2019年10月20日 (日)

第414回:侵害コンテンツのダウンロード違法化等に関するパブリックコメント(10月30日〆切)への提出意見

 文化庁から10月30日〆切で侵害コンテンツのダウンロード違法化等に関するパブリックコメントがかかっている(電子政府のHP、文化庁のHP参照)。

 以前著作権法改正案の国会提出は数多くの批判を受けて一時見送られたが、案の定この選挙後のタイミングで再度提出を狙っているのだろう、文化庁はダウンロード違法化・犯罪化の拡大を含む法改正案についてパブリックコメントの募集を行って来た。

 私も意見を提出したので、内容としては基本的に今まで書いて来た事をまとめただけだが(去年の法制・基本問題小委員会中間まとめに対する提出パブコメは第402回、著作権法改正案条文については第406回参照)、ここに載せておく。設問等の作り方で恣意的に回答を誘導しようとしているなど文化庁はいつも通り姑息な手段を弄しているが、このパブリックコメントの結果は今後の法改正の検討において非常に大きな意味を持つと思うので、この様な著作権問題に関心のある方は是非提出してもらいたいと思う。

(以下、提出パブコメ)

1.基本的な考え方
(1)「深刻な海賊版被害への実効的な対策を講じること」と「国民の正当な情報収集等に萎縮を生じさせないこと」という2つの要請を両立させた形で、侵害コンテンツのダウンロード違法化(対象となる著作物を音楽・映像から著作物全般に拡大することをいう。以下同じ。)を行うことについて、どのように考えますか。①~⑤から一つを選択の上、回答欄に記入して下さい。

①賛成
②どちらかというと賛成
③どちらかというと反対
④反対
⑤分からない

<回答欄>
④反対

2.懸念事項及び要件設定
(1)侵害コンテンツのダウンロード違法化を行うことによる懸念事項として、下記(ⅰ)~(ⅶ)のそれぞれについて懸念される程度を、①~⑤から一つを選択の上、回答欄に記入して下さい。その他、懸念事項があれば(ⅷ)に記入して下さい。

(ⅰ)インターネット上に掲載されたコンテンツは、適法にアップロードされたのか違法にアップロードされたのか判断が難しいものが多いため、ダウンロードを控えることになる。

①とても懸念される
②どちらかというと懸念される
③あまり懸念されない
④全く懸念されない
⑤分からない

<回答欄>
①とても懸念される

(ⅱ)重要な情報をスクリーンショットで保存しようとする際に、違法画像等(例:SNSのアイコン)が入り込むことが、違法になる。

①とても懸念される
②どちらかというと懸念される
③あまり懸念されない
④全く懸念されない
⑤分からない

<回答欄>
①とても懸念される

(ⅲ)漫画の1コマのダウンロードや、論文の中に他人の著作物の違法引用がされている場合の当該論文のダウンロードなど、ごく一部の軽微なダウンロードでも違法になる。

①とても懸念される
②どちらかというと懸念される
③あまり懸念されない
④全く懸念されない
⑤分からない

<回答欄>
①とても懸念される

(ⅳ)原作者の許諾を得ずに創作された二次創作・パロディのダウンロードが、違法になる。

①とても懸念される
②どちらかというと懸念される
③あまり懸念されない
④全く懸念されない
⑤分からない

<回答欄>
①とても懸念される

(ⅴ)無料で提供されているコンテンツ(例:無料で配布・配信されている雑誌、漫画、ネット記事)が違法にアップロードされている場合に、そのダウンロードが違法になる。

①とても懸念される
②どちらかというと懸念される
③あまり懸念されない
④全く懸念されない
⑤分からない

<回答欄>
①とても懸念される

(ⅵ)権利者がアップロードを問題視していない(黙認している)場合でも、ダウンロードが違法になる。

①とても懸念される
②どちらかというと懸念される
③あまり懸念されない
④全く懸念されない
⑤分からない

<回答欄>
①とても懸念される

(ⅶ)権利者により濫用的な権利行使がされる可能性や、刑事罰の規定の運用が不当に拡大される可能性がある。

①とても懸念される
②どちらかというと懸念される
③あまり懸念されない
④全く懸念されない
⑤分からない

<回答欄>
①とても懸念される

(ⅷ)その他、懸念事項があれば記入して下さい。

<回答欄>(自由記述)
 上記の(ⅰ)~(ⅶ)の回答において他に選びようがないため全て「①とても懸念される」を選択したが、これらの質問及び回答の設定自体法的な論点として到底十分なものになっておらず、不適切なものと言わざるを得ない。

 ダウンロード違法化・犯罪化の問題点については、2.(2)(ⅵ)及び3.(1)に記載するが、日本の著作権法において研究など公正な利用として認められるべき利用についての権利制限が不十分であって、その様な利用についてまで本来の目的とは異なるが私的複製によってある程度カバーされ適法とされているという現状を重く見るべきであろう。

(2)上記の懸念などを踏まえ、具体的にどのような要件・内容とすることが望ましいと考えますか。下記(ⅰ)及びその回答に応じた(ⅱ)~(ⅵ)の回答欄に記入して下さい。

(ⅰ)侵害コンテンツのダウンロード違法化に関する文化庁当初案(添付1~3参照)について、どのように考えますか。①~⑤から一つを選択の上、回答欄に記入して下さい。

①適切である(文化庁当初案のままで良い)
②違法となる対象が広い(文化庁当初案よりも違法化の対象を絞りこむべき) 
③違法となる対象が狭い(文化庁当初案よりも違法化の対象を広げるべき)
④具体的な要件の適否は分からないが、バランスのとれた内容とすべき(政府における検討に委ねる)
⑤要件にかかわらず、侵害コンテンツのダウンロード違法化自体を行うべきではない

<回答欄>
⑤要件にかかわらず、侵害コンテンツのダウンロード違法化自体を行うべきではない

(ⅱ)(ⅰ)で①を選択した場合、その理由を教えて下さい。その際、「深刻な海賊版被害への実効的な対策を講じること」と「国民の正当な情報収集等に萎縮を生じさせないこと」の2つの要請のバランスに留意しつつ、記入をお願いします。

(ⅲ)(ⅰ)で②を選択した場合、どのような要件にすべきと考えますか、理由とともに記入して下さい。その際、「深刻な海賊版被害への実効的な対策を講じること」と「国民の正当な情報収集等に萎縮を生じさせないこと」の2つの要請のバランスに留意しつつ、記入をお願いします。

(ⅳ)(ⅰ)で③を選択した場合、どのような要件にすべきと考えますか、理由とともに記入して下さい。その際、「深刻な海賊版被害への実効的な対策を講じること」と「国民の正当な情報収集等に萎縮を生じさせないこと」の2つの要請のバランスに留意しつつ、記入をお願いします。

(ⅴ)(ⅰ)で④を選択した場合、その理由を教えて下さい。

(ⅵ)(ⅰ)で⑤を選択した場合、その理由を教えて下さい。

<回答欄>(自由記述)
 過去の意見募集においても繰り返しているが、一人しか行為に絡まないダウンロードにおいて、「事実を知りながら」なる要件は、エスパーでもない限り証明も反証もできない無意味かつ危険な要件であり、技術的・外形的に違法性の区別がつかない以上、このようなダウンロード違法化・犯罪化は法規範としての力すら持ち得ず、罪刑法定主義や情報アクセス権を含む表現の自由などの憲法に規定される国民の基本的な権利の観点からも問題がある。このような法改正によって進むのはダウンロード以外も含め著作権法全体に対するモラルハザードのみであり、今のところ幸いなことに適用例はないが、これを逆にねじ曲げてエンフォースしようとすれば、著作権検閲という日本国として最低最悪の手段に突き進む恐れしかない。

 また、世界的に見ても、アップロードとダウンロードを合わせて行うファイル共有サービスに関する事件を除き、どの国においても単なるダウンロード行為を対象とする民事、刑事の事件は1件もなく、日本における現行の録音録画に関するダウンロード違法化・犯罪化も含め、この様な法制が海賊版対策として何の効果も上がっていないことは明白である。また、ダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲の拡大は、研究など公正利用として認められるべき目的のダウンロードにも影響する。

 この様な問題はダウンロード違法化・犯罪化に内在する本質的な問題であって、どの様な要件の追加によっても解消するものではない。「深刻な海賊版被害への実効的な対策を講じること」と「国民の正当な情報収集等に萎縮を生じさせないこと」の2つの要請は、いかなる形を取ろうとダウンロード違法化・犯罪化によってそもそも満たされるものではない。

 過去の文化庁へのパブコメ(文化庁HPhttp://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/chosakuken/hokoku.htmlの意見募集の結果参照)や知財本部へのパブコメ(知財本部のHPhttp://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/keikaku2009.htmlの個人からの意見参照)等を完全に無視して行われたものであり、さらなる有害無益な規制強化・著作権検閲にしか流れようの無い、百害あって一利ないダウンロード違法化・犯罪化を規定する著作権法第30条第1項第3号及び第119条第3項の削除を速やかに行うべきである。

3.その他
(1)侵害コンテンツのダウンロード違法化に関して、上記のほかに御意見があれば、記入して下さい。

<回答欄>(自由記述)
 今回の意見募集の設問において、文化庁は勝手に「『深刻な海賊版被害への実効的な対策を講じること』と『国民の正当な情報収集等に萎縮を生じさせないこと』という2つの要請を両立させた形で」という前提を追加しているが、この様なそもそもダウンロード違法化・犯罪化によって満たされ得ない要請を設問に追加し、回答を恣意的に誘導しようとしている事について私は文化庁に猛省を求める。本当に国民の声を丁寧に聞いて今後の手続きを進めるというのであれば、この様な要請がダウンロード違法化・犯罪化によって果たして満たされ得るのか、現行のダウンロード違法化・犯罪化条項が本当に有効なのか、有害無益なものとして削除・廃止するべきではないかという事から聞くべきである。文化庁にあってはこの様な偏った意見募集のやり方について猛省の上、もう一度前提のない形で意見募集を行ってもらいたい。また、この問題について今後さらに検討の場を設置するのであれば、そのメンバーの選定自体について意見募集を行い、偏りのない形にするべきである。

 私の意見は2.(2)(ⅵ)に書いた通りであるが、添付資料のダウンロード違法化・犯罪化関連部分についてさらに以下の通り意見を補足する。

 今回の意見募集においては、添付資料1及び2として具体的な著作権法改正の条文案を添付している。この様な条文案の提示は国会提出を見送った結果に過ぎないであろうが、条文は法解釈における最も基本的な根拠であり、いつもの審議会報告書のみによる法改正に関する意見募集は常に不確実かつ不透明にならざるを得ないものである。国民の生活に密接に関係し得る著作権法の改正においては、今後は国会提出前に審議会報告書のみならず具体的な条文案も提示する形で常に意見募集を行ってもらいたい。

 添付資料1の第1ページにおいて、権利者団体側の一方的な主張に基づき被害額を試算して被害が甚大であるかのような印象操作がされているが、これも一方的な主張に過ぎず、送信可能化・アップロードとの関係でダウンロードによる損害額がどう算定されるのかすら分からない中、推定に推定を重ねたアクセス数に著作物の単価を掛けるような試算は乱暴の極みと言うほかなく真摯な立法論の基礎とするに足るものでは全くない。また、同ページの「海賊版被害の拡大が防止され、著作権法の目的である『文化の発展』に資する」などという言葉も、文化庁の勝手な思い込みと言う他ない。

 添付資料1の第11~13、15~17ページ、添付資料3の第1~9、17ページにおいてダウンロード違法化・犯罪化に関する条文案の解説が示され、添付資料2に条文案の新旧対照が示されている。

 これらの条文案において、民事に関する第30条の方で、「その事実を知りながら行う場合」を「特定侵害複製であることを知りながら行う場合」に変え、「特定侵害複製であることを重大な過失により知らないで行う場合を含むものと解釈してはならない」といった条件をつけ加える事で、限定を加えたつもりなのだろうが、これらはともに主観要件であって、はっきり言って、これで現行条文との間で解釈上本当に違いが出て来るかどうか疑問であり、一個人しか絡まないダウンロードにおける要件の立証・反証の問題に対する解決になるものでは全くない。

 刑事に関する第119条の方では、対象者について、第30条と同様の、「有償著作物等特定侵害複製であることを知りながら行」った者という条件と「自ら有償著作物等特定侵害複製であることを重大な過失により知らないで行」った者は含まれないという条件に加えて、「継続的に又は反復して行つた」者という条件もつくが、「継続」や「反復」とはどの程度の継続や反復なのか不明であり、ネット利用者に対するセーフハーバーになっていると言えるものでは到底ない。なお、刑事罰規定において、著作権法第28条の2次著作物についての原著作者の権利が除かれているが、この事はこの問題の本質とは関係がない。昨今のウィルス(不正指令電磁的記録関連)罪の摘発の状況を見ても、親告罪とされるだろうとはいえ、今後警察や検察が著作権法の違法ダウンロード罪について無茶な摘発をしようとして来る可能性は常にあり、その時、現行法だろうが、改正条文案だろうが、無罪の立証にはかなりの労力を要するであろうし、場合によっては、恣意的に摘発されたネット利用者の生活と安全が一気に危険に晒される事になる。

 添付資料1の第14ページに、諸外国における取り扱いについて書かれ、ドイツ、フランス、カナダ、アメリカ、イギリス等の国でダウンロード違法化がされており、効果が上がっているような印象操作がされているが、アップロードとダウンロードを合わせて行うファイル共有サービスに関する事件を除き、どの国においても単なるダウンロード行為を対象とする民事、刑事の事件は1件もなく、日本における現行の録音録画に関するダウンロード違法化・犯罪化も含め、このような法制が海賊版対策として何の効果も上がっていないことは明白である。また、スイスでも最近著作権法改正案が国会を通っているが、消費者・利用者を犯罪者とするべきではないとしてダウンロード違法化・犯罪化は含まれていない。

 添付資料3の第10~15ページのQ&Aにおいても文化庁は極めて恣意的な回答を示している。

 問1のアップロードの取り締まりについて何がそのボトルネックとなっているのかの具体的な検討もなく一方的にダウンロード違法化・犯罪化の強化が必要であると決めつけている。

 問2のストリーミング型の海賊版サイトについて効果がないのはその通りと認めたくないのだろう、ダウンロード型の海賊版サイトには効果があると何の根拠もなく独りよがりのすれ違い回答をしている。私はダウンロード型の海賊版サイトに対してもダウンロード違法化・犯罪化は効果はないと考えているし、警告表示を行う仕組みなど危険なネット検閲に他ならないと考えている。海賊版サイト対策としては広告出稿抑制の様な地道な取り組みの方がよほど効果的である。

 問3のいきなり権利行使や逮捕・告訴がされたりするのかという設問自体も誘導的かつ恣意的と言わざるを得ない。問題としている側は違法・犯罪になる事自体を問題としているのであって、そこで文化庁は違法・犯罪にして萎縮効果を狙おうというにも関わらず、ここで黙認・寛容的な利用を持ち出したり、権利者がまずアップロード者に対する権利行使を行うものと勝手な希望的観測を述べる事は矛盾という他ない。

 問4の法改正の実効性に関しても、自ら違法ダウンロードを行っている旨をSNSなどで誇示している場合や違法アップロードに関する捜査・訴訟等の過程でダウンロードの事実が確認された場合などに権利行使・摘発が可能としているが、その様な例が現実的にどれくらいあり得るのかを示さずにこの様な事を言うのは適切ではない。さらに、仮にこれらの様な例、SNSなどで違法ダウンロードを行っている事の書き込みや違法アップロード事件におけるダウンロードの事実が現実的にあったとしても、主観的要件による違法ダウンロードの事実をどの様に証明するのかや、恣意的に警告・権利行使・摘発された場合にどの様に反証するのかはやはり解決不能な問題として残るのであって、文化庁の回答は回答になっていないと言わざるを得ない。

 また、添付資料3の第16ページの補足資料で、平成25年12月の調査を引用しているが、この調査は文化庁と権利者団体中心のお手盛り調査であって何ら信頼に足るものではない。ファイル共有ソフトのノード数の減少はダウンロード犯罪化の運用が不明な中での一時的な現象であろうし、政府の委託調査で広くアンケートを取り違法行為をしているかと聞けば控えたと答えるに決まっているのでそのような回答の傾向はユーザーの行動の実態を表しているとは言えない。この様なお手盛り調査の我田引水は論外であるが、ダウンロード違法化・犯罪化がされた当時と比較して音楽と映像に関して違法にアップロードされている著作物のダウンロードは減っているのではないかとも思うが、それは単にストリーミングサービスも含めて利便性の高い正規のサービスが充実して来たことの結果に過ぎず、ここでダウンロード違法化・犯罪化がほとんど何の役にも立ってない事は日本のみならず世界的に同じ傾向が見られる事からも明らかであろう。

 なお、違法サイトかどうか利用者からは区別がつかないという事はダウンロード違法化・犯罪化の議論当初から問題にされており、当時音楽団体がエルマークを持ち出したと記憶しているが、2018年12月の法制・基本問題小委員会中間まとめ又は2019年2月の著作権分科会報告書で言及されていた、出版社の「ABJマーク」なども、残念ながら、上の平成25年の文化庁委託調査ですら認知度が低い事が示されており、その後も認知が進んでいるとは到底思えない音楽団体のエルマークと全く同じ道を辿る事であろう。

 問5~7のインターネット上での資料収集や論文等のための利用の萎縮についても同断であって、ここで寛容的な利用などを持ち出すのは矛盾という他ない。さらに敢えて書いておくと、剽窃の指摘・告発等のための善意の保存についてわざわざ事前に権利者に許諾を取るのは現実的ではないであろうし、ダウンロード違法化・犯罪化が引用に影響を与えない事自体はその通りだろうが、その準備行為は必要かつ合理的と認められる限度においてのみ許容されているのであって、ダウンロードの違法化・犯罪化の下で引用のためであったとしても著作権侵害コンテンツのダウンロードが完全に許容されるとは考えがたい。

 問8の警察による捜査権の濫用についても、回答は単なる文化庁の希望的観測の域を出ない。昨今のウィルス(不正指令電磁的記録関連)罪の摘発の状況を見ても、親告罪とされるだろうとはいえ、今後警察や検察が著作権法の違法ダウンロード罪について無茶な摘発をしようとして来る可能性は常にあり、その時、現行法だろうが、改正条文案だろうが、無罪の立証にはかなりの労力を要するであろうし、場合によっては、恣意的に摘発されたネット利用者の生活と安全が一気に危険に晒される事になるのである。

 問9のスクリーンショットの問題についても同様であって、ここでその様な利用を著作権者が問題視することは想定しづらいとするのは矛盾という他ない。文化庁は恣意的にすれ違いの回答をしているが、問題としている側は、SNSなどで違法画像が使用されている場合にそれが違法であると知りながらスクリーンショットで保存する事が違法となる事自体を問題としているのであって、これはその通りになるのである。また、ダウンロード違法化・犯罪化の拡大は画像のみならずあらゆるコンテンツに及び、あらゆる複製に及ぶのであって、ここで画像のみを取り上げているのもわざと問題を矮小化しているのだろうと思わざるを得ない。

 問10の視聴が違法化・犯罪化されない事は当たり前の事であり、メールによる送りつけの問題も添付ファイルであれば違法・犯罪とならないのはその通りだろうが、メール中にURL等が書き込まれていた場合なども考えると、話はそう単純ではない。

 問11の2次創作物についても、条文案の刑事罰規定において、著作権法第28条の2次著作物についての原著作者の権利が除かれているが、この事はこの問題の本質とは関係がない。

 問12のインタビュー記事のダウンロードについても同様であって、ここでその様な利用を著作権者が問題視することは考えづらいとするのは矛盾という他ない。さらに敢えて書いておくと、既にそれ自体としては販売が終了している定期刊行物の記事等であってもバックナンバーやアーカイブとして長期間に渡って販売される事もあるのであって、販売が終了している新聞記事等のダウンロードは刑事罰の対象外というのも非常に安易で危うい想定である。

 問13の親告罪となっている事も当然の事である。

 問14、15の主観要件の判断について、現行の録音録画に関するダウンロード違法化・犯罪化の条文の要件だろうが、示されている条文案の要件だろうが、これらはともに主観要件であって、はっきり言って、いずれにせよ、一個人しか絡まないダウンロードにおける要件の立証・反証の問題に対する解決になるものでは全くない。権利者から警告された後もユーザーがダウンロードを継続しているような場合に認定される事が想定されるとも書かれているが、その様な事が現実的に起こるのか、その様な事がどの様に証明され得るのかは全く不明という他なく、ここで書かれている事は法律について無知な者の戯言としか思えない。

 すなわち、これらの添付資料のほぼ全てが、何ら合理的な根拠もなく、結論ありきでダウンロード違法化・犯罪化の範囲の拡大を正当化しているものであって、到底法改正のための真摯な根拠たり得ない文化庁の妄言を垂れ流しているに過ぎない。

 今後著作権法改正案を提出するのであれば、本条文案におけるダウンロード違法化・犯罪化の対象拡大に関する全ての条項の削除のみならず、ダウンロード違法化・犯罪化を規定する著作権法第30条第1項第3号及び第119条第3項を削除し、ダウンロード違法化・犯罪化を完全に撤廃することを速やかに行うべきである。

(2)リーチサイト対策に関して御意見があれば、記入して下さい。

<回答欄>(自由記述)
 現行現行の著作権法における民事の間接侵害(カラオケ法理)あるいは刑事の著作権侵害幇助との関係整理をおざなりにした、著作権侵害コンテンツへのリンク行為に対するみなし侵害規定の追加及び刑事罰付加に反対する。

 本当に悪質な場合について現行法で不十分というところがあれば、その点について立法による対処も当然あり得るだろうが、権利者団体側がリーチサイト等に対して現行法に基づいてどこまで何をしたのか、現行法による対処に関する定量的かつ論理的な検証は何らされておらず、本当にどのような場合について現行法では不十分なのかは全く不明である。

 例えば、2018年12月の法制・基本問題小委員会中間まとめ又は2019年2月の著作権分科会報告書でロケットニュース事件やリツイート事件を取り上げているが、これらの事件はニュースサイトやツイッターの様なSNSサイトにおけるリンク行為を取り扱ったものであって、いわゆるリーチサイトとは性質を異にすると考えるべきものである。カラオケ法理に関してはネットワークを通じた提供を含めて各種の民事での判例があり、著作権侵害幇助に関する刑事事件もあるのであって、判例と現行法の解釈についての分析すら不十分であると言わざるを得ない。さらに言えば、ここで本当に問われるべきは、権利者団体が悪質なケースがあると主張しているにもかかわらず、その悪質なリーチサイトに対して何故いまだに民事・刑事での明確な裁判例が積み重なっていないのかということであろう。

 さらに、このような間接侵害あるいは幇助の検討において当然必要とされるはずのセーフハーバーの検討も極めて不十分であって、インターネット利用における民事・刑事のリスクに関する不確実性を増すだけである、このような不十分な検討に基づくリンク行為へのみなし侵害規定の追加及び刑事罰付加に私は断固反対する。

 今現在、カラオケ法理の適用範囲がますます広く曖昧になり、間接侵害や著作権侵害幇助のリスクが途方もなく拡大し、甚大な萎縮効果・有害無益な社会的大混乱が生じかねないという非常に危険な状態がなお続いている。間接侵害事件や著作権侵害幇助事件においてネット事業者がほぼ直接権利侵害者とみなされてしまうのでは、プロバイダー責任制限法によるセーフハーバーだけでは不十分である。リーチサイト規制としての著作権侵害コンテンツへのリンク行為に対するみなし侵害規定の追加及び刑事罰付加については全て白紙に戻し、間接侵害や著作権侵害幇助罪も含め、間接侵害や刑事罰・著作権侵害幇助も含め、著作権侵害とならない範囲を著作権法上きちんと確定し、著作権法へセーフハーバー規定を導入することのみを速やかに検討するべきである。

 私の意見は上記の通り、リーチサイト規制としての著作権侵害コンテンツへのリンク行為に対するみなし侵害規定の追加及び刑事罰付加にそもそも反対するというものであるが、提示されている条文案についての意見を以下の通り補足する。

 添付資料1の第3~10ページにおいてリーチサイト規制に関する条文案の解説が示され、添付資料2に条文案の新旧対照が示されている。

 この条文案の第113条第2項は、「公衆を侵害著作物等に殊更に誘導するものであると認められるウェブサイト等」又は「主として公衆による侵害著作物等の利用のために用いられるものであると認められるウェブサイト等」における、「送信元識別符号」の「提供」により「侵害著作物等の他人による利用を容易にする行為」を、「当該行為に係る著作物等が侵害著作物等であることを知つていた場合又は知ることができたと認めるに足る相当の理由がある場合」に、著作権侵害とみなすというものであって、要するに、著作権侵害のために公衆に利用されるウェブサイト等で、リンク先の著作物が侵害著作物である事を知りながら又は知る事ができたとする相当の理由がありながら、リンクを提供する事を規制し、さらに、第120条の2で、刑事罰もつけて犯罪化するというものであり、プログラム(アプリ)を用いる場合も同様とされている。また、第113条第3項では、ウェブサイト等の運営者には放置に関する責任があるとし、第4項で、ウェブサイト等の範囲は政令で定められるものとし、第119条で、ウェブサイト等の運営者をリンク提供者より厳罰に処すとしている。

 一応もっともらしく限定されている様に読めるものの、これは、著作権侵害ウェブサイト等における、侵害とされ得るあらゆる著作物への単なるリンク提供行為を規制するものである。しかも、ウェブサイト等の範囲が文化庁主導の政令で定められるので、当初の範囲がどうあれ、今後、検索やSNSなど様々なサービスにおける細かなリンクの提供あるいはサービス自体の提供まで法改正抜きで広範な規制が可能となる様に作られているのは悪質である。さらに、ダウンロード犯罪化と同様リンク提供行為については非親告罪とされる様だが、サイト運営者については非親告罪とされる様である点も問題である。

 この条文案で本当に法律ができれば、リンクの提供がインターネット上で非常にカジュアルに行われている事を考えると、まず間違いなく、国内のネットサービス提供者や利用者のリンク提供行為に対する脅しや嫌がらせが増え、インターネット利用における民事・刑事のリスクが無意味に高まる事になるであろう。

(3)その他、海賊版対策全般に関して御意見があれば、記入して下さい。

<回答欄>(自由記述)
 情報の自由や検閲の禁止、通信の秘密といった国民の基本的な権利を侵害するものとならざるを得ない、サイトブロッキングやアクセス警告方式の導入ありきの海賊版対策の検討に反対する。インターネットにおける海賊版対策の検討においては、まず、アップロードによる著作権侵害に対する民事・刑事の権利行使においてどこにボトルネックがあるのかを明らかにした上で、そのボトルネックを解消するための地道な取り組みのみに注力するべきである。この点については、2019年8月の総務省のインターネット上の海賊版サイトへのアクセス抑止方策に関する検討会の報告書の整理を守るべきである。

 ネット上の違法コンテンツ対策、違法ファイル共有対策については、通信の秘密やプライバシー、情報アクセス権等の国民の基本的な権利をきちんと尊重しつつ対策を検討してもらいたい。この点においても、国民の基本的な権利を必ず侵害するものとなり、ネットにおける文化と産業の発展を阻害することにつながる危険な規制強化の検討ではなく、ネットにおける各種問題は情報モラル・リテラシー教育によって解決されるべきものという基本に立ち帰り、現行のプロバイダー責任制限法と削除要請を組み合わせた対策などの、より現実的かつ地道な施策のみに注力して検討を進めるべきである。

 また、不正競争防止法と著作権法による二重保護の問題やDRM保護のそもそもの必要性について本来なされるべき検討もせずに行われようとしている、今回の意見募集の対象の著作権法改正の条文案に含まれている、DRM回避規制に関する2つの法律の条文の辻褄合わせのような法改正のための法改正にも私は反対する。

 経済産業省の産業構造審議会知的財産分科会不正競争防止小委員会において2018年1月にとりまとめられた「データ利活用促進に向けた検討中間報告」において書かれたDRM回避規制強化のための法改正を是とするに足る立法事実の変化はなく、このような法改正のための法改正はされるべきではなかったものである。

 このような無意味なDRM規制強化の検討は全て白紙に戻し、今ですら不当に強すぎるDRM規制の緩和のための検討を不正競争防止法と合わせ速やかに開始するべきである。

 特に、DRM回避規制に関しては、有害無益な規制強化の検討ではなく、まず、私的なDRM回避行為自体によって生じる被害は無く、個々の回避行為を一件ずつ捕捉して民事訴訟の対象とすることは困難だったにもかかわらず、文化庁の片寄った見方から一方的に導入されたものである、私的な領域でのコピーコントロール回避規制(著作権法第30条第1項第2号)の撤廃の検討を行うべきである。コンテンツへのアクセスあるいはコピーをコントロールしている技術を私的な領域で回避しただけでは経済的損失は発生し得ず、また、ネットにアップされることによって生じる被害は公衆送信権によって既にカバーされているものであり、その被害とDRM回避やダウンロードとを混同することは絶対に許されない。それ以前に、私法である著作権法が、私的領域に踏み込むということ自体異常なことと言わざるを得ない。また、同時に、何ら立法事実の変化がない中、ドサクサ紛れに通された、先の不正競争防止法改正で導入されたDRM回避規制の強化や、TPP関連として入れられたものも含め以前の著作権法改正で導入されたアクセスコントロール関連規制の追加についても、速やかに元に戻す検討がなされるべきである。

 さらに、著作権の保護期間の延長について元に戻す事を求めるとともに、私的録音録画補償金の対象範囲の拡大に反対し、一般フェアユース条項の導入を求める。

 2018年12月のTPP11協定の発効に合わせて著作権の保護期間の延長が施行されたが、TPP11協定では保護期間の延長は凍結されたのであって、この保護期間の延長は本来必要ではなかったものである。このように何ら国民的なコンセンサスを得ることもないまま、不合理ななし崩しの法改正により甚大な国益の喪失をもたらした事について私は日本政府を強く非難する。日EU(欧)EPA協定にも著作権の保護期間の延長は含まれているが、これもTPP協定同様の姑息かつ卑劣な秘密交渉で決められたものであって、著作権の保護期間の延長の様に国益の根幹に関わる点について易々と譲歩したなど、日本政府は完全に国民をバカにしているとしか言いようがない。この日EU(欧)EPA協定に含まれる著作権の保護期間の延長にも私は反対する。このように何ら国民的なコンセンサスを得ることもないまま、不合理ななし崩しの法改正あるいは秘密の条約交渉によってなされた著作権の保護期間の延長については必要な法改正及び条約改定によって元に戻す事を検討するべきである。

 私的録音録画補償金問題について、補償金のそもそもの意味を問い直すことなく、今の補償金の矛盾を拡大するだけの私的録音録画補償金の対象拡大を絶対にするべきではなく、私的録音録画補償金の対象範囲の拡大にも私は反対する。

 ユーザーに対する意義からも、アメリカ等と遜色ない形で一般フェアユース条項を可能な限り早期に導入するべきである。特に、インターネットのように、ほぼ全国民が利用者兼権利者となり得、考えられる利用形態が発散し、個別の規定では公正利用の類型を拾い切れなくなるところでは、フェアユースのような一般規定は保護と利用のバランスを取る上で重要な意義を持つものである。

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