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2009年7月 6日 (月)

第181回:違憲判決後のフランス3ストライクアウト法案の第2案

 フランスが3ストライク法案を復活させようと画策していることは、「P2Pとかその辺のお話」で既に触れられているが、先週の7月2日に、違憲判決後の3ストライク法案の第2案(正式名称は、「インターネットにおける著作権の刑事的保護に関する法律」)が、フランス上院の委員会を通過した(01netの記事Numeramaの記事参照)ので、今回は、その通過版の法案の紹介をしておきたいと思う。

 多少修正の入った上院委員会通過版を訳しても良いのだが、まだ上院の委員会を通過しただけであり、特に本質的な部分で修正が入った訳でも無く、この後の本会議、下院での審議でどうせまたいろいろと修正が入ると思うので、ここでは、よりシンプルで分かり易い最初の政府提出時の法案を以下に訳出する。(例によって、翻訳は拙訳。)

Article 1er

Apres l'article L. 331-21 du code de la propriete intellectuelle, il est ajoute un article L. 331-21-1 ainsi redige :

<< Art. L. 331-21-1. -- Les membres de la commission de protection des droits, ainsi que ses agents habilites et assermentes a cette fin dans les conditions determinees par decret en Conseil d'Etat, peuvent constater les infractions prevues au present titre lorsqu'elles sont punies de la peine complementaire de suspension de l'acces a un service de communication au public en ligne et de communication electronique.

<< Ils peuvent en outre recueillir les observations des personnes concernees.

<< Leurs proces-verbaux font foi jusqu'a preuve contraire. >>

Article 2

I. -- Apres le onzieme alinea de l'article 398-1 du code de procedure penale (9°), il est insere un alinea ainsi redige :

<< 10° Les delits prevus aux articles L. 335-2, L. 335-3 et L. 335-4 du code de la propriete intellectuelle. >>

II. -- Apres le sixieme alinea de l'article 495 du meme code (5°), il est insere un alinea ainsi redige :

<< 6° Les delits prevus aux articles L. 335-2, L. 335-3 et L. 335-4 du code de la propriete intellectuelle. >>

Article 3

Apres l'article L. 335-6 du code de la propriete intellectuelle, il est insere un nouvel article ainsi redige :

<< Art. L. 335-7. -- Lorsque l'infraction est commise au moyen d'un service de communication au public en ligne ou de communications electroniques, les personnes coupables des infractions prevues aux articles L. 335-2, L. 335-3 et L. 335-4 peuvent en outre etre condamnees a la peine complementaire de suspension de l'acces a un service de communication au public en ligne ou de communication electronique pour une duree maximale d'un an, assortie de l'interdiction de souscrire pendant la meme periode un autre contrat portant sur un service de meme nature aupres de tout operateur.

<< Lorsque ce service est achete selon des offres commerciales composites incluant d'autres types de services, tels que services de telephonie ou de television, les decisions de suspension ne s'appliquent pas a ces services.

<< La suspension de l'acces n'affecte pas, par elle-meme, le versement du prix de l'abonnement au fournisseur du service. L'article L. 121-84 du code de la consommation n'est pas applicable au cours de la periode de suspension.

<< Les frais d'une eventuelle resiliation de l'abonnement au cours de la periode de suspension sont supportes par l'abonne.

<< Lorsque la decision est executoire, la peine complementaire prevue au present article est portee a la connaissance de la Haute autorite pour la diffusion des oeuvres et la protection des droits sur internet, qui la notifie a la personne dont l'activite est d'offrir un acces a des services de communication au public en ligne afin qu'elle mette en oeuvre, dans les meilleurs delais, la suspension a l'egard de l'abonne concerne.

<< Le fait, pour la personne dont l'activite est d'offrir un acces a des services de communication au public en ligne, de ne pas mettre en oeuvre la peine de suspension qui lui a ete notifiee est puni d'une amende de 3750 Euro.

<< Lorsque le reglement le prevoit, la peine complementaire definie au present article peut etre prononcee a l'encontre des personnes reconnues coupables des contraventions de la cinquieme classe prevues par le present code. Dans ce cas, la duree maximale de la suspension est de un mois. >>

Article 4

A la fin du premier alinea de l'article 434-41 du code penal, apres les mots : << ou 131-17 >> sont ajoutes les mots : << , d'interdiction de souscrire un nouveau contrat d'abonnement a un service de communication au public en ligne et de communication electronique. >>

Article 5

La presente loi est applicable sur l'ensemble du territoire de la Republique, a l'exception de la Polynesie francaise.

第1条

知的財産権法の第331-21条の後に、次の第331-21-1条を追加する:

「第331-21-1条 権利保護委員会のメンバー並びに、コンセイユ・デタの政令で定められる条件で、その目的のために宣誓を行い権限を有する代理人が、本部に規定されている違反を立証した時、それは、オンライン公衆通信と電子通信サービスへのアクセスを遮断するという補助的な罰で罰される。

それらは、さらに、問題となっている者の観察をすることができる。

その調書は、反証が出されるまで信用される。」

第2条

Ⅰ.刑事訴訟法の第398-1条(訳注:裁判官1人で構成される軽罪裁判所によって裁かれる罪を列挙している条項)の第11段落(第9号)の後に、次のような段落を追加する:

「第10号 第335-2条、第335-3条と第335-4条(訳注:著作権侵害の罰則規定。なお、権利制限との関係があるので、第173回にも書いたように、純粋なダウンロードがどうなるのかは分からない)に規定された罪。」

Ⅱ.同法の第495条(訳注:軽罪裁判所の略式手続きにかけることができる罪を列挙している条項)の第6段落(第5号)の後に、次のような段落を追加する:

「第6号 第335-2条、第335-3条と第335-4条に規定された罪。」

第3条

知的財産権法の第335-6条の後に、次の新条項を挿入する:

「第335-7条 その違反が、オンライン公衆通信あるいは電気通信サービスを通じて犯された場合、第335-2条、第335-3条、第335-4条に規定されている違反をした者は、あらゆる事業者と同じ性質のサービスの他の契約を同期間中できないという中断を伴う、最長1年のオンライン公衆通信あるいは電気通信サービスへのアクセス遮断という補助的な罰を科される。

電話やテレビサービスのような他のタイプのサービスと複合的に販売されているサービスを購入していた場合、遮断の決定は、これらの他のタイプのサービスには適用されない。

アクセス遮断は、それ自体で、サービス提供者へ支払った契約料金の返還をもたらすものではない。消費者法の第121-84条(訳注:電気通信サービスの提供の契約条件の変更を規制する条項)は、遮断期間中は適用され得ない。

遮断期間中の、契約の偶発的な解約の費用は、契約者によって賄われる。

判決に執行力がある場合、問題の契約者に関する遮断を適切な期間を置いて実施するために、オンライン公衆通信サービスを提供する者にそのことを知らせる、インターネットにおける著作物の頒布と権利の保護のための公的機関に、本条に規定されているこの補助的な罰が知らされる。

オンライン公衆通信サービスへのアクセスを提供する事業者が、通知された遮断の罰を実施しなかったと認められた時、それは、3750ユーロの罰金を科される。

法規則にそう規定されている時、本条で規定されている補助的な罰は、本法の第5級の軽犯罪を認められた者に対しても科され得る。この場合、遮断の最長期間は1ヶ月である。」

第4条

刑法第434-41条(訳注:判決履行義務違反の罰則を定めた条項。2年の禁固と3万ユーロの罰金)の第1段落の後の、「あるいは131-17条」の後に、「、オンライン公衆通信・電気通信サービスの新たな契約をできないという中断。」という語を追加する

第5条

本法は、フランス領ポリネシアを除き、共和国全土で適用される。

 細かなことが気になるようであれば、以前の3ストライク法案と、憲法裁判所の判決を取り上げた、第173回第174回第175回第178回と見比べながら、読んでもらえればと思うが、この法案は、要するに、行政機関が直接ネット切断という罰を科すことが、憲法裁判所で明確に違憲として否定されたので、ネット切断を明確に著作権侵害に対する刑罰の1つとして規定し、警告を送るところまでは公的機関が行うが、そこから先は裁判所に持ち込まれ、罰を科すか否かは最終的には司法判断に委ねるとするものである。

 上でもリンクを張った「P2Pとかその辺の話」の記事や、Nouvel Obsの記事(この記事でリンクを張られている政府調査(pdf)も参照)で、数十分の裁判手続きで年5万件のケースを処理するというフランス政府の見積もりだけで決してバカにならない費用となると書かれているが、5万という数字の根拠も不明であり、本気で運用するとなれば、実際のコストはさらに膨れ上がることだろう。

 費用に関する問題もさることながら、一番の問題は、上の条文にも露骨に現れている、公的機関の役割の不明瞭、推定無罪の原理をないがしろにする推定有罪と、行為に対して明かにバランスの取れていない罰の問題である。

 フランス政府は、とにかく裁判所に判断をさせれば良いのだろうと、最も簡単な簡易裁判所の略式命令で何とかごまかしてネット切断をしようとしているが、公的機関の調書が検察に送られ、そのまま行政機関の作った調書に基づいて裁判がなされるというのは、行政と司法の役割から考えて全くおかしな話であるし、このような調書がまず信用され、反証が無い限り、弁論を必要としない簡易裁判所における略式手続きで、一方的にネット切断という個人に極めて大きな影響を与える罰が科されかねないというのは、推定無罪の原理、弁護を受ける権利を完全にないがしろにするものだろう。このままで、著作権と情報アクセス権という2つの基本的な権利の間できちんとしたバランスが取られるとは到底思えないのである。(無論被告が通常裁判を求めることは可能だろうが、日本と同じく、弁論を省略する略式手続きは、通常軽い罰を科す場合にしか適用され得ないものであり、インターネットにおける著作権侵害という事実の認定からして難しいケースにおいて、ネット切断という個人に対して極めて大きな影響を与える可能性のある罰を与え得る裁判にまで適用されて良いものとは思えない。)

 上院委員会通過版でも、第5種の軽微な著作権違反に対して1ヶ月のネット切断の罰が科され得るのは、警告を受けた者に明らかな懈怠が認められた時とされたり、インターネット・アクセス・プロバイダーへの罰金が3750ユーロから5000ユーロへと増やされたりはしているものの、上記のような、本質的な問題は手つかずのまま残されている。

 この3ストライク法案の第2案は、まがりなりにもネット切断は司法判断によることとしているので、以前の3ストライク法案ほどの大騒ぎにはならないと思うが、フランス国内では既に騒がれており、さらに相当の紆余曲折を経ることになるだろう。今後の国会審議で、権力分立、推定無罪、罪と罰の間のバランス等の最も重要な法原理を尊重する形への修正が図られない限り、この第2案も最後、憲法裁判によって断罪されることになるのではないかと私は予想する。

 次回は、今のところ、表現の自由に関する一般論を書くつもりでいる。

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