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2008年4月 6日 (日)

第81回:天下りという腐敗の元

 知財政策その他あらゆる政策において、政官が次々と打ち出してくる有害無益な規制強化案には、一国民として心からの憤りを禁じ得ない。

 第70回第75回第76回で取り上げた児童ポルノ規制強化に加えて、規制強化派は有害サイト規制法案も無理矢理押し通そうとしている(池田信夫氏のブログ記事町田徹氏のネット記事未識魚氏のブログ記事cnetの記事OhmyNewsのインタビュー記事参照)。有害サイト規制についても、このような過度に広汎かつ漠然とした表現規制はそもそも違憲であることは言うまでもなく、そもそも「著しく」をつければ規制対象が限定されて明確になると思っている時点で、完全に狂っているが、これらの有害無益な規制の推進の陰にちらつくのはインターネットホットラインセンターを握る警察庁である。(第50回で取り上げた出会い系サイト規制強化法案もまた同断である。)

 4月3日に文化庁で私的録音録画小委員会が開催され(internet watchの記事ITmediaの記事cnetの記事参照)、記事によると、権利者団体と癒着した文化庁は、私的録音録画問題についてあと2回で方向性を示すつもりらしいが、今まで何年もかけてほとんど何の進展もなかった話が、あと2回かそこらで片付く訳がない。このようなことを平気で口にする時点でやはり何かが狂っていると思わなくてはならない。

 また、総務省の携帯サイトフィルタリングの話でも、最近の会合(マイコミジャーナルの記事参照)で、有害性判定第3者機関のことが議論されているようだが、これも総務省は当然天下り先とすることを考えているに違いない。(役所を辞めた人間が天下るのであれば、役人にしてみれば行政から「ある程度独立」しているのだろう。)

 とにかく、これらの現実を無視し、憲法すら無視した政官の言動の裏には、必ず天下り利権がちらつくが、このような法改正や規制を盾にした天下りなど再就職ポストを用いた汚職以外の何物でもない

 天下りの本当の実態については良く分からないが、先週の天下り白書(正式名称は「営利企業への就職の承認に関する年次報告」(プレスリリース本文目次)にごまかされてはいけない。これは、今の国家公務員法の第103条第2項で規定されているものを報告しているだけで、要するに関連私企業に直接再就職したケースしか載せているので、公益法人などの各種団体などへの天下りが全くカウントされていないのだ。

 これに対して、去年の6月23日号の週刊ダイヤモンドの「天下り全データ」という特集では、2万7882人という人数が示されているのであり、こちらの方がより実態に近いと思われる。中には他愛のない再就職も含まれているだろうが、2万5千人を超える元国家公務員が各省庁所管の各種独立行政法人や特殊法人、公益法人、企業などにうごめき、中でも次官などのハイレベルのOBたちが連綿と各省庁の人事や政策に影響を及ぼしているというのが、今の日本のおぞましい現状である。(元財務官僚の高橋洋一氏の最近の快著「さらば財務省!」でも、次官OBが現役に口を出す様子が少し描かれていた。)

 特に、この週刊ダイヤモンドの記事でも使われていた衆議院の天下り調査(正式名称は「中央省庁の補助金等交付状況、事業発注状況及び国家公務員の再就職状況に関する予備的調査」)から、最近著しい歪みを見せている上の3つの規制官庁(文化庁、総務省(通信放送関係)、警察庁)の天下り人数を、ここにもあげておくと、

文化庁:合計257人(内訳:非常勤職員1人、常勤職員22人、非常勤役員225人、常勤役員9人。天下り先:公益法人121。ダイヤモンドの記事が分かりやすいが、文部科学省全体では、天下り人数は3007人、天下り先団体数934と跳ね上がる。それも大学などの学校が多い。今日、文部科学省の元官僚が捕まったというニュースがあったが、日本の教育政策の今の歪みも大問題である。)

総務省(通信放送関係):合計405人(内訳:非常勤職員11人、常勤職員172人、非常勤役員150人、常勤役員72人。天下り先:公益法人85、独立行政法人1、特殊法人4、放送関連会社・放送局7。通信放送関係だけを取るため、情報通信政策局と総合通信基盤局と地方通信局が所管している団体と放送局を足した。総務省全体では、天下り人数は1858人、天下り先団体数223となる。)

警察庁:合計241人(内訳:非常勤職員12人、常勤職員80人、非常勤役員95人、常勤役員54人(天下り先:公益法人34、認可法人2。)

となる。最近の規制強化に関する策動を見る限り、これらの規制官庁に、規制をする者が自ら規制強化を推進したり、規制される者からみかじめ料として天下りコストを出させることはおかしいとする常識はもはや全く期待できない。個々の天下りがどうあれ、各官庁がこの天下り利権の維持拡大を至上命題とする限り、規制政策への歪みは出続けるだろう。このような有害無益な規制強化の動きしか生まない天下りなど即刻禁止されてしかるべきである。(ジャーナリストの方や各種政策ウォッチャーの方へ:この衆議院調査は、日本の国政の裏を読む第一級資料である。この調査は国会図書館でも簡単に閲覧できるので、もしご存じなければ、自分の興味がある省庁の分だけでも調べておくことをお勧めする。)

 また、若林亜紀氏の「ホージンノススメ」などによると、このような各種天下り法人で、政治家のパーティ券や著作を大量に買い込んだりすることも良くあるようであり、また、表立った形でないにせよ、政治献金をしている団体も多くあるのだろう。これで政官業の腐敗のトライアングルが完成する。(公共事業関係の団体の場合、さらに公共事業の配分でも議員との関係が作れるだろう。)

 天下りというとすぐ補助金との関係が取り沙汰されるが、何も、天下りは金のみに基づくわけではない。日銀やガソリン税、年金などの大利権に加えて、このような法規制による天下りも確実に国の政策を歪めているのだ。

 それにしても、刑法の第193条から198条に汚職の罪が定義されているが、天下り役人どもは、このような「ポストによる汚職」を「天下り」と言い換えれば犯罪でないとでも言うつもりか。援助交際と言ったからといって、売春は売春であろう。刑事訴訟法の第239条には、「官吏又は公吏は、その職務を行うことにより犯罪があると思料するときは、告発をしなければならない。」と定められているが、この規定を天下り役人どもは何と考えているのか。公務員が法律の遵守を旨とするなら、即刻このような腐敗と癒着の温床を告発してもらいたい。

 法改正によって得られる利権・行政による恣意的な許認可権を盾に、役に立たない役人を民間に押しつけるなど、最低最悪の行為であり、一国民として到底許せるものではない。さらに、このような天下り役人が国の政策に影響を及ぼし、国が亡んでも自分たちの利権のみ伸ばせれば良いとばかりに、国益を著しく損なう違憲規制を立法しようとするに至っては、単なる汚職の域を超え、もはや国家反逆罪を構成すると言っても過言ではない。

 アメリカのスタンフォード大学のレッシグ教授は、著作権問題から政治腐敗の問題に移り、Change Congress運動を推進している。そのサイトの動画中でレッシグ教授がいみじくも述べているように、腐敗とは悪い人間がするものではなく、良い人間が悪いシステムの中でするものなのだ。腐敗の元は違えど、決してこの運動は対岸の火事ではない。岡光次官や守屋次官などいくらトップを逮捕したところで、システムそのものを変えない限り何の意味もない。本来こうした腐敗を取り締まるべき警察や検察からして天下りを行っているくらい、この天下りによる腐敗の根は深く、一朝一夕に取り除けるものではないが、天下り問題についても決して改革の手が緩められてはならない。

 去年の公務員改革法案(概要新旧対照条文)で、官民人材交流センターが導入され、再就職は全てこのセンター経由で行われることことになったが、どんな法律でも運用するのは役人である。このセンターが天下りセンターとなることは間違いないだろうが、重要なことは、この改正後の国家公務員改正法の第106条の25~第106条の27において、公益法人なども含めて公務員の再就職に関する報告が公表されることになっている点である。このデータの公表によって、天下り問題に対する批判はさらに高まることだろう。天下り役人どもよ、覚悟せよ、貴様ら有害無益な役人をのうのうと飼っておく社会的余裕はもはやないのだ。天下りを支えていたのは貴様らの才能でも有害無益な努力でもなく、民間活力と日本経済の自然成長であったと思い知れ。

(最近閣議決定された公務員改革法案(例えば東京新聞のネット記事毎日新聞のネット記事参照)も骨抜きの懸念が強いが、少しでも政官の癒着はやりにくくしておくべきだろうし、無駄に人事の硬直を招いていると言われるキャリア制度なども廃止されるべきだろう。公益法人についてもまず1000団体の役員報酬を公表させると報道されているが、このような情報公開は1000団体と言わず、全団体について行われるべきである。国民の目の届かないのを良いことに何をやっているか知れたものではない。)

 とにかく、最近の規制強化の動きは異常であり、しかも全て間違っていると私は断言するが、このような政策的な歪みの背景に天下り問題があり、この天下り問題についても役人どもはごまかしと骨抜きを図ろうとしていることは、是非、多くの人に知っておいてもらいたい。一つ一つの規制強化案についても、そもそも議論の根底から間違っていると私は言い続けるだろうが、この天下りという腐敗しきったシステムの問題も私は一緒に指摘し続ける。腐敗は元から断たない限り、止まらないのだ。

 なお、ついでに、アメリカの研究グループから、アメリカ著作権法の図書館に関する権利制限の拡充を求める詳細なレポートが提出されたというニュースがあったので、これも紹介しておこう。図書館に関する権利制限について興味がある方にとっては、非常に面白いレポートだと思われる。

(4月7日夜の追記:「中央省庁の補助金等交付状況、事業発注状況及び国家公務員の再就職状況に関する予備的調査」という衆議院調査の正式名称を書き忘れていたので上に追加した。)

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