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2008年3月 4日 (火)

第66回:スイス著作権法の私的複製関連規定

 第34回で、スイスの著作権法改正問題に関して触れたこともあり、まずは、スイス著作権法の私的複製関連規定について紹介したいと思う。(改正法の問題点については今回は省くが、参考のために、改正条文等がまとめられているスイス連邦知的財産研究所の著作権法ページにリンクを張っておく。)

 スイス連邦のホームページに現行の著作権法の条文(フランス語ドイツ語)が載っているが、私的複製関連はその第19条に以下のように規定されている。(フランス語の方から訳した。翻訳は拙訳。)

Art.19 Utilisation de l'oeuvre a des fins privees
1 L'usage prive d'une oeuvre divulguee est autorise. Par usage prive, on entend:
a. toute utilisation a des fins personnelles ou dans un cercle de personnes etroitement liees, tels des parents ou des amis;
b. toute utilisation d'oeuvres par un maitre et ses eleves a des fins pedagogiques;
c. la reproduction d'exemplaires d'oeuvres au sein des entreprises, administrations publiques, institutions, commissions et organismes analogues, a des fins d'information interne ou de documentation.

2 La personne qui est autorisee a reproduire des exemplaires d'une oeuvre pour son usage prive peut aussi en charger un tiers; les bibliotheques qui mettent a la disposition de leurs utilisateurs un appareil pour la confection de copies sont egalement considerees comme tiers au sens du present al.

3 Ne sont pas autorises en dehors du cercle de personnes etroitement liees:
a. la reproduction de la totalite ou de l'essentiel des exemplaires d'oeuvres disponibles sur le marche;
b. la reproduction d'oeuvres des beaux-arts;
c. la reproduction de partitions d'oeuvres musicales;
d. l'enregistrement des interpretations, representations ou executions d'une oeuvre sur des phonogrammes, videogrammes ou autres supports de donnees.

4 Le present article ne s'applique pas aux logiciels.

第19条 私的な目的のための作品の利用
第1項 公表された作品の私的な利用は許される。以下のことは、私的な利用として認められる:
a.個人的な目的、あるいは、家族や友人のような、緊密に結びついた人間のサークル内でなされるあらゆる利用;
b.教育の目的で行われる、先生とその生徒による作品のあらゆる利用;
c.企業、政府、機関、委員会、及び、類似の機関内で、内部情報あるいは資料としての目的でなされる、作品の複製;

第2項 私的使用のための作品の複製を許されている者は、第3者にその複製を任せることができる。その利用者に、コピーの作製のための機器を提供している図書館も、この条項の第3者と解される。

第3項 以下のことは、緊密に結びついた人間のサークル外では許されない:
a.市場で入手可能な作品の全体あるいは本質的な部分の複製
b.美術作品の複製
c.音楽作品の楽譜の複製
d.録音、録画、あるいは他のデータ作品の翻案あるいは実演の記録

第4項 この条項はプログラムには適用されない。

 ここで、企業内に閉じる複製も私的複製として権利制限規定の中に入っていることは興味深い。日本では、企業内の複製は、例え企業内に閉じる複製であったとしても、私的複製とは見なされていないため、原則として違法となるが、スイスではそのようなことにはならない。私的複製の議論における、諸外国の著作権法比較においては、こうした差異も見過ごされるべきではないだろう。

 さらに、その私的複製補償金に関しては、次の第20項で次のように定められている。(翻訳は拙訳。)

Art.20 Remuneration pour l'usage prive
1 L'utilisation de l'oeuvre a des fins personnelles au sens de l'art. 19, al. 1, let. a, ne donne pas droit a remuneration, sous reserve de l'al. 3.

2 La personne qui, pour son usage prive au sens de l'art. 19, al. 1, let. b ou c, reproduit des oeuvres de quelque maniere que ce soit pour elle-meme ou pour le compte d'un tiers selon l'art. 19, al. 2, est tenue de verser une remuneration a l'auteur.

3 Les producteurs et importateurs de cassettes vierges ainsi que d'autres phonogrammes ou videogrammes propres a l'enregistrement d'oeuvres, sont tenus de verser une remuneration a l'auteur pour l'utilisation de l'oeuvre au sens de l'art. 19.

4 Les droits a remuneration ne peuvent etre exerces que par les societes de gestion agreees.

第20条 私的利用のための補償
第1項 第19条第1項aにおける個人的な目的のためになされる利用は、第3項の場合を除き、補償の権利を与えない。

第2項 自分自身のためという形であれ、第19条第2項に規定されているように第3者から任されて行う形であれ、第19条第1項bあるいはcにおける私的利用のために作品の複製を行う者は、その作者に補償金を支払わなくてはならない。

第3項 ブランクカセット並びに他の作品の複製に適した録音録画媒体の製造者及び輸入者は、第19条に規定されている作品の利用のために、補償金を支払わなくてはならない。

第4項 補償金を求める権利を行使することができるのは、認可された管理団体のみである。

 私的複製すなわち補償金という規定になっているドイツ(第15回参照)とは異なり、スイスでは、録音録画媒体のみを補償金の対象としているという点でかなりおとなしい形にはなっている。それ以外の場合は、補償の権利がないということもわざわざ明文で規定している。

 また、補償金の対象や料率は、その著作権法第55条(フランス語)で規定されている、著作権管理連邦仲裁委員会が決めているようである。ただ、いくらドイツに比べておとなしいとは言え、上でも書いた補償金の規定ぶりから考えて、やはり課金ありきで委員会で話が進み、MP3プレーヤーなども媒体として課金対象とされたのであろう。ただ、この委員会のHPに載っている活動報告にも、いわゆるMP3プレーヤーに対する決定の際、大きな反響があり、消費者団体も知事へのロビー活動をしなければならないと考えたと書かれているくらいで、この制度は、スイスでも消費者・ユーザーに受け入れられているとは言い難い。ドイツのように裁判が頻発する事態に至っていないのは、ドイツほど対象・料率が非道でないために過ぎないだろう。

 次回も続けて、もう少し、スイスの権利制限・私的録音録画補償金関連の話の補足をしたいと思っている。

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