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2010年6月 8日 (火)

第230回:知財計画2010の文章の確認

 先月の5月21日に知財本部で決定され、そのHP上で知財計画2010(pdf)が公開されている(5月21日の本部会合の議事次第議事録も参照)。政権交代も関係なく、今年も相変わらず浮ついたキーワードや数字が並び、要領を得ない検討項目百科事典になっている。やはり国家戦略も何もあったものでは無く、各省庁の思惑を反映しているに過ぎない検討項目百科辞典を作ることしかできない知財本部の存在意義などもはや無いと私は思っているが、それでも政府内での検討の様子を知る上では便利な資料の1つではあるので、今回は、2010年版の知財計画についてその内容の確認をしておきたいと思う。

 この知財計画2010(pdf)は最初の重点施策の部分と後の具体的な取組の部分で項目の順序や記載が微妙に違っていたりするので分かりにくいのだが、ここでは後の具体的な取組のところから主に法改正・各種規制に関係する項目を順に拾って行く。

 まず、第10ページ以降の「戦略2 コンテンツ強化を核とした成長戦略の推進」の「1.コンテンツを核として海外から利益が入る仕組みを構築する」で第11ページから具体的な取組の項目が並んでいるが、その中に、

(4)外交強化により、アジア市場を拡大する。
8 諸外国におけるコンテンツ規制の緩和(中期)

 地上波における日本ドラマの禁止や外国製ゲーム機販売規制・ゲーム流通規制や映像の外国枠の数量規制といった、諸外国におけるコンテンツ規制の緩和を強く働き掛け、実現する。
(外務省、総務省、文部科学省、経済産業省)

という項目がある。前にも書いたと思うが、外国に日本のコンテンツに対する規制の緩和を働きかけることも確かに重要だろうが、それ以上に、東京都青少年健全育成条例改正問題に端的に表れているような、国内における児童ポルノを理由とした情報・表現規制の圧力を排除する方がより重要だろう。(ただし、今回の知財計画も表現規制の点でロクでもない話が入らなかっただけマシと言えばマシである。)

 次に第13ページからの「2.海外からも優秀な人材が集まる魅力的な『本場』を形成する」で、

(3)クリエーターの裾野を拡大するとともにユーザーによる創造活動を促進する。
19 二次創作の権利処理ルールの明確化
 二次創作(パロディ含む)やネット上の共同創作の権利処理ルールを明確化する。
(文部科学省、経済産業省、総務省)

20 ネット上のコンテンツの部分的引用やネット放送のルール形成(短期)
 インターネット上におけるコンテンツの部分的引用やネット上の放送における利用を始めとして、今後のビジネス展開の円滑化が図られるよう、国際的動向も踏まえながら民間における関係者間のルール形成が促進されるよう支援する。
(文部科学省)

という項目が並んでいる。パロディの話にしても、ネットにおける引用の話にしてもその整理の重要性自体は否定しないが、どんな話でも役所がしゃしゃり出てきた途端に斜め上の方向に話がねじれて行くのが最近の典型的なパターンなので、これらの検討についても注意しておくに越したことはないだろう。

 第17ページからの「3.世界をリードするコンテンツのデジタル化・ネットワーク化を促進する」で、

(1)コンテンツのための新たなメディアを創出する。
24 「コンテンツ特区」の創設(短期)

 「コンテンツ特区」を設け、特定区域において新しい技術やサービスを試行できる環境を整備し、先駆的なコンテンツの創造、国際的なコンテンツ製作の誘致を促進する国際的な場を創出する。
(経済産業省、総務省、文部科学省)

25 新たなメディア創出のためのインフラ整備(短期・中期)
 モバイル放送、デジタルサイネージに関する実証実験や規格策定への支援、完全ブロードバンド化、ホワイトスペースの活用促進、IPTVの普及支援・クラウドコンピューティングの環境整備を通じ、新たなメディアのためのインフラを整備する。
(総務省)

26 コンテンツ配信・放送に関する規制緩和(短期)
 デジタル化に対応した通信・放送の総合的な法体系を速やかに整備するとともに、ホワイトスペースの活用を始めとした電波の有効利用のための方策を2010年度中に策定する。
(総務省)

(2)コンテンツの電子配信を進める。
27 書籍の電子配信の促進(短期・中期)

 書籍の電子配信を促進するに当たって、知の拡大再生産の確保に留意しつつ、非商業分野において国立国会図書館によるデジタル・アーカイブ化の促進や電子納本に向けた環境整備を図るとともに、商業分野において民間における標準規格の策定、権利処理ルールやビジネスモデル形成の取組を支援する。
(総務省、文部科学省、経済産業省)

(4)電子配信ビジネスの前提となる著作権侵害コンテンツを大幅に減らす。
34 ACTA交渉の妥結及び妥結後の加盟国拡大(短期・中期)

 2010年中に模倣品・海賊版拡散防止条約(ACTA)の交渉を妥結するとともに、締結後、主要国・地域への加盟国拡大や二国間協定を通じ、世界大に保護の輪を広げる。
(外務省、総務省、法務省、財務省、文部科学省、経済産業省)

36 アクセスコントロール回避規制の強化(短期)
 製品開発や研究開発の萎縮を招かないよう適切な除外規定を整備しつつ、著作物を保護するアクセスコントロールの一定の回避行為に関する規制を導入するとともに、アクセスコントロール回避機器について、対象行為の拡大(製造及び回避サービスの提供)、対象機器の拡大(「のみ」要件の緩和)、刑事罰化及びこれらを踏まえた水際規制の導入によって規制を強化する。このため、法技術的観点を踏まえた具体的な制度改革案を2010年度中にまとめる。
(文部科学省、経済産業省、財務省)

37 プロバイダによる侵害対策措置の促進(短期・中期)
 プロバイダと権利者が協働し、インターネット上の侵害コンテンツに対する新たな対策措置(例えば、警告メールの転送や技術的手段を用いた検知)を図る実効的な仕組みを2010年度中に構築する。併せて、現行のプロバイダ責任制限法の検証を図った上で、実効性を担保するための制度改正の必要性について検討し、2010年度中に結論を得る。さらに、それらの取組の進捗状況を踏まえて、必要な措置を講じる。
(総務省)

(5)デジタル化・ネットワーク化時代に対応した著作権制度を整備する。
42 著作権制度上の課題の総合的な検討(中期)

 デジタル化・ネットワーク化に対応した著作権制度上の課題(保護期間、補償金制度の在り方を含む)について総合的な検討を行い、検討の結果、措置を講じることが可能なものから順次実施しつつ、2012年までに結論を得る。
(文部科学省)

43 著作権制度上の課題の総合的な検討(短期)
 42の著作権制度の総合的な検討のうち、権利制限の一般規定について、これまでの検討結果を踏まえ、2010年度中に法制度整備のための具体的な案をまとめ、導入のために必要な措置を早急に講ずる。
(文部科学省)

44 著作権制度上の課題の総合的な検討(短期)
 42の著作権制度の総合的な検討のうち、著作権法上のいわゆる「間接侵害」に関し、2010年度中に差止請求の範囲の明確化を含め、その要件化に関する一定の結論を得て、必要な措置を早急に講ずる。
(文部科学省)

といった項目が並んでいる。これも前に書いたことだが、特区などと言う前に、本当に全国区で自由な創作の環境を整える方が先だろうし、放送通信関係や国会図書館におけるデジタル・アーカイブ化の話も気をつけておいた方が良いとは思うが、ここで最も注意するべきは、海賊版対策条約(ACTA)、アクセスコントロール回避規制の強化とプロバイダーによる著作権侵害対策措置の促進の項目である。海賊版対策条約(ACTA)について、国際的には反対の声も高まりつつあるのを無視し、国内における詳細な検討もなおざりにして、妥結のための妥結が重要とばかりに2010年という妥結目標をあげ続け、アクセスコントロール回避規制についても、利用者やメーカーの反対の声を完全に無視して一方的に規制強化を打ち出し、プロバイダーによる著作権侵害対策についても、ストライクポリシーの明記こそされなかったものの、権利者団体が引き続きネット切断型のストライクポリシーを求めて来ることが考えられ、これらの検討は今後も十分に注視して行く必要がある。(著作権侵害対策としては、同じところにあげられている、消費者の利便性に即した正規サービスの展開の促進の方が遥かに有効かつ重要だろう。ただし、最後に載せられている工程表によると、これも、アニメ・コミックについて全世界をターゲットとしたネット配信ポータルサイトの支援や映像分野の権利処理一元化の推進といまいち中身がしょぼい上、今までの経緯から考えてもこのレベルですら中途半端に尻すぼみで終わるのではないかと私は思っているが。)

 また、著作権制度に関する記載でも、保護期間延長や私的録音録画補償金制度についての明記は残った。既に文化庁と権利者団体を除いて延長しないという結論の出そろっている著作権の保護期間延長問題や、既に当事者間で裁判にまでなっている私的録音録画補償金問題について、これ以上何を検討するつもりか知らないが、やはりここでも利用者の視点は完全になおざりにされている。一般フェアユース条項についても、具体的な規定ぶりに関する踏み込みは無く、細部は全て文化庁に丸投げという有様であり、やはり文化庁で進んでいる間接侵害規定の検討と合わせ注意が必要である。

 一般ユーザーにあまり関係の無い特許の話などはここでは省略するが、他にも多くの項目が載っており、例によって読みにくい役所の資料ではあるが、政府内での知財問題に関心のある方には是非一読をお勧めする。

 最後に一緒に紹介しておくと、東京都青少年健全育成条例改正問題でも、都議会の第2定例会(予定表質問順序)で、継続審議になった条例改正案について、今日から代表質問が始まっている。民主党の各都議、くりした善行都議のtwitter、野上ゆきえ都議のtwitter、松下玲子都議のtwitter、あさの克彦都議のtwitterなどからもある程度動向がつかめるが、自公がやはり言葉の言い換えで何の問題の解決にもなっていないどころか悪化の恐れもある修正案を出そうとしており、賛成署名と合わせごり押しを狙っているという状況にあり、この点で反対をして下さっている民主党、生活ネット・みらい、共産党の各都議には心から感謝したいと思うが、この問題も全く気が抜ける状況にない。やはりこの問題では大変な尽力をされている藤本由香里明治大学准教授がそのtwitterで書かれているように、今週が審議の山であり、都議会の動向からも目は離せない。(藤本由香里准教授と山口貴士弁護士が中心となって集めている反対署名(山口貴士弁護士のブログ記事参照)も、特に期限が定められているということはまだないので、この問題について懸念を抱かれている方でまだ出していないという方がいれば、是非提出をご検討頂ければと思う。)

 次回は、文化庁のフェアユースパブコメのエントリになるのではないかと思っている。

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子供を性的対象にした漫画などの制限を目指す、「東京都青少年健全育成条例」の改正案を審議していた都議会総務委員会は14日、改正案を民主や共産など反対多数で否決しました。16日の本会議で正式に否決される見通しで、都議会で知事提出の条例案が否決されるのは12年ぶりとなります。改正案に関して、東京都の石原知事は、「否決されたら、もちろん(再提出)する。悪しき状況を良くするため、制約は必要だ」と述べている模様です。この日の委員会で、民主党は「条例での規制よりも、... [続きを読む]

受信: 2010年6月16日 (水) 03時45分

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