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2007年11月 9日 (金)

第20回:文化審議会著作権分科会私的録音録画小委員会提出パブコメその2

 次に、基本的視点と30条の範囲論の部分について書いたことは以下の通り。

(10)「97ページ~、第7章第1節 私的録音録画の検討にあたっての基本的視点について」に対する意見:
 文化審議会著作権分科会の過去の検討の結果(平成18年1月の報告書の52~55ページ)について、恣意的な省略をすることなく、きちんと抜粋を行うべきである。
 全て指摘することはしないが、特に、以下の部分の省略などに強い恣意性が感じられるので、特に注意を促しておく。
「ア 著作権分科会が示した各検討事項について
②現在対象となっていない,パソコン内蔵・外付けのハードディスクドライブ,データ用CD-R/RW等のいわゆる汎用機器・記録媒体の取扱いに関して,実態を踏まえて検討する。 (中略)
・この点,汎用機器等については,以下のような理由から,補償金の対象とすべきでないとする意見が多数であった。
(i)録音や録画を行わない購入者からも強制的に一律に課金することになり,不適切な制度となる。また,補償金返還制度も機能しづらい。
(ⅱ)課金対象を無制限に拡大することにつながる。
(ⅲ)実態として,他人の著作物の録音・録画が利用の相当割合を占めるとは考えにくい。
(ⅳ)現行の補償金制度の問題点を増幅させる結果を招く。

③現行の対象機器・記録媒体の政令による個別指定という方式に関して,法技術的観点等から見直しが可能かどうか検討する。
(中略)
・しかし,法的安定性,明確性の観点から,現行の制度の下では,現行の方式を変更すべきではない。
(中略)

イ 私的録音録画補償金制度の課題について
(ア)私的録音・録画についての抜本的な見直し
(中略)
・なお,検討に当たっては,補償金制度に対し,本小委員会において指摘された点や以下の点等について十分留意すべきである。
(中略)
(ⅱ)また「ユーザー」の視点を重視し,提案されるべき将来あるべき姿は,ユーザーにとって利用しづらいものとならず,かつ納得のいく価格構造になるよう留意する必要があるとともに,ユーザーのプライバシー保護にも十分留意しなければならない。(後略) 」

(11)「100ページ~、第7章第2節 著作権法第30条の見直しについて」に対する意見:
 立法によって、違法録音録画物や違法サイトからの私的録音録画を30条の範囲から明確に除外することに反対する
 適法配信事業者から入手した著作物からの私的録音録画を30条の範囲から除外することにも反対する。

 これらの結論は、以下に指摘するように、整合性の取れていない不合理な整理に基づく結論であり、全く支持することが出来ない。また、以下で指摘する部分の記載は、最終報告においては、全て削除あるいは修正されるべきである。

・101ページからの私的録音録画の実態について、違法録音録画物や違法サイトからの私的録音録画について、「正規商品等の流通や適法ネット配信等を阻害している実態が報告された」と記載されているが、(3)で書いたようにこの調査報告は全く取るに足らない。同じく、他人から借りた音楽CDからの私的録音の実態報告についても、果たして過去の調査と比較できるのかどうか極めて疑わしい。適法配信についても、インディーズによる無料配信やプロモのための無料配信、あるいは、コピーフリー・黙示の許諾等により配信されていると考えられるもののことを全く考慮に入れておらず、真の実態を把握しているとは言い難い。
 また、レンタルCDについても、平成19年の第3回私的録音録画小委員会(議事録http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/bunka/gijiroku/020/07051108.htmを参照のこと。)において委員から明確に指摘されていること、すなわち、レンタル事業者が、「私的録音補償金制度が導入された現在、各権利者はユーザー及びレンタル店双方からコピーに関する代償を二重に受け取っていることになるため、CDレンタル使用料の早急な見直しが必要です。CDレンタルに関する使用料はユーザーのコピーの代償という観点から決められた経緯からしますと、平成5年に私的録音補償金制度が導入され、デジタル式のハードやソフトを購入するユーザーが各権利者に対してコピーに関する補償金を支払うシステムが構築されたことにより、各権利者はユーザー及びレンタル店の双方からそのコピーに関する補償金を受け取っていることになります。よってCDV-Jでは早急な使用料の見直しが必要であると考えております」という理屈によって権利者団体と交渉した経緯があるということ、及び、需要拡大協力金という形で実質ビジネス的な補償金の上積みと考えられる事実上の使用料値上げを行っていることが恣意的に中間整理から落とされている。これらのことは最終報告にははっきりと明記されるべきである。

・104ページからの違法録音録画物、違法サイトからの私的録音録画を30条の範囲から除外するという話については、そもそも前提となる利用実態から来る損害について疑問があるが、それ以前に、①そもそも著作権という私法が私的領域に踏み込むこと自体がおかしい、②家庭内の複製行為を取り締まることはほとんどできず、このような法改正には実効性がない、③通常の録音録画物について違法合法を区別する手がかりがない、特に、インターネット利用では、自動的になされるコピー(「一時的固定」か「複製」かもよく分からない)があるなど、違法・合法を外形的に区別できないため、ダウンロードが違法と言われても一般ユーザーにはどうしたら良いのかさっぱり分からず、このような法改正は社会的混乱しかもたらさない、④情を知ってという条件も、司法判断でどう倒されるか分からず、場合によってはインターネットへのアクセスそのものに影響を及ぼし兼ねないこのような法改正は極めて危険である、⑤そもそも違法流通は送信可能化権による対応が可能である上、この送信可能化権との関係でダウンロードによる損害額がどう算定されるのかもよく分からない、⑥自らが作製した著作物を離れてサイトそのものを違法と著作権者団体が認定することは、明らかに権利の乱用であり、到底認められるべきことではない、といった基本的なことがまるで考慮されていない。
 104~106ページの整理は、技術の発展の真の意味を全く理解しておらず、一般国民の行動原理とモラルとも乖離した、役人の独善的な妄想の垂れ流しにしかなっていない。
 したがって、違法ダウンロードについては、拙速な法改正は行わず、解釈論による対応なども検討しつつ、様々な司法判断や状況が積み重なってきたときに改めて立法の是非を判断するべきである。
 また、付言すれば、保護強化で先端を行くドイツですら、違法複製物を越えて、サイトそのものの違法性を勝手に著作権団体に認定させた上で、そこからのユーザーの私的な複製を違法とすることまではしていない。違法複製物があるから違法サイトなのであって、違法サイトがあるから違法複製物がある訳ではないという単純なことが何故分からないのか。文化庁の役人の知能レベルを私は疑う。丁寧に注までつけられているが「違法サイト」という誤解を招く語は、最終報告からは全て削除されるべきである。

・106ページに記載されている、他人から借りた音楽CDからの私的録音について、これも単なるモラルの問題になるので30条の範囲から外すことには反対であるが、このような私的複製の30条の範囲からの除外は、借りたCDから複製をしてはいけないということが少なくとも個人レベルで外形的に区別がつき、単純で普通の者にもよく分かるだけ、ダウンロードの違法化よりはるかにましである。このような整合性のない整理をする者の良識を私は疑う。

・106ページからの整理について、まず、30条の制定経緯において、権利者の権利行使ができないことが主たる理由であるかのように書かれているが、それ以外にも、そもそも著作権の様な私法が私的領域に踏み込むべきでないという理由、あるいは、30条には、私的領域における文化活動を守るという意味などもあるのであり、より詳細に立法主旨については調べ、記載されるべきである。(この点については、中山信弘、作花文雄、斉藤博、渋谷達紀各先生方の著作権法に関する教科書の私的複製に関する趣旨の記載を参照のこと。)

・108ページの整理では、2重取りの回避のために、適法配信から入手した録音録画物からの私的録音録画を30条の範囲から外すべきとしているが、インディーズによる無料の音楽配信、プロモーションのための無料配信、値段に差をつけたDRMなしの音楽配信、コピーフリーや黙示の許諾により提供されている配信など様々な形態のことを考慮に入れておらず、30条の範囲から除外するのに十分な検討がなされていない。よって、除外するのが適当であるという意見が大勢とすることは適当ではない。
 したがって、適法配信から入手した録音録画物からの私的録音録画についても従来通り30条の範囲内とした上で、2重取りの回避のためには、これは補償の必要性がない私的録音録画の形態とされるべきである。
 ネット配信においては、複製の範囲をDRM等で有効に確定することが出来、別に著作権者自らがサイトを立ち上げ配信を行っても良いのである。したがって、ネット配信から入手した録音録画物からの私的録音録画は、DRM(技術的保護手段)等で複製の範囲が確定される場合はその範囲内について、確定されない場合は30条の範囲の最大限まで私的録音録画を権利者が積極的にユーザーに認めているに等しく、DRMの有無にかかわらず、補償の必要はないとされるべきである。
 なお、適法配信の30条の範囲からの除外によって2重取りの回避を行うことは、明らかにiPod課金を前提としており、そもそも妥当でない。このような整理は、あらゆる私的録音録画に補償が必要とする偏った前提に基づいており、報告書全体として見たときに自己矛盾するものである。

・109ページで、レンタル事業者について、契約によることが難しいとしているが、レンタル事業者と権利者の間、レンタル事業者と利用者の間に契約は存在しているのであって、契約による対応が難しいとすることは合理的ではない。
 私的複製について、それぞれの契約で明記しても良いだろうが、これについても、ほとんどあらゆる者が私的複製をすることを前提にレンタルCDの料金を支払っていることを踏まえ、DRMをかけない場合のネット配信と同じ扱いとするべきと考えられる。すなわち、このような場合についても、30条の範囲の最大限まで私的複製を権利者が積極的にユーザーに認めているに等しいものであり、補償の必要はないとされるべきである。

・109ページの、有料放送事業者についてもレンタル事業者と同様のことが言え、放送事業者と権利者の間、放送事業者と利用者の間に契約は存在しており、契約による対応が難しいとすることは合理的でない。
 そして、有料放送では、コピー不可も含め様々なDRMがかけられること、及び、既にそのようなDRMがかけられていること(例えばスカパー!について、http://faq.customer.skyperfectv.co.jp/EokpControl?site=sptv&tid=10775&event=FE0006http://faq.customer.skyperfectv.co.jp/EokpControl?&site=sptv&tid=10779&event=FE0006を参照のこと)を考慮すれば、ネット配信と同じく、DRM等で複製の範囲が確定される場合はその範囲内について、確定されない場合は30条の範囲の最大限まで私的複製を権利者が積極的にユーザーに認めているに等しく、基本的に補償の必要はないとされるべきである。
 また、無料放送については、まずコピーワンスやダビング10のようなユーザーにとってデメリットしかない方式を撤廃し、ノンスクランブル・コピー制限なしという原則を法制化することが先であり、そうでない限り、私的録音録画が厳しく制限されている無料放送からの私的録画についても、補償の必要はないとされるべきである。

・これらの形態について30条の範囲から外すことには反対するが、109ページで、これらの形態について外すと、違法状態が放置されるだけとなるという記載と、レンタル事業や有料放送事業で各者間に契約があるという記載とは矛盾するものであることを念のため指摘しておく。

・最後に、中間整理の整理に従って、それぞれの私的複製の形態毎の30条の範囲からの除外と補償の必要性に関して、私がこうあるべきと考えていることを、ここに念のため書いておく。

① 私的録音
(ア)購入した音楽CDからの録音 → 30条の範囲内にとどめ、補償の必要はないとされるべき
(イ)他人等から借りた音楽CDからの録音 → 30条の範囲内にとどめるが、コピー制限をしないことが法的に確保される条件の下で、権利者に与える経済的影響を入念に検証して、補償の必要性を決定するべき
(ウ)レンタル店から借りた音楽CDからの録音 → 30条の範囲内にとどめ、補償の必要はないとされるべき
(エ)違法録音録画物からの録音 → 原則30条の範囲内にとどめるが、現行の30条の解釈と権利者に与える経済的影響を入念に検証して、補償の必要性を決定するべき
(オ)違法配信からの録音 → そもそも、違法録音録画物があるから違法配信なのであって、この形態を考えること自体が間違っている
(カ)適法放送からの録音 → 30条の範囲内にとどめるべき。コピーワンスやダビング10のような私的録音録画の自由を制限するDRMがかけられている場合は、補償の必要はないとされるべき。あるいは、コピー制限をしないことが法的に確保される条件の下で、権利者に与える経済的影響を入念に検証して、補償の必要性を決定するべき
(キ)適法ネット配信からの録音 → 30条の範囲内にとどめ、補償の必要はないとされるべき

② 私的録画
(ア)購入したパッケージ商品からの録画 → 30条の範囲内にとどめ、補償の必要はないとされるべき
(イ)他人等から借りたパッケージ商品からの録画 → 現状のDRM下で、原則不可能である
(ウ)レンタル店から借りたパッケージ商品からの録画 → 現状のDRMの下で、原則不可能である
(エ)違法録音録画物からの録画 → 原則30条の範囲内にとどめるが、現行の30条の解釈と権利者に与える経済的影響を入念に検証して、補償の必要性を決定するべき
(オ)違法配信からの録画 → そもそも、違法録音録画物があるから違法配信なのであって、この形態を考えること自体が間違っている
(カ)適法放送からの録画 → 30条の範囲内にとどめるべき。コピーワンスやダビング10のような私的録音録画の自由を制限するDRMがかけられている場合は、補償の必要はないとされるべき。あるいは、コピー制限をしないことが法的に確保される条件の下で、補償の必要性について、入念に検証された権利者に与える経済的影響から決定されるべき
(キ)適法ネット配信からの録画 → 30条の範囲内にとどめ、補償の必要はないとされるべき

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