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2007年10月29日 (月)

第13回:著作権国際動向その3:ドイツ(ダウンロード違法化の明確化)

 文化庁の中間整理には、極簡単に、インターネット上で明らかに違法に提供されているものからの複製を私的複製の範囲から除外する法改正案が、今後上院で検討されるとしか記載されていないが、このドイツの法改正に関する情報も国際動向を見ていく上では外せない情報だろう。今回は、この法改正の情報について、私なりに調べたことを書いておきたい。

(細かなことを突っ込んでも仕方ないのだが、この法改正案は既に今年の9月21日に上院を通過して、2008年1月1日から施行される予定とドイツ法務省のプレス記事に出ている。このような調べればすぐに分かる情報すら、文化庁がきちんと調べていないのが丸わかりである。)

 プレス記事(下院通過のみ何故か英語版の記事がある。内容はほぼ同じ。)に書かれている私的複製の範囲に関する法改正の概要の部分を以下に抜粋しておこう。(翻訳は拙訳。赤字強調は私が付けたもの。)

「1. Erhalt der Privatkopie

Die private Kopie nicht kopiergeschutzter Werke bleibt weiterhin, auch in digitaler Form, erlaubt. Das neue Recht enthalt aber eine Klarstellung: Bisher war die Kopie einer offensichtlich rechtswidrig hergestellten Vorlage verboten. Dieses Verbot wird nunmehr ausdrucklich auch auf unrechtmasig online zum Download angebotene Vorlagen ausgedehnt. Auf diese Weise wird die Nutzung illegaler Tauschborsen klarer erfasst. In Zukunft gilt also: Wenn fur den Nutzer einer Peer-to-Peer-Tauschborse offensichtlich ist, dass es sich bei dem angebotenen Film oder Musikstuck um ein rechtswidriges Angebot im Internet handelt - z. B. weil klar ist, dass kein privater Internetnutzer die Rechte zum Angebot eines aktuellen Kinofilms im Internet besitzt -, darf er keine Privatkopie davon herstellen.

Es bleibt auch bei dem Verbot, einen Kopierschutz zu knacken. Das ist durch EU-Recht zwingend vorgegeben. Die zulassige Privatkopie findet dort ihre Grenze, wo Kopierschutzmasnahmen eingesetzt werden. Die Rechtsinhaber konnen ihr geistiges Eigentum durch derartige technische Masnahmen selbst schutzen. Diesen Selbstschutz darf der Gesetzgeber ihnen nicht aus der Hand nehmen. Es gibt kein "Recht auf Privatkopie“ zu Lasten des Rechtsinhabers. Dies liese sich auch nicht aus den Grundrechten herleiten: Eine Privatkopie schafft keinen Zugang zu neuen Informationen, sondern verdoppelt lediglich die bereits bekannten.

1.私的複製の維持

コピープロテクトがされていない作品の私的複製は、デジタル形式においても、許され続けることとなった。しかし、新しい法律では、明らかに違法になされた提供からの複製を禁じるという明確化を行っている。これで、禁止は明確に、ダウンロードのために明らかに違法にオンラインで提供されたものまで拡大される。これによって、違法なファイル交換の利用まで明確にカバーされる。将来的には次のことも考えられる。すなわち、映画あるいは音楽がインターネットで違法なものとして提供されていることがP2Pファイル交換のユーザーにとって明らかな場合、-例えば、問題の映画についてインターネットに提供する権利がネットの個人ユーザーの誰にもないことが明らかであるなら、それについての私的複製はなくなるということである。

 同じく、コピープロテクトを回避する複製も禁止される。これはEU法によって求められていたものである。許される私的複製はその技術的保護手段が定める範囲内となる。権利者は、自身の知的財産を、このような技術的手段で自ら守ることが出来る。権利者を犠牲にする「私的複製の権利」は存在しない。これは、基本的な権利から導かれるものではない。私的複製は新たな情報へのアクセスを作り出すものではなく、既に知られたものの複製に過ぎない。」

 ドイツの政府には悪いが、このようなユーザーに一切の権利を与えない考え方はもはや妥当ではない
 まず、私的複製は新たな情報へのアクセスを作り上げるものではないかも知れないが、もはや現在では複製=アクセスとなっている現状を考えると、私的複製は情報へのアクセスに必須の権利制限であり、新たな情報を生み出すためにも必須のものである悪意のあるユーザーがいるからと言って、ユーザーの権利を全否定してはならない。そして、法律屋が自己満足のためにら「明らか」だの「情を知って」だのと定義しようが、それは法律屋の自己満足に過ぎず、ユーザーの悪意と善意を外形的には区別できない以上、このような法制は社会全体にとって悪になると言わざるを得ない。
 そして、「問題の映画についてインターネットに提供する権利がネットの個人ユーザーの誰にもないことが明らかな場合」も最後まであり得ないだろう。アップロードしたユーザーが正当な映画会社なのか、それとも単なる個人ユーザーであるかを、ダウンロードを行う一般ユーザーがいちいち気にしながらネットを使うことは、法律をどう変えようがあり得ないからだ。

 それに、そもそもの話をすれば、ドイツでは元々明らかに違法に作られた複製物からの複製を違法としており、ほとんどダウンロードも違法だったと思われるので、このような改正にどれほどの意味があるかもよく分からない。

 ドイツでは様々な議論の末にこのような法改正がなされており、このようなドイツの記事の記載も相当誤解を生むものである。別に何も義務はないのだが、このようなことをどこかに引用する人がいるなら、是非私が書いたような反対意見も考えられることを合わせて引用して欲しいと思う。

 さらに具体的なことを書くと、法改正は、具体的には、以下のように私的複製規定を直すこととしている。(ドイツ上院のHPに載っている改正案より。赤字が法改正の追加部分。翻訳は拙訳。これで合っていると思うが、間違っていたら教えて頂きたい。なお、文化庁の中間整理に載っていたものも参考にしたが、公式訳がなぜあれほどひどいのかは理解に苦しむ。)

「§ 53 Vervielfaltigungen zum privaten und sonstigen eigenen Gebrauch

(1) Zulassig sind einzelne Vervielfaltigungen eines Werkes durch eine naturliche Person zum privaten Gebrauch auf beliebigen Tragern, sofern sie weder unmittelbar noch mittelbar Erwerbszwecken dienen, soweit nicht zur Vervielfaltigung eine offensichtlich rechtswidrig hergestellte oder offentlich zuganglich gemachate Vorlage verwendet wird. Der zur Vervielfaltigung Befugte darf die Vervielfaltigungsstucke auch durch einen anderen herstellen lassen, sofern dies unentgeltlich geschieht oder es sich um Vervielfaltigungen auf Papier oder einem ahnlichen Trager mittels beliebiger photomechanischer Verfahren oder anderer Verfahren mit ahnlicher Wirkung handelt.
...

第53条 私的及びその他自己利用のための複製

 (1) 直接的であれ、間接的であれ、営利を目的とせず、明らかに違法になされた物から、あるいは、明らかに違法にアクセス可能とされた物からの複製でない場合に、自然人が、私的利用目的のために著作物を任意の媒体へ少数複製することは許される。複製が無償で行われるか、あるいは、複製が写真製版及びその他類似の効果を有する方法を用いて紙あるいは類似の媒体に行われる限りにおいて、この複製は他の者にしてもらうことも出来る。
以下略)」

 大体概要に書いてある通りに追加している。あまり意味がないであろうことは上に書いた通りであるが、いくら著作権法による保護強化において先端を行くドイツでも、違法複製物を越えて、サイトそのものの違法性を勝手に著作権団体に認定させた上で、そこからのユーザーの私的な複製を違法とするようなことまではしていない。文化庁の中間整理にはそのようなことが平然と書かかれているが、前にも書いたように、そもそもあり得ない話である。

 それに、法改正をしようがしまいが、ドイツでもユーザーに対する訴訟は泥沼化の様相を呈している。例えばあるブログの記事では、2006年末までで既に2万人のP2Pユーザーを音楽業界は訴えており、さらに月ごとに1000人を加えていく予定という。さらに記事では、不明のユーザーに対して民事訴訟を起こすわけに行かないので、音楽業界が刑事訴訟を使っていること、刑事訴訟にかかるコスト(全て税金である)がばかにならず、刑事当局がその対応にうんざりし始めていることも書かれている。
 P2Pによる違法ファイル交換は決して良いこととは言えないが、実効性もないままに、訴訟の乱発をさらにもたらすような法改正が正しいとは私には到底思えない。
 また、上の部分でも、無償である限りにおいて他の者に私的複製をしてもらっても良いとなっているが、ドイツでは他にも第53条第2項以下(著作権情報センターのHP参照。)に、研究目的の私的複製についてなど、さらに細かなことを規定しており、日本とはかなり私的複製の規定の仕方も異なっている。日本での今後の法改正は、このようなことも含め、各国の私的複製に関する規定についてより詳細な比較検討をしてからなされるべきだろう。

 最後に付け加えておくと、2003年に、ドイツでは、インターネット上の検索エンジンによるニュース記事の一部利用は、記事の利用に対する黙示の許諾があったとみなすのが妥当であり、著作権法違反に当たらないという最高裁判決判決文日本語のニュース記事はこちら。)も出されており、こうしたことも、著作権法の大きな国際動向の中では無視するべきではなかろう。

 さて、ドイツでも私的複製の範囲の話と補償金制度改革はセットになっているので、次はドイツの補償金制度改革について書いてみたい。

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