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2009年7月17日 (金)

第184回:総務省・「『デジタル・コンテンツの流通の促進』及び『コンテンツ競争力強化のための法制度の在り方』」提出パブコメ

 総務省のB-CAS見直しに関する中間答申(pdf)概要(pdf)、正式名称は、「『デジタル・コンテンツの流通の促進』及び『コンテンツ競争力強化のための法制度の在り方』」、8月28日〆切、総務省のリリース、電子政府の該当ページITmediaの記事ITproの記事も参照)へのパブコメも提出したので、ここに載せておく。

(今回の中間答申で、ようやくB-CASシステムそのものの話にまで遡ったが、それでもなお総務省は、放送局・権利者・メーカー3者の談合システムに他ならない、現行のB-CASシステムを維持しようとしている。この話も進んでいるようで進んでいないので、去年提出したパブコメと内容はあまり変わらない。)

 さらに今、内閣官房・IT戦略本部から今「デジタル技術・情報の利活用を阻むような規制・制度・慣行等の重点点検」に関するパブリックコメントの募集が8月6日〆切で行われている(内閣官房のリリース、電子政府の該当ページ提出様式(doc))。およそ常に規制強化ありきでパブコメを行う性根の腐った日本政府において、このように明確に規制緩和を目的とするパブコメの機会は極めて貴重であり、最近の不合理極まるネット・情報規制の動きに憤りを感じている全ての個人・企業・団体に、このパブコメに対して意見を出すことを私はお勧めする。出会い系サイト規制、青少年ネット規制法、フィルタリング、児童ポルノ規制、ブロッキング、ダウンロード違法化、著作権規制、著作権検閲、B-CAS・ダビング10・コピーワンス等全てまとめて、私は意見を書くつもりであり、次回は、このパブコメへの提出意見を載せたいと思っている。

(以下、提出パブコメ)

氏名:兎園(個人・匿名希望)
連絡先:

(ページ)
第3ページ~第31ページ 第1章 コピー制御に係るルールの担保手段(エンフォースメント)の在り方

(意見)
 私は一国民として、デジタル放送におけるコピー制御の問題について、以下の通りの方向性を基本として検討し直すことを強く求める。

1.無料地上波からB-CASシステムを排除し、テレビ・録画機器における参入障壁を取り除き、自由な競争環境を実現すること。
2.あまねく見られることを目的とするべき、基幹放送である無料地上波については、ノンスクランブル・コピー制限なしを基本とすること。
3.これは立法府に求めるべきことではあるが、無料地上波については、ノンスクランブル・コピー制限なしとすることを、総務省が勝手に書き換えられるような省令や政令レベルにではなく、法律に書き込むこと。
4.B-CASに代わる機器への制度的なエンフォースの導入は、B-CASに変わる新たな参入障壁を作り、今の民製談合を官製談合に切り替えることに他ならず、厳に戒められるべきこと。コンテンツの不正な流通に対しては現在の著作権法でも十分対応可能である。

 現行のB-CASシステムと併存させる形でのチップやソフトウェア等の新方式の導入についても、無意味な現行システムの維持コストに加えて新たなシステムの追加で発生するコストまでまとめて消費者に転嫁される可能性が高く、このような弥縫策は、一消費者として全く評価できないものである。

 なお、補償金制度は、私的録音録画によって生じる権利者への経済的不利益を補償するものであって、メーカーなどの利益を不当に権利者に還元するものではない。上記1~4以外の方向性を取り、ダビング10のように不当に厳しいコピー制御が今後も維持され続けるようであれば、録画補償金は廃止しても良いくらいであり、全く議論の余地すらない。上記1~4が実現されたとしても、補償金の対象範囲等は私的な録音録画が権利者にもたらす「実害」に基づいて決められるべきであるということは言うまでもない。

 また、近年総務省が打ち出している放送関連施策には今なお国民本意の視点が全く欠けており、今のままでは地上デジタルへの移行など到底不可能であるとほとんどの国民が思っているであろうことを付言しておく。

(理由)
 去年のパブコメでも書いたことだが、B-CASシステムは談合システムに他ならず、これは、放送局・権利者にとっては、視聴者の利便性を著しく下げることによって、一旦は広告つきながらも無料で放送したコンテンツの市場価格を不当につり上げるものとして機能し、国内の大手メーカーとっては、B-CASカードの貸与と複雑な暗号システムを全てのテレビ・録画機器に必要とすることによって、中小・海外メーカーに対する参入障壁として機能しているのである。

 今年の中間答申で、ようやく無料の地上放送へB-CASシステムとコピーワンス運用の導入を可能とした平成14年6月の省令改正についての記載が加えられた。このように以前、無料の地上放送へのスクランブル・暗号化を禁じる省令が存在していた理由についての記載はやはり無いが、これは、無料地上放送は本来あまねく見られるべきという理念があったことの証左であろう。過去の検討経緯についてよりきちんとした情報開示を行い、このような過去の省令に表れている無料の地上放送の理念についても念頭においた上で再検討が進められなくてはならない。

 本来あまねく見られることを目的としていた無料地上波本来の理念をねじ曲げ、放送局と権利者とメーカーの談合に手を貸したという総務省の過去の行為は見下げ果てたものである。コピーワンス問題、ダビング10問題、B-CAS問題の検討と続く、無料の地上放送のスクランブルとコピー制御に関する政策検討の迷走とそれにより浪費され続けている膨大な社会的コストのことを考えても、このような省令改正の政策的失敗は明らかであり、総務省はこの省令改正を失策と明確に認めるべきである。

 コピー制限なしとすることは認められないとする権利者の主張は、消費者のほとんどが録画機器をタイムシフトにしか使用しておらず、コンテンツを不正に流通させるような悪意のある者は極わずかであるということを念頭においておらず、一消費者として全く納得がいかない。消費者は、無数にコピーするからコピー制限を無くして欲しいと言っているのではなく、わずかしかコピーしないからこそ、その利便性を最大限に高めるために、コピー制限を無くして欲しいと言っているのである。消費者の利便性を下げることによって権利者が不当に自らの利潤を最大化しようとしても、インターネットの登場によって、コンテンツ流通の独占が崩れた今、消費者は不便なコンテンツを選択しないという行動を取るだけのことであり、長い目で見れば、このような主張は自らの首を絞めるものであることを権利者は思い知ることになるであろう。

 昨年運用が開始されたダビング10に関しても、大きな利便性の向上なくして、より複雑かつ高価な機器を消費者が新たに買わされるだけの弥縫策としか言いようがなく、一消費者・一国民として納得できるものでは全くない。さらに、ダビング10機器に関しては、テレビ(チューナー)と録画機器の接続によって、全く異なる動作をする(接続次第で、コピーの回数が9回から突然1回になる)など、公平性の観点からも問題が大きい。

 現在の地上無料放送各局の歪んだビジネスモデルによって、放送の本来あるべき姿までも歪められるべきではない。そもそもあまねく視聴されることを本来目的とする、無料の地上放送においてコピーを制限することは、視聴者から視聴の機会を奪うことに他ならず、このような規制を良しとする談合業界及び行政に未来はない。

 コピー制限技術はクラッカーに対して不断の方式変更で対抗しなければならないが、その方式変更に途方もないコストが発生する無料の地上放送では実質的に不可能である。インターネット上でユーザー間でコピー制限解除に関する情報がやりとりされる現在、もはや無料の地上放送にDRMをかけていること自体が社会的コストの無駄であるとはっきりと認識するべきである。無料の地上放送におけるDRMは本当に縛りたい悪意のユーザーは縛れず、一般ユーザーに不便を強いているだけである。

 本中間答申では、現行のB-CASシステムと併存させる形でチップやソフトウェア等の新方式を導入することが提言されているが、無意味な現行システムの維持コストに加えて新たなシステムの追加で発生するコストまでまとめて消費者に転嫁される可能性が高く、このような弥縫策は、一消費者として全く評価できないものである。さらに言うなら、これらの新方式は、不正機器対策には全くならない上、新たに作られるライセンス発行・管理機関が総務省なりの天下り先となり、新方式の技術開発・設備投資コストに加え、天下りコストまで今の機器に上乗せされかねないものである。

 なお、審議会では、新方式における受信確認メッセージについても議論されているようだが、現行のB-CASシステムのようにまがりなりにも機器と分けられたカードとユーザーの1対1対応を前提とできるならいざ知らず(この現行システムの前提すら極めて危うく、もはや破綻していると見た方が良いだろうが)、全国民をユーザーとして転々流通する機器に完全に組み込まれるチップあるいはソフトウェア方式において、受信確認メッセージの機能を実装することは技術的に不可能である。このように技術的に不可能なことが審議会で今後の検討対象とされること自体、総務省と情報通信審議会のこの問題に対する技術的無知、検討能力の無さを露呈するものである。

 制度的エンフォースメントにしても、正規機器の認定機関が総務省なりの天下り先となり、その天下りコストがさらに今の機器に上乗せされるだけで、しかも不正機器対策には全くならないという最低の愚策である。

 冒頭書いたように、無料の地上放送の理念を歪め、放送局・権利者・国内の大手メーカーの談合を助長している、無料の地上放送にかけられているスクランブル・暗号化こそ問題なのであって、B-CAS類似の無意味なシステムをいくら併存させたところで、積み上げられるムダなコストが全て消費者に転嫁されるだけで何の問題の解決にもならず、同じことが繰り返されるだけだろう。基幹放送である無料地上波については、B-CASシステムを排除し、ノンスクランブル・コピー制限なしを基本とすること以外で、この問題の本質的な解決がもたらされることはない。

 法的にもコスト的にも、どんな形であれ、全国民をユーザーとする無料地上放送に対するコピー制限は維持しきれるものではない。本来立法府に求めるべきことではあるが、このようなバカげたコピー制限に関する過ちを二度と繰り返さないため、無料の地上放送についてはスクランブルもコピー制御もかけないこととする逆規制を、政令や省令ではなく法律のレベルで放送法に入れることを私は一国民として強く求める。

 なお、付言すれば、本来、B-CASやコピーワンス、ダビング10のような談合規制の排除は公正取引委員会の仕事であると思われ、何故総務省及び情報通信審議会が、談合規制の緩和あるいは維持を検討しているのか、一国民として素直に理解に苦しむ。今後、立法府において、行政と規制の在り方のそもそも論に立ち返った検討が進むことを、私は一国民として強く望む。

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