの行為を未然に防止することができるよう、児童の権利に関する国民の理解を深めるための教育及び啓発に努めるものとする。
 国及び地方公共団体は、児童買春、児童ポルノの取得、提供等の行為の防止に資する調査研究の推進に努めるものとする。

(心身に有害な影響を受けた児童の保護)
第十五条 関係行政機関厚生労働省、法務省、都道府県警察、児童相談所、福祉事務所その他の国、都道府県又は市町村の関係行政機関は、児童買春の相手方となったこと、児童ポルノに描写されたこと等により心身に有害な影響を受けた児童に対し、相互に連携を図りつつ、その心身の状況、その置かれている環境等に応じ、当該児童がその受けた影響から身体的及び心理的に回復し、個人の尊厳を保って成長することができるよう、相談、指導、一時保護、施設への入所その他の必要な保護のための措置を適切に講ずるものとする。

 関係行政機関は、前項前項の関係行政機関は、同項の措置を講ずる場合において、同項の児童の保護のため必要があると認めるときは、その保護者に対し、相談、指導その他の措置を講ずるものとする。

(心身に有害な影響を受けた児童の保護に関する施策の検証等)
第十七条 社会保障審議会及び犯罪被害者等施策推進会議は、相互に連携して、児童買春の相手方となったこと、児童ポルノに描写されたこと等により心身に有害な影響を受けた児童の保護に関する施策の実施状況等について、当該児童の保護に関する専門的な知識経験を有する者の知見を活用しつつ、定期的に検証及び評価を行うものとする。

2 社会保障審議会又は犯罪被害者等施策推進会議は、前項の検証及び評価の結果を勘案し、必要があると認めるときは、当該児童の保護に関する施策の在り方について、それぞれ厚生労働大臣又は関係行政機関に意見を述べるものとする。

3 厚生労働大臣又は関係行政機関は、前項の意見があった場合において必要があると認めるときは、当該児童の保護を図るために必要な措置を講ずるものとする。

(国際協力の推進)
第十七条第十八条 国は、第四条から第八条までの罪に係る行為の防止及び事件の適正かつ迅速な捜査のため、国際的な緊密な連携の確保、国際的な調査研究の推進その他の国際協力の推進に努めるものとする。

(4)附則
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から起算して二十日を経過した日から施行する。

(経過措置)
第二条 この法律の施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。

(条例との関係)
第三条 地方公共団体の条例の規定で、この法律による改正後の児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(以下この項において「新法」という。)第二条第三項に規定する児童ポルノを取得し、若しくは所持する行為、新法第七条第一項に規定する電磁的記録その他の記録を取得し、若しくは保管する行為又は新法第七条第四項の規定に違反する行為を処罰する旨を定めているものの当該行為に係る部分については、この法律の施行と同時に、その効力を失うものとする。

 前項の規定により条例の規定がその効力を失う場合において、当該地方公共団体が条例で別段の定めをしないときは、その失効前にした違反行為の処罰については、その失効後も、なお従前の例による。

(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律の一部改正)
第四条 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(昭和二十三年法律第百二十二号)の一部を次のように改正する。
 第三十五条及び第三十五条の二中「第七条」を「第七条第二項から第七項まで」に改める。

(厚生労働省設置法の一部改正)
第五条 厚生労働省設置法(平成十一年法律第九十七号)の一部を次のように改正する。
 第七条第一項第四号中「(昭和二十二年法律第百六十四号)」の下に「、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(平成十一年法律第五十二号)」を加える。

(組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律の一部改正)
第六条 組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(平成十一年法律第百三十六号)の一部を次のように改正する。
 別表第七十号中「第七条第四項から第六項まで」を「第七条第五項から第七項まで」に改める。

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