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2008年12月27日 (土)

第145回:今年の落ち穂拾い

 臨時国会も閉幕し、役所も休みに入り、今年のイベントはほぼ終わったと思うので、今年最後のエントリとして落ち穂拾いをやっておきたいと思う。

 この12月22日に、総務省で、デジタル・コンテンツの流通の促進等に関する検討委員会が開かれ、B-CASの見直しを検討(配布資料AV watchの記事ITproの記事日経TechOnの記事参照)したようだが、アナログ停波期限(2011年7月24日)まであと2年半あまりしかないという中で、ソフトウェア方式など悠長に方式変更の検討をしている有様なのは唖然とする他ない。このような調子では、地デジの混乱は今後も加速して行くことだろう。

 12月24日には、知的財産戦略本部会合(議事次第朝日のネット記事参照。)が開かれ、ユーザーに対する意義が結局書き込まれなかったのは残念だが、一般フェアユース条項を導入することが適当とする報告書(「デジタル・ネット時代における知財制度の在り方について」、概要)が無事承認されている。この一般フェアユース条項の導入の先行き自体不透明であることに加え、この報告書には、DRM回避規制の強化やプロバイダに対する標準的な著作権侵害防止技術の押しつけといった危険な規制強化案もそのまま残されており、引き続き知財本部の動向には注意を払っておいた方が良いだろう。

 12月25日には、文化庁で、法制小委員会も開かれているが、案の定、ダウンロード違法化問題については文化庁にスルーされた様である(「Copy & Copyright Diary」のブログ記事参照)。

 マイナーな話になるが、知財法の一つである種苗法に関して、農水省で12月12日に種苗分科会(概要)が開かれ、告示や審査基準の改訂といった実務的な変更が決まっている。

 さらに、国内の話では、青少年ネット規制法のフィルタリング推進機関登録省令が1月19日〆切でパブコメにかかっている(電子政府の該当HP意見公募要領(pdf)省令案(概要)(pdf)省令案(本文)(pdf))ので、念のためにリンクを張っておく。

 また、課長級以上の公務員の天下りについて、今年の状況の公表がされた(内閣府の公表資料(pdf)総務省のリリース独立行政法人等への天下り状況総務省分(pdf)警察庁分(pdf))が、退職者1423人中、公益法人等に就職したのが590人(41・4%)と、平成14年以来過去最多となるなど、天下り役人どもが混乱に乗じて自分たちの天下り利権を図々しく伸ばしていることが見て取れる結果となっている。ビジネス上全く役に立たない薹が立った官僚を喜んで再雇用する会社など皆無であろうから、公益法人等だけではなく、営利企業などへの再就職もほとんど天下りと考えた方が良く、再就職の判明している1239人は内実ほとんど天下りではないかと私は思う。課長級以下も考えると、規模にはさらに膨らむものと思われ、天下りの規模と天下り利権による政策判断の歪みを考えるだけで常に私は慄然とする。(例えば、総務省分を見ると、B-CAS問題と関係するところで、放送関係の規格を決めている電波産業会には今年も総務省の役人が天下りしていると分かる。なお、今年の文部科学省分は何故かまだ公表されていない。)

 世界に目を転じると、アメリカでも、対ユーザー訴訟戦略が破綻し、RIAAは3ストライクポリシーに転じ、インターネットサービスプロバイダー(ISP)への圧力を強めようとしている(CNETの記事ITmediaの記事ロイターの記事参照)。3ストライクポリシーに関しては、フランスの動向が特に要注意だが、アメリカ最大の著作利権団体の一つであるRIAAが3ストライクポリシーに転向したことで、来年以降、世界的に、著作権検閲+サービス制限・ネット切断型の違法コピー対策をどうするかということで混乱することになるのではないかと私は思う。この3ストライクポリシーも混乱必至の対策であり、フランスの状況等、分かる限りで今後も紹介して行きたいと思っている。

 あまりフランスの話は紹介されていないようなのでついでに紹介しておくと、フランスでも音楽著作権団体SACEMと動画共有サイトDailymotionのライセンス契約が行われたというニュースもあった(AFPの記事numeramaの記事01.netの記事参照)。アメリカ(4大レーベルとYoutube。internet watchの記事参照)、イギリス(音楽著作権団体MCPS-PRS AllianceとYoutube。MCPS-PRSのリリース参照)、ドイツ(音楽著作権団体GEMAとYoutube。GEMAのリリース参照)、日本(JASRAC・イーライセンス・JRCとYoutube、JASRAC・イーライセンスとニコニコ動画。Youtubeのリリースニコニコ動画のリリース1リリース2参照)に続く形であり、ワーナーとYoutubeとの契約更新が最近決裂した(CNETの記事ITmediaの記事ITproの記事参照)ものの、全体としては、動画共有サイトにおける契約による権利処理はほぼ世界的な流れとなりつつある。(見かけ上著作権戦争の形を取るので分かりにくいが、ワーナーとYoutubeの交渉決裂がある意味象徴的に示しているように、この点については、今後、動画共有サイト事業者による優越的地位の濫用も問題の一角を形成して行くことになるだろう。)

 海賊版拡散防止条約については、この12月17日に関係国会合が開かれている(経産省のリリース外務省のリリース参照)。EUが交渉の透明性を求めており(IP watchの記事、「P2Pとかその辺の話」のブログ記事参照)、次回3月にモロッコで開かれる予定の関係国会合で、透明性を上げる議論がなされることを期待したいが、今のところ何とも言えない状況である。

 私的録音録画補償金を超える、ドイツの奇怪なスキャナー等への私的複製補償金の話だが、ドイツでは、この12月に、ドイツのメーカー団体BITKOMが、新法におけるスキャナーやプリンター等の料率を発表している(BITKOMのリリースheise onlineの記事参照)。ドイツでは相変わらず、消費者不在の中、メーカーと権利者団体の間で訳の分からない妥協が図られ続けているようであり、このようなやり方で問題の本質が片付く訳はなく、スキャナー等へのバカげた補償金賦課に消費者が気づいたところで、ドイツでも補償金問題は再燃することだろう。

 漠然としたものだが、イギリス政府も著作権法の未来について2月までパブコメを取っている(イギリス知財庁のリリース参考資料(pdf))ので、念のために、リンクを張っておく。

 今年は、青少年ネット規制法が成立し、児童ポルノ規制強化法案が国会に提出され、ダウンロード違法化を文化庁が押し進めようとし続けるなど、極めて非道い一年だった。今の政局と役所の混乱ぶりを見ても、来年も波乱の年となることだろうし、このブログで書くことが尽きることは全くないだろう。

 それでは皆様、良い年を。政官業に巣くう全ての利権屋と非人道的な規制強化派に悪い年を。そして、このつたないブログを読んで下さっている全ての人に心からの感謝を。

(12月27日夜の追記:12月24日に予定されていた総務省の「インターネット上の違法・有害情報への対応に関する検討会」での違法有害報告書の取りまとめは延期になったようだが、この12月22日に犯罪対策閣僚会議12月22日の議事次第)で、問題箇所の変更はないまま、「犯罪に強い社会の実現のための行動計画2008」が決定されている(internet watchの記事も参照)。児童ポルノ規制やネット規制、著作権規制の話は言わずもがな、共謀罪等についても来年は勝負の年になるのだろう。)

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