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2007年11月 4日 (日)

第16回:著作権国際動向その5:フランス(私的複製の権利制限と私的録音録画補償金制度)

 今回は、フランスでの著作権の権利制限と私的録音録画補償金制度について書いておきたいと思う。

(1)権利制限条項
 フランス著作権法においては、他にも権利制限を規定している条文はあるが、主な権利制限はその第122-5条に、以下のように列挙されている。(翻訳は拙訳。なお、著作権情報センターのHPに載っている訳(2001年版なので多少異なる)も参考にした。)

「Art. L. 122-5. Lorsque l'oeuvre a ete divulguee, l'auteur ne peut interdire :
   1° Les representations privees et gratuites effectuees exclusivement dans un cercle de famille ;

   2° Les copies ou reproductions strictement reservees a l'usage prive du copiste et non destinees a une utilisation collective, a l'exception des copies des oeuvres d'art destinees a etre utilisees pour des fins identiques a celles pour lesquelles l'oeuvre originale a ete creee et des copies d'un logiciel autres que la copie de sauvegarde etablie dans les conditions prevues au II de l'article L.122-6-1 ainsi que des copies ou reproductions d'une base de donnees electronique ;

   3° Sous reserve que soient indiques clairement le nom de l'auteur et la source :
   a) Les analyses et courtes citations justifiees par le caractere critique, polemique, pedagogique, scientifique ou d'information de l'oeuvre a laquelle elles sont incorporees ;
   b) Les revues de presse ;
   c) La diffusion, meme integrale, par la voie de presse ou de telediffusion, a titre d'information d'actualite, des discours destines au public prononces dans les assemblees politiques, administratives, judiciaires ou academiques, ainsi que dans les reunions publiques d'ordre politique et les ceremonies officielles ;
   d) Les reproductions, integrales ou partielles d'oeuvres d'art graphiques ou plastiques destinees a figurer dans le catalogue d'une vente judiciaire effectuee en France pour les exemplaires mis a la disposition du public avant la vente dans le seul but de decrire les oeuvres d'art mises en vente.
   e) La representation ou la reproduction d'extraits d'oeuvres, sous reserve des oeuvres concues a des fins pedagogiques, des partitions de musique et des oeuvres realisees pour une edition numerique de l'ecrit, a des fins exclusives d'illustration dans le cadre de l'enseignement et de la recherche, a l'exclusion de toute activite ludique ou recreative, des lors que le public auquel cette representation ou cette reproduction est destinee est compose majoritairement d'eleves, d'etudiants, d'enseignants ou de chercheurs directement concernes, que l'utilisation de cette representation ou cette reproduction ne donne lieu a aucune exploitation commerciale et qu'elle est compensee par une remuneration negociee sur une base forfaitaire sans prejudice de la cession du droit de reproduction par reprographie mentionnee a l'article L. 122-10.

   4° La parodie, le pastiche et la caricature, compte tenu des lois du genre.

   5° Les actes necessaires a l'acces au contenu d'une base de donnees electronique pour les besoins et dans les limites de l'utilisation prevue par contrat.

   6° La reproduction provisoire presentant un caractere transitoire ou accessoire, lorsqu'elle est une partie integrante et essentielle d'un procede technique et qu'elle a pour unique objet de permettre l'utilisation licite de l'oeuvre ou sa transmission entre tiers par la voie d'un reseau faisant appel a un intermediaire ; toutefois, cette reproduction provisoire qui ne peut porter que sur des oeuvres autres que les logiciels et les bases de donnees, ne doit pas avoir de valeur economique propre ;

...

Les exceptions enumerees par le present article ne peuvent porter atteinte a l'exploitation normale de l'oeuvre ni causer un prejudice injustifie aux interets legitimes de l'auteur. ...

第122-5条 公表された作品について、作者は次のことを禁止できない。
 1°家庭内のみで行われる無償の私的複製

 2°複製する者の私的利用に厳密にあてられる複製、ただし、原作品が作られたのと等しい目的で作られた複製、第122-6-1条のⅡの条件で規定されているバックアップ以外の複製、及び、電子データベースの複製を除く

 3°作者とソースの名前を明記されることを条件として、
a)批評、論争、教育、研究、あるいは、それが含まれているところの作品における情報の性質によって正当化される、分析あるいは短い引用
b)報道の批評
c)政治、行政、司法あるいは教育の公式な場、公的になされる政治集会、及び、公的儀式で発表された演説を、ニュース情報として、放送あるいは報道により流すこと、なお、これは演説全体でも良い。
d)販売前にフランスで公衆に供される公売カタログに載せられる、売られる作品を描写することのみを目的とした絵画あるいは造形作品の全体的あるいは部分的複製
e)教育のために作品が作られることを条件として、作品から抜き出して、複製すること、教育と研究の枠内で、解説を目的として、楽譜と定期刊行物の記事を抜き出して複製すること、ただし、営利・再生行為は全て除かれ、この複製が提供される公衆は主として生徒、教師と直接的に関係する研究者から構成され、この複製が何ら商業利用されず、第122の10条で規定される複写の権利制限による損害を除き、損害に基づいて交渉される補償金によって補償されるときに限る

 4°パロディー、パスティーシュ、カリカチュア。ただし、これらの種類のものの法を考慮する。

 5°契約によってあらかじめ決められた利用限度内で必要に応じた電子データベースの内容へのアクセスに必要な複製。

 6°それが技術的処理において必要不可欠の部分であり、作品の表示、あるいは、仲介を必要とする通信網において第3者間でなされる通信を認めることのみを目的としている場合の、過渡的あるいは付随的性質を持つ一時的複製

(7°障害者のための権利制限、8°図書館、博物館、美術館のための権利制限、9°言葉により芸術作品の情報を伝えるための権利制限については省略)

 この条項に列挙された例外は、作品の通常の利用を妨げるものであってはならず、作者の正当な利益に不当な害を及ぼすものであってはならない。(後略)」

 フランスの権利制限で特徴的なのは、やはりパロディに関する権利制限があるところだろう。
 フランスでは、この権利制限があるために、原作者に訴えられても、パロディ作者側が裁判で勝つこともある。最近でも、フランスの漫画家エルジェと画家マグリットの子孫がOle Ahlbergという画家を訴えたが、パロディに該当するとして被告側が勝訴している(フランスの記事参照)。
 この権利制限があることは、フランスにおいて、パロディの文化的価値が認められている証拠である。このような権利制限が日本に導入されることは、今の状況では考えづらいが、日本においてもパロディについて、もっとその文化的価値を評価されても良いだろう。

(2)私的録音録画補償金制度
 フランスの補償金制度については、文化庁の中間整理の83ページからにも書かれているのでここでは大枠については省略する。(なお、余談だが、この中間整理で補償金大国であるドイツとフランスから各国の動向を書き始めているのにも、文化庁の恣意性を強く感じる。)

 しかし、補償金の対象・金額等を、委員長である国の代表と、2分の1の権利者団体代表と、4分の1のメーカー団体代表と、4分の1の消費者代表によって決めているのは明らかに消費者にとって不利である。賛成反対同数である場合は、委員長が最後の決定権限を持つことが法律にも明記されており、権利者団体が断固補償金の対象拡大を主張すれば、国の代表を抱き込むだけで何でも課金できてしまうようになっており、この比率は、消費者にとって実質的なセーフハーバーとしての機能を果たしていない。国内権利者団体の持つ政治力から、国の代表もほぼ権利者団体側に有利な判断を下すだろうことから、補償金の対象はフランスでも拡大して行かざるを得ず、このような動向を国際動向ととらえられないのはドイツと同断である。

 このシステムの所為か、フランスでも、ごく最近USBメモリーとHDDにも補償金がかかりはじめたという記事もあった。この記事によると、容量500GBで11.96ユーロ、1TBで23.92ユーロだそうであるが、これだけ課金されているとなると、ファイル交換を含め何でも行ってこれを取り戻そうとする者が現れたり、あるいは補償金のない国から個人輸入したり等のモラルハザードが起こり、かえって国内産業に悪影響が出るのではないかと思われる。
 実際、フランスでもこのような課金について消費者・ユーザーが明確に不快感を示していることは、リンク先の記事のコメントなどを見てもらっても分かるだろう。

 また、これも極最近のことだが、フランスではインターネットそのものに課金した上でP2Pを合法化してはどうかという検討が行われているという記事もあった。ただし、記事にもかかれているように、P2P合法化などとんでもないとフランスの権利者団体も言っているようで、このような法改正が行われる可能性は低い。

 どこの国でも、権利者団体は自らの権利を絶対不可侵のものと考え、私的複製も不自由としたあげく補償金も課し、自らの利益のみを最大化しようとしてきている。今後も、そのような二重の不便を勝手に人に強いようとしてくる限り、全くお話にならないと、私は一ユーザー・一消費者・一国民として言い続けて行くつもりである。
 今の日本の制度における補償金は、権利者団体内で適当に山分けが可能な単なる既得権益で、本当のところ何の役にも立っていないのだから。

 実は、フランスの著作権法に関しては、2006年の法改正でDRM回避規制と一緒に入ったDRM開放に関する規定なども面白いのだが、これも書き出すと長くなってしまうので今は少しおいておいて、次は、イギリスとアメリカの最近の著作権動向について書きたいと思う。

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