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2009年4月 6日 (月)

番外その16:ダウンロード違法化問題に関する民主党・川内博史議員の質問主意書と政府の答弁書の転載

 民主党の川内博史議員が、ダウンロード違法化問題に関して政府に質問主意書を投げていたが、これに対する政府の答弁書が公表された(経過)。(川内博史議員のブログの関連エントリ1も参照。)

 リンク先を見てもらえば良い話ではあるのだが、法案に関する現時点での政府の見解として重要な内容を含んでいると思うので、念のため、ここにもその全文を転載しておく。

 いつものお役所答弁だが、政府(文化庁)の見解としては、外国では保護期間切れの扱いとなる映画やアメリカでフェアユースが認められた著作物の、その国からのダウンロードについても、その自動公衆送信が国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものであり、かつ、その事実を知りながらダウンロードしてデジタル方式の録音又は録画を行う場合には違法ということのようである。予想通りの答弁だが、このような運用が本当になされた日には、さらに混乱に拍車をかけることになるだろう。

 また、答弁は、このような違法ダウンロードについてもキャッシュの場合は権利制限の対象となるとしているが、第47条の8のキャッシュの権利制限における「これらの利用又は当該複製物の使用が著作権を侵害しない場合に限る。」という限定の解釈についてはぼかして書いており、実際のケースでこの限定がどう効いてくるかについては何とも言えないことに変わりはない。(キャッシュの人為的な再コピーが権利制限の対象とならないとする見解も予想通りだが、第42回でも書いた通り、このように完全に他人が知り得ない行為を違法とする法律は、法律として致命的な欠陥を抱えているのであり、今のままでは社会に変な歪みを与えることになるだろう。)

 便乗詐欺対策についても、各種媒体や講習会等を通じた広報啓発活動によって改正の内容について広く国民へ周知するとしているだけだが、ダウンロード違法化に関して、いつもの広報啓発活動が何らかの対策になるとは全く思えない。ユーザーから見て何が違法で何が合法かの区別は常につかず、その行為に1個人しか絡まないダウンロードにおいて、エスパーでも無い限り証明も反証もできない「事実を知って」という精神的要件も危険なものとしかなりようが無い。これは周知広報すれば良いとかそういうレベルの問題ではないのである。

 この答弁も紋切り型のお役所答弁に過ぎず、去年の法制小委への提出パブコメにも書いた通り、ダウンロード違法化に関して8000件以上のパブコメの7割方で示された国民の懸念は今なおほとんど全くと言って良いほど何も解消していない。

 このような答弁でごまかされる者などいないだろう。こうした活動をして下さる議員が一人でもいることは本当に有り難いのだが、民主党も党としてはどうにも当てにならないので、ダウンロード違法化問題についても先行きは実に不安である。

(なお、答弁では、一般フェアユース条項の導入の議論にこのダウンロード違法化法案は直接影響しないとしているが、「直接」と修飾語をつけているということは、間接的には影響してくる可能性があると政府(文化庁)も認識していると推測される。また、私的録音録画補償金問題は、今後、基本問題小委員会とやらで検討されるのではないかと思っていたが、この答弁は、それとは別に利害関係者の意見交換の場を設けることも検討しているかのように読める。私的録音録画小委員会についてどこでどのように検討されることになるのかも気になるところである。)

 ついでに一つ最近のニュースも紹介しておくと、特許に関して、特許庁の無効審判の制限と裁判所への判断の一本化の検討を開始するという日経のネット記事があった。判断の一本化が望ましいのはその通りだと思うが、実際の整理は非常に難しいのではないかと思う。

(以下、転載)

著作権法の一部を改正する法律案に関する質問主意書

 今国会に提出された著作権法の一部を改正する法律案(平成二十一年三月十日閣法第五十四号。以下「法案」という。)の内容について、第百六十八回国会において提出した質問主意書(質問第二一六号。以下「先の質問」という。)及び答弁書(内閣衆質一六八第二一六号。以下「先の答弁」という。)を踏まえ、先の質問における指摘が本法案において十分に反映されているとは評価し難いとの認識に基づき、以下質問する。

 法案第三十条第一項第三号の新設条項における「著作権を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものを含む。)を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を、その事実を知りながら行う場合」(以下「本項規定」という。)について質問する。
1)本項規定には、専ら映画の著作物につき我が国よりも著作権の保護期間が短く、かつ文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約第七条第八項を根拠とする相互主義を採用している国において自動公衆送信されている昭和二十九年(西暦千九百五十四年)から三十四年(西暦千九百五十九年)に公開された映画を我が国において視聴する目的でダウンロードする行為は含まれるのか。また、この場合において法案第四十七条の八の「当該複製物の使用が著作権を侵害しない場合」が成立し得る事例は想定しているのか。
2)本項規定には、アメリカ合衆国著作権法第百七条におけるフェアユース規定(権利者の利益を不当に害しない公正な利用であれば、許諾なしに著作物の利用ができるとするもの)に基づき当該国の法律上は合法的にアップロードされ、自動公衆送信されている著作物を我が国において視聴する目的でダウンロードする行為は含まれるのか。
3)先の答弁では「適法サイトに関する情報の提供について運用上の工夫が必要であること」を文化審議会著作権分科会私的録音録画小委員会の報告書に記載したと述べているが、本項規定は先の質問において指摘した「一般国民がインターネットにアクセスする行為に対して常に、かつ高確率で損害賠償を負うリスクを生じさせる結果となる」危険性を一方的に増大させる恐れが大きいと評せざるを得ないものと思料される。このような規定を創設すること自体、諸外国の著作権法におけるフェアユース規定の否定に直結するものであり、このことは我が国の知的財産戦略本部においても提言されている将来的なフェアユース規定の創設を著しく妨げる要因と成り得るのではないか。

 法案第四十七条の八の規定について質問する。
1)先の質問において「仮に現行の著作権法でキャッシュが『複製』と解釈されても権利制限を加えるべきではないとする」文化審議会事務局(以下「事務局」という。)の見解につき「見解に基づく条文が法律に明記されなければ意味を為さないのではないか」と指摘したところであるが、本条項を追加しなければキャッシュが外形的に「複製」とみなされ、違法と成り得る恐れが生じた為に創設するのか。
2)一般に、インターネットを閲覧する際に使用されるブラウザと呼ばれるソフトウェアは特定のフォルダにキャッシュを蓄積する構造となっているが、違法複製物のキャッシュがフォルダに収納されている時点では本条項の規定により合法と解される場合、キャッシュをフォルダから内蔵記憶装置の他の領域(自動公衆送信状態に置かないことを前提とする。以下同じ。)や、外部記憶装置に移動する場合、本条項の規定は適用されるのか。

 先の質問において、本法案が成立・施行された場合に便乗して振り込め詐欺やワンクリック詐欺、恐喝行為等が増大する恐れについて指摘したところ、先の答弁では「御指摘のような被害が生じないよう、仮に同項の規定の適用除外の範囲を拡大する場合には、当該制度改正の内容について広く国民への周知を図ることが重要であると考えている」とされているが、現時点で具体的に「御指摘のような被害が生じないよう」どのような対策を実施する予定であるのか。何ら予定が無い場合、係る犯罪の発生が当然に予見し得る政策を平成十九年秋に実施された意見募集で示された多くの一般国民の反対を押し切って強行する以上、無責任との謗りを免れ得ないものと思料されるが、その点につき政府の見解を問う。

 平成二十年度まで文化審議会著作権分科会(以下「分科会」という。)に設置されていた私的録音録画小委員会の後継組織について質問する。
1)事務局が私的録音録画補償金における「利害関係者」と認定している立場の者は、どのような立場の者であるのか、全ての列挙を求める。
2)報道によると、当該組織は非公開の私的懇談会として設置されるとのことであるが、このような形態で設置する理由は何か。分科会はその閉鎖性ないし情報開示に対する消極的姿勢が平成十六年の国会審議において批判に晒され、同年度より公開を原則として来た経緯があるものと承知しているが、当該組織の設置形態はこうした経緯に真っ向から反するものではないのか。
3)当該組織の構成員の選定基準については分科会委員や私的録音録画小委員会の専門委員に準じているのか。特に当該組織の議事が非公開とされていることにつき、事務局の意向に沿った「利害関係者」が優先的に集められると共に私的録音録画小委員会において事務局の議事進行に批判的な立場の委員または専門委員を排除し、事務局の求める結論に沿った形で議事を円滑に進める意図に基づき非公開とするのではないかとの批判が一部で生じているが、その点につき政府の見解を問う。

右質問する。

衆議院議員川内博史君提出著作権法の一部を改正する法律案に関する質問に対する答弁書

一の1)及び2)について
 お尋ねの「自動公衆送信されている昭和二十九年(西暦千九百五十四年)から三十四年(西暦千九百五十九年)に公開された映画を我が国において視聴する目的でダウンロードする行為」及び「自動公衆送信されている著作物を我が国において視聴する目的でダウンロードする行為」については、当該自動公衆送信が国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものであり、かつ、その事実を知りながら当該自動公衆送信を受信してデジタル方式の録音又は録画を行う場合には、今国会に提出している著作権法の一部を改正する法律案(以下「法案」という。)における著作権法(昭和四十五年法律第四十八号)第三十条第一項第三号に該当する。また、1)の後段のお尋ねの趣旨が必ずしも明らかでないが、当該録音又は録画が、当該視聴のための電子計算機による情報処理の過程において、当該情報処理を円滑かつ効率的に行うために必要と認められる限度で当該電子計算機の記録媒体に行われるものである場合には、法案における著作権法第四十七条の八の規定により、当該録音又は録画については、複製権は及ばない。

一の3)について
 文化庁としては、法案における著作権法第三十条第一項第三号の規定は、「デジタル・ネット時代における知財制度の在り方について(報告)」(平成二十年十一月二十七日知的財産戦略本部デジタル・ネット時代における知財制度専門調査会)における「権利制限の一般規定(日本版フェアユース規定)の導入」に関する提言を踏まえた所要の規定を創設するかどうかに関する検討に直接影響するものとは考えていない。

二の1)について
 法案における著作権法第四十七条の八の規定は、平成二十一年一月の文化審議会著作権分科会報告書(以下「報告書」という。)における「機器利用時・通信過程における蓄積等の取扱いについて」の検討を踏まえ、電子計算機において著作物を利用する場合に当該電子計算機による情報処理の過程で行われる著作物の蓄積に関し、複製権が及ばない範囲を明確にするために創設するものである。

二の2)について
 お尋ねの「移動する場合」の趣旨が必ずしも明らかでないが、法案における著作権法第四十七条の八の規定の適用を受けて作成されたキャッシュを用いて当該キャッシュに係る著作物を新たに複製する場合における当該複製行為については、同条の規定により複製権が制限されるものではない。

三について
 文化庁としては、法案が成立した場合には、インターネット、広報誌その他の媒体の活用、「著作権セミナー」その他の講習会や研修会の開催等を通じた広報啓発活動を行うとともに、関係団体による広報啓発活動を支援することにより、改正の内容について広く国民への周知に努めてまいりたいと考えている。

四の1)について
 お尋ねの「利害関係者」の趣旨が必ずしも明らかでないが、報告書においては、私的録音録画補償金制度の見直しに関する関係者として、「例えば権利者、メーカー、消費者など」と記載されている。

四の2)及び3)について
 お尋ねの「私的録音録画小委員会の後継組織」の趣旨が必ずしも明らかでないが、報告書に記載された「関係者が忌憚のない意見交換ができる場」を設けることに関しては、現在検討中である。また、文化庁としては、私的録音録画補償金制度の見直しに関する検討を行うに際して、御指摘のような「事務局の求める結論に沿った形で議事を円滑に進める意図に基づき非公開とする」との意図は有していない。

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