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2008年12月 1日 (月)

第137回:総務省・「インターネット上の違法・有害情報への対応に関する検討会」最終取りまとめ(案)に対するパブコメ募集(その3:「e-ネットづくり!」宣言・総務省版インターネット・ホットラインセンター創設案関連部分)

 前々回前回に続き、総務省の「インターネット上の違法・有害情報への対応に関する検討会」最終取りまとめ(案)(本文1)のパブコメ(12月17日〆切。総務省のリリース意見募集要領電子政府の該当ページinternet watchの記事参照。)の話である。

 引き続き、大枠の方向性の話であるが、民間における自主的な取り組みと称して、天下り利権の強化にしかつながらない有害無益かつ危険な規制強化を押しつけるのは役所のいつもの手口であり、3.民間における自主的取組の促進「(1)違法・有害情報対策の推進」の第80ページ、「3)検討すべき方策」で、

 サイト運営者をはじめとする幅広いプレイヤーがインターネットの利用環境整備に参画していることを明らかにする新たな枠組みとして、また、それらの自主的取組を実質的にも強化する仕掛けとして、「自主憲章」的な目標を共有することを宣言する仕組みとして(仮称)「e-ネットづくり!」宣言という施策を提案する。

と書かれている「e-ネットづくり!」宣言の話もその例に洩れない

 その基本構想は、第84ページに、

「e-ネットづくり!」宣言の基本構想は89頁に示すとおりである。まず、参加者が共有すべき目標としての「自主憲章」がある。その目標達成を担保する具体的な取組は2つに分かれる。一つの場は、自主的取組の指針となるガイドラインなどで構成された「ナレッジベース」、もう一つの場は「交流プラットフォーム」である。インターネットにおける状況の変化は激しい。知見が集積した結果としてのテクスト群が「ナレッジベース」となる。これが通常の自主的取組を規定する。一方で、変化に対応するために情報を集積し、新たなルールを議論し生み出す場が「交流プラットフォーム」である。

と書かれており、この「e-ネットづくり!」宣言とやらには、「自主憲章」の他に、「ナレッジベース」と称するガイドライン群と、「交流プラットフォーム」と称する新たな規制を検討する場が含まれるようである。

 まず、この「自主憲章」とは何かとなると、第84ページに書かれているように、

「自主憲章」の示す方向に賛同する法人・団体は、「チーム・マイナス6%」と同様に、申請し、登録すれば、「e-ネットづくり!」宣言をすることができる。これにより「e-ネットづくり!」宣言が提供するロゴマーク等を自ら行う啓発活動等に使用することも可能となる。また、法人・団体のみならず、個人が宣言する場合も想定される。サイト管理者は個人であることが多いので、むしろ積極的な申請・登録が望ましい。まず、「e-ネットづくり!」宣言をすることで、インターネット利用環境整備に積極的に取り組もうとするプレイヤーが「可視化」されることになる。

と、総務省への参加申請・登録の要請や総務省謹製のロゴマークの販促といった、ニーズを無視したいつもの官製キャンペーンに過ぎない。これだけを普通に考えても税金のムダ使いしかならないと思う上、さらに、総務省のことなので「自主憲章」すら規制よりに書かれる可能性が強く、なおさら税金のムダな浪費になる危険性が高い

 また、「ナレッジベース」と称するガイドライン群についても、総務省が主導する以上、これらでも規制よりの話しか出て来ないに違いない。そもそも今以上にどんなガイドラインについて必要なのか良く分からず、もし何か検討するのであれば、そもそも今ですら山のようにあって訳が分からないガイドライン群の整理削減のみを検討するべきだと思うが、第85~86ページに

 また、事業者を念頭に置いたガイドラインだけではなく、利用者向けにガイドライン的な役割を果たす啓発文書の策定も検討すべきであろう。例えば、発信者として守るべきことだけではなく、違法・有害情報に関する一般の受けとめとの乖離を克服し、違法・有害情報とは何を指すのかについて共通理解を求めるためのガイドブックの策定なども視野に入れるべきである、さらに、後述の「交流プラットフォーム」における検討を踏まえ、新たなガイドラインの策定や既存ガイドラインの改定などに不断に対応することが求められる。

に書かれている利用者向けのガイドラインには特に注意しておく必要があるだろう。総務省も、表現の自由などの国民の基本的な権利の重要性と権利の本質的な相対性という最も基本的なことを全く理解していないので、理解不能の「共通理解」を押しつけてくる危険性が高いのである。

 「交流プラットフォーム」に至っては一番危うく、第86~87ページに、

 交流プラットフォームは、ナレッジベースを構成する知識を生み出し、最新の状況に合わせて改定をしていくための機能を果たすとともに、インターネットの利用環境整備を推進するプレイヤーの活性化を図るための交流の結節点となる。「e-ネットづくり!」宣言を状況の変化に応じて改善される柔軟な運動にするための仕掛けである。具体的内容としては、「相談センター」、「違法・有害情報通報受付」、「作業部会」等が想定される。

 「相談センター」は、現在の電気通信事業者向けの「違法・有害情報事業者相談センター」の機能を拡大・強化し、インターネット上のあらゆるプレイヤーを包含する「e-ネットづくり!」宣言を行ったメンバーを対象とした相談窓口であり、違法・有害情報対策全般のポータルとなるべきものである。現在の「違法・有害情報事業者相談センター」の相談実績が少ないことに鑑み、地方への出張相談、もしくは、違法・有害情報対策アドバイザーなどを設けて、要請のあったメンバーの指導に赴くなど、能動的な対応を図ること、また、このセンターへの相談内容を分析し後述の作業部会を立ち上げるなど、実効性をあげるための諸方策を検討すべきである。

 「違法・有害情報通報受付」は、主に「e-ネットづくり!」宣言を行った者からの違法・有害情報通知を受け付けるものである。一般からの違法・有害情報の通知はインターネット・ホットラインセンターが受け付けているが、警察からの委託事業であるため、そこに蓄積された情報を柔軟に活用し、自主的取組の向上に役立てることは難しい。違法・有害情報対策は、その実態を踏まえなければ効果的な対応ができないが、現状では、民間の側にきちんとしたデータの蓄積はない。インターネット・ホットラインセンターとの協力の深化も視野に入れる一方で、「e-ネットづくり!」宣言の基盤として、交流プラットフォームにメンバーからの違法・有害情報の通知もしくは対応実績等、必要な情報を受け付け、分析を行うことが必要である。また、「違法・有害情報通報受付」から発展し、第三者機関的な枠組などを活用し、メンバーが主に違法情報等の判断に迷った場合、判断を代替する機能を持たせることも検討すべきである。

 「作業部会」は交流プラットフォームにおいて最も重要な機能を果たす。ナレッジベースへ新たな知識を加えるとともに、メンバーの相互交流の場となる。その切り口として、まず同種のサービスの担い手同士の議論の場が考えられる。
(中略)
 また、サービスごとの作業部会を設けるだけではなく、例えば、最近話題となっているスパムブログの問題、後述するような児童ポルノへの対応の在り方や、セルフレイティングの普及方策など、事案ごとに関係者が集まって議論する作業部会も随時設けるべきである。さらに、「e-ネットづくり!」宣言のメンバーを対象としたセミナー等の開催など、より柔軟な交流の仕組みも備えるとともに、有意義な取組を行ったメンバーを表彰する制度を設けるなど、自主的取組を顕彰する機能を持つことも考えられる。

と書かれているように、天下り先を増やせとばかりに、自分たちの相談センターの拡充を図ったり、「違法・有害情報通報受付」と称して、総務省版インターネット・ホットラインセンターを作ろうとしていたりと、本当にやりたい放題である。税金のムダ使いにしかならないだろうニーズを無視した相談センターの拡充もされるべきではないと思うが、常に権利の侵害は相対的なものであり、権利侵害とは直接関係のない天下り先の半官検閲センターに違法性の判断を代替する機能を持たせることなど危険極まりないことである。

 そもそも現在の「違法・有害情報事業者相談センター」の相談実績が少ないことが、現実のニーズを如実に物語っているが、この相談センターと「違法・有害情報通報受付」との区別も良く分からず、前回取り上げたプロバイダ責任制限法に関する部分では、「大手のプロバイダ等を中心に、既に自主的対応として違法情報の削除が進んで」いるとしながら、こちらでは、民間にデータの蓄積がないとしてたりと、この総務省の違法・有害報告書案は、本当に読むに耐えない矛盾・不合理だらけである。

 さらに言えば、インターネット・ホットラインセンターの事業が警察からの委託事業であるため、そこに蓄積された情報を柔軟に活用し、自主的取組の向上に役立てることは難しいと、インターネット・ホットラインセンターが、民間団体でありながら、ほぼ警察の下部組織であることを政府の報告書が公に認めている点など、完全に語るに落ちている総務省も自分たちの天下り先としてもう一つ似たような半官検閲センターを作りたいのかも知れないが、別に総務省がやったところで全く同じことだろう。内閣官房の犯罪計画案への提出パブコメでも書いたことだが、サイト事業者が自主的に行うならまだしも、何の権限も有しないインターネット・ホットラインセンターのような民間団体からの強圧的な指摘により、書き込みなどの削除が行われることなど本来あってはならないことである。このようなセンターは単なる一民間団体で、しかもこの団体に直接害が及んでいる訳でもないため、削除を要請できる訳がない。勝手に違法あるいは有害と思われる情報を収集して、直接削除要請などを行う民間団体があるということ自体おかしいと考えなくてはならないのであり、これは、必要であれば、きちんとした取り締まりと削除要請ができる人員を、法律によって明確に制約を受ける警察に確保するべき話である。通報受付についてもきちんと警察に設け、それを周知するべき話であって、それ以上の話ではない。

 最後の結論として書かれている第87~89ページの「(d) 取組にあたっての課題等」も、

「e-ネットづくり!」宣言は、参加のしやすさを念頭に置きながら、従来の業界団体的な組織ではなく、インターネット上のプレイヤーの緩やかな協働関係を構築することを主眼としている。それぞれの立場から、日々の取組の手がかりを得られる仕組みとして機能することを重視しており、強制的な枠組みとしはしない形で提示している。

 そのため、一方では、悪意をもって宣言したメンバーがいる場合はどうなるか、実効性は担保できるのかという疑問が生じる。

 この取組は、「チーム・マイナス6%」と同じく、まずは、インターネットの利用環境を皆で整備しようという善意の思いを宣言してもらうことがねらいである。したがって、そうしたことに関心がないか、もしくは悪意を持ったプレイヤーがわざわざ登録までするのか不明であるが、交流プラットフォームの「違法・有害情報通報受付」への苦情やインターネット・ホットラインセンターからの情報などにより、悪意をもって宣言したメンバーの存在が、ある程度明らかになった場合、別途第三者的な勧告機能を備えることで、宣言にふさわしくないメンバーであることを確認し、自浄努力を促すなど、何らかの措置を執ることも検討すべきかもしれない。

 実効性を担保するという観点からは、前述したとおり、一部のプレイヤーについては自主憲章だけではなく、ガイドライン群の一部についても遵守することを宣言させることが求められるかもしれない。その場合、ヨーロッパ諸国の自主憲章と似通った取組となる。ただし、最近の携帯電話フィルタリングの例に見られるように、業界の自主的取組を踏まえた法制化もあり得るので、遵守を宣言するガイドラインの対象をよほど絞らないと、多くの参画者の同意を得ることは困難であると予測される。

 また、個別のメンバーが実効性ある取組を行っているか否かは、検証困難であるが、「e-ネットづくり!」宣言の取組の全体としての効果を把握することは重要である。そのため、いくつかの指標に基づいて評価する外部機関を設け、一定期間ごとに評価を実施し、それに基づいて「e-ネットづくり!」宣言の仕組み自体を見直していくことも検討すべきであろう。

 「e-ネットづくり!」宣言は広報活動も重要な課題である。参加しやすい枠組みとした以上、法人・団体、個人を問わず、なるべく多くのメンバーが参加できるよう、PRを行うことが必要である。特に、最初のアプローチとして電気通信事業者には効果的に周知を行えるよう、総務省等、関係機関も協力すべきである。

 「e-ネットづくり!」宣言は業界の枠を超えた取組であるため、これを事業として担う主体としては、これまでの業界団体では適さない。青少年インターネット利用環境整備法の成立を踏まえ、民間の自主的取組と利用者を育てる取組を促進するため、前章で提言した産学の連携を促進する新たな組織が担うことがふさわしいと考える。

 また、「e-ネットづくり!」宣言を事業として開始するのは、青少年インター利用環境整備法の施行後、なるべく速やかであることが望ましい。2009年度中の実施をめざして関係者が協力してプロジェクトの具体化を図ることが求められる。

と、総務省は、強制力のない自主的な取り組みとしながら、天下り先の第3者機関に勧告機能を持たせようとしたり、自分たちの大臣要請でムダに混乱を招いたことを忘れて、しゃあしゃあと携帯電話フィルタリングと青少年ネット規制法の例を引いて、ガイドラインの押しつけとその法制化を目論んでいたり、電気通信事業者に周知と称する行政指導による強制参加を促そうとしていたり、新たな天下り先の組織を作ろうとしていたりするなど、このプロジェクトについて実施する前から失敗が約束されているような支離滅裂ぶりを示している

 この部分についても、そもそも民間が求めていない、「民間による自主的な取組」など取りやめるべきであると、今以上に、規制よりにしかならない官製「自主憲章」やガイドラインなど不要であると、検討が必要であるとしたら、今ですら訳が分からないほど沢山ある各種ガイドラインの整理削減のみであると、ニーズを無視した「相談センター」の拡充など天下り利権の強化・税金のムダな浪費にしかつながらないと、インターネット・ホットラインセンターという警察庁の半官天下り検閲センター自体廃止が速やかに検討されるべきものであり、「違法・有害情報通報受付」と称して、総務省版の半官天下り検閲センターをさらに作ることなど論外であるという意見を出さざるを得ないと私は考えている。

 いい加減うんざりしてくるのだが、まだまだ突っ込みどころは尽きないので、次も、この報告書案の話である。

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