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2011年1月10日 (月)

第247回:経産省・技術的制限手段に係る規制の在り方に関する小委員会「技術的制限手段に係る不正競争防止法の見直しの方向性について(案)」に対する提出パブコメ

 ややこしいこと極まりないが、第244回で取り上げた経産省の方のDRM回避規制強化に関するパブコメ(1月21日〆切。電子政府の該当ページ参照)も書いて提出したので、念のため、ここに載せておく。

(以下、提出パブコメ)

・該当箇所
(1)「Ⅱ 「のみ要件」の見直しなど技術的制限手段回避装置等の提供行為に係る民事規定の適正化について」(第4~9ページ)について

(2)「Ⅵ 技術的制限手段回避装置等の提供行為に対する刑事罰の導入について」(第17~21ページ)について

(3)「Ⅶ 技術的制限手段回避装置等に対する水際措置の導入について」(第22~23ページ)について

(4)その他報告書案全体について

・意見内容
(1)本項目Ⅱにおいて、不正競争防止法上のDRM回避機器等の規制における「のみ」要件を「専ら」要件へ変更するとしているが、制度導入以来立法事実に変化がないことを考慮し、このような要件の変更についてより慎重な検討を求める。

(2)本項目Ⅵにおいて、技術的制限手段回避装置等の提供行為について刑事罰を導入するとしているが、現行規制における民事救済では不十分とする合理的根拠のない中での、このような刑事罰付加による規制強化に反対する。

(3)本項目Ⅶにおいて、技術的制限手段回避装置等に対する水際措置を導入するとしているが、刑事罰導入の検討との関係を踏まえ、より慎重な検討を求める。

(4)不合理な規制強化の背景と思われる模倣品・海賊版拡散防止条約(ACTA)の署名・批准に反対する。最終的な報告書のとりまとめにおいては、合理的な根拠のない法改正はしないとするべきである。

・理由
(1)「Ⅱ 「のみ要件」の見直しなど技術的制限手段回避装置等の提供行為に係る民事規定の適正化について」(第4~9ページ)において、「技術的制限手段を回避する機能の他に、追加的に他の機能が付されているために『のみ』要件を欠くと称する装置等が氾濫しており、コンテンツ事業に甚大な被害を与えていると指摘されている」として、そのような機器の例にマジコンや画像安定化機能付きコピーガードキャンセラー等をあげ、現行のDRM回避機器等における「のみ」要件を「専ら」要件にする方向で見直すとしている。

 しかし、例としてあげられているマジコンについては既に2009年2月の東京地裁の判決によって現行規制の対象とする司法判断が示されているのであり(本報告書案の注18の判決である)、これを大した根拠もなく現行規制の対象外とするかの如き整理は行政の報告書の整理として極めて不適切である。今のところ、このような司法判断を立法によりオーバーライドしなければならないとする合理的根拠は何一つない。わざわざ司法判断まで示されている中で法改正を行うことは、かえって規制対象をいたずらに不明確にする恐れが強い。また、画像安定化装置についても制度導入当初から存在していた機器であり、このような機器の存在も法改正の根拠とはならない。

 現行規制の「のみ」要件の見直しについては、制度導入以来立法事実に変化がないことを考慮し、より慎重な検討を求める。この点について、今後の検討において新たな根拠が示されない限り法改正はしないとするべきである。マジコンが問題であるならば、行政として、マジコンが既に現行規制の対象であることを周知する等の地道な施策をまずきちんと行うことで対処するべきである。

 なお、本項目において、「のみ」要件を「専ら」要件へ変更した際の無反応機器の取り扱いについて、「『のみ』要件を見直した場合においても、上述のとおり装置等の利用者の利用実態、販売者の販売態様などの事情を総合的に考慮し、営業上用いられる技術的制限手段の回避を中核的な機能とするものであるか否かで判断されるため、無反応機器について徒らに規律対象になることは想定されない」(第7ページ)としているが、無反応機器を規制対象外とする解釈が担保される明確な根拠はなく、無反応機器との関係でも「専ら」要件への変更は規制対象を不明確にするものと言わざるを得ない。無反応機器との関係でも、要件の変更はより慎重に検討されなくてはならない。

(2)「Ⅵ 技術的制限手段回避装置等の提供行為に対する刑事罰の導入について」(第17~21ページ)において、露店販売とネットショップ等への対応が民事救済だけでは困難ということを理由として、現行の不正競争防止法第1項第10号及び第11号で規定されている技術的制限手段回避装置等の提供行為を一定の要件を付加して刑事罰の対象とする方向で検討するとしている。

 しかし、露店販売やネットショップが本当にどこまで被害をもたらしているのか、ネット販売等についてプロバイダーとの協力体制の構築やプロバイダー責任制限法を用いた対応等も含めて本当に対応が難しいのか、今まで民間事業者がこの権利行使のためにどれほどのコストをかけてきてそれが本当に事業者にとって不当な負担と言えるほどのものになっているのかといった点での検討は極めて不十分である。

 例えば、第17ページで「実際の住所すら存在しないものとして、露天販売の形式を取る業者も出てきている。特に、露天商らは暴力団らと繋がっている可能性が極めて高く、権利者らが露天商らを尾行して追跡することは身体的な危険を伴う」としているが、このような決めつけには何の根拠もない。極めて局地的な販売形態である露店販売によってそこまで大きな被害が発生しているとも思えず、販売形態が露天であるからといって民事救済だけでは対応できないとする法的整理も不可解である。また、露天商がほぼ暴力団と繋がっているとすること自体疑問だが、本当に暴力団と繋がっている違法露天商がいるのであれば、今現在においても、そのような露天商又は暴力団に対して警察等と協力して対処することも不可能ではないだろう。

 第17~18ページでは、ネットショップについて、「ネット販売では特定商取引法上の販売者情報の記載が必要とされているが、店舗情報が全く記載されていない、記載されていても虚偽である、仮名や親族の名前を用いている、住所が途中までしか記載されていないなど様々なケースが存し、権利者が販売者を特定することは極めて困難である。さらに、大半のケースでは商業登記もなされておらず、違反行為者を特定することができないために、警告書(内容証明)の発送すら不可能なケースが多い」としているが、これらは特定商取引法、商業登記法、商法、会社法、プロバイダー責任制限法等の問題であって、不正競争防止法の問題ではない。このように他の法律の問題を不正競争防止法に押しつけるのは不適切である。

 そして、第18ページに、民事的救済の抑止効果に関する問題点として、「判決が当該事件の当事者に対して拘束力が発生するのみで、類似行為を行う者に対しては何らの効力が及ばないため、販売の差止めを命じる判決が出た後も、『訴えられていないから』との理由で、販売を継続するものが後を絶たない。また、短期間に開店と閉店を繰り返し、被告として特定されることを逃れる者なども現れている。ある時点で民事的救済が得られたとしても、その後店舗名や代表者名が変更されると、『行為者が異なる』との反論が可能となり、判決の効力が及ばなくなってしまう」と書いているが、このような判決の効力・拘束力の問題は民事訴訟法一般の問題であって、やはり不正競争防止法の問題とは言い難い。普通の良心的な業者については、現行の規制においてもマジコンは対象であり、その販売は違法であることを周知する等の地道な施策のみを行政においてはまず行うべきであるし、規制逃れのために短期間に開店と閉店を繰り返したり、店舗名や代表者名を頻繁に変更したりするような悪質な業者に対しては、現行の民事訴訟法、民事執行・保全法や民・刑法等も含めて本当に対処できないのかという観点からきちんと議論を行うべきである。

 現行の特定商取引法、商業登記法、商法、会社法、プロバイダー責任制限法、民事訴訟法、民事執行・保全法や民・刑法等によりここであげられているような問題に対応できないとする理由はなく、あるいは、仮にこれらの法令に不備があったとしても、それぞれの法改正によって対応するべき話であって、いずれにせよ、拙速に不正競争防止法の改正を行うべきではない。

 今後の検討においては、このような一方的な決めつけによる法的整理を改め、まず、他の法令も含めて現行規制では対応できない状況・立法事実が本当に新たに生じているのかという観点からきちんと検討を行うとともに、一方当事者のみによるものでない、ある程度客観的な被害の実態調査から行うべきであり、その検討・調査において、立法事実の変化が確かにあり、特に問題とされているのだろうマジコンについて、ゲーム機メーカーの負担する権利行使コストが不当なほどのものになっていることが具体的に示されない限り、このような刑事罰の導入は行わないとするべきである。

 今のところ、現行規制における民事救済では不十分とする合理的根拠はなく、このような刑事罰付加による規制強化に反対する。

(3)「Ⅶ 技術的制限手段回避装置等に対する水際措置の導入について」(第22~23ページ)において、関税法を改正し、技術的制限手段回避装置等に対する水際措置を導入することが有効との整理がなされている。

 この項目中で、水際措置と刑事罰との関係について書かれていないが、経産省自らその財務省への平成23年度関税率・関税制度改正要望事項調査票(http://www.mof.go.jp/jouhou/kanzei/h23kaisei/keisan/h23keisan_10.pdf参照)の中で書いている通り、「ある物品を関税法において輸入禁制品とする場合には、当該物品の所持・提供・輸入行為等について、国内法令において関税法と同程度の刑事罰の対象とすることが求められている」という法的問題について、最終的な報告書では明記するべきである。

 このような問題も踏まえた上で、水際措置の導入についてより慎重に検討し、役所間のものだろう、水際措置と刑事罰の導入をリンクさせるような取り決めに合理的な根拠のないことを認め、刑事罰を導入せずに水際措置を導入できるようであれば行い、そうでなければ現時点では水際措置の導入を見送るとするべきである。

(4)その他報告書案全体について
 今年度に文化庁と経産省でDRM回避規制についてこれほど拙速な法改正の検討が同時に行われる背景には、模倣品・海賊版拡散防止条約(ACTA)の検討があるものと私には思える。本報告書案では特に言及されていないが、ユーザーの情報アクセスに対するリスクを不必要に高める危険なものとしかなり得ない規制強化条項を含む条約交渉を、何ら国民的なコンセンサスを得ない中で、一部の者の都合から政府が勝手に行うなどおよそ論外であり、私は一国民として、このACTAの署名・批准に反対する。

 情報に関する国民の基本的権利に関係し、全国民の情報アクセスに影響を与えかねないDRM回避規制に関する法改正については、きちんとした客観的な事実の確認からまず行うべきであり、最終的な報告書のとりまとめにおいては、合理的な根拠のない法改正はしないとするべきである。

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