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2009年2月 7日 (土)

第153回:文化審議会著作権分科会報告書

 文化庁のHPに文化審議会著作権分科会の今年度の報告書(pdf)が掲載された。中身は、今までの小委員会の報告書の寄せ集めに過ぎないのだが、これからのために少しメモを作っておきたいと思う。

 1月26日の著作権分科会の資料中の概要(pdf)でも分かるが、この報告書に含まれている法改正事項をまとめると以下のようになるだろう。

  • 情を知ってインターネット上で海賊版の販売等の申出をすることを著作権侵害行為とみなす。
  • 障害者のための権利制限の範囲の拡大。
  • オークション等における販売のための画像複製・掲載を権利制限の対象とする。
  • 検索エンジンのための複製等を権利制限の対象とする。(ただし、ロボット型のみ。ウェブサイトの設定により情報収集を拒否する旨の意思表示を行っている場合は権利制限の対象外。他者の著作物が侵害されていると知ったとき、または、他者の著作権を侵害するものであると知ることが出来たと認めるに足りる相当の理由がある場合は、サービス提供者に対して違法複製物の削除義務を課す。)
  • 相互運用性の確保や障害の発見等の一定の目的で行うリバース・エンジニアリングを権利制限の対象とする。
  • 情報解析分野の研究開発を権利制限の対象とする。
  • 機器利用時における蓄積及び通信を巡る蓄積等を権利制限の対象とする。
  • 違法録音録画物・違法配信からの情を知っての録音録画を、利用者保護に配慮した上で、私的複製(第30条)の適用除外とする。(いわゆるダウンロード違法化。プログラム他について引き続き検討。)

 他の点についてもいろいろ言いたいことはあるが、特にダウンロード違法化について、8000通以上のパブコメでユーザーが伝えようとしたことを、結局、文化庁は最後まで理解しようとしなかった。第157ページで、

意見募集では利用者が法的に不安定な立場におかれるのではないかとの疑念が多く寄せられたが、仮に現実に民事訴訟を提起する場合においても、利用者が違法録音録画物・違法配信であることを知りながら録音録画を行ったことに関する立証責任は権利者側にあり、権利者は実務上は利用者に警告を行うなどの段階を経た上で法的措置を行うことになると考えられるため、利用者が著しく不安定な立場に置かれて保護に欠けることになることはないと考えられる。

と、答えられないものは全て無視し、勝手にパブコメをあまりにも簡単にまとめて片付けているが、このような非道い回答で誤魔化される者がいるだろうか。立証責任が権利者側にあるといったところで、一個人しか行為に絡まないダウンロードにおいて「情を知って」という要件は、証明も反証も出来ないものであるし、警告自体濫用や詐欺が懸念されていたものである。法制小委へのパブコメでも書いたが、私的録音録画小委員会に対するパブコメでユーザーが数多く挙げた懸念は、このような単純な答えで片付けて良いようなものでは全く無かった。

 「第30条の範囲の見直しについては、特に違法録音録画物、違法配信からの録音録画について、利用者保護に配慮した上で著作権法改正を行うことに賛成する意見が大勢であったことから、文化庁は所要の措置を講じる必要がある」(第159ページ)らしいが、ダウンロード違法化と利用者保護は両立しない。だからこそ、あれだけのパブコメが集まったのだし、今でも反対の声は非常に強いのである。

(ダウンロード違法化問題に関して、第156~157ページの「この点については、例えば日本と欧米では違法複製の状況、法制及び技術的保護手段の実態が異なっているので国際的な動向を慎重に見極める必要がある、有料音楽配信の売り上げは伸びており現状において法改正の必要性はないのではないか等とする慎重な意見や、コンテンツホルダーは利用者が高い利便性のもとで合法的にコンテンツを享受できるような環境を充分提供したうえで権利侵害に対処すべきであるが、その点について日本の現状では不十分であり、権利者はそうした点を充分考えるべきである」という指摘は実にもっともだと思うが、残念ながら結論に結びついていない。)

 最終報告書がまとまったとは言え、まだ改正法案は影も形も見えず、提出されたとしても可決前に選挙が挟まる可能性が高い。知財政策・情報政策上も次の選挙の重要性は極めて大きい。ダウンロード違法化問題の次の舞台は国会である。

 最後に、「P2Pとかその辺の話」(元になったheise onlineの記事Spreeblickのブログ記事)で、ダウンロード違法化にともなって生じた混乱に懲りたのか、ドイツの法務大臣が3ストライクアウトポリシーの採用に否定的な見解を述べたとする記事を紹介しているので、念のため、リンクを張っておく。悪辣なダウンロード違法化を先駆けて行い、混乱の種を世界に撒いたドイツの罪も極めて重く、どっちもどっちだと思うが。

(2月7日夜の追記:公取がJASRACに包括許諾契約の改善命令を出す予定という記事があった(ITmediaの記事47newsの記事読売のネット記事参照)。番外その10のついでに書いたように、他社・他団体からの楽曲を使っても、びた一文まからない包括許諾契約というのも変なものであり、公正透明な契約がなされるようになればと思っているが、コストとメリットのバランスを考えた適正な改善策が取られないようでは意味がない。この問題についても、今後の展開が気になるところである。)

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