« 第78回:コンテンツ流通と著作物の公正利用 | トップページ | 第80回:主要各国の違法コピー対策のまとめ »

2008年3月31日 (月)

第79回:知財本部提出パブコメ

 参考にするなら、前々回のメモの方が分かりやすいのではないかと思うが、パブコメを書き終わり、提出もしたので、ここに載せておく。(内容は、メモをほぼそのまま忠実に文章に起こしただけである。書いていてつくづく思ったが、最近の規制強化の動きは異常としか言いようがない。)

(意見等)

「知的財産推進計画2007」の見直しに関して、下記の通り意見を提出します。

   記

 最終的に国益になるであろうことを考え、各業界の利権や省益を超えて必要となる政策判断をすることこそ知財本部とその事務局が本当になすべきことのはずであるが、知財計画2007を見ても、このような本当に政策的な決定は全くと言って良いほど見られない。知財保護が行きすぎて消費者やユーザーの行動を萎縮させるほどになれば、確実に文化も産業も萎縮するので、知財保護強化が必ず国益につながる訳ではないということを、著作権問題の本質は、ネットにおける既存コンテンツの正規流通が進まないことにあるのではなく、インターネットの登場によって新たに出てきた著作物の公正利用の類型に、今の著作権法が全く対応できておらず、著作物の公正利用まで萎縮させ、文化と産業の発展を阻害していることにあるのだということを知財本部とその事務局には、まずはっきりと認識してもらいたい。特に、最近の知財・情報に関する規制強化の動きは全て間違っていると私は断言する。

 今まで通り、規制強化による天下り利権の強化のことしか念頭にない文化庁、総務省、警察庁などの各利権官庁に踊らされるまま、国としての知財政策の決定を怠り、知財政策の迷走の原因を増やすことしかできないようであれば、今年の知財計画を作るまでもなく、知財本部とその事務局には、自ら解散することを検討してもらいたい。そうでなければ、是非、「デジタル・ネット時代における知財制度専門調査会」他の検討会において、各利権官庁に轡をはめ、その手綱を取って、知財の規制緩和のイニシアティブを取ってもらいたい。

 知財本部において今年度、知財の規制緩和の検討がきちんとなされるということを期待し、本当に決定され、実現されるのであれば、全国民を裨益するであろうこととして、私は以下のことを提案する。

(1)「知的財産推進計画2007」について
 まず、「知的財産推進計画2007」では、ダウンロード違法化問題、私的録音録画補償金問題、保護期間延長問題について、それぞれ第90ページ、第91ページ、第94頁に記載されている。これらの問題は2007年度中に結論が出ず、継続検討とされたものであるが、私は、これらにおける無意味かつ危険な知財の保護強化に全て反対する。
 特に、エスパーでもない限り証明も反証もできない「情を知って」なる無意味かつ危険な要件でダウンロード違法化をごり押ししようとする文化庁を押しとどめるため、知財計画2008では、文化庁の検討を止め、ダウンロード違法化を絶対にしないということを明記して頂きたい。
 また、権利者団体等が単なる既得権益の拡大を狙ってiPod等へ対象範囲を拡大を主張している私的録音録画補償金問題についても、補償金のそもそもの意味を問い直すことなく、今の補償金の矛盾を拡大するだけの私的録音録画補償金の対象拡大を絶対にしないということを明記して頂きたい。
 保護期間延長問題についても、これほど長期間にわたる著作権の保護期間をこれ以上延ばすことを是とするに足る理由は何一つなく、著作権・著作隣接権の保護期間の延長はしないと明記して頂きたい。特に、流通事業者に過ぎないレコード製作者と放送事業者の著作隣接権については、保護期間を短縮することが検討されても良いくらいである。

 コピーワンス問題については、第105~106頁に記載されているが、私はコピーワンスにもダビング10にも反対する。そもそも、この問題は、放送局・権利者にとっては、視聴者の利便性を著しく下げることによって、一旦は広告つきながらも無料で放送したコンテンツの市場価格を不当につり上げるものとして機能し、国内の大手メーカーとっては、B-CASカードの貸与と複雑な暗号システムを全てのテレビ・録画機器に必要とすることによって、中小・海外メーカーに対する参入障壁として機能するB-CASシステムの問題を淵源とするのであって、このB-CASシステムと独禁法の関係を検討するということを知財計画2008では明記して頂きたい。検討の上B-CASシステムが独禁法違反とされるなら、速やかにその排除をして頂きたい。また、無料の地上放送において、逆にコピーワンスやダビング10のような視聴者の利便性を著しく下げる厳格なコピー制御が維持されるのであれば、私的録画補償金に存在理由はなく、これを速やかに廃止するということもここに明記して頂きたい。

(2)「デジタル時代におけるコンテンツ振興のための総合的な方策について」について
 コンテンツ・日本ブランド専門調査会でまとめられたこの報告書も、知財計画2008に盛り込まれるものと思うが、特に、その第6ページに記載されている、放送と通信の法体系の総合的な検討について、著作隣接権に関する記載を削除するか、著作隣接権は拡大しないということを明記して頂きたい。インターネットという流通コストの極めて低い流通手段において、著作隣接権を発生させることは、絶対にやってはならない最低の愚策である。また、この部分において、経団連の提言(http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2008/005/index.html)において記載されている通りに、HP等に関しても通信の秘密を確保し、表現に関する規制は行わないという方針を知財計画2008では明記して頂きたい。総務省の報告書に書かれていることは、憲法違反のデタラメなものである。

 また、第16ページにフィルタリングに関する記載があるが、その政策決定の迷走により、総務省は携帯電話サイト事業者に無意味かつ多大なダメージを与えている。この問題については、知財計画2008に書き込むに当たって、フィルタリングの存在を知り、かつ、フィルタリングの導入が必要だと思っていて、なお未成年にフィルタリングをかけられないとする親に対して、その理由を聞くか、あるいはフィルタリングをかけている親に対して、そのフィルタリングの問題を聞くかして、きちんと本当の問題点を示してから検討するという記載にして頂きたい。フィルタリングで無意味に利権を作ろうとしている総務省と携帯電話事業者他の今の検討については、完全に白紙に戻されるべきである。
 同じ箇所に、出会い系サイト問題についても触れられているが、警察庁は、どんなコミュニケーションサイトでも人は出会えるという誰にでも分かることを無視し、登録の対象としては事実上定義不能の「出会い系サイト事業」を定義可能と偽り、出会い系サイト規制強化法案の閣議決定を行った。憲法上の罪刑法定主義や検閲の禁止にそもそも違反している、この出会い系サイト規制強化法案は、速やかに廃案にすることを私は求める。

 第7ページには、ネット利用者のプライバシー保護の検討についての記載があるが、ネットにおける過度のプライバシー保護は、やはりネットの利用を萎縮させるものであることを考えて、慎重に検討して頂きたい。

(3)「オープン・イノベーションに対応した知財戦略の在り方について」について
 知的財産による競争力強化専門調査会でまとめられたこの報告書に書かれていることとして、図書館におけるデータ蓄積・公開、研究開発のための映像・テキスト情報の利用、ネット環境の安全性確保等のためのソフトウェア解析のための利用など、権利者の利益を害さず、著作物の通常の利用も妨げないような著作物の公正利用の類型についてはきちんとした権利制限による対応が必要である。これらのような公正利用を萎縮させて良いことなど全くなく、これらの類型について著作権法上の権利制限を設けると、知財計画2008には明記して頂きたい。

(4)その他新たに知財計画に盛り込むべきことについて
 まず、ダウンロード違法化問題やプロバイダーにおける違法コピー対策問題における権利者団体の主張、児童ポルノ法規制強化問題・有害サイト規制問題における自称良識派団体の主張は、常に一方的かつ身勝手であり、ネットにおける文化と産業の発展を阻害するばかりか、インターネットの単純なアクセスすら危険なものとする非常識なものばかりである。このような一方的かつ身勝手な規制強化の動きを規制するため、憲法の「表現の自由」に含まれ、国際人権B規約にも含まれている国民の「知る権利」を、あらゆる公開情報に安全に個人的にアクセスする権利として、著作権法・通信法等の関係法規に明文で書き込むことを検討して頂きたい。
 なお、閲覧とダウンロードと所持の区別がつかないインターネットにおいては、例え児童ポルノにせよ、情報の単純所持規制はすることは有害無益かつ危険なもので、憲法及び条約に規定されている「知る権利」を不当に害するものである。このような情報の単純所持規制に私は反対する。積極的あるいは意図的に画像を得た場合であるなどの限定を加えたところで、エスパーでもない限りこのような積極性を証明することも反証することもできないため、このような情報の単純所持規制の危険性は回避不能であり、罪刑法定主義にも反する。架空の表現に関する規制も同時に議論されているが、ごく一部の国内団体等の根拠のない、保護法益すら無視した一方的な主張で、憲法で保障されている表現の自由が規制されることなどあってはならないことである。様々なところで検討されている有害サイト規制についても、その規制は表現に対する過度広汎な規制で違憲なものとしか言いようがなく、各種有害サイト規制についても私は反対する。

 WIPOにおいてチリから権利制限に関する国際的な検討を行うべきとする提案が出され、複数の国がこれを支持するということがネットでは報道されている(http://www.ip-watch.org/weblog/index.php?p=954)が、日本では、このように著作権に関する国際動向が政府から全く国民に知らされていない。WIPO等の国際機関にも、政府から派遣されている者はいると思われるので、著作権に関する真の国際動向について細かなことまで即座に国民へ知らされる仕組みの導入を是非検討して頂きたい。

 最近、アニメ画像1枚の著作権侵害によってウィルス作者が別件逮捕されたが、このようにアニメの画像一枚の著作権侵害で利用者が突然逮捕される可能性があるということは、本来法の主旨に照らしてあってはならないことである。民事手続きに関しては、プロバイダー責任制限法がある程度セーフハーバーの機能を果たしているものと思うが、刑事手続きにおいても利用者保護のための何らかのセーフハーバーの導入を検討してもらいたい。

 また、著作権管理団体が既存の流通手段に対する優越的な地位を濫用し、登録ユーザーや許諾ユーザーに不利な契約を結ばせる等の独禁法違反行為がないかどうかの確認を行い、その結果如何によって、コンテンツ業界における知財権の不当な独占状態の排除と不正な契約慣行の是正とを行うことを検討して頂きたい。

 最後に、知財政策においても、天下り利権が各省庁の政策を歪めていることは間違いなく、知財政策の検討と決定の正常化のため、文化庁から著作権関連団体への、総務省から放送通信関連団体・企業への、警察庁からインターネットホットラインセンター他各種協力団体・自主規制団体への天下りの禁止を知財本部において決定して頂きたい。(これらの省庁は特にひどいので特に名前をあげたが、他の省庁も含めて決定してもらえるなら、それに超したことはない。)

 インターネットにおけるこれ以上の知財保護強化は既に有害無益かつ危険なものであるということをきちんと認識し、真の国民視点に立った知財の規制緩和の検討が知財本部でなされることを期待すると最後に繰り返しておく。

|

« 第78回:コンテンツ流通と著作物の公正利用 | トップページ | 第80回:主要各国の違法コピー対策のまとめ »

知財本部・知財事務局」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/429615/12024350

この記事へのトラックバック一覧です: 第79回:知財本部提出パブコメ:

« 第78回:コンテンツ流通と著作物の公正利用 | トップページ | 第80回:主要各国の違法コピー対策のまとめ »