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2008年12月10日 (水)

第141回:イスラエル著作権法におけるフェアユース・私的複製関連規定

 知財本部へのパブコメに少し書いたのだが、一般フェアユース規定を導入している国には、アメリカは言わずもがなだが、第91回で少し紹介した台湾の他にイスラエルがある。文化庁や権利者団体のように、数カ国が導入しているだけで国際潮流と言いつのる気はさらさら無いが、何かの参考になるかも知れないので、ここで、イスラエルの権利制限規定について少し補足の紹介をしておきたいと思う。

 イスラエル著作権法のフェアユース・私的複製関連規定は、WIPOのHPに載っている英訳からの重訳になるが、以下のようなものである。(翻訳は拙訳。)

Chapter Four: Permitted Uses

18. Permitted Uses
Notwithstanding the provisions of section 11, the doing of the actions specified in sections 19 to 30 is permitted subject to the conditions specified respectively in the aforesaid sections and for the purpose of carrying out the objectives specified therein, without the consent of the right holder or payment, however with respect to the activities specified in section 32 - upon payment and in accordance with the provisions of that section.

19. Fair Use
(a) Fair use of a work is permitted for purposes such as: private study, research, criticism, review, journalistic reporting, quotation, or instruction and examination by an educational institution.

(b) In determining whether a use made of a work is fair within the meaning of this section the factors to be considered shall include, inter alia, all of the following:
(1) The purpose and character of the use;
(2) The character of the work used;
(3) The scope of the use, quantitatively and qualitatively, in relation to the work as a whole;
(4) The impact of the use on the value of the work and its potential market.

(c) The Minister may make regulations prescribing conditions under which a use shall be deemed a fair use.

20. Use of works in juridical or administrative procedures
Use of a work in juridical or administrative procedures according to law, including reporting on such proceedings, is permitted to the extent that is justified taking into consideration the purpose of the aforesaid use.

21.Reproduction of a work deposited for public inspection
(a) The copying of a work that is accessible to the public by law is permitted if consistent with the purpose for which the work was made accessible, and to a justifiable extent taking into consideration the purpose of the said use.

(b) The provisions in sub-section (a) shall not apply with respect to works deposited in accordance with The Books Act 2000.

22. Incidental Use of a Work
An incidental use of a work by way of including it in a photographic work, in a cinematographic work or in a sound recording, as well as the use of a such work in which the work was thus incidentally contained, is permitted; In this matter the deliberate inclusion of a musical work, including its accompanying lyrics, or of a sound recording embodying such musical work, in another work, shall not be deemed to be an incidental use.

23. Broadcast or copying of work in public place
Broadcasting, or copying by way of photography, drawing, sketch or similar visual description, of an architectural work, a work of sculpture or work of applied art, are permitted where the aforesaid work is permanently situated in a public place.

24. Computer Programs
(a) Copying of a computer program for purposes of back up is permitted for a person who possesses an authorized copy of the computer program; A person holding such a copy shall destroy it once it is no longer needed to serve the purpose for which it was made.

(b) Copying of a computer program for purposes of maintenance of an authorized copy of the program or of a computer system, or for purposes of providing service to a person in possession of an authorized copy of the computer program, is permitted, provided that it is necessary for using the program.

(c) Copying of a computer program, or making a derivative work there from is permitted for a person who possesses an authorized copy of the computer program, for the following purposes and to the extent necessary to achieve said purposes:
(1) Use of the computer program for purposes for which it was intended, including correction of errors in the computer program or making it interoperable with a computer system or with another computer program;
(2) Examination of the data security in the program, correction of security breaches and protection from such breaches;
(3) obtaining information which is needed to adapt a different and independently developed computer system or program, in such a way that it will be interoperable with the computer program.

(d) The provisions of sub-section (c) shall not apply with respect to the copying of a computer program or the making of a derivative work there from, as stated in said sub-section, if the information which has been obtained through the aforementioned means was used in a manner set forth below, or where such information was readily discernable without use of the aforesaid means:
(1) The said information is transmitted to another person for apurpose different than the purposes set forth in sub-section (c);
(2) The said information is used to make a different computer program which infringes copyright in the said computer program.

(e) In this section, "authorized copy" of a computer program means a copy of the computer program which was made by the copyright holder therein or with his consent.
...

26. Temporary Copies
The transient copying, including incidental copying, of a work, is permitted if such is an integral part of a technological process whose only purpose is to enable transmission of a work as between two parties, through a communications network, by an intermediary entity, or to enable any other lawful use of the work, provided the said copy does not have significant economic value in itself.

27. Additional artistic work made by the author
Making a new artistic work which comprises a partial copying of an earlier work, or a derivative work from an earlier work, as well as any use of the said new work, are permitted to the author of the said earlier artistic work even where said author is not the owner of the copyright in the earlier artistic work, provided the new work does not repeat the essence of the earlier work or constitute an imitation thereof.
...

4章:権利の制限

第18条 権利の制限
 第11条の規定にかかわらず、それぞれの条項に規定されている条件に従い、それらに規定されている目的を達成するために、権利者の同意あるいは支払いなしに、第10条から第30条に規定されている行為をなすことは許される。ただし、第32条の規定に一致し、この第32条に規定されている行為-支払いは尊重される。

第19条 公正利用
(a)私的学習、調査研究、批評、論評、報道、引用、あるいは、教育機関による教育と試験のような目的のための、著作物の公正利用は許される。

(b)ある著作物のある利用が本条の意味において公正かどうかを決めるにあたって、とりわけ、以下の要素全てを考慮しなくてはならない:
(1)利用の目的および性質;
(2)著作物の性質;
(3)著作物全体に対する、質的及び量的な利用の範囲;
(4)著作物の価値及び潜在的市場に対する利用の影響。

(c)大臣は、ある利用が公正利用とみなされる場合に、その条件を既定する規則を作り得る。

第20条 司法あるいは行政手続きにおける著作物の利用
 公表手続きを含め、法に基づいた司法あるいは行政手続きにおける著作物の利用は、その利用の目的を考慮して正当化される範囲において、許される。

第21条 公衆の閲覧に供される著作物の複製
(a)法によって公衆にアクセス可能とされた著作物の複製は、その作品がアクセス可能とされた目的に適う限りにおいて、その利用の目的を考慮して正当化される範囲において、許される。

(b)第(a)項の規定は、2000年書籍法に基づいて提供される作品については適用しない。(訳注:2000年書籍法の詳細は不明だが、恐らく国立図書館への提供のことを言っているのではないか。)

第22条 著作物の付随的な利用
 それを含むやり方に応じて、写真著作物、映画著作物、録音著作物中の付随的な著作物の利用、並びに、そのように著作物が付随的に含まれる著作物の利用は、許される。このことにつき、その歌詞やその著作物を具体化した録音を含め、音楽著作物の他の著作物への意図的な挿入は付随的な利用とはみなされない。

第23条 公共の場に置かれた著作物の放送あるいは複製
建築物、彫刻の著作物、あるいは応用美術の著作物の、放送、写真、描画、スケッチあるいは似たような視覚的描写による複製は、それらの物が永続的に公共の場に置かれているとき、許される。

第24条 コンピュータプログラム
(a)コンピュータプログラムの正規の複製物を所有している者には、そのコンピュータプログラムのバックアップ目的での複製が許される。ただし、それが作られた目的においてもはや必要なくなったとき、そのような複製の所有者はそれを破棄しなくてはならない。

(b)そのプログラムの利用に必要な場合、コンピュータシステムあるいはコンピュータプログラムの正規の複製物のメンテナンスの目的のため、あるいは、コンピュータプログラムの正規の複製物を所有している者へのサービスの提供の目的ための、そのコンピュータプログラムの複製は許される。

(c)コンピュータプログラムの正規の複製物を所有している者には、以下の目的において、その目的を達成するのに必要な限りにおいて、そのコンピュータプログラムの複製あるいは、そこからの派生物の作成が許される:
(1)コンピュータプログラムにおける間違いの訂正、あるいは、コンピュータシステムあるいは他のコンピュータプログラムと相互運用性の確保を含め、それが目的とすることのためのそのコンピュータプログラムの利用
(2)プログラムにおけるデータセキュリティの検査、セキュリティホールの修正、及び、そのようなホールからの保護
(3)そのコンピュータプログラムと相互運用する形の、独立開発コンピュータシステムあるいはプログラムの採用のために必要な情報の入手

(d)前述の手段を通じて得られた情報が、以下に規定されているようなやり方で利用されるか、そのような情報が前述の手段を用いずとも容易に知り得る場合には、第(c)項の規定は適用されない、
(1)第(c)項に規定されている目的以外の目的のために、前記の情報が第3者に伝えられる場合
(2)前記のコンピュータプログラムの著作権を侵害する他のコンピュータプログラムを作るために、前記の情報が使用される場合。

(e)本条の「コンピュータプログラムの正規の複製物」は、著作権者によってかその同意に基づいて作られたコンピュータプログラムの複製物を意味する。

(中略:第25条 放送目的での録音録画に関する権利制限)

第26条 一時的複製
 媒介物によって通信ネットワークを通じ二者間で著作物を伝えることを可能とする、あるいは著作物の他の合法利用を可能とする目的のみを有する技術的プロセスの不可欠な部分をなすとき、付随的な複製を含め、過渡的な複製は許される。ただし、その複製物がそれ自体で何ら重要な経済的価値を持たない場合に限る。

第27条 作者自らによって作られる追加の芸術作品
 新たな作品が以前の作品の本質のり返しでも、その単なる模倣でもない場合、新たな芸術作品を以前の作品の部分的な複製を含む形で作ることや、以前の作品から派生作品を作ること並びにこの新たな作品の利用は、その作者が以前の作品の著作権の所有者でなくなっていたとしても、この以前の著作物の作者に許される。

(後略:第28条 建物の改修や再建築のための権利制限、第29条 教育機関における公演のための権利制限、第30条 図書館のための権利制限等)

 このイスラエルの新著作権法は、2007年11月19日にイスラエルの議会を通過し、2008年5月28日から施行されているものであるが、イスラエルはもともとフェアユース採用国だった訳ではなく、権利制限規定自体少なかったものを、この最近の改正で、フェアユースも含め各種権利制限規定を充実させたようである。

 台湾もそうだが、イスラエルの権利制限規定も、限定列挙型の権利制限を多くあげながら、同時に一般フェアユース条項を導入している点が特徴的である。無論、各国毎の事情は考慮しなければならないだろうが、別に限定列挙型の権利制限を取っているからと言って、一般フェアユース条項が導入できなくなるものでもなく、一般フェアユース条項が必ずベルヌ条約違反となるものでもないだろう。

 また、イスラエルのフェアユース規定は、第117回で紹介したアメリカのフェアユース規定とほぼ同じであるが、良く比べてみると、例示が増えていたり、考慮要素の規定が簡略化されていたりという細かな違いもある。著作権法改正の検討において欧米主要国だけを参考にしなければならない理由もない、日本における一般フェアユース条項導入の検討において、アメリカ以外のフェアユース採用国の規定や事情などを参考にすることも大いにあって良いことだと私は思っている。

(なお、念のために書いておくと、イスラエルにも補償金制度は存在していない。)

 各種パブコメも提出次第載せたいと思っており、次回12月16日の私的録音録画小委員会で文化庁が何を言い出すかも気になるのだが、余裕があれば、次も、他の点についてのちょっとした補足とするかも知れない。

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