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2007年12月11日 (火)

第36回:著作権法の「技術的保護手段」と、不正競争防止法の「技術的制限手段」の回避規制(DVDやCCCDのリッピングはどう考えられるか)

 総務省のネットコンテンツ規制は、警察庁のインターネット・ホットラインセンターから、主導権を取り返したいという総務省の思惑があるのではないかという話を聞いた。
 私も不勉強で、人に言われるまで、このセンターの存在自体知らなかったが、このように有害無益な半官検閲センター(当然警察庁の天下り先だろう)は即刻潰されてしかるべきである。(単に通報だけなら、警察のメールアドレスでも一つ空けておけば済む話である。)してみると、警察庁と総務省との権限争いの結果、ロクでもない検閲機関が二つできるという最低最悪の可能性すら考えておかないといけない。

 とにかく自らの利権拡張を最優先事項として、国民の生活と安全を踏みにじることなど屁とも思わない官僚達が乗じる隙を与えてはならない。表現の自由、通信の秘密、検閲の禁止等々は、国民の生活と安全を支える最低限のライフラインである。これを逆転して、情報統制しなければ国民の生活と安全は守られないなどという、国民の判断力を見くびる傲慢な役人の論理に対しては、私は一国民として断固否と言う。

 世の中胸くその悪くなる話ばかりだが、今回は日本におけるDRM回避規制の話の続きとして、現行規定のまとめを書いておきたい。

(1)概要
 まず、著作権法では、著作権等を侵害する行為の防止又は抑止をする手段として技術的保護手段が規定されている(第2条第1項第20号)。
 また、私的使用を目的とする複製であっても、技術的保護手段の回避により可能となった複製を行うことは権利制限の例外とされる(第30条第1項第2号)。
 さらに、技術的保護手段の回避のための専用機能を有する装置・プログラムを公衆に譲渡等を行い、又は、公衆の求めに応じて業として技術的保護手段の回避を行った場合には、刑事罰が科せられる(第120条の2)。
 現行著作権法では、前回の定義に従うと、コピーコントロールは技術的保護手段に該当するが、アクセスコントロールは該当しない。

 一方、不正競争防止法では、「営業上用いられている技術的制限手段」の効果を妨げる機能を有する専用装置・プログラムの譲渡等を「不正競争」と規定し(第2条第1項第10号、第11号)、同行為に対する差止請求や損害賠償請求など民事的救済を定めている(第3条、第4条)。
 不正競争防止法では、アクセスコントロール、コピーコントロールのいずれも「技術的制限手段」の対象となる。なお、この「不正競争」については、民事的救済は可能であるが、刑事罰の適用はない。

(2)著作権法の条文
 さらに細かく見ていくと、現行の著作権法における「技術的保護手段」の「回避」に係る規制の範囲については、次の要件により対象が限定されている。
① 「技術的保護手段」の定義(著作権法第2条第1項第20号)
・「電磁的方法」により、
・著作権等を侵害する行為の防止又は抑止をする手段であって、
機器が特定の反応をする信号を、
音若しくは影像とともに、記録媒体に記録し、又は送信する方式
② 私的複製ではなく違法となる複製
(著作権法第30条第1項第2号)
技術的保護手段を回避(信号の除去又は改変)して行う複製
③ 罰則がかかる行為(著作権法第120条の2)
回避を行うことを専らその機能とする
・装置・プログラムの
譲渡、貸与、製造、輸入、所持、公衆への提供、公衆送信、送信可能化

 SCMS、CGMS、マクロビジョン方式といった、「機器が特定の反応をする信号」を付加する方式のコピーコントロールのみが著作権法でいうところの「技術的保護手段」に当たり、CSS、CAS等のアクセスコントロール機能のみの技術については著作権法の埒外であることに注意が必要である。
 
 したがって、著作権法でいうところの技術的保護手段がかかっている訳ではないCCCDのリッピングは違法ではない。また、CCCDのリッピングを可能とするような装置・プログラムの譲渡等についても無論違法ではない。

 しかし、DVDに関しては少し事情が違う。DVDのコピーを主に防いでいるのは、前に書いた通り、アクセスコントロールであるCSSだが、同時にDVDにはCGMSでコピーネバーとする信号も書き込まれている。
 そのため、DVDをPCでリッピングする行為はCGMSの仕組みとファイルアクセスが無関係であるために、技術的にはコピーコントロール信号の除去又は改変には当たらないのだが、本当に訴えられて裁判になった場合には、実質的に信号を除去又は改変しているに等しいといった認定により、違法とされる可能性も否定できない。複製禁止のDVDをCSSを解除してPCでリッピングする行為については、今のところ、著作権法上グレーと言わざるを得ない。ただし、刑罰のかかる話ではないので、単に違法である可能性が多少あるというに過ぎない。

(3)不正競争防止法の条文
 次に、現行の不正競争防止法における「技術的制限手段」の「回避」に係る規制の範囲については、次の要件により対象が限定されている。
① 「技術的制限手段」の定義(不正競争防止法第2条第7項)
・「電磁的方法」により、
・影像若しくは音の視聴若しくはプログラムの実行又は影像、音若しくはプログラムの記録を制限する手段であって、
視聴等機器が特定の反応をする信号影像、音若しくはプログラムとともに記録媒体に記録し、若しくは送信する方式又は視聴等機器が特定の変換を必要とするよう影像、音若しくはプログラムを変換して記録媒体に記録し、若しくは送信する方式
②不正競争(違法)行為1(不正競争防止法第2条第1項第10号、ただし11号該当は除外)
営業上用いられている
・技術的制限手段により制限されている影像若しくは音の視聴若しくはプログラムの実行又は影像、音若しくはプログラムの記録を当該技術的制限手段の効果を妨げることにより可能とする機能のみを有する装置若しくは当該機能のみを有するプログラムを記録した記録媒体若しくは記憶した機器
譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、若しくは輸入し、又は当該機能のみを有するプログラムを電気通信回線を通じて提供する行為
③不正競争(違法)行為2(不正競争防止法第2条第1項第11号)
他人が特定の者以外の者に影像若しくは音の視聴若しくはプログラムの実行又は影像、音若しくはプログラムの記録をさせないため
・営業上用いている技術的制限手段により制限されている影像若しくは音の視聴若しくはプログラムの実行又は影像、音若しくはプログラムの記録を当該技術的制限手段の効果を妨げることにより可能とする機能のみを有する装置若しくは当該機能のみを有するプログラムを記録した記録媒体若しくは記憶した機器
・当該特定の者以外の者に譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、若しくは輸入し、又は当該機能のみを有するプログラムを電気通信回線を通じて提供する行為

 不正競争防止法の「技術的制限手段」においては、アクセスコントロールを排除していないため、「技術的制限手段」にはほとんど全てのコピーコントロール・アクセスコントロールが当てはまる。不正競争防止法は著作権法ではないため、技術的制限手段により保護されているものが著作物である必要はなく、ユーザーの複製行為そのものも問題にならず、アクセスコントロール・コピーコントロール回避機器・プログラムの譲渡等のみが規制の対象となることに注意が必要である。

 したがって、CCCDやDVDのリッピング行為自体は不正競争防止法で違法とされるものではない。さらに、CCCDにかけられているコピープロテクトは、技術的制限手段にも当たらないので、CCCDのリッピングを可能とするような回避専用機器・プログラムの譲渡等も違法にならない。
 しかし、例えばDVDのリッピングを可能とする機器・ソフトの譲渡、販売、輸入等は、不正競争法上明らかに違法であり、このような行為は、これにより営業上の利益を侵害された者から、損害賠償や差し止めの訴えを受けるリスクがある。ただし、DVDのリッピングソフト(機器)に関しては、ユーザーを直接訴えることが不可能である所為か、DVDのリッピングによる実害を証明できない所為か、販売店などへの警告だけで済んでいる所為かはよく分からないが、裁判になったという話を聞かないが、DVDのリッピングソフト・機器の販売が違法であることには違いないので、この不正競争防止法がDVDコピーをアングラなものとするのに一役買っているというのは正しいだろう。

 結局、上で書いたことをまとめておくと、CCCDのリッピング(コピー)は私的複製である限り何の問題もなく、またCCCDのプロテクトの解除機器・ソフトについても何ら規制がかかっているものではない、DVDのリッピング(コピー)は著作権法で私的複製の例外に該当しない可能性が少しあり、DVDのプロテクトであるCSSの解除機器・ソフトの譲渡や販売などは不正競争防止法で訴えられる可能性があるということである。

 今回は、今後の話をしていく上でどうしても前提となる、実にややこしい現行のDRM規制について自分なりのまとめしておきたかっただけで、特に目新しいことは書いていない。

 次は番外として、B-CASカードを使用したコピーワンス解除機器(friio:フリーオ)は取り締まれるかということを書いた後、途中また別な話を挟むかも知れないが、次々回くらいにユーザーから見てDRM規制はどうあるべきかという話をできればと思っている。

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コメント

拝啓主様、今晩は。意見を聞かせて欲しいです、実は現在
ヤフー知恵袋でDVDコピーに関しての質問に私が
「アクセスコントロールの回避は合法ですよ」と回答した処
他の回答者(怪答者?)から「著作権法には違反しなくても
不正競争防止法に違反しますよ!」と指摘され、それに対して
私が「違反しませんよ、日経PC21にアクセスコントロールの
回避は私的利用に於いては不正競争防止法の対象外だ」
とコメントが掲載されていますよ、と反論したところ
「日経は法律では無い、私は弁護士のホムペを見た上で指摘
している。相談料払って勉強してこい!」と批判されました。

彼の云ってる事と日経PC21のコメント、果たしてどちらが正しいんでしょうか?宜しくご回答下さいませ。敬具

投稿: cassis_ne_jp | 2010年11月 5日 (金) 01時01分

DRM回避に関する法規制についてはさまざまな解釈があり得、何が正しいかは一概には決められないと私は思っています。私の考え自体はこのエントリで書いたことを良くお読み頂ければと思いますが、これが唯一の正解だとも思っていません。cassis_ne_jp様も是非、直接条文や教科書などに当たり、ご自分で考えをおまとめ頂ければと思います。

投稿: 兎園 | 2010年11月 5日 (金) 01時33分

回答有難う御座いました、「さまざまな解釈が有り得」
と云う事は弁護士さんの間でも意見が分かれているって
解釈で宜しいでしょうか?だとすれば私も「弁護士さんの間でも解釈が分かれているので貴方が見たホムペが唯一絶対では有りませんよ」って反論できるのですが・・・私も条文を
何度も読み返して私的利用では問題無いと思ったのですが…
因みに彼は不正競争防止法には罰則が無いので逮捕されたり
罰金を科せられたりする事も無いので違法行為じゃないと
皆さん思ってるのでしょうとも云ってました(それも弁護士のホムペに書いてあったとの事ですが…)

投稿: cassis_ne_jp | 2010年11月 5日 (金) 03時48分

cassis_ne_jp様

弁護士さんが何と言うかはそれぞれの弁護士さんに聞いて欲しいとしか言えません。ただ、弁護士さんは法律の専門家として頼りにすべきではありますが、弁護士すなわち法律ではありませんし、こうした問題で本当に重要なことは法律の条文と(判例・学説含め)その解釈がどうなっているかということでしょう。

DVDのリッピングについて私的利用ならば著作権法上違法ではないという解釈も成立し得るでしょうが、今のところ何が正しいとはっきり言える状況にないというところではないかと思います。

また、個人的にはヤフー知恵袋での論争にあまり意味があるとは思えません。もしこうした話に興味をお持ちで、勉強する余力もあるということでしたら、今現在政府で規制強化が検討されているということもあり、是非文化庁や経産省などの動きに注意しつつ、パブコメを出すなど、より建設的な方向に力を割かれることを私としてはお勧めします。

投稿: 兎園 | 2010年11月 5日 (金) 21時56分

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