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2008年3月11日 (火)

第69回:ベルギー著作権法の私的複製関連規定

 今回は、EUの本部があるブリュッセルを首都とするベルギーの私的複製関連規定についてである。

 インターネット上で入手可能な条文(フランス語)によると、著作権の私的複製関連の権利制限規定は、その第22条の列挙内に含まれている。(訳文は拙訳。他にも権利制限条項は沢山あるが、ここでは、特に私的複製に絡むと思われる部分を訳出した。注は私がつけたもの。)

  Art. 22. § 1. Lorsque l'oeuvre a ete licitement publiee, l'auteur ne peut interdire :
...
3°l'execution gratuite et privee effectuee dans le cercle de famille ou dans le cadre d'activites scolaires;

4°la reproduction fragmentaire ou integrale d'articles ou d'oeuvres plastiques ou celle de courts fragments d'autres oeuvres fixees sur un support graphique ou analogue, lorsque cette reproduction est effectuee dans un but strictement prive et ne porte pas prejudice a l'exploitation normale de l'oeuvre;

4°bis. la reproduction fragmentaire ou integrale d'articles ou d'oeuvres plastiques ou celle de courts fragments d'autres oeuvres fixees sur un support graphique ou analogue lorsque cette reproduction est effectuee a des fins d'illustration de l'enseignement ou de recherche scientifique dans la mesure justifiee par le but non lucratif poursuivi et ne porte pas prejudice a l'exploitation normale de l'oeuvre;

4°ter. la reproduction fragmentaire ou integrale d'articles ou d'oeuvres plastiques ou celle de courts fragments d'autres oeuvres, lorsque cette reproduction est effectuee sur tout support autre que sur papier ou support similaire, a l'aide de toute technique photographique ou de toute autre methode produisant un resultat similaire, a des fins d'illustration de l'enseignement ou de recherche scientifique dans la mesure justifiee par le but non lucratif poursuivi et ne porte pas prejudice a l'exploitation normale de l'oeuvre, pour autant, a moins que cela ne s'avere impossible, que la source, y compris le nom de l'auteur, soit indiquee;

4°quater. la communication d'oeuvres lorsque cette communication est effectuee a des fins d'illustration de l'enseignement ou de recherche scientifique par des etablissements reconnus ou organises officiellement a cette fin par les pouvoirs publics et pour autant que cette communication soit justifiee par le but non lucratif poursuivi, se situe dans le cadre des activites normales de l'etablissement, soit effectuee uniquement au moyen de reseaux de transmission fermes de l'etablissement et ne porte pas prejudice a l'exploitation normale de l'oeuvre, et a moins que cela ne s'avere impossible, la source, y compris le nom de l'auteur, soit indiquee;

5° les reproductions des oeuvres sonores et audiovisuelles effectuees dans le cercle de famille et reservees a celui-ci;
...
Art. 22bis. § 1er. Par derogation a l'article 22, lorsque la base de donnees a ete licitement publiee, l'auteur ne peut interdire :
  1°la reproduction fragmentaire ou integrale sur papier ou sur un support similaire, a l'aide de toute technique photographique ou de toute autre methode produisant un resultat similaire de bases de donnees fixees sur papier ou sur un support similaire lorsque cette reproduction est effectuee dans un but strictement prive et ne porte pas prejudice a l'exploitation normale de l'oeuvre;

  2° la reproduction fragmentaire ou integrale sur papier ou sur un support similaire, a l'aide de toute technique photographique ou de toute autre methode produisant un resultat similaire, lorsque cette reproduction est effectuee a des fins d'illustration de l'enseignement ou de recherche scientifique dans la mesure justifiee par le but non lucratif poursuivi et ne porte pas prejudice a l'exploitation normale de l'oeuvre;
...
Art. 46. Les articles 35, 39, 42 et 44 ne sont pas applicables lorsque les actes vises par ces dispositions sont accomplis dans les buts suivants :

3° l'execution gratuite et privee effectuee dans le cercle de famille ou dans le cadre d'activites scolaires;
...
4° les reproductions des prestations des titulaires des droits voisins, effectuees dans le cercle de famille et reservees a celui-ci;

第22条 作品が合法に公開された場合、作者は次のことを禁止できない:
(中略)
第3項 家族内あるいは学校活動の枠内でなされる、私的かつ無償の上演;

第4項 その複製が厳密に個人的な目的のためになされ、作品の通常の利用を害しない場合の、記事あるいは造形作品の部分的あるいは全体の複製、あるいは、描画あるいはアナログ媒体に固定されたその他の作品の短い断片の複製;

第4の2項 その複製が、非営利の目的によって正当化される形で、教育における提示あるいは科学研究の目的でなされ、作品の通常の利用を害しない場合の、記事あるいは造形作品の部分的あるいは全体の複製、あるいは、描画あるいはアナログ媒体に固定されたその他の作品の短い断片の複製;

第4の3項 その複製が、非営利の目的によって正当化される形で、教育における提示あるいは科学研究の目的でなされ、紙あるいは類似の媒体とは異なる媒体の上に、写真あるいは類似の結果をもたらす他の手法を用いてなされる、記事、造形作品の部分的あるいは全体の複製、あるいは、他の作品の短い断片の複製、ただし、それが不可能でないときには、作者の名前も含め、ソースが示される場合に限る;

第4の4項 その通信が、教育における提示、あるいは、公権力によって公的に組織された又は良く知られた機関の研究の目的でなされる場合の、作品の通信、ただし、この通信が、非営利の目的によって正当化され、この機関の通常の活動の枠内にあるか、機関の閉ざされた通信網の中でなされるかし、作品の通常の利用を害さず、それが不可能でないときには、作者の名前も含め、ソースが示される場合に限る;

第5項 家庭内で行われ、その中に限られる、音楽あるいは映像作品の複製;
(中略)

第22の2条 第22条の規定にかかわらず、データベースが合法に公開された場合、作者は次のことを禁止できない:

第1項 その複製が厳密に私的な目的でなされ、作品の通常の利用を害さない場合の、紙あるいは類似の媒体の上に、写真あるいは類似の結果をもたらす他の手法を用いてなされる、紙あるいは類似の他の媒体に固定されたデータベースの部分的あるいは全体の複製;

第2項 その複製が、非営利の目的によって正当化される形で、教育における提示あるいは科学研究の目的でなされ、作品の通常の利用を害さない場合の、紙あるいは類似の媒体の上に、写真あるいは類似の結果をもたらす他の手法を用いてなされる、部分的あるいは全体の複製;
(中略:データベースについても、上の上の第22条第4の2~第4の4項と似たような規定がある。)

第46条 第35条、第39条、第42条、第44条の規定は、これらの規定で定められている行為が、次の目的でなされる場合には適用されない。(注:第35条、第39条、第42条、第44条は著作隣接権を定めている。)

第3項 家族内あるいは学校活動の枠内でなされる、私的かつ無償の上演

(中略:第3の2項と第3の3項として、上の第22条第4の2~第4の4項と似たような規定がある。)

第4項 家庭内で行われ、その中に限られる、著作隣接権者の演技の複製;
(後略)

 上では少し余分に訳したが、私的録音録画を対象とする規定として、第22条第5項と第46条第4項が私的録音録画補償金の対象になっており、その他の私的複製を対象とする規定として、第22項第4項と第4の2項、第22の2条の第1項と第2項がやはり補償金の対象となっている。(ベルギーでは、録音録画機器媒体に加え、コピー機なども補償金の対象となっており、ヨーロッパの中でもタチの悪い国に属する。)

 補償金に関係する私的複製関連部分を中心に訳してみたが、ベルギーの著作権法では、この前の第21条で、引用や教育目的の編纂、通信過程での不可避な複製が権利制限の対象とされ、第22条の省略した部分で、報道、パロディ、文化遺産保護のための複製、美術展やオークションのための複製、障害者のための複製などが権利制限の対象として規定されている。(フランスの著作権法の影響か、ヨーロッパの諸国を探してみると、パロディや模写等が権利制限の対象となっている国も結構見つかるように思う。)

 さらに、第23条の2で、第21から第22条の2の権利制限規定が強行規定であることをわざわざ明文で規定しているのも面白い。(さらに、誰でもアクセスできるような形で作品がアクセス可能とされる場合は、契約の方が優先しても良いとされているようである。)

 利害関係者間の綱引きによって、このような複雑な条文になったのであろうことは容易に想像がつくのだが、ベルギーの著作権法の教科書が手元にある訳でもなく、例えば、上で訳した部分でも、第4の3項の意味など、正直なところ良く分からない。(もし、ベルギーの法律に詳しい方がいるようなら、是非教えて頂きたいと思う。)

 また、今のところ、ベルギーではダウンロード違法化はされていないようであるし、ダウンロード違法化が議論されているという話も聞かない。

 とにかく、各国の著作権法について、何故か文化庁や権利者団体は自分たちにとって都合の良いことだけを取り上げるが、実際に調べてみると、ヨーロッパについてだけ見ても各国毎に権利制限規定はかなり規定の仕方が違っており、その国際比較は決して容易な仕事ではないし、そのごく一部だけを取って国際潮流などとすることができるものでもない。(それにしても、著作権保護強化のためには血眼になって何でも調べるのに、それ以外の部分はさぼるか隠すという文化庁の姿勢は本当に許し難い。)

 ベルギーの補償金関係の規定も紹介しておきたいと思うが、これも結構長くなるので、回を分けてまた次回に。

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コメント

thats it, dude

投稿: Meghanfz | 2008年4月 6日 (日) 07時57分

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