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2009年1月22日 (木)

第149回:オーストリアの私的複製補償金関連規定

 今回は、前回の続きとして、オーストリア著作権法中の私的録音録画補償金関連規定の紹介をしたいと思う。

 関連部分の条文は以下の通りである(翻訳は拙訳)。

§ 42b. (1) Ist von einem Werk, das durch Rundfunk gesendet, der offentlichkeit zur Verfugung gestellt oder auf einem zu Handelszwecken hergestellten Bild- oder Schalltrager festgehalten worden ist, seiner Art nach zu erwarten, dass es durch Festhalten auf einem Bild- oder Schalltrager nach § 42 Abs. 2 bis 7 zum eigenen oder privaten Gebrauch Vervielfaltigt wird, so hat der Urheber Anspruch auf eine angemessene vergutung (Leerkassettenvergutung), wenn Tragermaterial im Inland gewerbsmassig entgeltlich in den Verkehr kommt; als Tragermaterial gelten unbespielte Bild- oder SchallTrager, die fur solche Vervielfaltigungen geeignet sind, oder andere Bild- oder SchallTrager, die hiefur bestimmt sind.

(2) Ist von einem Werk seiner Art nach zu erwarten, dass es mit Hilfe reprographischer oder ahnlicher Verfahren zum eigenen Gebrauch Vervielfaltigt wird, so hat der Urheber Anspruch auf eine angemessene vergutung (Reprographievergutung),
1. wenn ein Gerat, das seiner Art nach zur Vornahme solcher Vervielfaltigungen bestimmt ist (Vervielfaltigungsgerat), im Inland gewerbsmassig entgeltlich in den Verkehr kommt (geratevergutung) und
2. wenn ein Vervielfaltigungsgerat in Schulen, Hochschulen, Einrichtungen der Berufsbildung oder der sonstigen Aus- und Weiterbildung, Forschungseinrichtungen, offentlichen Bibliotheken oder in Einrichtungen betrieben wird, die Vervielfaltigungsgerate entgeltlich bereithalten (Betreibervergutung).

(3) Folgende Personen haben die vergutung zu leisten:
1. die Leerkassetten- beziehungsweise geratevergutung derjenige, der das Tragermaterial beziehungsweise das Vervielfaltigungsgerat von einer im In- oder im Ausland gelegenen Stelle aus als erster gewerbsmassig entgeltlich in den Verkehr bringt; wer das Tragermaterial beziehungsweise das Vervielfaltigungsgerat im Inland gewerbsmassig entgeltlich, jedoch nicht als erster in den Verkehr bringt oder feil halt, haftet wie ein Burge und Zahler; von der Haftung fur die Leerkassettenvergutung ist jedoch ausgenommen, wer im Halbjahr SchallTrager mit nicht mehr als 5.000 Stunden Spieldauer und BildTrager mit nicht mehr als 10.000 Stunden Spieldauer bezieht; hat der Beklagte im Inland keinen allgemeinen Gerichtsstand, so sind die Gerichte, in deren Sprengel der erste Wiener Gemeindebezirk liegt, zustandig;
2. die Betreibervergutung der Betreiber des Vervielfaltigungsgerats.

(4) Bei der Bemessung der vergutung ist insbesondere auf die folgenden Umstande Bedacht zu nehmen:
1. bei der Leerkassettenvergutung auf die Spieldauer;
2. bei der geratevergutung auf die Leistungsfahigkeit des gerats;
3. bei der Betreibervergutung auf die Art und den Umfang der Nutzung des Vervielfaltigungsgerats, die nach den Umstanden, insbesondere nach der Art des Betriebs, dem Standort des gerats und der ublichen Verwendung wahrscheinlich ist.

(5) vergutungsanspruche nach den Abs. 1 und 2 konnen nur von Verwertungsgesellschaften geltend gemacht werden.

(6) Die Verwertungsgesellschaft hat die angemessene Vergutung zuruckzuzahlen
1. an denjenigen, der Tragermaterial oder ein Vervielfaltigungsgerat vor der Ver?u?erung an den Letztverbraucher in das Ausland ausfuhrt;
2. an denjenigen, der Tragermaterial fur eine Vervielfaltigung auf Grund der Einwilligung des Berechtigten benutzt; Glaubhaftmachung gen?gt.

第42b条 第1項
 放送を通じて送られるか、公衆にアクセス可能とされるか、あるいは、商業目的で生産された録音録画媒体に固定された著作物について、その形式から、第42条第2項から第7項に規定されている、自己利用あるいは私的利用のために、録音録画媒体への固定を通じて複製されることが期待されるとき、複製媒体が国内で商業的に有償で取引されている場合、著作権者は、適切な補償金(ブランクカセット補償金)の請求権を有する。このような複製に適した空の録音録画媒体、あるいはこのことに当てられる他の録音録画媒体はここでいうところの複製媒体と見なされる。

第2項 その形式から、著作物が、複写あるいは似たような手続きによって自己利用のために複製されると期待されるとき、以下の場合に、著作権者は、適切な補償金(複写補償金)請求権を有する。
1.その形からそのような複製の作成に当てられる機器(補償金対象機器)が、国内で商業的に有償で取引されている場合(機器補償金)と、
2.複製機器が、学校、高校、職業教育、他の専門教育、あるいは高等専門教育機関、研究機関、公的図書館あるいは機関の中で提供され、複製機器が有償で用意されている場合(提供補償金)。

第3項 次の者が補償金を支払う。
1.ブランクカセット補償金あるいは機器補償金については、複製媒体あるいは複製機器を、国内あるいは外国に置かれた営業所から、最初に商業目的で有償で取引に供した者;複製媒体あるいは複製機器を国内で商業目的で有償でだが、最初でなく取引に供した、あるいは販売した者は、保証人あるいは購買者として責任を有する;ただし、ブランクカセット補償金の支払い義務については、半年で5000時間以下の録画時間の録画媒体、10000時間以下の録画時間の録画媒体しか納入しない者はこの義務の対象外とする;被請求者に一般的な国内の裁判管轄地が無い場合、ウィーン第一区にある裁判所が管轄となる;
2.提供補償金については、複製機器の提供者。

第4項 補償金の額については、特に次の事項を考慮する。
1.ブランクカセット補償金については、その記録時間;
2.機器補償金については、機器の複製能力;
3.提供補償金については、その環境、特にその営業の形式、機器が置かれている場所と通常の利用から考えられる、複製機器の利用の形式と状況。

第5項
 第1項と第2項の補償金請求権は、著作権管理団体のみ行使し得る。

第6項
 著作権管理団体は、この適切な補償金を次の者に返還する。
1.複製媒体あるいは複製機器を外国の最終消費者への販売のために輸出する者
2.権利者の同意に基づく複製のために複製媒体を使用する者;信じるに足りるとできれば十分である。

 オーストリアも、私的録音録画媒体だけではなく、複写機などにまで補償金を賦課し、著作権管理団体に青天井の補償金請求権を与え、当事者間で話がつかない場合は最終的には全て裁判で型をつけるという、ドイツ式の極めてタチの悪い法制を取っている。(なお、オーストリアに私的録音録画機器補償金は無いため、例えば、MP3プレーヤーは専用録音媒体として課金対象となるという仕切りをしているようである。)

 結果、やはり補償金の料率や対象に関しては揉めるだけ揉めるしかなく、第63回で取り上げたEUの資料にも書かれていたように、2005年7月に、PCのHDDは多くの場合著作権で保護される作品のコピーに使われないとして、PCのHDDには課金しないとする最高裁判決が出されるまでに至ったのだろう。(この判決に関しては、heise.deの記事wcm.atの記事判決文(pdf)も参照。)

 また、オーストリアの著作権管理団体austro mechanaのHPに、この団体が徴収している、あるいはしようとしている私的録音録画補償金料率が載っている(2008年版(pdf)2009年版(pdf))が、これもまた、どのように決まっているのかさっぱり分からない。私の知る限り、補償金の料率と対象について、具体的かつ妥当な基準はどこの国を見ても無い。

 特に、2008年版の料金表と2009年版の料金表を比べてみると、PCの内蔵HDDについては最高裁で否定されたにもかかわらず、ほとぼりが覚めたと思ったのか、非道にもぬけぬけと、2009年版で汎用USBメモリやPCの外付けHDDも課金対象に加えるようとしていることが分かる。しかし、PCのHDDが多くの場合著作権で保護される作品のコピーに使われないなら、汎用USBや外付けHDDなどなおさら使われないだろうし、この有様では、オーストリアでも、補償金に関する裁判闘争がさらに激しさを増すのではないかと私は予想する。

 オーストリアでは、メーカーが支払い義務者となっているが、返還制度も存在している。今回日本では補償金改革は流れてしまったが、欧米諸国のようにメーカーを支払い義務者にすれば、返還制度が無くなり、返還制度の問題点が解決するといった主張はデタラメも良いところであり、全く取り上げるに値しない。また、オーストリアでは納入数量から例外規定を設けているが、日本の現行制度についても、今後、コストの面からこのような数量等による例外を設ける話が検討されても良いだろう。

(なお、複写機等の補償金料率は、literar mechanaのHPに載っている。ただし、ドイツで最高裁まで行って単なるプリンターは私的複製補償金の対象外と決定されたことを考えても、オーストリアでも同様に、複写機等の補償金について揉め続けているのではないかと思う。)

 オーストリアの話はあまりニュースにならないが、もし何かあれば、また紹介したいと思う。

 最後に少し最近のニュースの紹介もしておくと、経産省から、青少年ネット規制法の対象機器を定める告示がパブコメにかかっている(電子政府の該当ページ意見公募要領(doc)告示概要(doc)種類告示(jtd)場合告示(jtd))。ここまで細かな話になって来ると、一般ユーザーレベルでどうこう言うことはあまり無いのだが、対象機器の種類として、カメラなども入っていて良いのか(「データ収集装置」もどのようなものを想定しているのかいまいち良く分からない)、18歳以上の目視により監視される蓋然性が高い場合としては車載ナビだけで良いのかという点は気にかかっている。

 IFPIから2009年版のレポートが出ている(IFPIのリリースレポート本文(pdf)概要(pdf))ので、これもリンクを張っておく。RIAAが対ユーザー直接訴訟戦略をほぼあきらめる中、インターネット・サービス・プロバイダー(ISP)に対する世界的な圧力はさらに強まりそうである。イギリスもISPに著作権検閲をやらせることを考えているフシがあり(afterdawn.comの記事参照)、さらに、3ストライクポリシーについては、イタリアがフランスと一緒に推進することに合意したというNumeramaの記事もあり、フランスが中心となるだろうが、今年は、周りの国も巻き込んで、ヨーロッパはこの類の政策で混乱することになるのだろう。

 当たり前のことと思うが、ダウンロードは同じ曲数だけのCDの売り上げ分の損失にはならないとする判断がアメリカの裁判所で示されている(Techbahnの記事tgdailyの記事参照)。

 米最高裁が、児童オンライン保護法を違憲として完全に否定したというニュースもあった(CNETの記事参照)。規制強化派は、この手の自分たちに都合の悪い国際動向に無視を決め込むのではないかと思うが、連中の好きな欧米、特にアメリカの話であり、こうした動きを決して無視しないよう、今後、政府与党に適宜突っ込んで行く必要があるだろう。

 また、オランダでは、P2Pについてポジティブな経済的効果を認める報告書も出されているようである(Numeramaの記事参照)。

 場合によっては他のことについて書くかも知れないが、まだ紹介していない国は沢山あるので、各国著作権法紹介のシリーズをしばらく続けようかと思っている。

(1月24日の追記:著作権団体が集まって著作者検索ポータルを作ったらしい(ITmediaの記事internet watchの記事参照)。どの著作者がどこの団体に所属して、どのような権利を委託しているのかをはっきりさせるのは良いことだと思うが、無論、このことは保護期間延長問題の本質と関係しない。また、記事によると、著作権団体の代表から、保護期間延長を求めるのは金や利益の問題ではないという主旨の発言があったようだが、金や利益を問題とせずに財産権の延長を求めることの完膚なきまでのナンセンス(プライドの問題に関わる人格権は既に無期限なので、延長のしようが無い)を無視して、どうして堂々とそのような発言ができるのか私には全く理解できない。

 公正取引委員会から、かなり力の入ったアニメ産業の実態調査報告書が出されている(概要本文(上)本文(下)internet watchの記事も参照)。政策的に即座にどうこうなる話を書いている訳ではないが、コンテンツ業界の実態を知る上ではなかなか興味深い資料なので、これも念のためにリンクを張っておく。)

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