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2007年12月 8日 (土)

第35回:放送通信融合法制という脅威

 12月6日に総務省から「「通信・放送の総合的な法体系に関する研究会」最終報告書概要)が公表された。

 他のブログでも既に叩かれているのでどうしようかと思ったが、あまりに腹が立ったためここでも叩く。

 概要でも、中間まとめからの変更点として、情報通信ネットワークを用いた「表現の自由」を保障すべきことを明記したと書いており、どうやら総務省の役人も、パブコメの内容から「表現の自由」というキーワードだけは読み取れたようだが、報告書を読むと、この「表現の自由」についてすらキーワード以上のことは何一つ理解していないことが分かる

 他の部分についても、言いたいことは沢山あるのだが、いちいち書いていると切りがないほど報告書は破綻しているので、ここでは、一番問題であると思われるコンテンツ規制のところについてだけ書くことにする。

 この報告書は、規制緩和であるかのように印象操作をしようとして、あまりにあからさまなためにそれに失敗しているのだが、その方向性の要点は、

・私信など特定私人間の通信に関しては通信の秘密が保障されるが、それ以外のホームページなど不特定多数の者によって受信されることを目的とする通信については通信の秘密は保障されない
ホームページなどについても、現行法制に加えて、さらに配慮すべき事項を規定した法律を整備する
コンテンツ削除認定のための半公的機関(当然総務省の天下り先)を作る
現在の地上テレビ放送に対する規律は維持される。
・地上テレビ放送以外のテレビ放送については、放送規制が緩和される。
放送類似のコンテンツ配信サービスについては、緩和された放送規制が適用される

ということである。

 要するに、放送以外は全て規制強化となるのであり、それだけでも全く賛成できないが、そもそも「通信の秘密」を勝手に特定私人間のみに限られるなどと解釈していることは憲法違反も良いところである。

 通信の秘密が保障するものは、通信の内容にとどまらず、発信者・受信者の情報など通信にかかわるあらゆる事実に及ぶのであり、このような通信の秘密が表現の自由の前提ともなっていることは常識で考えてもすぐに分かることである。

 また、総務省の天下り先の半公的機関で、網羅的かつ一般的にコンテンツの内容を審査して削除認定をすることなど、検閲以外の何ものでもなく、やはり検閲の禁止を規定している憲法に明らかに抵触する。(自治体による有害図書指定が合憲とされた最高裁判例自体にも個人的には異論があるが、総務省案は明らかにそんなレベルを超えた一般的かつ網羅的な大検閲機関の創設である。)

 そもそも、ホームページなど不特定多数に公開されるコンテンツに関しては、刑法の適用事例もあり、プロバイダー責任制限法もあり、各事業者がそれぞれの規約等に従ってで削除を行っていて何ら問題が生じていないところである。

 表現の自由を確保するなどといくら書いたところで、通信の秘密もなく、総務省の天下り先の半公的機関によりコンテンツが検閲される中で、どう表現の自由が担保されるのかと、総務省の役人には聞きたいが、連中の知能レベルではその程度のことも理解できないのだろう。

 また、放送に対する規制も、電波の有限稀少性からよって来るところが大きいのであって、社会的影響力のみをもって正当化することは不可能であることを、この報告書は全く認識していない。

 インターネットについて問題をねつ造し、憲法の解釈を勝手にねじ曲げ、国民の精神的自由を侵してまで、天下り利権の確保に走る国賊官僚の姿がここにある。(このような歪んだ放送優遇政策が総務省から出される背景には、総務省の役人の放送局への天下りがあると見て間違いない。少し古いが、坂本衛氏のネット記事には放送局への天下りのことが良くまとめられている。)

 パブコメに出された意見を読んだ上で、このような報告書をまとめて来たということは、国民に対する総務省の宣戦布告といって良い。総務省に良識だの常識だのを期待した私が馬鹿だった。知財政策を超える話ではあるが仕方ない、このブログでもこの問題について引き続き追いかけて行きたいと思うし、国民的な議論になることを期待したい。

 なお、概要でも、将来的課題として、著作権法などを意味もなく「包括的なユビキタスネット法制」にすると言っているが、何をしたいのか理解不能である。総務省の役人の頭には蛆でも湧いているとしか思われない。

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総務省の研究会がとりまとめた最終報告書のコンテンツ規制部分と他の部分を読み比べると、いかに思考停止に陥っているかが分かります。いい加減、コンテンツ規制の「舶来信仰」から脱却するべきです。... [続きを読む]

受信: 2007年12月10日 (月) 00時12分

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