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2007年11月10日 (土)

第22回:B-CASシステムという今そこにある危機

 本日、小寺氏のブログの記事「B-CASの問題点が早くも浮上」を読んで私は驚愕した。

 記事に書かれている事実が本当だとすると、そこから導き出される結論はあまりに重いと思うので、この記事をトラックバックとして書かせて頂きたいと思う。(小寺様、勝手なトラックバック失礼致します。もしご迷惑な様でしたら、お手数ですがトラックバックを削除下さい。)

 記事に書いてあることは単純で、要するに、勿論アングラなものであるが、B-CASカードを差し込むとテレビ放送の信号をコピーフリーとして出力してくれる外国製のチューナーが現れたということである。

 そもそも私はこのような機器が作られるとは正直思っていなかった。認識が甘かっただけなのだが、コピーワンスの解除にはより簡便な方法があり、このような、日本国内で、しかもアングラでしか売れない機器のために、わざわざB-CASのような複雑なシステムを解析して不正機器を作る外国メーカーがあるということが私にはどうしても想定できなかったのである。

 問題の大きさについて順を追って説明していくと、まず、記事に書かれている通り、このような機器を販売することは、著作権法あるいは不正競争防止法に原則違反する。そして、このような機器でなされる複製は著作権法の私的複製には当たらないため、このような機器の利用者が個人的にした複製について権利者に訴えられる可能性があることも多分その通りである。(著作権法で規定されている技術的保護手段と、不正競争防止法で規定されている技術的制限手段の違い、それぞれの法律で何が違法とされるのかの違いもどこかでまとめたいと思うが、ここではちょっと置いておく。)

 これだけでもリスキーなのだが、実は、B-CAS社とカードの利用者(テレビを買ってカードのパッケージを破った者)の間に契約が成立してしまっているのである。その契約B-CAS社のホームページでも見ることが出来るがそこに大変なことが書かれているのだ。特に問題となるのは、

第2条 (カードの所有権と使用許諾)
  このカードの所有権は、当社に帰属します
2. お客様は、本契約に基づき、受信機器1台につき、カード1枚を使用することができます。

第11条 (禁止事項等)
  客様は、当社がカードの使用を認めていない受信機(例えばカードが同梱されていない受信機)に、このカードを装着して使用することはできません
(中略)
4. お客様はカードをレンタル、リース、賃貸または譲渡等により、第三者に使用させることはできません。但し、お客様と同一世帯の方に限り、お客様の責任において、このカードを使用させることができます。

  第12条 (契約違反)
  お客様が本契約に違反(例えばカードの複製、変造、翻案等)した場合、当社は本契約を解除し、お客様に対し、そのカードの返却を求めるほか、当社が被った損害の賠償を請求することがあります

 というところである。カードを不正な機器に装着したことによってB-CAS社に発生した損害や、カードを他人に譲渡したことによってB-CAS社に発生した損害は、カードの利用者に請求され得ることになっているのである。放送局とB-CAS社の間にも損害賠償請求契約はあるであろうから、結局これは、不正な機器から派生した違法な複製による損害を全て、不正な機器に差されるカードの利用者(譲渡されたカードなら、元の利用者)が負いかねないということを意味している。このことも考え合わせると、はっきり言って、B-CASカード不正利用機器の利用、あるいはB-CASカードの譲渡は、普通の利用者にとって、あり得ないくらいリスキーな行為である。(さらに、していない人も多いかも知れないが、B-CASカードは原則登録カードで名前や住所などを登録することにもなっている。)

 特に、B-CASカードを不正に利用する機器が出てきた以上、不正な機器に使用されるカードを使用できなくすることも検討されるに違いないが、その場合、全ての地上デジタル放送の視聴者に対して、名前と住所を登録していないカードではテレビが見られなくなることを事前に十分周知した上で、非登録カードの全てを使えなくするという途方もないコストと混乱が予想されることを行わなければならない。(果たしてそんなことが許されるのかということが無論あるが。)このようなことがなされた場合、このコストも損害として、その原因となったカードの利用者(譲渡されたカードなら、元の利用者)が負わされる可能性がある

 はっきり言って、有料放送のセットトップボックスに載せられるべきカード管理システムを無料放送のテレビにそのまま適用したのがそもそも間違いなのだが、このシステムの複雑さから少なくともあと10年くらいはB-CASシステムそのものの安全神話は保たれ、その間にB-CASシステムの問題が広まって行くことで関係者が動き、何とかなるのではないかと私は楽観的に考えていた。しかし、こうなった以上、これは今ここにある危機としか言いようがない。

 少しでも多くの人にこの問題を知ってもらう必要があると思い、巨人の肩に乗るようで恐縮だが、小寺氏の記事にトラックバックで記事を書かせて頂いた。少なくとも、この記事を読んで頂けている人に言っておきたい、B-CASカードを絶対人に譲渡してはいけない、自分の住所と名前を登録したカードを譲渡するなどもってのほかである。オークション等で売ってしまったという人がいたら、即刻B-CAS社に対し紛失の届出を出しておくべきである。

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