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2008年11月14日 (金)

第130回:知財本部・デジタル・ネット時代における知財制度専門調査会の報告案に対する提出パブコメ

 知財本部のデジタル・ネット時代における知財制度専門調査会の報告案に対するパブコメも書いて提出したので、ここに載せておく。

(これで後、個人的に出さなくてはならないと考えているパブコメで残っているのは、第121回で取り上げた青少年ネット規制法施行令に関するパブコメなのだが、11月16日が〆切であるにもかかわらず、そのインターネット提出フォームが何故か今使えない。問い合わせもしようと思っているところだが、既に問い合わせた等で何かご存じの方がいたら教えて頂けないだろうか。)

(以下、提出パブコメ)

(1)「Ⅱ.権利制限の一般規定(日本版フェアユース規定)の導入」(9~13ページ)について
(意見概要)
 一般フェアユース条項について、ユーザーに対する意義からも、可能な限り早期に導入することを求める。

(意見全文)
 一般フェアユース条項について、ユーザーに対する意義からも、可能な限り早期に導入することを求める。特に、インターネットのように、ほぼ全国民が利用者兼権利者となり得、考えられる利用形態が発散し、個別の規定では公正利用の類型を拾い切れなくなるところでは、フェアユースのような一般規定は保護と利用のバランスを取る上で重要な意義を持つものである。最終報告を作るにあたっては、検討の上ユーザーにとっての一般フェアユース条項の意義も書き込んでもらいたい。

 フェアユースの導入によって、私的複製の範囲が縮小されることはあってはならないことであり、実際の規定にあたっては、要件はアメリカの規定と同程度とするとともに、現行の各種権利制限規定もそのまま残すべきである。なお、一般フェアユース条項を導入している国は、アメリカの他にも台湾やイスラエルなどがあり、これらの国の規定も参考になるだろう。

 また、権利を侵害するかしないかは刑事罰がかかるかかからないかの問題でもあり、公正という概念で刑事罰の問題を解決できるのかとする意見もあるようだが、かえって、このような現状の過剰な刑事罰リスクからも、フェアユースは必要なものと私は考える。現在親告罪であることが多少セーフハーバーになっているとはいえ、アニメ画像一枚の利用で別件逮捕されたり、セーフハーバーなしの著作権侵害幇助罪でサーバー管理者が逮捕されたりすることは、著作権法の主旨から考えて本来あってはならないことである。政府にあっては、著作権法の本来の主旨を超えた過剰リスクによって、本来公正として認められるべき事業・利用まで萎縮しているという事態を本当に深刻に受け止め、一刻も早い改善を図ってもらいたい。

(2)「Ⅲ-1.コンテンツの技術的な制限手段の回避に対する規制の在り方について」について(15~17ページ)
(意見概要)
 ユーザーの情報アクセスに対するリスクを不必要に高める危険なものとしかなり得ないこれ以上の規制強化に反対する。著作権法第30条第1項第2号の撤廃の検討を求める。

(意見全文)
 根拠なく、本報告案の第15ページに、コンテンツの利用をコントロールするための技術的手段「を回避した利用によるコンテンツ産業への経済的損失が拡大している」、第17ページに、「アクセス・コントロールの回避行為については、(中略)違法コンテンツのダウンロード等と相まって、その被害は増大してきていると考えられる」と書かれているが、DRM回避やダウンロードによって経済的損失が拡大しているとするに足る根拠は無く、最終報告では、これらの記載は削除・訂正されるべきである。コンテンツへのアクセスあるいはコピーをコントロールしている技術を私的な領域で回避しただけでは経済的損失は発生し得ず、また、ネットにアップされることによって生じる被害は公衆送信権によって既にカバーされているものであり、その被害とDRM回避やダウンロードとを混同することは絶対に許されない。

 この報告書案にも書かれていることだが、この7月にゲームメーカーがいわゆる「マジコン」の販売業者を不正競争防止法に基づき提訴していることなどを考えても、現時点で、現状の規制では不十分とするに足る根拠は全くない。現状でも、不正競争法と著作権法でDRM回避機器等の提供等が規制され、著作権法でコピーコントロールを回避して行う私的複製まで違法とされ、十二分以上に規制がかかっているのであり、これ以上の規制強化は、ユーザーの情報アクセスに対するリスクを不必要に高める危険なものとしかなり得ない。最終報告においては、このような危険な規制強化に関する検討は即刻止めると明記してもらいたい。

 DRM回避規制に関しては、このような有害無益な規制強化の検討ではなく、まず、個私的なDRM回避行為自体によって生じる被害は無く、個々の回避行為を一件ずつ捕捉して民事訴訟の対象とすることは困難だったにもかかわらず、文化庁の片寄った見方から一方的に導入されたものである、私的な領領域でのコピーコントロール回避規制(著作権法第30条第1項第2号)の撤廃の検討を行うべきである。

(3)「Ⅲ-2.インターネット・サービス・プロバイダの責任の在り方について」(18~22ページ)について
(意見概要)
 プロバイダに対する標準的な著作権侵害技術導入の義務付けに反対する。間接侵害や刑事罰・著作権侵害幇助も含め著作権法へのセーフハーバー規定の速やかな導入を求める。

(意見全文)
 22ページに、動画投稿サイト運営者等特定のプロバイダに標準的なレベルの技術的な侵害防止措置の導入を義務付けるという対応策が書かれているが、このような義務化は非常に危険である。いたちごっこで不断の変更を余儀なくされる著作権侵害防止技術に対し、標準を定めて皆に選択の余地なく押しつけることは、まずもって、天下り役人の規制利権をムダに拡大し、無意味に技術の発展を阻害することにしかつながらないのであり、最終報告では、この部分にこのような否定的な評価も明記するとともに、このような方向性で検討を進めないことと明記するべきである。この点に関しては、逆に、検閲の禁止や表現の自由から技術による著作権検閲の危険性の検討を始めてもらいたい。

 また、現在動画投稿サービスがJASRACに訴えられている(「TVブレイク」事件)が、削除要請に応じて削除していたとしても間接侵害とみなされ、プロバイダ責任制限法上免責が受けられないこととなるおそれがあるのは、ネット事業の法的安定性を考えたとき大問題である。さらに、最近、著作権侵害幇助罪でレンタルサーバー事業者が逮捕された(「第(3)世界」事件)が、著作権法の本来の主旨に照らしてネット事業の刑事罰リスクが不必要に高まることも絶対あってはならないことである。これらの「TVブレイク」事件や「第(3)世界」事件の推移次第で、甚大な萎縮効果・莫大な国家的損失が発生することになると考えられ、政府にあっては、これらの事件の結果を待つことなく、現行のプロバイダー責任制限法あるいはその法改正による対応には自ずと限界があることも考慮し、損害賠償責任のみならず、間接侵害や刑事罰・著作権侵害幇助も含め著作権法にきちんとしたセーフハーバー規定を設ける検討を即刻本格化させてもらいたい。言うまでもなく、上で書いたことと同様、このセーフハーバー規定においても、その要件に標準レベルの技術的な侵害防止措置の導入の義務付けなどが組み込まれるべきではない。

(4)「Ⅲ-3.著作権法におけるいわゆる「間接侵害」への対応について」(23~25ページ)について
(意見概要)
 間接侵害の明確化は、ネット事業・利用の著作権法上のセーフハーバーを確定するために必要十分な限りにおいてのみなされるべきである。

(意見全文)
 セーフハーバーを確定するためにも間接侵害の明確化はなされるべきであるが、現行の条文におけるカラオケ法理や各種ネット録画機事件などで示されたことの全体的な整理以上のことをしてはならない。特に、著作権法に明文の間接侵害一般規定を設けることは絶対にしてはならないことである。確かに今は直接侵害規定からの滲み出しで間接侵害を取り扱っているので不明確なところがあるのは確かだが、現状の整理を超えて、明文の間接侵害一般規定を作った途端、権利者団体や放送局がまず間違いなく山の様に脅しや訴訟を仕掛けて来、今度はこの間接侵害規定の定義やそこからの滲み出しが問題となり、無意味かつ危険な社会的混乱を来すことは目に見えているからである。

(5)「Ⅲ-4.国際的な制度調和等について」(26~28ページ)について
(意見概要)
 模倣品・海賊版拡散防止条約の検討で、プライバシーや情報アクセスの権利といった基本的権利を守るとする条項を盛り込むよう日本から各国に積極的に働きかけてもらいたい。

(意見全文)
 27~28ページに書かれている「模倣品・海賊版拡散防止条約(ACTA)(仮称)について、そのような条項がよもや真面目に検討されることはないと思うが、もしどこかの国が、税関において個人のPCや携帯デバイスの内容をチェック可能とすることや、インターネットで著作権検閲を行う機関を創設することといった、個人の基本的な権利をないがしろにする条項をこの条約に入れるよう求めて来たときには、そのような非人道的な条項は除くべきであると、かえって、プライバシーや情報アクセスの権利といった国際的・一般的に認められている個人の基本的な権利を守るという条項こそ条約に盛り込むべきであると日本から各国に積極的に働きかけてもらいたい。

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