« 第212回:内閣府「ハトミミ.com」(集中受付期間2月17日〆切)への提出パブコメ | トップページ | 第214回:表現の自由の一般論(その2:表現の自由に関する違憲基準) »

2010年2月 3日 (水)

第213回:知財本部・新たな「知的財産推進計画(仮称)」の策定に向けた意見募集(2月15日〆切)への提出パブコメ

t 前回少し書いた通り、知財本部から、「新たな『知的財産推進計画(仮称)』の策定に向けた意見募集」が2月15日〆切でかかっている。これも書いて提出したので、ここにその提出パブコメを載せておきたいと思う。

 詳しくは下の提出パブコメを読んでもらえればと、前の知財計画2009(pdf)の文章の詳細については第180回をご覧頂ければと思うが、ダウンロード違法化条項の撤廃、私的録音録画補償金の対象範囲の拡大への反対、無料の地上放送からのB-CASシステムの排除、著作権検閲・ストライクポリシーへの反対等も重要であることは言うまでもないとして、今回のパブコメで特にポイントとなりそうなのは、文化庁と権利者団体が結託していつものように骨抜きにしようとしている一般フェアユース条項の導入の検討、首相の軽率な発言によって今年また炎上することが想定される保護期間延長問題、国民の基本的な権利に関わる危険な条約であるにもかかわらず今なお各国政府間のみで極秘裏に進められている海賊版条約の検討についてだろうか。

(なお、私自身は、念のため一般的な情報・ネット・表現規制についても書いているが、このパブコメに意見を出す場合には、前の知財計画改訂において一般的な情報・ネット・表現規制に関する項目は無事削除されたこと、一般的な情報・ネット・表現規制問題は本来知財本部・事務局の管轄外であると考えられることにもご注意頂ければと思う。)

 また、この提出パブコメ中でも触れている海賊版対策条約については、この問題を世界で最も積極的に追っているカナダのオタワ大教授のマイケル・ガイスト氏のブログ記事やEFFの記事を、「P2Pとかその辺のお話」(関連エントリ1エントリ2エントリ3)で紹介されているので、興味のある方は是非リンク先をご覧頂ければと思う。

 海外動向で少し書きたいこともあるのだが、次回は、先に表現の自由の一般論の続きを書いておきたいと思っている。

(2010年2月4日の追記:やはり「P2Pとかその辺のお話」で、この1月26日から29日までメキシコで行われていた海賊版対策条約の交渉に関するガイスト教授の最新のブログ記事を紹介されているので、興味のある方は是非このリンク先のエントリも合わせご覧頂ければと思う。)

(2010年2月6日の追記:第133回で取り上げた犯罪計画、第199回で取り上げた人身取引計画をとりまとめた、犯罪閣僚会議で設置が決められた(去年12月22日の第14回の資料、設置について(案)(pdf)設置について(pdf)参照)、「児童ポルノ排除対策ワーキングチーム」の検討が、この4日から内閣府で始まっている(時事通信の記事毎日の記事参照)。6月から7月にかけて対策をまとめる方針とあり、児童ポルノ規制問題についても、この夏にかけてさらに印象操作とプロパガンダが激しくなることが予想されるが、加えて、この児童ポルノ排除対策ワーキングチームの不透明性自体大問題であると思うので、追加でこの話も「ハトミミ.com」に突っ込んだ。(念のため、提出した意見は、第212回の最後に追加で載せた。)

 また、そもそもインターネット・ホットラインセンターは潰すべきだと思っているので、元々おかしいガイドラインにどうこう言うつもりは無いのだが、警察傘下の半官検閲センターであるインターネット・ホットラインセンターが、東京都の条例を元に全国的に検閲を実施しようと、東京都の迷惑条例を関係条文に追加しようとするガイドラインの改正案をパブコメにかけているので(インターネット協会・ホットライン運用ガイドライン検討協議会の「『ホットライン運用ガイドライン改訂案』の改定内容に関する意見の募集について」参照。internet watchの記事も参照)、念のため、ここにもリンクを張っておく。細かな話をすればその他いろいろと曖昧になっているところも問題だろうが、このような東京都条例の追加は、第201回で取り上げた青少年問題協議会のデタラメな答申に基づいた東京都での条例改正の動きを見越して規制強化の既成事実化を図ろうとする動きの1つだろう。)

(以下、提出パブコメ)

・氏名:兎園
・電子メール:

・意見:
《要旨》

特に一般フェアユース条項の導入について可能な限り早期に導入すること、海賊版対策条約について慎重な議論及びその検討の詳細の公表、ダウンロード違法化条項の撤廃を求める。有害無益なものとしかなりようの無いインターネットにおける今以上の知財保護強化、特に著作権の保護期間延長、補償金の矛盾を拡大するだけの私的録音録画補償金の対象拡大に反対する。今後真の国民視点に立った知財の規制緩和の検討が進むことを期待する。

《全文》
 最終的に国益になるであろうことを考え、各業界の利権や省益を超えて必要となる政策判断をすることこそ知財本部とその事務局が本当になすべきことのはずであるが、知財計画2009を見ても、このような本当に政策的な決定は全くと言って良いほど見られない。知財保護が行きすぎて消費者やユーザーの行動を萎縮させるほどになれば、確実に文化も産業も萎縮するので、知財保護強化が必ず国益につながる訳ではないということを、著作権問題の本質は、ネットにおける既存コンテンツの正規流通が進まないことにあるのではなく、インターネットの登場によって新たに出てきた著作物の公正利用の類型に、今の著作権法が全く対応できておらず、著作物の公正利用まで萎縮させ、文化と産業の発展を阻害していることにあるのだということを知財本部とその事務局には、まずはっきりと認識してもらいたい。特に、最近の知財・情報に関する規制強化の動きは全て間違っていると私は断言する。

 今まで通り、規制強化による天下り利権の強化のことしか念頭にない文化庁、総務省、警察庁などの各利権官庁に踊らされるまま、国としての知財政策の決定を怠り、知財政策の迷走の原因を増やすことしかできないようであれば、今年の知財計画を作るまでもなく、知財本部とその事務局には、自ら解散することを検討してもらいたい。そうでなければ、是非、各利権官庁に轡をはめ、その手綱を取って、知財の規制緩和のイニシアティブを取ってもらいたい。

 知財本部において今年度、インターネットにおけるこれ以上の知財保護強化はほぼ必ず有害無益かつ危険なものとなるということをきちんと認識し、真の国民視点に立った知財の規制緩和の検討が知財本部でなされることを期待し、本当に決定され、実現されるのであれば、全国民を裨益するであろうこととして、私は以下のことを提案する。

(1)「知的財産推進計画2009」について
a)一般フェアユース条項の導入について

 第59ページに書かれている、一般フェアユース条項の導入について、ユーザーに対する意義からも、可能な限り早期に導入することを求める。特に、インターネットのように、ほぼ全国民が利用者兼権利者となり得、考えられる利用形態が発散し、個別の規定では公正利用の類型を拾い切れなくなるところでは、フェアユースのような一般規定は保護と利用のバランスを取る上で重要な意義を持つものである。知財計画2010においては、このようなユーザーに対する意義も合わせて書き込んでもらいたい。また、フェアユースの導入によって、私的複製の範囲が縮小されることはあってはならないことである。

 最近の文化庁・文化審議会・著作権分科会の「権利制限一般規定ワーキングチーム報告書」において、写真の写り込みや許諾を得て行うマスターテープ作成、技術検証のための複製など、形式的利用あるいは著作物の知覚を目的とするのでない著作物の不可避的・付随的利用に対してのみ、しかも要件に「社会通念上、著作者の利益を不当に害しない利用であること」と加えるという極めて限定的な形でのみフェアユースを規定しようとしているが、これほど限定したのでは、これはもはや権利制限の一般規定の名に値しない。これでは、仮に導入されたところで、いつも通り権利者団体にとってのみ都合の良い形で新たに極めて狭く使いにくい「権利制限の個別規定」が追加されるに過ぎず、著作権をめぐる今の混迷状況が変わることはない。

 著作物の公正利用には変形利用もビジネス利用も考えられ、このような利用も含めて著作物の公正利用を促すことが、今後の日本の文化と経済の発展にとって真に重要であえることを考えれば、形式的利用あるいは著作物の知覚を目的とするのでない著作物の不可避的・付随的利用に限るといった形で不当にその範囲を不当に狭めるべきでは無く、その範囲はアメリカ等と比べて遜色の無いものとされるべきである。

 権利を侵害するかしないかは刑事罰がかかるかかからないかの問題でもあり、公正という概念で刑事罰の問題を解決できるのかとする意見もあるようだが、かえって、このような現状の過剰な刑事罰リスクからも、フェアユースは必要なものと私は考える。現在親告罪であることが多少セーフハーバーになっているとはいえ、アニメ画像一枚の利用で別件逮捕されたり、セーフハーバーなしの著作権侵害幇助罪でサーバー管理者が逮捕されたりすることは、著作権法の主旨から考えて本来あってはならないことである。政府にあっては、著作権法の本来の主旨を超えた過剰リスクによって、本来公正として認められるべき事業・利用まで萎縮しているという事態を本当に深刻に受け止め、一刻も早い改善を図ってもらいたい。

 個別の権利制限規定の迅速な追加によって対処するべきとする意見もあるが、文化庁と癒着権利者団体が結託して個別規定すらなかなか入れず、入れたとしても必要以上に厳格な要件が追加されているという惨憺たる現状において、個別規定の追加はこの問題における真の対処たり得ない。およそあらゆる権利制限について、文化庁と権利者団体が結託して、全国民を裨益するだろう新しい権利制限を潰すか、極めて狭く使えないものとして来たからこそ、今一般規定が社会的に求められているのだという、国民と文化の敵である文化庁が全く認識していないだろう事実を、政府・与党は事実としてはっきりと認めるべきであり、知財本部において文化庁における今現在の歪んだ検討を止め、知財の真の規制緩和のイニシアティブを取るべきである。また、このような国としての真の知財政策の決定を怠り、知財政策の迷走の原因をさらに増やすことしかできないようであれば、今年の知財計画を作るまでもなく、知財本部とその事務局は、自ら解散することを検討するべきである。

b)保護期間延長問題について
 保護期間延長問題についても、第60ページに記載されているが、権利者団体と文化庁を除けば、延長を否定する結論が出そろっているこの問題について、文化庁が継続検討の結論を出していること自体極めて残念なことである。これほど長期間にわたる著作権の保護期間をこれ以上延ばすことを是とするに足る理由は何一つなく、知財計画2010では、著作権・著作隣接権の保護期間延長の検討はこれ以上しないとしてもらいたい。特に、流通事業者に過ぎないレコード製作者と放送事業者の著作隣接権については、保護期間を短縮することが検討されても良いくらいである。

c)海賊版対策条約(ACTA)について
 第44ページに書かれている、「模倣品・海賊版拡散防止条約(仮称)」についても、詳細は不明であるが、税関において個人のPCや携帯デバイスの内容をチェック可能とすることや、行政機関の決定や消費者との契約などに基づき一方的にネット切断という個人に極めて大きな影響を与える罰を加えることを可能とする、ストライクポリシーと呼ばれる対策を取ることを事実上プロバイダーに義務づけることといった、個人の基本的な権利をないがしろにする条項が検討される恐れがある。他の国が、このような危険な条項をこの条約に入れるよう求めて来たときには、そのような非人道的な条項は除くべきであると、かえって、プライバシーや情報アクセスの権利といった国際的・一般的に認められている個人の基本的な権利を守るという条項こそ条約に盛り込むべきであると日本から各国に積極的に働きかけるべきである。

 プライバシーや情報アクセスの権利、推定無罪の原理、弁護を受ける権利といった国際的・一般的に認められている個人の基本的な権利の保障をきちんと確保し、ストライクポリシーのような非人道的な取り組みが世界的に推進されることを止めるため、この条約に「対審を必要とする通常の手続きによる司法当局の事前の判決なくしてエンドユーザーの基本的な権利及び自由に対してはいかなる制限も課され得ない」という条文を入れるべきであると日本から各国に強く働きかけるべきである。

 また、プロバイダーの責任やDRM回避規制についても、この条約で検討される恐れがあるが、下のd)、e)、f)に書いた通り、日本において、いたずらに今の著作権の間接侵害や侵害幇助のリスクから生じている過大な法的不安定性をさらに拡大するような法改正を行うことなど論外であること、このプロバイダーの責任に関するセーフハーバーの要件においてストライクポリシーなどを押しつけるようなことは、検閲の禁止・表現の自由等の国民の権利の不当な侵害に必ずなるものであること、ユーザーの情報アクセスに対するリスクを不必要に高める危険なものとしかなり得ないこれ以上のDRM回避規制の強化はなされるべきでないことを考え、危険な規制強化につながる恐れが極めて強いプロバイダーの責任やDRM回避規制に関する規定は除くべきであると、日本から各国に強く働きかけるべきである。

 さらに、この条約について、政府は、海外において既に政府・議会レベルで、その透明性・危険性が問題となりつつあることも考え(例えば、http://www.europarl.europa.eu/sides/getDoc.do?pubRef=-//EP//TEXT+WQ+E-2010-0091+0+DOC+XML+V0//EN&language=ENhttp://www.europarl.europa.eu/sides/getDoc.do?pubRef=-//EP//TEXT+WQ+E-2010-0147+0+DOC+XML+V0//EN&language=ENhttp://techdirt.com/articles/20091123/1541197061.shtmlhttp://www.boingboing.net/2010/01/26/canadian-mp-demands.htmlhttp://www.theregister.co.uk/2010/01/21/acta_lammy/に書かれている通り、欧米加英などでは議員から既に理事会・政府等に対し海賊版対策条約の問題について質問が出されており、http://a2knetwork.org/ja/node/558に書かれている通り、国際消費者機構も共同宣言という形で海賊版対策条約の秘密性・危険性に対する懸念を表明している)、現状のような国民をバカにした概要だけで無く、その具体的な検討の詳細をきちんと公表するべきである。

 また、このような国民の基本的な権利に関わる危険な条約は特に慎重に議論されるべきであって、特に2010年といった妥結目標の記載は知財計画2010においては削除するべきである。

d)著作権法におけるいわゆる「間接侵害」への対応について
 第60ページには「間接侵害」の明確化についても記載されている。セーフハーバーを確定するためにも間接侵害の明確化はなされるべきであるが、現行の条文におけるカラオケ法理や各種ネット録画機事件などで示されたことの全体的な整理以上のことをしてはならない。特に、著作権法に明文の間接侵害一般規定を設けることは絶対にしてはならないことである。確かに今は直接侵害規定からの滲み出しで間接侵害を取り扱っているので不明確なところがあるのは確かだが、現状の整理を超えて、明文の間接侵害一般規定を作った途端、権利者団体や放送局がまず間違いなく山の様に脅しや訴訟を仕掛けて来、今度はこの間接侵害規定の定義やそこからの滲み出しが問題となり、無意味かつ危険な社会的混乱を来すことは目に見えているからである。

 知財計画2010においては、著作権法の間接侵害の明確化は、ネット事業・利用の著作権法上のセーフハーバーを確定するために必要十分な限りにおいてのみなされると明記してもらいたい。

e)DRM回避規制について
 第61ページの「著作権侵害コンテンツを排除するための取組を強化する」という項目において、「コンテンツの技術的な制限手段の回避に対する規制の在り方」の検討について記載されているが、昨年7月にゲームメーカーがいわゆる「マジコン」の販売業者を不正競争防止法に基づき提訴し、さらにこの2月にゲームメーカー勝訴の判決が出ていることなどを考えても、現時点で、現状の規制では不十分とするに足る根拠は全くない。現状でも、不正競争法と著作権法でDRM回避機器等の提供等が規制され、著作権法でコピーコントロールを回避して行う私的複製まで違法とされ、十二分以上に規制がかかっているのであり、これ以上の規制強化は、ユーザーの情報アクセスに対するリスクを不必要に高める危険なものとしかなり得ない。

 知財計画2010では、ユーザーの情報アクセスに対するリスクを不必要に高める危険なものとしかなり得ないこれ以上のDRM回避規制の強化は検討しないとされるべきである。

 DRM回避規制に関しては、このような有害無益な規制強化の検討ではなく、まず、私的なDRM回避行為自体によって生じる被害は無く、個々の回避行為を一件ずつ捕捉して民事訴訟の対象とすることは困難だったにもかかわらず、文化庁の片寄った見方から一方的に導入されたものである、私的な領域でのコピーコントロール回避規制(著作権法第30条第1項第2号)の撤廃の検討を行うべきである。コンテンツへのアクセスあるいはコピーをコントロールしている技術を私的な領域で回避しただけでは経済的損失は発生し得ず、また、ネットにアップされることによって生じる被害は公衆送信権によって既にカバーされているものであり、その被害とDRM回避やダウンロードとを混同することは絶対に許されない。それ以前に、私法である著作権法が、私的領域に踏み込むということ自体異常なことと言わざるを得ない。

f)インターネット・サービス・プロバイダ(ISP)の責任について
 第61ページの「著作権侵害コンテンツを排除するための取組を強化する」という項目において、「プロバイダの責任の在り方等法的保護の在り方」の検討について書かれているが、動画投稿サイト事業者がJASRACに訴えられた「ブレイクTV」事件や、レンタルサーバー事業者が著作権幇助罪で逮捕され、検察によって姑息にも略式裁判で50万円の罰金を課された「第(3)世界」事件等を考えても、今現在、間接侵害や著作権侵害幇助のリスクが途方もなく拡大し、甚大な萎縮効果・有害無益な社会的大混乱が生じかねないという非常に危険な状態にあり、間接侵害事件や著作権侵害幇助事件においてネット事業者がほぼ直接権利侵害者とみなされてしまうのでは、プロバイダー責任制限法によるセーフハーバーだけでは不十分であり、間接侵害や著作権侵害幇助罪も含め、著作権侵害とならない範囲を著作権法上きちんと確定することは喫緊の課題である。ただし、このセーフハーバーの要件において、標準的な仕組み・技術や違法性の有無の判断を押しつけるような、権利侵害とは無関係の行政機関なり天下り先となるだろう第3者機関なりの関与を必要とすることは、検閲の禁止・表現の自由等の国民の権利の不当な侵害に必ずなるものであり、絶対にあってはならないことである。

 ISPの責任の在り方の検討について、知財計画2010に書き込む際には、プロバイダに対する標準的な著作権侵害技術導入の義務付け等を行わないことを合わせ明記するとともに、間接侵害や刑事罰・著作権侵害幇助も含め著作権法へのセーフハーバー規定の速やかな導入を検討するとしてもらいたい。この点に関しては、逆に、検閲の禁止や表現の自由の観点から技術による著作権検閲の危険性の検討を始めてもらいたい。

 なお、アクセスログの保存についても、プロバイダー責任制限との関係で検討されるべき話ではなく、それ自体で別途きちんと検討されなくてはならない話である。

g)権利者が民事的措置をより迅速かつ容易にとることができるようにするための方策について
 第61ページの「著作権侵害コンテンツを排除するための取組を強化する」という項目において、「権利者が民事的措置をより迅速かつ容易にとることができるようにするための方策」の検討について記載されており、関連することとして、知財本部は去年12月に、「インターネット上の著作権侵害コンテンツ対策に関する調査」において、「権利侵害者の特定を容易にするための方策(発信者情報の開示)」、「損害賠償額の算定を容易にするための方策」、「侵害コンテンツへ誘導するリンクサイト」等の項目に関する意見募集を行っている。

 このうち、「権利侵害者の特定を容易にするための方策(発信者情報の開示)」、「侵害コンテンツへ誘導するリンクサイト」については、これは間接侵害の問題であり、上のd)、f)で書いた通り、間接侵害の明確化は、ネット事業・利用の著作権法上のセーフハーバーを確定するために必要十分な限りにおいてのみ行われるべきであり、プロバイダに対する標準的な技術等の義務付けを行わず、間接侵害や刑事罰・著作権侵害幇助も含め著作権法へのセーフハーバー規定の速やかな導入のみが検討されるべきである。

 「損害賠償額の算定を容易にするための方策」について、著作権団体が法定賠償制度の導入を求めているが、法定損害賠償制度については、平成21年1月の文化庁の「文化審議会著作権分科会報告書」においても、「過去の裁判例における第114条の5等の規定による損害額の認定の状況を踏まえれば、同規定はある程度機能しているものと考えられ、現行法によってもなお対応が困難であるとするまでの実態が認められるには至っていない」とされている整理を変えるべきであるとするに足る状況の変化は無く、法定損害賠償制度などの損害賠償額の算定を容易にするための方策の検討はされるべきでは無い。

 さらに付言すれば、法定損害賠償制度は、アメリカで一般ユーザーに法外な損害賠償を発生させ、その国民のネット利用におけるリスクを不当に高め、ネットにおける文化と産業の発展を阻害することにしかつながっていないものである(http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0906/22/news028.html参照)。日本においてこのような制度は絶対に導入されてはならない。

 権利者が民事的措置をより迅速かつ容易にとることができるようにするための方策についても、国民の基本的な権利を必ず侵害するものとなり、ネットにおける文化と産業の発展を阻害することにつながる危険な規制強化の検討ではなく、ネットにおける各種問題は情報モラル・リテラシー教育によって解決されるべきものという基本に立ち帰り、このような教育や公開情報の検索を行うクローリングと現行のプロバイダー責任制限法と削除要請を組み合わせた対策などの、より現実的かつ地道な施策のみに注力して検討を進めるべきである。

h)ネット上の違法コンテンツ対策、違法ファイル交換対策について
 第61ページの「著作権侵害コンテンツを排除するための取組を強化する」という項目に書かれている「ネット上の違法コンテンツ対策」の検討、項目番号281番の違法ファイル共有対策について、通信の秘密やプライバシー、情報アクセス権等の国民の基本的な権利をきちんと尊重しつつ対策を進めることを明記してもらいたい。

i)通信・放送の法体系の見直しについて
 第51ページに書かれている、放送と通信の法体系の総合的な検討について、ホームページ等に関しても通信の秘密を確保し、表現に関する規制は行わないという方針を明記してもらいたい。

j)新商標の導入の検討について
 第29ページに書かれている、新商標の導入の検討について、特許庁の新しいタイプの商標に関する検討ワーキンググループ報告書で、音の商標を新たな保護対象として追加する方針が示され、特許庁の産業構造審議会・知的財産政策部会・商標制度小委員会で検討が続けられているが、音の商標は、他の視覚的な商標とは異なる特色を有しているということが考慮されるべきであり、音に、会社名を連呼するような音だけでは無く単なる旋律も含まれ得、音の商標の使用に、単なるBGMとしての使用も含まれ得ることから、音については特に慎重に検討するべきである。登録除外については公益的な音だけでは不十分であり、余計な混乱を避けるため、音について、少なくとも、他人の著名な旋律・楽曲を登録から除外することを検討すると、パブリックドメインに落ちた著名な旋律・楽曲の登録のような不当な利得を得るための登録が排除されない限り、音について、その保護類型への追加は決してしないと、知財計画2010では明記してもらいたい。

(2)その他の知財政策事項について
a)ダウンロード違法化問題について
 文化庁の暴走と国会議員の無知によって、今年の6月12日に、「著作権を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものを含む。)を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を、その事実を知りながら行う場合」は私的複製に当たらないとする、いわゆるダウンロード違法化条項を含む、改正著作権法が成立し、今年の1月1日に施行されたが、一人しか行為に絡まないダウンロードにおいて、「事実を知りながら」なる要件は、エスパーでもない限り証明も反証もできない無意味かつ危険な要件であり、技術的・外形的に違法性の区別がつかない以上、このようなダウンロード違法化は法規範としての力すら持ち得ない。このような法改正によって進むのはダウンロード以外も含め著作権法全体に対するモラルハザードのみであり、これを逆にねじ曲げてエンフォースしようとすれば、著作権検閲という日本国として最低最悪の手段に突き進む恐れしかない。

 総務省の「利用者視点を踏まえたICTサービスに係る諸問題に関する研究会」において、中国政府の検閲ソフト「グリーン・ダム」導入計画に等しい、日本レコード協会による携帯電話における著作権検閲の提案が取り上げられるなど、既に弊害は出始めている。

 そもそも、ダウンロード違法化の懸念として、このような著作権検閲に対する懸念は、文化庁へのパブコメ(文化庁HPhttp://www.bunka.go.jp/chosakuken/singikai/houkoku.htmlの意見募集の結果参照。ダウンロード違法化問題において、この8千件以上のパブコメの7割方で示された国民の反対・懸念は完全に無視された。このような非道極まる民意無視は到底許されるものではない)や知財本部へのパブコメ(知財本部のHPhttp://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/keikaku2009.htmlの個人からの意見参照)を見ても分かる通り、法改正前から指摘されていたところであり、このような著作権検閲にしか流れようの無いダウンロード違法化は始めからなされるべきではなかったものである。文化庁の暴走と国会議員の無知によって成立したものであり、ネット利用における個人の安心と安全を完全にないがしろにするものである、百害あって一利ないダウンロード違法化を規定する著作権法第30条第1項第3号を即刻削除するべきである。

b)私的録音録画補償金問題について
 権利者団体等が単なる既得権益の拡大を狙ってiPod等へ対象範囲を拡大を主張している私的録音録画補償金問題についても、補償金のそもそもの意味を問い直すことなく、今の補償金の矛盾を拡大するだけの私的録音録画補償金の対象拡大を絶対にするべきではない。

 文化庁の文化審議会著作権分科会における数年の審議において、補償金のそもそもの意義についての意義が問われたが、今に至るも文化庁が、天下り先である権利者団体のみにおもねり、この制度に関する根本的な検討を怠った結果、特にアナログチューナー非対応録画機への課金については既に私的録音録画補償金管理協会と東芝間の訴訟に発展している。ブルーレイ課金・アナログチューナー非搭載録画機への課金について、権利者団体は、ダビング10への移行によってコピーが増え自分たちに被害が出ると大騒ぎをしたが、移行後1年以上経った今現在においても、ダビング10の実施による被害増を証明するに足る具体的な証拠は全く示されておらず、ブルーレイ課金・アナログチューナー非搭載録画機への課金に合理性があるとは到底思えない。わずかに緩和されたとは言え、今なお地上デジタル放送にはダビング10という不当に厳しいコピー制限がかかったままである。こうした実質的に全国民に転嫁されるコストで不当に厳しい制限を課している機器と媒体にさらに補償金を賦課しようとするのは、不当の上塗りである。

 なお、世界的に見ても、メーカーや消費者が納得して補償金を払っているということはカケラも無く、権利者団体がその政治力を不当に行使し、歪んだ「複製=対価」の著作権神授説に基づき、不当に対象を広げ料率を上げようとしているだけというのがあらゆる国における実情である。表向きはどうあれ、大きな家電・PCメーカーを国内に擁しない欧州各国は、私的録音録画補償金制度を、外資から金を還流する手段、つまり、単なる外資規制として使っているに過ぎない。この制度における補償金の対象・料率に関して、具体的かつ妥当な基準はどこの国を見ても無いのであり、この制度は、ほぼ権利者団体の際限の無い不当な要求を招き、莫大な社会的コストの浪費のみにつながっている。機器・媒体を離れ音楽・映像の情報化が進む中、「複製=対価」の著作権神授説と個別の機器・媒体への賦課を基礎とする私的録音録画補償金は、既に時代遅れのものとなりつつあり、その対象範囲と料率のデタラメさが、デジタル録音録画技術の正常な発展を阻害し、デジタル録音録画機器・媒体における正常な競争市場を歪めているという現実は、補償金制度を導入したあらゆる国において、問題として明確に認識されなくてはならないことである。

c)コピーワンス・ダビング10・B-CAS問題について
 私はコピーワンスにもダビング10にも反対する。そもそも、この問題は、放送局・権利者にとっては、視聴者の利便性を著しく下げることによって、一旦は広告つきながらも無料で放送したコンテンツの市場価格を不当につり上げるものとして機能し、国内の大手メーカーとっては、B-CASカードの貸与と複雑な暗号システムを全てのテレビ・録画機器に必要とすることによって、中小・海外メーカーに対する参入障壁として機能するB-CASシステムの問題を淵源とするのであって、このB-CASシステムと独禁法の関係を検討するということを知財計画2010では明記してもらいたい。検討の上B-CASシステムが独禁法違反とされるなら、速やかにその排除をして頂きたい。また、無料の地上放送において、逆にコピーワンスやダビング10のような視聴者の利便性を著しく下げる厳格なコピー制御が維持されるのであれば、私的録画補償金に存在理由はなく、これを速やかに廃止するべきである。

d)著作権検閲・ストライクポリシーについて
 まだ実施されてはいないが、総務省の「利用者視点を踏まえたICTサービスに係る諸問題に関する研究会」において、携帯電話においてダウンロードした音楽ファイルを自動検知した上でそのファイルのアクセス・再生制限を行うという、日本レコード協会の著作権検閲の提案が取り上げられており、今現在、このような著作権検閲の提案が政府レベルで検討されかねない非常に危険な状態にあるが、通信の秘密という基本的な権利の適用は監視の位置がサーバーであるか端末であるかによらないものであること、特に、機械的な処理であっても通信の秘密を侵害したことには変わりはないとされ、通信の秘密を侵害する行為には、当事者の意思に反して通信の構成要素等を利用すること(窃用すること)も含むとされていることを考えると、このような日本レコード協会が提案している著作権対策は、明らかに通信の秘密を侵害するものである。

 また、本来最も基本的なプライバシーに属する個人端末中の情報について、内容を自動検知し、アクセス制限・再生禁止等を行うことは、それ自体プライバシー権を侵害するものであり、プライバシーの観点からも、このような措置は導入されるべきでない。

 最も基本的なプライバシーに属する個人端末中の情報について、内容を自動検知し、アクセス制限・再生禁止等を行う日本レコード協会が提案している違法音楽配信対策は、技術による著作権検閲に他ならず、憲法に規定されている表現の自由(情報アクセス権を含む)や検閲の禁止に明らかに反するものであり、通信の秘密や検閲の禁止、表現の自由、プライバシーといった個人の基本的な権利をないがしろにするものである、このような対策は絶対に導入されるべきでなく、また技術支援・実証実験等として税金のムダな投入がなされるべきではない。

 さらに付言すれば、日本レコード協会の携帯端末における違法音楽配信対策は、建前は違えど、中国でPCに対する導入が検討され、大騒ぎになった末、今現在導入が無期延期されているところの検閲ソフト「グリーン・ダム」と全く同じ動作をするものであるということを政府にははっきりと認識してもらいたい。このような検閲ソフトの導入については、日本も政府として懸念を表明しているはずであり、自由で民主的な社会において、このような技術的検閲が導入されることなど、絶対許されないことである。

 同じく、フランスで今なお揉めているネット切断型のストライクポリシー類似の、ファイル共有ソフトを用いて著作権を侵害してファイル等を送信していた者に対して警告メールを送付することなどを中心とする電気通信事業者と権利者団体の連携による著作権侵害対策の検討が、警察庁、総務省、文化庁などの規制官庁が絡む形で行われ、さらにネット切断までを含むストライクポリシーを著作権団体が求めているが、このような検討も著作権検閲に流れる危険性が極めて高い。

 フランスで導入が検討された、警告メールの送付とネット切断を中心とする、著作権検閲機関型の違法コピー対策である3ストライクポリシーは、この6月に、憲法裁判所によって、インターネットのアクセスは、表現の自由に関係する情報アクセスの権利、つまり、最も基本的な権利の1つとしてとらえられるとされ、著作権検閲機関型の3ストライクポリシーは、表現の自由・情報アクセスの権利やプライバシーといった他の基本的な権利をないがしろにするものとして、真っ向から否定されている。フランスでは今なおストライクポリシーに関して揉め続けているが、日本においては、このようなフランスにおける政策の迷走を他山の石として、このように表現の自由・情報アクセスの権利やプライバシーといった他の基本的な権利をないがしろにする対策を絶対に導入しないこととするべきであり、警察庁などが絡む形で検討が行われている違法ファイル共有対策についても、通信の秘密やプライバシー、情報アクセス権等の国民の基本的な権利をきちんと尊重する形で検討を進めることが担保されなくてはならない。

 これらの提案や検討からも明確なように、違法コピー対策問題における権利者団体の主張は常に一方的かつ身勝手であり、ネットにおける文化と産業の発展を阻害するばかりか、インターネットの単純なアクセスすら危険なものとする非常識なものばかりである。今後は、このような一方的かつ身勝手な規制強化の動きを規制するため、憲法の「表現の自由」に含まれ、国際人権B規約にも含まれている国民の「知る権利」を、あらゆる公開情報に安全に個人的にアクセスする権利として、通信法に法律レベルで明文で書き込むことを検討するべきである。同じく、憲法に規定されている検閲の禁止から、技術的な著作権検閲やサイトブロッキングのような技術的検閲の禁止を通信法に法律レベルで明文で書き込むことを検討するべきである。

e)著作権等に関する真の国際動向について国民へ知らされる仕組みの導入について
 また、WIPO等の国際機関にも、政府から派遣されている者はいると思われ、著作権等に関する真の国際動向について細かなことまで即座に国民へ知らされる仕組みの導入を是非検討してもらいたい。

f)天下りについて
 最後に、知財政策においても、天下り利権が各省庁の政策を歪めていることは間違いなく、知財政策の検討と決定の正常化のため、文化庁から著作権関連団体への、総務省から放送通信関連団体・企業への、警察庁からインターネットホットラインセンター他各種協力団体・自主規制団体への天下りの禁止を知財本部において決定して頂きたい。(これらの省庁は特にひどいので特に名前をあげたが、他の省庁も含めて決定してもらえるなら、それに超したことはない。)

(3)その他一般的な情報・ネット・表現規制について
 前回の知財計画改訂において、一般的な情報・ネット・表現規制に関する項目は削除されたが、常に一方的かつ身勝手な主張を繰り広げる自称良識派団体が、意味不明の理屈から知財とは本来関係のない危険な規制強化の話を知財計画に盛り込むべきと主張をしてくることが十分に考えられるので、ここでその他の危険な一般的な情報・ネット・表現規制強化の動きに対する反対意見も述べる。今後も、本来知財とは無関係の、一般的な情報・ネット・表現規制に関する項目を絶対に知財計画に盛り込むことのないようにしてもらいたい。

a)青少年ネット規制法・出会い系サイト規制法について
 そもそも、青少年ネット規制法は、あらゆる者から反対されながら、有害無益なプライドと利権を優先する一部の議員と官庁の思惑のみで成立したものであり、速やかに廃止が検討されるべきものである。また、出会い系サイト規制法の改正は、警察庁が、どんなコミュニケーションサイトでも人は出会えるという誰にでも分かることを無視し、届け出制の対象としては事実上定義不能の「出会い系サイト事業」を定義可能と偽り、改正法案の閣議決定を行い、法案を国会に提出したものであり、他の重要法案と審議が重なる中、国会においてもその本質的な問題が見過ごされて可決され、成立したものである。憲法上の罪刑法定主義や検閲の禁止にそもそも違反している、今回の出会い系サイト規制法の改正についても、今後、速やかに元に戻すことが検討されるべきである。

b)児童ポルノ規制・サイトブロッキングについて
 児童ポルノ法規制強化問題・有害サイト規制問題における自称良識派団体の主張は、常に一方的かつ身勝手であり、ネットにおける文化と産業の発展を阻害するばかりか、インターネットの単純なアクセスすら危険なものとする非常識なものばかりである。今後は、このような一方的かつ身勝手な規制強化の動きを規制するため、憲法の「表現の自由」に含まれ、国際人権B規約にも含まれている国民の「知る権利」を、あらゆる公開情報に安全に個人的にアクセスする権利として、通信法に法律レベルで明文で書き込むべきである。同じく、憲法に規定されている検閲の禁止から、技術的な検閲やサイトブロッキングのような技術的検閲の禁止を通信法に法律レベルで明文で書き込むべきである。

 閲覧とダウンロードと取得と所持の区別がつかないインターネットにおいては、例え児童ポルノにせよ、情報の単純所持や取得の規制は有害無益かつ危険なもので、憲法及び条約に規定されている「知る権利」を不当に害するものとなる。「自身の性的好奇心を満たす目的で」、積極的あるいは意図的に画像を得た場合であるなどの限定を加えたところで、エスパーでもない限りこのような積極性を証明することも反証することもできないため、このような情報の単純所持や取得の規制の危険性は回避不能であり、思想の自由や罪刑法定主義にも反する。繰り返し取得としても、インターネットで2回以上他人にダウンロードを行わせること等は技術的に極めて容易であり、取得の回数の限定も、何ら危険性を減らすものではない。

 児童ポルノ規制の推進派は常に、提供による被害と単純所持・取得を混同する狂った論理を主張するが、例えそれが児童ポルノであろうと、情報の単純所持ではいかなる被害も発生し得えない。現行法で、ネット上であるか否かにかかわらず、提供及び提供目的の所持まで規制されているのであり、提供によって生じる被害と所持やダウンロード、取得、収集との混同は許され得ない。そもそも、最も根本的なプライバシーに属する個人的な情報所持・情報アクセスに関する情報を他人が知ることは、通信の秘密や情報アクセスの権利、プライバシーの権利等の基本的な権利からあってはならないことである。

 アニメ・漫画・ゲームなどの架空の表現に対する規制対象の拡大も議論されているが、このような対象の拡大は、児童保護という当初の法目的を大きく逸脱する、異常規制に他ならない。アニメ・漫画・ゲームなどの架空の表現において、いくら過激な表現がなされていようと、それが現実の児童被害と関係があるとする客観的な証拠は何一つない。いまだかつて、この点について、単なる不快感に基づいた印象批評と一方的な印象操作調査以上のものを私は見たことはないし、虚構と現実の区別がつかないごく一部の自称良識派の単なる不快感など、言うまでもなく一般的かつ網羅的な表現規制の理由には全くならない。アニメ・漫画・ゲームなどの架空の表現が、今の一般的なモラルに基づいて猥褻だというのなら、猥褻物として取り締まるべき話であって、それ以上の話ではない。どんな法律に基づく権利であれ、権利の侵害は相対的にのみ定まるものであり、実際の被害者の存在しない創作物・表現に対する規制は何をもっても正当化され得ない。民主主義の最重要の基礎である表現の自由や言論の自由、思想の自由等々の最も基本的な精神的自由そのものを危うくすることは絶対に許されない。

 単純所持規制にせよ、創作物規制にせよ、両方とも1999年当時の児童ポルノ法制定時に喧々囂々の大議論の末に除外された規制であり、規制推進派が何と言おうと、これらの規制を正当化するに足る立法事実の変化はいまだに何一つない。

 また、児童ポルノ流通防止協議会において、警察などが提供するサイト情報に基づき、統計情報のみしか公表しない不透明な中間団体を介し、児童ポルノアドレスリストの作成が行われ、そのリストに基づいて、ブロッキング等を行うとする検討が行われているが、いくら中間に団体を介そうと、一般に公表されるのは統計情報に過ぎす、児童ポルノであるか否かの判断情報も含め、アドレスリストに関する具体的な情報は、全て閉じる形で秘密裏に保持されることになるのであり、インターネット利用者から見てそのリストの妥当性をチェックすることは不可能であり、このようなアドレスリストの作成・管理において、透明性・公平性・中立性を確保することは本質的に完全に不可能である。このようなリストに基づくブロッキング等は、自主的な取組という名目でいくら取り繕おうとも、憲法に規定されている表現の自由(知る権利・情報アクセスの権利を含む)や検閲の禁止といった国民の基本的な権利を侵害するものとならざるを得ないのであり、小手先の運用変更などではどうにもならない。このような非人道的な検討しか行い得ない本児童ポルノ流通防止協議会は即刻解散されるべきである。

 サイトブロッキングについても、総務省なり警察なり天下り先の検閲機関・自主規制団体なりの恣意的な認定により、全国民がアクセスできなくなるサイトを発生させるなど、絶対にやってはならないことである。例えそれが何であろうと、情報の単純所持や単なる情報アクセスではいかなる被害も発生し得えないのであり、自主的な取組という名目でいくら取り繕おうとも、憲法に規定されている表現の自由(知る権利・情報アクセスの権利を含む)や検閲の禁止といった国民の基本的な権利を侵害するものとならざるを得ないサイトブロッキングは導入されてはならないものである。

 児童ポルノ規制法に関しては、既に、提供及び提供目的での所持が禁止されているのであるから、本当に必要とされることは今の法律の地道なエンフォースであって有害無益かつ危険極まりない規制強化の検討ではない。児童ポルノ規制法に関して検討すべきことは、現行ですら過度に広汎であり、違憲のそしりを免れない児童ポルノの定義の厳密化のみである。

 なお、民主主義の最重要の基礎である表現の自由に関わる問題において、一方的な見方で国際動向を決めつけることなどあってはならないことであり、欧米においても、情報の単純所持規制やサイトブロッキングの危険性に対する認識はネットを中心に高まって来ていることは決して無視されてはならない。例えば、ドイツのバンド「Scorpions」が32年前にリリースした「Virgin Killer」というアルバムのジャケットカバーが、アメリカでは児童ポルノと見なされないにもかかわらず、イギリスでは該当するとしてブロッキングの対象となり、プロバイダーによっては全Wikipediaにアクセス出来ない状態が生じたなど、欧米では、行き過ぎた規制の恣意的な運用によって弊害が生じていることや、アメリカにおいても、去年の1月に連邦最高裁で児童オンライン保護法が違憲として完全に否定され、去年の2月に連邦控訴裁でカリフォルニア州のゲーム規制法が違憲として否定されていること、つい最近からのドイツ国会への児童ポルノサイトブロッキング反対電子請願(https://epetitionen.bundestag.de/index.php?action=petition;sa=details;petition=3860)に13万筆を超える数の署名が集まったこと、ドイツにおいても児童ポルノサイトブロッキング法は検閲法と批判され、既に憲法裁判が提起されており(http://www.netzeitung.de/politik/deutschland/1393679.html参照)、総選挙の結果与党に入ったドイツ自由民主党の働きかけで、ネット検閲法であるとして児童ポルノブロッキング法の施行が見送られ、ブロッキングはせずにまずサイトの取り締まりをきちんと警察にやらせ、1年後にその評価をしてブロッキングの是非を判断することとされ(http://www.tomshardware.com/de/Zensur-Internet-ZugErschwG-Provider-Koalition,news-243605.html参照)、ドイツ大統領もこの児童ポルノサイトブロッキング法に対する署名を拒否したこと(http://www.zeit.de/politik/2009-11/sperre-gesperrt参照)なども注目されるべきである。スイスにおいて最近発表された調査でも、2002年に児童ポルノ所持で捕まった者の追跡調査を行っているが、実際に過去に性的虐待を行っていたのは1%、6年間の追跡調査で実際に性的虐待を行ったものも1%に過ぎず、児童ポルノ所持はそれだけでは、性的虐待のリスクファクターとはならないと結論づけており、児童ポルノの単純所持規制・ブロッキングの根拠は完全に否定されているのである(http://www.biomedcentral.com/1471-244X/9/43/abstract参照)。欧州連合において、インターネットへのアクセスを情報の自由に関する基本的な権利として位置づける動きがあることも見逃されてはならない(http://europa.eu/rapid/pressReleasesAction.do?reference=MEMO/09/491&format=HTML&aged=0&language=EN&guiLanguage=en参照)。政府・与党内の検討においては、このような国際動向もきちんと取り上げるべきである。

 自民党・公明党から、危険極まりない単純所持規制を含む児童ポルノの改正法案が国会に提出されているという危険な状態が今なお続いているが、政府・与党においては、児童ポルノを対象とするものにせよ、いかなる種類のものであれ、情報の単純所持・取得規制・ブロッキングは極めて危険な規制であるとの認識を深め、このような規制を絶対に行わないこととして、危険な法改正案が2度と与野党から提出されることが無いようにするべきである。かえって、児童ポルノの単純所持規制・創作物規制といった非人道的な規制を導入している諸国は即刻このような規制を廃止するべきと、そもそも最も根本的なプライバシーに属し、何ら実害を生み得ない個人的な情報所持・情報アクセスに関する情報を他人が知ること自体、通信の秘密や情報アクセスの権利、プライバシーの権利等の国際的かつ一般的に認められている基本的な権利からあってはならないことであると、日本政府から国際的な場において各国に積極的に働きかけてもらいたい。

 また、様々なところで検討されている有害サイト規制についても、その規制は表現に対する過度広汎な規制で違憲なものとしか言いようがなく、各種有害サイト規制についても私は反対する。

 インターネットにおけるこれ以上の知財保護強化・規制強化は有害無益かつ危険なものとしかなりようがないということをきちんと認識し、真の国民視点に立った知財の規制緩和の検討が知財本部でなされることを期待すると最後に繰り返しておく。

|

« 第212回:内閣府「ハトミミ.com」(集中受付期間2月17日〆切)への提出パブコメ | トップページ | 第214回:表現の自由の一般論(その2:表現の自由に関する違憲基準) »

知財本部・知財事務局」カテゴリの記事

コメント

はじめまして、
私もACTAには強い関心があります。特にISPに対する義務付けに強い不安を抱いています。また、仰るとおり極秘裏に条約内容を制定しようとする動きに、より不安感を強めています。

是非、適時のアップデートを御願いします。マイケル・ガイスト氏のBlogはRSSで何時も読んでいて、逐次Twitterで流していますが、如何せん英語ですので・・・。

正直、このサイトを見つけるまで自分に何か出来る事があるかどうかさえ分かりませんでした。また、専門でもありません。

もし、よろしければメールを頂ければ幸いです。

乱文で申し訳有りません。

投稿: Koojih | 2010年2月 6日 (土) 11時07分

Koojih様

コメントありがとうございます。
私の書いたことが何かの参考になっているようであれば幸いです。
ブログは今後もアップデートして行くつもりです。

エントリ中でリンクを張ったので、ご覧頂いているかと思いますが、
ACTAの問題については「P2Pとかその辺のお話」様
http://peer2peer.blog79.fc2.com/
も継続的に追いかけています。

インターネットユーザー協会MIAU
http://miau.jp/
もACTAについては関心を寄せています。
http://ketudancom.blog47.fc2.com/blog-entry-297.html
ケツダンポトフ:新春特別企画「MIAUで語り尽くす、どーなる!?2010年のネット界!」をダダ漏れしました

日本ではACTAはまだあまり騒がれていないのですが、
Koojih様も是非私のブログだけでなく他の情報も集め、自分で考え、
ご自身にできることを地道にして頂ければと思います。

(また、ちょっとしたメモ用にtwitter
http://twitter.com/fr_toen
も使っていますので、念のため。)

兎園(この返信コメントは、今しがた送らせて頂いたメールの転載です。)

投稿: 兎園 | 2010年2月 6日 (土) 21時52分

ハトミミ.comと知財計画パブコメについてメールにて質問させていただきました。
お答えいただければ幸いです。

投稿: 水色の騎士 | 2010年2月11日 (木) 03時45分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/429615/33229985

この記事へのトラックバック一覧です: 第213回:知財本部・新たな「知的財産推進計画(仮称)」の策定に向けた意見募集(2月15日〆切)への提出パブコメ:

» 一阿のことば 32 「〔しーたろう〕のクリスマスメッセージへの返信6」 [ガラス瓶に手紙を入れて]
昭和50年代でしたか、尾崎巌という慶応の教授がいました。同期でした。 [続きを読む]

受信: 2010年2月 3日 (水) 23時18分

« 第212回:内閣府「ハトミミ.com」(集中受付期間2月17日〆切)への提出パブコメ | トップページ | 第214回:表現の自由の一般論(その2:表現の自由に関する違憲基準) »