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2008年10月22日 (水)

第121回:青少年ネット規制法の施行令案パブコメ募集

 大騒動になったあげく、ユーザーから、ネット企業から、メディア企業から、とにかくあらゆる者から大反対されながらも、有害無益なプライドと利権の確保を最優先する寄生議員と規制官庁の思惑のみから成立した法律が青少年ネット規制法(正式名称は、「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律」)であるが、その施行令が11月16日〆切でパブコメにかかっている(電子政府の該当ページ総務省のリリース意見募集概要意見募集要領インターネット投稿フォームITmediaの参考記事参照)。

 施行令案概要)自体は、以下のような携帯電話フィルタリング義務、PC等のフィルタリング容易化義務等について以下のような例外を定める、シンプルなものである。

○携帯電話ネット接続フィルタリング義務の例外(法律第2条第7項):

  • ブラウザによる閲覧のために提供されていない場合
  • 企業や団体に提供される場合

○インターネットサービスプロバイダー(ISP)の、申し出に応じたフィルタリングソフトあるいはサービスの提供義務の例外(法律第18条):

  • 契約者数5万未満

○インターネット接続機器メーカーの、フィルタリング容易化義務の例外(法律第19条):

  • 機器にあらかじめブラウザが組み込まれていない場合
  • 機器の使用が十八歳以上の者に目視により監視される蓋然性が高いと認められる場合として経産省告示で定める場合
  • 機器が専ら事業のために使用されると認められる場合
  • 前年度の機器の販売数量1万台未満(機器の種類は、経産省告示で指定)

 総務省が、その規制事前評価書要旨)において、自分たちの大臣要請によって生じた混乱のことも忘れ、ぬけぬけと携帯電話におけるフィルタリングは既に概ね実施されており、携帯電話事業者に大きな追加費用は発生しないと書いていることも腹立たしいが、利用者に追加コストが発生しないとしている点はさらにいただけない。「青少年有害情報フィルタリングソフトウェア又は青少年有害情報フィルタリングサービスを提供(紹介)することが求められるため、事務手続の見直しや適切なサポート体制構築のための費用が発生する。また、自ら青少年有害情報フィルタリングサービスを新たに提供する場合には、そのための費用も必要となる」のであれば、ISPも別に慈善事業ではないのだから、そのコストは必ず利用者に転嫁されるのである。5万という数字の根拠も不明である。

 経産省の規制事前評価書要旨)では、販売台数基準を10万台とする案と1万台とする案を比較して1万台という案を選択しているが、10万台としたときのカバー率がPCで9割としながら、1万台としたときのカバー率を書いておらず、また、フィルタリング容易化としてどこまで追加コストが発生するのかの詳細も不明であり、一体どういう評価をしたのだか、さっぱり良く分からない。また、この規制には、PCのみならず、ブラウザを組み込んだ各種携帯デバイスなどの機器も含まれるだろうことも忘れてはならない。細かな機種指定を行うだろう経産省告示もまたこの規制において非常に重要な意味を持ってくることに注意が必要である。

 しかし大体、フィルタリングサービスであれ、ソフトであれ、今のところフィルタリングに関するコスト・メリット市場が失敗していない以上、かえって必要なことは、不当なフィルタリングソフト・サービスの抱き合わせ販売の禁止によって、消費者の選択肢を増やし、利便性と価格の競争を促すことだろう。今の法規制は、一部の寄生議員と規制官庁の暴走の結果としか思えず、一ユーザー・一消費者・一国民として私は全く評価できない。

 このフィルタリング規制が具体的にどのような影響を及ぼすかは、実際に運用されて行かないと分からないところもあるが、どこをどう運用しても、フィルタリングソフト・サービスの不当な抱き合わせ販売を助長し、その選択肢を潰して消費者・国民全体の不利益を拡大する方向にしか、例え大した利権とならないとしても、不当な規制による不競争利益を山分けにすることをその基本構造とする、政官業の不透明な癒着による腐敗をさらに押し進める方向にしか働きようはないのではないかと私は思う。

 本来政令レベルで言うことではないのだが、私は、次の法改正時に速やかに法律の廃止が検討されるべきであるということに加え、規制を理由にした不当な便乗商法に対する監視を強め、フィルタリングソフト・サービスの不当な抱き合わせ販売については独禁法の適用を検討すること、規制対象機種を指定する経産省告示もきちんとパブコメにかけることなどを意見として出そうと考えている。(私のパブコメは提出次第ここに載せるつもりである。)

 最後に少し最近のニュースの紹介もしておくと、まず、内閣府では、「青少年インターネット環境の整備等に関する検討会」なる検討会が始まった(internet watchの記事内閣府のHP参照)。何が出てくるのか知れないが、恐らくこの検討会が、青少年ネット規制法の第12条に規定されている「青少年が安全に安心してインターネットを利用できるようにするための施策に関する基本的な計画」のベースを作りに来ると思うので、注意しておくに越したことはないだろう。

 また、スペインのExpancion.comの記事delitosinformaticos.comの記事によると、スペインではバルセロナ地裁が、検索エンジンは著作権法上合法という判断を下したようである。

 次回は、デジタルフランス2012と称する、私的複製補償金の改革を含む通信政策提案(無論、補償金問題をメインポイントとしている訳ではないが)がフランス政府から昨日(10月20日)公表された(フランス政府の公表ページITR MANAGEMENTの記事NetEcoの記事clubic.comの記事参照)ので、この話を取り上げたいと思っている。

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