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2010年6月17日 (木)

第231回:文化庁・法制問題小委員会「権利制限の一般規定に関する中間まとめ」(日本版フェアユース)に対する提出パブコメ

 第227回で取り上げた、文化庁・法制問題小委員会「権利制限の一般規定に関する中間まとめ(pdf)」のパブコメ(6月24日〆切。文化庁のリリース、電子政府HPの該当ページ意見募集要領(pdf)参照)に対して意見を書いて提出したので、ここに載せておく。

 また、東京都青少年健全育成条例改正問題について、昨日6月16日の東京都議会本議会において、民主党、共産党、生活者ネットワーク、自治市民の各会派の反対により、条例改正案は否決された(internet watchの記事ITproの記事)。1個人として私もこの否決は本当に嬉しく思う。私も出したいと思っているが、懸念を抱いてこの問題を追いかけて来た方々には、今回広く皆の声を拾い上げ否決に動いて下さった都議の先生方に是非直接お礼のメール等を出すことを考えて頂ければと思う。

 この条例改正案はこれで一旦廃案となるものの、石原慎太郎都知事はさらに再提出すると言っており、まだ問題は続くと考えられるが、その前に、6月24日公示、7月11日投開票で参議院選挙が控えている。今回の参院選も非常に重要であり、次回は、選挙関係のエントリにするつもりである。

(以下、提出パブコメ)

(1)「第2章 既存の個別権利制限規定等の解釈論や個別権利制限規定の改正等による解決について」(第4ページから第6ページ)
◯該当項目および頁数:
 第2章【4頁~6頁】

◯意見:
 この項目において、解釈論と改正までにかかる時間のみをここで取り上げているが、既存の個別の権利制限規定について解釈論と改正にかかる時間以前の問題として、現行の個別の権利制限規定自体非常に狭く使いにくいものとされているという問題があることを報告書中でなおざりにするのは不適切である。
 特に、ワーキングチーム報告書参考資料2の具体的要望として挙げられた中に、障害者のための利用、アーカイブのための利用、教育目的での利用など、本来既存の個別の権利制限で対応がなされているべきであった事例が多く含まれていることを重く見るべきである。このような要望が出されていることからも明らかなように、その文化に対する見識の無さから今まで権利制限を不当に狭く使いにくいものとしてのみ場当たり的に作って来たことについて文化庁の猛省を私は一国民として求める。
 既存の個別の権利制限規定について、さらに利用者・事業者等からきちんと意見を聴取した上で、不十分な点があると評価されるようであれば早急に法改正により対処するべきであり、現実問題として個別の権利制限規定の改正による対処が不可能であるとするのであれば、権利制限の一般規定をより包括的な形に規定することで対処するべきである。

(2)「第4章1(4)既存の個別権利制限規定の解釈による解決可能性がある利用への対応(5)特定の利用目的を持つ利用への対応(6)その他」(第20ページから第24ページ)
◯該当項目および頁数:
 第4章 1(4)・(5)・(6)【20頁~24頁】

◯意見:
 第4章1(5)の項目名を「特定の利用目的を持つ利用への対応」とし、障害者福祉、教育、研究、資料保存やパロディ等のための利用こそ、本来、一般的な公益・表現の自由に照らして真っ先に認められてしかるべきこれらの利用類型を「特定の」ものと一方的に決め付け、ロクな根拠も示さずに今回の権利制限の一般規定の対象とならないとすることは極めて不適切である。
 最終的な報告書からはこの項目から「特定の」という言葉を削除するとともに、第4章1(5)で明記されている類型以外にも、ワーキングチーム報告書参考資料2で具体的に要望されている類型としては、個人の情報発信に伴う利用、ネットワークサービスに関連する利用、企業内における著作物の利用等もあるのであり、要望されている全ての類型について、個別の権利制限規定の改正・創設による対処が可能であるか否かを最終的な報告書の取りまとめまでに検討し、現実問題としてこれらの全ての類型について個別の権利制限規定による早急な対処が不可能であるとするならば、権利制限の一般規定をより包括的な形に規定することで対処するべきである。

(3)「第4章1(7)まとめ」(第24ページ)
◯該当項目および頁数:
 第4章1(7)【24頁】

◯意見:
 まとめとして、「A その著作物の利用を主たる目的としない他の行為に伴い付随的に生ずる当該著作物の利用であり、かつ、その利用が質的又は量的に社会通念上軽微であると評価できるもの」、「B 適法な著作物の利用を達成しようとする過程において合理的に必要と認められる当該著作物の利用であり、かつ、その利用が質的又は量的に社会通念上軽微であると評価できるもの」、「C 著作物の種類及び用途並びにその利用の目的及び態様に照らして、当該著作物の表現を知覚することを通じてこれを享受するための利用とは評価されない利用」のみを権利制限の一般規定の対象とするべきであるとしている。
 確かに法的安定性を高めるという点ではこれらの類型について権利制限を設けることは重要であるものの、これほど限定したのでは、これはもはや権利制限の「一般」規定の名に値しない。これでは、既存の個別制限規定がことごとく不当に狭く使いにくいものとされているという現状から来る問題に対処する上では極めて不十分な、狭く使いにくい「個別」規定が新たに追加されるに過ぎず、著作権をめぐる今の混迷状況が変わることはない。
 インターネットのように、ほぼ全国民が利用者兼権利者となり得、考えられる利用形態が発散し、個別の規定では公正利用の類型を拾い切れなくなるところでは、フェアユースのような一般規定は保護と利用のバランスを取る上で重要な意義を持つものであり、著作物の公正利用には上記以外の変形利用もビジネス利用も考えられ、このような利用も含めて著作物の公正利用を促すことが、今後の日本の文化と経済の発展にとって真に重要であえることを考えれば、形式的利用、付随的利用あるいは著作物の知覚を目的とするのでない利用に限るといった形で不当にその範囲を狭めるべきでは無く、第2章【4頁~6頁】に対する意見、第4章 1(4)・(5)・(6)【20頁~24頁】に対する意見でも書いたように、障害者福祉、教育、研究、資料保存やパロディ等のための利用、個人の情報発信に伴う利用、ネットワークサービスに関連する利用、企業内における著作物の利用等も含め検討を行うべきである。
 特に、現実問題としてこれらの全ての類型について個別の権利制限規定による対処は不可能と私は考えており、個別の権利制限規定による対処が不可能な全ての公正利用の類型が含まれるよう、その範囲・要件はアメリカ等と比べて遜色の無いものとして、権利制限の一般規定を可能な限り早期に導入することを私は求める。

(4)「第4章2 権利制限の一般規定を条文化する場合の検討課題について」(第25ページから第30ページ)
◯該当項目および頁数:
 第4章2【25頁~30頁】

◯意見:
 この項目中で刑事罰との関係について触れられているが、現状の過剰な刑事罰リスクからも、フェアユースは必要なものと私は考える。現在親告罪であることが多少セーフハーバーになっているとはいえ、アニメ画像一枚の利用で別件逮捕されたり、セーフハーバーなしの著作権侵害幇助罪でサーバー管理者が逮捕されたりすることは、著作権法の主旨から考えて本来あってはならないことである。著作権法の本来の主旨を超えた過剰リスクによって、本来公正として認められるべき事業・利用まで萎縮しているという事態を本当に深刻に受け止め、一刻も早い改善を図ってもらいたい。
 ガイドラインについても触れられているが、一般規定の意義に照らし、政令、ガイドライン等で不必要に細かな要件・解釈を作らないようにすると最終報告書において明記するべきである。
 権利制限の一般規定の導入によって、私的複製の範囲が縮小されることはあってはならないことである。
 また、昨年の6月12日にダウンロード違法化条項を含む改正著作権法が成立し、今年の1月1日に施行されたが、一人しか行為に絡まないダウンロードにおいて、「事実を知りながら」なる要件は、エスパーでもない限り証明も反証もできない無意味かつ危険な要件であり、技術的・外形的に違法性の区別がつかない以上、このようなダウンロード違法化は法規範としての力すら持ち得ない。このような法改正によって進むのはダウンロード以外も含め著作権法全体に対するモラルハザードのみであり、これを逆にねじ曲げてエンフォースしようとすれば、著作権検閲という日本国として最低最悪の手段に突き進む恐れしかない。総務省の「利用者視点を踏まえたICTサービスに係る諸問題に関する研究会」において、中国政府の検閲ソフト「グリーン・ダム」導入計画に等しい、日本レコード協会による携帯電話における著作権検閲の提案が取り上げられるなど、既に弊害は出始めている。そもそも、ダウンロード違法化の懸念として、このような著作権検閲に対する懸念は、文化庁へのパブコメ(文化庁HPhttp://www.bunka.go.jp/chosakuken/singikai/houkoku.htmlの意見募集の結果参照。ダウンロード違法化問題において、この8千件以上のパブコメの7割方で示された国民の反対・懸念は完全に無視された。このような非道極まる民意無視は到底許されるものではない)や知財本部へのパブコメ(知財本部のHPhttp://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/keikaku2009.htmlの個人からの意見参照)を見ても分かる通り、法改正前から指摘されていたところであり、このような著作権検閲にしか流れようの無いダウンロード違法化は始めからなされるべきではなかったものである。権利制限の一般規定の導入に合わせ、ネット利用における個人の安心と安全を完全にないがしろにするものである、百害あって一利ないダウンロード違法化を規定する著作権法第30条第1項第3号を削除する法改正を即刻行うことを私は求める。

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