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2009年1月31日 (土)

第151回:イギリス文化省の「デジタル・ブリテン」中間報告書に含まれている海賊版対策

 前回のついでに、イギリスの文化大臣が3ストライクポリシーの採用に否定的な見解を述べたとするTIMESのネット記事を紹介したが、別にイギリスは海賊版対策をあきらめた訳ではなく、イギリス文化省から、この1月29日に海賊版対策を含む「デジタル・ブリテン」中間報告書(イギリス文化省のリリース公表HP本文(pdf))が公表されているので、今回は、その内容の紹介をしておきたいと思う。

 メインは通信政策だが、知財関連の話も、第3章「デジタルコンテンツ」(第36~52ページ)に書かれている。その中でも特にインターネットにおける海賊版対策に関する計画11~13を訳すと以下のようになる(翻訳は拙訳)。

ACTION 11
By the time the final Digital Britain Report is published the Government will have explored with interested parties the potential for a Rights Agency to bring industry together to agree how to provide incentives for legal use of copyright material; work together to prevent unlawful use by consumers which infringes civil copyright law; and enable technical copyright-support solutions that work for both consumers and content creators. The Government also welcomes other suggestions on how these objectives should be achieved.

ACTION 12
Before the final Digital Britain Report is published we will explore with both distributors and rights-holders their willingness to fund, through a modest and proportionate contribution, such a new approach to civil enforcement of copyright (within the legal frameworks applying to electronic commerce, copyright, data protection and privacy) to facilitate and co-ordinate an industry response to this challenge. It will be important to ensure that this approach covers the need for innovative legitimate services to meet consumer demand, and education and information activity to educate consumers in fair and appropriate uses of copyrighted material as well as enforcement and prevention work.

ACTION 13
Our response to the consultation on peer-to-peer file sharing sets out our intention to legislate, requiring ISPs to notify alleged infringers of rights (subject to reasonable levels of proof from rights-holders) that their conduct is unlawful. We also intend to require ISPs to collect anonymised information on serious repeat infringers (derived from their notification activities), to be made available to rights-holders together with personal details on receipt of a court order. We intend to consult on this approach shortly, setting out our proposals in detail.

計画11
 デジタル・ブリテン最終報告書が公表されるまでに、著作物の合法的な利用にインセンティブをどのようにして与えるかということについて各業界に合意をもたらすべく、政府は、関係者とともに、権利エージェンシーの可能性を探り、著作権法を民事的に侵している消費者の違法利用を防止し、消費者とクリエーターの双方に有効な著作権を支える技術的解決をもたらすためにともに努める。政府はまたこの目的の達成のための他の提案も歓迎する。

計画12
 デジタル・ブリテン最終報告書が公表される前に、(電子商取引、著作権、データ保護、プライバシーに適用される法的枠組みの中で)この試みに応える企業の支援・連携させるこのような新たな著作権の民事的エンフォースのアプローチに、販売業者と権利者の、適度かつ釣り合いの取れた分担での出資意向を、我々は、彼らとともに探る。

計画13
 ピア・ツー・ピアに関する協議から、我々は、(権利者からの合理的なレベルの証拠に基づいて)権利侵害の疑いがある者に、彼らの行為が違法なものであるという通知を出すことを、ISP(インターネット・サービス・プロバイダー)に義務づける立法をするべきという結論に達した。我々はまた、裁判所の命令に基づいて個人情報を権利者に開示できるよう、(通知後も)深刻な侵害を繰り返す者に関して匿名情報を集めることをISPに義務づけることも考えている。

 確かにフランスのようにネット切断型の対策ではないが、イギリスも、ISPに警告通知を出すことや侵害を繰り返すユーザーの情報を収集することを義務づけようとしているなど、ISPの著作権警察化を図ろうとしている点ではさほど変わらない。

 このような対策においては、警告通知や情報収集のコスト負担が大きな問題となるのだが、この報告書を読んでも、イギリスがどう考えているのかは良く分からない。当たり前の話だが、警告通知などの全コストをISP、消費者あるいは国家負担とすると、権利者団体によって警告通知要請が乱発され、イギリスでも混乱をまねくことになるに違いないのである。(フランスの3ストライク法案は無論費用負担の面でも批判されている(Numeramaの記事PC INPACTの記事1記事2参照)。第97回で書いたように、ドイツはダウンロード違法化による刑事訴訟の乱発で懲りたのか、結局、プロバイダー責任制限型の情報開示手続きを整備する際、訴訟の前に権利者自身でまず警告を出すこと、警告で相手に請求できるコストの上限を100ユーロにするなどの濫用防止策を取った。)

 また、権利エージェンシーというのも良く分からないが、説明を読む限りでは、権利者やISPなどの間の協力の中で作られる、効果的かつバランスの取れたエンフォースメント手段を行使する主体らしい。通信の秘密やプライバシーなどの基本的な権利の枠組みを守る中でやれる限りのことはやれば良いと思うが、ISPの警告通知義務化・情報収集義務化と合わせて考えると、政府機関では無いにせよ、この権利エージェンシー創設の動きもどうも不穏である。

 この報告書も日本の政府の報告書と同じで具体性に欠けるので、何が本当に実現するのか良く分からないが、このようなイギリスの動きに加え、RTEの記事によると、アイルランドでは、民間ベースで勝手にネット切断型の違法コピー対策が取られるようであるし、CNETの記事Ecransの記事も参照)によると、アメリカでも、ネット切断まで行かないものの、いくつかのISPが権利者からのテイクダウンノーティスをユーザーに転送することに合意しそうな気配があり、フランスの著作権検閲機関創設型の対策と並行する形で、英米では、今年、民間ベースと称して、似たような警告通知(ネット切断の可能性も含め)の取り組みが押し進められることになりそうである。そして本当にこのような取り組みが進めば、英米でもやはり混乱が生じることになるだろうが、英米は裁判(判例法)の国なので、裁判で時間をかけて軌道修正して行くことになるのではないかと私は思う。

 最後に、報告書から、まさに正鵠を射たものとして、「消費者が求める形で合法なコンテンツを提供することが、恐らく最も重要な鍵となるだろう。短長期的に、権利者は、今一度、技術革新によって彼らと消費者の間で相互尊重が可能となることを見るに違いない。ビジネスの中で、消費者とクリエータはともに、感動の参加と享受と賞賛に支払い、報いて来たのだ。これは歴史に裏打ちされたことであり、これはビジネスの革新によって成功裏に克服されなくてはならないことなのである。」(第42ページ)という言葉を、引用しておこう。イギリス政府もまたこの言葉に従っているようにあまり見えないのは残念だが。

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