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2007年7月10日 (火)

第1回:何故か皆が暗黙の内に前提としている日本の不可思議な法改正プロセス

 何故か、このシステムそのものが問題とされることはほとんどないが、これが全ての前提となるので、ここにこそ全ての問題が内包されていると言っても差し支えないくらい、問題の多い日本の法改正プロセスについてまず説明したい。
 新聞で「・・・(役所)が・・・という内容で法改正を行う方針」と報道された場合、これは何を意味しているのかというと、各省庁に設けられている有識者会議で方向性を出した報告書がまとめられたということなのだ。何故、有識者会議で結論が出されただけで、あたかも国会審議を無視して、法改正がなされるかの如き報道がなされるかというと、大体有識者会議で決定されたのを良いことに、役人が自らの点数取りのために、他のあらゆることを無視して内閣による国会への法案提出まで持って行くことを、政府番の報道関係者が熟知しているためである。
 以下、順を追ってこのプロセスを少し詳しく説明しておきたい。

(1)各省庁主催の研究会で検討・報告
 まず、研究会と称して、公式あるいは非公式に有識者を集めて会議を開き、役人が法制度の課題と改正の方向性を勉強する。大体の場合、役人が、メンバーを、オーソライズ機関として活用される公式な審議会(有識者会議を偉そうに言うとこうなる)のメンバーとオーバーラップするように選んでおり、検討が二度手間となることを避けている。

(2)各省庁における公式な審議会で検討・報告
 様々な研究会で勉強したことから、役人が法改正が可能そうだと判断すると、各省庁に設けられている公式な審議会での検討が開始される。大体、審議会で出された結論を元に各省庁が所管の法律を改正することが慣習化しているので、このような審議会の委員は、各省庁・関係者からの根回しを鬱陶しいくらいに受けることになる。
 ここで、特に重要なことは、このよう審議会のメンバー選定及びその検討項目の選定が、これを抱えている省庁の専管事項ということである。そのため、各省庁は基本的には自分たちが守りたい業界に都合を悪いことを言う有識者を入れない、また、都合の悪いことは検討項目にあげない等の姑息な手段を用いて、自分たちに都合の良いように検討を進めて行く。このような審議会で重要な法案の改正が審議されていることが多くの国民に全く知られていないからこそ、このような姑息な手段が平気でまかり通っているのだが、三権分立や国民主権といった、誰でも教科書で習うことを役人は何だと思っているのか。

(3)審議会報告のパブリックコメント
 審議会において、報告書の案が取りまとめられると、審議会名で、パブリックコメントが募集される。
 国民の民意を問う極めて重要なプロセスである筈だが、実際には、ここで大きな方向性が変えられることはまずもってない。実質的に取りまとめを行っている役人がメンツにかけて、方向性変更の意見を否定する言い訳を考え出すからである。パブリックコメントの後、さらに1回審議会が開かれ、些細な文言修正を加えて取りまとめられたものが最終的な報告書となる。方向性について全国民に民意を問うたというエクスキューズに使われるだけの、名目のみのプロセスに堕している。

(4)法制局審査
 表の場に出てくる話ではないが、審議会で方向性が出されるかどうかという頃合いで、各省庁の担当部局が法案の素案を作り、法制局に持ち込んでいる。ここで、他の法律との関係や、法律用語の決め方から、法律の細部が決定される。他の法案との整理などをきちんとしないまま審議会で方向性を出したりすると、ここで法案が倒れ、国会に提出されないこともある。我々国民にとっては極めて見えにくいプロセスである。

(5)法令協議
 これも表の場に出てくる話ではないが、法案が固まると、法令協議という形で各省に法案の協議が回ってくる。大体、法案は所管省庁の利権を保護するように書かれているので、それに対して他の省庁が嫌がらせのように質問と意見を山ほど出すということをする。ただ、これも、省庁間の利害調整(要するに、各省庁の天下り先の所管業界のためになるような調整)の役には立つが、本当の国民の考えを代弁する省庁は存在しないため、一般国民の意見がここで法案に反映されることはない。大体、有力な国会議員への根回しも平行して行われ、法案がこねくり回される。
 同じく、ここで法案が倒れ、国会に提出されないこともあるので、審議会の報告が出された後、その方向性が変わったりした場合は、このような何らかの不透明なプロセスで調整がなされたのであろうということになるが、我々国民にとって極めて見えにくく、不透明この上ないプロセスであると言わざるを得ない。

(6)閣議決定
 内閣提出法案のときに必ず必要となるが、ここまで来るといちゃもんがつくことはまずない。

(7)衆議院・参議院での審議・可決
 大体ここに来るまでに、法律の穴はほとんどふさがれているため、国会議員によっていろいろな質問がなされるが、そつのない答弁を役人が懇切丁寧に用意しており、ここで法案修正が入ることはまずもってない。ただ、突然政治的要因によって国会の審議が止まるとか、外的要因によって可決が延期あるいは中止されることはある。

 大体このようなプロセスを経て、法律が成立する訳だが、途中に様々な関係者の極めて不透明な調整プロセスが入るこのような日本システムを、私は外国にまともに説明できる気がしない
 このブログは、問題提起のためにのみ作ったものであるが、天下り先の確保のために役人に法律を好き勝手にねじ曲げさせるためにあるかのような、このふざけたシステムを捨て、我々国民の総意が真に反映されるシステムの構築を皆で素直に考えるべき時が来ていると私は考える。
 特に、喫緊の課題として、我々の1票が真に立法に反映されるよう、我々も意識を改め、単なる地元への利益配分のみを考える代議士への投票を止めて、大局的な観点から法律を書ける人間を国会議員として選出した上で、立法権限を国会に集中して行かなければならないと考える。さもなくば、不透明なプロセスによって何となく国民の意向が政策に反映したと思えるかという状態を続けていくかだ。
 次回からは、具体的な事項をあげて行きたいが、今回書いたことでも不明な点があれば、注を加えていきたいと思うので、何でも言って頂ければと思う。

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