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2009年4月26日 (日)

第169回:オランダ著作権法の私的複製補償金関連規定・補償金問題の現状

 他にも書きたいことはいろいろあるのだが、前回の続きで、オランダ著作権法(pdf)英語版(pdf))の私的複製補償金関連規定と補償金問題の現状の紹介を済ませておく。

 前回省略した部分も含めて、オランダ著作権法の私的複製補償金関連規定を以下に訳出する。(翻訳は拙訳。翻訳に当たっては英語版も参照した。なお、第16c条は再掲。)

Artikel 16c
1
. Als inbreuk op het auteursrecht op een werk van letterkunde, wetenschap of kunst wordt niet beschouwd het reproduceren van het werk of een gedeelte ervan, mits het reproduceren geschiedt zonder direct of indirect commercieel oogmerk en uitsluitend dient tot eigen oefening, studie of gebruik van de natuurlijke persoon die de reproductie vervaardigt.

2. Voor het reproduceren, bedoeld in het eerste lid, is de fabrikant of de importeur van een voorwerp dat bestemd is om een werk ten gehore te brengen, te vertonen of weer te geven ten behoeve van de maker of diens rechtverkrijgenden een billijke vergoeding verschuldigd.

3. Voor de fabrikant ontstaat de verplichting tot betaling van de vergoeding op het tijdstip dat de door hem vervaardigde voorwerpen in het verkeer kunnen worden gebracht. Voor de importeur ontstaat deze verplichting op het tijdstip van invoer.

4. De verplichting tot betaling van de vergoeding vervalt indien de ingevolge het derde lid betalingsplichtige een voorwerp als bedoeld in het eerste lid uitvoert.

5. De vergoeding is slechts eenmaal per voorwerp verschuldigd.

6. Bij algemene maatregel van bestuur kunnen nadere regelen worden gegeven met betrekking tot de voorwerpen ten aanzien waarvan de vergoeding, bedoeld in het tweede lid, verschuldigd is. Bij algemene maatregel van bestuur kunnen voorts nadere regelen worden gegeven en voorwaarden worden gesteld ter uitvoering van het bepaalde in dit artikel met betrekking tot de hoogte, verschuldigdheid en vorm van de billijke vergoeding.

7. Indien een ingevolge dit artikel toegelaten reproductie heeft plaatsgevonden, mogen voorwerpen als bedoeld in het eerste lid niet zonder toestemming van de maker of zijn rechtverkrijgenden aan derden worden afgegeven, tenzij de afgifte geschiedt ten behoeve van een rechterlijke of bestuurlijke procedure.

8. Dit artikel is niet van toepassing op het verveelvoudigen van een met elektronische middelen toegankelijke verzameling als bedoeld in artikel 10, derde lid.

Artikel 16d
1
. De betaling van de in artikel 16c bedoelde vergoeding dient te geschieden aan een door Onze Minister van Justitie aan te wijzen, naar zijn oordeel representatieve rechtspersoon, die belast is met de inning en de verdeling van deze vergoeding overeenkomstig een reglement, dat is opgesteld door deze rechtspersoon, en dat is goedgekeurd door het College van Toezicht, bedoeld in de Wet toezicht collectieve beheersorganisaties auteurs- en naburige rechten. In aangelegenheden betreffende de inning en vergoeding vertegenwoordigt deze rechtspersoon de makers of hun rechtverkrijgenden in en buiten rechte.

2. De rechtspersoon, bedoeld in het eerste lid, staat onder toezicht van het College van Toezicht, bedoeld in de Wet toezicht collectieve beheersorganisaties auteurs- en naburige rechten.

3. Bij algemene maatregel van bestuur kunnen nadere voorschriften worden gegeven betreffende de uitoefening van het toezicht op de in het eerste lid bedoelde rechtspersoon.

Artikel 16e
1
. De hoogte van de in artikel 16c  bedoelde vergoeding wordt vastgesteld door een door Onze Minister van Justitie aan te wijzen stichting waarvan het bestuur zodanig is samengesteld dat de belangen van de makers of hun rechtverkrijgenden en de ingevolge artikel 16c, tweede lid, betalingsplichtigen op evenwichtige wijze worden behartigd. De voorzitter van het bestuur van deze stichting wordt benoemd door Onze Minister van Justitie.

Artikel 16f
Degene die tot betaling van de in artikel 16c bedoelde vergoeding verplicht is, is gehouden onverwijld of binnen een met de in artikel 16d, eerste lid, bedoelde rechtspersoon overeengekomen tijdvak opgave te doen aan deze rechtspersoon van het aantal van de door hem geimporteerde of vervaardigde voorwerpen, bedoeld in artikel 16c, eerste lid. Hij is voorts gehouden aan deze rechtspersoon op diens aanvrage onverwijld die bescheiden ter inzage te geven, waarvan kennisneming noodzakelijk is voor de vaststelling van de verschuldigdheid en de hoogte van de vergoeding.

Artikel 16g
Geschillen met betrekking tot de vergoeding, bedoeld in de artikelen 15i, tweede lid, 16b en 16c, worden in eerste aanleg bij uitsluiting beslist door de rechtbank te 's-Gravenhage.

Artikel 16ga 
1
. De verkoper van de in artikel 16c, tweede lid, bedoelde voorwerpen is gehouden aan de in artikel 16d, eerste lid, bedoelde rechtspersoon op diens aanvraag onverwijld die bescheiden ter inzage te geven waarvan de kennisneming noodzakelijk is om vast te stellen of de in artikel 16c, tweede lid, bedoelde vergoeding door de fabrikant of de importeur betaald is.

2. Indien de verkoper niet kan aantonen dat de vergoeding door de fabrikant of de importeur betaald is, is hij verplicht tot betaling daarvan aan de in artikel 16d, eerste lid, bedoelde rechtspersoon, tenzij uit de in het eerste lid genoemde bescheiden blijkt wie de fabrikant of de importeur is.

第16c条
第1項
 直接的にも間接的にも商業的利益を得る目的でなく、コピーを行う自然人自身の稽古、研究あるいは利用のためになされる、文芸、科学あるいは芸術の著作物あるいはその一部のコピー(reproduceren)は、著作権の侵害とは見なされない。

第2項 第1項に規定されているコピーに当てられる物の製造者あるいは輸入者は、著作者あるいは権利者のための適切な補償の支払いのために聴取を受け、あるいは、報告すること。

第3項 製造された物が取引に供された時に、製造者に補償金支払いの義務が発生する。輸入者に対しては、輸入の時に、この義務が発生する。

第4項 補償金の支払い義務は、第3項の支払い義務者が、第1項に規定されている対象を輸出する場合には、消滅する。

第5項 補償は対象1つにつき1回のみ行われ得る。

第6項 政令によって、第2項に規定されている支払われるべき補償の対象となると考えられる物に関して、さらなる規則が定められ得る。政令によって、適切な補償の料率、義務と形式に関して、さらなる規則が定められ得、本条の実施の条件が与えられ得る。

第7項 本条で認められるコピーは、司法あるいは行政手続きのためになされるので無い限り、著作者あるいは権利者の許諾無く、第3者に渡されてはならない。

第8項 本条は、第10条第3項に規定されている、電子的な手段によりアクセス可能とされたデータベースの複製には適用されない。

第16d条
第1項
 第16c条に規定されている補償の支払いは、司法大臣によって、代表する者と考えられ指定された法人になされ、この法人は、この補償の徴収と分配を規則に従い行い、この規則は、この法人によって作られ、著作権と著作隣接権の徴収団体管理法に規定されている管理委員会の承認を必要とする。この法人は、徴収と分配に関して、法の内外で著作者あるいは権利者を代表していなくてはならない。

第2項 第1項に規定されている法人は、著作権と著作隣接権の徴収団体管理法に規定されている管理委員会によって管理される。

第3項 政令によって、第1項に規定されている法人の管理の実施に関して、さらなる規則が定められ得る。

第16e条
第1項
 第16c条に規定されている補償の料率は、司法大臣によって指定された協会によって決められ、その理事会は、著作者あるいは権利者と、第16c条第2項に記載されている支払い義務者の代表の数が等しくなるように構成される。この協会の理事長は、司法大臣によって指名される。

第16f項
第16c条に規定されている補償の支払い義務を負う者は、第16d条第1項に規定されている法人に、遅滞無くあるいはこの法人と取り決めた期間内に、製造あるいは輸入した、第16c条第1項に規定されている物の数を通知しなくてはならない。これらの者は、また、その求めに応じて遅滞無く、支払うべき補償金の量を決めるために必要な資料を、この法人に提供する義務を負う。

第16g条
第15i条第2項、第16b条と第16c条に規定されている、補償に関する争いの第一審は、ハーグ地裁の専属管轄とする。

第16ga条
第1項
 第16c条第2項に規定されている物の販売業者は、その求めに応じて遅滞無く、第16d項第1項に規定されている法人に、第16c条第2項に規定されている補償が、製造者あるいは輸入者によって支払われたかどうかを確かめるために必要な資料を提供しなければならない。

第2項 製造者あるいは輸入者によって補償が支払われたと販売業者が示すことができない場合、第1項に記載されている書類によって誰が製造者あるいは輸入者であるのかを示さない限り、販売業者が第16d条第1項に規定されている法人に、その支払いをする義務を負う。

 ここで、第16項第1項に書かれている、補償金の徴収と分配を行う団体としては、私的複製補償金協会(Stichting Thuiskopie)が指定されているが、それとは別に、第16e条第1項に書かれている、補償金の料率を決定する団体としては、私的複製補償金交渉協会(Stichting Onderhandelingen Thuiskopievergoedingen:紛らわしいので、以下SONTと略す。)が指定されている。

 私的複製補償金協会のHPに料率表が載っているが、今のところ、オランダにおける私的複製補償金の対象は録音録画専用媒体のみであり、CD-R/RW、DVD±R/RW、MD、オーディオ・ビデオカセットのみとなっている。

 無論、私的複製補償金制度を導入しているほとんどの国の例に洩れず、オランダでも、2006年に、携帯音楽プレーヤーとハードディスクレコーダーへの課金の問題が大騒ぎになり、SONTでの検討の結果、2006年11月には、これらの機器には課金しないということが決定され、司法大臣もそのことを追認している。(司法省のリリース英語版)、司法大臣文書(pdf)、当時のZDnet.nlの記事参照。)

 さらに、徴収と分配しかしないはずの私的複製補償金協会が、メモリーカードについて勝手に仮料率を決めて課金を求めて動くということもあったようであり、2007年3月には、司法大臣がメモリーカードへの課金を否定し、このような私的複製補償金協会の暴走を強く批判している。(司法省のリリース司法大臣文書(pdf)参照。)

 また、2007年3月末には、著作権管理団体管理委員会の報告(pdf)を受け、透明性に欠け補償金の分配をきちんと行っていなかった私的補償金協会に対して、司法大臣がその改善指導を行っている。(司法省のリリース英語版)、司法大臣文書(pdf)参照。なお、補償金の分配について、私的複製補償金協会と権利者団体の間で裁判にまでなっている。)

 この3月末のリリースでも、司法省は、補償金の分配のデタラメさから、2008年中は料率と対象範囲の変更はされるべきではないと書いているが、権利者団体の際限の無い不当な補償金拡大要求によってもたられる無用のゴタゴタに心底うんざりしたのか、オランダは、2007年11月5日の司法大臣決定(pdf)で、補償金の料率と範囲を固定して2008年末までそれを維持するとし、補償金制度を公式に凍結するに至っている。

 権利者団体が、このような政府による補償金制度の凍結を不当として政府を相手に訴えを起こすが、2008年1月にはハーグ地裁に、このような政府による決定の余地は残されているとして即刻退けられている。(判決、当時のtweakers.netの記事参照。)

 また、以前から、媒体のメーカーと輸入業者と私的録音録画管理協会の間でも私的複製補償金に関する裁判闘争も続いており、例えば、2008年6月25日にも、やはりハーグ地裁で、両者の争いから、私的複製補償金は、明示あるいは黙示の許諾を有する複製を対象とするものではないとする判決が出されているが、判決自体矛盾しており結論も曖昧に過ぎるため、問題解決にはあまり役立っていないのではないかと思う。(なお、この裁判が継続中かどうかは不明だが、どちらから控訴されていてもおかしくないだろう。)

 その後も、2008年10月に司法省は凍結の1年延長を決定しており、今もこの凍結は継続中である。(司法省のリリース英語版)、司法大臣文書(pdf)参照。)

 要するに、ほぼ権利者団体代表で構成されている私的複製補償金協会(理事会等の構成メンバーリスト参照)が、補償金拡大運動を行い、それがSONTを通じた交渉や反対派の各種ロビー活動によってどうにか止まっているというのがオランダの現状のようである。オランダにおいては私的複製補償金の対象範囲が専用録音録画媒体のみに維持されているが、このことと欧州随一の大手電機メーカーであるフィリップスがオランダにあることとは無関係では無いだろう。

 今現在、2010年を目処に、私的複製補償金協会が、性懲りも無く補償金拡大運動を再開し始めているようだが(fd.nlの記事参照)、オランダでも、メーカー等はそもそもバランスを欠いた現行の補償金システム自体を批判しており、フィリップスの存在を考えても、オランダで権利者団体の政治力による不当な押し倒しが成立する可能性は低いのではないかと思う。凍結が再延長される可能性も十分にあるだろう。

 ポルトガルと並び、オランダも事実上補償金制度を凍結している。非道な著作権強権国家が居並ぶ欧州においても、権利者団体の際限の無い不当な要求からもたらされる社会的混乱にうんざりし、補償金の対象を録音録画専用媒体のみに限り、補償金の対象拡大を事実上凍結した国は存在しているのである。繰り返しになるが、欧州だからと言って、メーカーや消費者が納得して補償金を払っているということはカケラも無い、権利者団体がその政治力を不当に行使し、歪んだ「複製=対価」の著作権神授説に基づき、不当に対象を広げ料率を上げようとしているだけというのがあらゆる国における実情である。補償金の対象・料率に関して、具体的かつ妥当な基準はどこの国を見ても無いのだ。

 最後に、最近のニュースも少し紹介しておくと、欧州における実演家の保護期間延長がEU議会で可決された(reuterの記事afterdawn.comの記事参照)。問題の本質を全く理解していない話だが、EU議会は、95年への延長を70年とするという妥協案で延長を通した。議決は賛成377名、反対178名、棄権37名と、反対派の努力にもかかわらず、まだメジャーレーベルと権利者団体の欧州における政治力はまだかなり強いと見える。これで、この案はEU理事会での最終決定に移される。反対の国も存在しているようだがどうなるか、先行きは怪しい。

 スウェーデンにおける、プロバイダー責任制限型の情報開示手続きを整備する著作権法改正についても、そのうち紹介できればと思っているが、その影響について「P2Pとかその辺の話」で取り上げられているので、興味のある方は是非リンク先をご覧頂ければと思う。

 また、中国が、ソースコード開示強制認証制度の近日中の導入を政府に通告してきているようである(読売のネット記事産経のネット記事参照)。日米欧で全力をあげて排除してもらいたいと思うが、中国のやることもメチャクチャである。

(4月27日夜の追記:ブルーレイ課金の著作権法施行令改正について、文化庁と経産省が合意に達したとのニュース(ITmediaの記事internet watchの記事日経TechOnの記事参照)があったが、また消費者そっちのけで利害調整が行われようとしている。やり方としては、ブルーレイ課金を施行令改正で行った上で、施行令とは別の施行通知に関係者かンでの意見の相違が顕在化した場合の将来の見直しの可能性について書くことを考えているようだが、既に意見の相違がこれ以上は無いくらいに顕在化しているこの問題について、このようなやり方を取ることは確実に将来に禍根を残すだけだろう。)

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コメント

サイト運営し始めた者なんですが、相互リンクしていただきたくて、コメントさせていただきました。
こちらより、相互リンクしていただけると嬉しいです。
まだまだ、未熟なサイトですが、少しずつコンテンツを充実させていきたいと思ってます。
突然、失礼しました。
7rwklWoj

投稿: hikaku | 2009年4月26日 (日) 11時13分

またパブコメ募集だそうです。

「青少年が安全に安心してインターネットを利用できるようにするための施策に関する基本的な計画(素案)」に対する意見募集

http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=Pcm1010&BID=095090530&OBJCD=&GROUP=

去年から似たようなパブコメに反対意見を書いてきたような気がするんですが。
これは更なる強化案なんでしょうか?

投稿: taffy | 2009年4月28日 (火) 19時40分

taffy様

情報・コメントありがとうございます。このパブコメについては、次回、きちんとエントリを立てて書きたいと思います。

投稿: 兎園 | 2009年4月29日 (水) 01時18分

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