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2008年10月25日 (土)

第122回:私的複製補償金委員会改革を含むフランスのデジタル経済成長計画「デジタルフランス2012」

 前回のついでに少し書いたが、フランス政府(担当大臣はエリック・ベッソン氏)がこの10月20日に、私的複製補償金改革を含む「デジタルフランス2012」なる計画を公表している(フランス政府の公表ページ計画本文ITR MANAGEMENTの記事NetEcoの記事clubic.comの記事参照)で、今回はこの話を取り上げる。

 この計画は、フランスにおけるデジタル経済の発展のため、2012年までフランス人全てに35ユーロ/月以下の値段で512kbit/s以上の高速ネット環境へのアクセスを与えることや、いわゆるホワイトスペースを活用すること、光ファイバー網整備に関する規制を単純化すること、衛星による地上波の再送信を皆が受けられるようにすること、地上デジタル受信機の購入などに対する補助を行うこと、放送のデジタル化によって出来る空き帯域(790-862Hz)を高速インターネットアクセスに使うことなどを軸に、全150項目以上に及ぶ行動計画をまとめたものである。

(ちなみに、この計画によると、フランスの高速インターネットの普及率は61%で、オランダ(74%)、スイス(69%)に比べ欧州内でイギリスと並び3位の後塵を拝しているそうである。また、フランスの放送完全デジタル化予定日は2011年末らしいが、放送側のカバー率が2008年7月時点で82.2%となっているものの、世帯側は着手済みで57.8%に過ぎず、完全デジタル化が済んでいる世帯となると29.9%と低迷し、さらに29.1%は完全アナログの状態に留まるなど、放送のデジタル化ではフランスも苦しんでいることが見て取れる。)

 通信・放送・電波政策に関する計画としても興味深いのだが、ここでは、特に私的複製問題に関する部分として、「2.デジタルコンテンツの提供と製作の促進」(第31~67ページ)から、「2.4 私的複製委員会の改革」の項目を以下に訳して紹介する。

2.4 Reformer la commission pour copie privee

"L'exception de copie privee" est une faculte a laquelle les consommateurs sont tres attaches. La remuneration pour copie privee, qui constitue la contrepartie necessaire de l'atteinte au droit de propriete que constitue l'exception, represente une ressource essentielle pour le financement de la creation culturelle et artistique. Le principe de la fixation de son assiette et de son taux par une commission, composee a parite de representants des consommateurs et des industriels d’une part, et des artistes et ayants droit de la culture d’autre part, conforme au modele dominant dans l’Union europeenne, merite d’etre sauvegarde.

Cependant, plusieurs raisons conduisent a proposer une amelioration du fonctionnement actuel de la commission. La revolution numerique a fait exploser le nombre et la diversite des supports capables de copier les oeuvres. La fixation du montant de la remuneration est devenue plus complexe, amenant la commission a mener un nombre croissant de travaux, dans un calendrier resserre. De nouveaux acteurs sont apparus, qui sont concernes par la copie privee sans etre membres de la commission, comme les fabricants et importateurs de materiels de telephonie mobile. A l'inverse, certains membres de la commission ne participent plus a ses travaux.

Par ailleurs, plusieurs recours ont ete deposes devant les juridictions contre les decisions de la commission. La Commission europeenne mene quant a elle une reflexion sur les adaptations a proposer pour ce dispositif, et les moyens d’eviter une evasion du produit de la remuneration pour copie privee qui decoule de l’achat transfrontalier ("marche gris").

Action n°46 : Afficher le montant de la remuneration pour copie privee du prix de vente, afin de renforcer la transparence et d'informer les consommateurs sur la finalite de la remuneration pour copie privee. Les notices de vente porteraient un message explicatif.

Action n°47 : Doter la commission de moyens propres, affectes a la realisation d'etudes independantes, portant sur l'usage par les consommateurs des supports de copie assujettis a la remuneration.
Cette dotation permettait a la commission d'eclairer le processus de decision en toute objectivite. Les representants des industriels, des consommateurs et des ayants droit demeurent bien entendu libres de produire des etudes complementaires.

Action n°48 : Permettre au president de la commission de demander une seconde lecture d'une decision, cette seconde deliberation devant etre prise a la majorite qualifiee des deux tiers des membres. Cette disposition devrait permettre de faciliter l'emergence de consensus.

Action n°49 : Designer le president de la commission, ainsi que les organisations appelees a proposer des representants au sein de la commission par arrete conjoint des trois ministeres concernes.
Cette mesure permettra de renforcer la legitimite de la commission. Les organisations representatives des "industriels", "consommateurs" et "ayants droit" seront ainsi designees par arrete conjoint du ministre charge de la Culture, du ministre charge de l'Industrie et du ministre charge de la Consommation.
Le president pourra etre nomme parmi les membres du Conseil d’Etat, de la Cour de cassation ou de la Cour des comptes, par arrete
conjoint des trois ministres.

Action n°50 : Introduire la disposition selon laquelle un mandat de membre se perd de plein droit, en cas de trois absences consecutives non justifiees aupres du president.
Cette mesure permettra de renforcer l’assiduite aux reunions.

Action n°51 : Ouvrir la commission aux secteurs de l'economie nouvellement assujettis.
Cette mesure ne necessite pas de modification normative. Elle pourra etre mise en oeuvre a l’occasion du prochain renouvellement, au printemps 2009, des organisations designees pour sieger au sein de la commission.

2.4 私的複製委員会の改革
 「私的複製の例外」は、消費者に非常に密接に結びついた権能である。私的複製補償金は、例外によって生じる知的所有権の被害に対する必要な補償を構成するものであり、文化的芸術的創造の出資に必須のリソースとなっている。消費者とメーカーによって片側が代表され、アーティストと著作権者がもう片側を代表する委員会による、その対象と料率の決定原理は、EUにおける多数派のモデルにかなっており、救われるに値する。

 しかしながら、多くの理由から、この委員会の現在の仕組みの改善を我々は提案する。デジタル革命は、作品を複製することのできる媒体の数と多様性を爆発的に増やした。補償金の額の決定はより複雑になり、タイトなスケジュールの中での、委員会の仕事の数が増えることとなった。携帯電話のメーカーや輸入者など、委員会のメンバーになっていないが、私的複製問題にかかわる新たなプレーヤーも現れた。反対に、委員会のあるメンバーは、その仕事にもはや参加していない。さらに、様々な訴えが委員会の決定に対して提起されもした。欧州委員会も、これについて、その適切な仕組みの提案をするべく考察を巡らせ、国境を越える購入から生じる私的複製補償金対象の回避(「グレーマーケット」)を避けるための手段を模索している。

行動計画第46番:透明性を高め、私的複製補償金の行き先について消費者に知らせるため、販売価格に対する補償金額の表示を行う。販売表示に説明書きを加える。

行動計画第47番:補償金の対象となっている複製媒体の消費者による用途について、独立した調査を実行する適切な手段を、委員会に付与する。
(この付与は、決定過程を完全に客観的なものとして示すことを委員会に可能とするものである。メーカー、消費者、権利者が補足の調査をすることもまた自由と考える。)

行動計画第48番:委員長は決定の再読を求められるものとし、この2回目の審議は、メンバーの3分の2の多数によって可決されるものとする。この規則で、コンセンサスの形成が容易になる。

行動計画第49番:関係する3省庁の共同省令によって、委員会の委員長、並びに、委員会における代表を提案するべく呼ばれる組織を指定する。
(この手法で、委員会の正当性を強化することができる。「メーカー」、「消費者」と「権利者」の代表組織は、文化担当相、産業担当相、消費者担当相の合同令によって指定される。
委員長も、3省合同令によって、国務院、破棄院あるいは会計院のメンバーから指名される。)

行動計画第50番:委員会における、正当化されない3回連続の欠席により、メンバーの代理権は失われるとする規定を導入する。
(この手段により、集会への精励を促進することができる。)

行動計画第51番:新たに対象となる経済分野の者に対して、委員会を開く。
(この手段は、法令改正を必要としない。委員会に参加する組織を新たに指定する、2009年の春の次のメンバー入れ替えの機会に実施できる。)

 第105回で書いたように、消費者の訴えにより、行政裁判所で私的複製補償金委員会の決定が一部破棄する決定が下されるなど、補償金問題が炎上して来ているために、フランス政府はこのような改革提案をして来たと見える。この計画を見る限り、フランス政府としては、補償金問題について、対象と料率を決定する私的複製補償金委員会の改革でお茶を濁したいと見えるが、この程度では、フランスにおける補償金問題の火の手が収まることはないのではないかと私は思う。

 補償金額を表示(莫大な補償金を徴収しながら、フランスはこの程度のこともやっていなかったのかとあきれるが)した途端、その対象と額に対する消費者の怒りはさらに高まることだろうし、消費者が用途に関する客観的調査だけでごまかされることもないだろう。どこの国であれ、消費者が本当に求めているのは、媒体の用途に関する客観的調査のみではなく、それを踏まえた私的複製による権利者に対する実害の客観的調査である。関係省庁の合同令によってメンバーを指定するのは良いが、権利者団体が、歪み切った「複製=対価」の観念に基づき何でもかんでも補償金の世界を主張し、消費者が、私的複製によって生じた権利者の実害に基づく対象と額の決定を主張し、メーカーがDRMの普及促進による補償金縮小を主張するという、各者のスタンスの完全なすれ違いの状況は、欧州でも日本でも変わりはなく、例え決定の再読を委員長が求めたところで、そもそものスタンスが違うところでコンセンサスを取ることは不可能に近いに違いない。(権利者側のメンバー比率を3分の2以上にすれば話は別だが、それこそ不当の極みであって、3省庁の合同指定ではそのような比率はまず通らないだろう。)

 この計画は計画の段階に過ぎず、この通り実現されるかどうかもあやしいが、フランスの消費者・国民も、この程度のお茶濁しの改革でごまかされることはないだろうし、フランスでも補償金問題の火はまだまだ燃え続けることと私は予想する。

 このデジタルフランス2012にはもう少し知財関連事項が含まれているので、次回も続けて、この話の補足を書きたいと思っている。

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