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2008年8月31日 (日)

第112回:警察庁・出会い系サイト規制法ガイドラインと施行規則の改正案

 警察庁が、出会い系サイト規制法の改正を受けて、そのガイドラインと施行規則の改正案をパブコメにかけている(ガイドラインパブコメ(9月5日〆切)、施行規則パブコメ(9月20日〆切))。

 ネット規制法などの大問題の陰で、この法改正がすんなりと通ってしまったのは残念でならないが、法律は改正したらそれで終わりというものではない。

 私は、第54回のパブコメに書いた通り、そもそも法改正の必要性と根拠について疑問があり、出会い系サイトを定義して届け出制を課すこと自体に無理があると思っているが、出てきた警察のガイドライン案を見ると、それなりに限定的な解釈をしようと努力した跡が見られるものの、やはり腑には落ちない。

 定義に関するガイドライン案では、法律(現行法新旧対照条文)の

異性交際(面識のない異性との交際をいう。以下同じ。)を希望する者(以下「異性交際希望者」という。)の求めに応じ、その異性交際に関する情報をインターネットを利用して公衆が閲覧することができる状態に置いてこれに伝達し、かつ、当該情報の伝達を受けた異性交際希望者が電子メールその他の電気通信を利用して当該情報に係る異性交際希望者と相互に連絡することができるようにする役務を提供する事業

というインターネット異性紹介事業について、この「相互に連絡」は一対一の連絡に限られ(一対多数の連絡は入らない)、この連絡がサービスの中に組み込まれていなくてはならず、また、サイト開設者がサイトの運営方針として「異性交際希望者」を対象としてサービスを提供している必要があると、ある程度限定的に解釈している。要するに、ここで定義されている出会い系サイトとは、異性交際希望者を対象として、メールアドレスの入力・表示を必須とするような掲示板サービス(メールアドレスの入力・表示の代わりにチャットのような利用者間で一対一の連絡をすることができる機能を組み込んだサービスでも良い)を言うので、通常の結婚相談サイトや、SNS、趣味サイト、メル友サイト等は該当しないとしているのである。しかし、サイトの運営方針の判断は常に難しく、恣意的にならざるを得ない上、

異性交際目的での利用を禁ずる規約等に反して利用者が異性交際目的で利用している実態がある場合でも、サイト開設者が異性交際を求める書き込みの削除や当該投稿者の利用停止措置を行っていれば、当該サイトは、基本的には「インターネット異性紹介事業」に該当しませんが、当該書き込みを知りながら放置するなど、サイト開設者がその実態を許容していると認められるときは「インターネット異性紹介事業」に該当する場合があります。(第2ページ)

ともされているのでは、このガイドラインでも恣意的な出会い系サイトの認定がされる可能性はぬぐえない。書き込みを知って放置したか、知らずに放置したかは必ず水掛け論になるだろうし、第4~5ページに典型例としてあげられている書き込みがあまりにもありふれていることを考えても、このような書き込みを放置しただけで、出会い系サイトに該当するとされる可能性があるというのは、さらに、新法の第32条に規定されているように届け出をせずに出会い系サイト事業を行ったとしてサイト管理者が処罰される可能性まで出てくるのはあまりと言えばあまりである。そこまで恣意的な運用がなされることはないと信じたいが、今の警察については、別件逮捕の恐れも含めて考えておかなくてはならないと私は感じている。特に、メールアドレスの入力・表示を必須としているような掲示板サービスや、SNSサービスの管理者は気をつけておいた方が良いと私は思う。(出会い系サイト事業者の定義に不安がある以上、削除義務に関するガイドラインも良く読んでおいた方が良いだろう。)

 施行規則(概要新旧対照条文)では、細かな手続きの書式等が定められているが、逃げも隠れもできない国内大手サイト事業者を除けば、余計なコストにしかならない届け出をする者はいないのではないか。これは実運用の結果を待ってみないと分からないが、国内大手サイトにおけるコスト増によって、かえって出会い系サイトが国内外で拡散することになるのではないかとも思われる。

 この法律の正式名称は「インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律」なのだが、この本来の目的である児童誘引行為の規制による児童保護を超えて、この法律が、インターネットにおけるコミュニケーションそのものの規制に寄ってきているのは決して看過できない。不正誘引行為は犯罪として取り締まられるべきものであるにせよ、これをコミュニケーションの場・手段の所為にすることには常に危険な論理のすり替えがある。このガイドラインもあくまで行政である警察の示す現行の解釈に過ぎず、警察が運用変更で出会い系サイトの定義をさらに広げてこないとも限らない。この出会い系サイト規制法も今後の運用次第で相当危険な法律となる可能性があるだろう。

 この出会い系サイト規制法の改正法は実運用が難しい上、その効果も疑問だが、もう少し考えをまとめてから、上の定義に関する疑問と合わせて、次の法改正では届け出制を無くして元に戻すべきと考えるというパブコメを出そうかと考えている。

(9月1日夜の追記:総理辞任のニュースがあった。これでさらに政局は混迷するのではないかと思うが、解散総選挙の時期は早まったのではないか。今の与野党は全て何をしてくるか読めないので、予断は禁物だが。)

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