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2010年1月18日 (月)

第211回:児童ポルノ流通防止協議会「児童ポルノ掲載アドレスリスト作成管理団体運用ガイドライン(案)」に対する意見募集(1月28日〆切)への提出パブコメ

 このパブコメについては「チラシの裏(3周目)」、「表現規制について少しだけ考えてみる(仮)」、「『反オタク国会議員リスト』メモ」、「表現の数だけ人生が在る」、「ある、古参のエロゲプログラマー(エログラマー)の戯れ言」、「止めろ!規制社会・監視国家ブログ版」等でも取り上げられているので、リンク先もご覧頂ければと思うが、前の目次7で少し書いた通り、今現在、児童ポルノ流通防止協議会から、実質規制官庁主導による(事務局がインターネット協会という、警察の息のかかった半官検閲センターであるインターネット・ホットラインセンターを運営し、総務省と経産省が所管する財団法人であることからも、このガイドラインの作成について実質規制官庁が関与し、主導していることは明らかに分かることである)、「児童ポルノ掲載アドレスリスト作成管理団体運用ガイドライン(案)(pdf)」という、児童ポルノを理由にしたネット検閲ガイドラインのパブコメ募集が1月28日〆切でかかっている(インターネット協会のリリースinternet watchの記事参照)。

 下に書いて提出したパブコメを載せるので、詳しくは下を参照してもらえればと思うが、パブコメの対象となっているガイドライン(pdf)の要点は、警察などが提供するサイト情報に基づき、統計情報のみしか公表しない不透明な専門委員会とリスト作成管理団体を介し、児童ポルノアドレスリストの作成が行われ、そのリストに基づいて、インターネット・サービス・プロバイダー、検索サービス事業者あるいはフィルタリング事業者がブロッキング等を行うとすることにある。

 しかし、いくら中間に団体を介そうと、一般に公表されるのは統計情報に過ぎす、児童ポルノであるか否かの判断情報も含め、アドレスリストに関する具体的な情報は、全て閉じる形で秘密裏に保持されることになるのであり、インターネット利用者から見てそのリストの妥当性をチェックすることは不可能である。このようなアドレスリストの作成・管理において、透明性・公平性・中立性を確保することは本質的に完全に不可能なのであり、そのため、このようなリストに基づくブロッキング等は、自主的な取組という名目でいくら取り繕おうとも、憲法に規定されている表現の自由(知る権利・情報アクセスの権利を含む)や検閲の禁止といった国民の基本的な権利を侵害するものとならざるを得ないのである。これは、小手先の運用変更などでどうにかなる問題では断じて無い。

 このブログでは何度も繰り返していることだが、ブロッキングはどこをどうやっても検閲にしかならない。この極めてレベルの低いガイドラインは、規制官庁がそろい踏みで関与する不透明な管理団体でアドレスリストを作成してブロッキング等を実施すると、要するに児童ポルノを理由としてネット検閲を実施するとしているものであり、到底看過できるものでは無い。役所のパブコメでは無く、役所の所管する団体レベルのパブコメだが、このガイドラインのレベルはあまりにお粗末であり、その危険性はいつも紹介している各種の役所のパブコメに勝るとも劣らない。情報規制問題に関心を寄せているあらゆる人・企業・団体にこのパブコメは出してもらいたいと私は思っている。

(2010年1月19日の追記:目次7で少し触れた中国におけるグーグル検閲問題について、ITmediaの記事で書かれているように、グーグルは中国政府と交渉を続けるつもりらしく、さらに政治レベルに突入したら先は読めなくなるが、ここまでタンカを切ってこの先中国政府と下らない妥協をした日には、グーグルは世界最大にして最低のネット企業という烙印を押されることだろう。

 日経エレクトロニクスの記事になっているが、今日私的録音録画補償金裁判の第1回口頭弁論が行われる。私的複製問題の本質に関わる大注目裁判として、このことについても目は離せない。

 また、海賊版対策条約(ACTA)の次回メキシコ交渉(1月26日から29日)の交渉アジェンダをニュージーランド政府がそのHPに載せている。交渉アジェンダに「デジタル環境におけるエンフォースメント手続き」が載っており、ここで、ストライクポリシー、実質的なネット検閲が検討されるだろうことは間違いない。ただし、やはりこの条約の「透明性」がアジェンダに載っていることも見逃されてはならないだろう。)

(2010年1月20日の追記:先日開かれた私的録音録画補償金訴訟の第1回口頭弁論の話が、PC Onlineの記事になっている。第1回なので当然意見は言いっぱなしだが、東芝側が論理構成から争うとしていることから考えても、この裁判で私的録音録画補償金のかなりの問題点が明らかになることだろう。

また、今日、文化庁で、文化審議会・著作権分科会・法制問題小委員会が開かれ、著作権の一般規定・フェアユースの議論が行われた(共同通信の記事ITmediaの記事PC Onlineの記事知財情報局の記事参照)。これらの記事を読んだだけでも分かるが、この話も、案の定、文化庁と権利者団体は結託して、全国民を裨益するだろう新しい権利制限を無意味に狭く、使えないものとしようとして来ている。いろいろと例をあげて議論したようだが、このような例示について、今まであらゆる権利制限について、文化庁と癒着利権団体が結託して潰すか極めて狭く使えないものとして来たからこその一般規定の議論であるということがまだこの連中には分かっていないと見える。このフェアユースの議論も、3月くらいまでに中間とりまとめを作ってパブコメ、秋までくらいに結論という文化庁のお決まりのスケジュールに乗るようであり、まだこれからである。この話もまた適当なところで取り上げたいと思っている。)

(2010年1月21日の追記:昨日の法制問題小委員会の資料として、権利制限の一般規定(フェアユース)ワーキングチーム報告書(pdf)とその概要(pdf) 文化庁HPにアップされている。上の追記で書いた通り、この話もまた適当なところで取り上げるつもりであり、今ここで細かな突っ込みをする気は無いが、文化庁のこれらの資料は、例の如く印象操作とミスリード満載の一大悪作文であり、その内容は以前にもまして劣悪である。)

(2010年1月22日の追記:「表現の数だけ人生が在る」のmudan様より、トラックバックを送ったとのコメントを頂いたが、届いていることを確認できなかったので、その代わりにこのエントリの最初の参考リンク中に、mudan様のブログエントリへのリンクを追加した。)

(2010年1月22日夜の追記:エントリの最初の参考リンク中に「ある、古参のエロゲプログラマー(エログラマー)の戯れ言」と「止めろ!規制社会・監視国家ブログ版」を追加した。もしまだご覧になっていないようであれば、是非ご一読をお勧めする。

 また、昨日(1月21日)、アメリカのヒラリー・クリントン米国務長官が、中国におけるグーグル検閲問題に端を発したネット検閲問題について、インターネットにおける情報の自由を全面的に支持するとの演説を行った(共同通信の記事時事通信の記事アメリカ国務省HPに掲載されている演説全文と動画参照)。主要国政府の高官で、インターネットにおける表現の自由の重要性を全面的に肯定し、ネット検閲を明確に大々的に非難したのは恐らくヒラリー長官が初めてであり、今後のアメリカの政策次第ではあるが、この演説は歴史的演説となるだろう。ただし、これほど自由という言葉に反応するアメリカも、残念ながら、なお児童ポルノ規制と著作権規制に関しては狂ったことをやって恬然としている。この演説は1つのターニングポイントにはなるだろうが、まだ道は長い。)

(以下、提出パブコメ)

1.氏名及び連絡先
氏名:兎園(個人)
連絡先:

2.意見
 検閲たらざるを得ず、情報・表現に関する国民の基本的な権利を侵害するものとならざるを得ない、アドレスリストに基づくブロッキング等について実施されるべきでないのは無論のこと、そのためのアドレスリストの作成、このリスト作成のための専門委員会・リスト作成団体等の設置もされるべきではない。本ガイドラインを全て白紙に戻し、即刻本児童ポルノ流通防止協議会を解散することを私は求める。

3.理由
 本ガイドラインの要点は、警察などが提供するサイト情報に基づき、統計情報のみしか公表しない不透明な専門委員会とリスト作成管理団体を介し、児童ポルノアドレスリストの作成が行われ、そのリストに基づいて、インターネット・サービス・プロバイダー、検索サービス事業者あるいはフィルタリング事業者がブロッキング等を行うとすることにある。

 しかし、いくら中間に団体を介そうと、一般に公表されるのは統計情報に過ぎす、児童ポルノであるか否かの判断情報も含め、アドレスリストに関する具体的な情報は、全て閉じる形で秘密裏に保持されることになるのであり、インターネット利用者から見てそのリストの妥当性をチェックすることは不可能であり、このようなアドレスリストの作成・管理において、透明性・公平性・中立性を確保することは本質的に完全に不可能である。このことは、このようなリストに基づくブロッキング等が、自主的な取組という名目でいくら取り繕おうとも、どうして憲法に規定されている表現の自由(知る権利・情報アクセスの権利を含む)や検閲の禁止といった国民の基本的な権利を侵害するものとならざるを得ないかということの根本的な理由であり、小手先の運用変更などでどうにかなる問題では断じて無い。

(検閲の禁止について、税関検査や教科書検定に関する最高裁判決から、あたかも検閲の禁止が事前規制のみに限られるかの如きことを言っている役所もあるが、学説上必ずしもそのような狭い解釈が取られている訳ではなく、これらの最高裁判決自体、昨今のインターネットの普及を踏まえたものでなく今日もなお通用するかどうか怪しいものである。今日ではインターネット上でしか発表・流通の機会を持たない表現物が既に多く存在しているのであり、例え事後規制だろうと、そのような表現物の発表・流通を完全に抑制しかねない規制は、やはり検閲に該当するとする方が妥当である。)

 インターネット利用者から見て透明性・公平性・中立性の確保が不可能な、すなわち濫用の防止が不可能なリストに基づくブロッキング等は、どこをどうやっても検閲にしかなり得ないものであり、その問題はアドレスリスト作成管理に関する運用ガイドラインの修正のような小手先の変更で解決され得るものでは無い。本ガイドラインを全て白紙に戻し、このような非人道的な検討しか行い得ない本児童ポルノ流通防止協議会を即刻解散することを私は求める。

 小手先の修正を求めているのではないことは上に書いた通りであるが、論外の印象操作等、ガイドラインを全て白紙に戻すべきと私が思っている所以の記載を以下に指摘して行く。

・第2ページの「児童ポルノについては、その製造時に個々の児童への著しい性的虐待を伴うことや被害児童に対する脅迫の道具として利用され得るという問題があるほか、児童ポルノがインターネット上に一旦流通した場合には、これを回収することは極めて困難であり、性的虐待の現場を永久に残し、被害児童の心を傷つけ続けることとなるという問題や児童ポルノの流通によって児童を性欲の対象として捉える風潮を助長するという問題がある。そのため、児童ポルノは他の違法情報と明確に区分して対策を行う必要がある。」という記載について:

 これは、根拠の無い印象操作を含む記載である。情報の違法性の本質的な相対性をなおざりにして、情報の「流通」という姑息な言葉で情報の提供者が誰かという最も重要な論点をごまかし、あたかも検閲が正当化されるかの如き印象操作を行うことは許されない。例えそれが児童ポルノであろうと、情報の単純所持や単なる情報アクセスではいかなる被害も発生し得えない。現行法で、ネット上であるか否かにかかわらず、提供及び提供目的の所持まで規制されているのであり、提供によって生じる被害と所持やダウンロード、取得、収集、アクセスとの混同は許され得ない。そもそも、最も根本的なプライバシーに属する個人的な情報所持・情報アクセスに関する情報を他人が知ること自体、通信の秘密や情報アクセスの権利、プライバシーの権利等の基本的な権利からあってはならないことである。

 「児童ポルノの流通によって児童を性欲の対象として捉える風潮を助長する」という記載も全く根拠の無い一方的な決め付けである。上で書いた通り、提供及び提供目的の所持まで規制されているのであり、提供によって生じる被害と所持やダウンロード、取得、収集、アクセスとの混同は許され得ないのであり、このような強力効果論は、児童ポルノ以前に一般的なポルノの規制の根拠としてほぼ完全に否定されているものであり、表現・情報規制の根拠としてほとんど一顧だに値しないものである。

 すなわち、「児童ポルノは他の違法情報と明確に区分して対策を行う必要がある」とするに足る根拠は全く無い。

・同第2ページの「ウェブサイト等には、依然として多数の児童ポルノが流通しており、インターネット利用者がこれらの児童ポルノを容易に検索、閲覧することが可能な状態となっている」という記載について:

 これも具体的なデータが示されておらず、単なる印象の域を出ない記載である。このような単なる印象に基づいて情報に対する規制が正当化されることなど無い。

・同第2ページの「例えば、諸外国においては、既に官民が連携した対策が積極的に行われており、英国、 イタリア、スウェーデン、フィンランドを始めとする多くの欧米諸国では、 ホットラインの運用による児童ポルノの削除のほか、ISPによるブロッキング等の対策が実施されている」という記載について:

 この記載は、欧米においても、情報の単純所持規制やサイトブロッキングの危険性に対する認識がネットを中心に高まって来ていることを完全に無視している。

 例えば、ドイツのバンド「Scorpions」が32年前にリリースした「Virgin Killer」というアルバムのジャケットカバーが、アメリカでは児童ポルノと見なされないにもかかわらず、イギリスでは該当するとしてブロッキングの対象となり、プロバイダーによっては全Wikipediaにアクセス出来ない状態が生じたなど、欧米では、行き過ぎた規制の恣意的な運用によって弊害が生じていることや、アメリカにおいても、この1月に連邦最高裁で児童オンライン保護法が違憲として完全に否定され、この2月に連邦控訴裁でカリフォルニア州のゲーム規制法が違憲として否定されていること、つい最近からのドイツ国会への児童ポルノサイトブロッキング反対電子請願(https://epetitionen.bundestag.de/index.php?action=petition;sa=details;petition=3860)に13万筆を超える数の署名が集まったこと、ドイツにおいても児童ポルノサイトブロッキング法は検閲法と批判され、既に憲法裁判が提起されており(http://www.netzeitung.de/politik/deutschland/1393679.html参照)、総選挙の結果与党に入ったドイツ自由民主党の働きかけで、ネット検閲法であるとして児童ポルノブロッキング法の施行が見送られ、ブロッキングはせずにまずサイトの取り締まりをきちんと警察にやらせ、1年後にその評価をしてブロッキングの是非を判断することとされ(http://www.tomshardware.com/de/Zensur-Internet-ZugErschwG-Provider-Koalition,news-243605.html参照)、ドイツ大統領もこの児童ポルノサイトブロッキング法に対する署名を拒否したこと(http://www.zeit.de/politik/2009-11/sperre-gesperrt参照)なども注目されるべきである。スイスにおいて最近発表された調査でも、2002年に児童ポルノ所持で捕まった者の追跡調査を行っているが、実際に過去に性的虐待を行っていたのは1%、6年間の追跡調査で実際に性的虐待を行ったものも1%に過ぎず、児童ポルノ所持はそれだけでは、性的虐待のリスクファクターとはならないと結論づけており、児童ポルノの単純所持規制・ブロッキングの根拠は完全に否定されているのである(http://www.biomedcentral.com/1471-244X/9/43/abstract参照)。欧州連合において、インターネットへのアクセスを情報の自由に関する基本的な権利として位置づける動きがあることも見逃されてはならない(http://europa.eu/rapid/pressReleasesAction.do?reference=MEMO/09/491&format=HTML&aged=0&language=EN&guiLanguage=en参照)。

 民主主義の最重要の基礎である表現の自由に関わる問題において、一方的な見方で国際動向を決めつけることなどあってはならないことであり、このような国際動向もきちんと取り上げるべきである。

・第2ページの「我が国において、ブロッキングの実施、検索結果からの排除、フィルタリングリストへの反映等の対策を講じるためには、児童ポルノの流通防止対策を推進する事業者等に対して、児童ポルノ該当性についての判断を経た上で作成されたアドレスリストが提供される必要がある。このため、十分な透明性と客観性を確保しつつ、警察庁及びインターネット・ホットラインセンターが把握した児童ポルノに係る情報に基づき、アドレスリストを作成し、児童ポルノの流通防止対策を推進する事業者等にこれらを提供するとともに、当該アドレスリスト上に掲載された児童ポルノに係る情報について検証等を行う機能を有する団体を設けることが重要であることから、リスト作成管理団体を設置することとしたものである」という記載について:

 アドレスリストの作成とその運用自体に関する問題については、該当箇所の記載についてのところでも問題点を指摘するが、同第2ページ注2において、「我が国でのブロッキングの実施について、技術的課題として正確性・導入コスト・実施に伴うリスク等の観点から、法的課題として表現の自由・通信の秘密・利用の公平等の観点から、検討が進められているところである」と書かれている通り、また上でも書いた通り、ブロッキングの実施には乗り越えることが不可能な技術的・法的問題があるのであり、このようにブロッキング等が実施されることを前提としてリスト作成管理団体の設置の必要性が正当化されるとすることは、結論ありきの不適切極まるものである。

・同第2ページから第3ページの「前項で挙げたブロッキング等の対策に対する社会的な評価は、アドレスリストに対する評価に大きく依存するものである。このため、アドレスリストの作成、維持・管理等については、十分な透明性と客観性を確保しつつ、社会から信頼を寄せられるものとする必要がある」という記載について:

 上でも書いた通り、アドレスリストの作成、維持・管理等について、十分な透明性と客観性を確保することは不可能であり、ブロッキングの実施には乗り越えることが不可能な技術的・法的課題があるのであり、「ブロッキング等の対策に対する社会的な評価は、アドレスリストに対する評価に大きく依存する」といったブロッキングの実施を前提とする記載は、結論ありきの不適切極まるものである。そもそも検閲にしかなり得ないブロッキングについて、社会的に評価される、社会から信頼を寄せられるとすること自体、情報に関する個人の基本的な権利を完全にないがしろにすることである。

・第3ページの「児童ポルノについては、提供が禁止されるなど既に表現の自由は制限されているものの、政府機関がアドレスリストの作成、維持・管理等を行った場合、表現の自由に対する過度な規制強化と捉えられるおそれがある。このことから、アドレスリストの作成、維持・管理等については、民間のイニシアティブにて実施することが望ましい」という記載について:

 「児童ポルノについては、提供が禁止されるなど既に表現の自由は制限されている」という記載は、情報の違法性に関する本質的な相対性を無視し、あたかも表現の自由より児童ポルノ規制の方があらゆる点において優先されてしかるべきであるかの如き不適切な印象操作を含む記載である。上でも書いた通り、提供によって生じる被害と所持やダウンロード、取得、収集、アクセスとの混同は許され得ないのであり、情報に関する規制を行うにあたって、具体的な被害・加害行為を超えて、民主主義の最大の基礎である表現の自由を制限することは、憲法違反として断じて許されないことである。

 また、以下でも指摘するが、あたかも民間団体でアドレスリストの作成、維持・管理等を行えば表現の自由の侵害にならないとすることも極めて悪辣なミスリードである。いくら中間団体を介しようと、警察あるいはその下部機関であるインターネット・ホットラインセンターなどからの情報・実質的な要請に基づき、ISP等にリストに基づくブロッキング等が事実上強制されるのであれば全く同じことであり、このような規制は、検閲とならざるを得ず、表現・情報に関する個人の基本的な権利を侵害するものとならざるを得ないものである。

(インターネット協会が運営するインターネット・ホットラインセンターが、民間団体でありながら、警察からの委託事業を行う、事実上の警察の下部組織であることは、総務省の「インターネット上の違法・有害情報への対応に関する検討会」の報告書(http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/2009/090116_1.html参照)も認めているところである。)

・第3ページの「リスト作成管理団体の監督等を行うため、児童ポルノ流通防止協議会において選出された学識経験者、法律専門家、民間団体・業界団体の代表者等の児童ポルノの流通防止に関する知見を有する専門委員から構成される専門委員会を設置する」という記載、及び、同第3ページにおいて、専門委員会は、①リスト作成管理団体の選定、②リスト作成管理団体の監督、③本ガイドラインの見直しを行うとされていることについて:

 上で書いた通り、いくら専門委員会などの中間委員会を介しようと、警察あるいはその下部機関であるインターネット・ホットラインセンターなどからの情報・実質的な要請に基づき、ISP等にリストに基づくブロッキング等が事実上強制されるのであれば全く同じことであり、このようにして行われるブロッキングなどの規制は、検閲とならざるを得ず、表現・情報に関する個人の基本的な権利を侵害するものとならざるを得ない。このように専門委員会などを中間に介しさえすれば表現の自由に関する問題が回避されるなどということは、まず規制ありきで有害無益な利権を作ろうとする規制官庁あるいはその下部機関が考えそうな妄言・暴論であり、このような専門委員会が設置されるべきでないのは無論のことである。

・同第3ページにおいて、リスト作成管理団体は、①アドレスリストの作成、②アドレスリストの維持・管理、③アドレスリストの提供、④統計情報の集計及び公表を行うとされていることについて:

 上で書いた通り、いくらリスト作成管理団体などの中間団体を介しようと、警察あるいはその下部機関であるインターネット・ホットラインセンターなどからの情報・実質的な要請に基づき、ISP等にブロッキング等が事実上強制されるのであれば全く同じことである。このようなリスト作成管理団体が設置されるべきでないのは無論のことである。

・第4ページにおいて、アドレスリスト作成時の情報提供元の範囲は「原則として、警察庁及びインターネット・ホットラインセンターからの情報提供を受けるもの」とされていることについて:

 何の権限もない民間団体に、警察などへ届け出られた情報をそのまま垂れ流して、それで児童被害が防止できると言うなど、気が狂っているとしか思われない。これは情報を流した先に守秘義務を課せばそれで済むといった類の問題では無い。役所が業務上知り得た情報を、そのまま民間団体に流すとすることに法律とモラルの点の極めて大きな問題がある上、このような情報を一元的に管理して、根拠無くブロッキングなどの検閲の実現のためその使用を推進する団体を作ろうとしていること自体おかしいと考えるべきである。

 本来このパブコメの対象では無いが、ここで一緒にインターネット・ホットラインセンターについても指摘しておくと、有害無益な半官検閲センターであるインターネットホットラインセンターを廃止することがそもそも必要である。サイト事業者が自主的に行うならまだしも、何の権限も有しないインターネット・ホットラインセンターなどの民間団体からの強圧的な指摘により、書き込みなどの削除が行われることなど本来あってはならないことである。このようなセンターは単なる一民間団体で、しかもこの団体に直接害が及んでいる訳でもないため、削除を要請できる訳がない。勝手に違法・有害と思われる情報を収集して、直接削除要請などを行う民間団体があるということ自体おかしいと考えるべきであり、このような無駄な半官検閲センターに国民の血税を流すことは到底許されないのであって、その分できちんとした取り締まりと削除要請ができる人員を、法律によって明確に制約を受ける警察に確保するべきである。

 さらに言えば、この検閲のためのアドレスリストの作成等も、警察等の規制官庁からの委託事業として実施されるだろうこと、警察等の規制官庁は、このような事業によって作られる中間団体を新たな天下り先とするか、あるいは、このような事業によって与えられる権限により今の不当な天下り利権を保持しようとしているのだろうことは容易く想像できるが、このような有害無益な非人道的検閲事業に国民の血税を流すこと、このような非人道的検閲事業によって規制官庁が天下り利権の保持拡大を狙うことは到底許されることではない。このような極悪非道な規制利権強化の動きには一国民として心の底から怒りを覚える。

・同第4ページにおいて、アドレスリストの対象とする範囲は、「・サイト管理者等への削除要請を行ったが削除されなかったもの・海外サーバに蔵置されているもの・サイト管理者等への削除要請が困難であるもの・その他、既に多くのウェブサイト又はウェブページを通じて流通が拡大しているなど、迅速かつ重層的な流通防止対策が必要で、事前に専門委員会の承認を得たもの」のいずれかに該当するものとされていることについて:

 この記載は、警察による削除要請あるいは法執行と、インターネット・ホットラインセンターによる削除要請を故意に混同する悪辣なミスリードを行っている。

 上でも書いた通り、インターネット・ホットラインセンターは単なる一民間団体で、しかもこの団体に直接害が及んでいる訳でもないため、削除を要請できる訳がないのである。このような民間団体からの削除要請に従わなかったからといって、ブロッキングやフィルタリング、検索結果からの除外などに用いられるリストにサイトが載せられることは不当以外の何ものでも無い。上で書いた通り、半官検閲センターであるインターネット・ホットラインセンター自体廃止されるべきであるが、この話は、このセンターも含め、何人であれ、あるサイトが児童ポルノサイトであると判断するのであれば、まず警察に通報するべきであって、後は、法律によって明確に制約を受ける警察により、きちんとした削除要請あるいは取り締まりがなされるべき話であって、それ以上の話では無い。

 あるいは警察からの削除要請等に対して従わないのであれば、現行法で、ネット上であるか否かにかかわらず、児童ポルノ提供及び提供目的の所持まで規制されているのであり、言うまでもなく、その地道なエンフォースが求められる事案となる。警察がきちんと手続きを踏み、令状なりを取って開示を求めれば個人情報であったとしても開示されないということはないはずであり(このような正式な手続きを抜きにして、警察がISP等に情報開示等を迫っているとしたら、その方が大問題である)、ネット上においても現行多くの児童ポルノ事件の取り締まりが行われている現状を考えても、国内においてこのエンフォースが困難であるとは考え難い。

 海外サーバーの児童ポルノコンテンツについても、児童ポルノの提供が罪になっていない主要国もないのであろうから、日本の警察なりが海外の捜査機関に協力すれば良いだけの話であり、海外サーバーにおかれていることのみをもって、表現の自由に含まれる個人の情報アクセスの権利等を侵害することが、検閲とならざるを得ないブロッキング等を行うことが正当化されるということは無い。上でも書いた通り、提供によって生じる被害と所持やダウンロード、取得、収集、アクセスとの混同は許され得ないのである。

 「その他、既に多くのウェブサイト又はウェブページを通じて流通が拡大しているなど、迅速かつ重層的な流通防止対策が必要で、事前に専門委員会の承認を得たもの」というのも極めて曖昧な定義であり、このような極めて曖昧な規定に基づいて、ブロッキング等に用いられるリストが作られ、検閲が行われるということは、表現の自由に対する重大な侵害、恐怖以外の何ものでもない。

 如何なる意味でも、このようなアドレスリストの作成を正当化するに足る理由は無い。

・第5ページにおいて、「アドレスリスト利用事業者は、原則として、アドレスリストの提供について要請のあった国内のISP、検索エンジンサービス事業者及びフィルタリング事業者等とする。また、専門委員会が特に必要と認めたものに対し、アドレスリストの提供を行うことができる。ただし、専門委員会において定められた一定の欠格事項に該当するものは除く」とされ、「アドレスリストの利用目的を、ブロッキングの実施、検索結果からの排除、フィルタリングリストへの反映等、児童ポルノの流通防止対策に限定すること」を含めた契約を締結するとされていることについて:

 ここで、そのメンバー選定からして不透明であり、実質規制官庁が介入してくるに違いない専門委員会が自主的に「特に必要と認めたものに対し、アドレスリストの提供を行う」と書かれていることからも露骨に分かることだが、いくら自主的な取り組みという体裁を装おうとも、このようなアドレスリストは一旦作られたら、警察や総務省、経産省などの規制官庁からの直接間接の曖昧かつ不透明な行政指導により、国内のISP、検索エンジンサービス事業者とフィルタリング事業者等に無理矢理押し付けられ、これらの事業者がブロッキング等を余儀なくされることになるのは日の目を見るより明らかである。これが検閲でなくて何だと言うのか。このような手段は必ず濫用されるのであり、アドレスリスト作成が行われるべきでないのは無論のこと、そのメンバー選定からして不透明であり、実質規制官庁が介入してくるに違いない専門委員会やリスト作成管理団体といった団体は絶対に作られてはならないものである。

・第5ページから第6ページの、リスト作成管理団体の適切な運営の確保のための措置として書かれている、1 統計情報の公表、2 専門委員会への報告、3 情報の管理及び守秘義務、4 リスト作成管理団体の職員に係る留意事項、5 公平性・中立性の確保等の措置について:

 リスト作成管理団体は、統計情報を公表する、運営状況等について専門委員会へ報告するとしているが、一般に公表されるのは統計情報に過ぎす、児童ポルノであるか否かの判断情報も含め、アドレスリストに関する具体的な情報は、全て閉じる形で秘密裏に保持されることになる。そのため、インターネット利用者から見てそのリストの妥当性をチェックすることは不可能であり、このようなアドレスリストの作成・管理において、透明性・公平性・中立性を確保することは本質的に完全に不可能である。このことは、上で書いたドイツに児童ポルノブロッキング法に対する反対においても取り上げられていた本質的な問題であって、このようなリストに基づくブロッキング等がどうして検閲とならざるを得ないかということの根本的な理由であり、小手先の運用変更でどうにかなる問題では無い。このような公表不可能かつ検証不可能な秘密情報に基づく検閲は絶対に行われるべきではないのであり、このようなアドレスリスト作成が行われるべきでないのは無論のこと、そのメンバー選定からして不透明であり、実質規制官庁が介入してくるに違いない専門委員会やリスト作成管理団体といった団体は絶対に作られてはならないのである。

 なお、私はそもそもこのようなリストや団体を作ること自体に反対しているのであって、この点をどうにかすれば問題が解決されると言うつもりは全く無いと念を押しておくが、児童ポルノを収集する者を業務から排除するとしている点について、そもそも他人についてこのような情報は通常知り得ないものであり、これを知ろうとすること自体、プライバシーの権利あるいは内心の自由の観点から見て極めて大きな問題があると言わざるを得ないことである。

・第7ページにおいて、「本ガイドラインの改訂に当たっては、パブリックコメントを実施するなど、広くインターネット利用者の意見を聴いた上で行うこととする」とされていることについて:

 本パブコメにおけるように、ガイドラインの本質的な問題点を隠蔽し、2週間という極めて短い期間でインターネット利用者の意見を聞いたことにするような団体が、このように書くとは片腹痛い。このような姑息極まる利用者無視を続ける限り、児童ポルノ流通対策協議会及びその事務局であるインターネット協会、インターネットホットラインセンター、引いては警察庁や総務省、経産省などの規制官庁に対するインターネット利用者の不信はさらに高まるであろうとここに指摘しておく。

・第8ページで「アドレスリストからの除外要請を受けた児童ポルノが存在した場合に改めて児童ポルノ該当性の判定を行うために、児童ポルノ該当性判定アドバイザー(以下、「判定アドバイザー」という。)を設置する」とされ、サイト管理者あるいはアドレスリスト利用事業者からの除外要請を受け、「判定アドバイザーによる該当性の判定に基づき、リスト作成管理団体にて該当性の判断を行い」、アドレスリストの維持あるいは削除を行うとしているていることについて:

 いかなる形で取り繕おうと、専門委員会などと同様に、そのメンバー選定からして不透明な判定アドバイザーなども設置されるべきではない。児童ポルノに関する事件は、国内であれ国外であれ、最終的には、法律によって明確に制約を受ける公開裁判における司法判断を仰ぐべき話であって、それ以上でもそれ以下でも無い。このような不透明な判定アドバイザーの設置で、透明性・公平性・中立性が確保されるとすることは、憲法に規定されている各種の国民の基本的な権利を完全にないがしろにすることであり、インターネット利用者、引いては全国民を完全にバカにすることに他ならない。

 最後に書いておくが、私が言いたいのは、民間の自主的な取り組みなどという言葉で上辺を取り繕い、規制官庁と結託して、国民の情報の自由に関する基本的権利に対して重大な侵害を行ってでもその利権のおこぼれに預かろうとするとすることは今後一切止めろということである。この点について私は誤解などしていないし、今後の検討に対する参考にするなどといった役人風の遁辞などそれこそ全く求めていない。児童ポルノ規制法に関しては、既に、提供及び提供目的での所持が禁止されているのであるから、本当に必要とされることは今の法律の地道なエンフォースであって有害無益な規制強化の検討ではない。現行以上に規制を強化するべきとするに足る明確かつ具体的な根拠は、上で指摘した通り何1つ無く、児童ポルノ規制法に関して検討すべきことがあるとしたら、現行ですら過度に広汎であり、違憲のそしりを免れない児童ポルノの定義の厳密化のみである。

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警察庁・内閣府・内閣官房(知財本部除く)」カテゴリの記事

コメント

児童ポルノ禁止法はインターネット、メール盗聴法で、東京地検がやってる、
東京に本社のある企業は従業員のメールやインターネットの盗聴できる
東京に本社ある会社に働いている従業員は地方で働いていても年末調整の税務署は東京。
つまり地方の人は東京に税金を納めている、
んで巨人強い

名前のせいで反対でもできない児ポ法と名前変えてハンタイデモして廃法

投稿: | 2010年1月19日 (火) 22時26分

はじめまして。mudanと申します。

いつも当ブログをご紹介頂き誠にありがとうございます。当方も兎園様のブログとTwitterでいつも勉強させて頂いております。兎園様のなにものにも屈しない精神に私はいつも励まされています。

今回兎園様のエントリー

第211回:児童ポルノ流通防止協議会「児童ポルノ掲載アドレスリスト作成管理団体運用ガイドライン(案)」に対する意見募集(1月28日〆切)への提出パブコメ

に当ブログのエントリーhttp://mudaken.blog103.fc2.com/blog-entry-334.htmlからトラックバックをさせて頂きましたが、手違いで3回ぐらい連続でトラックバックをしてしまいました。今のところ兎園様のブログのトラックバックに当ブログの名前はございませんが、もしすぐに反映されないように設定されているのでしたら、当ブログの名前が3つ以上送られていると思いますので、他の2つは消去して頂けれると助かります。ご迷惑をおかけして申し訳ございません。今後ともよろしくお願い致します。

投稿: mudan | 2010年1月22日 (金) 01時58分

誤字がございましたので、訂正させて頂きます。

× 他の2つは消去して頂けれると助かります。

○ 他の2つは消去して頂けると助かります。

お詫びして訂正致します。

投稿: mudan | 2010年1月22日 (金) 02時01分

mudan様

コメントありがとうございます。トラックバックを送って頂いたとのことですが、届いていることを確認できませんでしたので、その代わりにエントリのトップの参考リンク中に追加させて頂きました。

私もいつもmudan様のブログに励まされています。どうか今後ともよろしくお願い致します。

投稿: 兎園 | 2010年1月22日 (金) 06時28分

すいません。お返事が遅くなりました。

この度はトラックバックに関して当ブログでも色々気にかけて下さって申し訳ありません。そしてありがとうございます。しかもわざわざエントリー内にて当ブログを紹介して下さったのですね。お手数をおかけしました。

トラックバックというものは、これといったルールはあまりなく様々な状況下の中でそれぞれの方が色々な理由で使われるものであるというのが私なりの解釈ではあるのですが、今回私が送信させて頂いたトラックバックは、日頃の当ブログのエントリーの中でリンク(紹介)させて頂いてる感謝の気持ちをこめて送ったものであって、兎園様のエントリーにトラックバックしていたということに気づいて頂ければ役目は終わったものだと思っています。ですので、今後また機会がございましたら、トラックバックを再度試させて頂こうと思っている次第です。

色々とご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。そしてありがとうございました。今後ともよろしくお願い致します。

投稿: mudan | 2010年1月24日 (日) 01時10分

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