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2009年7月15日 (水)

第183回:総務省・「利用者視点を踏まえたICTサービスに係る諸問題に関する研究会」第一次提言案に対する提出パブコメ

 表現の自由に関するエントリも書いているところだが、衆議院で不信任案が提出され、参議院で問責決議が可決され、野党が審議拒否に入り、総理が来週の解散を明言する中、児童ポルノ規制法の改正案は今国会では廃案になることがほぼ確定したので、ここで、後2つ残っている総務省のパブコメを先に片付けておきたいと思う。(無論、今国会で廃案になったからと言って、次の国会で再提出される可能性も高いので、児童ポルノ規制法改正問題に関して、今回の選挙が極めて重要であることは言うまでも無く、選挙後も当分この問題については気は抜けないだろう。また、選挙関係のエントリも別途書きたいと思っているところである。)

 今回載せるのは、その内の1つ、「利用者視点を踏まえたICTサービスに係る諸問題に関する研究会」第一次提言案(pdf)に対する提出パブコメ(7月28日〆切。総務省のリリース意見募集要領(pdf)、電子政府の該当ページ参照)である。

 この研究会はストリートビュー問題に関する検討の方が注目されているが、この報告書案における最大の問題は、ストリートビュー問題に関する部分では無く、第24~38ページの「Ⅱ 違法音楽配信対策について」で書かれている、日本レコード協会(RIAJ)が提案している携帯電話における著作権検閲である。詳しくは報告書本文を読んでもらえればと思うが、要するに、ダウンロード違法化が通ったのを良いことに、RIAJが総務省に対して早速著作権検閲を提案し、支援を求めているのである。報告書案で、それなりにコストや法律の面で問題点をある程度あげているものの、悪質なお役所検討会の例に洩れず、利権団体には甘く、本質的な問題点をごまかし、権利者団体による著作権検閲を支援・正当化しようとする意図が見え透いている。だこのような技術による著作権検閲は、表現の自由・通信の秘密・検閲の禁止・プライバシーなどの国民の基本的な権利を侵害する危険なものとしかなり得ないのであり、決して導入されてはならないものだろう。このパブコメも決して見過ごすことのできないものである。

 もう1つ、総務省からは、B-CAS見直しに関する中間答申(pdf)概要(pdf)、正式名称は、「『デジタル・コンテンツの流通の促進』及び『コンテンツ競争力強化のための法制度の在り方』」)も8月28日〆切でパブコメにかかっているので(総務省のリリース、電子政府の該当ページITmediaの記事ITproの記事も参照)、次回は、この中間答申に対する提出パブコメを載せるつもりでいる。

(以下、提出パブコメ)

1.氏名及び連絡先
氏名:兎園(個人)
連絡先:

2.意見要旨
 日本レコード協会が提案している技術による著作権検閲に反対するとともに、特に、以下の5点を強く求める。
・この日本レコード協会が提案している対策は、憲法に規定されている、表現の自由・通信の秘密・検閲の禁止・プライバシーなどの国民の基本的な権利を侵害する危険なものであり、絶対に導入されるべきでないと提言に明記すること。
・国民の基本的な権利を侵害する危険な著作権検閲にしか流れようのない著作権法中のダウンロード違法化条項の削除を、総務省から文化庁に強く働きかけること。
・憲法の「表現の自由」に含まれ、国際人権B規約にも含まれている国民の「知る権利」を、あらゆる公開情報に安全に個人的にアクセスする権利として、通信法にに法律のレベルで明文で書き込むこと、および、憲法に規定されている検閲の禁止から、技術による著作権検閲やサイトブロッキングのような技術的検閲の禁止を通信法に法律のレベルで明文で書き込むこと。
・青少年ネット規制法の廃止及び出会い系サイト規制法の法改正前の形への再改正。
・公平性の観点から及び独禁法上明らかに問題のある、携帯電話事業者による公式サイト以外のサイトからのダウンロード容量制限の排除。

 今後は、国民の基本的な権利を必ず侵害するものとなる危険な技術による著作権検閲の検討ではなく、ネットにおける各種問題は情報モラル・リテラシー教育によって解決されるべきものという基本に立ち帰り、より現実的かつ地道な施策のみに注力する検討が進むことを期待する。

3.意見
(1)第29~30ページ「Ⅱ 3.(1) フィルタリングの普及」について

 ここで、青少年ネット規制法やフィルタリングについて触れられているが、そもそも、青少年ネット規制法は、あらゆる者から反対されながら、有害無益なプライドと利権を優先する一部の議員と官庁の思惑のみで成立したものであり、速やかに廃止が検討されるべきものである。なお、付言すれば、出会い系サイト規制法の改正も、警察庁が、どんなコミュニケーションサイトでも人は出会えるという誰にでも分かることを無視し、届け出制の対象としては事実上定義不能の「出会い系サイト事業」を定義可能と偽り、改正法案の閣議決定を行い、法案を国会に提出したものであり、他の重要法案と審議が重なる中、国会においてもその本質的な問題が見過ごされて可決され、成立したものである。憲法上の罪刑法定主義や検閲の禁止にそもそも違反している、今回の出会い系サイト規制法の改正についても、今後、速やかに元に戻すことが検討されるべきである。

 フィルタリングについても、その過去の政策決定の迷走により、総務省は携帯電話サイト事業者に無意味かつ多大なダメージを与えた。この問題については、フィルタリングの存在を知り、かつ、フィルタリングの導入が必要だと思っていて、なお未成年にフィルタリングをかけられないとする親に対して、その理由を聞くか、あるいはフィルタリングをかけている親に対して、そのフィルタリングの問題を聞くかして、きちんと本当の問題点を示してから検討してもらいたい。また、フィルタリングで無意味に利権を作ろうとしている総務省と携帯電話事業者他の今の検討については、完全に白紙に戻されるべきである。携帯フィルタリングについて、ブラックリスト方式ならば、まずブラックリストに載せる基準の明確化から行うべきなので、不当なブラックリスト指定については、携帯電話事業者がそれぞれの基準に照らし合わせて無料で解除する簡便な手続きを備えていればそれで良く、健全サイト認定第3者機関など必要ないはずである。ブラックリスト指定を不当に乱発し、認定機関で不当に審査料をせしめ取り、さらにこの不当にせしめた審査料と、正当な理由もなく流し込まれる税金で天下り役人を飼うのだとしたら、これは官民談合による大不正行為以外の何物でもない。このようなブラックリスト商法の正当化は許されない。

(2)第31ページ「Ⅱ 3.(4)DRM、ダウンロード容量の制限」について
 ここで、「一部の携帯電話事業者では、公式サイト以外のサイトからダウンロードできるファイルの容量制限等も行っており」、「公式サイトとそれ以外のサイトに対して、提供する回線の水準を携帯電話事業者側で区別することは、公平性の観点からも議論を喚起する可能性がある」としているが、このような容量制限は、議論の可能性の問題では無く、公平性の観点からも、独禁法からも明らかに問題があるものである。このような容量制限は、公平性の観点からも、独禁法からも明確に問題があると、ここに明記するべきである。

(3)第32~35ページ「Ⅱ 4.(1)新たな技術的対策について」について
 この項目において、コンテンツの種類を、①正規コンテンツ、②個人コンテンツ、③違法コンテンツの3つに分類し、それぞれ、レコード会社と契約をした正規のコンテンツ配信業者から配信されたコンテンツ、一般個人が作曲、演奏した楽曲であり、著作権・著作隣接権を一般の作詞家、作曲者、演奏家が個人で保有するもの、権利者に無許諾で配信されたコンテンツと定義しているが、このような分類は適切でない。

 携帯で視聴されるコンテンツには、正規に購入した音楽CDからユーザーが私的に複製したコンテンツも含まれるのであり、配信のみを正規のコンテンツのソースとみなすような不適切な分類・定義を使用するべきでは無い。もし分類の定義を維持するのであれば、「①正規コンテンツ」の名称を「①正規配信コンテンツ」と変え、正規に購入したレコード会社の音楽CD等から私的に複製したコンテンツと定義される、「④正規の私的複製コンテンツ」という分類を追加するべきである。

 また、この項目において、音源識別やサービス識別によって正規コンテンツと違法コンテンツが識別できると書かれているが、正規の私的複製コンテンツと違法コンテンツは識別不可能であり、これらの識別技術によって正規コンテンツと違法コンテンツを一律に識別することはできないとの記載に改めるべきである。

 正規コンテンツとしてDRMのかかっていない音楽CDが存在している限り、このような対策が取られるべきではないことは自明のことである。

(4)第35~37ページ「Ⅱ 4.(2) 新たな技術的対策の課題」について
 この項目において、「携帯電話事業者のゲートウェイサーバにおいて直接ファイルの内容を監視するという方法でなければ、通信の秘密を直ちに侵害していることにはならないと考えられる」としているが、通信の秘密という基本的な権利の適用は監視の位置がサーバーであるか端末であるかによらないものであり、このような通信法を所管する官庁として余りにも浅墓な見解は削除するべきである。

 特に、機械的な処理であっても通信の秘密を侵害したことには変わりはないとされ、通信の秘密を侵害する行為には、当事者の意思に反して通信の構成要素等を利用すること(窃用すること)も含むとされているのであり、このようなことも含めて考えると、日本レコード協会が提案している対策は、通信の秘密を侵害するものと考える方が妥当であり、ここには、そうはっきり書いてもらいたい。

 この項目において、プライバシーの保護についても触れられているが、同意の取得や情報漏洩以前の問題として、本来最も基本的なプライバシーに属する個人端末中の情報について、内容を自動検知し、アクセス制限・再生禁止等を行うことは、それ自体プライバシー権を侵害するものであり、プライバシーの観点からも、このような措置は導入されるべきでないとはっきり書いてもらいたい。

 最も基本的なプライバシーに属する個人端末中の情報について、内容を自動検知し、アクセス制限・再生禁止等を行う日本レコード協会が提案している違法音楽配信対策は、技術による著作権検閲に他ならず、憲法に規定されている表現の自由(情報アクセス権を含む)や検閲の禁止に明らかに反するものである。ここで、表現の自由や検閲の禁止という観点からも、このような対策は決して導入されてはならないものであると明記してもらいたい。

 付言すれば、日本レコード協会の携帯端末における違法音楽配信対策は、建前は違えど、中国でPCに対する導入が検討され、大騒ぎになった末、今現在導入が無期延期されているところの検閲ソフト「グリーン・ダム」と全く同じ動作をするものであるということを政府にははっきりと認識してもらいたい。このような検閲ソフトの導入については、日本も政府として懸念を表明しているはずであり(日経のネット記事http://www.nikkei.co.jp/news/main/20090628AT3S2700A27062009.html参照)、自由で民主的な社会において、このような技術的検閲が導入されることなど、絶対許されないことである。

 また、正規の私的複製コンテンツは決して排除されるべきものでは無く、正規の私的複製コンテンツを全携帯端末において一律再生不能とすることは、独禁法上の問題が生じうるということについても、ここに明記されるべきである。

(5)第37~38ページ「5.今後の方向性」について
 この項目で、日本レコード協会の提案を検討の叩き台とするとしているが、上記の通り、この提案は、通信の秘密や検閲の禁止、表現の自由、プライバシーといった個人の基本的な権利をないがしろにするものであり、叩き台にすらなり得ない。日本レコード協会が提案している、検閲に該当するこのような対策は絶対に導入されるべきでなく、また技術支援・実証実験等として税金のムダな投入がなされるべきではないと、ここに明記するべきである。

 そもそも、ダウンロード違法化の懸念として、このような著作権検閲に対する懸念は、文化庁へのパブコメ(文化庁HPhttp://www.bunka.go.jp/chosakuken/singikai/houkoku.htmlの意見募集の結果参照)や知財本部へのパブコメ(知財本部のHPhttp://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/keikaku2009.htmlの個人からの意見参照)を見ても分かる通り、法改正前から指摘されていたところであり、このような著作権検閲にしか流れようの無いダウンロード違法化は始めからなされるべきではなかったものである。このような百害あって一利ない最低の法改正に基づいて対策がなされるべきでないのは無論のこと、文化庁の暴走と国会議員の無知によって成立したものであり、ネット利用における個人の安心と安全を完全にないがしろにするものである、ダウンロード違法化を規定する著作権法第30条第1項第3号を次回の法改正では削除するべきと総務省から文化庁に強く働きかけてもらいたい。

 この提言案からも明確なように、違法コピー対策問題における権利者団体の主張、児童ポルノ法規制強化問題・有害サイト規制問題における自称良識派団体の主張は、常に一方的かつ身勝手であり、ネットにおける文化と産業の発展を阻害するばかりか、インターネットの単純なアクセスすら危険なものとする非常識なものばかりである。今後は、このような一方的かつ身勝手な規制強化の動きを規制するため、憲法の「表現の自由」に含まれ、国際人権B規約にも含まれている国民の「知る権利」を、あらゆる公開情報に安全に個人的にアクセスする権利として、通信法に法律レベルで明文で書き込むことを是非検討してもらいたい。同じく、憲法に規定されている検閲の禁止から、技術的な著作権検閲やサイトブロッキングのような技術的検閲の禁止を通信法にに法律レベルで明文で書き込むことを是非検討してもらいたい。

 この項目において、本年度中を目途として合意を得ることが望ましいと、平成22年度中に実施できるよう検討するという記載があるが、このような個人の基本的な権利に絡む大問題については極めて慎重な検討が必要であり、拙速な検討が行われるべきでは無く、期限に関する記載は削除するべきである。

 また、上の(2)でも書いたが、公式サイトとそれ以外のサイトに対して提供する回線の水準を携帯電話事業者側で区別することは、公平性の観点からも、独禁法からも明らかに問題があり、このような容量制限を明確に問題と認識し、これを排除する検討を進めることを、この「5.今後の方向性について」の項目に明記してもらいたい。

 違法音楽配信対策として、今後出てくるかも知れない対策まで完全に否定するつもりは無いが、国民の基本的な権利の侵害とならない範囲で対策が進められなくてはならないのは当然のことである。今後は、国民の基本的な権利を必ず侵害するものとなる危険な技術による著作権検閲の検討ではなく、ネットにおける各種問題は情報モラル・リテラシー教育によって解決されるべきものという基本に立ち帰り、公開情報の検索を行うクローリングと現行のプロバイダー責任制限法と削除要請を組み合わせた対策や、この「5.今後の方向性について」の(2)で示されているような、青少年側に立った施策などの、より現実的かつ地道な施策のみに注力する検討が進むことを期待する。

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