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2011年1月 6日 (木)

第246回:文化庁・著作権分科会・法制問題小委員会「技術的保護手段に関する中間まとめ」に対する提出パブコメ

 第243回で取り上げた、文化庁のDRM回避規制強化に関するパブコメ(1月7日〆切。文化庁HP電子政府の該当ページ参照)も提出したので、いつも通りの内容だが、念のため、ここに載せておく。

 次回は、今書いているところの、同時並行でかかっている経産省の方のDRM規制強化パブコメ(第244回参照)の提出エントリになるのではないかと思う。

(以下、提出パブコメ)

(1)「第1章 現行の技術的保護手段の規定について」について
○該当項目および頁数:◆第1章【2頁~6頁】

○意見:
 第6ページに、模倣品・海賊版拡散防止条約(ACTA)に対する言及があるが、ユーザーの情報アクセスに対するリスクを不必要に高める危険なものとしかなり得ない規制強化条項を含めむ条約交渉を、何ら国民的なコンセンサスを得ない中で、一部の者の都合から政府が勝手に行うなどおよそ論外であり、私は一国民として、このACTAの署名・批准に反対する。

 ここで、このような不透明な条約の検討に基づいて「国際的にもアクセスコントロールの回避規制に対する取組をより強化するべきとの方向にある」などと一方的に決めつけるべきではなく、特に、最終まとめにおいては、条文案と現行の国内法の詳細な比較検討を行った上で、このような不透明な条約交渉の濫用による規制強化の危険性を明確に認め、ACTAやDRM回避規制について国内外で批判もあることを明記し、日本政府として署名・批准は行わないとするべきである。

 また、同時に、国際的な議論に関し、DRM回避規制の強化による情報アクセスに関する国民の基本的な権利の侵害の危険性について国際的な場で日本政府から積極的に議論を提起するべきである。

(2)「第2章 技術的保護手段の在り方について」について
○該当項目および頁数:◆第2章【7頁~15頁】

○意見:
 第7ページの脚注7において、CESAの「違法複製ゲームソフトの使用実態調査報告書」(http://www.cesa.or.jp/uploads/2010/ihoufukusei.pdf)を引用しているが、この実態調査報告書は、東南アジア・南米出身の20代男女5人のみに対する聞き取り調査をユーザーのアクセスコントロールの回避行為の実態としたり、良く分からない基準で選んだサイトのアクセスカウンターのカウント数のみから被害額を推計したりするなど、法改正の前提とされることなどおよそ考えられないデタラメな実態調査であり、最終まとめにおいてはこの脚注は削除するべきである。最低でも一方当事者のみによるものでない、ある程度信頼のおける客観的な実態調査をまず行うべきである。(この脚注の実態調査等があまりに酷いので念のために書いておくが、言うまでもなく、このような調査の際、違法アップロード又は違法ダウンロードによる被害と、DRM回避機器による被害は混同されるべきでないものである。)

 そして、第9ページ以下の「2 基本的な考え方」と第11ページ以下の「3 保護技術の実態とその評価」で、「ゲームに用いられている保護技術をアクセスコントロール技術として整理し」(第11ページ)、「『フラグ型』技術等に加え、CSS等の『暗号型』技術についても、保護技術の『技術』の側面のみならず、当該『技術』が、契約の実態等とも相まって、社会的にどのように『機能』しているのかという点も含めて評価することにより、技術的保護手段の対象とすることが適当」(第15ページ)で、「ゲーム機・ゲームソフト用の保護技術については、(中略)当該保護技術が社会的にどのように『機能』しているかという観点から着目すれば、複製等の抑止を目的とした保護技術と評価することが可能」(第15ページ)である等の整理を行っているが、このような整理は今までの著作権法と不正競争防止法の法的整理を完全に無視し、DRM技術に関する本質的な理解を欠いており、法改正の前提として全く取るに値しない。

 この中間まとめ中でまず問題とされているのは、CSSのような暗号のみによるタイプのDRM技術・アクセスコントロール技術の取り扱い取り扱いであるが、アクセスコントロール技術あるいはアクセスコントロール回避機器等は、既に制度導入当初から不正競争防止法の規制対象とされているのであり、加えて著作権法で規制をかけることは、将来的に著作権法の本来の法目的に照らして規制すべきでない物や行為にまで規制が及ぶ危険を高めることにしかならない。制度導入以来立法事実に変化がないことに照らしても、著作権法の法目的に照らしてもこのような法改正はなされるべきではない。

 さらに言えば、この中間まとめに書かれているようにアクセスコントロール技術をコピーコントロール機能を有するか否かという観点からきちんと評価することが可能かという点からして疑問である。オンラインゲームのアクセスコントロールにしても送信データのコピーを抑止していないとできるかどうか疑問であるし、動画配信等も含め、暗号化のみのDRMによりデータを送信する場合にそれがアクセスをコントロールするものであるのか、コピーをコントロールするものであるのかの評価は非常に難しく、暗号によるもの等のアクセスコントロール技術を著作権法の対象とすることは、本来著作権法の法目的に照らして規制すべきでないものも含め、実質あらゆるDRM技術が著作権法上の技術的保護手段に含まれることになりかねない危険なことであると言わざるを得ない。

 特に、本中間まとめはCSS等を回避して行う私的複製を規制しようとしているものと思えるが、ダウンロード違法化におけるパブコメにおいても大多数の意見で指摘されていた通り、捕捉不可能な家庭内の私的複製行為を規制しようとする発想自体間違っている。コンテンツへのアクセスあるいはコピーをコントロールしている技術を私的な領域で回避しただけでは経済的損失は発生し得ず、また、ネットにアップされることによって生じる被害は公衆送信権によって既にカバーされているものであり、その被害とDRM回避やダウンロードとを混同することは許されない。それ以前に、私法である著作権法が、私的領域に踏み込むということ自体異常なことと言わざるを得ない。かえって、著作権法において、私的領域におけるコピーコントロール回避やダウンロードまで違法とすることで、著作権法全体に関するモラルハザードとデジタル技術・情報の公正な利活用を阻む有害無益な萎縮効果が生じているのではないかと考えられる。この点でもさらなる規制強化をするべきではなく、逆に、パブコメ等で示された民意を完全に踏みにじり、文化庁の偏見・暴走と国会議員の無知から一方的に導入されたものである、私的領域でのコピーコントロール回避規制条項(著作権法第30条第1項第2号)及びダウンロード違法化条項(同著作権法第30条第1項第3号)の速やかな撤廃こそ行うべきである。

 また、この中間まとめでは、ゲーム機、特にニンテンドーDSに用いられるいわゆるマジコンと呼ばれるDRM回避機器の取り扱いも問題とされているが、マジコンには通常ゲームプログラムの複製機能を有するものもあり、特に問題とされているニンテンドーDSで用いられている保護技術が既に著作権法の対象となっているフラグ型の技術であることを考えれば、マジコンは、既に不正競争防止法の規制対象であるだけでなく、技術的保護手段に用いられている信号の除去又は改変を行うコピーコントロール回避専用装置を含むとして現行の著作権法の規制対象となり得るものがあるとも考えられる。しかし、本中間まとめは、マジコンを大した根拠もなく一方的に著作権法の規制対象外と決めつけ、さらに不正競争防止法による対応の可能性についても等閑視するなど、コンテンツ保護のためにどのような技術が用いられているのか、その回避のために具体的にどのような装置等が使用されているのか、そのうち何が現行の著作権法と不正競争防止法で規制対象となっており、何がなっていないのかという観点からの技術と法律に関する整理・検討が全く不十分であり、規制強化を正当化するに足る合理的な理由がどこにあるのかさっぱり分からないお粗末さである。

 なお、アクセスコントロール回避機器等の条件付きでの製造規制、その譲渡等への罰則付加については議論の余地がなくはないだろうが、不正競争防止法の枠内で議論すれば済む話である上、2009年2月にDRM回避機器についてゲームメーカー勝訴の判決が出ていることなどを考えても、現時点で、現状の規制では不十分とするに足る根拠は全くないと私は考えている。

 第2章の法改正の前提とするには到底足らないお粗末極まる整理は全て白紙に戻し、DRM技術とその回避技術を技術的・法的見地からきちんと網羅的に分類し直し、不正競争防止法の規制も含めて現行の規制で本当に何が不十分とされるのかという観点から全面的に再検討を行い、その再検討において現行規制で不十分な具体的ケースが想定されない限り、最終まとめにおいて規制強化はしないとするべきである。

(3)第3章「技術的保護手段の定義規定等の見直し」について
○該当項目および頁数:◆第3章【16頁~17頁】

○意見:
 ここでも、「CSS等の『暗号型』技術やゲーム機・ゲームソフト用の保護技術については、単に暗号化されたコンテンツやゲームソフトを複製しただけでは、当該複製物を使用できない点において複製の抑止と評価できることから、現行の定義規定中の『抑止』との関係について、どのように評価するか検討する必要があり、必要に応じ、規定の見直しを行う」(第16ページ)、「CSS等の『暗号型』技術の場合には、著作物等そのものを暗号化しており、特定の反応をする信号を著作物等とともに記録媒体に記録又は送信する方式ではなく、そうした技術については現行規定では対応できないため、現行の定義規定中の『方式』の見直しが必要」(第17ページ)、「現行の『方式』の規定の見直しとともに、また、CSS等の『暗号型』技術やゲーム機・ゲームソフト用の保護技術の回避の実態を踏まえ、『回避』の規定についても見直すことが必要」(第17ページ)等と第2章と同様の整理が書かれているが、第2章への意見で書いた通り、このような不合理極まる整理に基づく法改正などされるべきではない。

 第2章への意見で書いたことの繰り返しになるが、アクセスコントロール技術とその回避機器等については、制度導入当初から不正競争防止法で対応することとされているのであり、以来立法事実の変化がないことに照らしても、著作権法の法目的に照らしてもこのような法改正はなされるべきではなく、私的複製との関係においても捕捉不可能な家庭内の私的複製行為を規制しようとする発想自体間違っており、この点でもさらなる規制強化をするべきではなく、ゲーム機用DRM回避機器であるマジコンについても現行の不正競争防止法と著作権法による対応が可能であり、規制強化を是とするに足る合理的根拠は全くないと考えられるのである。

 第3章も白紙に戻し、第2章の再検討に合わせ、同じく現行規制では不十分な具体的ケースが想定されない限り、最終まとめにおいて規制強化はしないとするべきである。

(4)報告書案全体について
○該当項目および頁数:報告書案全体

○意見:
 本中間まとめは、その検討メンバーから見ても技術的なことまで含めて本当にきちんとした議論がなされたとは思えず、例によって、ほとんど規制強化の結論ありきで屁理屈をこねているとしか思えない、法改正の前提とするには到底足らないお粗末なものである。このようなデタラメな報告書はほぼ完全に白紙に戻し、基本的な事実の確認から全面的に再検討を行うべきである。

 最後に念のため、各章への意見で書いたことの概要を箇条書きで以下に書いておく。

・アクセスコントロール技術及びその回避機器の規制等を著作権法に含めるような、本来の法目的に照らして適切でない物や行為にまで規制が及びかねない、根拠のない危険な規制強化に反対する。

・私的領域での複製について新たな規制強化がなされるべきでないのは無論のこと、ダウンロード違法化に関する過去の経緯、著作権法全体に関するモラルハザードとデジタル技術・情報の公正な利活用を阻む有害無益な萎縮効果等を考慮し、私的領域でのコピーコントロール回避規制条項(著作権法第30条第1項第2号)及びダウンロード違法化条項(同著作権法第30条第1項第3号)を速やかに撤廃することを求める。

・何ら国民的なコンセンサスを得ない中で秘密裏に交渉が進められた、このような危険な規制強化しかもたらさない、海賊版対策条約(ACTA)の署名・批准に反対する。

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