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2008年3月14日 (金)

第71回:知的財産推進計画に対する意見募集の開始

 昨日、「知的財産推進計画2007」の見直しに関する意見募集が開始されたというお知らせが、知財本部のHPに掲載された。(期間は4月3日までの3週間と少し短めである。)パブコメは多数投票でも署名運動でもないが、今までの流れを考えると、権利者団体側が文化庁のパブコメと同様に動員をかけてくる可能性は大いにあるので、私も一国民・一消費者・一ユーザーとして、ここで手は抜くことはできない。

 そもそも、知財計画の存在自体、その意味が良く分からなくなりつつあるというのが私の正直な感想であり、意見募集フォーム自体フリーフォームなので、特に去年の知財計画の記載を気にせずとも良いような気もするのだが、参考のため、特にユーザーに関係が深い大問題に関する箇所を知的財産推進計画2007から抜き出しておこう。

 まずは、ダウンロード違法化については、第90ページに、

③違法複製されたコンテンツの個人による複製の問題を解決する
 合法的な新しいビジネスの動きを支援するため、インターネット上の違法送信からの複製や海賊版CD・DVDからの複製を私的複製の許容範囲から除外することについて、個人の著作物の利用を過度に萎縮させることのないよう留意しながら検討を進め、2007年度中に結論を得る。
(文部科学省)

と書かれ、私的録音録画補償金問題については、第91ページに、

⑥私的録音録画補償金制度の見直しについて結論を得る
 私的録音・録画について見直すとともに、補償金制度については廃止や骨組みの見直し、他の措置の導入も含め抜本的な検討を行い、2007年度中に結論を得る。その際、技術的保護手段の進展やコンテンツ流通の変化等を勘案するとともに、国際条約や国際的な動向との関連やユーザーの視点に留意する。また、技術的保護手段との関係等を踏まえた「私的複製の範囲の明確化」、使用料と複製対価との関係整理等、著作権契約の在り方の見直し等についての検討を進め、2007年度中に結論を得る。
(文部科学省、経済産業省)

と書かれ、保護期間延長問題は、第94ページに、

ⅲ)著作物の保護期間の延長や戦時加算の取扱いなど保護期間の在り方について、保護と利用のバランスに留意した検討を行い、2007年度中に一定の結論を得る。

と書かれている。これらの大著作権問題については、2007年度中の結論となっていたのが、全て持ち越しになっているので、気をつけておく必要がある。文化庁が知財本部を抱き込みに来る可能性もあるので、国民が見ているということを示すために、私は必ず、これらの点について著作権保護強化反対とパブコメで言及するつもりである。

 また、分かりにくいのだが、もう一つの大論点のコピーワンス問題については、第105~106ページに、

(3)バランスのとれたプロテクションシステムを採用する
 コンテンツの流通を促進するに当たり、技術革新のメリット・利便性を国民が最大限に享受できるようにするとの観点も踏まえ、視聴者利便の確保と著作権の適切な保護を図り、あわせてコンテンツビジネスが拡大するよう、バランスのとれたプロテクションシステムの策定・採用を促進するため、以下の取組を進める。
a)地上デジタル放送に関わる、いわゆる「コピーワンス」ルールの見直しに代表されるように、一定の枠組みにおける電波利用方式の設定・実施、放送関連機器・システムの規格・運用に関わるプロテクションシステムの設定は、事実上利用に当たっての制約になる可能性がある。したがって、こうしたプロテクションシステムの設定について、行政としても引き続き、視聴者、メーカー、関係事業者等幅広い関係者の参加を得て、その検討プロセスを公開し、その透明化を図ることによりシステム間の競争を促進するとともに、あわせて、その透明、競争的かつ継続的な見直しプロセスの在り方についても検討し、これまでの成果を踏まえ2007年度中の早期に結論を得る。
b)民間事業者において動画配信サービス等のプロテクションシステムを検討する場合は、権利者が安心してコンテンツを提供できる環境を作るとともに過去の失敗例に学び、ユーザーの使いやすさに配慮したルールの採用を奨励する。
(総務省、文部科学省、経済産業省)

という記載がある。知財本部がダビング10やB-CAS問題といった新しい話をどう書き込んでくるつもりか良く分からないが、私は、そもそもコピーワンスやダビング10と言った国内談合規格には反対なので、まずB-CASと独禁法の関係をきちんと検討すべきであるといったことをパブコメに書きたいと思っている。

 また、下部調査会のコンテンツ・日本ブランド専門調査会でまとめられた「デジタル時代におけるコンテンツ振興のための総合的な方策について」(概要本文)も、その記載が知財本部に盛り込まれる可能性が高いので、一緒に抜き書きをしておくと、その第6ページで、

① 通信と放送の垣根を越えた新たなサービスへの対応
 IPTVや携帯端末向けマルチメディア放送など、通信と放送の垣根を越えたサービスの展開が本格化しつつある。しかし、現行の著作権法では通信と放送の区分により権利関係が異なるため、利用者から見ればほぼ同一のサービスであっても事業者によって権利処理に要する手続き等が異なる場合がある。
このような状況を踏まえ、サービス事業者の社会的影響力や新たなコンテンツの創作への寄与等を考慮しつつ、利用者からみたサービスの形態に応じて、権利関係の規定の見直しや著作隣接権の在り方を検討する。また、現在進められている通信・放送の法体系の見直しにおいては、コンテンツの生産・流通・消費を最大化する方向で検討を進める。

と書かれており、通信放送の融合において著作隣接権に言及している。しかし、第27回第28回でも書いたように、通信放送の融合と著作隣接権をごっちゃにすることは、隣接権の拡大につながりかねないので非常に危険である。パブコメでも、絶対に隣接権を拡大しないこと、かえってレコード事業者と放送局の隣接権は大胆に制限することが検討されても良いくらいであるということを書きたいと思っている。

 また、フィルタリングに関して、第16ページに、

② 青少年の健全な創作活動の場の確保
 コンテンツ産業の継続的な発展のためには、教育の場において将来のコンテンツ創作の担い手たる青少年の表現力、創造力の向上を図るとともに創作・発表の場を広く確保することが重要である。
 最近では、子どもがデジタル技術を用いてコンテンツを制作、編集、発信する取組が各地で行われているほか、ケータイ小説など、青少年を中心にユーザー間のコミュニケーションを活用して創作される世界に類を見ない新しいコンテンツが生まれている。
 特に、ネット上のコミュニティサイトの中には青少年が表現能力を高めたり、才能を早くから開花させたりする重要な場になっているものもある。
 しかし、一方でネット上には、過剰な性表現や暴力表現があるコンテンツを含んだサイトやいわゆる出会い系サイトなど、青少年の健全な育成にとってアクセスすることが好ましくないようなサイトも存在している。
 このため、有害な情報の排除など青少年を健全に育成する観点から適正な体制を整えているサイトを明らかにするなど、適切なフィルタリングを進めるための関係事業者による仕組みづくりを促進する。

ということが書かれているが、今の総務省主導の不毛なフィルタリングの議論のことを考えると、やはりここも突っ込みどころとなるだろう。

 もう1点、ネットにおけるプライバシーの話として、第7ページに、

② 新たなサービスにおけるプライバシー保護の在り方の検討
 ネット利用者の行動履歴情報や属性情報等を活用し、利用者に合わせた商品・サービス・情報を提供するサービスが始まっている。
 しかし、これらのサービスの展開に当たっては、利用者に関する情報の取扱いにおけるプライバシー保護に関する問題が懸念されている。
 このため、利用者のプライバシーを保護しつつ利用者に関する情報を安心・安全に収集・蓄積・活用するための方策について検討する。

と書かれている。これは確かに非常に重要な論点なのだが、この問題をまともに検討できる官庁が今の日本にないということが、それに輪をかけた大問題である。この問題についてどの官庁で検討したとしても、無意味な規制案が出てくるだろうことを私は強く懸念している。

 知的財産による競争力強化専門調査会が取りまとめた「オープン・イノベーションに対応した知財戦略の在り方について」(概要本文参考資料)の方は、特許に関することが中心である。

 去年の12月の知的財産による競争力強化専門調査会報告書「知財フロンティアの開拓に向けて(分野別知的財産戦略)」(概要本文別添資料)についても知財本部がどうするつもりなのか良く分からないので、念のためにリンクを貼っておく。

 ここで紹介したことだけでなく、知財政策全般についていろいろ言いたいことがあるので、まとめてパブコメに出したいと思っている。知財本部へのパブコメは、提出次第またこのブログに掲載するつもりである。

 次回は来週となると思うが、ベルギー著作権法紹介の続きを書きたいと思っている。

(表現規制を中心に追いかけておられる方へ:このブログは行きがかり上、表現規制も一緒に取り扱っているが、知財本部に表現規制一般に関する意見を出しても恐らく管轄外なのであまり意味はないと思われる。児童ポルノ法の規制強化についての意見は、議員立法で規制を推進しようとしている自民党・公明党・民主党などの国会議員に出さないと意味がない。出会い系サイト法の管轄は警察庁だが、規制強化法案は既に閣議決定されているので、これも国会議員に言った方が良いだろう(今の政局の混乱の中でこの規制強化法案も廃案になることを私は強く願っている)。また、有害サイト規制については、国会議員と総務省が入り乱れて検討を行っており、情報通信法や携帯電話のフィルタリングについては総務省と、ややこしいことこの上ない。)

(3月14日夜の追記:この次のエントリを書いているときに気づいたのだが、「オープン・イノベーションに対応した知財戦略の在り方について」には、ネット時代の著作物の公正利用の問題として、以下のようなことがあげられているので、上の記載を少しだけ修正し、この資料から、さらに追記で抜き書きをしておく。

 まず、第10ページに、以下のように図書館におけるデータ蓄積・公開と著作権の問題について記載されている。

①図書館に存在する学術情報等へのアクセスの改善
国立国会図書館を始めとする図書館の蔵書には膨大な学術情報等が存在しており、オープン・イノベーションを支える基盤として、これらの情報にインターネット等を通じて国民が容易にアクセスできる環境を整備することが重要である。
しかしながら、蔵書のデジタル化にかかる経費などの問題のほか、現時点では法律的にも次のような課題がある。
・ 蔵書をデジタル化すること自体、元の著作物の「複製」に該当するため、著作権者の承諾なしにこれを行うことは、著作権法上例外的にしか認められていない。
・ 蔵書中の情報をデジタル化しても、これを図書館間や利用者との間でインターネット等を通じてやり取りすることは、原著作権者の公衆送信権を侵害することになるため、個別に権利処理をしなければ行うことができない。
このため、著作権者や出版者に及ぼす影響にも配慮しつつ、図書館が権利者の許諾なしに蔵書のデジタル化を行えるようにする方策や、図書館間でのデータのやり取りや利用者への情報提供の在り方について検討を行うべきである。

 また、第11~12ページには、

①研究のための映像・テキスト情報の利用の円滑化
 高度情報化社会の下、取り扱われる情報量が爆発的に増大する中、自ら望む情報を容易に取り出す等のため、映像・画像解析、テキスト解析等の基盤的技術が重要となっている。これらの技術に係る研究を行うためには、映像、テキスト等に関する膨大な情報を蓄積し、研究目的で利用することが必要となる。
 このような研究のために放送番組に係る情報やウェブ情報を複製・改変することは、著作物の本来の利用とは異なるものであり著作権者の正当な利益を害するおそれは少ないと考えられるにもかかわらず、事前にすべての著作権者から許諾を得ることは事実上困難であるため、実際の研究活動に相当程度萎縮効果が働いていると指摘されている。
このため、著作権者に及ぼす影響にも配慮しつつ、映像・画像解析、テキスト解析等に係る研究のために映像情報やウェブ情報の利用を円滑化するための方策の在り方について検討を行うべきである。

②ネット環境の安全性確保等のためのソフトウェア解析の円滑化
 インターネット環境の安全性を確保するためには、ウィルス対策ソフトウェアの研究開発や暗号ソフトウェアの研究開発を行うことが不可欠である。その際、ウィルスの及ぼす作用の分析等を行うため、既存ソフトウェアの解析(逆コンパイル等)を行うことが必要となる。
 しかしながら、著作権法上、ソフトウェア解析の位置付けが明確でないため、これらの研究開発に萎縮効果が働いているおそれがある。
 このため、ネット環境の安全性確保やソフトウェアに係る研究開発の促進を図るため、著作権者に及ぼす影響にも配慮しつつ、ソフトウェア解析を円滑に行うことができる方策の在り方について検討を行うべきである。

と、研究目的でのデータ収集・プログラム解析と著作権の問題が書かれている。どれも、著作物の本来の利用とは異なり、著作権者の正当な利益を害するおそれの少ない公正利用のパターンであり、是非積極的に権利制限の検討をしてもらいたいものと思う。新たに登場した公正利用のパターンはこれに限られないと思うので、私もこの機会に他にないか考えてみたいと思っている。)

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