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2009年4月 9日 (木)

第166回:ポルトガルの私的複製補償金関連規定

 前々回の続きで、ポルトガルの私的複製補償金関連規定の紹介を済ませておきたい。

 ポルトガル著作権法(pdf)で私的複製補償金を規定しているのは、以下の第82条である。(翻訳は拙訳。)

Artigo 82.°Compensacao devida pela reproducao ou gravacao de obras
1
- No preco de venda ao publico de todos e quaisquer aparelhos mecanicos, quimicos, electricos, electronicos ou outros que permitam a fixacao e reproducao de obras e, bem assim, de todos e quaisquer suportes materiais das fixacoes e reproducoes que por qualquer desses meios possam obter -se, incluir-se-a uma quantia destinada a beneficiar os autores, os artistas, interpretes ou executantes, os editores e os produtores fonograficos e videograficos.

2 - A fixacao do regime de cobranca e afectacao do montante da quantia referida no numero anterior e definida por decreto-lei.

3 - O disposto no n.o 1 deste artigo nao se aplica quando os aparelhos e suportes ali mencionados sejam adquiridos por organismos de comunicacao audiovisual ou produtores de fonogramas e videogramas exclusivamente para as suas proprias producoes ou por organismos que os utilizem para fins exclusivos de auxilio a diminuidos fisicos visuais ou auditivos.

第82条 著作物の複製あるいは録音録画に関する補償
第1項
 著作物の録音録画あるいは複製が可能である、化学的、電子的、電気的その他の機器並びに、そのような機器に使われ得る録音録画・複製媒体の市販価格には、著作者、実演家あるいはレコード・ビデオ製作者に与えられる補償金が含まれる。

第2項 前項に規定されている補償金の料率と徴収は、法令によって定められる。

第3項 本条第1項の規定は、自らの製作のためのみにそれを用いるレコード・ビデオ製作者、視聴覚障害の補助のためのにそれを使用する機関によって入手された記載の機器あるいは媒体に対しては、適用しない。

 また、さらに細かなことを規定している法令第62/98号からも主立ったところを以下に訳出する。(やはり翻訳は拙訳。なお、表は2004年の改正法を掲載している官報(pdf)から引用した。)

Artigo 1.°Objecto
1
...
2 - O disposto na presente lei nao se aplica aos computadores, aos seus programas nem as bases de dados constituidas por meios informaticos, bem como aos equipamentos de fixacao e reproducao digitais.

Artigo 2.°Compensacao devida pela reproducao ou gravacao de obras
Com vista a beneficiar os autores, os artistas interpretes ou executantes, os editores e os produtores fonograficos e videograficos, uma quantia e incluida no preco de venda ao publico:
a) De todos e quaisquer aparelhos mecanicos, quimicos, electronicos ou outros que permitam a fixacao e reproducao de obras como finalidade unica ou principal, com excepcao dos equipamentos digitais;
b) Dos suportes materiais virgens digitais ou analogicos, com excepcao do papel, previstos no n.° 4 do artigo 3.°, bem como das fixacoes e reproducoes que por qualquer desses meios possam obter-se.

Artigo 3.°Fixacao do montante da remuneracao
1
- A remuneracao a incluir no preco de venda ao publico dos aparelhos de fixacao e reproducao de obras e prestacoes e igual a 3% do preco de venda, antes da aplicacao do IVA, estabelecido pelos respectivos fabricantes e importadores.
...

4 - No preco de venda ao publico, antes da aplicacao de IVA, de cada um dos suportes, analogicos e digitais, e incluida uma remuneracao, nos termos a seguir indicados:

Table...

Artigo 6.°Comissao de acompanhamento
1
- e constituida uma comissao presidida por um representante do Estado designado por despacho do Primeiro-Ministro e composta por uma metade de pessoas designadas pelos organismos representativos dos titulares de direito, por um quarto de pessoas designadas pelos organismos representativos dos fabricantes ou importadores de suportes e aparelhos mencionados no artigo 3.° e por um quarto de pessoas designadas pelos organismos representativos dos consumidores.

2 - Os organismos convidados a designar os membros da comissao, bem como o numero de pessoas a designar por cada um, serao determinados por despacho do Ministro da Cultura.

3 - A comissao reune pelo menos uma vez por ano, sob convocacao do seu presidente ou a requerimento escrito da maioria dos seus membros, para avaliar as condicoes de implementacao da presente lei.

4 - As deliberacoes da comissao sao aprovadas por maioria dos membros presentes, tendo o presidente voto de qualidade.
...

第1条 対象
第1項
(省略:根拠法の列挙)
第2項 この法令の規定はコンピュータ、そのプログラム、情報技術によって作られたデータベース、並びに、デジタル録音録画・複製機器には適用されない。

第2条 著作物の録音録画・複製に対する補償
 著作者、実演家あるいはレコード・ビデオ製作者に与えられるために、次の物の市販価格には補償金が含まれる:
a)その唯一のあるいは主たる目的が、著作物の録音録画あるいは複製を可能とするものである、化学的、電子的、電気的その他の機器、ただし、デジタル機器を除く;
b)そのような機器に使われ得る、第3条第4項に規定されているデジタルあるいはアナログのブランクメディア。

第3条 補償金額
第1項
 著作物と実演の録音録画・複製機器の市販価格に含まれる補償金額は、製造業者と輸入業者を代表する者によって確定される、消費税課税前の市販価格の3%に等しい。
(中略:第2、3項で商業的に公共に供される複写機についての補償金も市販価格の3%であることを規定)
第4項 消費税課税前の市販価格において、それぞれのアナログあるいはデジタル媒体に含まれる補償金額は、次の通りである:

(中略:金額は上の表参照。第4条で例外の適用を受ける方法、第5条で徴収団体を規定)

第6条 評価委員会
第1項
 総理大臣によって指名される国家を代表する者がその議長を務め、権利者を代表する団体によって指名される半数と、第3条の機器媒体の販売輸入業者を代表する団体によって指名される4分の1と、消費者を代表する団体によって指名される4分の1によって、委員会は構成される。

第2項 委員会の委員を指名する者として呼ばれる団体、並びに、それぞれによって指名される委員の数は、文化大臣令によって決められる。

第3項 委員長の要請あるいは委員の過半数の書面による要求により、この法令の実施を評価するため、委員会は最低年1回は会合を開く。

第4項 委員会の審議は委員の多数によって決される、同数の場合は委員長が決定票を入れる。
(後略)

 改正前の法令は料率や対象範囲を文化大臣と財務大臣の共同令で定めるとしていたが、ポルトガルは、この法令の2004年の改正(上でもリンクを張った改正法(pdf)参照)によって、コンピュータ及びデジタル機器を明示的に補償金の対象外とするとともに、補償金の対象となる媒体もCD(R、RW)、MD、DVD(R、RW、RAM)、オーディオカセット、VHSビデオカセットといった専用媒体のみを列挙して、改正に議会の議決が必要な法令に直接書き込む形に改め、事実上、補償金の対象拡大を凍結している。(無論、プリンターやスキャナー等は対象外である。改正前の条文は、ポルトガル文化省のHP("Direito de Autor"→"Legislacao Legislacao nacional"→"Decreto-lei n.° 62/98, de 1 de Setembro")参照。)

 ポルトガル議会のHPに載っている法改正の審議資料を読んだところでは、2003年の12月に憲法裁判所で、このような法律・法令によらない補償金賦課は憲法違反と判断されたことが法改正に大きな影響を与えたようであり、ポルトガルにおいても、補償金に関する争いが憲法裁判にまで発展し、結果として事実上の補償金の対象拡大の凍結がなされるに至ったということは注目に値する。(憲法裁判所の判決では、私的複製補償金は実質税に相当し、改正前の規定は、税は法律によって定められなくてはならないとしているポルトガル憲法の第103条第2項に抵触すると判断している。今後、日本の議論がどうなるかは全く分からないが、このポルトガルの判断は、補償金を実質著作権税としようとする文化庁・権利者団体の目論見について、法律による税の規定を定めている日本国憲法第84条からも、問題提起し得ることを示唆している。)

 また、技術の進展も考えると範囲と料率の確定が実質不可能なためだったろうとは思うが、PCを含むデジタル機器・汎用媒体を明示的に補償金の対象外としたことも、将来を見据えた英断として高く評価したい。ドイツなどの状況を見ても、権利者団体に青天井の補償金請求権を与えることは、常に社会的混乱しかもたらさないのである。世界的に見てもその改革は困難を極めることと思うが、機器・媒体を離れ音楽・映像の情報化が進む中、「複製=対価」の著作権神授説と個別の機器・媒体への賦課を基礎とする私的複製・録音録画補償金は、既に時代遅れのものとなりつつあると言っても差し支えないだろう。

(評価委員会についても念のため訳したが、何も書いていないことからも分かるように、この評価委員会には補償金の対象範囲や料率の決定権は無い。委員などはフランスと同じ比率になっており、もしこの委員会であらゆることが決定されていたとしたら、ポルトガルでも、フランスと同じ様にデタラメな拡大のみが行われていたに違いない。)

 文化庁や権利者団体は、「複製=対価」の著作権神授説に随まで毒されたドイツやフランスなどの非道な著作権強権国家の話ばかりを強調するが、技術の進展を考えて、デジタル機器を明示的に補償金の対象から除外し、録音録画専用媒体の課金だけを残し、補償金の対象拡大を事実上凍結した国はヨーロッパにも存在しているのである。片寄った見方で国際動向を「作る」ことなど許されることではない。補償金の対象・料率に関して、具体的かつ妥当な基準はどこの国を見ても無いのだ。

 今現在ポルトガルで補償金問題が大いに騒がれているという話は聞かないが、ポルトガルでも訳の分からない国際動向なり著作権神授説なりに基づいて権利者団体が不当な要求を募らせて来ないとも限らない。また何かあれば、ポルトガルの状況についても随時紹介したいと思っている。

 最後に、最近のニュースも少し紹介しておくと、この4月6日に知財本部が第3期基本方針を決定した(日経のネット記事参照)。4月6日の会合資料に載っている基本方針案(pdf)概要(pdf))の通りに決定されたのだろうと思うが、基本方針というほどのことは無く、いつも通りの検討項目が並んでいる。日本ブランド戦略(pdf)というこれまた別に作る意味がさっぱり分からない報告書も決定されたようである。

 また、同じく4月6日にアメリカ政府が模倣品・海賊版対策条約の概要を公表した(cnetの記事、アメリカ通商代表部のリリース概要文書(pdf)参照)。条約なので、そう簡単に成立するとは思えないが、模倣品・海賊版対策条約については気になっており、この文書への突っ込みもどこかで別に書ければと思っているところである。

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コメント

I'm new to this blog. Apologize for asking this though, but to OP...
Do you know if this can be true;

投稿: Appottlolough | 2009年4月11日 (土) 19時04分

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