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2007年11月 1日 (木)

第15回:著作権国際動向その4:ドイツ(補償金制度改革)

 前回は少し雑に書きすぎたが、著作権情報センターHPのドイツ著作権法を見てもらえれば分かるように、ドイツでは、私的複製の範囲として研究目的の複製や情報収集、絶版著作物に対する複製が含まれている。ダウンロード違法化などという馬鹿げた法改正を行う前に、このような私的複製の範囲の明確化を行う方が先ではないかとつくづく私は思う。

(1)現在のドイツの補償金制度
 さて、ドイツの補償金制度についてだが、そもそもドイツでは、現在、ほとんどあらゆる複製機器・媒体(パソコン、スキャナー、コピー機含む。)に著作権法上の補償金を課せる法律となっている。また、上のリンク先を見てもらっても分かるように法律にも料率一覧表が載っているが、最終的に補償金が課されるかどうかとその金額は裁判所で決まるようになっているため、ドイツでは補償金に関しても権利者団体対メーカーの泥沼の訴訟合戦が行われている(ネットの紹介記事1記事2。)。
 記事を読むと、プリンターに課すことは裁判で否決されたようだが、実際、PCやスキャナー、コピー機にまで補償金を課すのはどうかと思う。(前にも書いたように、この制度欧州では外資メーカーいじめに使われているところもあるので、それがドイツの政策を歪めているところもあろう。)
 法律の料率表を見ても、何がどうしてそう決まっているのかよく分からない。特にコピー機の補償金額が毎分何枚の印刷が出来るかで決まるなど理解不能である。

(2)今回の法改正の概要
 欧州でも消費者やメーカーに制度がそもそも論から反対されているため、ドイツも多少はこの制度を何とかしなければならないと考えているようで、ドイツでも今回補償金制度をいじっている。
 やはり前回引用した記事から、法改正概要の該当部分を、ちょっと長いが以下に引用しよう。(翻訳は拙訳。赤字強調は私が付けたもの)

「2. Pauschalvergutung als gerechter Ausgleich fur die Privatkopie

Als Ausgleich fur die erlaubte Privatkopie bekommt der Urheber eine pauschale Vergutung. Sie wird auf Gerate und Speichermedien erhoben und uber die Verwertungsgesellschaften an die Urheber ausgeschuttet. Privatkopie und Pauschalvergutung gehoren also untrennbar zusammen. Dabei bleibt es auch. Allerdings andert der Zweite Korb die Methode zur Bestimmung der Vergutung. Bisher waren die Vergutungssatze in einer Anlage zum Urheberrechtsgesetz gesetzlich festgelegt. Diese Liste wurde zuletzt 1985 geandert und ist veraltet. Das hat zu zahlreichen Rechtsstreitigkeiten uber die Vergutungspflichtigkeit neuer Gerate gefuhrt, die bis heute die Gerichte beschaftigen. Eine gesetzliche Anpassung der Vergutungssatze ware hier keine ausreichende Losung. Angesichts der rasanten technischen Entwicklung im digitalen Zeitalter musste die Liste schon nach kurzer Zeit erneut geandert werden. Nach dem neuen Recht sollen daher die Beteiligten selbst, also die Verwertungsgesellschaften und die Verbande der Gerate- und Speichermedienhersteller, die Vergutung miteinander aushandeln. Fur den Streitfall sind beschleunigte Schlichtungs- und Entscheidungsmechanismen vorgesehen. Mit diesem marktwirtschaftlichen Modell soll flexibler auf neue technische Entwicklungen reagiert werden konnen. Auserdem sollen Einigungen uber die Vergutungszahlungen zugiger zustande kommen.

Vergutungspflichtig sind in Zukunft alle Gerate und Speichermedien, deren Typ zur Vornahme von zulassigen Vervielfaltigungen benutzt wird. Keine Vergutungspflicht besteht fur Gerate, in denen zwar ein digitaler, theoretisch fur Vervielfaltigungen nutzbarer Speicherchip eingebaut ist, dieser tatsachlich aber ganz anderen Funktionen dient.

Der Gesetzgeber gibt den Beteiligten nur noch einen verbindlichen Rahmen fur die Vergutungshohe vor. Sie soll sich nach dem tatsachlichen Ausmas der Nutzung bemessen, in dem Gerate und Speichermedien typischer Weise fur erlaubte Vervielfaltigungen genutzt werden. Dies ist durch empirische Marktuntersuchungen zu ermitteln. Soweit nicht mehr privat kopiert werden kann, weil etwa Kopierschutz oder Digital-Rights-Management-Systeme (DRM) eingesetzt werden, gibt es auch keine pauschale Vergutung. Der Verbraucher wird also nicht doppelt belastet. Zugleich werden auch die Interessen der Hersteller der Gerate und Speichermedien berucksichtigt. Die ursprunglich vorgesehene 5 %-Obergrenze vom Verkaufspreis des Gerates ist in den Beratungen im Bundestag zwar gestrichen worden. Die wirtschaftlichen Belange der Geratehersteller werden gleichwohl hinreichend berucksichtigt. Es bleibt dabei, dass deren berechtigte Interessen nicht unzumutbar beeintrachtigt werden durfen und die Vergutung in einem wirtschaftlich angemessenen Verhaltnis zum Preisniveau des Gerats oder Speichermediums stehen muss.

2.私的複製に対する公正な補償としての補償金

 許された私的複製に対する補償として、権利者は補償金を受け取る。これは、機器と媒体に課され、徴収団体から権利者に分配される。私的複製と補償金は分かちがたく結びついているために、これは残った。しかしながら、この第2法改正は、補償金の決定方法を変えている。今までは補償金額は著作権法の別表として法的に規定されていた。このリストは1985年に変えられたきりで時代遅れのものとなっている。新たな機器の補償の有無について、多くの法律的な争いをもたらし、今日まで裁判が行われている。法的に補償金額を合わせることは十分な回答とはならない。デジタル時代の極めて速い技術開発から、極めて短い時間で更新し続けなければならなくなるだろう。したがって、新しい法律では、関係者が自ら、すなわち徴収団体と機器媒体のメーカー団体が、互いに補償金について交渉しなければならないとしている。係争となる場合のために、速度を速める調停・決定機構が定められている。このように市場経済モデルを取り入れることで、新たな技術開発に柔軟に対応することが出来るようになる。補償金算定に関する合意はそこから迅速に成立するであろう。

 将来的には、許されている複製に使われる全ての機器と媒体について補償金が支払われなければならない。しかし、理論的にそのようなデジタル複製利用が可能な半導体メモリが組み込まれているが、本当に他の様々な用途に多く使われているような機器については、補償金支払いの義務はない。

 立法者は、さらに、補償金額決定のために義務的な枠組みを提供する。許されている複製に使われる典型的な機器・媒体の本当の使用の程度からそれは見積もられなくてはならない。これは経験的な市場調査から導き出される。したがって、例えばコピー制御あるいはDRMシステムによって導入され、私的複製が不可能となれば、一括補償も無くなる。消費者に対する二重課金も無くなる。同じく、機器と媒体のメーカーの利益も考慮されることになる。当初予定されていた機器の販売価格の5%の上限は、下院で取り除かれたが、機器メーカーの経済的な利害も十分に考慮されることとなっている。よって、その合法的な利益が不当に害されることはなく、補償金は、機器あるいは媒体の価格体から経済的に見積もられた比率となる。」

 これらの理屈は、著作権神授説を信奉する著作権原理主義者の立場からすれば極めて正しいが、現実的には、いかに最初に互いに交渉することと法律的に定めたところで、どうにもならないことは明白である。調査にしても、公平な調査がなされる保証はどこにもなく、また、そもそもの根拠が問題になっているときに調査から何を決められるというのか。ドイツでもメーカーと権利者団体は補償金についてオールオアナッシングの闘争を繰り広げているので、何一つ最初の交渉の場では決まらないに違いない。立法で明確に決まっていないことは裁判で決めるしかないため、ほとんどあらゆる機器と媒体について争いが最高裁まで持ち込まれる泥沼の法廷闘争となるだろう
 さらに注目するべきは、5%の上限規制が議会における審議で無くなったことである。補償金の算定にそもそも合理的な基準があり得ない以上、ユーザーにとって本当に重要なことは、無制限な補償金の拡大を抑止する、機器・媒体の範囲に対する規制あるいはこのような補償金額の総量規制である。このような規制がなければ、いかに法律でお題目を並べたところで、補償金が多ければ多いほど良いとする権利者団体の要求に際限がある訳はなく、単に権利者団体の利益を最大化するところに補償金額が落ちるだけのことである。

 ダウンロード違法化もそうだが、最初に補償金制度を発明したのもドイツであり、このような著作権法の改悪を次々と行うドイツ当局の罪は重い。さらに、これを一方的に国際動向ととらえる者によって、世界でこれにならう法改正がなされて来たことを考え合わせると、そのうち、世界の著作権法に100年の禍根を残した大罪国家として、ドイツは知財法の歴史により断罪されることになろう。

 さらに、法案から補償金に関する新しい規定の最初の部分も抜粋しておこう。(翻訳は拙訳。)

「§54 Vergutungspflicht
(1)Ist nach der Art eines Werks zu erwarten, dass es nach §53 Abs.1 bis 3 vervielfaltigt wird, so hat der Ueheber des Werks gegen den Hershteller von Geraten und von Speichermedien, deren Typ allein oder in Verbindung mit anderen Geraten, Speichermedien oder Zubehor zur Vornahme solcher Vervielfaltigungen benutzt wird, Anspruch auf Zahlung einer angemessenen Vergutung.

(2)Der Anspruch nach Absatz 1 entfallt, soweit nach den Umstanden erwartet werden kann, dass die Gerate oder Speichermedien im Geltungsbereich dieses Gesetzes nicht zu Vervielfaltigungen benutzt weden.

§54a Vergutungshohe
(1)Massgebend fur die Vergutungshohe ist, in welchem Mass die Gerate und Speichermedien als Typen tatsachlichen fur Vervielfaltigungen nach §53 Abs. 1 bis 3 genutzt weden. Dabei ist zu berucksichtigen, inwieweit technische Schutzmassnahmen nach ?95a auf die betreffenden Werke angewendet werden.

(2)Die Vergutung fur Gerate ist so zu gestalten, dass sie auch mit Blick auf die Vergutungspflicht fur diesen Geraten enthaltene Speichermedien oder andere, mit diesen funktionell zusammenwirkende Gerate oder Speichermedien ingesamt angemessen ist.

(3)Bei der Bestimmung der Vergutungshohe sind die nutzungsrevanten Eigenschaften der Gerate und Speichermedien, insbesondere die Leistungsfahigkeit von Geraten sowie die Speicherkapazitat und Mehrfachbeschreibbarkeit von Speichermedien, zu berucksichtigen.

(4)Die Vergutung darf Hersteller von Geraten und Speichermedien nicht umzumutbar beeintrachtigen; sie muss in einem wirtschaftlich angemessenen Verhaltnis zum Preisniveau des Gerats oder des Speichermediums stehen.
...

第54条 補償義務
(1)作品の性質から、第53条の(1)から(3)に従って複製が行われると見込まれるとき、その作者は、それだけでか、又は、他の機器、媒体若しくは付属品と組み合わさった型として、そのような複製に用いられる機器と媒体のメーカーに対し、相応の補償の支払いを要求することが出来る。

(2)状況から、それらの機器あるいは媒体が、条文の適用範囲にある複製に用いられないと考えられるときには、(1)の要求はなし得ない。

第54条a 補償金額
(1)補償金額の基準は、それらの型の機器と媒体が、どの程度第53条の(1)から(3)の複製に使われているかである。したがって、問題の作品にどれほど第95条aの技術的保護手段が用いられているかを考慮しなければならない。

(2)機器への補償は、その機器に組み込まれた媒体等への補償についても考慮し、合わせて機能とする機器あるいは媒体に対しては、全体として適当なものとなるように決められる。

(3)補償金額の決定にあたっては、機器と媒体の利用に関する性質、特に、機器の性能、媒体の容量や書き換え回数が考慮される。

(4)補償は機器と媒体のメーカーを不当に害するものであってはならず、機器あるいは媒体の価格に対して適当な率でなければならない。」

 理念は大変良く分かるのだが、このように法律にいくら理念を書いても、実際に決まらないのでは意味がない。どんなに馬鹿げた数字があがっていたにせよ、法的安定性という点で補償金額を別表で決めていた方がまだましであったろう。

 ドイツの権利者団体が、とにかく何よりも補償金が減ることを嫌い、5%規制に大反対して補償金を青天井にしておくことにこだわったことなど、どこの国でも、利権団体は一度手に入れた利権を絶対手放さず、どこまでも拡大することを要求するということの良い証拠である。確かに5%の数字にも意味がないことは確かだが、権利者団体がどこまでも図々しく増額を要求してくる以上、消費者にとってセーフハーバーとなる規定は絶対に必要である。

 日本でも、権利者団体と、これと癒着した文化庁はドイツ型へ移行する法改正をねらっているようだが、権利者団体という一部の利権団体のみを利して、社会全体で見ると明らかにマイナスなるとしか思われない法改正には、私は一国民として断固反対する。(今、日本では分離型専用機器・媒体のみに課金するとしていることが、非常に大きなセーフハーバーとして効いている。この制限が無くなった途端に、権利者団体は補償金の野放図な拡大を要求してくることは間違いなく、この部分は消費者・ユーザー・国民にとって絶対守らなければならない砦である。)

 次はフランスにおける権利制限について書こう。

 ついでに、ここに、文化庁のものよりはるかに良くまとまっていて分かりやすく、多くの国について書かれている、オランダの補償金管理協会(Stichting de Thuiskopie)が出している私的録音録画補償金国際調査(英語)にもリンクを張っておくので、興味のある方はご覧頂ければと思う。

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